説明

脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法

【課題】脱臭効果と抗菌効果を長期に渡って高いレベルで発現できる脱臭抗菌材を提供することを目的とする。
【解決手段】脱臭抗菌材1は、吸着剤粒子2と、光触媒粒子3と、これらを固形化する結合助剤4とにより成形固化物とするとともに、成形固化物の一部を再粉化手段5により粒子状に戻し、これを臭気発生源や雑菌汚染源に直接接触させるようにしたものである。これによって、固形化状態から部分的に粉体状態に戻して、必要な量の吸着剤粒子2と光触媒粒子3を、脱臭、抗菌の用途に活用でき、固形化状態においては、温度、湿度、コンタミなどの周囲環境の影響も受けないため、臭気発生源や雑菌汚染源の近傍に設置しても、脱臭、抗菌性能が低下することはなく、性能を長期に渡って保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪臭や雑菌を効果的に除去できる脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、居住空間において発生する様々な悪臭の除去に関しては、様々な対策商品が販売されており、悪臭を別の臭いでマスキングする芳香剤、活性炭など多孔質な表面を有して臭気を吸着させる吸着剤などが一般に用いられている。また、これらの脱臭技術は、家庭電化製品にも応用されており、電気掃除機、生ゴミ処理機、温水洗浄便座など、使用時に悪臭の発生を伴う商品には、標準的に脱臭機能が搭載されている。また、近年においては、臭気に加えて、様々な空間および表面における雑菌の除去への関心も非常に高くなっており、脱臭機能にさらに抗菌機能も付与した技術、商品が増加している。
【0003】
従来の脱臭と抗菌機能を備えた材料としては、活性炭および抗菌材として銀を集合塊としたものをコア部とし、その表面を多孔質セラミックでコートし、球状に成形した脱臭抗菌材とし、前記球状の脱臭抗菌材を複数個、メッシュの袋、または通水(気)孔を開設した樹脂製の容器内に収容し、気相、液相における脱臭および抗菌用途に使用するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−211428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、複数の脱臭抗菌材を通気性の容器に収容して、臭気発生源の近傍に設置した場合、発生する臭気が拡散した際に、脱臭抗菌材と接触し、前記脱臭抗菌材中の活性炭の吸着作用により、臭気物質は吸着除去され、さらに脱臭抗菌材の容器に吸気手段などを組み込んで、強制的に空気を脱臭抗菌材と接触させるようにすると、より脱臭効果が高まるが、この方法では、通気性容器内の脱臭抗菌材の全てが臭気と均一に接触するため、脱臭性能は経時的に減少し、また、活性炭などの吸着剤では、活性炭中の臭気ガス濃度と、気相中の臭気濃度間の分圧が平衡に達した時点で、活性炭に吸着サイトが残存している場合でも、吸着効果が無くなるため、脱臭抗菌材が有している吸着容量を全て活かすことができず、結果として新しい脱臭抗菌材に入れ換える必要があるという課題を有していた。
【0005】
また、前記従来の構成では、脱臭抗菌材を通気性の容器に収容して、汚水中に設置し、脱臭や除菌に用いた場合には、水中の臭気物質は、脱臭抗菌材中の活性炭により吸着され、さらに脱臭抗菌材中の銀が水中に溶出することにより、溶出した銀成分は、水中の菌に作用して菌の活性を低下させて、菌数を低減させることができるが、脱臭抗菌材は、全て水中に浸漬させて使用することになるため、脱臭抗菌材中の活性炭は、臭気物質だけでなく水分も吸着して吸着性能が低下し、また銀も水中での溶出が続くため、脱臭、抗菌性能とも短期間で低下してしまうという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、脱臭効果と抗菌効果を長期に渡って高いレベルで発現できる脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法は、吸着剤粒子と、光触媒粒子と、これらを固形化する結合助剤とを有して成形固化物とするとともに、成形固化物の一部を粒子状に戻すことができるようにしたものである。そして、粒子状の脱臭抗菌材を臭気発生源、雑菌汚染源に直接接触させるようにしたものである。
