膵臓腫瘍を治療するための組成物および方法
本発明は、癌の治療において使用するのに適した抗原結合化合物を調製する方法、抗原結合化合物、およびそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓構造物に由来するグリコペプチド、抗体、および診断と治療におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管癌の20%超を占める膵外分泌部癌は、最も悪性度が高い癌形態の1つである。例えば、フランスでは、毎年4,000件の新しい症例が診断されている。さらに、その発生頻度は世界の多くの地域で著しく上昇している。生存率は1年目で20%を超えず、5年目には3%であり、診断後の平均生存は3〜4ヶ月である。この低生存率は、腫瘍の深い解剖学的位置、敏感で特異的な初期の生物学的マーカーの不在、およびその無症候性の性質が、実質的に常に遅い診断をもたらすという事実をはじめとする、多数の原因に由来する。さらに膵臓癌は、主に腹膜および肝臓転移の形成を通じて非常に迅速に進行する。目下、膵臓癌の治療のためには不十分な治療上の選択肢しかない。
【0003】
膵臓癌の治療のために、化学放射線治療および免疫療法の2つの異なるアプローチが研究されている。化学放射線治療の臨床試験としては、標準化学放射線治療計画へのゲムシタビンの追加が挙げられ、これは患者の全ての生存率をわずかに改善することが示されている。ゲムシタビンへのエルロチニブの追加はわずかな改善を提供する。一般に化学放射線療法はいくらかの肯定的結果を示しながらも、依然として芳しくない治療的選択肢である。
【0004】
免疫療法の臨床試験としては、膵臓癌細胞全体、可溶性VEGFまたはEGFR、MUCl、ガストリン、およびメソテリンに由来するペプチドを用いる直接的なワクチン接種が挙げられる。例えば、VEGF(ベバシズマブ)またはEGFR(セツキシマブ)に対する抗体を、ゲムシタビン、チロシンキナーゼ阻害剤(エルロチニブ)、微小管不安定化剤(タキソテール)、またはシクロホスファミド(シトキサン)などの薬剤と組み合わせることによる間接的免疫療法アプローチもまた試みられた。このような試行は進行中である。
【0005】
有用な診断および治療マーカー(例えばSpan−1、Du−Pan−2、CA19−9、CAR−3、CA242、およびCO−TL1)を同定する努力において、悪性の膵臓上皮細胞に対する多数のモノクローナル抗体が作り出されているが、ごく僅かなもののみが真に膵臓腫瘍細胞に対して特異的であり、それらの反応性は患者の遺伝子型に左右されることが多い(例えば、非特許文献1を参照)。したがってこのタイプのほとんどのマーカーは、膵外分泌部癌の効果的な診断または治療のための実質的利点を提供できなかった。
【0006】
以前の研究では、ヒト膵臓腫瘍細胞は、胆汁酸塩依存リパーゼ(BSDL)の癌胎児性形態であるFeto−Acinar膵臓タンパク質(FAPP)を過剰に発現することが示されており、これは16D10およびJ28グリコトープなどのいくつかのグリコトープの特異的発現をもたらすグリコシル化の変化と関連付けられている。膵臓腫瘍SOJ−6細胞の細胞膜に、モノクローナル抗体mAb16D10によって認識されるグリコトープに結合ずる32kDaのペプチドがあることもまた示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kawa et al. (1994) Pancreas; 9:692-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって当該技術分野で、膵外分泌部およびその他の形態の癌を治療するための新しいアプローチおよびツールに対する高い必要性がある。本発明は、これらおよびその他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、とりわけBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導でき、および/または増殖を遅らせることができ、細胞死をもたらし、またはそれらの成長および増殖を停止させるという驚くべき発見の結果である(本明細書全体を通して「BSDLまたはFAPP」という語句は排他的でなく、すなわち、それは「BSDLおよび/またはFAPP」または「BSDLおよびFAPP」もまた意味できるものとする)。アポトーシスがBSDLまたはFAPPに結合する抗体によって始動されると、結果として生じるプログラム化された細胞死は、少なくともカスパーゼ−3、カスパーゼ−9、カスパーゼ−8活性化および/またはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断により介在される。さらに、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の減少は、Baxタンパク質の増加と関連付けられており、カスパーゼ活性化がタンパク質のBcl−2ファミリーによって制御されることを示す。したがって、本発明の化合物は、特に、BSDLまたはFAPPを発現し、またはアポトーシスに感受性である(例えばカスパーゼ−3、−9、−8、PARPなどを発現する)、癌細胞のアポトーシスを誘導すること、および癌細胞を含んでなる癌にかかっている患者を治療することに有用である。本発明の化合物が細胞増殖を阻害する際、それは、例えば、GSK−3βを活性化することにより、例えばp53活性を増加させ、サイクリンD1レベルを低下させることにより、少なくともG1/Sで細胞をブロックすることによって生じる。したがって、本発明の化合物は、特に、BSDLまたはFAPPを発現し、p53またはGSK−3β介在G1/S細胞周期停止に感受性である、癌細胞の増殖を停止すること、または癌細胞を含んでなる癌にかかっている患者を治療することに有用である。
【0010】
重要なことに、本発明の化合物は、腫瘍細胞、特に、BSDLまたはFAPP発現膵臓腫瘍細胞を直接標的にし、アポトーシスを介してそれらの死を引き起こし、および/またはそれらの増殖を止めることができる。有意なことに、これらの効果は、化合物とBSDLまたはFAPPポリペプチドとの相互作用のみに依存するため、それらは「裸」の化合物(特に、抗体)、すなわち、毒性化合物で修飾または誘導体化されていない化合物についても生じることができる。さらに、化合物が抗体である場合、それらは、腫瘍細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)に依存せずに効果的に腫瘍細胞を標的にできる(しかしながら、ADCCは多くの箇所でも起こり、治療の有効性をさらに高めることが強調されるべきではある)。したがって、本化合物は、例えば、AIDSにかかっている患者、化学療法を受けている患者、または免疫抑制剤投与を受けている患者などの免疫系が損なわれている患者にとって特に有用である。
【0011】
本発明の化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞に特異的に結合し、それによりそれらのアポトーシスを誘導し、またはそれらの成長および増殖を阻害できる、いずれのタイプの分子(例えばポリペプチド、小分子)でありうるが、本発明の好ましい化合物は抗体である。二価のIgG抗体は、典型的にアポトーシスまたは細胞増殖阻害によって標的細胞数を直接減少させるだけでなく、Fc末端もまた含んでなり、十分な結合親和力を有してADCCを介した細胞死を誘導できることから、特に好ましい抗体は二価のIgG抗体である。さらに、特定の抗BSDLまたは抗FAPP抗体、特にIgM抗体などの多量体抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって迅速に内部移行される傾向にあり、それによりADCCを誘導する上で有効ではないことが知見されている。したがって、適切な抗体(BSDLまたはFAPP、最も好ましくは、抗体16D10によって認識されるFAPPエピトープを標的にする二価のIgG抗体)を選択することで、2つの独立した機序(アポトーシス誘導/細胞周期阻害およびADCC)を介することにより、BSDLまたはFAPP発現腫瘍細胞を標的とすることができる。したがって、これらの知見は、合わせて、とりわけ所望のアポトーシス促進または抗細胞増殖の特性、ならびに典型的にADCC誘導効果を有する、特に有効な抗原結合化合物、最も好まくは抗体を生成するのに予想外の方法を提供する。かかる抗原結合化合物、ならびに典型的な抗原結合化合物を生成し、使用する方法が記載される。
【0012】
本発明は、抗原結合化合物を使用する方法を提供し、例えば、本発明は、細胞死を誘導するか、または細胞増殖を阻害するための方法であって、細胞を誘導するか、または細胞増殖を阻害するのに有効な量におけるBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物に、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する癌細胞などの細胞を曝露することを含んでなる方法を提供する。本発明の目的では、「細胞増殖」は、細胞の成長または増殖のいずれの態様、例えば、細胞成長、細胞分裂、または細胞周期のいずれの態様を意味しうる。細胞は、細胞培養中、または例えば癌を患っている哺乳類などの哺乳類中のものであってもよい。本発明はまた、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する方法であって、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに有効な量の本明細書に記載されるごときBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物(例えば、外因性抗体)に、細胞を曝露することを含んでなる方法を提供する。したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドの発現によって特徴づけられる病状、例えば、膵臓癌にかかっている哺乳類を治療するための方法であって、本明細書で開示される抗原結合化合物の薬学的有効量を哺乳類に投与することを含んでなる方法を提供する。好ましい実施態様において、化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、それにより細胞のADCCを誘導するのに有効である抗体、例えば、二価のIgG抗体である。好ましい実施態様では、抗体は、例えば、SOJ−6細胞などのBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1、またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。
【0013】
本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合し、膵臓癌の治療に有用である、抗原結合化合物、特に、抗体を生成する方法を提供する。本方法を使用して生成される抗原結合化合物は、膵臓腫瘍細胞、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するその他のいずれの細胞、特に、抗体16D10によって認識されるBSDLおよび/またはFAPPポリペプチド上のエピトープを特異的に標的とすることができる。抗原結合化合物は、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を抑制することにより、ならびに、場合により結合のみにより広がった細胞の影響を中和することにより、免疫系による(例えばADCCを介した)破壊のためにそれらを標的とすることにより、および/または細胞を放射性同位体、毒素、または薬剤などの細胞毒性薬物と接触させることで直接傷害することにより、細胞増殖の病理学的影響を制限できる。BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する癌(またはBSDLまたはFAPP発現と関連付けられているその他の病状)の治療のために抗原結合化合物を使用する方法もまた、提供される。好ましい実施態様では、抗体は、例えば、SOJ−6細胞などのBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合の半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は16D10以外の抗体である。
【0014】
別の実施態様では、抗原結合化合物は、腫瘍細胞の死滅を誘導し、および/またはそれらの成長を停止できるため、例えば、膵臓癌などの腫瘍の容積を低下させ、または制限するために、例えば、外科的に切除または減量できる、またはできない腫瘍中で、または腫瘍が樹立し、または広がった膵臓癌中で、例えば、膵臓癌が少なくともI期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cm以下である、または膵臓癌が少なくともII期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmを超える、膵臓癌がII期癌に分類され、および/または癌が膵臓周辺の近傍組織内で成長し始めているが、近傍リンパ節内では成長していない、膵臓癌がIII期癌に分類され、および/または膵臓周囲の組織内に向かって伸びているかもしれない、または膵臓癌がIV期癌に分類され、および/または近傍臓器内に向かって伸びているような樹立した腫瘍中で、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドと結合する化合物を使用できる。膵臓癌はかなり進んだ進行段階で診断されることが多いため、上皮内癌を超えて進行した腫瘍中の腫瘍細胞を傷害し、または成長を止める能力は、かかる癌において顕著である。
【0015】
意義深いことに、特定の実施態様において、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物は、特に、抗体が使用される場合、免疫細胞介在性細胞傷害(例えば、ADCC)のみに依存しないため、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物は、不完全なまたは抑制された免疫系を有する患者において効果的に使用でき、および/または追加的抗腫瘍剤、特に免疫系に悪影響を及ぼすことが知られている治療薬と組み合わせて効果的に使用できることが予想される。例えば、免疫不全患者(例えば、HIV感染にかかっている)、免疫抑制薬を服用している患者(例えば、臓器移植後、または自己免疫障害の治療として)、または化学療法剤を服用している患者は、特にこのような化合物を用いた治療法の良好な候補である。
【0016】
さらに、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、アポトーシス促進または抗細胞増殖特性を有する本発明の抗原結合化合物は、膵臓腫瘍細胞の成長を根絶または停止できるため、それぞれのアポトーシス促進または抗細胞増殖活性が高められないように、アポトーシス促進化合物によっても、例えば、細胞が最初に成長停止を被り、次いで根絶されうるように、本明細書で提供されるインビトロおよびインビボの方法において、本明細書で開示される抗原結合化合物と、その他の抗細胞増殖および/またはアポトーシス促進剤とを併用することが所望されてもよい。
【0017】
したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合し、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害することができる抗原結合化合物を提供する。好ましくは、抗原結合化合物は、抗体16D10と同一のBSDLまたはFAPPポリペプチド上のエピトープに結合する。一実施態様では、抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの(例えば、単離されたグリコペプチドまたはそれを発現する細胞との)結合について、抗体16D10と競合する。一実施態様では、化合物は、抗体16D10以外の抗体である。
【0018】
本発明の方法の一実施態様では、抗原結合化合物により認識されるBSDLまたはFAPPポリペプチドは、BDSLのC末端ペプチドである。別の実施態様では、抗原結合化合物は、配列Ala Pro Pro VaI Pro Pro Thrを有する7個のアミノ酸とグリコシル化部位を有する一般的な不変部分を含んでなる、1つまたは複数の11個のアミノ酸の反復C末端ペプチド配列を含んでなり、またはからなるBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する。前記一般的な不変部分は、任意選択的に、いずれかの側にグルタミン酸によって置換されることが多いグリシンが隣接し、アミノ酸AspおよびSerをN末端側に含有する。
【0019】
好ましい実施態様では、抗原結合化合物は「裸」であり、放射性同位体、毒性ペプチドまたは毒性小分子で官能性が付与されていない(例えば「裸」の抗体)。別の実施態様では、抗原結合化合物は、細胞毒性抗原結合化合物であり、放射性同位体、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合化合物は、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。別の実施態様では、放射性同位体、毒性ペプチド、または毒性小分子は、抗原結合化合物に直接結合する。
【0020】
別の実施態様では、抗原結合化合物は、例えば、二価のキメラまたはヒト化抗体などの抗体である。このような一実施態様では、抗体は、抗体16D10の可変(抗原結合)領域を含んでなる。好ましい実施態様では、抗体はFc末端を含んでなる。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10によって特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1ナノモル濃度以下の結合親和力を有する。別の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞によって実質的に内部移行されないため、標的(BSDLまたはFAPP発現)細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる。別の好ましい実施態様では、抗体は低フコシル化される。
【0021】
したがって、本発明は、膵臓癌にかかっている患者を治療する方法であって、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する本発明に記載される抗原結合化合物の薬学的有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、患者を治療する方法であって、a)患者内の膵臓癌を評価する工程と、b)癌が、例えば、癌が樹立され、外科的に治療でき、外科的に治療できず、上皮内癌を超えて進行しており、および/または少なくとも2cmの直径を有し、および/または少なくともI期に分類されるような、癌細胞の傷害、細胞のアポトーシス誘導、または癌細胞の成長または増殖の阻害が必要である段階にあると判定された場合、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合して膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または成長または増殖を阻害できる抗原結合化合物(例えば、抗体)を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、化合物は、抗体、例えば、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる二価のIgG抗体(好ましくは、本実施態様およびその他の実施態様において、Fc末端を含んでなる)抗体である。
【0022】
一実施態様では、本発明は、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗原結合化合物の能力を試験する工程と、iii)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有すると判定された場合、抗原結合化合物を選択する工程と、場合によりiv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法を提供する。一実施態様では、工程iii)で選択される化合物は、抗体であり、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程iv)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらは、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。典型的に、工程ii)は、細胞、例えば、BSDLまたはFAPP発現細胞、好ましくは、SOJ−6細胞または膵臓癌にかかっている患者から採取された細胞のごとき腫瘍細胞が化合物が接触され、細胞の増殖または生存が評価され、標準的なアッセイに関し、公知のアポトーシスまたは細胞増殖/周期調節遺伝子の活性の解析も同時に行われることが多い。
【0023】
別の実施態様では、本発明は、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗体を試験する工程と、iii)細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力について抗体を試験する工程と、iv)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有し、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できると判定された場合、抗体を選択する工程と、場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に提供する工程を含んでなる、癌の治療で使用するのに適する抗体を生成する方法を提供する。一実施態様では、工程iv)で選択される抗体は、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程v)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。好ましい実施態様では、抗体はIgGである。さらに、抗体は、好ましくは、二価である。別の好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。
【0024】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療における使用に適する抗体を生成する方法であって、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗体を試験する工程と、iii)細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞による抗体の内部移行について試験する工程と、iv)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有し、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞によって実質的に内部移行されないと判定された場合、抗体を選択する工程と、場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、工程iv)で選択される抗体は、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程v)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。好ましい実施態様では、抗体はIgGである。さらに、抗体は、好ましくは二価である(Fc末端を含んでなる)。別の好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は低フコシル化される。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、i)多量のBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を生成する工程と、ii)前記多量の抗原結合化合物からのサンプルをアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について試験する工程と、iii)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有すると判定された場合、医薬および/または医薬の製造における使用のための量を選択する工程と、場合によりiv)ヒトへの投与のための量を調製し、場合により多量の選択された抗原結合化合物を薬学的に許容できる担体と一緒に配合する工程とを含んでなる方法を提供する。
【0026】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性能力について各抗原結合化合物を試験する工程と、iii)前記細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる抗原結合化合物を選択する工程と、iv)場合により抗原結合化合物をヒト投与に適するようにする工程と、および/または場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する細胞による抗体の内部移行が評価される追加的工程を含んでなり、工程iii)で選択された抗体が、BSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されないことを見いだすことで、癌の治療で使用するためのその適合性が確認される。別の実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する抗体の能力が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で選択される抗体が、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できることを見いだすことで、癌の治療で使用するためのその適合性が確認される。
【0027】
別の実施態様では、本発明は、抗原結合化合物を生成する方法であって、i)1人またはそれ以上の膵臓癌にかかっている患者から採取されたBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍細胞に特異的に結合する抗原結合化合物を提供する工程と、ii)1人またはそれ以上の膵臓癌にかかっている患者から採取された腫瘍細胞に対するアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗原結合化合物を試験する工程と、iii)抗原結合化合物が、1人またはそれ以上の患者から採取された腫瘍細胞の相当数のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する場合、抗原結合化合物をヒトへの投与に適するようにする工程と、iv)場合によりヒトに適する抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する細胞による抗体の内部移行が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で使用される抗体がBSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されないことを見いだすことで、膵臓癌の治療での使用するためのその適合性が確認される。別の実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する抗体の能力が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で使用される抗体がBSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できることを見いだすことで、膵臓癌の治療での使用するためのその適合性が確認される。
【0028】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、方法は、工程i)の前に、非ヒト哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒトIg遺伝子導入マウス)をBSDLまたはFAPPポリペプチドで免疫する工程を含んでなってもよい。別の実施態様では、前記方法は、工程i)の前に、(例えば、ファージディスプレイ方法およびこの類似方法を介して)抗原結合化合物のライブラリーを作成し、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物を選択する工程を含んでなる。
【0029】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、工程i)および/または工程ii)の抗原結合化合物または抗体は、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まない。
【0030】
