説明

脱穀装置

【課題】扱き残しを低減させた脱穀装置を提供する。
【解決手段】扱胴16は、複数の扱歯22を外周に備え、回転軸17を中心に回転する。穀稈搬送機構11は、扱胴16の回転軸17に沿って穀稈14を搬送する。稈押さえ部材28は、扱胴16及び穀稈搬送機構11の間に配置される。扱歯22は扁平状に形成され、かつ、扱胴16の回転軸17と略平行な方向で隣接する扱歯22同士は、V字溝を形成している。扱胴16は、穀稈14を上扱ぎ式に脱穀する方向に回転する。稈押さえ部材28は、扱胴16及び穀稈搬送機構11の間の穀稈14に対して、上方から接触するように配置される。当該稈押さえ部材28には、穀稈14の搬送方向上流側端部において、搬送される穀稈14に対して上方から徐々に接近する導入部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈の脱穀を行う脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱穀装置は、穀稈を脱穀するための扱胴を備える。この扱胴は、円筒状の扱胴本体の外周に、多数の扱歯を配列したものである。従来の脱穀装置では、この扱歯は線材によって構成されていた。しかし、線材からなる扱歯は、穀稈の穂先との衝突頻度が小さく、脱穀の効率が悪いという課題があった。
【0003】
そこで近年、V字状の溝が形成された板材によって扱歯を形成する構成が提案されている。このような脱穀装置は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1は、この構成により、穀稈を確実に脱穀処理することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−112618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する脱穀装置の扱胴は、V字型の溝によって穀稈を挟み込んで回転する構成であるため、当該穀稈の穂先が扱胴によって引っ張られやすい。この結果、扱胴と、挟扼搬送機構と、の間で穀稈が突っ張った状態となる。このために、扱胴と、挟扼搬送機構と、の間の部分が扱胴から浮き上がってしまい、この部分の脱穀が行えないため扱ぎ残しが発生するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、扱き残しを低減させた脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の脱穀装置が提供される。即ち、この脱穀装置は、扱胴と、穀稈搬送機構と、稈押さえ部材と、を備える。前記扱胴は、複数の扱歯を外周に備え、扱室内で回転軸を中心に回転する。前記穀稈搬送機構は、前記扱胴の前記回転軸に沿って穀稈を搬送する。前記稈押さえ部材は、前記扱胴及び前記穀稈搬送機構の間に配置される。前記扱歯は扁平状に形成され、かつ、前記扱胴の前記回転軸と略平行な方向で隣接する前記扱歯同士は、略V字型の溝を形成している。前記扱胴は、前記穀稈を上扱ぎ式に脱穀する方向に回転する。前記稈押さえ部材は、前記扱胴及び前記穀稈搬送機構の間の穀稈に対して、上方から接触するように配置される。当該稈押さえ部材には、前記穀稈の搬送方向上流側端部において、搬送される前記穀稈に対して上方から徐々に接近する導入部が形成される。
【0009】
この構成により、稈押さえ部材によって、扱胴と穀稈搬送機構との間の穀稈を下向きに押さえ付けることができるので、穀稈が扱胴から浮き上がってしまうことを防止できる。これにより、扱ぎ残しを低減することができる。また、稈押さえ部材に導入部を形成したことにより、穀稈が搬送される際に、稈抑え部材によって当該穀稈をスムーズに押さえていくことができる。
【0010】
上記の脱穀装置において、前記稈押さえ部材は、前記穀稈の搬送方向に略沿って配置された丸パイプであることが好ましい。
【0011】
即ち、丸パイプとして構成された稈押さえ部材には、穀稈に接触する部分に鋭い部分がないので、穀稈を傷つけることなく押さえ付けることができる。
【0012】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記扱室のケーシングには、上方に回動することで前記扱室を開放する扱室カバーが設けられている。前記稈押さえ部材は、前記扱室カバーに取り付けられている。
【0013】
