説明

脱穀装置

【課題】扱胴の下方周辺に配置された受網を有し、扱胴が収容される扱室の後方側と送塵口処理胴が収容される処理室の前方側とが送塵口を介して連通されている脱穀装置であって、扱胴による脱穀効率を向上させつつ、扱胴によって処理しきれなかった未処理物を扱室から処理室へ効率よく移送させることができる脱穀装置を提供する。
【解決手段】受網44の送塵口47より前方側に位置する第1受網部71において、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴43の周方向に沿った複数の縦板部材73が扱胴43の軸線方向に並列配置されるとともに、断面視略円形状の複数の線状部材74が前記縦板部材73に形成された孔73aに扱胴43の軸線方向に沿うようにそれぞれ挿通された状態で前記扱胴43の周方向に並列配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴及び送塵口処理胴を備えた脱穀装置に関し、特に、扱胴の下方周辺に受網が配置された脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置に適用される受網として、平板部材にプレス加工によって複数の開口が形成されてなる受網(例えば下記特許文献1参照)や扱胴周方向に沿った複数の縦板部材及び扱胴軸線方向に沿った複数の鋼線部材によって複数の開口が形成されてなる受網(例えば下記特許文献2参照)が提案されている。
【0003】
しかしながら、扱胴及び送塵口処理胴を備えた脱穀装置に適用される受網として、前記扱胴による脱穀効率を向上させつつ、前記扱胴によって処理しきれなかった未処理物を効率よく送塵口処理胴へ供給し得るように構成された受網は存在しない。
【0004】
即ち、前記扱胴のうち前部分及び前後中央部分においては、穀稈から穀粒及び藁屑を含む脱穀物が比較的大量に生成される。従って、前記受網のうち前記扱胴の前部分及び前後中央部分に対応する部分には、前記脱穀物のうち所定の大きさ以下の脱穀物を効率的に漏下させることで、目詰まりの防止を図ることが要求される。
【0005】
一方、前記受網のうち前記扱胴の後部分に対応した部分には、固まり状の未処理物を送塵口を介して前記扱胴を収容する扱室から前記送塵口処理胴を収容する処理室へ効率良く移送させることが要求される。
つまり、前記扱胴による脱穀処理に際し、穀稈の穂先側が株元側から分断される現象が起こる(以下、この株元側から分断された穂先側を穂切れ物という)。
穂切れ物のうち前記受網の開口より小さいものは、穀粒を含む脱穀物とともに前記受網を通過して下方へ漏下するが、穂切れ物のうち前記開口幅より大きいものは前記扱室内に滞留する。前記扱室内に滞留した穂切れ物は前記扱胴によって連れ回され、扱胴軸線方向後方側へ行くに従って互いに絡まりあって、穀粒を含む固まり状の未処理物になる。このような固まり状の未処理物は、前記脱穀装置の脱穀処理効率を悪化させるとともに、前記扱胴の駆動力に対するパワーロスを招く。
従って、前記受網の後部分には、前記固まり状の未処理物を扱室から処理室へ効率よく移送させるという作用が要求される。
【0006】
前記特許文献1に記載の受網は、前記平板部材の前部分及び後部分の抜き孔の大きさを前後中央部分の抜き孔の大きさより大きくすることにより、扱胴によって穀稈から脱離された穀粒及び藁屑を含む脱穀物が比較的多い前方部分において目詰まりが生じることを防止している。
しかしながら、前記受網は、プレス加工によって抜き孔が形成されているため、抜き孔の大きさを大きくしたとしても、受網全体の面積に対する抜き孔全体の開口面積の比率(開口率)を上昇させるには強度的あるいは加工精度的に限界がある。
【0007】
一方、前記特許文献2に記載の受網は、前記複数の縦板部材及び前記複数の鋼線部材によって複数の開口が形成されており、平板部材に抜き孔を形成してなる受網に比して、前記開口率を上昇させることができるが、その反面、前記固まり状の未処理物が扱室内に滞留し易く、その結果、脱穀効率が悪化するという問題がある。
【特許文献1】特許第3846886号公報