【0008】
これによって、固形化状態から部分的に粉体状態に戻して、必要な量の吸着剤粒子と光触媒粒子を、脱臭、抗菌の用途に活用でき、固形化状態においては、温度、湿度、コンタミなどの周囲環境の影響も受けないため、臭気発生源、雑菌汚染源の近傍に設置しても、脱臭、抗菌性能が低下することはなく、性能を長期に渡って保持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法は、脱臭効果と抗菌効果を長期に渡って高いレベルで発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、吸着剤粒子と、光触媒粒子と、これらを固形化する結合助剤とを有して成形固化物とするとともに、成形固化物の一部を粒子状に戻すことができるようにした脱臭抗菌材とすることにより、固形化状態から部分的に粉体状態に戻して、必要な量の吸着剤粒子と光触媒粒子を、脱臭、抗菌の用途に活用でき、固形化状態においては、温度、湿度、コンタミなどの周囲環境の影響も受けないため、臭気発生源や雑菌汚染源の近傍に設置しても、脱臭、抗菌性能が低下することはなく、性能を長期に渡って保持することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、光触媒粒子は、可視波長域の光に応答して酸化分解力を発現することにより、固形化状態から部分的に再粉化させた吸着剤粒子と光触媒粒子の混合粉体において、光触媒粒子は、屋外の自然光や、屋内の蛍光灯の光など、身近にある光源で酸化分解力を得ることができるため、紫外線灯など特殊な光源を必要とすることなく、容易に脱臭、抗菌効果を得ることができる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明における脱臭抗菌材の一部を粒子状に戻して、この粒子状の脱臭抗菌材を臭気発生源や雑菌汚染源に直接接触させるようにした脱臭抗菌方法とすることにより、粉体状態に戻した脱臭抗菌材が臭気発生源や雑菌汚染源に直接付着するため、粉体状態の脱臭抗菌材は静電気を帯びやすく、臭気発生源などに積極的に付着し、臭気や雑菌を直接的に吸着または分解する。例えば、臭気に対しては、気相中に放散してから除去する場合に比べ、臭気発生源をコーティングする形となるため、臭気の拡散も防げ、非常に効率よく脱臭効果を得ることができ、従来方式のように、臭気や雑菌が材料に接触するのを待つ方式と異なり、抜本的に臭気や雑菌の除去を行うこととなる。
【0013】
第4の発明は、特に、第3の発明において、脱臭抗菌材の粒子を接触させた臭気発生源や雑菌汚染源に対して、可視波長域の光を照射することにより、脱臭抗菌材が直接付着した臭気発生源や雑菌汚染源においては、付着している光触媒に可視波長域の光が照射されることにより、酸化分解力が発現し、光触媒表面に吸着または接触している臭気物質、雑菌は連続的に分解されていき、光照射を継続することで、臭気発生源や雑菌汚染源の内部まで完全に浄化されることになり、最大限の脱臭、抗菌効果を得ることができる。
【0014】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、粒子状の脱臭抗菌材を、電気掃除機の集塵室内に貯留する塵埃に直接接触させるようにしたことにより、任意の方法で脱臭抗菌材の再粉化物を集塵室内に散布し、塵埃に付着させ、塵埃由来の臭気は再粉化物中の吸着剤粒子により除去され、また、集塵室内に光を照射することにより光触媒粒子の酸化分解力が発現し、塵埃中の雑菌が低減され、この結果、電気掃除機の運転中の排気空気における衛生レベルが向上し、さらに集塵室の塵埃を廃棄する際でも臭気や雑菌が除去されているため衛生的に処理を行うことができる。