この構成によれば、扱室カバーを開放したときに、稈押さえ部材も同時に上方に回動する。従って、例えばメンテナンスなどの際には、扱室カバーを上方に回動させて扱室を開放するだけで、稈押さえ部材による穀稈の押さえ付けを解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱穀装置の全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀装置の内部を示す側面断面図。
【図3】脱穀装置の正面断面図。
【図4】脱穀装置の平面断面図。
【図5】扱歯の斜視図。
【図6】稈押さえ部材の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1から図4に示すように、脱穀装置10の側面には、穀稈搬送機構11が配置されている。この穀稈搬送機構11は、穀稈搬送チェーン12と、押圧部材13(図3)と、を主に備えている。
【0016】
穀稈搬送チェーン12は、図1に示すように、無端環状に構成され、スプロケットの回転によって循環駆動されるように構成されている。押圧部材13は、図3に示すように、穀稈搬送チェーン12の上面に対して押圧されるように構成されている。これにより、図3に示すように、穀稈14の根元部分を、穀稈搬送チェーン12の上面と押圧部材13との間に挟み込んで保持することができる。そして、この状態で穀稈搬送チェーン12を循環駆動することにより、前記穀稈14を所定方向に搬送する構成である。なお以下の説明で、穀稈搬送機構11によって穀稈が搬送される方向を、単に搬送方向と呼ぶ。
【0017】
脱穀装置10内には、穀稈の脱穀を行う空間である扱室15が形成されている。扱室15内には、回転することにより脱穀を行う扱胴16が配置されている。穀稈14が穀稈搬送機構11によって搬送されることにより、当該穀稈14の穂先14aは、扱室15内を通過する。このとき、回転する扱胴16によって、穀稈14の脱穀が行われる。なお、図4に示すように、穀稈搬送チェーン12は、平面視で扱胴16の回転軸17と略平行に配設されている。従って、穀稈14は、扱胴16の回転軸17に沿うようにして搬送される。
【0018】
なお図2に示すように、側面視では、穀稈搬送チェーン12の上面が、扱胴16の回転軸17に対して斜めに配設され、かつ、搬送方向下流側が高くなるようになっている。即ち、側面視において、穀稈搬送機構11は、穀稈14を斜め上方に向けて搬送するように構成されている。これにより、穀稈14の搬送に伴って、当該穀稈14の姿勢を変化させることができるので、扱胴16による扱ぎ残しを低減することができる。
【0019】
扱胴16による脱穀が完了した穀稈(排藁)は、穀稈搬送機構11の下流側端部において、排藁搬送機構18(図1及び図4)に受け渡される。この排藁搬送機構18は、図4に示すように、排藁搬送チェーン19と、係止搬送ベルト20と、を並列して設けた構成である。排藁搬送チェーン19は、無端環状のチェーンとして構成され、循環駆動されることにより、その下面で排藁の根元部分を搬送するように構成されている。係止搬送ベルト20は、一定間隔でタイン(図略)が配置された無端環状ベルトであり、当該係止搬送ベルト20を循環駆動することにより、穀稈の穂先部分をタインによって係止しつつ搬送する構成である。
【0020】
図1に示すように、排藁搬送機構18の下方には、排藁処理部21が配置されている。この排藁処理部21は、排藁を細かく切断するための排藁カッター、切断された排藁を機外に排出するための拡散装置などを備えている。排藁搬送機構18によって搬送される排藁は、排藁処理部21に順次投入され、細かく裁断された後、圃場に均一に放出される。
【0021】
次に、穀稈を脱穀するための構成について詳しく説明する。
【0022】
扱胴16は、金属板にて略八角形柱状の中空状筒体として構成されており、その回転軸17が装置前後方向に沿って略水平に配置されている。扱胴16の外周には、複数の扱歯22が外向きに突出するように設けられている。
【0023】
図2等に示すように、扱歯22は、扱胴16の回転軸17と平行な方向に並んで複数設けられている。図5に示すように、各扱歯22は、当該扱歯22同士が並ぶ方向に対して平行な平面を構成するように、扁平な形状に形成されている。また図5に示すように、扱歯22の先端部は、先端に向かって幅が狭まる略V字状に構成されている。従って、隣接する扱歯22同士の間は、先端に向かって幅が広がるV型溝23が形成されている。また、V型溝23の奥には、丸型(又は多角形)の抜き孔24が、前記V型溝23に連通するように形成されている。
【0024】