各抗原結合化合物または抗体が細胞のアポトーシスを誘導し、またはその増殖を阻害する能力を試験する工程は、多様な利用できるいずれかの方法に従って実施できる。例えば、前記試験する工程は、標的細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞)の死滅を検出し、核断片化を検出し、(例えばmカスパーゼ活性化などの)活性を検出し、またはアポトーシスに関与するタンパク質レベルの増加および/または低下を検出する工程を含んでなってもよいが、これらに限定されるものではない。同様に、細胞の成長または増殖に影響を与える化合物を試験する工程は、例えば、細胞数、密度、DNA複製、分裂指数の計測、細胞成長または増殖に関与するタンパク質またはその他の分子のレベルの測定、または細胞成長または増殖のいずれのその他の測定などの多様な利用できる方法のいずれかに従って実施できる。
【0031】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、アポトーシス促進または抗細胞増殖活性を試験する工程は、抗原結合化合物がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または成長または増殖を阻害するかどうかを判定する工程を含んでなる。場合により、細胞は、脂質ラフト中でBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する。場合により、細胞は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するようにされる。場合により、細胞は腫瘍細胞系である。場合により、細胞は膵臓癌細胞であり、場合により、SOJ−6細胞である。場合により、細胞は、例えば、膵外分泌部癌などの癌がある患者から採取された腫瘍細胞である。
【0032】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するかどうか判断する工程を免疫エフェクター細胞、特にNK細胞の不在下で実施できる。
【0033】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、アポトーシス促進または抗細胞成長または増殖活性を試験する工程は、抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞内で、アポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質またはマーカーの活性またはレベルを調節するどうかを判定する工程を含んでなる。好ましくは、アポトーシスについては、調節タンパク質はカスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである。細胞成長または増殖については、調節タンパク質またはマーカーは、例えば、PCNA、Ki−67、サイクリンD(例えば、サイクリンD1)などのサイクリン、E2F、Rb、p53、MCM6、GSK−3β、Bcl10またはBrdU組み込みである。
【0034】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物をヒトへの投与に適するようにする工程は、抗BSDLまたはFAPP抗体をキメラ、ヒト、またはヒト化する工程を含んでなる。化合物をヒトへの投与に適するようにする工程はまた、化合物を薬学的に許容できる担体と共に処方する工程を含んでなることもできる。
【0035】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、多量の抗原結合化合物を生成する工程は、適切な培地中で抗原結合化合物を発現する細胞を培養し、抗原結合化合物を回収する工程を含んでなる。場合により、細胞は、抗原結合化合物を発現するように作成された組み換え宿主細胞である。一実施態様では、化合物はモノクローナル抗体であり、細胞はハイブリドーマである。
【0036】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物、特に、本方法によって生成された抗原結合化合物は、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まない。一実施態様では、抗原結合化合物はBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体である。本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物はBSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。本発明のいずれかの方法の一実施態様では、化合物は、16D10以外の抗体である。本発明のいずれかの方法の別の実施態様では、化合物は、抗体16D10のキメラ、ヒト、またはヒト化バージョンである。
【0037】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物、好ましくは、抗体は、Fc受容体結合部分、好ましくは、IgGアイソタイプの重鎖定常部、場合により、ヒトIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する。好ましい実施態様では、抗体はIgG1抗体である。本発明はまた、(例えば、それは親の抗体と同一の抗原に結合できる)実質的に同一の抗原特異性および活性を有する抗体の断片および誘導体も包含する。このような断片としては、Fab断片、Fab’2断片、CDR、およびScFvが挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物が抗体である場合、抗体は、典型的に、例えば、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一の好ましい実施態様では、抗体は、組み換えキメラ抗体である。一のかかる実施態様では、抗BSDLまたはFAPP抗体、例えば、16D10のマウス重鎖の領域Cu2、Cu3、およびCu4は、ヒトIgG、例えば、IgG1により置換される。別の好ましい実施態様では、抗体は、マウス抗BSDLまたはFAPP抗体、例えば、16D10の定常部が、重鎖および軽鎖の両方についてヒトIgG1定常部により置換されるキメラ抗体である。
【0038】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、多量体(すなわち架橋)IgG抗体である。好ましい実施態様では、抗体は、四量体(2つの重鎖および2つの軽鎖)であり、それにより二価である。特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる。特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき、あるいはBSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されない。その他の特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき、BSDLまたはFAPPを発現する細胞の細胞介在性傷害(ADCC)もまた誘導できる。別の特に好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される組織と交差反応しない。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の表面に対して、少なくとも40、50、60、70、80、100、120、150、200分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ(例えば、16D10によって認識されるエピトープ)に対して50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。
【0039】
別の実施態様では、本発明は、本発明のいずれかの方法に従って生成された抗原結合化合物を包含する。
【0040】
本発明はまた、抗原結合化合物のいずれかを含んでなる医薬製剤も包含し、特に本発明の抗体のいずれかと薬学的に許容できる担体とがキットとして提供される。キットは、例えば、膵臓癌の治療におけるその使用に関する説明書および化合物を含んでなってもよい。キットは、化合物および担体を含んでなってもよく、キットは製造された(例えば、ガラス、プラスチックなどの)容器中に化合物を含んでなってもよい。抗体を発現する細胞、例えば、ハイブリドーマもまた包含される。
【0041】
一実施態様では、本発明の抗原結合化合物または抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。本発明はまた、抗体16D10と実質的に同じ抗原特異性および活性を有する抗体の断片および誘導体も包含する(例えば、親の抗体と同一の抗原に結合できる)。このような断片としては、Fab断片、Fab’2断片、CDR、およびScFvが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
一実施態様では、本発明の組成物および/または方法は、抗体16D10、特に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された細胞によって産生されるIgM抗体16D10を特異的に除外する。
【0043】
したがって、別の実施態様では、本発明は、抗体、好ましくは、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる単離された抗体を提供し、前記抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合し、抗体は16D10ではない。
【0044】
別の実施態様では、本発明は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含んでなる二価の抗体を提供し、重鎖は、Fc受容体に結合できるIgG重鎖定常部を含んでなり、抗体は、(a)BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき;(b)BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導でき;(c)BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。
【0045】
別の実施態様では、本発明は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に由来して、ヒトIgG鎖定常部と融合する1つ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる重鎖、および(b)配列番号8のアミノ酸配列に由来して、場合によりヒトカッパ鎖定常部と融合する1つ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる軽鎖を含んでなる、二価の抗体を提供する。
【0046】
場合により、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されないことにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できることにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まないことにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できることにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞中で、アポトーシス調節タンパク質の活性またはレベルを調節できることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、カスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーの活性またはレベルを調節できることにより特徴づけられる。別の実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞中で、細胞増殖または成長調節タンパク質の活性またはレベルを調節する。別の実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞において、GSK−3β、サイクリンD1、およびp53からなる群から選択される細胞増殖または成長調節タンパク質の活性またはレベルを調節する。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、IgGアイソタイプ、場合によりヒトIgGまたはIgG1アイソタイプの重鎖定常部を有することにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、四量体であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、二価であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、低フコシル化されることにより特徴づけられる。
【0047】
本明細書で述べられている抗体のいずれかの一実施態様では、抗体は、少なくとも40、60、80、100、120、180、240分以上の半減期で、BSDLまたはFAPP発現細胞の表面に結合する。別の実施態様では、抗体は、少なくとも50、40、30、20、10、5、または1ナノモル濃度の結合親和力でBSDLまたはFAPPエピトープに結合する。
【0048】
本発明はまた、本明細書で述べられている抗原結合化合物または抗体のいずれかと、薬学的に許容できる担体とを含んでなる医薬組成物も包含する。他の態様では、本発明は、本発明の抗原結合化合物または抗体と、膵臓病変またはFAPPまたはBSDLを発現する病変、例えば、膵臓癌の治療または診断における前記抗原結合化合物または抗体の使用のための説明書とを含んでなるキットを包含する。別の実施態様では、細胞、例えば、ハイブリドーマもまた提供される。
【0049】
その他の態様では、癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害し、および/または癌にかかっている患者または個体を治療する方法であって、a)癌または癌細胞がアポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するかどうかを判定する工程と、およびb)癌または癌細胞がアポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するという陽性判定の場合、癌細胞を有効量の本発明の抗原結合化合物のいずれかに接触させる工程を含んでなる方法が提供される。なお別の態様では、本発明は、癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害し、および/または癌にかかっている患者を治療する方法であって、a)癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するかどうかを判定する工程と、b)癌または癌細胞がBSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現するという陽性判定の場合、癌細胞を有効量の上記請求項のいずれか1つに記載の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。場合により、これらの方法では、癌細胞を接触させる工程は、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる。好ましくは、薬学的有効量は、患者において癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに効果的な量である。場合により、これらの方法では、化合物は、抗体であり、方法は、抗体のBSDLまたはFAPP発現細胞による内部移行が評価され、または抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力が評価される追加的工程を含み、当該工程中、抗体が実質的に内部移行されず、またはBSDL−および/またはFAPP−発現細胞の細胞介在性傷害を誘導できるという判定が、抗体が工程b)における使用に適することを示す。特定の実施態様では、接触させる工程は、例えば、このような方法が生体外で実施される場合、またはそれらが免疫不全にかかっている患者(例えば、AIDSなどの病状、NK細胞レベルを低下させる病状、化学療法剤の投与、または例えば組織移植手順または自己免疫障害の治療に併用される免疫抑制剤の使用に起因する)において実施される場合、免疫エフェクター細胞、例えば、NK細胞の不在または相対的不足下で実施される。
【0050】
他の態様では、本発明は、患者において腫瘍容積を低下させる方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0051】
他の態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞、場合により腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する方法であって、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに有効量で、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。場合により、前記接触させる工程は、免疫エフェクター細胞、例えば、NK細胞の不在または相対的不足下で、および/または生体外で実施される。場合により、前記方法は、抗原結合化合物が細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できるかどうかを判定する工程をさらに含んでなる。場合により、化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、および/またはBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる抗体であり、上記接触させる工程は免疫エフェクター(例えばNK)細胞の存在下で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、mAb 16D10がSOJ−6細胞のアポトーシス細胞死を刺激する能力を実証する(RPMIおよびマウスIgMとの比較;y軸はアポトーシス細胞数/cm2を表す)。
【図2】図2は、カスパーゼ阻害剤(カスパーゼ9:Z−LEHD−fmk、カスパーゼ8:Z−IEDT−fmk、カスパーゼ3:Z−DEVED−fmk、およびカスパーゼミックス:Z−VAD−fmk)ありまたはなしで前処理され、次にmAb 16D10を用いて処理された膵臓SOJ−6細胞について、CaspAce FITC−VAD−fmkを用いて測定された16D10によるアポトーシス誘導を示す。mAb 16D10は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9を通じてアポトーシスを刺激する。
【図3】図3は、DAPI染色により観察されるmAb 16D10によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスを示す。RPMIは細胞にアポトーシスを誘導せず、シスプラチンは低レベルのアポトーシスを誘導し、抗体16D10は顕著なレベルのアポトーシスを誘導した。
【図4】図4は、16D10による細胞処理が、Baxタンパク質の増加と関連付けられている、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2減少を誘導することを実証するゲル上の結果を示し、カスパーゼの活性化がBcl−2ファミリータンパク質によって制御されていることを示す。実験はまた、16D10の誘導するアポトーシスが、カスパーゼ8および9、およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断を通じて介在されることも実証した。左端のレーンはRPMI中のSOJ−6細胞を表し、中央のレーンは抗体16D10と共にインキュベートされたSOJ−6細胞を表し、右端のレーンはシスプラチンと共にインキュベートされたSOJ−6細胞を表す。
【図5】図5は、ヒトBDSL/FAPPを認識するポリクローナル抗体pAbL64の濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴う、MTTアッセイの結果を示す。pAbL64は細胞の成長または数の低下を引き起こせない(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図6】図6は、ヒトBDSL/FAPPを認識するが、本発明者らによって抗体16D10からのBDSL/FAPP上の異なるエピトープに結合することが実証されている、ポリクローナル抗体J28の濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。J28は細胞の成長または数の低下を引き起こすことができる(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図7】図7は、ヒトBDSL/FAPPを認識するポリクローナル抗体16D10(IgM)の濃度増加によるSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。図7は、16D10が16D10抗原を発現しないPANC−1細胞の成長または数の低下を引き起こせないが、FAPPを発現するSOJ−6細胞の低下を引き起こすことを示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図8】図8は、対照IgM抗体がPANC−1またはSOJ−6細胞のどちらの成長または数の低下も引き起こせないことを示す、対照IgM抗体の濃度増加によるSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図9】図9は、16D10が細胞の減少を引き起こすのに対し、対照IgM抗体は引き起こさないことを実証する、抗体16D10または対照IgM抗体どちらかの濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図10】図10は、16D10または対照IgM抗体のどちらかの抗体の濃度増加、および抗体16D10なしまたはありの様々な濃度のメチル−b−シクロデキストリン(MBCD)によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。MBCDは16D10と組み合わせて使用すると、抗体16D10の細胞成長阻害活性を低下させまたは無効にする。このデータは、アポトーシス細胞死を刺激するmAb 16D10の能力が、膜脂質ラフトミクロドメイン中の16D10抗原の局在性に依存することを示唆する。
【図11】図11:mAb 16D10はG1/S相において細胞周期進行を停止させ、p53、サイクリンD1、およびGSK−3βの発現を制御する。等量の細胞溶解産物(50μg)をSDS−PAGEに装填し、ニトロセルロースに転写して、mAb 16D10による処理後、特異的抗体(p53、サイクリンD1、ホスホ−GSK−3β、およびGSK−3β)でプローブした。内部対照としてβ−アクチンを使用した。各実験は三連で実施した。
【図12】図12:膜ラフト構造の解体は、mAb 16D10の効果を低下させる。SOJ−6細胞を8000細胞/ウェルで接種して、一晩成育させた。培地を6時間にわたり、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)またはフィリピン(A)またはスフィンゴ糖脂質生合成の代謝阻害剤(B)を含有する新鮮な培地によって置換し、次に抗体と共に含有される不活性化FBSがある新鮮な培地によって置換した。細胞生存度をMTTアッセイによって判定した。結果を3つの独立した実験の平均±SDで表す。
【図13】図13:SOJ−6およびPANC−1細胞中のE−カドヘリン/β−カテニン複合体に対するmAb 16D10処理の効果。SOJ−6細胞を25μg/mlのmAb 16D10ありまたはなしで24時間にわたり処理した。等量の細胞溶解産物(50μg)をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースに転写して、特異的抗体(抗ホスホ−β−カテニン、抗β−カテニン、抗E−カドヘリン、および抗β−アクチン)でプローブした。
【図14】図14は、抗体16D10がSOJ−6細胞上に見られる抗原に結合することが判明したことを実証するフローサイトメトリーの結果を示す。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【図15】図15は、抗体16D10がPANC−1細胞上に見られる抗原に結合しなかったことを実証するフローサイトメトリーの結果を示す。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【図16】図16は、HEK293T細胞中における二価の16D10キメラ抗体生成で使用されるストラテジーを示す。
【図17】図17は、VH、CH1、IgG1−Fc、およびVLおよびCk配列を表示する、16D10 VHおよびVLクローニングストラテジーを示す。
【図18】図18は、SOJ−6細胞増殖に対する16D10およびRec16D10処理の効果を示す。
【図19】図19は、Rec16D10介在NK細胞活性化を試験するのに使用されるストラテジーを示す。
【図20】図20は、Rec16D10によるNK細胞に対するCD107動員の誘導を示す。
【図21】図21は、Rec16D10によるNK細胞に対するIFN−γ分泌の誘導を示す。
【図22】図22は、Rec16D10とその他の抗体を使用した組織交差反応研究の結果を示す。
【図23】図23は、ネキシンVおよびV/PI染色により観察される、組み換えキメラIgG1 16D10抗体によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスを示す。細胞はそれだけでは低いまたは皆無のアポトーシスを被り、ツニカマイシン、IgM抗体16D10、およびIgG1抗体16D10のそれぞれは顕著なレベルのアポトーシスを誘導する。
【図24】図24は、VH−16D10−HuIgG1およびVL16D10−HuIgLカッパの配列をそれぞれ示す。CDR1、2、および3は、各配列について太字で示す。可変部配列は各配列について下線で示し、残りの配列はそれぞれヒトIgG1およびカッパタイプの定常部配列に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
定義
本明細書で用いられるように、以下の用語は、特に断りのない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0054】
「抗体」という用語は、本明細書で用いられるように、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体をいう。重鎖中の定常ドメインのタイプ次第で、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要クラスの1つに配される。これらのいくつかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのサブクラスまたはアイソタイプに分割される。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含んでなる。各四量体は2つの同一ペアのポリペプチド鎖から構成され、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。したがって、四量体、例えば、IgG四量体は、2つの抗原認識部位を有するので「二価」である。このような二価の四量体、特にIgG四量体は、(抗体がFc末端を含み、それによりFc受容体に結合できさえすれば)抗増殖/アポトーシス促進活性の両方を有して、標的細胞のADCCを誘導できるので本発明において好ましい。各鎖のN末端は、主として抗原認識の役割を担う、アミノ酸約100〜110個またはそれ以上の可変部を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖をいう。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」、および「μ」と称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置についてはよく知られている。IgGおよび/またはIgMは本発明で用いられる好ましいクラスの抗体であり、IgGが生理学的状況において最も一般的な抗体であり、実験室環境で最も容易に作製されることからIgGが特に好ましい。さらに、IgM抗体などの多量体抗体は、IgG四量体などの四量体形態よりも迅速に内部移行されることが知見されており、それにより腫瘍細胞の(ADCCを介した)免疫細胞介在性の標的化を誘導する効果が弱い。IgG四量体はより特異的でもあり、すなわち多量体IgM抗体よりも非特異結合が少ない。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。特に好ましいのは、ヒト化、キメラ、ヒト抗体、あるいはヒトに適する抗体である。「抗体」はまた、本明細書で述べられている抗体のいずれの断片または誘導体を含む。
【0055】