【特許文献2】特開平11−253044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、扱胴の下方周辺に配置された受網を有し、扱胴が収容される扱室の後方側と送塵口処理胴が収容される処理室の前方側とが送塵口を介して連通されている脱穀装置であって、扱胴による脱穀効率を向上させつつ、扱胴によって処理しきれなかった未処理物を扱室から処理室へ効率よく移送させることができる脱穀装置の提供を、一の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る脱穀装置は、扱胴の下方周辺に配置された受網を有し、前記扱胴が収容される扱室の後方側と送塵口処理胴が収容される処理室の前方側とが送塵口を介して連通されている脱穀装置であって、前記受網は、前記扱胴の下方のうち前記送塵口より前方側に位置する部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第1受網部と、前記扱胴の下方のうち前記第1受網部より後方側で且つ前記送塵口より扱胴回転方向上流側の部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第2受網部であって、前記第1受網部に連結された第2受網部とを備え、前記第1受網部は、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴周方向に沿った複数の縦板部材であって、扱胴軸線方向に並列された複数の縦板部材と、それぞれが扱胴軸線方向に沿うように前記複数の縦板部材に形成された孔に挿通された断面視略円形状の複数の線状部材であって、前記扱胴の周方向に並列された複数の線状部材とを備え、前記複数の縦板部材及び前記複数の線状部材が平面視矩形状の複数の第1開口を形成し、前記第2受網部は、平面視矩形状の複数の第2開口が形成された平板部材を有していることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成の脱穀装置によれば、扱室内の扱胴により脱穀された穀粒が受網を通じて下方に落下する一方、穀粒を含む固まり状の未処理物は、扱室の後方側から送塵口を介して送塵口処理胴が収容される処理室へと送られる。
ここで、前記受網は、前記送塵口より前方側に位置する第1受網部において、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴周方向に沿った複数の縦板部材が扱胴軸線方向に並列配置されるとともに、断面視略円形状の複数の線状部材が前記縦板部材に形成された孔に扱胴軸線方向に沿うようにそれぞれ挿通された状態で前記扱胴の周方向に並列配置される。このようにして、前記第1受網部には、交差する前記縦板部材及び線状部材が互いに交差することにより平面視矩形状の複数の第1開口が形成されている。
また、前記受網は、前記扱胴の下方のうち前記第1受網部より後方側で且つ前記送塵口より扱胴回転方向上流側の部分を覆う第2受網部において、平板部材に平面視矩形状の複数の第2開口が形成されている。
【0011】
このように、送塵口より前方側に位置する第1受網部において、縦板部材及び線状部材を交差させて第1開口を形成することにより、当該第1開口の開口面積を小さくしつつ受網全体の面積に対する抜き孔全体の開口面積の比率(開口率)を上げることができる。また、前記扱胴の扱歯と直交する第1開口の辺が線状部材で形成されることにより、平板部材にプレス加工等で形成された受網に比べて前記受網の扱歯に対向する部分が平らでないため、扱歯による桔梗除去効果を高めることができる。従って、扱胴によって穀稈から脱離された穀粒及び藁屑を含む脱穀物が比較的多い前方部分において、脱穀効率を向上させることができる。
また、前記第1受網部の後方の第2受網部においては、平板部材に第2開口を形成することにより、第1受網部に比べて前記開口率を小さくして固まり状の未処理物を扱室から送塵口を介して処理室へと効率よく移送させることができる。
【0012】
好ましくは、前記受網は、扱胴軸線方向に関し前記扱胴の扱歯から変位された位置において、扱胴軸線方向視において前記扱歯の回転軌跡とオーバーラップするように扱胴周方向に沿った仕切部材を備え、前記仕切部材は、前記第2受網部にのみ設けられている。
【0013】
この場合、フィードチェーン装置によって搬送される穀稈が仕切部材上を通過することにより上下に揺動することとなるため、脱穀効果が促進される。
また、受網の第2受網部に扱胴周方向に沿って設けられた仕切部材と前記扱胴の扱歯の回転軌跡とが扱胴軸線方向視において互いにオーバーラップするため、前記第2受網部に滞留している固まり状の未処理物が扱胴の回転により扱胴周方向下流側の送塵口へ向けて移動することを促進させるとともに、当該固まり状の未処理物が扱胴の扱歯と仕切部材との間に挟まることによりほぐされる。
従って、固まり状の未処理物を扱室に長時間滞留させることなく迅速に送塵口を介して処理室へ移送することができるとともに、処理室へ送られる固まり状の未処理物を予めほぐすことができるため、扱胴による脱穀効率を向上させるとともに送塵口処理胴による処理効率を向上させることができる。
【0014】
好ましくは、前記第2開口は、前記第1開口より開口面積が大きいように構成される。
【0015】