穀稈搬送機構11によって扱室15内を搬送される穀稈14は、扱歯22と扱歯22の間の部分(V型溝23及び抜き孔24)に嵌まり込む。この状態で扱胴16が回転することにより、穀稈14は、穂先14aに向けて扱かれる。これにより、穀稈14から穂の部分のみが取られる。なお、このように穀稈14から取られた穂の部分を、穂切れと称する。
【0025】
なお、本実施形態の扱胴16は、上扱ぎ式に回転するように構成されている。即ち、図3に示すように、穀稈14は上方に向けて扱かれ、当該穀稈14の穂先14aは、扱胴16の上方を通過するように構成されている。
【0026】
図2に示すように、扱室15の搬送方向上流側の端部には、供給口25が形成されている。穀稈搬送機構11によって搬送される穀稈14の穂先14aは、供給口25を介して、扱室15内に導入される。なお図2に示すように、搬送方向で供給口25よりも上流側には、当該供給口25の下縁部に接続する穂先案内プレート26が配置されている。穀稈14の穂先14aの部分は、穂先案内プレート26の上面によって供給口25まで案内される。この構成により、穀稈14の穂先14aを、扱室15に対して適切に供給することができる。
【0027】
また本実施形態の脱穀装置10には、前記供給口25を扱室15の内側から塞ぐ逆流防止部材50が設けられている。このように、供給口25を逆流防止部材50によって塞ぐことにより、供給口25を介して扱室15の外側に穂切れ等が飛び出すことを防ぎ、脱穀装置10の効率を向上させることができる。なお、この逆流防止部材50はゴム板から構成されているので、穀稈14の穂先14aは、逆流防止部材50を押し退けるようにして進むことができる。
【0028】
なお本実施形態において、扱室15のケーシングの天井部分を構成する天井プレート27は、扱室カバー55の底面を構成している。この扱室カバー55は、回動軸56を中心として、上方へ回動させることができるように構成されている。扱室カバー55を回動させた様子を、図3に二点鎖線で示す。このように扱室カバー55を上方へ回動させることにより、扱室15を開放させることができるので、当該扱室15内の清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0029】
なお、この扱室カバー55には、前記押圧部材13が取り付けられている。従って、扱室カバー55を上方に回動させることにより、押圧部材13を上方に移動させることができるので、当該押圧部材13と穀稈搬送チェーン12に挟まれている穀稈14を開放することができる。これにより、詰まった穀稈14を取り除くなどのメンテナンスを行うことができる。
【0030】
次に、扱胴16の回転によって穀稈14から取り外された穂先(穂切れ)の処理について詳しく説明する。
【0031】
なお、扱室15内においては、扱胴16の回転によって、穂切れの他にも、穀粒や藁屑等が発生する。これらの混合物のことを、以下、被処理物と称する。扱胴16の回転により発生した被処理物は、当該扱胴16の回転により、扱胴16の回転方向下流側に向けて放出される。被処理物の落下位置には、穂切れ処理装置29が配置されている。扱胴16から放出された被処理物は、穂切れ処理装置29に投入され、当該穂切れ処理装置29で処理されて単粒化(穀粒を枝梗から外すこと)される。
【0032】
穂切れ処理装置29は、図3及び図4に示すように、処理胴30と、受網31と、を備えている。
【0033】
処理胴30は、略四角筒状に形成されるとともに、その軸線を回転軸32として回転駆動されるように構成されている。処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17と略平行になるように配置されている。なお本実施形態では、図3に矢印で示すように、扱胴16と処理胴30は同じ方向に回転駆動される。この処理胴30は、外向きに突出する複数の処理歯33を有している。図4に示すように、複数の処理歯33は、処理胴30の軸線方向に沿って並んで配置されている。
【0034】
受網31は、処理胴30の下半分を覆うように設けられている。図3に示すように、受網31は、処理胴30の軸線方向で見たときに、回転する処理歯33の先端の軌跡に沿って形成されている。
【0035】
この構成で、扱胴16から穂切れ処理装置29に導入された被処理物は、回転する処理歯33と、受網31と、の間で揉み解し作用を受け、単粒化が促進される。脱粒された穀粒は、受網31を通って、下方に落下する。また、受網31の終端には、切歯49が形成されている。この切歯49は、処理胴30の軸線方向に並んで複数形成されている。そして、処理胴30が回転することにより、切歯49同士の間を、処理歯33が通過するように構成されている。これにより、穂切れ処理装置29に投入された藁屑等が細かく裁断される。細かく裁断された藁屑は、受網31を通って下方に落下する。