【0015】
第6の発明は、特に、第3または第4の発明において、粒子状の脱臭抗菌材を、生ゴミ処理機の処理容器内に貯留する生ゴミに直接接触させるようにしたことにより、特に、生ゴミの処理過程で発生する臭気を吸着剤粉体が吸着除去し、さらに処理物に対して光照射を行うことで光触媒の酸化分解力により脱臭効果がさらに高まる。
【0016】
第7の発明は、特に、第3または第4の発明において、粒子状の脱臭抗菌材を、水洗便器の貯水部内における排泄物に直接接触させるようにしたことにより、特に、便器内に拡散および貯水部に落下した吸着剤粒子が大便排泄物由来の臭気の拡散を抑え、さらに大便を排水後の貯水部に対しても改めて脱臭抗菌材を散布することにより、便所内の室内光や外部から流入する自然光などを光触媒が受けて酸化分解力が発現し、貯水中の雑菌や有機成分を分解し、異臭の発生や、貯水部の内壁の汚れ付着を防止することができ、便器内を常に衛生的に保つことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1における脱臭抗菌材とそれを設置した電気掃除機を示すものである。
【0019】
図1に示すように、脱臭抗菌材1は、吸着剤粒子2と、光触媒粒子3と、これらを固形化するための結合助剤4とを有して成形固化物とするとともに、成形固化物の一部を粒子状に戻すことができるようにしている。
【0020】
前記吸着剤粒子2としては、物理吸着作用を持つ活性炭、ゼオライトなど、また化学吸着作用を持つ二酸化マンガン、酸化銅、酸化コバルト、無機酸化物などを用い、脱臭対象の臭気の種類に応じて選択することで最良の脱臭効果を得ることができる。
【0021】
また、吸着剤粒子2として用いる原料の一次粒子径に関しては、30ミクロン未満のものを用いるのが好ましく、特に、脱臭特性、固形化時の寸法、臭気を発生する物質に対する付着性などに影響する、比表面積、嵩密度、帯電性などの物性を考慮すると、10ミクロン未満の粒子径の粉体を原料として用いると一層好ましい。
【0022】
前記光触媒粒子3としては、二酸化チタンを用いるのが好ましいが、二酸化チタンが表面の電子を励起させて酸化分解力を発現させるためには、波長382nm以下の紫外線波長の光エネルギーを照射する必要があり、このため紫外線ランプなど特殊な光源を必要とするので、自然光、室内光に多く含まれる400nm以上の可視波長域の光エネルギーを受けても酸化分解力を発現できる、可視光応答型の光触媒粒子3を用いると一層よい。
【0023】
前記可視光応答型の光触媒粒子3としては、可視波長域の光に応答性をもった元素を、二酸化チタンの構造中に添加したものが、可視波長域の光への応答性に優れている点で好ましく、窒素や、クロム、バナジウムなどを構造中に添加した光触媒粒子3を用いるとよい。この可視光応答型の光触媒粒子3を用いることにより、自然光や室内光の照射下で、酸化分解力を発現し、脱臭や抗菌効果を発揮させることができる。
【0024】
なお、光触媒粒子3として用いる原料の一次粒子径としては、前記吸着剤粒子2と同様に10ミクロン未満の粉体を用いるのが好ましい。
【0025】
前記結合助剤4としては、水ガラス、コロイダルシリカ、リン酸アルミニウムなどを用い、各種結合助剤4を組み合わせて使用し、原料への配合比を増減させて吸着剤粒子2、光触媒粒子3の混合原料を成形固形化して成形固形化物とし、脱臭抗菌材1を作製することで、固形後の脱臭抗菌材1に一定の切削応力を加えた際の再粉化量および脱臭材1の耐衝撃強度を最適化することができる。
【0026】
本実施の形態では、吸着剤粒子2としてゼオライト、光触媒粒子3として、窒素ドーピング型二酸化チタン、結合助剤4として、コロイダルシリカを使用し、ゼオライトと窒素ドーピング型二酸化チタンを7:3で混合した原料100重量部に対して、コロイダルシリカ20重量部を加水しながら添加し、混練後、角型状に成形し、150℃で乾燥後、続けて600℃で焼成し、質量20g、容積35ccの脱臭抗菌材1を得た。
【0027】