この場合、脱穀済みの穀粒が開口面積のより小さい第1受網部の第1開口から下方へ漏下し、脱穀済みの穀粒より大きいが固まり状の未処理物ほど大きくない排藁等が前記第1受網部より後方に位置し、前記第1開口より大きい開口面積を有する前記第2受網部の前記第2開口から下方へ漏下する。
これにより、穀粒と排藁等の不純物とを粗選別することができるとともに、前記第2開口が前記排藁等の不純物等により目詰まりすることを防止することができる。
【0016】
より好ましくは、前記複数の線状部材は、扱胴周方向に略等間隔に並列され、前記複数の縦板部材は、前方側に位置し且つ扱胴軸線方向に第1の間隔で並列された前方縦板部材群と、前記前方縦板部材群の後方側に位置し且つ扱胴軸線方向に前記第1の間隔より広い第2の間隔で並列された中央縦板部材群と、前記中央縦板部材群の後方側に位置し且つ扱胴軸線方向に前記第2の間隔より広い第3の間隔で並列された後方縦板部材群とを含み、前記第2開口は、前記第1開口のうち前記後方縦板部材群と前記複数の線状部材とによって画される後方第1開口より扱胴軸線方向に沿った辺の長さが短い状態で開口面積が大とされている。
【0017】
この場合、第1受網部における第1開口の扱胴周方向に沿った辺の長さは略一定である一方、前記第1開口の扱胴軸線方向に沿った辺の長さは、後方側に行くに従って段階的に長くなっている。そして、第2開口の扱胴軸線方向に沿った辺の長さは、前記第1開口の扱胴軸線方向の辺の長さが最も長い後方縦板部材群及び前記線状部材で形成された後方第1開口の扱胴軸線方向に沿った辺の長さに比べて短い一方で、前記第2開口の開口面積は、前記後方第1開口の開口面積より大きいものとなっている。
従って、第1受網部においては、扱胴軸線方向に沿った方向に細長い後方第1開口を備えることにより、第1開口より漏下しない排藁や未処理物が後方へ移動するのを促進させることができるとともに、第2受網部においては、第1受網部に比して扱胴周方向に沿った辺の長さを大きくすることにより、固まり状の未処理物が扱胴周方向下流側の送塵口へ向けて移動することを促進させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る脱穀装置によれば、送塵口より前方側に位置する第1受網部において、縦板部材及び線状部材を交差させて第1開口を形成することにより、当該第1開口の開口面積を小さくしつつ受網全体の面積に対する抜き孔全体の開口面積の比率(開口率)を上げることができる。また、前記扱胴の扱歯と直交する第1開口の辺が線状部材で形成されることにより、平板部材にプレス加工等で形成された受網に比べて前記受網の扱歯に対向する部分が平らでないため、扱歯による桔梗除去効果を高めることができる。従って、扱胴によって穀稈から脱離された穀粒及び藁屑を含む脱穀物が比較的多い前方部分において、脱穀効率を向上させることができる。
また、前記第1受網部の後方側においては、平板部材に第2開口を形成することにより、第1受網部に比べて前記開口率を小さくして固まり状の未処理物を扱室から送塵口を介して処理室へと効率よく移送させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る好ましい一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、本発明に係る一実施形態におけるコンバイン1の左側面図及び平面図である。
本実施形態におけるコンバイン1は、図1及び図2に示すように、本機フレーム2と、前記本機フレーム2に支持された駆動源であるエンジン(図示せず)と、前記本機フレーム2に連結された左右一対の走行装置(本実施形態においては、クローラ式走行装置)10と、前記本機フレーム2の前方において該本機フレーム2に昇降可能に支持された刈取フレーム11に設けられた刈取装置30と、前記刈取装置30によって刈り取られた穀稈を前記本機フレーム2の左側方において後方へ搬送するフィードチェーン装置20と、前記フィードチェーン装置20によって搬送される穀稈に対して脱穀処理を行うように、前記本機フレーム2の左部分に配設された脱穀装置40と、前記脱穀装置40の下方に配設された選別装置50と、前記本機フレーム2の右前方部分に配設された運転席5と、前記選別装置50によって選別された穀粒を収容するグレンタンク6であって、前記運転席5の後方に配設されたグレンタンク6と、前記フィードチェーン装置20から脱穀済の排藁を受け継ぎ、該排藁を後方へ搬送する排藁搬送装置60とを備えている。
【0020】
ここで、前記脱穀装置40の内部構造について説明する。
図3に、図1のコンバイン1における脱穀装置40及び揺動選別装置50の左側面模式図を示し、図4に、図1のコンバイン1における脱穀装置40の正面模式図を示す。