【0036】
なお、処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17よりも低い位置となるように配置されている。これにより、扱胴16から落下する被処理物を、穂切れ処理装置29で確実に受けとめることができる。
【0037】
また、扱胴16と処理胴30との間には、仕切板34が配置されている。この仕切板34は、無孔の金属板を折り曲げて形成されている。この仕切板34の下端部は、受網31の終端に近接して配置されている。このように仕切板34を設けることにより、穂切れ処理装置29内の被処理物が、処理胴30の回転の勢いによって扱胴16側に飛び出してしまうことを防止できる。これにより、穂切れ処理装置29の処理効率を向上させることができる。
【0038】
また、扱室15の天井には、穂切案内板35が吊り下げ支持されている。この穂切案内板35は、処理胴30よりも高い位置に配置されており、かつ、扱胴16の回転方向で処理胴30よりも上流側に配置されている。図3に示すように、穂切案内板35は、扱胴16の回転の勢いによって放出された穂切れ等の被処理物が衝突する位置に配置されている。また、この穂切案内板35の下端部は、穂切れ処理装置29を向くように配置されている。この構成で、扱胴16の回転によって発生した被処理物を、穂切案内板35によって穂切れ処理装置29まで案内することができる。
【0039】
次に、選別装置36について説明する。
【0040】
選別装置36は、扱胴16及び穂切れ処理装置29の下方に配置されている。前述のように、扱胴16で発生した被処理物は、穂切れ処理装置29で処理されて、受網31を通って落下する。受網31から落下する落下物(穀粒、藁屑、穂切れなどの混合物)を、以下の説明では被選別物と称する。受網31から落下した被選別物は、選別装置36に投入される。
【0041】
選別装置36は、図2に示すように、揺動選別部37と、風選別部38とを備えている。
【0042】
揺動選別部37は、チャフシーブ39を備えている。穂切れ処理装置29の受網31から落下した被選別物は、まずチャフシーブ39によって受けとめられる。チャフシーブ39は、装置の略左右方向に横架された複数のチャフフィン40を、穀稈14の搬送方向に複数並べて配置したものである。揺動選別部37は、チャフシーブ39を、搬送方向で往復揺動可能に構成されている。即ち、チャフシーブ39を往復揺動させることで、穀粒等の重くて小さい被選別物はチャフフィン40の間を通って下に落ち、藁屑などの軽くて大きい被選別物はチャフフィン40に引っ掛かって残る。
【0043】
各チャフフィン40は、その上面が、搬送方向で斜め上流側を向くようにして配置されている。これにより、チャフシーブ39全体を往復揺動させることで、被選別物が揺動選別されながら搬送方向下流側に向けて搬送されていく。チャフシーブ39の後端に達するまでの間に大部分の穀粒は落下し、チャフシーブ39の上には、穂切れや藁屑のみが残る。
【0044】
次に風選別部38について説明する。この風選別部38は、唐箕ファン41と、グレンシーブ42と、を備えている。
【0045】
グレンシーブ42は網目状のプレス、又はクリンプ網として構成されており、チャフシーブ39の下方に配置される。またグレンシーブ42の下方には、スクリューコンベアとして構成された一番コンベア43が配置されている。前記チャフシーブ39の粗選別により、当該チャフシーブ39から落下した重くて小さい被選別物(穀粒等)は、グレンシーブ42の上に落下する。
【0046】
唐箕ファン41は、搬送方向下流向きの選別風を発生させ、当該選別風をグレンシーブ42に対して下側から当てるように構成されている。
【0047】
以上の構成で、グレンシーブ42上に落下した被選別物に対して、唐箕ファン41が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物、即ち穀粒は一番物と呼ばれる。一番物は一番コンベア43に導入され、それ以外の比重の軽いものは搬送方向下流側に向けて吹き飛ばされる。
【0048】
一番コンベア43に導入された一番物(穀粒)は、当該一番コンベア43によって搬送され、例えば図略のグレンタンクに貯蔵される。以上により、被選別物から穀粒を選別して取り出すことができる。
【0049】
チャフシーブ39及びグレンシーブ42の下流側端部下方には、スクリューコンベアとして構成された二番コンベア44が配置されている。
【0050】