なお、前記ゼオライトは、一次粒子径が8ミクロンのものを、窒素ドーピング型二酸化チタンは、一次粒子径が10ナノメートルのものをそれぞれ使用した。
【0028】
以上のように、結合助剤4により固形化した脱臭抗菌材1は、結合助剤4が保護層の役目も果たすため、吸着剤粒子2、光触媒粒子3が、周囲の温度、湿度、各種ガスなどのコンタミの影響を受け、性能劣化することも防止でき、脱臭、抗菌性能を長期に渡って保持することが可能となる。
【0029】
さらに、前記作製方法により得られた脱臭抗菌材1は、図2に一例を示したような方法で簡単に元の粒子形態に必要な量だけ戻すことができる。
【0030】
図2に示す再粉化手段5は、脱臭抗菌材1に対して切削板6が四角枠内に複数枚均等に組み込まれた構成であり、切削板6の端面が脱臭抗菌材1に対する線接触部7となり、並んだ切削板6の上に脱臭抗菌材1を置き、例えば、図2の矢印に示すように、再粉化手段5を脱臭抗菌材1に対して剪断的に動かすことで、切削板6の線接触部7が脱臭抗菌材1の表面層を一定幅削り、削られた脱臭抗菌材1は、構造中の結合助剤4の結合を崩壊し、吸着剤粒子2および光触媒粒子3の粒子状態に戻りながら、切削板6間の隙間を通過して落下することとなる。
【0031】
なお、前記切削板6の材質に関しては、金属、樹脂、セラミックなどを用いることができ、耐久性の点より金属を用いるのがより好ましい。
【0032】
図3は、前記脱臭抗菌材1および再粉化手段5を搭載した電気掃除機を示し、電気掃除機の本体8内には、集塵室9および電動送風機10が配置されている。また、本体8前部には、集塵室9と連通して、吸引口11が開口しており、床面などから塵埃を吸引、導入するための吸引管12が接続されている。また、集塵室9の下流側には、除塵手段13が設置されており、さらに電動送風機10の前後にも同様に除塵手段13が設置されている。
【0033】
なお、前記集塵室9は、外部から集塵室9内に光を導入するため、透過性の樹脂を用いるのが好ましい。また、透過性樹脂を用いない場合は、集塵室9周囲に光源を組み込み、光を照射してもよい。
【0034】
掃除作業は、電動送風機10の作動により吸引風を発生させて、塵埃を吸引することにより、吸引管12を経て、塵埃が集塵室9に貯留し、吸引気流のみが各除塵手段13を通過して細塵が除去された状態で本体8外へ排出されることとなる。
【0035】
前記脱臭抗菌材1および再粉化手段5は、集塵室9より上流側に設置するのが効率よく塵埃と脱臭抗菌材1の再粉化物と接触するので好ましく、本実施の形態では、吸引管12の連通上部に、収納室14を設置し、収納室14内に脱臭抗菌材1が装填されている。なお、脱臭抗菌材1の装填作業は、固形体であるため、粉体のまま装填するのに比べ、使用者の手や衣服が汚れることなく、容易に装填作業が可能なのは言うまでもない。
【0036】
吸引管12内に面した収納室14の底部には、前記再粉化手段5が組み込まれており、図2に示したような剪断動作を、電気的に再粉化手段5を振幅させる振動手段15を用いて実行し、脱臭抗菌材1を定量的に再粉化することができる。以上の構成により、吸引された塵埃に、脱臭抗菌材1の再粉化物である吸着剤粒子2と光触媒粒子3を混合させることができる。
【0037】
以上のように構成された本実施の形態における脱臭抗菌材1を備えた電気掃除機を用いて、その効果について確認した。
【0038】
(実験例1)
上記の電気掃除機を用いて、実部屋の掃除を15分間行った。掃除完了後、電動送風機10を運転させたまま振動手段15を10秒間作動させて、脱臭抗菌材1を再粉化させて、吸着剤粒子2および光触媒粒子3を集塵室9に投入し、塵埃に混合させた。対照実験として脱臭抗菌材1無しの条件の通常の電気掃除機を用いての実部屋の掃除も15分間行い、この実部屋掃除を30日間続けた。排気臭気に対して官能的に意識しながら、掃除作業を継続した結果、脱臭抗菌材1投入無しの対照実験の電気掃除機は、7日目くらいから運転開始直後の排気の臭気が気になったが、本実施の形態の電気掃除機は、実験開始30日目の試験終了時点でも、運転開始時、運転中とも排気の臭気が気になることはなかった。