前記脱穀装置40は、図3及び図4に示すように、脱穀機枠によって画される扱室41と、該扱室41内において車輌前後方向(穀稈搬送方向)に略沿った回転軸42であって、穀稈の穂先側に対して扱歯が穀稈の株元側から穂先側へ通過するように穀稈搬送方向に略沿った回転軸42の軸線回りに回転駆動され、前記フィードチェーン装置20によって搬送される穀稈の穂先側を脱穀する扱胴43と、前記扱胴43の少なくとも最下点を覆うように該扱胴43と略同心状に配置された配設された受網44とを備えている。扱胴43は、一端部が前記エンジンに作動連結され且つ他端部が前記回転軸42に作動連結された扱胴用伝動軸(図示せず)により回転駆動される。また、前記扱胴43は、略円柱形状を有しており、外周面に複数の扱歯43aが植設されている。
【0021】
このような構成により、前記フィードチェーン装置20によって前記扱室41内に穀稈の穂先側を搬送しつつ、前記扱胴43を回転軸42の軸線回りに回転させることで扱歯43aを回転させ、前記穀稈から穀粒が脱穀される。脱穀された穀粒や藁屑等は、前記受網44から漏下する。
【0022】
前記扱室41の後方且つ側方(本実施形態においては、前記グレンタンク6側即ち右側方)には、処理室45が形成され、当該処理室45内には、略円柱形状に構成された送塵口処理胴46であって、回転軸線が前記回転軸42と略平行とされた送塵口処理胴46が回転軸線回り回転駆動可能に設置されている。
【0023】
本実施形態の脱穀装置40において、前記扱室41の後方側と前記処理室45の前方側とは、送塵口47を介して連通されている。
即ち、前記扱室41を形成する扱胴ケースの後部右側面、及び、前記処理室45を形成する処理胴ケースの前部左側面には送塵口47が開口されることにより、前記扱室41と前記処理室45とが連通されている。
前記送塵口処理胴46の下方には、当該送塵口処理胴46の下部周辺を覆うように半円形状の処理胴網48が周設されている。
【0024】
このような構成により、前記扱胴22で処理できなかった枝梗付着粒等の未処理物は、前記送塵口47を介して前記扱室41から前記処理室45内に搬送されて、回転駆動される前記送塵口処理胴46により処理され、前記処理胴網48に設けられた孔(網目)を通過して処理物のみが漏下することとなる。
【0025】
また、前記処理胴網48の下方には、送塵搬送コンベア49が前後方向に軸架されている。前記送塵搬送コンベア49はスクリュー式のコンベアであり、該送塵搬送コンベア49によって、処理胴網48に設けられた孔(網目)を通過して漏下してきた処理物は、機体前方(すなわち、送塵口処理胴46の搬送方向とは逆の方向)に向かって搬送されて、送塵搬送コンベア49前端に設けられた排塵口49aより前記扱室41の後方に再投入される。
【0026】
次に、前記選別装置50について、説明する。
前記選別装置50は、図3に示すように、揺動選別を行う揺動選別装置51と風選別を行う風選別装置52と、前記揺動選別装置51の下方に配設された一番樋53と、前記揺動選別装置51の下方且つ前記一番樋53の後方(穀稈搬送方向下流側)に配設された二番樋54とを有している。
【0027】
前記揺動選別装置51は、前記受網44を介して前記扱室41に連通されており、前記脱穀装置40から流下される脱穀物を受け止めるように前記扱胴43の下方に配設されたフィードパン55と、前記脱穀装置40から流下する脱穀物及び前記フィードパン55から送られてくる脱穀物を受け、該脱穀物から穀粒を揺動選別するように配設されたチャフシーブ機構56と、前記チャフシーブ機構56の後方に直列配置するように配設されたストローラック機構57とを有している。
【0028】
前記フィードパン55は、前記脱穀装置40から流下される脱穀物を車輌幅方向に拡散させつつ、前記チャフシーブ機構56へ向けて車輌後方側へ搬送するように構成されている。具体的には、フィードパン55は、上面が波状に形成された板体とされている。
【0029】
前記チャフシーブ機構56は、前記脱穀装置40から流下する脱穀物及び前記フィードパン55から送られてくる脱穀物に対して比重選別を行い、該脱穀物の一部を下方に位置する前記一番樋53に一番穀粒として流下させるように構成されている。
具体的には、前記チャフシーブ機構56は、車輌幅方向に延びる複数のフィンであって、間隔を存しつつ車輌前後方向に並設された複数のフィンを有しており、比重選別される穀粒が前記間隔を通って、下方に配置される前記一番樋53へ落下するようになっている。
なお、前記複数のフィンは、下端部が上端部よりも車輌前方側に位置する後傾斜状態で、それぞれ車輌幅方向に沿った枢支軸回りに一体的に揺動可能とされており、駆動機構(図示せず)によって傾斜角を変更することで、前記間隔の開口幅が調整可能とされている。
【0030】