チャフシーブ39の上に残った穂切れ、藁屑等は、当該チャフシーブ39の往復揺動により搬送方向下流側に向けて搬送され、二番コンベア44に落下する。また、グレンシーブ42に落下した被処理物のうち、唐箕ファン41の選別風により吹き飛ばされた穂切れ、藁屑等も、二番コンベア44に落下する。風選別部38は、二番コンベア44に落下する被選別物に対して搬送方向下流側に向けて上向きの風を当てる送風ファン45を有している。
【0051】
二番コンベア44に落下する被選別物のうち、穀粒の付いた穂切れ等は比較的重いので、送風ファン45の風にもかかわらず落下して二番コンベア44に導入される。一方、穀粒の付いていない藁屑等は、送風ファン45の風によって吹き飛ばされ、図略の藁出口から装置の外に排出される。
【0052】
穀粒の付いた穂切れ等は、再処理を施して穀粒を取り出す余地があるので、回収する価値のあるものである。このように再処理の対象とするものを、二番物と称する。風選別部38で選別されて二番コンベア44に導入された二番物は、当該二番コンベア44によって搬送され、二番還元コンベア46の端部に供給される。
【0053】
二番還元コンベア46は、略上下方向に配設されたスクリューコンベアであり、前記二番物を、穂切れ処理装置29よりも上方まで搬送するように構成されている。二番還元コンベア46によって搬送された二番物は、当該二番還元コンベア46の放出側端部47から放出される。図4に示すように、前記放出側端部47には、二番案内通路48が接続されている。この二番案内通路48は、穂切れ処理装置29に連通している。従って、二番還元コンベア46から放出された二番物は、二番案内通路48を介して、穂切れ処理装置29に投入される。以上の構成により、選別装置36で選別された二番物を、穂切れ処理装置29によって再処理することができる。
【0054】
次に、本発明の特徴的構成について説明する。
【0055】
前述のように、本実施形態の脱穀装置10は、扁平状に形成された扱歯22の間に穀稈14を挟み込んで扱くことにより、穂先の部分を取り外す構成である。ところで、本実施形態のように穀稈14を挟み込んで扱く構成の場合、扱胴16の回転により、穀稈14が扱歯22によって引っ張られることになる。従って、扱胴16と、穀稈搬送機構11と、の間の部分の穀稈が突っ張ったような状態となり、穀稈が浮き上がってしまうという問題があった。
【0056】
そこで本実施形態の脱穀装置10は、図3等に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16との間に、稈押さえ部材28を配置したものである。この稈押さえ部材28は、図3に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16の間の穀稈14に対して、上方から接触するように配置されている。
【0057】
より具体的には以下のとおりである。即ち、扱胴16の回転軸17に直交する断面(図3)において、穀稈搬送機構11が穀稈14を挟持している点を通り、かつ扱胴16の外周に接する仮想線57を想定したとき、稈押さえ部材28は、前記仮想線57に対して干渉するように配置されている。そして、穀稈14は、稈押さえ部材28の下方を通過する。これにより、穀稈14を扱胴16に対して押さえ付けることができるので、当該穀稈14が扱胴16から浮き上がることを防止し、脱穀を確実に行うことができる。
【0058】
図1及び図4に示すように、稈押さえ部材28は、穀稈14の搬送方向に略沿って配置された丸パイプ部材として構成されている。このように稈押さえ部材28を丸パイプ部材としたので、搬送方向に直交する断面において、稈押さえ部材28の断面輪廓に鋭利な部分がない。即ち、稈押さえ部材28は、穀稈14と接触する部分に鋭利な箇所を有していないので、当該穀稈14を傷つけることなく押さえ付けることができる。また、稈押さえ部材28を搬送方向に沿って配置したことにより、当該稈押さえ部材28によって押さえ付けられた状態で穀稈14を搬送することができる。
【0059】
また図1等に示すように、稈押さえ部材28は、その途中部に屈曲部28aが形成されている。稈押さえ部材28のうち、屈曲部28aよりも搬送方向上流側を導入部28b、屈曲部28aよりも搬送方向下流側を押さえ部28cと呼ぶ。
【0060】
図1に示すように、稈押さえ部材28の導入部28bは、その端部(搬送方向上流側の端部)が上方を向くように斜めに配置されている。また、この導入部28bの端部において、稈押さえ部材28は、扱胴16と穀稈搬送機構11との間の穀稈14に対して接触しない(即ち、仮想線57に干渉しない)ように配置されている。そして、稈押さえ部材28の導入部28bは、下流側に向かうに従って、前記仮想線57に対して上方から徐々に近づいていくように配置されている。
