説明

脱芒機の供給量制御装置

【課題】 枝梗処理するために処理室内の圧力を高めるが高過ぎると損傷粒を生じ、収穫機と同様の低い内圧であれば枝梗除去が促進されない。又、枝梗付着粒が混在する量や枝梗付着力の強弱によって処理室内の穀圧が変化し、処理能力が安定しない課題がある。
【解決手段】 ツースバーが植設された回転軸をシリンダー内に架設し、一側に供給口を設け他端に排出口を開設した脱芒機において、供給口1に可変自在のロータリーバルブ2を設け、側板3に開口する吐出口5に排出抵抗板6を対設し、該排出抵抗板6の開口度を検出する角度センサーS1を併設したり、シリンダー4に発生する摩擦熱を感知する温度センサーS3を装備して、前記ロータリーバルブ2の回転速度を変速可能にした脱芒機の供給量制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した穀物を精選処理装置に供給して、選別された枝梗付着粒や芒等を併設した枝梗処理装置によって単粒化する脱芒機の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、精選処理装置に併設された脱芒機の構造において、多数の処理棒を設けた回転軸をシリンダー内に架設し、該処理棒に対して受け歯を設置するとともに前記シリンダーの一側の上部に供給口を開設させ、他端に設けた排出口に抵抗板を回動自在に設けてウエイトを装備し、前記精選処理装置と脱芒機との間に穀粒量を調節する供給調節手段を設けたものがある(例えば特許文献1参照。)。又、精米タンクから玄米を供給する排出量を回転速度に比例して変化させるロータリーバルブを設け、予め設定された負荷電流値内に収まるように前記排出量を調整し、許容値内を維持するようにした精米機がある(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、前者は脱芒機に供給する調節手段を分岐した供給経路によって行い
、増加した供給量を別の経路に溢流させるものであり、後者はシリンダーの外周方向に設けた排出口の開口度と、精米時の負荷電流値を検出することによってロータリーバルブの回転速度を調節するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−276632号公報(第2−3頁、第3−4図)
【特許文献2】特開平07−308593号公報(第2−4頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
収穫機で除去できなかった芒と枝梗を除去するために処理室内の圧力を高めるが、高過ぎると損傷粒を生じ収穫機と同様の低い内圧であれば枝梗除去が促進されない問題点がある。又、供給される材料においても枝梗付着粒が混在する量や
、枝梗付着力の強弱によって処理室内の穀圧が変化し、処理量が安定しない課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解消する本発明は、ツースバーが植設された回転軸をシリンダー内に架設し、一側に供給口を設け他端に排出口を開設した脱芒機において、供給口に可変自在のロータリーバルブを設け、終端側の側板に開口する吐出口に排出抵抗板を回動自在に対設させ、該排出抵抗板の開口度を検出する角度センサーを併設して前記ロータリーバルブの回転速度を変速可能にし、シリンダー内の穀圧を高める供給量を一定に維持する制御装置を排出抵抗板に装備した。
【0006】
供給口に可変自在のロータリーバルブを設け、終端側の側板に開口する吐出口に排出抵抗板を回動自在に対設させて、シリンダー内の穀圧を調節可能にしたウエイトを設けるとともに該シリンダーの外周面に熱伝導体を張設し、これに温度センサーを設けて摩擦熱を検出し、前記ロータリーバルブの回転速度を変速可能にして供給量を安定させる制御装置にした。
【発明の効果】
【0007】
供給材料の変化に適応した穀圧の初期設定をウエイト10で行い、角度センサーS1の角度許容値X内で連続した枝梗処理が行える制御装置を設けたので、供給材料の変化に対して適応性が拡大するとともに、枝梗除去に適した処理室11内の穀圧にする吐出口5をシリンダー4の側板3に開設し、この高い室内圧力の調節を該排出抵抗板6の開口度で行ったり、穀圧とツースバー8が持ち回る処理物で生じる摩擦熱を熱伝導体40を介して検出し、ロータリーバルブ2の回転を変化させて前記処理室11内の穀圧を一定に維持する制御装置にしたので、連続した処理作業が安定して行え処理能力が向上するとともに、回転軸12に植設したツースバー8が処理室11の全幅に渡り作用する配置になり、枝梗の除去効果を一層促進させる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を精選処理装置に併設された脱芒機の実施例図を参照にして構造の概要を述べる。図1は脱芒機を断面した側面図であって、図2の要部を断面した正面図を併用して説明すると、枝梗処理装置Aの構造は、機体枠15の前後で支持した回転軸12にツースバー8を多数植設し、無孔のシリンダー4内で回転させるために軸端に入力プーリ16を固着してあり、該機体枠15の下方に装備した電動モータM1から受動するものである。このような該シリンダー4の側方上に供給口1を開口してホッパー20が連設され、インバーター付きの可変モータM2で駆動されるロータリーバルブ2を該ホッパー20の下方に設置し、回転速度の変化によって供給量を調節するとともに、終端側の側板3に設けた吐出口5を覆うように排出抵抗板6を対設した構成である。この排出抵抗板6の開閉度を調節するウエイト10が延出した調節ねじ棒28に螺合され、前後移動を行なって処理室11内の穀圧を最適状態に人為操作で設定できる調節構造にしたものである。