前記ストローラック機構57は、前記チャフシーブ機構57から送られてくる脱穀物に対して比重選別を行い、該脱穀物のうち、穀粒よりも比重の軽い枝梗付き穀粒や穂切れ等の小さな脱穀物を二番物として下方に位置する前記二番樋54に流下させるとともに、該脱穀物のうち排藁等の大きな不要物を機外に搬送するように構成されている。
【0031】
本実施形態において、前記揺動選別装置51は、さらに、上下方向に関し前記チャフシーブ機構56と前記一番樋53との間にグレンシーブ機構58を有している。該グレンシーブ機構58は、前記チャフシーブ機構56から流下する選別物又は前記チャフシーブ機構56の下方且つ前記グレンシーブ機構58の前方に配置されたフィードパン59を介して搬送される選別物をさらに精選するものであり、例えば、網状体によって形成される。
【0032】
前記風選別装置52は、前記揺動選別装置51に対して選別風を送出するように構成されており、選別風によって該揺動選別装置51による穀粒の選別を促進させ得るようになっている。
具体的には、風選別装置52は、前記チャフシーブ機構56の前方且つ下方に配置された唐箕ファン61を有している。前記唐箕ファン61は、車輌幅方向に沿った駆動軸によって回転駆動されることにより、前記揺動選別装置51に対して前下方から後上方へ抜ける選別風を送出する。
【0033】
本実施形態において、前記風選別装置52は、前記唐箕ファン61からの選別風を吸引して機外に排出させるように、前記揺動選別装置51より上方且つ扱室41の後方(穀稈搬送方向下流側)に配置された吸引ファン62を備えている。
前記吸引ファン62は、車輌幅方向に沿った回転軸によって回転駆動されるようになっている。
【0034】
一番回収機構である前記一番樋53は、前記選別装置50によって選別処理された一番穀粒を回収し得るように前記揺動選別装置51の下方に配設された側面視凹状とされている。
このような一番樋53に回収された一番穀粒は、一番搬送装置を介して前記グレンタンク6に搬送され、収容される。具体的には、前記一番搬送装置は、前記一番回収空間内に車輌幅方向に沿うように配設され、一番穀粒を前記一番樋53の車輌幅方向一方側(右側)へ搬送する一番コンベア63と、下端部が該一番コンベア63の搬送方向下流端部に作動連結され、上端部が前記グレンタンク6に一番穀粒を搬送可能に連結された揚穀コンベア64とを有している。なお、本実施形態において、一番コンベア63及び揚穀コンベア64は、ともにスクリューコンベアであり、扱胴43の回転動力を利用して互いに作動連結された一番コンベア63及び揚穀コンベア64を回転駆動させている。
【0035】
二番回収機構である前記二番樋54は、前記選別装置50によって選別処理された二番物を回収し得るように前記揺動選別装置51の下方に配設された側面視凹状とされている。
本実施形態において、前記選別装置50は、前記揺動選別装置51及び前記風選別装置52によって選別処理された選別物の一部を再脱穀する二番処理胴65を備えている。
そして、前記二番樋54に回収された二番物は、二番還元装置を介して二番処理胴65に供給され、再脱穀された後、再選別される。前記二番還元装置は、車輌幅方向に沿うように配設され、二番物を前記二番樋54の前記車輌幅方向一方側(右側)へ搬送する二番コンベア66と、該二番コンベア66の搬送方向下流端部に作動連結され且つ前記二番処理胴65の処理室内に連結された二番還元コンベア67とを有している。
【0036】
上記構成によれば、前記二番樋54に回収された二番物は、二番還元装置の二番コンベア66により前記車輌幅方向一方側へ搬送された後、二番コンベア66の搬送方向下流側に連設された二番還元装置の二番還元コンベア67により二番処理胴65へ搬送される。当該二番処理胴65では、二番物が際脱穀されることにより、固まり状の未処理物がある程度ほぐされた状態となり、当該処理物が扱室41の穀稈搬送方向上流側(車輌前方)に設けられた搬入口(図示せず)から再度扱室41内へ搬送される。
【0037】
本実施形態において、前記風選別装置52は、前記一番コンベア63と二番コンベア66との間に配置された副圧送ファンであるセカンドファン68を有している。前記唐箕ファン61に加えてセカンドファン68からも選別風を送風することにより、前記唐箕ファン61による選別風の風力が弱まる風選別装置52の下流側(車輌後部)において風選別による選別性能が低下することを防止することができる。
【0038】
続いて、前記脱穀装置50の受網44の構成について説明する。
図5に、本実施形態における受網の展開図を示す。なお、図5においては、前記受網44と前記扱胴43及び前記送塵口処理胴46との位置関係についても併せて示している。