【0061】
即ち、穀稈搬送機構11によって搬送される穀稈14に対して、稈押さえ部材28の導入部28bが上方から徐々に近づいていくように構成されている。このように、稈押さえ部材28に導入部28bを形成することにより、穀稈14を徐々に押さえ付けていくことができる。これにより、稈押さえ部材28による穀稈14の押さえ付けを、スムーズに開始することができる。
【0062】
そして本実施形態では、側面視(図1)において、穀稈搬送チェーン12の上面の配設方向と、稈押さえ部材28の押さえ部28cの長手方向とが、平行ではなく、所定の角度を有している。より具体的には、稈押さえ部材28は、押さえ部28cの部分において、搬送方向下流側に進むに従って、穀稈14を押さえ付ける力を徐々に強くするように配置されている。
【0063】
稈押さえ部材がこのように配置されているのは、以下のような理由による。即ち、搬送方向の上流側では、穀稈14に穀粒等が大量に付いているので、扱歯22によって穀稈14を扱くときの抵抗が大きい。従って、搬送方向の上流側において、穀稈14を扱胴16に強く押し付け過ぎてしまうと、扱胴16の回転抵抗が過大になってしまう。一方で、穀稈14が搬送されるに従い、脱穀が進行するので、穀稈14に付いている穀粒等は少なくなっていく。この結果、扱歯22によって穀稈14を扱くときの抵抗は小さくなっていく。即ち、搬送方向の下流側では、上流側に比べて、扱胴16の回転抵抗が小さくなるので、当該扱胴16に対して穀稈を強く押し付けることができる。
【0064】
従って上記のように、稈押さえ部材28が穀稈14を押さえ付ける力を、搬送方向下流側に向けて徐々に強くすることが好適である。これにより、穀稈14を扱胴16に対して無理なく押し付けていくことができるので、扱胴16の駆動負荷を増大させることなく、扱ぎ残しを低減することができる。
【0065】
また、本実施形態において、稈押さえ部材28は、扱室カバー55に取り付けられている。より具体的には、稈押さえ部材28は、図6に示す取付プレート58に固定されている。そしてこの取付プレート58が、扱室カバー55に取り付けられている。
【0066】
このように、稈押さえ部材28を扱室カバー55に取り付けた構成とすることにより、扱室カバー55を上方に回動させたときに、稈押さえ部材28を上方に移動させることができる。これにより、扱室カバー55を上方に回動させるという簡単な操作で、稈押さえ部材28による穀稈14の押さえ付けを解除することができる。従って、例えばメンテナンスなどの際に、稈押さえ部材28による穀稈14の押さえ付けを解除するための特別な操作が不要である。
【0067】
なお、前記取付プレート58は、ネジ止めにより扱室カバー55に固定される。取付プレート58には、前記ネジ止めのためのネジを挿通させる挿通孔59が形成されている。図6に示すように、挿通孔59は、上下方向に長い長孔として構成されている。これにより、取付プレート58を固定する際に、当該取付プレート58の上下方向の位置を調整することができる。従って、稈押さえ部材28の上下位置を調整できるので、当該稈押さえ部材28が穀稈14を下向きに押さえ付ける力を調整することができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の脱穀装置10は、扱胴16と、穀稈搬送機構11と、稈押さえ部材28と、を備えている。扱胴16は、複数の扱歯22を外周に備え、扱室15内で回転軸17を中心に回転する。穀稈搬送機構11は、扱胴16の回転軸17に沿って穀稈14を搬送する。稈押さえ部材28は、扱胴16及び穀稈搬送機構11の間に配置される。扱歯22は扁平状に形成され、かつ、扱胴16の回転軸17と略平行な方向で隣接する扱歯22同士は、V型溝23を形成している。扱胴16は、穀稈14を上扱ぎ式に脱穀する方向に回転する。稈押さえ部材28は、扱胴16及び穀稈搬送機構11の間の穀稈14に対して、上方から接触するように配置される。当該稈押さえ部材28には、穀稈14の搬送方向上流側端部において、搬送される穀稈14に対して上方から徐々に接近する導入部28bが形成される。
【0069】
この構成により、稈押さえ部材28によって、扱胴16と穀稈搬送機構11との間の穀稈14を下向きに押さえ付けることができるので、穀稈14が扱胴16から浮き上がってしまうことを防止できる。これにより、扱ぎ残しを低減することができる。また、稈押さえ部材28に導入部28bを形成したことにより、穀稈14が搬送される際に、稈押さえ部材28によって当該穀稈14をスムーズに押さえていくことができる。