「特異的に結合する」という用語は、組み換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、または関連する標的細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞など)の表面に存在する天然タンパク質のいずれかを用いて評価されるごとく、抗原結合化合物または抗体が、好ましくは、競合的結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドと結合できることを意味する。特異的な結合を判定するための競合的結合アッセイおよびその他の方法については、以下でさらに詳しく述べられ、当該技術分野でよく知られている。
【0056】
「ヒトに適する」抗体とは、例えば、本明細書で述べられる治療方法のために、ヒトにおいて安全に使用できる、いずれの抗体、誘導体化抗体、または抗体断片をいう。ヒトに適する抗体としては、全てのタイプのヒト化、キメラ、または完全ヒト抗体と、あるいは、少なくとも抗体の一部がヒトに由来するか、または天然の非ヒト抗体が使用される場合に一般に誘導される免疫応答を回避するように改変されたいずれかの抗体とが挙げられる。
【0057】
「毒性」または「細胞毒性」ペプチドまたは小分子は、細胞増殖を減速、停止、または逆転でき、あらゆる検出可能な様式でそれらの活性を低下させることができ、または直接または間接的にそれらを傷害するいずれの化合物を包含する。好ましくは、毒性または細胞毒性化合物は、細胞を直接傷害することにより、アポトーシスを誘導することにより、または別の方法により作用する。本明細書で用いられるように、毒性「ペプチド」は、非天然アミノ酸または修飾結合を有するペプチド−またはポリペプチド−誘導体を含む、あらゆるペプチド、ポリペプチド、またはそれらの誘導体が挙げられる。毒性「小分子」としては、好ましくは10kD、5kD、1kD、750D、600D、500D、400D、300D、またはより小さなサイズのあらゆる毒性化合物またはエレメントが挙げられる。
【0058】
「免疫原性断片」とは、本明細書では、(i)膜結合受容体およびそれに由来する変異体をはじめとする、前記断片に結合する抗体、および/または前記断片を含んでなるあらゆる形態の分子に結合する抗体の作成、(ii)MHC分子と前記断片に由来するペプチドとを含んでなる二分子複合体と反応するT細胞に関するT細胞応答の刺激、(iii)哺乳類の免疫グロブリンをコードする遺伝子を発現するバクテリオファージまたは細菌などの形質移入されたビヒクルの結合などの免疫応答を誘導できるいずれのポリペプチド断片またはペプチド断片を意味する。代替的に、免疫原性断片はまた、共有カップリングによってキャリアタンパク質に抱合されたペプチド断片、前記ペプチド断片をそのアミノ酸配列中に含んでなるキメラ組み換えポリペプチド構築物、および配列が前記断片をコードする部分を含んでなるcDNAで形質移入された細胞を含む、上で定義される免疫応答を誘導できるいずれの構築物もいう。
【0059】
本発明のために、「ヒト化」抗体とは、1つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリンの定常および可変フレームワーク領域が、動物免疫グロブリンの結合領域、例えば、CDRと融合される抗体をいう。かかるヒト化抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性が維持されるが、非ヒト抗体に対する免疫反応が回避されるように設計される。
【0060】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変部)が、異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常部と、またはキメラ抗体、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに新しい特性を付与する全く異なる分子と結合するように、定常部またはその一部が改変、置換または交換されている抗体分子、または(b)可変部またはその一部が、異なるまたは改変された抗原特異性を有する可変部で改変、置換または交換されている抗体分子である。
【0061】
「ヒト」抗体とは、抗原投与に応じて特定のヒト抗体を産生するように「改変された」遺伝子導入マウスまたはその他の動物から得られる抗体である(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するGreen et al. (1994) Nature Genet 7:13; Lonberg et al. (1994) Nature 368:856;Taylor et al. (1994) Int Immun 6:579を参照のこと)。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体のトランスフェクション法、ならびにファージディスプレイ技術によっても構築でき、それらは全て当該技術分野で知られている(例えばMcCafferty et al. (1990) Nature 348:552-553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によっても作り出される(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するU. S. Pat. Nos. 5,567,610および5,229,275を参照のこと)。
【0062】
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態に見出されるように、通常、それに付随する構成要素を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。純度および均質性は、典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して調べられる。調製物中に存在する主な化学種であるタンパク質が実質的に精製される。
【0063】
「生物学的サンプル」という用語は、本明細書で用いられるように、生物学的な液体(例えば、血清、リンパ液、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄または膵臓生検)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーをいう。前記用語は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工化学模倣剤であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0065】
「組み換え」という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関連して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが異種の核酸またはタンパク質の導入または天然核酸またはタンパク質の改変によって修飾されていること、または細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。それゆえ、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然(非組み換え)形態内では見出されない遺伝子を発現し、または異常に発現され、過小発現され、または全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0066】
抗原結合化合物を生成する一般法
「抗原結合化合物」という用語は、その他の化合物よりも高い親和性で、および/または非BSDLまたはFAPPポリペプチドを超える特異性または選択性で、抗原、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチド(または本明細書で定義されるような糖鎖変異体(glycovariant)またはその他の変異体またはその誘導体)に特異的に結合する分子、好ましくはタンパク様分子をいう。抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドと優先的に結合する、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、または小分子量化合物であってもよい。好ましい実施態様では、本発明による特異的な結合薬剤は、単独で、または公知技術により供されるその他のアミノ酸配列と組み合わせた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、「裸」抗体、ならびにそれらの断片、変異型または誘導体である。
【0067】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物は、いずれかの適切な方法を使用して得ることができる。BSDLまたはFAPPポリペプチドに対するそれらの結合は、一般に、アポトーシスを誘導するか、または細胞増殖を阻害するそれらの能力(例えば、直接的な細胞傷害、アポトーシス調節経路を介したシグナル伝達、核断片化、細胞増殖の阻害、細胞周期の阻害)を評価する前に試験されるが、試験は、例えば、アッセイおよび関連する抗原結合化合物の性質による都合に応じて、あらゆる適切な順序で実施できるものと理解される。本発明の化合物は、BSDLまたはFAPP結合活性について、またはアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について、あらゆる適切な手段を用いて、例えば、多数の分子をスクリーンするハイスループットスクリーニングを用いて、同定することができる。代案としては、例えば、所望の特性を有する既知の化合物に関連する化合物の小数のグループまたはその誘導体などのより少数の分子または個々の分子でさえも調製して試験できる。
【0068】
化合物の活性試験
抗原結合化合物が得られると、一般に、標的細胞と反応し、その活性に影響し、および/またはそのアポトーシスを誘導し、またはその増殖を阻害するその能力について、評価する。抗原結合化合物が標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力を評価することは、方法のあらゆる適切な段階で実施でき、実施例が本明細書で提供される。このアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力の評価は、治療に使用するための抗体(またはその他の化合物)の同定、生成および/または開発に関わる様々な1つまたはそれ以上の工程において有用でありうる。例えば、アポトーシス促進または抗細胞成長/増殖の活性は、候補の抗原結合化合物を同定するスクリーニング法の中で評価されてもよく、あるいは、抗原結合化合物が選択され、ヒトに適するようにし(例えば、抗体の場合、キメラまたはヒト化する)、抗原結合化合物を発現する細胞(例えば、組み換え抗原結合化合物を発現する宿主細胞)が得られ、機能的な抗体(またはその他の化合物)を産生するその能力について評価し、および/または多量の抗原結合化合物が生成され、(例えば、製品のバッチまたはロットを試験するための)活性について評価する方法において評価されてもよい。一般に、抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合することが知られている。工程は、アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について、複数の(例えば、ハイスループットスクリーニング法に用いる極めて多数またはより少数の)抗原結合化合物を試験し、または(例えば、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドに結合する単一抗体が提供される場合、)単一化合物を試験する工程を含んでもよい。
【0069】
それゆえ、BSDLまたはFAPPポリペプチドへの結合に加えて、標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する抗原結合化合物の能力が評価されうる。一実施態様では、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現する細胞は、プレート、例えば、96ウェルプレート内に取り込まれ、様々な量の適当な化合物(例えば、抗体)に曝される。生体用色素、すなわち、アラマーブルー(AlamarBlue)(米国、カリフォルニア州、カマリロのバイオソース・インターナショナル(BioSource International))のごとき無傷細胞によって取り込まれる色素を添加し、洗浄して過剰な色素を除去することにより、光学濃度によって生存細胞数を測定できる(より多くの細胞が抗体により傷害されるか、または阻害されると、光学濃度がより低下する)。(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するConnolly et al. (2001) J Pharm Exp Ther 298:25-33を参照のこと)。別の例は、核断片化を検出する染色の使用であり、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)がDNAに結合するのに用いられてもよく、次いで蛍光を検出することにより断片化を可視化できる。細胞増殖または成長を測定するために、細胞数または密度を判定する、分裂指数を判定するなどのいずれの適切な方法、または細胞周期中の細胞数またはそれらの局在を判定するいずれのその他の方法が使用できる。細胞増殖または生存を測定するアッセイ、または細胞活性を検出するアッセイなどのいずれのその他の適切なインビトロアポトーシスアッセイが等しく使用でき、例えば、標的細胞を含有するマウスなどの動物モデルに抗体を投与して、標的細胞の生存または活性に対する抗体投与の効果を経時的に検出するなどの生体内アッセイについても同様である。
【0070】
抗原結合化合物がアポトーシス促進活性を有するかどうかを判定するのに使用できるアッセイとしては、細胞性アポトーシス機構の構成要素に対する化合物の効果を判定するアッセイもまた挙げられる。例えば、本明細書の実施例で提供されるように、アポトーシスに関与するタンパク質の増加または減少を検出するアッセイが使用できる。一例では、細胞(例えば、SOJ−6細胞またはその他のBDSLおよび/またはFAPP−発現細胞)が抗原結合化合物に曝され、例えば、Bcl−2タンパク質ファミリーメンバー(例えばBcl−2、Bax、Bac、Badなど)、またはカスパーゼ(例えば、カスパーゼ3、7、8および/または9)などのアポトーシス促進および/または抗アポトーシスタンパク質のレベルまたは活性が測定される。16D10抗原を発現しない細胞(例えば、PANC−1細胞)は、場合により対照として使用できる。インビトロまたはインビボで腫瘍の増殖を検出可能な程度に停止させ、または逆転できるか、または腫瘍細胞を傷害し、またはその増殖を停止できる、いずれの抗原結合化合物、好ましくは、ヒトに適切な抗体が本方法で用いられうる。好ましくは、抗原結合化合物は、増殖を傷害し、または停止でき(例えば、インビトロまたはインビボで標的細胞数の増加を妨げる)、最も好ましくは、抗原結合化合物は、このような標的細胞の死を誘導し、このような細胞の総数の低下をもたらすことができる。特定の実施態様では、抗体は、標的細胞数または標的細胞増殖を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低下させることができる。標的細胞は、例えばBDSLまたはFAPP−発現細胞、16D10によって認識されるBDSLまたはFAPPエピトープを発現する癌細胞、膵臓癌細胞、および/またはSOJ−6細胞であってもよい。
【0071】
したがって、好ましい一実施態様では、本発明は、膵臓癌などのBSDLまたはFAPPポリペプチド発現増殖性障害の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、a)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、b)抗原結合化合物が結合して相当数の標的細胞のアポトーシスを直接誘導し、または増殖を阻害する能力を試験する工程と、c)標的細胞のアポトーシスを直接誘導し、または増殖を阻害できる前記複数の抗原結合化合物から、抗原結合化合物を選択および/または生成する工程を含んでなる方法を提供する。本方法のいずれにおいても、「相当数」は、例えば、細胞の30%、40%、50%、好ましくは60%、70%、80%、90%以上の百分率を意味できる。
【0072】
抗原結合化合物が得られれば、一般に、ADCCを誘導する能力について評価される。抗体依存性細胞傷害(ADCC)を試験する工程は、典型的に、結合する抗FAPP/BSDL抗体を有するFAPP/BSDL発現標的細胞(例えば、SOJ−6細胞またはその他のBDSLまたはFAPP−発現細胞)が、Fc受容体を保有するエフェクター細胞によって認識され、後に補体の関与を必要とせずに溶解される細胞介在細胞毒性反応を評価する工程に関する。16D10抗原を発現しない細胞(例えば、PANC−1細胞)は、場合により対照として使用できる。典型的なADCCアッセイは、本明細書の実施例セクションに記載される。ADCCを誘導する能力は、抗原結合化合物が標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力を有するかどうかについて試験しても試験しなくとも試験することができる。抗原結合化合物が、(a)ADCCを誘導し、(b)標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するその能力の両方について試験される場合、(a)および(b)のアッセイはいずれの順序で実施できる。
【0073】
一の好ましい実施態様では、本発明は、膵臓癌などのBSDLまたはFAPPポリペプチド発現増殖性障害の治療で使用するのに適する、抗原結合化合物を生成する方法であって、a)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、b)抗原結合化合物が結合して相当数の標的細胞のADCCを誘導する能力を試験する工程と、c)前記複数抗原結合化合物から標的細胞のADCCを直接誘導できる抗原結合化合物を選択および/または生成する工程を含んでなる方法を提供する。本方法のいずれにおいても、「相当数」は、例えば、細胞の30%、40%、50%、好ましくは、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の百分率を意味できる。
【0074】
抗体またはその他の本発明の化合物はまた、典型的に、単にBSDLまたはFAPP抗原に対するそれらの特異性に関して評価されるだけでなく、癌細胞、例えば、膵臓癌細胞に対するそれらの特異性についても評価される。一般的な方法を用いて、動物におけるインビボ法(例えば、in situ免疫染色法)および単離された細胞または細胞系を使用するインビトロ法(例えば、ウエスタンブロッティング)を含む、異なる細胞または組織中において化合物または抗体の交差反応性を試験することができる。好ましい実施態様では、本発明の抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。
【0075】
BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドの生成
本明細書で述べられるように、特定の実施態様では、抗原結合化合物を得る工程(例えば、マウスの免疫化)および/または抗原結合化合物を評価する(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合を評価する)工程は、BSDLまたはFAPPポリペプチドの使用に関していてもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、当該技術分野で知られているいずれの適切な様式で調製できる。BSDLまたはFAPPポリペプチドおよびそれらを調製する例示的な方法は、例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するWO2005/095594において提供される。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、全長BSDLまたはFAPPポリペプチドまたはその一部であってもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、場合により、第2のポリペプチド、タグ、ポリマー、またはいずれのその他の適切な分子を含むが、これらに限らない別のエレメントに連結されていてもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、一般にグリコペプチドである。一例では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、正常な膵臓の分泌物中に存在する消化脂肪分解酵素であるBSDLの反復C末端配列を含んでなり、またはそれに由来する、グリコペプチドを含んでなり、またはそれからなる。別の例では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、膵臓の病変の特異的マーカーであるFAPP(BSDLの癌胎児性形態)の反復C末端配列を含んでなり、またはそれに由来する、グリコペプチドを含んでなり、またはそれからなる。特定の実施態様では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、配列Ala Pro Pro VaI Pro Pro Thrを有するアミノ酸7個の一般に不変の部分とグリコシル化部位とを含んでなる、アミノ酸11個の反復C末端ペプチド配列を含んでなる。前記一般に不変の部分は、グルタミン酸によって頻繁に置換されるグリシンがいずれかの側に位置し、アミノ酸AspおよびSerをN末端側に含有する。WO2005/095594に示されるように、グリコペプチド構造を有するこのようなポリペプチドは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来する宿主細胞による発現および分泌によって調製でき、C末端ペプチドの1つまたはそれ以上の反復配列をコードするDNA分子を含む遺伝子構築物、特に、BSDLの組み換え体、例えば、16反復配列の全部または一部を含んでなり、また、グリコシル基転移酵素活性を有する少なくとも1つの酵素をコードするDNA分子などの遺伝子構築物、特にCore 2β(1−6)N−アセチルグルコサミニル基転移酵素、α(1−3)およびα(1−4)フコシル基転移酵素活性を有するフコシル基転移酵素FUT3、またはα(1−3)フコシル基転移酵素活性のみを有するフコシル基転移酵素FUT7からなる群から選択され、前記膵臓癌の特異的マーカーを構成するものを含んでなる。一例では、WO2005/095594は、BSDLまたはFAPPのアミノ酸11個から構成される1〜40の反復C末端ポリペプチドを含んでなる、好ましくは組み換えされ、場合により単離され、または精製されたグリコペプチドを提供し、前記ポリペプチドがグリコシル化され、グリコシル化されたエピトープを保有し、場合によりタイプI糖尿病にかかっている患者において、誘導された抗体との特異的免疫学的反応を引き起こし、ヒトまたは動物の生物学的な液体から精製され、または組み換えられるかのいずれかである。組み換えポリペプチドは、グリコシル化を開始するのに必要とされる酵素機構を含んでなる従来の宿主細胞における発現によって生成でき、前記宿主細胞は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子と、グリコシル基転移酵素から、特にCore 2β(1−6)N−アセチルグルコサミニル基転移酵素(C2GnTと略記される)、α(1−3)ガラクトシル基転移酵素、フコシル基転移酵素3(FUT3と略記される)、およびフコシル基転移酵素7(FUT7と略記される)から選択される1つ以上の酵素をコードする遺伝子とを含んでなるように遺伝学的に改変される。
【0076】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体の生成
本発明は、ヒトで使用するのに適し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを標的とする、抗体、抗体断片、または抗体誘導体の生成、同定および/または使用に関する。本発明の抗体は、当該技術分野で知られている多様な技術のいずれかによって生成されてもよい。典型的に、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを含んでなる免疫原を用いて、非ヒト動物、好ましくはマウスの免疫化によって生成される。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、細胞全体または細胞膜、単離されたBSDLまたはFAPPポリペプチド、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドの断片または誘導体、典型的には免疫原性断片、すなわち、ポリペプチド発現細胞の表面に露出したエピトープを含んでなるポリペプチドの一部を含んでなってもよい。このような断片は、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも7個の連続アミノ酸、なおより好ましくは、その少なくとも10個の連続アミノ酸を含有する。いずれのまたは全ての患者において、腫瘍細胞表面の全てのまたは一部分に時折または常に存在するいずれのその他のBSDLまたはFAPPタンパク質が、抗体の作成に使用できるものと理解される。一例では、免疫原は、SOJ−6細胞である。好ましい実施態様では、抗体を生じさせるのに使用されるBSDLまたはFAPPポリペプチドは、ヒトグリコペプチドである。
【0077】
本抗体は、全長の抗体または抗体断片または誘導体でありうる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFv断片;二重特異性抗体;単一鎖Fv(scFv)分子;重鎖部分を伴わずに、軽鎖可変領域の3つのCDRを含有する、1つの軽鎖可変領域のみを含有する単一鎖ポリペプチドまたはその断片;軽鎖部分を伴わずに、重鎖可変部の3つのCDRを含有する、1つの重鎖可変部のみを含有する単一鎖ポリペプチドまたはその断片;抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。このような断片および誘導体、およびそれらを調製する方法については当該技術分野でよく知られている。例えば、ペプシンを使用してヒンジ領域中のジスルフィド結合より下の抗体を消化し、それ自体はジスルフィド結合でVH−CHIに連結する軽鎖であるFab二量体のF(ab)’2を生成できる。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断し,それによりF(ab)’2二量体をFab’モノマーに変換してもよい。Fab’単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)参照)。様々な抗体断片が、無傷の抗体の消化の観点から定義されるが、当業者は、このような断片が、化学的か、または組み換えDNA技術のいずれかを用いて新規に合成されうることを理解する。
【0078】
好ましい実施態様では、本発明の抗体は、IgG、例えば、IgG1抗体であり、四量体(二価)である。このような二価のIgG抗体は、調製および使用が比較的簡単であり、様々な特性を兼ね備えてBSDL/FAPP発現腫瘍細胞を最大限標的とすることが可能であることからそれらが好ましい。特に、それらは、BSDL/FAPP発現腫瘍細胞に対して十分な結合親和力を有する(例えば、一価の形態よりも優れており、一般に、ナノモル濃度レベル、例えば、10〜1ナノモル濃度の結合親和性を有する)ため、それらは、効果的に細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる。さらに、それらはFc末端を含有するため、(BSDLまたはFAPP発現細胞を直接標的とする能力のためにこの特徴はそれらの有効性のためには必須でないものと理解されるが)標的細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)を効果的に誘導できる。さらに、(多量体、例えばIgMの形態と対照的に)二価の抗FAPP/BSDL IgG抗体は、標的細胞によって実質的に内部移行され、それらのADCC介在特性を高めることはない。したがって、本発明の二価の抗BSDL/FAPP抗体は、これらの所望の特徴の全てを効果的に桑見合わせると、それらは、(BSDL/FAPP発現標的細胞を傷害するなお別のメカニズムを導入するであろうかかる改変形態も用いられ、本発明の範囲内であるが)「裸」、すなわち、細胞毒性ペプチドまたは放射性同位体などの付着部分なしに使用できる。