本実施形態において、前記受網44は、図4及び図5に示すように、前記扱胴43の下方のうち前記送塵口47より前方側に位置する部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第1受網部71と、前記扱胴43の下方のうち前記第1受網部71より後方側で且つ前記送塵口47より扱胴回転方向上流側の部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第2受網部72であって、前記第1受網部71に連結された第2受網部72とを備えている。
【0039】
そして、前記第1受網部71は、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴周方向に沿った複数の縦板部材73であって、扱胴43の回転軸線方向に並列された複数の縦板部材73と、それぞれが扱胴43の回転軸線方向に沿うように前記複数の縦板部材73に形成された孔73aに挿通された断面視略円形状の複数の線状部材74であって、前記扱胴43の周方向に並列された複数の線状部材74とを備えており、前記複数の縦板部材73及び前記複数の線状部材74が平面視矩形状の複数の第1開口71aを形成している。前記複数の線状部材74は、例えば、ピアノ線により構成される。
なお、図4においては、前記縦板部材73に形成された孔73a及び線状部材74を見易いように誇張して拡大表示している。
また、前記第2受網部72は、鋼板等の平板部材をプレス加工することによって平面視矩形状の複数の第2開口72aを形成している。
前記第2受網部72と前記第1受網部71とは、前記第2受網部72を構成する平板部材を車輌最後方側に位置する前記線状部材74にピンやボルト等(図示せず)により固定することにより連結されている。
【0040】
上記構成によれば、前記受網44は、前記送塵口47より前方側に位置する第1受網部71において、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴43の周方向に沿った複数の縦板部材73が扱胴43の回転軸線方向に並列配置されるとともに、断面視略円形状の複数の線状部材74が前記縦板部材73に形成された複数の孔73aにそれぞれ挿通されることにより扱胴43の回転軸線方向に沿った状態で前記扱胴43の周方向に並列配置される。
本実施形態において、前記複数の縦板部材73には、それぞれ前記扱胴43の周方向に沿って等間隔に前記複数の孔73aが設けられており、前記複数の縦板部材73のそれぞれは、少なくとも一端部(図5においては両端部)が連結基部76により互いに所定間隔離間した状態で固定されている。前記線状部材74は、前記複数の縦板部材73の前記孔73aに挿通された上で、固定される。固定箇所は、特に限定されないが、例えば、車輌最前方側にある縦板部材73及び車輌最後方側にある縦板部材73と前記線状部材74とを固定することが挙げられる。
【0041】
このようにして、前記第1受網部71には、交差する前記縦板部材73及び線状部材74が互いに交差することにより平面視矩形状の複数の第1開口71aが形成されている。
また、前記受網44は、前記扱胴43の下方のうち前記第1受網部71より後方側で且つ前記送塵口47より扱胴回転方向上流側の部分を覆う第2受網部72において、プレス加工によって平面視駆形状の複数の第2開口72aが形成されている。
【0042】
このように、送塵口47より前方側に位置する第1受網部71において、縦板部材73及び線状部材74を交差させて第1開口71aを形成することにより、当該第1開口71aの開口面積を小さくしつつ受網44全体の面積に対する抜き孔全体の開口面積の比率(開口率)を上げることができる。また、前記扱胴43の扱歯43aと直交する第1開口71aの辺が線状部材74で形成されることにより、プレス加工で形成された受網に比べて前記受網44の扱歯43aに対向する部分が平らでないため、扱歯43aによる桔梗除去効果を高めることができる。
従って、扱胴43によって穀稈から脱離された穀粒及び藁屑を含む脱穀物が比較的多い前方部分において、脱穀効率を向上させることができる。
また、前記第1受網部71より後方の第2受網部72においては、プレス加工により第2開口72aを形成することにより、第1受網部71に比べて前記開口率を小さくして固まり状の未処理物を扱室41から送塵口47を介して処理室45へと効率よく移送させることができる。
【0043】
本実施形態において、前記第2開口72aは、前記第1開口71aより開口面積が大きいように構成される。
【0044】
より詳しくは、前記複数の線状部材74は、扱胴43の周方向に略等間隔に並列され、前記複数の縦板部材73は、前方側に位置し且つ扱胴43の回転軸線方向に第1の間隔L1で並列された前方縦板部材群711と、前記前方縦板部材群711の後方側に位置し且つ扱胴43の回転軸線方向に前記第1の間隔L1より広い第2の間隔L2で並列された中央縦板部材群712と、前記中央縦板部材群712の後方側に位置し且つ扱胴43の回転軸線方向に前記第2の間隔L2より広い第3の間隔L3で並列された後方縦板部材群713とを含んでいる。