【0070】
また本実施形態の脱穀装置10において、稈押さえ部材28は、穀稈14の搬送方向に沿って配置された丸パイプである。
【0071】
即ち、丸パイプとして構成された稈押さえ部材28には、穀稈14に接触する部分に鋭い部分がないので、穀稈14を傷つけることなく押さえ付けることができる。
【0072】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、扱室15のケーシングには、上方に回動することで扱室15を開放する扱室カバー55が設けられている。稈押さえ部材28は、扱室カバー55に取り付けられている。
【0073】
この構成によれば、扱室カバー55を開放したときに、稈押さえ部材28も同時に上方に回動する。従って、例えばメンテナンスなどの際には、扱室カバー55を上方に回動させて扱室15を開放するだけで、稈押さえ部材28による穀稈14の押さえ付けを解除することができる。
【0074】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0075】
本発明の脱穀装置は、据え置きの脱穀装置、ハーベスタ内蔵の脱穀装置、コンバイン内蔵の脱穀装置など、様々な脱穀装置に適用することができる。
【0076】
稈押さえ部材28は、丸パイプに限定されず、その下面(穀稈14に接触する部分)の断面輪廓形状に尖った部分がない形状であれば良い。
【0077】
稈押さえ部材28の上下位置を調整する構成は、省略することができる。また、取付プレート58を介すことなく、稈押さえ部材28を扱室カバー55に直接取り付けても良い。もっとも、稈押さえ部材28は、扱室カバー55に取り付ける構成に限らない。稈押さえ部材28によって穀稈を上方から押さえることができるのであれば、当該稈押さえ部材28はどこに取り付けられていても良い。
【0078】
押さえ部28cは、穀稈搬送チェーン12に対して平行に配置されても良い。また、図面では、導入部28b及び押さえ部28cが直線状に形成されている構成を示しているが、導入部28b又は押さえ部28cが曲線状に湾曲していても良い。要は、穀稈14を上方から押さえ付けることができるのであれば、稈押さえ部材28の形状は特に限定されない。
【0079】
また、稈押さえ部材は1つの部材で構成されなくても良い。例えば、導入部28bと押さえ部28cを別々の丸パイプによって構成しても良い。
【符号の説明】
【0080】
10 脱穀装置
11 穀稈搬送装置
14 穀稈
15 扱室
16 扱胴
22 扱歯
28 押さえ部材
28b 導入部
55 扱室カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扱歯を外周に備え、扱室内で回転軸を中心に回転する扱胴と、
前記扱胴の前記回転軸に沿って穀稈を搬送する穀稈搬送機構と、
前記扱胴及び前記穀稈搬送機構の間に配置される稈押さえ部材と、
を備え、
前記扱歯は扁平状に形成され、かつ、前記扱胴の前記回転軸と略平行な方向で隣接する前記扱歯同士は、略V字型の溝を形成し、
前記扱胴は、前記穀稈を上扱ぎ式に脱穀する方向に回転し、
前記稈押さえ部材は、前記扱胴及び前記穀稈搬送機構の間の穀稈に対して、上方から接触するように配置され、
当該稈押さえ部材には、前記穀稈の搬送方向上流側端部において、搬送される前記穀稈に対して上方から徐々に接近する導入部が形成されることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱穀装置であって、
前記稈押さえ部材は、前記穀稈の搬送方向に略沿って配置された丸パイプであることを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脱穀装置であって、
前記扱室のケーシングには、上方に回動することで前記扱室を開放する扱室カバーが設けられ、
前記稈押さえ部材は、前記扱室カバーに取り付けられていることを特徴とする脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−39042(P2013−39042A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176190(P2011−176190)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】