【0079】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の調製については、当該技術分野でよく知られており、多数の利用できる技術のいずれでも使用できる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983); Cole et al., pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy (1985)を参照のこと)。単一鎖抗体を生成する技術(U.S. Pat. No. 4,946,778)は、所望のポリペプチド、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドに対する抗体を生成するのに用いられうる。また、トランスジェニックマウス、またはその他の哺乳類などのその他の生物を使用して、ヒト化、キメラ、または同様に修飾された抗体が発現されてもよい。代案としては、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定できる(例えば,McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照)。一実施態様では、方法は、ライブラリーまたはレパートリーから、BSDLまたはFAPPポリペプチドと交差反応するモノクローナル抗体あるいはその断片または誘導体を選択する工程を含んでなる。例えば、レパートリーは、場合により、いずれの適する構造物(例えば、ファージ、細菌、合成複合体)により提示される、抗体またはその断片のいずれの(組み換え)レパートリーであってもよい。
【0080】
抗原を用いて非ヒト哺乳類を免疫する工程は、当該技術分野でよく知られているいずれの様式で実施されてもよい(例えば、E. Harlowand D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照のこと)。一般に、免疫原は、緩衝液中に、場合により、完全フロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプ、およびアジュバントの量を判定する方法は、当業者によく知られており、本発明ではどのようにも制限されない。
【0081】
同様に、抗体の生成を刺激するのに十分な免疫化の位置および頻度についてもまた、当該技術分野でよく知られている。典型的な免疫化プロトコールでは、非ヒト動物に、1日目および約1週間後に抗原を腹腔内注射する。これに、20日目前後に、場合により不完全なフロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、抗原の復活注射(recall injection)が続く。復活注射(recall injection)は静脈内で実施され、連続して数日間繰り返してもよい。これに、40日目に、典型的には、アジュバントなしで、静脈内または腹腔内のいずれかのさらなる免疫注射が続く。このプロトコールは、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞の生成をもたらす。免疫化で使用された抗原に対する抗体を発現するB細胞の生成を生じさえすれば、その他のプロトコールが利用されてもよい。
【0082】
別の実施態様では、免疫されていない非ヒト哺乳類からリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで細胞培養で免疫原に曝される。次に、リンパ球が収集され、下記の融合工程が実施される。
【0083】
本発明のために好ましいモノクローナル抗体においては、次の工程は、免疫された非ヒト哺乳類から細胞、例えばリンパ球、脾細胞、またはB細胞を単離する工程と、次いで、抗体産生ハイブリドーマを形成するために、これらの脾細胞、またはB細胞、またはリンパ球を不死化細胞と融合させる工程である。したがって、「免疫された動物から抗体を調製する」という用語は、本明細書で用いられるように、免疫された動物からB細胞/脾細胞/リンパ球を得ること、これらの細胞を使用して抗体を発現するハイブリドーマを生成すること、ならびに免疫された動物の血清から抗体を直接得ることを含む。例えば、非ヒト哺乳類からの脾細胞の単離は、当該技術分野でよく知られており、例えば、麻酔された非ヒト哺乳類から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、脾膜から脾細胞を圧搾して細胞ストレーナーのナイロンメッシュを通して適切な緩衝液に単細胞懸濁液を生じるように入れることに関する。細胞が緩衝液で洗浄され、遠心分離され、次いで再懸濁されていずれの赤血球に溶解される。溶液が再度遠心分離され、ペレット中に残ったリンパ球が最終的に新鮮な緩衝液に再懸濁される。
【0084】
単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、抗体産生細胞は不死細胞系と融合される。これは、ハイブリドーマの作製に有用な多数のその他の不死細胞系が当該技術分野で知られているが、典型的にはマウス骨髄腫細胞系である。好ましいマウスの骨髄腫系統としては、米国カリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所細胞配布センター(Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego,Calif.U.S.A.))から入手できるMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、および米国メリーランド州ロックビル(Rockville,Maryland U.S.A.)の米国微生物系統保存機関から入手できるX63 Ag8653、およびSP−2細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して達成される。次に、得られたハイブリドーマは、融合しなかった親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたはそれ以上の物質を含有する選択培地で培養される。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル基転移酵素(HGPRTまたはHPRT)を欠乏する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含む。
【0085】
ハイブリドーマは、マクロファージの支持細胞層上で増殖されうる。マクロファージは、好ましくは、脾細胞を単離するのに使用された非ヒト哺乳類の同腹子からのものであり、典型的には、ハイブリドーマの播種の数日前に不完全フロイントアジュバントなどを用いて予備刺激される。融合方法については、例えば、出典明示により本明細書に援用する(Goding, “Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,” pp. 59-103 (Academic Press, 1986))で述べられている。
【0086】
細胞は、コロニー形成および抗体産生のために十分な時間選択培地中で増殖させられる。これは、通常7〜14日間である。次に、ハイブリドーマのコロニーは、所望の基質、例えば、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体産生についてアッセイされる。アッセイは、典型的には、比色分析ELISA−タイプのアッセイであるが、ハイブリドーマが増殖されるウェルに適応できるいずれのアッセイを用いてもよい。
【0087】
その他のアッセイとしては、免疫沈降法および放射免疫測定法が挙げられる。所望の抗体産生について陽性のウェルは、1個またそれ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを判定するために検査される。1個よりも多いコロニーが存在する場合、細胞を再度クローン化されて増殖され、1個の細胞のみが所望の抗体を産生するコロニーを生じることを確実にされてもよい。単一の明らかなコロニーを有する陽性のウェルは、典型的には、再度クローン化され、再度アッセイされることにより、1個のモノクローナル抗体のみが検出され、生成されることが確実にされる。
【0088】
次に、アポトーシスを誘導できるか細胞周期を阻害できる抗体産生について、ハイブリドーマまたはハイブリドーマコロニーがアッセイされうる。このアッセイは、一般に、抗体が得られ、インビトロアッセイで評価することができれば、工程のあらゆる段階で実施されうる。しかし、最も好ましくは、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体が同定されると、それは、細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞、その表面にBSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現するいずれの細胞など)のアポトーシスを誘導するか、または成長または増殖を阻害する能力について試験できる。抗体はまた、(例えば、NK細胞活性化による;実施例参照)ADCCを誘導するそれらの能力についても試験できる。
【0089】
次に、本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマは、DMEMまたはRPMI−1640などの適切な培地中で大量に成育される。代案としては、ハイブリドーマ細胞は、動物内の腹水腫瘍としてインビボで増殖されうる。
【0090】
所望のモノクローナル抗体を産生するのに十分な増殖後、モノクローナル抗体を含有する増殖培地(または腹水)が分離され、その中に存在するモノクローナル抗体が精製される。精製は、典型的には、ゲル電気泳動法、透析、タンパク質Aまたはタンパク質G−セファロースまたはアガロースまたはセファロースビーズなどの固体担体に結合している抗マウスIgを使用したクロマトグラフィーによって達成される(例えば、出典明示により本明細書に援用するAntibody Purification Handbook, Amersham Biosciences, publication No. 18-1037-46, Edition ACで全て述べられている)。結合した抗体は、典型的には、低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシンまたは酢酸緩衝液)を使用してタンパク質A/タンパク質Gカラムから溶出され、抗体含有画分が即時に中和される。これらの画分をプールして透析し、必要に応じて濃縮する。
【0091】
好ましい実施態様では、BSDLまたはFAPPポリペプチド上に存在する決定因子と結合する抗体をコードするDNAがハイブリドーマから単離され、適切な宿主中への形質移入に適切な発現ベクター中に組み込まれる。次に、宿主は、抗体、その変異型、その活性断片、あるいは抗体の抗原認識部分を含んでなるヒト化またはキメラ抗体の組み換え生産のために用いられる。特定の実施態様に応じて、宿主細胞によって産生される抗体は、場合により、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する、またはNK細胞および(BSDLまたはFAPP発現)標的細胞の存在下でADCCを誘導する(例えばNK細胞活性化)それらの能力について評価できる。
【0092】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは容易に単離でき、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定される。単離されると、DNAを発現ベクター中に組み込むことができ、次に、それをさもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に形質移入して、組み換え宿主細胞中においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中における組み換え発現は当該技術分野でよく知られている(例えば、Skerra et al. (1993) Curr. Op. Immunol. 5:256;およびPluckthun (1992) Immunol. Revs. 130:151を参照のこと)。抗体はまた、例えば、Ward et al. (1989) Nature 341:544で開示されるごとく、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって生成されてもよい。
【0093】
特定の実施態様では、抗体は本質的にモノクローナル抗体16D10と同一のエピトープまたは決定因子に結合する(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するWO2005/095594を参照のこと)。IgM抗体16D10を産生する細胞は、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された。特定の実施態様では、抗体は16D10以外の抗体である。
【0094】
モノクローナル抗体x「と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する」という用語は、抗体がxと「競合できる」ことを意味し、xは16D10などである。そのモノクローナル抗体と実質的に同一のエピトープと結合する1つまたはそれ以上の抗体の同定は、抗体競合を評価できる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのいずれか1つを使用して容易に判定できる。このようなアッセイは当該技術分野で通常である(例えば、参照によって本明細書に援用するU.S. Pat. No. 5,660,827を参照されたい)。抗体が結合するエピトープを実際に特定することは、そのモノクローナル抗体と同一のまたは実質的に同一のエピトープに結合する抗体を同定するのに、決して必須ではないものと理解される。
【0095】
例えば、調べられる試験抗体が異なる起源の動物から得られる場合、または異なるIgアイソタイプである場合でさえ、単純競合アッセイが用いられてもよく、このアッセイにおいて、対照(例えば、16D10)および試験抗体が予備混合(または予備吸着)され、エピトープ含有タンパク質を含有するサンプル、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドに適用される。ELISA、放射免疫測定法、ウエスタンブロット、およびBIACOREの使用に基づくプロトコールは、(例えば、実施例セクションで述べられるように)このような単純競合アッセイ研究で使用するのに適し、当該技術分野でよく知られている。
【0096】
特定の実施態様では、対照抗体(例えば、16D10)と試験抗体の各種量(例えば1:10または1:100)で抗原(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチド)含有サンプルに適用する前に一定時間予備混合する。別の実施態様では、対照と各種量の試験抗体は、抗原サンプルへの曝露中に単純に予備混合されうる。(例えば、分離または洗浄技術を用いて非結合抗体を除去することにより)結合抗体を遊離抗体から、(例えば、化学種またはアイソタイプ特異的二次抗体を使用して、または検出可能な標識を用いて対照抗体を特異的に標識して)対照抗体を試験抗体から区別できさえすれば、試験抗体が対照抗体と抗原の結合を低下させるかどうかを判定し、試験抗体が実質的に対照と同一のエピトープを認識することを示すことができるであろう。完全に無関係な抗体の不在下における(標識)対照抗体の結合は、対照の高い値を生じることになる。対照の低い値は、標識対照抗体(例えば16D10)を全く同じタイプの未標識抗体(例えば、16D10)と共にインキュベートして、競合させ、標識抗体の結合を低下させて得られる。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識抗体の反応性の顕著な低下は、同一エピトープを認識する試験抗体、すなわち、標識対照抗体と「交差反応する」ものの指標である。約1:10〜約1:100のあらゆる対照:試験抗体比率で、標識対照と各抗原との結合を少なくとも50%以上、好ましくは70%低下させるあらゆる試験抗体は、対照と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する抗体であると見なされる。好ましくは、このような試験抗体は、対照と抗原との結合を少なくとも90%低下させる。
【0097】
一実施態様では、競合は、フローサイトメトリー試験によって評価できる。所与の活性化受容体を保有する細胞を最初に受容体に特異的に結合することが知られている対照抗体(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞、および16D10抗体)と共に、次に、例えば、蛍光色素またはビオチンで標識された試験抗体と共にインキュベートする。飽和量の対照抗体と共にプレインキュベーションして得られる結合が、対照とのプレインキュベーションなしの抗体によって得られる結合(蛍光の平均値)の80%、好ましくは、50、40またはそれ以下であれば、試験抗体は対照と競合するとされる。代案としては、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートされた細胞上で標識対照(蛍光色素またはビオチンによる)を用いて得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションなしで得られる結合の80%、好ましくは50%、40%またはそれ以下であれば、試験抗体は対照と競合するとされる。
【0098】
好ましい一例では、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドなどの抗体の結合基質、または16D10によって結合されることが知られているそのエピトープ含有部分が固定化された表面に、試験抗体が予備吸着されて飽和濃度で適用される、単純な競合アッセイを用いてもよい。表面は、好ましくはビアコア(BIACORE)チップである。次に、対照抗体(例えば、16D10)を基質飽和濃度で表面に接触させ、基質表面と対照抗体との結合を測定する。この対照抗体の結合を、試験抗体不在下における基質含有表面と対照抗体との結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体存在下における対照抗体による基質含有表面の結合の顕著な低下は、同一エピトープを認識する試験抗体、すなわち対照抗体と「交差反応」するものの指標である。対照抗体と抗原含有基質との結合を少なくとも30%またはより好ましくは40%低下させるあらゆる試験抗体は、対照抗体と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する抗体であると見なされる。好ましくはこのような試験抗体は、対照抗体と基質との結合を少なくとも50%低下させる。対照と試験抗体の順序は逆転でき、すなわち、最初に対照抗体を表面に結合させ、その後試験抗体を表面に接触させることができるものと理解される。第2の抗体(抗体が交差反応していると仮定して)で見られる結合の低下は、より規模が大きいことが予期されるので、好ましくは基質抗原に対してより高い親和性を有する抗体が、基質含有表面に最初に結合する。このようなアッセイのさらなる例は、その開示を参照によって本明細書に援用するSaunal et al. (1995) J. Immunol. Meth 183: 33-41の実施例で提供される。
【0099】
BSDLまたはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体が同定されると、標準法を使用して、SOJ−6細胞系、または膵臓癌などの癌がある患者から採取されたいずれのその他の細胞などの腫瘍細胞に結合するその能力について、および同細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害するその能力について、それを試験できる。NK細胞を活性化し、またはBSDLまたはFAPP発現標的細胞のADCCを誘導する細胞の能力についてもまた評価できる。
【0100】
ヒトでの使用に適する抗体の生成
一般に非ヒト動物において、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合できるモノクローナル抗体が得られると、抗体はヒトでの治療的用途に適するように、一般に修飾される。例えば、それらは、ヒト化、キメラ化されてもよく、または当該技術分野でよく知られている方法を使用して、ヒト抗体のライブラリーから選択されてもよい。このようなヒトに適切な抗体は、本治療法で直接使用でき、またはさらに誘導体化することができる。本明細書でもまた、特定の本発明の実施態様に応じて、抗体をヒトにおける治療用途に適するようにする前および/または後に、それらをアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について試験できる。
【0101】
好ましい一実施態様では、例えば、相同的な非ヒト配列に代えてヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することにより(例えば、Morrison et al. (1984) PNAS 81:6851)、または免疫グロブリンのコード配列を非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部と共有結合させることにより、例えば、抗体16D10と同一のエピトープに結合する抗体などの本発明の抗体を産生するハイブリドーマのDNAを発現ベクターへの挿入前に修飾できる。このようにして元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換される。特に好ましい一実施態様では、本発明の抗体はヒト化される。本発明による抗体の「ヒト化」形態は、マウスまたはその他の非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体のその他の抗原結合部分配列など)である。主として、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容抗体)であり、元の抗体の所望の特異性、親和性、および能力を維持しながら、受容抗体の相補的決定領域(CDR)からの残基が、元の抗体(供与抗体)のCDRからの残基によって置換されている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基によって置換されてもよい。さらに、ヒト化抗体は、受容抗体または移入されたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見られない残基を含んでなることができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変領域を実質的に全てに含んでなり、CDR領域の全てまたは実質的に全てが元の抗体のCDR領域に対応して、FR領域の全て、または実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列のFR領域である。さらに詳しくは、その各内容を参照によって本明細書に援用するJones et al. (1986) Nature 321: 522;Reichmann et al. (1988) Nature 332: 323;Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534 (1988);Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593を参照のこと。
【0102】
ヒト化抗体を作製するのに使用される軽鎖および重鎖の両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を低下させる上で非常に重要である。いわゆる「ベストフィット(best−fit)」法に従って、本発明の抗体の可変領域の配列は、公知のヒト可変領域配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次に、マウスの配列と最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる(Sims et al. (1993) J. Immun.,151: 2296; Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の部分集団の全てのヒト抗体の共通配列からの特定のフレームワークを用いる。同一のフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter et al. (1992) PNAS 89: 4285; Presta et al. (1993) J. Immunol. 51:1993))。
【0103】
FAPP/BSDL、好ましくは、ヒトFAPP/BSDL、最も好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープ(例えば、16D10との結合についてエピトープと競合できる抗体)に対する高親和性、およびその他の好ましい生物学的特性を維持しながら抗体をヒト化することがさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法により、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列および様々な概念的なヒト化生成物の解析方法により調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元立体構造を図解して表示するコンピュータプログラムが利用できる。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能にする。この方法において、FR残基は、標的抗原に対する親和性増加などの所望の抗体の特徴が達成されるように、共通かつ移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響において直接的かつ最も実質的に関与する。
【0104】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように改変されたその他の遺伝子導入動物を使用するなどの様々なその他の技術により生成されてもよい。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的破壊によりマウスまたはその他の動物に導入される(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するJakobovitz et al. (1993) Nature 362:255;Green et al. (1994) Nature Genet. 7: 13; Lonberg et al. (1994) Nature 368:856;Taylor et al. (1994) Int. Immun. 6:579を参照のこと)。代案としては、ヒト抗体は、遺伝子または染色体の形質移入法によって、またはファージディスプレイ法を使用した抗体レパートリー選択を通じて構築できる。この技術では、抗体可変領域遺伝子は、繊維状バクテリオファージの主要またはマイナー被膜タンパク質遺伝子のいずれかの中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子表面に機能性抗体断片として提示される。繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。この方法において、ファージは、B細胞特性のいくつかを模倣する(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するJohnson et al. (1993) Curr Op Struct Biol 3:5564-571;McCafferty et al. (1990) Nature 348:552-553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によっても作り出される(例えば、その全体を参照によって援用するU.S. Pat. Nos. 5,567,610および5,229,275を参照のこと)。
【0105】
一実施態様では、「ヒト化」モノクローナル抗体は、カリフォルニア州フレモントのアブジェニックス(Abgenix(Fremont,CA)からの免疫化のためのゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)などの動物を使用して作られる。ゼノマウス(XenoMouse)は、その免疫グロブリン遺伝子が機能性ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置換されているマウス宿主である。それゆえ、このマウスにより、またはこのマウスのB細胞から作成されたハイブリドーマにおいて生成される抗体は、既にヒト化されている。ゼノマウス(XenoMouse)については、その全体を参照によって本明細書に援用するUnited States Patent No. 6,162,963で述べられている。同様の方法は、HuMAb−Mouse(登録商標)(Medarex)を用いて達成されうる。
【0106】
本発明の抗体はまた、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)に誘導体化されてもよく、ここで、前記抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が元の抗体中の対応する配列と同一または相同的であり、一方で、それらが所望の生物学的活性を示す限り、鎖の残りが、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体ならびにこのような抗体の断片中の対応する配列と同一または相同的である(例えば、Morrison et al. (1984) PNAS 81:6851; U. S. Pat. No. 4,816,567を参照のこと)。
【0107】
組み換え16D10抗体の構造特性