【0045】
ここで、前記前方縦板部材群711と前記複数の線状部材74とによって画される第1開口71aを前方第1開口71a1とし、前記中央縦板部材群712と前記複数の線状部材74とによって画される第1開口71aを中央第1開口71a2とし、前記後方縦板部材群713と前記複数の線状部材74とによって画される第1開口71aを後方第1開口71a3とする。
そして、前記第2開口72aは、前記第1開口71aのうち前記後方第1開口71a3に比べて扱胴43の回転軸線方向に沿った辺の長さが短い状態で開口面積が大とされている。
【0046】
この場合、脱穀済みの穀粒が開口面積のより小さい第1受網部71の第1開口71aから下方へ漏下し、脱穀済みの穀粒より大きいが固まり状の未処理物ほど大きくない排藁等が前記第1受網部71より後方に位置し、前記第1開口71aより大きい開口面積を有する前記第2受網部72の前記第2開口72aから下方へ漏下する。
これにより、穀粒と排藁等の不純物とを粗選別することができるとともに、前記第2開口72aが前記排藁等の不純物等により目詰まりすることを防止することができる。
【0047】
さらに、第1受網部71における第1開口71aの扱胴43の周方向に沿った辺の長さは略一定である一方、前記第1開口71aの扱胴43の回転軸線方向に沿った辺の長さL1,L2,L3は、後方側の縦板部材群に行くに従って段階的に長くなっている(前方縦板部材群711における前記辺の長さL1<中央縦板部材群712における前記辺の長さL2<後方縦板部材群713における前記辺の長さL3)。そして、第2開口72aの扱胴43の回転軸線方向に沿った辺の長さL4は、前記第1開口71aの扱胴43の回転軸線方向の辺の長さが最も長い後方縦板部材群713及び前記線状部材74で形成された後方第1開口71a3の扱胴43の回転軸線方向に沿った辺の長さ(即ち、第3の間隔L3)に比べて短い一方で、前記第2開口72aの開口面積は、前記後方第1開口71a3の開口面積より大きいものとなっている。
即ち、前記第2開口72aの扱胴43の周方向長さは、前記第1開口71aの扱胴43の周方向長さより大きいものとされている。
【0048】
従って、第1受網部71においては、扱胴43の回転軸線方向に沿った方向に細長い後方第1開口71a3を備えることにより、第1開口71aより漏下しない排藁や未処理物が後方へ移動するのを促進させることができるとともに、第2受網部72においては、第1受網部71に比して扱胴43の周方向に沿った辺の長さを大きくすることにより、第1開口71aでは漏下しなかった藁屑等を漏下させて受網44が目詰まりするのを防止するとともに、固まり状の未処理物が扱胴43の周方向下流側の送塵口47へ向けて移動するのを促進させることができる。
【0049】
本実施形態において、前記受網44は、図5に示すように、扱胴43の回転軸線方向に関し前記扱胴43の扱歯43aから変位された位置(本実施形態においては、前記扱胴43の回転軸線方向に関し隣り合う扱歯43aの略中間)において、扱胴43の回転軸線方向視において前記扱歯43aの回転軌跡とオーバーラップするように扱胴周方向に沿った仕切部材75を備え、前記仕切部材75は、前記第2受網部72aにのみ設けられている。
本実施形態において、前記仕切部材75は、当該仕切部材75が前記第2開口72aを塞ぐことのないように、前記第2受網部72の扱胴43の周方向に沿った辺上に固定されている。
前記仕切部材75は、板状体により形成された第1仕切部材751と、断面円の中心が前記扱胴43の周方向に沿った丸棒体により形成された第2仕切部材752とを有し、前記第1仕切部材751及び第2仕切部材752が交互配置されている。
さらに、前記第2受網部72の扱胴43の周方向に沿った全ての辺は、前記第1仕切部材751又は第2仕切部材752の何れかが配置されている。
【0050】
なお、上記実施形態に限られず、例えば、第1仕切部材751又は第2仕切部材752の何れかのみを仕切部材75として用いてもよいし、第1仕切部材751及び第2仕切部材752を交互配置しなくてもよい。また、前記第2受網部72の扱胴43の周方向に沿った全ての辺に前記仕切部材75を配置しなくてもよく、例えば、前記辺のうち、前記扱胴43の回転軸線方向に沿って複数本毎隔てた辺上に前記仕切部材75を配置することとしてもよい。
【0051】
このような仕切部材75を用いた場合、前記フィードチェーン装置20によって搬送される穀稈が前記仕切部材75上を通過することにより上下に揺動することとなるため、脱穀効果が促進される。