【0009】
異種穀粒を選別する精選処理装置33の粗選機(図示せず)から分別した枝梗付着粒等がホッパー20に投入され、ロータ羽根23を放射状に設けたロータリーバルブ2が回転して供給量を調節しながら無穴外筒のシリンダー4内を徐々に充満させ、穀圧を一定の設定値に高めて該枝梗付着粒をツースバー8で攪拌し、穀粒の相互干渉によって枝梗除去が行なわれ、終端側に設けた吐出口5に向けて移動するものである。処理された穀粒は、排出抵抗板6が設定された角度に開き流下樋37から取出しケース22を落下して、精選処理装置33に還流されて再選別を行い仕上がり穀粒として取出す選別経路にしたものである。
【0010】
この穀圧を調節する制御手段を図3のフローチャート図と図4に示す検出部の斜視図、図6に示すポテンションメータの正面図を併用して説明すると、交流電源13をスイッチボックス26で切替えて電動モータM1に通電し枝梗処理装置Aを起動させる。一方のスイッチ「ON」でインバーター27を介した可変モータM2が起動し、コントローラCに予め設定された角度許容値Xに排出抵抗板6が開口するまで、前記可変モータM2が規定回転でロータリーバルブ2を回転させ、処理室11に枝梗付着粒を供給し続けるが、前記角度許容値Xに該排出抵抗板6が開かない場合と、逆に開き過ぎる場合に調節ネジ棒28に螺合させたウエイト10を移動させて、前記角度許容値Xに収まる最適の処理状態に手動調節をする。この操作が供給材に対する初期設定である。
【0011】
このように調節された初期設定後に生じる穀圧の変動を制御する本発明の構成は、排出抵抗板6に併設した角度センサーS1によって行われ、回動する弁軸30の軸端に検出レバー31を固着し、該排出抵抗板6の開口度に応じて円弧状に回動するものであり、これに交叉するポテンションメータ32の指針34を機体枠15から延設し、コントローラCに設定した角度許容値Xに穀圧を保持するものであるが、下限値Hを下回る前記排出抵抗板6の開口度になると、該コントローラCからインバーター27に出力信号が発信されてロータリーバルブ2の回転数を増加させる。一方、上限値Lを越えると回転数が低下して供給量が減少し、排出抵抗板6の開口度が該角度許容値X内に誘導され、処理室11内の穀圧を一定に維持する自動制御装置にしたものである。
【0012】
連続作業を行う適正な穀圧が設定されていても、供給する材料の枝梗付着力の強弱が変化したり混入する枝梗比率が増減すると処理量が変動する場合があり、図3に示す如くホッパー20内の上方に穀粒量を検出する感圧センサーS2を設け、該ホッパー20の満了を検出した際にコントローラCを介して精選処理装置33からの投入穀粒を停止させ、詰まりの防止と供給材に変化が生じたことを知らせる構成にしてある。
【0013】
図5は角度センサーを設けた排出抵抗板の平面図であって、図6のポテンションメータの正面図と図1の側面図を併用して排出抵抗板の構造と角度設定について説明すると、ツースバー8の攪拌に伴う穀圧が直接作用するシリンダー4の外周面に排出抵抗板6を設けた場合は、強い押出し圧力の作用と圧力変動が発生して角度許容値Xの設定を難しくするので、この外周に設置することを回避して側板3の下方に吐出口5を開設したものであって、該穀圧の作用が弱くなる側圧方向に設けたことにより、枝梗処理を適正な穀圧状態で枝梗除去が行える脱芒機の構成にしたものである。
【0014】
又、吐出口5に至るシリンダー4の後端にテーパー状の傾斜溝35を設けて、排出抵抗板6に穀粒を誘導し易くするとともに、終端側で回転するツースバー8の先端と前記傾斜溝35の底面に間隔を設け、穀粒の緩衝体が形成されたことによって前記穀圧の変動が緩和し、排出抵抗板6の開口度を安定するようにした構成である。
【0015】
この吐出口5に接当する排出抵抗板6を回動自在に装着するために支持板36を側板3から延設し、該排出抵抗板6と一体化した弁軸30を嵌挿させて両側を支持し、連設した取出し用の流下樋37内で回動する開閉弁の構造にしたものである。この開閉角度の初期設定を行う調節は、前述したように排出抵抗板6から延設された調節ネジ棒28に螺合したウエイト10の移動で調節するものであり
、供給材料の変化に適応する最適位置に人為操作で初期設定を行い、その後の連続した枝梗処理作業に移行するものである。
【0016】