好ましい一実施態様では、本発明の抗体は、16D10抗体(または16D10と同一エピトープに結合する別の抗体)の可変領域配列(例えば、可変領域全体、その一部、またはCDR)を使用して調製されるキメラまたはヒト化IgG抗体である。例えば、抗体は、Rec16d10または同等の抗体、16D10のマウス重鎖定常部のCu2、Cu3、およびCu4領域がヒトIgG1 Fcによって置換されているキメラ抗体でありうる。別の好ましい実施態様では、抗体は、16D10などの抗FAPP/BSDL抗体のVHおよびVLが、重鎖および軽鎖の両方についてヒトIgG(例えば、IgG1)定常部によって置換されているキメラ抗体である。
【0108】
本発明の好ましい抗体は、生成され、単離され、構造的および機能的に特徴づけられ、本明細書で述べられるごとく、16D10の可変部またはCDRを含んでなる二価のモノクローナル抗体である。一例では、抗体は、実施例9で述べられているキメラ抗体(rec16D10)であり、別の例では、抗体は、ヒトIgG1定常部と融合した16D10の重鎖可変部を含んでなる(2本の)重鎖と、ヒトIgLカッパ定常部と融合した16D10の軽鎖可変部を含んでなる(2本の)軽鎖とからなる代替的な二価キメラ抗体である。これらの抗体の全長、変量、およびCDR配列を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
したがって、一態様では、本発明は、(a)配列番号3、5、7、および9〜11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるVH領域、および(b)配列番号4、6、8、および12〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるVL領域を含んでなり、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。好ましい重鎖および軽鎖の組み合わせとしては、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と(b)配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と(b)配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖、および(a)配列番号7のアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変部と(b)配列番号8のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変部が挙げられる。
【0111】
他の態様では、本発明は、16D10の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2および/またはCDR3またはそれらの組み合わせを含んでなる抗体を提供する。CDR領域は、カバット(Kabat)システム(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を使用して記述される。16D10の重鎖CDRは、配列番号7中のアミノ酸位置31〜35(CDR1;CDR1のコチア(Chotia)番号は26〜35)、位置50〜67(CDR2)、および位置97〜106(CDR3)に位置する。16D10の軽鎖CDRは、配列番号8中のアミノ酸位置24〜40(CDR1)、位置56〜62(CDR2)、および位置95〜102(CDR3)に位置する。
【0112】
したがって、他の態様では、本発明は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR2、(c)配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR3、(d)配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR1、(e)配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR2、および(f)配列番号14のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR3を含んでなり、FAPPまたはBSDLに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。好ましくは、前記抗体は、ヒトIgG鎖定常部と融合したVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含んでなる重鎖可変部、およびヒトカッパ鎖定常部と融合したVL CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含んでなる軽鎖可変部を含んでなる。好ましくは、前記ヒトIgG鎖定常部は、配列番号15のアミノ酸配列またはその一部、または少なくともそれと80%、90%または95%同一の配列を含んでなる。好ましくは、前記ヒトカッパ鎖定常部は、配列番号16のアミノ酸配列またはその一部、または少なくともそれと80%、90%または95%同一の配列を含んでなる。好ましくは、抗体は、2つの前記重鎖および2つの前記軽鎖を含んでなる四量体である。
【0113】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、VH J558.48マウス生殖細胞系H鎖免疫グロブリン遺伝子からのVH領域および/またはVK 8−27マウス生殖細胞系L鎖免疫グロブリン遺伝子からのVL領域を含んでなる。
【0114】
一態様では、本発明は、(a)本明細書で述べられるVH領域(例えば、可変部、その一部、または本明細書で述べられるVH CDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなる可変部)と融合したヒトIgG鎖定常部、および(b)本明細書で述べられるVL領域(すなわち、可変部、その一部、または本明細書で述べられるVH CDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなる可変部)と融合したヒトカッパ鎖定常部を含んでなり、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。例示的なIgG鎖定常部としては、抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、カリフォルニア州のジェネンテック(Genentech))から得られる配列番号15の配列を有する定常部、またはその一部が挙げられる。例示的なヒトカッパ鎖定常部としては、抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、カリフォルニア州のジェネンテック(Genentech))から得られる配列番号16の配列を有する定常部、またはその一部が挙げられる。
【0115】
さらに別の実施態様では、本発明の抗体は、本明細書で述べられる好ましい抗体のアミノ酸配列と相同的なアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖可変部を含んでなり、抗体は、本発明の抗FAPP/BSDL抗体の所望の機能特性を保持する。例えば、本発明は、重鎖可変部および軽鎖可変部を含んでなる単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、(a)VH領域は、配列番号3、5、7、および9〜11からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなり、(b)VL領域は、配列番号4、6、8、および12〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなり、(c)抗体はFAPPまたはBSDLポリペプチドと特異的に結合して、本明細書で述べられる機能特性の少なくとも1つ、好ましくは、本明細書で述べられる機能特性のいくつかを示す。
【0116】
別の実施態様では、CDR、VHおよび/またはVL、または定常部アミノ酸配列は、上で述べた配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であってもよい。CDR、VHおよび/またはVL、または上で述べた配列の定常部領域と高い(すなわち、80%またはそれ以上の)同一性を有するCDR、VHおよび/またはVL領域を有する抗体は、配列番号3〜14のCDR、VHおよび/またはVLまたは配列番号15および16の定常部をコードする核酸分子の変異誘導(例えば、部位特異的またはPCR介在変異誘導)と、次いでコードされた改変抗体を、維持された機能(例えば、FAPP/BSDL結合親和力、腫瘍細胞のアポトーシス誘導または増殖減速、ADCCの誘導)について試験することによって得ることができる。
【0117】
2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップ数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列により共有される同一の位置数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置数/位置総数×100)。2つの配列間の配列比較および%同一性の判定は、配列分析ソフトウェアの数学的アルゴリズムを使用して達成できる。タンパク質分析ソフトウェアは、保存アミノ酸置換をはじめとする様々な置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てられた類似性の測定を用いて類似の配列を適合する。
【0118】
2つのアミノ酸配列間の%同一性は、例えば、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手できる)に組み込まれている、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のgap weightおよび1、2、3、4、5、または6のlength weightを使用して判定できる。
【0119】
ポリペプチド配列はまた、FASTAを使用して、デフォルトまたは推奨パラメーターを適用して比較できる。GCGバージョン6.1中のプログラムであるFASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリーおよび検索配列間の最良重複の領域のアラインメントおよび%配列同一性を提供する(Pearson, Methods Enzymol. 1990;183:63-98;Pearson, Methods Mol. Biol. 2000;132:185-219)。
【0120】
2つのアミノ酸配列間の%同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E.メイヤーズ(Meyers)およびW.ミラー(Miller)(Comput. Appl. Biosci., 1988;11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、およびgap penalty 4を使用して判定できる。
【0121】
配列をデータベース中に含有されるその他の配列と比較するための別のアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用した、コンピュータプログラムBLAST、特にblastpである。例えば、それぞれ参照によって本明細書に援用する、Altschul et al., J. Mol. Biol. 1990;215 403-410; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 1997;25:3389-402 (1997)を参照されたい。そこでは本発明のタンパク質配列を「クエリー配列」として使用して、公表データベースに対する検索を実施して、例えば関連配列を同定できる。このような検索は、Altschul, et al., 1990(前出)のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施できる。BLASTタンパク質検索はscore=50、wordlength=3でXBLASTプログラムを用いて、本発明の抗体分子と相同的なアミノ酸配列を得て実施できる。比較のためにギャップドアラインメント(gapped alignment)を得るために、Altschul et al., 1997(前出)で述べられるようにギャップド(Gapped)BLASTが利用できる。BLASTおよびギャップド(Gapped)BLASTプログラムを使用する際、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを使用できる(例えば、XBLASTおよびNBLAST)。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0122】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなるVH領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなるVL領域とを含んでなり、これらのCDRまたは可変部配列の1つまたはそれ以上は、本明細書で述べられる好ましい抗体に基づいて定義されるアミノ酸配列(例えば、16D10および配列番号3〜14のいずれか)またはその保存的な修飾を含んでなり、抗体は、本発明の抗FAPP/BSDL抗体の所望の機能特性を保持する。保存的な配列の修飾は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に顕著に影響を及ぼさず、またはそれを変更しないあらゆるアミノ酸修飾でありうる。このような保存的な修飾としては、アミノ酸置換、付加、および欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的変異誘導およびPCR介在変異誘導などの当該技術分野で知られている一般的な技術によって本発明の抗体に導入できる。「保存的」アミノ酸置換は、典型的にアミノ酸残基が、類似した物理化学的特性がある側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーについて、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のあるアミノ酸が挙げられる。
【0123】
したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を同一側鎖ファミリーからのその他のアミノ酸残基により置換でき、改変された抗体を本明細書で述べられる機能性アッセイを使用して、保持される機能(すなわち上の(c)、(d)および(e)で述べられる機能)について試験できる。
【0124】
16D10抗体の重鎖および軽鎖可変部をコードする核酸配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。一実施態様では、本発明は、配列番号1またはその断片(例えば、16D10 VH領域の配列CDR1、CDR2および/またはCDR3をコードする)を含んでなるヌクレオチド配列から転写され、翻訳された16D10の可変重鎖領域と、配列番号2またはその断片(例えば、16D10 VL領域のCDR1、CDR2および/またはCDR3をコードする配列)を含んでなるヌクレオチド配列から転写され、翻訳された16D10の可変軽鎖領域を含んでなる、二価のモノクローナル抗体を提供する。さらに別の好ましい実施態様では、二価の抗体は、その重鎖中に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された抗体16D10中に存在する、CDR1、CDR2および/またはCDR3または重鎖可変部を含んでなり、軽鎖中に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された前記抗体16D10中に存在するCDR1、CDR2および/またはCDR3または軽鎖可変部を含んでなる。
【0125】
定常部の最適化
FAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する細胞のADCCを誘導する本発明の抗体の能力を考慮して、本発明の抗体はまた、ADCCを誘導するそれらの能力を増加させる修飾と共に作製できる。典型的な修飾としては、少なくとも1つのアミノ酸の修飾(例えば置換、欠失、挿入)および/またはグリコシル化の改変タイプ、例えば、低フコシル化を含んでなる、修飾ヒトIgG1定常部が挙げられる。このような修飾は、例えば、エフェクター(例えば、NK)細胞上のFcyRIIIaへの結合を増加できる。
【0126】
抗体のADCC能力を増加させる、定常部中の特定の改変グリコシル化パターンが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中において、抗体を発現することで達成できる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞については当該技術分野で述べられており、本発明の組み換え抗体を発現させる宿主細胞として使用でき、それにより改変されたグリコシル化を有する抗体が生成される。例えば、それぞれその全体を参照によって本明細書に援用する、Shields, R. L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1ならびにEuropean Patent No: EP 1,176,195; PCT Publications WO 06/133148; WO 03/035835; WO 99/5434280を参照されたい。
【0127】
一般に、改変されたグリコシル化を有するこのような抗体は、特定の望ましい特性を生じる特有のN−グリカン構造を有し、それらは、マウス骨髄腫NSOおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Chuand Robinson, Current Opinion Biotechnol. 2001, 12: 180-7)、本明細書で実施例セクションにおいて生成されるようなHEK293T発現抗体、または組み換え治療抗体を生成するのに一般に使用されるその他の哺乳類の宿主細胞系によって産生される、非修飾抗体または天然定常部を有する抗体と比較して、改善されたADCCおよびエフェクター細胞受容体結合活性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
哺乳類の宿主細胞中で産生されるモノクローナル抗体は、各重鎖のAsn297にN結合グリコシル化部位を含有する。抗体におけるグリカンは、典型的に、非常に低いか、または皆無の二分N−アセチルグルコサミン(二分GlcNAc)および高いレベルのコアフコシル化を有する複合二分岐構造物である。グリカン末端は、非常に低いか、または皆無の末端シアル酸、および可変量のガラクトースを含有する。抗体機能のグリコシル化の総説については、例えば、Wright & Morrison, Trend Biotechnol. 15:26-31 (1997)を参照されたい。相当数の研究が、抗体グリカン構造の糖組成に対する変化がFcエフェクター機能を改変できることを示す。抗体活性に寄与する重要な炭水化物の構造は、α−1,6結合を介してFc領域N結合オリゴ糖類の最内側のN−アセチルグルコサミン(GlacNAc)残基に付着するフコース残基であると考えられる(Shields et al., 2002)。FcγR結合は、Fc領域中の保存されたAsn297の共有結合で付着するオリゴ糖類の存在を必要とする。非フコシル化の構造は、近年、インビトロADCC活性の劇的な増加と関連付けられている。
【0129】
歴史的に、CHO細胞中で産生される抗体は、集団中にフコシル化されていないものを約2〜6%含有する。YB2/0(ラット骨髄腫)およびLecl3細胞系(欠損GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼを有するCHO系統のレクチン変異体であって、α6−フコシル基転移酵素の基質であるGDP−フコースまたはGDP糖中間体の欠乏症を生じる)が、78〜98%の非フコシル化化学種を有する抗体を産生することが報告されている。その他の例では、RNA干渉(RNAi)またはノックアウト技術を用いて、FUT8m RNA転写物レベルを低下させ、または遺伝子発現を完全にノックアウトさせるように細胞を操作することができ、このような抗体は、70%までの非フコシル化グリカンを含有することが報告されている。その他の例では、抗体を産生する細胞系は、グリコシル化阻害剤で処理されうる。Zhou et al. Biotech and Bioengin. 99: 652-665 (2008)は、アルファ−マンノシダーゼI阻害剤、キフネンシンを用いるCHO細胞の処理が、非フコシル化オリゴマンノース−N型−グルカンを有する抗体の産生をもたらすことを述べている。
【0130】
したがって、本発明の一実施態様では、抗体は、FcyRIIIaおよび/またはADCCへの抗体結合を改善する、Fc領域中の少なくとも1つのアミノ酸改変を含んでなる定常部を含んでなる。別の態様では、本発明の抗体組成物は、本明細書で述べられるキメラ、ヒトまたはヒト化抗体を含んでなり、組成物中の抗体の少なくとも20、30、40、50、60、75、85または95%は、フコースを欠くコア炭水化物構造を含んでなる定常部を有する。
【0131】
定常部中に修飾を含むFcyRIIIaへの抗体結合および/またはADCCが改善されている、特に、IgG1またはIgG3タイプの非誘導体化または無修飾形態である抗体、または非誘導体化抗体は、膵臓癌にかかっている患者からのものなどのFAPPまたはBDSLポリペプチド発現腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、および/または増殖を阻害することが予想される一方で、誘導体化抗体を調製してそれらを細胞毒性にすることもまた可能である。このような誘導体化抗体の二価のIgG形態が使用される場合、それにより、それらは、少なくとも3つの異なる方法:ADCCにより(例えば、抗体が結合Fc受容体を含んでなる場合、例えば、それらの定常部を介して)、アポトーシスの誘導または細胞増殖阻害により、ならびに細胞毒性部分を介して細胞を傷害することにより、腫瘍細胞を標的とすることができる。一実施態様では、抗体の1つが単離され、ヒトでの使用に適するようにされると、それらは誘導体化されて細胞にとって毒性となる。この方法において、抗体の癌にかかっている患者への投与は、抗体のFAPPおよび/またはBDSLポリペプチド発現癌細胞への相対的に特異的な結合を生じ、それにより細胞を直接傷害し、または阻害するための追加的手段を提供する。
【0132】
治療における化合物の使用
本方法を使用して生成される抗体は、膵臓癌および/またはBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍(例えば、乳癌)を治療するのに特に効果的である。
【0133】
一態様では、本発明を実施する場合、患者の癌が特徴付けられるか、または評価されうる。これは、癌が本発明により有利に治療されうるかどうかを判定するのに有用でありうる。例えば、本発明の抗原結合化合物は、アポトーシス促進および抗細胞増殖活性を有するため、それらは、腫瘍細胞を直接傷害し、および/または腫瘍容積を低下させるか、または制限するのに用いられてもよい。抗原結合化合物は、上皮内癌を超えて広がり、いずれの方向で2cm未満のサイズを有するBDSLまたはFAPPポリペプチド発現腫瘍の治療において、ならびに/あるいは転移および/または転移性腫瘍の治療において、特定の有利な特性を有していてもよい。
【0134】
本発明の化合物は、膵臓癌を治療するのによく適し、それは腫瘍細胞死を誘導し、またはそれらの成長または増殖を減速させるのに有用および/または必要である。これは、例えば、膵臓癌が少なくともI期癌に分類されおよび/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmまたはそれ以下である、または膵臓癌が少なくともII期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmを超える、膵臓癌がII期癌に分類され、および/または癌が膵臓周辺の近傍組織内で成長し始めているが、近傍リンパ節内では成長していない、膵臓癌がIII期癌に分類され、および/または膵臓周囲の組織内に向かって伸びているかもしれない、または膵臓癌がIV期癌に分類され、および/または近傍臓器内に向かって伸びているような腫瘍が樹立し、または広がり、癌が上皮内癌を超えて進行した膵臓癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。膵臓癌は、かなり進んだ進行段階で診断されることが多いため、上皮内癌を超えて進行した腫瘍中の腫瘍細胞を傷害し、または成長を止める能力は、このような癌において顕著である。
【0135】
一般的に実施される方法のいずれか1つまたはそれ以上を使用して、膵臓癌が評価され、または特徴付けられる。膵臓癌は、通常、膵臓とその周辺の画像を生じる試験および手順を用いて診断される。癌細胞が膵臓内および周囲に広がっているかどうかを見いだすのに使用される方法は、病期分類と称される。膵臓癌を検出、診断、および病期分類する試験と手順は、通常、同時に行われる。疾患の病期、および膵臓癌が外科手術によって除去できるかどうかは、胸部X線、理学的検査および病歴、CTスキャン(CATスキャン)、MRI(磁気共鳴画像法)、PETスキャン(陽電子放射型断層撮影法スキャン)、超音波内視鏡(EUS)、腹腔鏡検査、内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)、経皮経肝胆管造影(PTC)などの手順によって、および/または生検によって評価できる。生検では、病理学者がそれらを顕微鏡下で観察し、癌の指標、および/または場合によりBDSLまたはFAPPポリペプチドの発現について検査できるように、細胞または組織が採取される。
【0136】
本明細書で論じるように、発明者らは、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットを使用して、16D10による細胞の処理が、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の低下、ならびにアポトーシス促進Baxタンパク質の増加を誘導することを実証した。抗体がp53およびGSK−3β活性を増加させ、サイクリンD1レベルを低下させることもまた実証された。したがって、本発明の抗原結合化合物および方法は、細胞中でBcl−2ファミリーメンバータンパク質活性を調節し、好ましくは、細胞中でBcl−2ファミリーメンバータンパク質レベルを調節し、好ましくは、Bcl−2タンパク質発現を低下させ、および/またはBaxタンパク質発現を増加させる方法において有利に使用できる。同様に、本発明の抗原結合化合物および方法はまた、細胞中の細胞周期活性を調節し、および/またはG1/S移行において細胞をブロックし、好ましくは、p53またはGSK−3β活性を増加させ、またはおよび/またはサイクリンD1レベルを低下させる方法においても有利に使用できる。細胞は、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現するいずれの細胞、好ましくは、腫瘍細胞(例えば、膵臓腫瘍細胞)、好ましくは、脂質ラフト中にBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞であってもよい。細胞は、1つまたはそれ以上のBcl−2ファミリーメンバーの活性(またはp53、サイクリンD1、またはGSK−3β)(例えば、生物学的活性および/またはタンパク質発現)が調節不全であり、すなわち、正常な細胞(例えば、非腫瘍細胞)と比較して活性が増加または低下しており、および/またはその他のアポトーシス促進または抗アポトーシスまたは細胞周期促進または抗細胞周期タンパク質と比較して不均衡によって特徴づけられる、細胞(例えば、腫瘍細胞)であってもよい。
【0137】
ヒトBcl−2ファミリーのメンバーは、Bcl−2相同性(BH)領域と称される4つの特徴的な相同性領域(BH1、BH2、BH3、およびBH4と命名される)の1つまたはそれ以上を共有する。BH領域は、機能に重要であることが知られており、分子クローニングを介したこれらの領域の欠失は、生存/アポトーシス率に影響を与える。Bcl−2およびBcl−xLなどの抗アポトーシスBcl−2タンパク質は、4つのBH領域を全て保存する。BH領域はまた、アポトーシス促進Bcl−2タンパク質を、いくつかのBH領域を有するタンパク質(例えばBax、Bcl−xS、およびBak)またはBH3領域のみを有するタンパク質(例えばBid、Bim and Bad)に細分する役割を果たす。
【0138】
Bcl−2は、細胞死過程の開始を抑制するため、アポトーシス過程に必須である。免疫組織化学染色は、典型的には、腫瘍中のBcl−2ファミリーメンバーの発現レベルを検出するのに使用されている。場合によっては、膵臓の腫瘍がBcl−2を過剰に発現しうることが見出され、これらの腫瘍細胞は、アポトーシスに抵抗性を示すことが予想される。膵臓の腫瘍の約50%が抗アポトーシスBcl−xLを過剰発現し、Bcl−xLの高まった発現が患者のより短い生存に関連する一方で、Baxの上方制御はより長い生存と関連付けられていることもまた示されている。