また、受網44の第2受網部72に扱胴43の周方向に沿って設けられた仕切部材75と前記扱胴43の扱歯43aの回転軌跡とが扱胴軸線方向視において互いにオーバーラップするため、前記第2受網部72に滞留している固まり状の未処理物が扱胴43の回転により扱胴43の周方向下流側の送塵口47へ向けて移動することを促進させるとともに、当該固まり状の未処理物が扱胴43の扱歯43aと仕切部材75との間に挟まることによりほぐされる。
従って、固まり状の未処理物を扱室41に長時間滞留させることなく迅速に送塵口47を介して処理室45へ移送することができるとともに、処理室45へ送られる固まり状の未処理物を予めほぐすことができるため、扱胴43による脱穀効率を向上させるとともに送塵口処理胴46による処理効率を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態におけるコンバインの左側面図である。
【図2】図2は、本発明に係る一実施形態におけるコンバインの平面図である。
【図3】図3は、図1のコンバインにおける脱穀装置及び揺動選別装置の左側面模式図である。
【図4】図4は、図1のコンバインにおける脱穀装置の正面模式図である。
【図5】図5は、本実施形態における受網の展開図である。
【符号の説明】
【0054】
40 脱穀装置
41 扱室
43 扱胴
43a 扱歯
44 受網
45 処理室
46 送塵口処理胴
47 送塵口
71 第1受網部
711 前方縦板部材群
712 中央縦板部材群
713 後方縦板部材群
71a 第1開口
71a3 後方第1開口
72 第2受網部
72a 第2開口
73 縦板部材
73a 孔
74 線状部材
75 仕切部材
L1 第1の間隔
L2 第2の間隔
L3 第3の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴の下方周辺に配置された受網を有し、前記扱胴が収容される扱室の後方側と送塵口処理胴が収容される処理室の前方側とが送塵口を介して連通されている脱穀装置であって、
前記受網は、前記扱胴の下方のうち前記送塵口より前方側に位置する部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第1受網部と、前記扱胴の下方のうち前記第1受網部より後方側で且つ前記送塵口より扱胴回転方向上流側の部分を覆うように扱胴軸線方向視において円弧状とされた第2受網部であって、前記第1受網部に連結された第2受網部とを備え、
前記第1受網部は、板面が前後方向を向いた状態でそれぞれが扱胴周方向に沿った複数の縦板部材であって、扱胴軸線方向に並列された複数の縦板部材と、それぞれが扱胴軸線方向に沿うように前記複数の縦板部材に形成された孔に挿通された断面視略円形状の複数の線状部材であって、前記扱胴の周方向に並列された複数の線状部材とを備え、前記複数の縦板部材及び前記複数の線状部材が平面視矩形状の複数の第1開口を形成し、
前記第2受網部は、平面視矩形状の複数の第2開口が形成された平板部材を有していることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記受網は、扱胴軸線方向に関し前記扱胴の扱歯から変位された位置において、扱胴軸線方向視において前記扱歯の回転軌跡とオーバーラップするように扱胴周方向に沿った仕切部材を備え、
前記仕切部材は、前記第2受網部にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第2開口は、前記第1開口より開口面積が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記複数の線状部材は、扱胴周方向に略等間隔に並列され、
前記複数の縦板部材は、前方側に位置し且つ扱胴軸線方向に第1の間隔で並列された前方縦板部材群と、前記前方縦板部材群の後方側に位置し且つ扱胴軸線方向に前記第1の間隔より広い第2の間隔で並列された中央縦板部材群と、前記中央縦板部材群の後方側に位置し且つ扱胴軸線方向に前記第2の間隔より広い第3の間隔で並列された後方縦板部材群とを含み、
前記第2開口は、前記第1開口のうち前記後方縦板部材群と前記複数の線状部材とによって画される後方第1開口より扱胴軸線方向に沿った辺の長さが短い状態で開口面積が大とされていることを特徴とする請求項3に記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−219385(P2009−219385A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65547(P2008−65547)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】