図7は温度センサーを設けたシリンダーの断面図であり、図8の側面図を併用して温度センサーを設けた脱芒機の構造を説明すると、前述した角度センサーS1に替えて温度センサーS3をシリンダー4の外面に装着したものであって、脱粒処理をする作業中の穀圧と、ツースバー8の先端で持ち回る処理物によって該シリンダー4の外周面に摩擦熱が生じる。この発熱した温度を感知する熱伝導体40を前記ツースバー8が矢印ロ方向に回転する上昇側に張設するとともに、処理室11の終端側に脱着自在に設置し、前記シリンダー4内で摩擦熱が最も高くなる位置で検出する温度センサーS3である。
【0017】
このような熱伝導体40を伝達効率の高い銅合金材等で成形し、磨耗による交換や整備点検を行い易くした固定ボルト41による脱着構造にしてあり、その外周面に温度センサーS3を付設して穀圧が高まる処理室11の後方位置における摩擦熱を感知し、機体枠15に別途装備した外気温センサーS4で外気温度を検出して、該温度センサーS3が感知した温度差をコントローラCに設定した温度許容値と比較演算し、設定値を越した場合にインバーター27に出力信号が発信され、図3のフローチャート図に示す如く可変モータM2を規定回転よりも減速させ、ローラリーバルブ2の回転低下にともない供給量が減少し、前記温度差を設定値に誘導して一定の処理能率を保持するようにした温度センサーS3による制御装置の実施例である。
【0018】
以上説明したように、供給材料の変化に適応した穀圧の初期設定をウエイト10で行い、角度センサーS1の角度許容値X内で連続した枝梗処理が行える制御装置を設けたので、供給材料の変化に対して適応性が拡大するとともに、枝梗除去に適した処理室11内の穀圧にするために、吐出口5をシリンダー4の側板3に開設し、高い処理室11内の穀圧状態を該排出抵抗板6の開口度によって創出したり、ツースバー8が持ち回る処理物で生じた摩擦熱を熱伝導体40で検出して、ロータリーバルブ2の回転数を変化させて前記処理室11の内部圧力を一定に維持する制御装置にしたので、連続した処理作業が安定して行え処理能力が向上するとともに前記ツースバー8が処理室11の全長に渡り作用する構成になり
、処理効果を一層促進させる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0019】
収穫機で処理できなかった芒や枝梗付着粒を単粒化させる精選処理施設や籾摺り精米プラントに装備する枝梗処理装置に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】脱芒機を断面した側面図である。
【図2】要部を断面した正面図である。
【図3】制御装置のフローチャート図である。
【図4】検出部の斜視図である。
【図5】角度センサーを設けた排出抵抗板の平面図である。
【図6】ポテンションメータの正面図である。
【図7】温度センサーを設けたシリンダーの断面図である。
【図8】温度センサーを設けたシリンダーの側面図である。
【符号の説明】
【0021】
S1・・角度センサー S2・・感圧センサー S3・・温度センサー
S4・・外気温センサー X・・角度許容値 L・・上限値
H・・下限値 C・・コントローラ M2・・可変モータ
1・・供給口 2・・ロータリーバルブ 3・・側板
4・・シリンダー 5・・吐出口 6・・排出抵抗板
8・・ツースバー 10・・ウエイト 12・・回転軸
20・・ホッパー 27・・インバーター 31・・検出レバー
32・・ポテンションメータ33・・精選処理装置 40・・熱伝導体
矢印イ・・排出抵抗板の開閉方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツースバーが植設された回転軸をシリンダー内に架設し、一側に供給口を設け他端に排出口を開設した脱芒機において、供給口(1)に可変自在のロータリーバルブ(2)を設け、終端側の側板(3)に開口する吐出口(5)に排出抵抗板(6)を回動自在に対設させ、該排出抵抗板(6)の開口度を検出する角度センサー(S1)を併設して前記ロータリーバルブ(2)の回転速度を変速可能にしたことを特徴とする脱芒機の供給量制御装置。
【請求項2】
ツースバーが植設された回転軸をシリンダー内に架設し、一側に供給口を設け他端に吐出口を開設した脱芒機において、供給口(1)に可変自在のロータリーバルブ(2)を設け、終端側の側板(3)に開口する吐出口(5)に排出抵抗板(6)を回動自在に対設させ、シリンダー(4)内の穀圧を調節可能にしたウエイト(10)を設けるとともに該シリンダー(4)の外周面に熱伝導体(40)を張設し、これに温度センサー(S3)を設けて摩擦熱を検出し、前記ロータリーバルブ(2)の回転速度を変速可能にしたことを特徴とする脱芒機の供給量制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−55753(P2006−55753A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240452(P2004−240452)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】