【0139】
一態様では、本発明は、Bcl−2ファミリーメンバー調節不全を有するBSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。別の態様では、本発明は、Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全を有する腫瘍を有する患者を治療する方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0140】
一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、(a)細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられるかどうかを判定する工程と、(b)細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる場合、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。他の態様では、本発明は、腫瘍を有する患者を治療する方法であって、(a)患者がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる腫瘍を有するかどうかを判定する工程と、(b)腫瘍がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる場合、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0141】
別の実施態様では、本発明は、BSDLまたはFAPP発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、a)細胞がサイクリンD1の過剰発現またはp53またはGSK−3β活性の欠如によって特徴づけられるかどうかを判定する工程と、b)細胞がサイクリンD1の過剰発現またはp53またはGSK−3β活性の欠如によって特徴づけられる場合、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。一方法では、細胞は、癌、例えば、膵臓癌にかかっている患者に存在する腫瘍細胞であり、方法は患者を治療するために使用される。
【0142】
腫瘍または細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全(または改変されたサイクリンD1またはp53またはGSK−3β活性またはレベル)を有するかどうかの判定は、いずれかの適切な方法、例えば、免疫組織化学または核酸プローブまたはプライマーに基づいたアプローチによって実施でき、例えば、腫瘍または細胞が、Bcl−2ファミリーメンバー調節不全(または改変されたサイクリンD1またはp53またはGSK−3β活性またはレベル)、変異Bcl−2ファミリーメンバー(またはサイクリンD1またはp53またはGSK−3β)、(例えば、タンパク質レベルおよび/または転写物を判定することによる)Bcl−2ファミリーメンバー(またはサイクリンD1またはp53またはGSK−3β)の発現増加または低下を引き起こす変異を有するかどうかを判定するなどのいくつかのパラメーターのいずれを検出してもよい。一態様では、調節不全は、抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー(例えば、Bcl−2、Bcl−xL)の活性増加および/またはアポトーシス促進Bcl−2ファミリーメンバー(例えば、Baxなど)の活性低下を含んでなる。
【0143】
Giovannetti et al. (2006) Mol. Cancer. Ther. 5 (6): 1387-1395で要約されるように、アポトーシス経路の調節は、膵臓癌が抗癌化学療法に対して限定された感受性のみを示す理由の1つでありうると考えられる。Fahy et al. (British Journal of Cancer (2003) 89, 391-397)は、化学増感におけるBcl−2およびBaxの調節を調べた。セリン/スレオニンキナーゼAKTの活性化は、膵臓癌において一般的であり、その阻害は、細胞を化学療法のアポトーシス効果に対して感作させる。Fahy et al.は、膵臓癌細胞におけるNF−kB転写因子の活性化、続いてBCL−2遺伝子ファミリーの転写調節について調べた。ホスファチジルイノシトール−3キナーゼまたはAKTのいずれかの阻害は、Bcl−2のタンパク質レベルの低下およびBaxのタンパク質レベルの増加を生じた。さらに、AKTの阻害は、Bcl−2遺伝子の転写調節ができるNF−kBの機能を低下させた。この経路の阻害は、膵臓癌細胞中のアポトーシスの基底レベルに対してほとんど影響を示されなかったが、化学療法のアポトーシス効果を増加させた。
【0144】
したがって、本発明の抗原結合化合物を有利に使用して、BDSLまたはFAPPポリペプチド発現細胞、特に、腫瘍細胞(例えば、膵臓腫瘍細胞)を化学療法剤による治療に対して感作させることができる。薬剤は、一般に、効果的であるために、細胞がアポトーシスを経ることができる細胞を要するいずれの薬剤であってもよい。好ましい実施態様では、薬剤は、膵臓腫瘍または腫瘍細胞が、それに対して部分的または完全に抵抗性であるか、または抵抗性になることが知られている薬剤である。一実施態様では、本発明の抗原結合化合物を使用して、化学療法抵抗性のBDSLまたはFAPPポリペプチド発現腫瘍を有する患者を治療できる。別の実施態様では、一般に作用機序の一環として、細胞標的がアポトーシスを経ることができる(またはアポトーシスに対して抵抗性でない)ことを要する薬剤である化学療法剤との併用で、本発明の抗原結合化合物を使用して、BDSLおよび/またはFAPPポリペプチド発現腫瘍を有する患者を治療できる。場合により腫瘍または患者は化学療法剤によって前処理されており、および/または(すなわち、本発明の抗原結合化合物との共同治療の不在下で)腫瘍は化学療法剤による治療に対して抵抗性である。一例では、特に膵臓癌の治療のためには、薬剤は、ヌクレオシド類似体(例えば、ゲムシタビン)である。別の例では、薬剤は、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルおよびそれらの類似薬剤)である。別の例では、薬剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、細胞毒性抗生物質またはトポイソメラーゼ阻害剤である。本発明の抗原結合化合物および化学療法剤は、別々に投与されることが多いと理解されるが、本発明の抗原結合化合物および化学療法剤を含んでなる組成物もまた包含される。このような組成物は、本明細書で述べられる方法のいずれかで使用できる。
【0145】
したがって、一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を化学療法剤に感作させる方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物および化学療法剤に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。別の態様では、本発明は、腫瘍を有する患者を治療する方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物および化学療法剤を患者に共同で投与する工程を含んでなる方法を提供する。本明細書で用いられるように、「共同」、「併用」または「併用療法」という用語は同義的に使用されて、2種またはそれ以上の薬剤(例えば、本発明の抗原結合化合物および化学療法剤)が同一疾患の治療または予防に影響を及ぼす状況をいう。「共同」、「併用」または「併用療法」という用語の使用は、疾患にかかっている対象に薬剤を投与する順序を限定しない。第1の療法は、疾患にかかっている対象に、第2の療法施行前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)に、同時に、またはその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に施行できる。
【0146】
さらに、本化合物は、単にそれらの細胞との結合により、すなわち、細胞毒性部分またはADCCを誘導する必要なしに、BSDLまたはFAPP発現細胞を効果的に標的にできるため、それらは(免疫細胞または免疫機能の「相対的不足」を有すると言える)免疫不全患者を治療する上で特に有用である。このような患者としては、例えば、先天性または後天性免疫不全症障害、HIV感染症、リンパ腫、白血病、慢性疲労免疫機能障害症候群、エプスタイン−バーウィルス感染症、ウイルス感染後疲労症候群などの、または例えば組織移植と併用される、自己免疫障害などの障害の治療のための免疫抑制化合物の投与、または癌の治療のための化学療法剤の使用に起因する、免疫系に影響を及ぼす疾患または病状があるものが挙げられる。したがって、本発明は、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる、癌がある免疫不全患者を治療する方法を提供する。好ましい実施態様では、化合物は、抗体である。別の実施態様では、抗体は、細胞毒性部分によって誘導体化され、BSDLまたはFAPP発現細胞の直接傷害が高められる。特定の実施態様では、方法は、投与工程前に、癌細胞サンプルが患者から得られる工程と、化合物が細胞に結合し、および/またはそのアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力が確認される工程を含んでなる。一実施態様では、薬学的有効量は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、患者から採取される癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに十分な量である。
【0147】
本発明はまた、患者においてBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞の増殖または活性を阻害し、または傷害するのに効果的な量で、いずれの適切なビヒクル中に本化合物のいずれか、抗体、その断片および誘導体を含んでなる組成物、例えば、医薬組成物も提供する。組成物は、さらに、一般に薬学的に許容できる担体を含んでなる。抗体および組成物を患者に投与する本方法はまた、動物を治療すること、またはヒト疾患のための動物モデルにおいて、本明細書で述べられる方法または組成物のいずれかの有効性を試験することにも使用できるものと理解される。
【0148】
これらの組成物中で使用してもよい薬学的に許容できる担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンとリン酸水素二ナトリウムとリン酸水素カリウムと塩化ナトリウムと亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコール、およびが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
別の実施態様に従って、本発明の抗体組成物は、さらに、抗体が投与されるため(例えば、膵臓癌)の特定の治療目的のために通常利用される薬剤を含む、1つまたはそれ以上のさらなる治療薬を含んでなってもよい。さらなる治療薬は、通常、治療される特定の疾患または病状のための単一剤療法中でその薬剤について典型的に用いられる量で組成物中に存在する。
【0150】
固形腫瘍治療との関連で、本発明は、外科手術、放射線療法、化学療法などの古典的アプローチと組み合わせて使用されてもよい。したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物が、外科手術または放射線治療と同時に、その前または後に使用され、または患者に従来の化学療法剤、放射線治療または抗血管新生剤、または標的を定めた免疫毒素と共に、その前または後に投与される併用療法を提供する。BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物と抗癌剤は、単一組成物中で、または異なる投与経路を使用して2つの別々の組成物としてのいずれかで患者に同時に投与してもよい。
【0151】
1つまたはそれ以上の薬剤(例えば、抗癌剤)を本治療方法と組み合わせて使用する場合、合わせた結果が、各治療を別個に行った際に観察される相加的効果である必要はない。少なくとも相加効果が一般的に望ましいが、単一治療法の効果に優る腫瘍細胞の増殖効果のいずれの増加が有用である。また、併用治療が相乗効果を示す特別な必要性はないが、これは確かに可能性があり、有利である。BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物を用いた治療は、例えば、数分から数週間および数ヶ月にわたる間隔で、その他の抗膵臓癌剤治療に先行しても、またはそれに続いてもよい。
【0152】
本発明のBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞に対して、免疫介在機序(例えば、ADCC)に主に依存するのではなく、直接にアポトーシスを誘導し、または細胞増殖を阻害するため、本発明の化合物は、免疫系に対して有害な、または抑制的な効果を有することが報告されている薬剤と併せて使用できることが考えられる。例えば、化学療法を使用して、膵臓癌を含む癌を治療してもよい。本明細書で開示される併用治療法において、多様な化学療法剤を使用してもよい。具体例として考えられる化学療法剤としては、DNA複製、有糸分裂、および染色体分離を妨げる薬剤、およびポリヌクレオチド前駆物質の合成および忠実度を乱す薬剤が挙げられる。例えば、薬剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、チロシンキナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ、およびCOX−2阻害剤が挙げられる。チロシンキナーゼ阻害剤は、患者の生体内免疫応答に有害効果を有することが報告されており、メタロプロテイナーゼ阻害剤は、血液毒性を有することが報告されている。さらに、化合物は、AIDSまたはその他の免疫疾患(例えばリンパ腫、白血病)にかかっている患者などの免疫不全患者において、または臓器移植と併せて、または乾癬、関節リウマチ、またはクローン病などの免疫障害の治療として、シクロスポリン、アザチオプリン(イムラン)、またはコルチコステロイドなどの免疫抑制薬を服用している患者において効果的に使用できる。
【0153】
診断または予後診断における化合物の使用
本明細書で実証されるように、抗体は二価の形態であれば、高親和性を有し、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現しない組織に対する非特異的染色がないため、本発明の二価の抗体は、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞(例えば、乳癌)を検出するのに特に効果的である。したがって、抗体は、膵臓癌、膵臓炎とI型糖尿病などの膵臓病変をはじめとし、乳癌および心血管疾患などのBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞が関与する病態の診断、予後診断および/または予測で使用するための利点を有する。例えば、患者中の膵臓(または乳)癌は、本発明の抗体を使用して特徴付けられ、または評価されうる。これは、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞が関与する病態を患者が有するかどうかを判定するのに有用でありうる。方法はまた、このような病態を有する患者が、BDSLまたはFAPP発現細胞中で効果的な治療方法を用いて治療できるかどうかを判定するのに有用でありうる。例えば、方法は、BDSLまたはFAPPに結合する抗原結合化合物(例えば、本発明のいずれの抗体)に患者が反応するかどうかを判定するのに使用できる。
【0154】
したがって、本明細書で述べられる抗体は、膵臓病変、特に、特定の膵臓癌の、好ましくは、インビトロにおける検出に使用できる。このような方法は、典型的には、患者からの生物学的サンプルを本発明による抗体に接触させ、抗体および生物学的サンプル間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体の形成を検出する工程を伴う。好ましくは、生物学的サンプルは、生検によって得られる膵臓組織(免疫組織化学アッセイのための組織切片)または生物学的な液体(例えば、血清、尿、膵液または乳)のサンプルである。複合体は、本発明に従った抗体を標識することにより直接検出でき、または本発明に従った抗体の存在を明らかにする分子(二次抗体、ストレプトアビジン/ビオチンタグなど)を添加することにより間接的に検出できる。例えば、標識は、抗体を放射性または蛍光性のタグとカップリングさせることで達成できる。これらの方法は、当業者によく知られている。癌を検出する場合、FAPPまたはBDSLポリペプチドが生物学的サンプル中に存在するという陽性判定は、一般に患者が膵臓病変(例えば膵臓癌)について陽性であることを示す。したがって、本発明はまた、インビボまたはインビトロで膵臓病変を検出するのに使用できる診断用組成物を調製するための本発明による抗体の使用にも関する。
【0155】
本発明の抗体はまた、対象がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する細胞に向けた治療薬を用いた治療、またはFAPPまたはBSDLポリペプチドそれ自体を対象とする治療に適するかどうかを判定するのに、または対象のそれに対する応答を予測するのにも有用である。好ましくは、治療薬は、FAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗原結合断片(例えば、抗体、本発明の抗体)である。
【0156】
本発明の抗体はまた、FAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体を用いた治療に対する、癌を有する対象の応答を評価するのにも有用でもある。このような方法は、典型的には、患者が、本発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかを評価する工程に関し、FAPPまたはBSDLポリペプチドの発現が応答する対象の指標である。患者がFAPPまたはBDSLを発現する癌細胞を有するという陽性判定は、患者がFAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体(例えば本発明の抗体)を用いた治療に対して陽性応答者であることを示す。
【0157】
応答する対象の同定はまた、癌を有する対象を治療する方法を可能にする。患者が本発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかを評価することが可能であり、発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドの発現は、応答する対象の指標であり、癌細胞がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する前記対象をFAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体(例えば、本発明の抗体)を用いて治療することが可能である。患者がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかの評価は、例えば、患者から生物学的サンプルを得、サンプルを本発明に従った抗体と接触させ、前記抗体および前記生物学的サンプル間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体の形成を検出するなどの、本明細書で述べられる診断法を使用して実施できる。生物学的サンプルは、膵臓組織(生検)または生物学的な液体(例えば、血清、尿、膵液および乳)のサンプルであり得る。
【0158】
膵臓病変、特に、本発明に従った抗体を含んでなる膵臓癌のための診断または予後診断キットもまた包含される。場合により、キットは、診断または予後診断として使用するための本発明の抗体、および治療として使用するための本発明の抗体を含んでなる。前記キットは、生物学的サンプルおよび本発明の抗体間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体を検出する手段、特に、前記抗体を検出可能にする試薬をさらに含んでなることができる。
【0159】
当業者によって理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、一般に、臨床治療で用いられる量前後であり、化学療法剤は、単独で、またはその他の化学療法剤と組み合わせて投与される。
【0160】
本発明のさらなる態様と利点が以下の項目で開示されるが、それらは例証的であり、本明細書の範囲を制限するものではないものとする。
【実施例1】
【0161】
材料と方法
抗体およびその他の試薬
POD標識抗ウサギIgG、POD標識抗マウスIgG、およびウサギおよびマウス免疫グロブリンに対するその他の抗体を、ドイツ国マンハイムのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics(Manheim,Germany))、カリフォルニア州サンディエゴのカルビオケム(Calbiochem(SanDiego,CA))またはマサチューセッツ州ベバリーのセル・シグナリング(Cell Signaling(Beverly,MA))から得た。ペルオキシダーゼ(POD)抱合ヤギ抗ウサギIgGおよび抗マウスIgGを、それぞれセル・シグナリング(Cell Signaling)およびカリフォルニア州サンディエゴのカルビオケム(Calbiochem(SanDiego,CA))から得た。アクチンおよび無関連マウスカッパIgMに対する抗体、プロテアーゼ阻害剤カクテル、ヨウ化プロピジウム、およびアフィジコリンを、ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(StLouis、MO))から得た。Bcl−2に対する抗体を、カリフォルニア州サンタクルーズのサンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA))から得た。その他の抗体(切断カスパーゼ−3(Asp175)、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7(Aspl75)、カスパーゼ−7、切断カスパーゼ−9(Asp330)、カスパーゼ−9、切断PARP(Asp214)、PARP、およびBcl−2)を、マサチューセッツ州ベバリーのセル・シグナリング(Cell Signaling(Beverly,MA))から得た。RPMI1640、DMEM培地、ペニシリン、ストレプトマイシン、トリプシン−EDTAおよび非酵素性細胞剥離液を、フランス国エムランビルのケンブレックス・バイオサイエンス(Cambrex Biosciences(Emerainville,France))またはフランス国ルヴァロワ・ペレのロンザ(Lonza(Le Vallois−Perret,France))から購入した。カスパーゼ阻害剤を、カリフォルニア州サンディエゴのアレクシス(Alexis(SanDiego,CA))またはカリビオケム(Calbiochem)から得た。BaxおよびE−カドヘリンに対する抗体を、カリフォルニア州サンタクルーズのサンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA))から得た。β−カテニンに対する抗体を、英国ケンブリッジのアブカム(Abcam(Cambridge,UK))から得た。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抱合ヤギ抗マウスIgMは、シグマ(Sigma)から得られた。Alexa−抱合ヤギ抗ウサギIgGおよび抗マウスIgGを、カリフォルニア州カールスバッドのモレキュラープローブス(MolecularProbes(Carlsbad,CA))から得た。フモニシンB1、フモニシンB2、L−シクロセリン、フェニル−2−デカノイルアミノ−3−モルホリノ−1−プロパノール(PDMP)、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)、フィリピン、トリトンX−100、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、ヨウ化プロピジウム(PI)、およびアフィディコリンを、シグマ(Sigma)から得た。プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤を、フランス国メイランのロシュ・ダイアグノスティック(Roche Diagnostic(Meylan,France))から得た。DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二塩酸塩)を、ウィスコンシン州マディソンのプロメガ(Promega(Madison,WI))から得た。
【0162】
ペプチドを認識して胎児膵腺房性膵臓タンパク質(FAPP)のO−グリコシル化C末端領域を認識しうるモノクローナル抗体mAb 16D10、膵臓胆汁酸塩依存リパーゼ(BSDL)の癌胎児性グリコアイソフォーム、およびヒトBSDL(およびFAPP)に対するポリクローナル抗体(pAbL64)を、WO2005/095594で述べられるようにして本発明者らの実験室で作り出した。その他の全ての生成物は、最も良い利用可能な等級であった。
【0163】
細胞および試薬
ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および10%熱不活性化FCS(PAN Biotech)を添加したDMEM(Gibco)中で、HEK293T細胞を培養した。ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%熱不活性化FCS(PAN biotech)を添加したRPMI(Gibco)中でSOJ−6細胞を培養した。リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000試薬、トリゾール、スーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素、およびpcDNA3.1ベクターを、インビトロジェン(Invitrogen)から購入した。
【0164】
細胞培養
細胞系(SOJ−6およびPanc−1)はヒト膵臓(アデノ)癌腫が起源である。FAPPを構成的に発現するSOJ−6細胞を、10%FCS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したRPMI 1640培地中で37℃で成育させた。FAPPを発現しないPANC−1細胞を、10%FCS、グルタミン(2Mm)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したDMEM培地中で37℃で成育させた。mAb 16D10を発現する16D10ハイブリドーマを、10%不活性化FCS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したRPMI 1640培地中で37℃で成育させた。
【0165】
細胞死分析
不活性化FCS添加RPMI1640中でのmAb 16D10またはシスプラチンによる処理後に、細胞を収集して氷冷PBSで洗浄し、暗所においてアイソフロー(IsoFlow)緩衝液中の冷ヨウ化プロピジウム溶液(0.5mg/ml)に、室温で10分間再懸濁した。フローサイトメトリー分析を、クールター(Coulter)FACSCaliburを使用して実施した。
【0166】
細胞成長および増殖
細胞増殖を、以前述べられたようにして(Mosmann et al., 1983 J Immunol Methods, 65 (l-2): 55-63)MTTアッセイを使用して判定した。簡単に述べると、細胞を96ウェル培養プレート内の10%FCSを含有する適切な完全培地においてサブコンフルエンス(subconfluence)で播種した。培地を、増加する濃度のFAPPに対する抗体(pAbL64、mAbJ28、およびmAb 16D10)を含む10%不活性化FCS添加の新鮮な培地により24時間で交換した。細胞を、PBSで洗浄し、完全培地中で3時間、100μlのMTT(0.5mg/ml)と共にインキュベートしてPBSで洗浄し、最後に、DMSOと共に37℃で30分間インキュベートした。細胞成長を、MR 5000マイクロプレート分光光度計を使用して550nmで吸光度を測定して判定した。全ての独立した判定を三連で行い、対照と比較した。
【0167】
CD107動員およびIFN−γ産生に関するフローサイトメトリーアッセイ
100 UI/mLのIL−2を用いて一晩刺激したか、または刺激していない、融解し、精製したヒトNK細胞を、SOJ−6またはB221細胞系と、単独で、またはrec16D10(30μg/mL)またはリツキサン(10μg/mL)の存在下で、1に等しいエフェクター/標的比で混合した。次いで、FITC抱合型抗CD107 mAb(Becton Dickinson)およびモネンシン(sigma)の存在下で、細胞を37℃で4時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、2mM EDTAを含有するPBSで洗浄し、細胞抱合を中断して、細胞外マーカーについて染色した(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)から購入したPC5抱合抗CD56およびPC7抱合抗CD3)。次に、細胞を固定し、IntraPrep試薬(Beckman Coulter)を使用して透過処理した。細胞内IFN−γを、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)から購入されたPE抱合抗IFN−γを使用して明らかにした。次に、サンプルを、FACScanto(Becton Dickinson)上で分析した。