【0039】
次に、前記30日経過後の電気掃除機を、1mの密閉チャンバー内にセットし、1日静置したのち30秒間運転させた。チャンバー内の空気を男女混成の官能評価パネラー6名で臭い嗅ぎ官能評価を行った。結果は、本実施の形態では、平均の臭気強度が0.6であったのに対して、対照実験の脱臭抗菌材1無しの条件は、平均の臭気強度は3.0であり、定量的にも臭気強度が大幅に低減されていることを確認した。
【0040】
臭気強度1が臭いの検知閾値であることを考慮に入れると、本実施の形態では、臭気のない排気を実現している。
【0041】
以上の結果より、本実施の形態のように、脱臭抗菌材1を再粉化させて吸着剤粒子2および光触媒粒子3を、集塵室9内の塵埃に投入することにより、電気掃除機の運転時における排気の臭いを大幅に低減することができる。また脱臭抗菌材1は、固形化状態により、周囲環境の影響を受けず、部分的に再粉化して用いるため、常に最大限の脱臭性能を発揮できる。
【0042】
(実験例2)
実験例1の脱臭抗菌材1を搭載した電気掃除機の効果検証時において、掃除終了後、集塵室9内に天日または室内光が当たる位置に電気掃除機を放置し、この作業も30日間継続した。対照実験として、脱臭抗菌材1無しの電気掃除機も、光照射下に放置した。30日経過後、2台の電気掃除機の集塵室9内から塵埃を1g採取し、界面活性剤を含む滅菌水に分散させ、分散後の水溶液を、標準寒天培地上に0.2ml塗布し、35℃のインキュベーター内で40時間培養した。対照実験として、脱臭抗菌材1無しの塵埃も同様に培養した。
【0043】
結果は、対照実験に比較し、本実施の形態では、99%以上の菌数の低減が確認された。
【0044】
以上より、脱臭抗菌材1の光触媒粒子3の酸化分解力により塵埃中の雑菌が分解されることが確認できた。このように、脱臭抗菌材1の再粉化物を塵埃中に投入することで、再粉化物中の光触媒粒子3が、天日や室内の光照射を受けて、酸化分解力を発現し、抗菌効果を発揮するため、塵埃中の雑菌数は大幅に低減し、電気掃除機運転時の排気の衛生レベルを向上させることができる。また、脱臭抗菌材料1は、周囲環境の影響を受けない固形化状態のものから、必要量だけ再粉化して抗菌に用いるため、常に最大限の抗菌効果を発揮できる。
【0045】
このように、本実施の形態における脱臭抗菌材1の成形固形化した吸着剤粒子2と光触媒粒子1は、成分の大部分を大気と遮断することで、未使用時における温度、湿度、コンタミによる両材料の性能劣化を抑制でき、さらに必要に応じて、成形固形化物を部分的に再粉化させて、吸着剤粒子2と光触媒粒子1の粉体を取り出し、臭気発生源や雑菌汚染源に散布し、光を当てることで、吸着剤の吸着効果と、光触媒の酸化分解力の効果により、直接的に臭気の除去や、雑菌の増殖抑制、除菌などが行え、臭気や雑菌に対して根本から対策することができる。
【0046】
また、成形固形化物の一部のみを使用することで、全ての材料が一度に臭気や、雑菌に接触しないため、最小限の材料の使用量で、最大限の効果を継続的に得ることができる。
【0047】
また、さらに、微細な粉体に戻して使用するため、粉体が持つ静電気的な作用で、気相中においては臭気発生源や雑菌汚染源に散布された際に、接触的に付着し脱臭、抗菌効果を最大限に発揮でき、また、液相中においても、表面積の大きい微細粉体として投入されることで、有機物や、雑菌との接触率が高まり、処理後の液体を排水処理する場合でも、配管が詰まることもなく、簡単に処分することができるものである。
【0048】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における脱臭抗菌材1を設置した生ゴミ処理機を示すものである。
【0049】
図4において、生ゴミ処理機の本体16内には、生ゴミ処理用の処理容器17が設置されており、処理容器17の底部には、生ゴミを攪拌破砕する攪拌手段18が組み込まれている。ここで、開閉蓋19をあけて、処理容器17内に食べ物屑などの生ゴミを投入し、開閉蓋19を閉じた後、攪拌手段18を回転させ、加温、除湿しながら、生ゴミを乾燥、破砕し、減容化するものである。