【0168】
フローサイトメトリー
SOJ−6およびPANC−1細胞表面における抗原の検出を、次の条件下での間接的蛍光によって行った。細胞を、非酵素性細胞剥離液(Calbiochem)を用いて、37℃で15分間処理して培養プレートから剥離した。後の全工程を4℃で実施した。細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで15分間固定して、PBS中の1%BSAで15分間洗浄した。抗原を、特異的抗体に2時間曝してPBSで洗浄し、最後に、適切なFITC標識二次抗体と共に45分間インキュベートした。次に、細胞を、アイソフロー(IsoFlow)緩衝液で洗浄して再懸濁し、クールター(Coulter)FACSCalibur装置上で分析した。
【0169】
細胞を、冷PBS1×/BSA 0.2%/アジ化ナトリウム0.05%緩衝液を使用して2回洗浄した。染色を、丸形96ウェルプレート内でウェルあたり5×104個の細胞を使用し、異なる抗体を使用して4℃で1時間行った。次に、二次試薬と共にインキュベートする前に、細胞を2回洗浄した。2回の洗浄後、細胞を、PBS1×/ホルムアルデヒド1%内への捕捉前に再懸濁した。染色を、FACScan(カリフォルニア州サンノゼのBecton Dickinson)上で得、結果をFlowJoソフトウェアを使用して分析した。次に、5μg/mlのアフィディコリン(細胞周期を初期S相でブロックする真核生物核DNA複製の可逆的阻害剤)で6時間前処理し、またはしていないSOJ−6細胞を、mAb 16D10、または陰性対照として使用した無関連IgMと共にインキュベートした。非酵素性細胞剥離液を用いて培養プレートから剥離した細胞を、PBS+/+で洗浄し、−20℃の70%エタノールを用いて固定し、PBS+/+で洗浄した。細胞を、既に述べられているようにして[Mi-Lian et al., 2004]、アイソフロー(IsoFlow)緩衝液中の400μg/mlヨウ化プロピジウム溶液に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。細胞周期分布をフローサイトメトリーによって検出し、Mod Fitソフトウェアメイン州トプシャムのVerity Software House,Inc.)によって分析した。単一事象の赤色蛍光を、それぞれ488nmおよび610nmにおける励起および発光を使用して記録し、DNAインデックスを測定した。
【0170】
16D10ハイブリドーマからのRNA抽出およびcDNA調製
16D10ハイブリドーマ細胞(5×106細胞)を、1mlのトリゾール試薬に再懸濁した。200μlのクロロホルムを添加してRNA抽出を行った。遠心分離(15分間、13,000rpm)後に、RNAを、500μlのイソプロパノールを用いて水相から沈殿させた。インキュベーション(10分間、RT)および遠心分離(10分間、13,000)後に、RNAを、70%エタノールで洗浄し、再度遠心分離した(5分間、13,000rpm)。RNAを、H2O(RNA分解酵素を含まない水)に再懸濁した。2μgの特異的RNAを使用し、製造業者の使用説明書に従って、スーパースクリプトII逆転写酵素を使用してcDNAを得た。5’GTGAAGGTCGGTGTGAACGGATT(配列番号17)および3’CTAAGCAGTTGGTGGTGCAGGAT(配列番号18)オリゴヌクレオチドを使用して、PCR反応によってGAPDHを増幅し、cDNAの質をチェックした。
【0171】
16D10抗体のVHおよびVL領域のクローニング
5’AAGCTAGCATGGAATCACAGACTCAGGCT(配列番号19)および3’AAGCGGCCGCCTAACACTCATTTCTGTTGAAG(配列番号20)オリゴヌクレオチドを使用して、PCRによってcDNAから16D10抗体のVL−Ck領域を増幅した。TA−クローニングおよび配列決定後に、配列をNheIおよびNotI制限部位の間でpcDNA3.1ベクターにクローン化した。5’AAGAATTCATGGAATGGAGCTGGGTCTTTC(配列番号21)および3’AAGGTACCTGGAATGGGCACATGCAGATC(配列番号22)オリゴヌクレオチドを使用して、PCRによってcDNAから16D10抗体のVH−CH1領域を増幅した。TA−クローニングおよび配列決定後に、配列をEcoRIおよびKpnI制限部位の間で958 cosFClinkベクターにクローン化した。
【0172】
形質移入
形質移入の24時間前に、HEK−293T細胞を、75cm2フラスコ(5×106細胞/フラスコ)内の抗生物質無添加DMEMに播種した。15μgのpcDNA3.1/VL−Ck構築物および15μgの958 cosFClink/VH−CH1構築物を使用して、製造業者の使用説明書に従って、リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000を使用して形質移入を実施した。形質移入のために、DNA純度を確実にするため、Maxi−prep内毒素フリーキット(Qiagen)を使用した。使用したリポフェクトアミン(Lipofectamine):DNA比を、2:1に固定した。形質移入の4、8、および12日後に培養上清物を収集した。
【0173】
抗体の精製
プロテインAセファロースCL−4Bビーズ(GE Healthcare)を使用して上清物から16D10を精製した。4℃の回転下でバッチ精製を実施した。次に、ビーズを、カラム装填前に4℃で5分間1500rpmで遠心分離した。1XPBS中での徹底的な洗浄後、グリシン0.1MpH3緩衝液を使用して抗体を溶出し、1XPBS緩衝液に対して4℃で一晩透析した。
【0174】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット
SOJ−6細胞を、6ウェル培養プレートにおいて、10%FCS添加RPMI1640培地中で成育させた。密集度(subconfluency)において、培地を除去し、10%不活性化FCS添加の新鮮なRPMI培地により24時間で交換した。次に、SOJ−6細胞を、mAb 16D10またはシスプラチンと共に24時間インキュベートした。インキュベーション終了時に、細胞を、氷冷PBS(Na+およびMg++含まない)で3回洗浄し、遠心分離によって収集し、ペレット化した。ペレットを、2回洗浄し、0.5mlの溶解緩衝液(10mM Tris−HCl pH7.4、150mM NaCl、1%トリトンX−100、1mMベンズアミジンおよびホスファターゼ阻害剤)中で4℃で溶解した。溶解後、ホモジェネートを、4℃において10,000gで10分間遠心分離して透明化した。ビシンコニン酸アッセイ(イリノイ州ロックフォードのPierce)を使用したタンパク質判定のために、アリコートを保存した。還元性SDS緩衝液中のタンパク質(50μg/レーン)を、(分離するタンパク質の分子量範囲に応じて)0.1%SDS添加10、12、または15%ポリアクリルアミド上に分離した。電気泳動後、タンパク質を銀染色した。代替的に、Mini Transblot電気泳動セル(カリフォルニア州ハーキリーズのBioRad)を使用して、タンパク質をニトロセルロース膜上に転写し、適切な一次および二次抗体を使用して転写タンパク質を免役検出した。洗浄後、化学発光基質を用いて、製造業者の使用説明書(スイスのRoche Diagnostics)に従って膜を発色させた。各実験では、一次抗体を取り除くことにより、または非免疫性血清を使用することにより、対照を含めた。
【0175】
アポトーシスおよびカスパーゼ活性
製造業者の使用説明書に従って、プロメガからのCaspACEFITC−VAD−fmk in situ マーカー(Promega)を培地中10μMの最終濃度で添加する前に、8ウェルプレート(ポリスチレン容器、BD Falcon))内で増殖した細胞を、不活性化FCSを含有するRPMI中のmAb 16D10またはマウスIgMで24時間処理した。次に、細胞を、PBS中で洗浄し、2%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、再び1回洗浄した。FITC−VAD−fmkにカスパーゼが作用するとアポトーシス細胞は蛍光性になり、蛍光顕微鏡下で無作為に試験した10視野の集合物において蛍光性細胞数を三連で判定した。
【0176】
実施例14のためのアポトーシスアッセイ(キメラ組み換え16D10によるアポトーシス)
実験を開始する72時間前に、SOJ−6細胞(ウェルあたり20×104細胞)を24ウェルプレート上に播種した。細胞を、20μg/mlの16D10 IgM、またはそれぞれ重鎖および軽鎖についてヒトIgG1定常部およびヒトカッパ軽鎖領域に連結し融合した16D10可変部を含有する20μg/mlのさらなる組み換え16D10 IgG1抗体、25μg/mlツニカマイシンまたは50μg/mlツニカマイシンのいずれかと共にインキュベートした。培養24時間後に、アネキシンV−FITCアポトーシス検出キットI(BD Pharmingen)を使用して、製造業者の説明書に従ってアネキシンV/PI染色を実施した。FACScan(カリフォルニア州サンノゼのBecton Dickinson)上で染色を得て、FlowJoソフトウェアを使用して結果を分析した。
【0177】
核染色
mAb 16D10またはシスプラチンによる処理後、細胞を氷冷PBS中で洗浄し、固定して−20℃において70%エタノールで5分間透過処理し、PBS中の希釈1/1000 DAPI溶液を用いて室温で1分間染色した。次に細胞をPBSで洗浄した。細胞の核形態を蛍光顕微鏡によって調べた。
【0178】
統計学的分析
全てのデータを平均±SDで示した。群間の有意差を、独立スチューデントt検定を使用して判定した。*P<0.01の値は、統計学的に有意であると認められた。
【0179】
実施例1−mAb 16D10で処理した膵臓SOJ−6細胞は、24時間にわたりアポトーシスによる細胞死を経る
SOJ−6細胞のアポトーシス細胞死を刺激するmAb 16D10の能力を、本明細書で述べられるようにして調査した。抗体16D10がSOJ−6細胞のアポトーシスをもたらすことを観察した(図1に示すように、RPMIおよびマウスIgMと比較して、y軸はアポトーシス細胞数/cm2を表す)。
【0180】
実施例2−16D10誘導アポトーシスは、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9活性化によって介在される
この実験では、16D10によって誘導されるアポトーシスを、カスパーゼ阻害剤(カスパーゼ9:Z−LEHD−fmk、カスパーゼ8:Z−IEDT−fmk、カスパーゼ3:Z−DEVED−fmk、およびカスパーゼ混合物:Z−VAD−fmk)の存在下または不在下で前処理し、次に、mAb 16D10で処理した膵臓のSOJ−6細胞上でCaspAceFITC−VAD−fmkを用いて測定した。図2は、mAb 16D10がカスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9を介してアポトーシスを刺激することを示す。
【0181】
mAb 16D10によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスをDAPI染色によっても観察した。結果を図3に示し、図3において核断片化に対応する細胞の軽度の着色によって観察されるように、RPMIは細胞にアポトーシスを誘導せず、シスプラチンは低レベルのアポトーシスを誘導し、抗体16D10は顕著なレベルのアポトーシスを誘導する。
【0182】
実施例3−16D10はBcl−2ファミリーのタンパク質によって制御される
16D10による細胞の処理がBaxタンパク質の増加に付随する抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の低下を誘導することを、本明細書で述べられるようにSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを使用して観察することにより、カスパーゼ活性化がBcl−2ファミリーのタンパク質によって制御されることを示した。実験はまた、16D10の誘導するアポトーシスが、カスパーゼ8および9、およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断によって介在されることも実証した。図4は、ゲル上の結果を示し、左端のレーンはRPMI中のSOJ−6細胞を表し、中央のレーンは抗体16D10と共にインキュベートしたSOJ−6細胞を表し、右端のレーンはシスプラチンと共にインキュベートしたSOJ−6細胞を表す。
【0183】
実施例4−mAb 16D10、抗体pAbL64、およびmAbJ 28は、全てBDSLおよび/またはFAPPに対する抗体であるが、mAb16D10のみが膵臓腫瘍細胞成長を阻害できる
本明細書で述べられるMTTアッセイを使用して細胞成長を評価した。図5は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識する増加濃度のポリクローナル抗体pAbL64を用いた、SOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図5は、pAbL64が細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図6は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識するが、本発明者らによって抗体16D10からのBDSLおよび/またはFAPPの異なるエピトープに結合することが以前に実証されている、増加濃度のポリクローナル抗体J28を用いた、SOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図6は、J28が細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図7は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識する増加濃度のポリクローナル抗体16D10(IgM)による、SOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図7は、16D10が、16D10抗原を発現しないが、FAPPを発現するSOJ−6細胞の低下を引き起こすPANC−1細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図8は、増加濃度の対照IgM抗体を用いたSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理は、対照IgM抗体が、PANC−1およびSOJ−6細胞のいずれの成長または数の低下も引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図9は、増加濃度の抗体16D10または対照IgM抗体のいずれかを用いたSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示し、対照IgM抗体が細胞の減少を引き起こすことができない一方で、16D10が細胞の減少を引き起こすことを実証する(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。
【0184】
図10は、増加濃度の抗体16D10または対照IgM抗体のいずれか、および抗体16D10の存在下または不在下での様々な濃度のメチル−b−シクロデキストリン(MBCD)によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示し、対照IgM抗体が細胞の減少を引き起こさない一方で、16D10が細胞の減少を引き起こすことが実証する(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。MBCDを、16D10と組み合せて使用すると、抗体16D10の細胞成長阻害活性が低下または消失する。これらのデータは、アポトーシス性の細胞死を刺激するmAb 16D10の能力が、膜脂質ラフトミクロドメイン中の16D10抗原の局在に依存することを示す。
【0185】
実施例5−mAb 16D10は、SOJ−6細胞の細胞周期および細胞周期調節タンパク質の発現を調節する
次に、出願人らは、mAb 16D10誘導アポトーシスが、細胞周期の停止によるものかどうかを知ることを望んだ。SOJ−6細胞を、アフィディコリン不在または存在下による前処理後、mAb 16D10不在または存在下による前処理後にDNAプロフィルを観察することにより、処理後のSOJ−6細胞の細胞周期分布を評価した。各実験を三連で実施した。本発明者らは、特異的DNAマーカーであるヨウ化プロピジウムを使用して、フローサイトメトリーによって細胞周期の異なる周期を判定した。mAb 16D10によるSOJ−6細胞の処理は、G1/S停止(G1/S:96%)およびアポトーシス細胞の増加(6%)の両方をもたらす一方で、G2/M相中の細胞の百分率を減少した(4%)。これらの結果は、アフィディコリンによって細胞をG1/S期中で同期化した際に確認した。実際、G2/MからG1/S期へ、次いでG1/Sからアポトーシスへの細胞の移行もまた、アフィディコリン処理後に観察した。後者の場合、細胞はG1/S期でブロックされたため、S期からG0/G1期へ、次いでG0/G1期からアポトーシスへの移行が生じた。
【0186】
本発明者らは、PANC−1細胞において同一実験を実施し、mAb 16D10処理に際して細胞周期における効果がないことを観察した。次に、異なる細胞周期調節タンパク質、具体的にはp53およびサイクリンD1の発現を分析した。予想したとおり、mAb16D10による細胞処理はp53の発現を増加させ、サイクリンD1の発現を低下させた(図11)。サイクリンD1発現は、GSK−3βによって直接調節されうるため(Diehl et al., 1998 Genes Dev. 12 (22):3499-511)、次に、本発明者らは、mAb 16D10で一度チャレンジされた、SOJ−6細胞中の本キナーゼの発現レベルに着目した。総GSK−3βの発現は一定であったが、mAb 16D10とのインキュベーションによる細胞のインキュベーションにおいて、ホスホ−GSK−3β(不活性形態)の減少を観察した(図11)。同時に、これらの結果は、mAb 16D10による細胞の処理がGSK−3βの活性化を誘導し、それがサイクリンD1の分解を導き、G1/S相中の細胞停止を生じることを示唆する。
【0187】
実施例6−膜ラフト構造の組織崩壊は、mAb 16D10の抗増殖効果を低下させる
いくつかの研究は、BSDLがヒト膵臓のSOJ−6腫瘍細胞表面のラフト脂質ドメインと関連することを示している(Aubert-Jousset et al., 2004 Structure, 12 (8):1437-47)。多くのシステムにおいて、脂質ラフトの役割に対処するために、文書で十分に立証されている薬剤を用いた膜脂質ドメインの薬理学的操作が使用されている。この目的で、本発明者らは、それぞれ膜ラフト中のコレステロールを激減させ、またはコレステロールを抑制すると述べられている薬剤、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)およびフィリピンを使用した(Chen et al., 2002 J Biol Chem.;277(51):49631-7)。図12Aで例証されるように、メチル−β−シクロデキストリンおよびフィリピン存在下において、mAb 16D10の抗増殖性効果は低下した。
【0188】
スフィンゴ脂質もまたラフト構造に関与する。したがって、本発明者らは、(グリコ)スフィンゴ脂質生合成代謝阻害剤を使用した(Aubert-Jousset et al., 2004)。効果的な濃度(10μM)で試験したが、L−シクロ−セリン(LCS)(セリンパルミトイル基転移酵素の阻害剤)およびフモニシン1または2(どちらもジヒドロセラミドシンセターゼの阻害剤)のいずれもmAb 16D10の抗増殖性効果を妨げなかった(図12B)。次に、本発明者らは、スフィンゴ脂質合成の最終段階に作用するスフィンゴ糖脂質合成の阻害剤であるフェニル−デカノイルイミノ−モルホリノ−プロパノール(PDMP)を試験した(Lefrancois et al., 2002, J Biol Chem. 277(19): 17188-99)。図12Bに例証されるように、PDMPは、SOJ−6細胞増殖に対するmAb 16D10の効果を損なった。これらの結果は、16D10抗原が、コレステロールに富むミクロドメインに局在しうること、この16D10抗原とこれらのラフトミクロドメインとのつながりがアポトーシスを誘導するのに必要でありうることを示す。しかし、これらのミクロドメインの新合成は、この経路に関連していないようであった。したがって、コレステロールに富むミクロドメインの完全性は、膵臓腫瘍細胞表面に16D10抗原が存在するための必要条件である。
【0189】
実施例7−mAb 16D10は、E−カドヘリン発現およびSOJ−6細胞中のβ−カテニン局在を調節する
Roitbak et al. (2005)は、β−カテニンおよびE−カドヘリン複合体が、ヒト腎臓上皮細胞中の脂質ラフトマーカー、カベオリン−1と関連することを示した。これらの分子は、これらの脂質ラフトドメインにシグナル伝達の役割を付与しうる。免疫ブロット法を実施して、膵臓腫瘍細胞によるE−カドヘリンおよびβ−カテニンの発現を調べた。図13で例証されるように、mAb 16D10で処理したSOJ−6細胞からの溶解産物は、無関連IgMで処理した細胞とは対照的に、高いE−カドヘリンタンパク質発現を示す。mAb 16D10処理に応じた、SOJ−6細胞の細胞膜におけるE−カドヘリンの過剰発現を免疫蛍光顕微鏡の観察により実証し、SOJ−6細胞を、mAb 16D10存在下または不在下で24時間処理し、洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定して、PBS中の1%BSAおよび0.05%サポニンで飽和し、さらに、一次抗体(抗E−カドヘリン、抗β−カテニン、抗ホスホ−β−カテニン)、続いて二次抗体FITC 488nmまたはAlexa 594 nmでインキュベートした。mAb 16D10で処理したか、または処理していないPANC−1細胞は、それらの細胞膜にE−カドヘリンを発現しなかった(データ示さず)。この結果は、E−カドヘリンの過剰発現が、細胞表面における16D10抗原の存在、およびmAb 16D10での処理に依存することを示唆する。しかしながら、mAb 16D10は、β−カテニンの発現に顕著な変化を誘導しなかった(図13)。
【0190】
次に、mAb 16D10を用いた処理がβ−カテニンの局在に影響するかどうかを判定するために、蛍光顕微鏡分析を実施した。mAb 16D10によるSOJ−6細胞の処理後には、β−カテニンは細胞質ゾル区画に見られたが、未処理細胞ではそれは細胞膜に局在した。いくつかの研究は、、Wntシグナル伝達不在下では、β−カテニン残基のリン酸化が、このタンパク質をユビキチン依存性プロテアソーム経路による分解に向かわせることを示している(Aberle et al., 1997 EMBO J. 16 (13): 3797-804およびOrford et al., 1997 Biol Chem. 272(40): 24735-8)。実際に、β−カテニンはmAb 16D10で処理した細胞内でリン酸化され(図13)、それはβ−カテニンが核に転位してサイクリンD1などの標的遺伝子を活性化することができず、代わりに分解されることを示唆する。さらに、β−カテニンは、GSK−3βにより調節され、mAb 16D10で処理されると、それ自体が細胞内で活性化されうる(図11)。これらの結果は、本発明者らの以前の実験が、mAb 16D10がG1/S期において細胞周期停止を引き起こすことを示すことを確認する。これらの結果は、mAb 16D10が、ヒト膵臓腫瘍細胞中においてβ−カテニンを不活性化し、E−カドヘリンの発現を直接または間接的に回復することを示す。最後に、本発明者らは、ラフトミクロドメイン中のE−カドヘリン、β−カテニン、および16D10抗原の結合が、mAb 16D10がアポトーシスを誘導するのに必要かどうかを調べることを所望した(図13)。
【0191】
実施例8−SOJ−6は16D10によって認識される抗原を発現するが、PANC−1細胞は発現しない
本明細書で実証されるように、抗体16D10は、SOJ−6細胞中で細胞成長を阻害できるが、PANC−1細胞中では阻害できない。フローサイトメトリー実験を実施して、16D10によって認識される抗原が細胞表面に見られるかどうかを調査した。SOJ−6およびPANC−1細胞それぞれを表す図14および15に結果を示す。図14において、抗体16D10はSOJ−6細胞上に存在する抗原に結合することを見出し、図15において、抗体16D10はPANC−1細胞上に存在する抗原に結合しなかった。各例において、16D10結合を陰性対照および対照マウスIgM(Sigma)と比較した。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【0192】
実施例9−HEK293T細胞中における二価の16D10キメラ抗体の生成
マウス16D10抗体のVHおよびVL鎖に対応するcDNAを、ハイブリドーマDNAのRT−PCR増幅によって得た。H:VHおよびCH1領域を増幅してクローン化し、配列決定してヒトIgG1−FcとインフレームでCOS−fc−結合ベクターにサブクローン化した。L:VLおよびCk領域を増幅してクローンし、配列決定してpcDNA3発現ベクターにサブクローン化した。
【0193】
マウス16D10抗体の可変(Fab2’様)領域、およびヒトIgG1抗体の定常(Fc)領域を含んでなるキメラ抗体を生成した。この抗体をrec16D10と称する。抗体を、HEK293T細胞内において、(958COS−Fc−結合−VH−16D10およびpcDNA3−VL−16D10ベクターの同時形質移入によって)一過的に、または(pcDNA6−Fc−VH−16D1OおよびpcDNA3−VL−16D10ベクターを使用した同時形質移入によって)安定的に、生成した。生成した抗体の純度および収率を、Prot−A精製後にSDS−PAGE分析によって確認し、活性をSOJ−6細胞におけるFACSによって確認した。図16、17を参照されたい。
【0194】
IgM 16D10抗体およびキメラrec16D10をそれぞれトリプシンと共にインキュベートしてSOJ−6細胞への結合に対するその効果を調査した。トリプシンが両方の抗体の細胞への結合を実質的に低下させることを見出した。
【0195】
実施例10−IgM 16D10の内部移行
共焦点顕微鏡を用いるパルスチェイス実験を使用して、培養液中におけるIgM 16D10抗体との生存細胞との相互作用を評価した(パルス:4℃で30分;チェイス:培養液中37℃で0または2時間)。実質的に全てのmAbが2時間以内に内部移行したことを観察した。mAbのフラクションはLAMP1と共に共局在した。
【0196】
実施例11−細胞増殖に対する抗体の効果
IgM抗体16D10およびキメラ抗体rec16D10のSOJ−6細胞増殖に対する効果を調べた。細胞を抗体なし、様々な量の16D10またはrec16D10抗体、または無関連IgG抗体の培養中でインキュベートした。抗体16D10が、細胞増殖を、25または50μg/mlのいずれかにおいて約50%低下させたのに対し、rec16D10は、増殖を、25および50μg/mlにおいて、それぞれ20%より多く、および35%より多く、低下させた(図18)。したがって、Rec16D10および16D10IgMのいずれもSOJ−6増殖における直接否定的な効果を及ぼした。
【0197】
実施例12−rec16D10がNK細胞(ADCC)を活性化する能力の試験
キメラ抗体rec16D10(30μg/ml)を、標的SOJ−6細胞と、NK細胞と共に、IL−2(100U/ml)(図19)による一晩の処理の存否でインキュベートした。対照として、リツキサン抗体(10μg/ml)を、標的B221細胞と共に使用した。エフェクター細胞および標的細胞を、1/1(100000NK/ウェル)の比率で使用した。2つのドナーに由来する溶解し、精製したNK細胞(NK1およびNK2)を、抗体および標的細胞と共にインキュベートした。CD107染色およびIFN−γ分泌によりNK細胞の活性化を調べた。IL−2処理後、SOJ−6細胞存在下で、rec16D10は、(抗体なしまたはリツキサン存在の対照中の<30%および<20%に対して)それぞれおよそ53%および45%のNK1およびNK2細胞中でCD107陽性染色を誘導した(図20)。同様の条件下で、約30%のNK1およびNK2細胞は、(それぞれ抗体の不在下またはリツキサンありのNK1およびNK2細胞中の16%および13%未満に対して)IFN−γを分泌した(図21)。これらの結果は、(ヒトIgGのFc部分を有する)二価の抗体rec16D10は標的細胞の存在下でNK細胞を効果的に活性化でき、それにより標的細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できることを実証する。