【0050】
前記開閉蓋19内には、処理容器17に連通する形で実施の形態1と同様の脱臭抗菌材1および再粉化手段5が組み込まれており、任意に振動手段15を作動させて、処理容器17内の生ゴミに脱臭抗菌材1の再粉化物である吸着剤粒子2、光触媒粒子3を投入することができるようになっている。
【0051】
(実験例1)
上記の生ゴミ処理機を用いて、生ゴミ処理を行った。実験には、野菜、果物、魚などの食べ物の破片を合計200g投入し、8時間処理運転を行った。その間、脱臭抗菌材1を2時間に1回、振動手段15を20秒間運転して、再粉化物を生ゴミ中に投入した。対照実験として、脱臭抗菌材1投入無しの条件による同様の生ゴミ処理作業も実施した。
【0052】
生ゴミ処理機を設置している空間の空気を男女混成の官能評価パネラー6名で、臭い嗅ぎ官能評価を行った。結果は、本実施の形態では、平均の臭気強度が1.5であったのに対して、対照実験の脱臭抗菌材1無しの条件は、平均の臭気強度は3.8であり、生ゴミ処理時に発生する臭気が大幅に減少することを確認した。
【0053】
また、さらに、前記脱臭抗菌材1を継続的に使用して、合計10回の生ゴミ処理を実施し、同様に、臭い嗅ぎ官能評価を行った結果、10回目の生ゴミ処理時における本実施の形態においては、平均の臭気強度は1.7であり、開閉蓋19に設置されている脱臭抗菌材1が生ゴミ処理時に大量に発生する湿気や高濃度の臭気ガスに曝されても、固形化状態であれば性能低下は、起きないことも確認できた。
【0054】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態における脱臭抗菌材1を設置した水洗便器を示すものである。
【0055】
図5において、便器本体20内の底部には、所定の水位を確保した貯水部21を備えており、排泄物の一時保持空間となる。前記便器本体20の上部には、大便排泄時に使用する便座22と非使用時に便器本体20を覆う蓋24が設置されている。便器本体20の後部には、貯水タンク23が設置されており、便器本体20内の排泄物の廃棄および便器本体20内の洗浄用の水を貯水してあり、貯水タンク23内の水を一気に流出させる際の水圧を利用して、排泄物の下水への廃棄と便器洗浄が実施できる。
【0056】
また、便座22の後部には、便器本体20内に連通する形で、実施の形態1および実施の形態2と同様の脱臭抗菌材1を再粉化して投入する機構が組み込まれており、任意に振動手段15を作動させて、便器本体20内空間および貯水部21に脱臭抗菌材1の再粉化物である吸着剤粒子2、光触媒粒子3を散布投入することができる。
【0057】
(実験例1)
上記の水洗便器を用いて、大便の排泄行為を実施した。排泄行為時において、排泄直前または直後に、振動手段15を作動させて、脱臭抗菌材1を10秒間動作させて、所定量を再粉化させ、吸着剤粒子2および光触媒粒子3を便器本体20内および貯水部21に散布した。対照実験として、脱臭抗菌材1を散布しない大便の排泄行為も行った。
【0058】
排泄中のトイレ空間の空気を男性6名からなる排泄行為者兼官能評価パネラーで、臭い嗅ぎ官能評価を行った。結果は、本実施の形態では、平均の臭気強度が0.8であったのに対して、対照実験の脱臭抗菌材1無しの条件は、平均の臭気強度は3.0であり、脱臭抗菌材1の再粉化物を投入することで、処理時に発生する臭気が大幅に低減されていることを確認した。
【0059】
これは、発生した臭気が便器本体20内に散布されて一定時間滞留している吸着剤粒子2と効率よく接触、吸着されたのに加え、貯水部21中にも吸着剤粒子2が分散し、大便に付着することで、臭気の発生を抑えたことによる効果である。
【0060】
さらに、前記脱臭抗菌材1を継続的に使用して、合計30日間大便排泄毎に、臭い嗅ぎ官能評価を行った結果、30日間における本実施の形態の平均臭気強度は0.9であり、便器本体20近傍に設置されている脱臭抗菌材1が便器内の水分や排泄臭に曝されても、固形化状態であれば性能低下は起きないことも確認できた。
【0061】
(実験例2)
前記実験例1の検証作業の際、便器本体20内の水洗後、再度振動手段15を作動させて脱臭抗菌材1を再粉化させ、貯水部21に再粉化物を分散させ、便座22の蓋24を開放したままで、貯水部21に室内光などの光が照射されるようにした。対照実験として、脱臭抗菌材1無しでも同様の作業を実施した。
【0062】
翌日の排泄行為前に、本実施の形態および対照実験の貯水部21の水を10ml採取し、採取した水の内0.2mlを標準寒天培地上に塗布し、35℃のインキュベーター内で40時間培養した。
【0063】
その結果、本実施の形態では、対照実験と比較して、菌数が99%以上減少しており、貯水部21に散布された光触媒粒子3が可視光の光照射を受けて酸化分解力を発現し、抗菌効果を発揮していることを確認した。
【0064】
また、30日間継続して脱臭抗菌材1の貯水部21への散布および室内光の照射を行った結果、対照実験の貯水部21の内壁に黄色に変色したのに対して、本実施の形態では、変色がまったく起きていないことも確認され、光触媒粒子3の効果により、貯水の抗菌効果だけでなく、貯水部21内壁の汚れ防止効果もあることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかる脱臭抗菌材およびそれを用いた脱臭抗菌方法は、脱臭効果と抗菌効果を長期に渡って高いレベルで発現できるので、電気掃除機、生ゴミ処理機、水洗便器に限らず、さまざまな空間における脱臭抗菌用途に活用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態1における脱臭抗菌材の斜視図
【図2】同脱臭抗菌材の再粉化方法の一例を示す斜視図
【図3】同脱臭抗菌材を用いた脱臭抗菌方法を示す電気掃除機の断面図
【図4】本発明の実施の形態2における脱臭抗菌材を用いた脱臭抗菌方法を示す生ゴミ処理機の断面図
【図5】本発明の実施の形態3における脱臭抗菌材を用いた脱臭抗菌方法を示す水洗便器の断面図
【符号の説明】
【0067】
1 脱臭抗菌材
2 吸着剤粒子
3 光触媒粒子
4 結合助剤
5 再粉化手段
9 集塵室
17 処理容器
21 貯水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤粒子と、光触媒粒子と、これらを固形化する結合助剤とを有して成形固化物とするとともに、成形固化物の一部を粒子状に戻すことができるようにした脱臭抗菌材。
【請求項2】
光触媒粒子は、可視波長域の光に応答して酸化分解力を発現する請求項1に記載の脱臭抗菌材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱臭抗菌材の一部を粒子状に戻して、この粒子状の脱臭抗菌材を臭気発生源、雑菌汚染源に直接接触させるようにした脱臭抗菌方法。
【請求項4】
脱臭抗菌材の粒子を接触させた臭気発生源や雑菌汚染源に対して、可視波長域の光を照射する請求項3に記載の脱臭抗菌方法。
【請求項5】
粒子状の脱臭抗菌材を、電気掃除機の集塵室内に貯留する塵埃に直接接触させるようにした請求項3または4に記載の脱臭抗菌方法。
【請求項6】
粒子状の脱臭抗菌材を、生ゴミ処理機の処理容器内に貯留する生ゴミに直接接触させるようにした請求項3または4に記載の脱臭抗菌方法。
【請求項7】
粒子状の脱臭抗菌材を、水洗便器の貯水部内における排泄物に直接接触させるようにした請求項3または4に記載の脱臭抗菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35120(P2006−35120A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219729(P2004−219729)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】