【0198】
実施例13−IgM 16D10およびIgG rec16D10抗体の組織特異性
IgM 16D10およびキメラIgG rec16D10抗体の染色特異性を、様々な健康な組織のそれらの各染色を調べることにより評価した。IgM抗体16D10は、扁桃、唾液腺、末梢神経、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱をはじめとする多くの組織において陽性染色を示した。対照的に、キメラ抗体rec16D10を用いた染色は、これらの健康な各組織に対して陰性であった。したがって、キメラIgG抗体rec16D10は、非特異的交差反応性の欠如に関してIgM抗体16D10よりも優れている(図22)。
【0199】
実施例14−16D10およびrec16D10の固定化したSOJ−6細胞への結合
予備FACS実験において、レギュラーの16D10mAb染色は、固定化したSOJ−6細胞において安定しているように見えることを観察し、このことはIgM形態が良好な結合活性で細胞表面抗原に結合することを示す。二価の16D10形態では、細胞表面結合は安定性がより低く、平均半減期は約80分であった。これまでにイネイト・ファルマ(Innate Pharma)で研究されている抗体のほとんどが5×105〜5×106M−1s−1の範囲のkon結合速度定数を有することを考慮すると、組み換え16D10抗体二価の親和力は治療用抗体の工業開発に適合するナノモル濃度程度(例えば、10〜1nM)であることを推定できる。
【0200】
実施例15−組み換え16D10 IgG1を使用したSOJ−6細胞アポトーシスの誘導
予備実験において、2時間の培養後のアネキシンVおよびアネキシンV/PI染色により評価されるごとく、二価のキメラ組み換え16D10抗体がSOJ−6細胞のアポトーシスを誘導できることを観察した。16D10のIgG1およびIgMの形態のいずれもSOJ−6細胞のアポトーシスを誘導した。2つの抗体のアポトーシス活性をツニカマイシン、および処理なしの対照と比較した。結果を図23に示す。
【0201】
本明細書で引用した全ての公報および特許出願は、それぞれの各公報または特許出願が参照によって具体的に個々に援用されたとおり、その内容全体を参照によって本明細書に援用したものとする。
【0202】
前述の発明は、明確な理解のために例示および実施例によりある程度詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神と範囲を逸脱することなく、それに特定の変更および修飾を加えてもよいことは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓構造物に由来するグリコペプチド、抗体、および診断と治療におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管癌の20%超を占める膵外分泌部癌は、最も悪性度が高い癌形態の1つである。例えば、フランスでは、毎年4,000件の新しい症例が診断されている。さらに、その発生頻度は世界の多くの地域で著しく上昇している。生存率は1年目で20%を超えず、5年目には3%であり、診断後の平均生存は3〜4ヶ月である。この低生存率は、腫瘍の深い解剖学的位置、敏感で特異的な初期の生物学的マーカーの不在、およびその無症候性の性質が、実質的に常に遅い診断をもたらすという事実をはじめとする、多数の原因に由来する。さらに膵臓癌は、主に腹膜および肝臓転移の形成を通じて非常に迅速に進行する。目下、膵臓癌の治療のためには不十分な治療上の選択肢しかない。
【0003】
膵臓癌の治療のために、化学放射線治療および免疫療法の2つの異なるアプローチが研究されている。化学放射線治療の臨床試験としては、標準化学放射線治療計画へのゲムシタビンの追加が挙げられ、これは患者の全ての生存率をわずかに改善することが示されている。ゲムシタビンへのエルロチニブの追加はわずかな改善を提供する。一般に化学放射線療法はいくらかの肯定的結果を示しながらも、依然として芳しくない治療的選択肢である。
【0004】
免疫療法の臨床試験としては、膵臓癌細胞全体、可溶性VEGFまたはEGFR、MUCl、ガストリン、およびメソテリンに由来するペプチドを用いる直接的なワクチン接種が挙げられる。例えば、VEGF(ベバシズマブ)またはEGFR(セツキシマブ)に対する抗体を、ゲムシタビン、チロシンキナーゼ阻害剤(エルロチニブ)、微小管不安定化剤(タキソテール)、またはシクロホスファミド(シトキサン)などの薬剤と組み合わせることによる間接的免疫療法アプローチもまた試みられた。このような試行は進行中である。
【0005】
有用な診断および治療マーカー(例えばSpan−1、Du−Pan−2、CA19−9、CAR−3、CA242、およびCO−TL1)を同定する努力において、悪性の膵臓上皮細胞に対する多数のモノクローナル抗体が作り出されているが、ごく僅かなもののみが真に膵臓腫瘍細胞に対して特異的であり、それらの反応性は患者の遺伝子型に左右されることが多い(例えば、非特許文献1を参照)。したがってこのタイプのほとんどのマーカーは、膵外分泌部癌の効果的な診断または治療のための実質的利点を提供できなかった。
【0006】
以前の研究では、ヒト膵臓腫瘍細胞は、胆汁酸塩依存リパーゼ(BSDL)の癌胎児性形態であるFeto−Acinar膵臓タンパク質(FAPP)を過剰に発現することが示されており、これは16D10およびJ28グリコトープなどのいくつかのグリコトープの特異的発現をもたらすグリコシル化の変化と関連付けられている。膵臓腫瘍SOJ−6細胞の細胞膜に、モノクローナル抗体mAb16D10によって認識されるグリコトープに結合ずる32kDaのペプチドがあることもまた示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kawa et al. (1994) Pancreas; 9:692-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって当該技術分野で、膵外分泌部およびその他の形態の癌を治療するための新しいアプローチおよびツールに対する高い必要性がある。本発明は、これらおよびその他の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、とりわけBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導でき、および/または増殖を遅らせることができ、細胞死をもたらし、またはそれらの成長および増殖を停止させるという驚くべき発見の結果である(本明細書全体を通して「BSDLまたはFAPP」という語句は排他的でなく、すなわち、それは「BSDLおよび/またはFAPP」または「BSDLおよびFAPP」もまた意味できるものとする)。アポトーシスがBSDLまたはFAPPに結合する抗体によって始動されると、結果として生じるプログラム化された細胞死は、少なくともカスパーゼ−3、カスパーゼ−9、カスパーゼ−8活性化および/またはポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断により介在される。さらに、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の減少は、Baxタンパク質の増加と関連付けられており、カスパーゼ活性化がタンパク質のBcl−2ファミリーによって制御されることを示す。したがって、本発明の化合物は、特に、BSDLまたはFAPPを発現し、またはアポトーシスに感受性である(例えばカスパーゼ−3、−9、−8、PARPなどを発現する)、癌細胞のアポトーシスを誘導すること、および癌細胞を含んでなる癌にかかっている患者を治療することに有用である。本発明の化合物が細胞増殖を阻害する際、それは、例えば、GSK−3βを活性化することにより、例えばp53活性を増加させ、サイクリンD1レベルを低下させることにより、少なくともG1/Sで細胞をブロックすることによって生じる。したがって、本発明の化合物は、特に、BSDLまたはFAPPを発現し、p53またはGSK−3β介在G1/S細胞周期停止に感受性である、癌細胞の増殖を停止すること、または癌細胞を含んでなる癌にかかっている患者を治療することに有用である。
【0010】
重要なことに、本発明の化合物は、腫瘍細胞、特に、BSDLまたはFAPP発現膵臓腫瘍細胞を直接標的にし、アポトーシスを介してそれらの死を引き起こし、および/またはそれらの増殖を止めることができる。有意なことに、これらの効果は、化合物とBSDLまたはFAPPポリペプチドとの相互作用のみに依存するため、それらは「裸」の化合物(特に、抗体)、すなわち、毒性化合物で修飾または誘導体化されていない化合物についても生じることができる。さらに、化合物が抗体である場合、それらは、腫瘍細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)に依存せずに効果的に腫瘍細胞を標的にできる(しかしながら、ADCCは多くの箇所でも起こり、治療の有効性をさらに高めることが強調されるべきではある)。したがって、本化合物は、例えば、AIDSにかかっている患者、化学療法を受けている患者、または免疫抑制剤投与を受けている患者などの免疫系が損なわれている患者にとって特に有用である。
【0011】
本発明の化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞に特異的に結合し、それによりそれらのアポトーシスを誘導し、またはそれらの成長および増殖を阻害できる、いずれのタイプの分子(例えばポリペプチド、小分子)でありうるが、本発明の好ましい化合物は抗体である。二価のIgG抗体は、典型的にアポトーシスまたは細胞増殖阻害によって標的細胞数を直接減少させるだけでなく、Fc末端もまた含んでなり、十分な結合親和力を有してADCCを介した細胞死を誘導できることから、特に好ましい抗体は二価のIgG抗体である。さらに、特定の抗BSDLまたは抗FAPP抗体、特にIgM抗体などの多量体抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって迅速に内部移行される傾向にあり、それによりADCCを誘導する上で有効ではないことが知見されている。したがって、適切な抗体(BSDLまたはFAPP、最も好ましくは、抗体16D10によって認識されるFAPPエピトープを標的にする二価のIgG抗体)を選択することで、2つの独立した機序(アポトーシス誘導/細胞周期阻害およびADCC)を介することにより、BSDLまたはFAPP発現腫瘍細胞を標的とすることができる。したがって、これらの知見は、合わせて、とりわけ所望のアポトーシス促進または抗細胞増殖の特性、ならびに典型的にADCC誘導効果を有する、特に有効な抗原結合化合物、最も好まくは抗体を生成するのに予想外の方法を提供する。かかる抗原結合化合物、ならびに典型的な抗原結合化合物を生成し、使用する方法が記載される。
【0012】
本発明は、抗原結合化合物を使用する方法を提供し、例えば、本発明は、細胞死を誘導するか、または細胞増殖を阻害するための方法であって、細胞を誘導するか、または細胞増殖を阻害するのに有効な量におけるBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物に、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する癌細胞などの細胞を曝露することを含んでなる方法を提供する。本発明の目的では、「細胞増殖」は、細胞の成長または増殖のいずれの態様、例えば、細胞成長、細胞分裂、または細胞周期のいずれの態様を意味しうる。細胞は、細胞培養中、または例えば癌を患っている哺乳類などの哺乳類中のものであってもよい。本発明はまた、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する方法であって、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに有効な量の本明細書に記載されるごときBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物(例えば、外因性抗体)に、細胞を曝露することを含んでなる方法を提供する。したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドの発現によって特徴づけられる病状、例えば、膵臓癌にかかっている哺乳類を治療するための方法であって、本明細書で開示される抗原結合化合物の薬学的有効量を哺乳類に投与することを含んでなる方法を提供する。好ましい実施態様において、化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、それにより細胞のADCCを誘導するのに有効である抗体、例えば、二価のIgG抗体である。好ましい実施態様では、抗体は、例えば、SOJ−6細胞などのBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1、またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。
【0013】
本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合し、膵臓癌の治療に有用である、抗原結合化合物、特に、抗体を生成する方法を提供する。本方法を使用して生成される抗原結合化合物は、膵臓腫瘍細胞、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するその他のいずれの細胞、特に、抗体16D10によって認識されるBSDLおよび/またはFAPPポリペプチド上のエピトープを特異的に標的とすることができる。抗原結合化合物は、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を抑制することにより、ならびに、場合により結合のみにより広がった細胞の影響を中和することにより、免疫系による(例えばADCCを介した)破壊のためにそれらを標的とすることにより、および/または細胞を放射性同位体、毒素、または薬剤などの細胞毒性薬物と接触させることで直接傷害することにより、細胞増殖の病理学的影響を制限できる。BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する癌(またはBSDLまたはFAPP発現と関連付けられているその他の病状)の治療のために抗原結合化合物を使用する方法もまた、提供される。好ましい実施態様では、抗体は、例えば、SOJ−6細胞などのBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合の半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は16D10以外の抗体である。
【0014】
別の実施態様では、抗原結合化合物は、腫瘍細胞の死滅を誘導し、および/またはそれらの成長を停止できるため、例えば、膵臓癌などの腫瘍の容積を低下させ、または制限するために、例えば、外科的に切除または減量できる、またはできない腫瘍中で、または腫瘍が樹立し、または広がった膵臓癌中で、例えば、膵臓癌が少なくともI期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cm以下である、または膵臓癌が少なくともII期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmを超える、膵臓癌がII期癌に分類され、および/または癌が膵臓周辺の近傍組織内で成長し始めているが、近傍リンパ節内では成長していない、膵臓癌がIII期癌に分類され、および/または膵臓周囲の組織内に向かって伸びているかもしれない、または膵臓癌がIV期癌に分類され、および/または近傍臓器内に向かって伸びているような樹立した腫瘍中で、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドと結合する化合物を使用できる。膵臓癌はかなり進んだ進行段階で診断されることが多いため、上皮内癌を超えて進行した腫瘍中の腫瘍細胞を傷害し、または成長を止める能力は、かかる癌において顕著である。
【0015】
意義深いことに、特定の実施態様において、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物は、特に、抗体が使用される場合、免疫細胞介在性細胞傷害(例えば、ADCC)のみに依存しないため、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物は、不完全なまたは抑制された免疫系を有する患者において効果的に使用でき、および/または追加的抗腫瘍剤、特に免疫系に悪影響を及ぼすことが知られている治療薬と組み合わせて効果的に使用できることが予想される。例えば、免疫不全患者(例えば、HIV感染にかかっている)、免疫抑制薬を服用している患者(例えば、臓器移植後、または自己免疫障害の治療として)、または化学療法剤を服用している患者は、特にこのような化合物を用いた治療法の良好な候補である。
【0016】
さらに、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、アポトーシス促進または抗細胞増殖特性を有する本発明の抗原結合化合物は、膵臓腫瘍細胞の成長を根絶または停止できるため、それぞれのアポトーシス促進または抗細胞増殖活性が高められないように、アポトーシス促進化合物によっても、例えば、細胞が最初に成長停止を被り、次いで根絶されうるように、本明細書で提供されるインビトロおよびインビボの方法において、本明細書で開示される抗原結合化合物と、その他の抗細胞増殖および/またはアポトーシス促進剤とを併用することが所望されてもよい。
【0017】
したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合し、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害することができる抗原結合化合物を提供する。好ましくは、抗原結合化合物は、抗体16D10と同一のBSDLまたはFAPPポリペプチド上のエピトープに結合する。一実施態様では、抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの(例えば、単離されたグリコペプチドまたはそれを発現する細胞との)結合について、抗体16D10と競合する。一実施態様では、化合物は、抗体16D10以外の抗体である。
【0018】
本発明の方法の一実施態様では、抗原結合化合物により認識されるBSDLまたはFAPPポリペプチドは、BDSLのC末端ペプチドである。別の実施態様では、抗原結合化合物は、配列Ala Pro Pro VaI Pro Pro Thrを有する7個のアミノ酸とグリコシル化部位を有する一般的な不変部分を含んでなる、1つまたは複数の11個のアミノ酸の反復C末端ペプチド配列を含んでなり、またはからなるBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する。前記一般的な不変部分は、任意選択的に、いずれかの側にグルタミン酸によって置換されることが多いグリシンが隣接し、アミノ酸AspおよびSerをN末端側に含有する。
【0019】
好ましい実施態様では、抗原結合化合物は「裸」であり、放射性同位体、毒性ペプチドまたは毒性小分子で官能性が付与されていない(例えば「裸」の抗体)。別の実施態様では、抗原結合化合物は、細胞毒性抗原結合化合物であり、放射性同位体、毒性ペプチド、および毒性小分子からなる群から選択されるエレメントを含んでなる。別の実施態様では、抗原結合化合物は、ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である。別の実施態様では、放射性同位体、毒性ペプチド、または毒性小分子は、抗原結合化合物に直接結合する。
【0020】
別の実施態様では、抗原結合化合物は、例えば、二価のキメラまたはヒト化抗体などの抗体である。このような一実施態様では、抗体は、抗体16D10の可変(抗原結合)領域を含んでなる。好ましい実施態様では、抗体はFc末端を含んでなる。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10によって特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1ナノモル濃度以下の結合親和力を有する。別の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞によって実質的に内部移行されないため、標的(BSDLまたはFAPP発現)細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる。別の好ましい実施態様では、抗体は低フコシル化される。
【0021】
したがって、本発明は、膵臓癌にかかっている患者を治療する方法であって、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する本発明に記載される抗原結合化合物の薬学的有効量を患者に投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、患者を治療する方法であって、a)患者内の膵臓癌を評価する工程と、b)癌が、例えば、癌が樹立され、外科的に治療でき、外科的に治療できず、上皮内癌を超えて進行しており、および/または少なくとも2cmの直径を有し、および/または少なくともI期に分類されるような、癌細胞の傷害、細胞のアポトーシス誘導、または癌細胞の成長または増殖の阻害が必要である段階にあると判定された場合、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合して膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または成長または増殖を阻害できる抗原結合化合物(例えば、抗体)を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、化合物は、抗体、例えば、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる二価のIgG抗体(好ましくは、本実施態様およびその他の実施態様において、Fc末端を含んでなる)抗体である。
【0022】
一実施態様では、本発明は、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗原結合化合物の能力を試験する工程と、iii)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有すると判定された場合、抗原結合化合物を選択する工程と、場合によりiv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法を提供する。一実施態様では、工程iii)で選択される化合物は、抗体であり、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程iv)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらは、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。典型的に、工程ii)は、細胞、例えば、BSDLまたはFAPP発現細胞、好ましくは、SOJ−6細胞または膵臓癌にかかっている患者から採取された細胞のごとき腫瘍細胞が化合物が接触され、細胞の増殖または生存が評価され、標準的なアッセイに関し、公知のアポトーシスまたは細胞増殖/周期調節遺伝子の活性の解析も同時に行われることが多い。
【0023】
別の実施態様では、本発明は、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗体を試験する工程と、iii)細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力について抗体を試験する工程と、iv)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有し、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できると判定された場合、抗体を選択する工程と、場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に提供する工程を含んでなる、癌の治療で使用するのに適する抗体を生成する方法を提供する。一実施態様では、工程iv)で選択される抗体は、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程v)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。好ましい実施態様では、抗体はIgGである。さらに、抗体は、好ましくは、二価である。別の好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。
【0024】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療における使用に適する抗体を生成する方法であって、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗体を試験する工程と、iii)細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞による抗体の内部移行について試験する工程と、iv)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有し、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞によって実質的に内部移行されないと判定された場合、抗体を選択する工程と、場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、工程iv)で選択される抗体は、例えば、ヒト化またはキメラ化することにより、工程v)の前にヒト投与に適するように作成される。場合により、複数の抗原結合化合物が工程i)で提供され、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するそれらの能力について、工程ii)でそれぞれ試験される。好ましい実施態様では、抗体はIgGである。さらに、抗体は、好ましくは二価である(Fc末端を含んでなる)。別の好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の細胞表面に対して、少なくとも40、60、80、100、120分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ、好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープに対して、50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は低フコシル化される。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、i)多量のBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を生成する工程と、ii)前記多量の抗原結合化合物からのサンプルをアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について試験する工程と、iii)抗原結合化合物がアポトーシス促進または抗細胞増殖活性を有すると判定された場合、医薬および/または医薬の製造における使用のための量を選択する工程と、場合によりiv)ヒトへの投与のための量を調製し、場合により多量の選択された抗原結合化合物を薬学的に許容できる担体と一緒に配合する工程とを含んでなる方法を提供する。
【0026】
別の実施態様では、本発明は、癌の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、ii)アポトーシス促進または抗細胞増殖活性能力について各抗原結合化合物を試験する工程と、iii)前記細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる抗原結合化合物を選択する工程と、iv)場合により抗原結合化合物をヒト投与に適するようにする工程と、および/または場合によりv)選択された抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する細胞による抗体の内部移行が評価される追加的工程を含んでなり、工程iii)で選択された抗体が、BSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されないことを見いだすことで、癌の治療で使用するためのその適合性が確認される。別の実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する抗体の能力が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で選択される抗体が、細胞、例えば、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できることを見いだすことで、癌の治療で使用するためのその適合性が確認される。
【0027】
別の実施態様では、本発明は、抗原結合化合物を生成する方法であって、i)1人またはそれ以上の膵臓癌にかかっている患者から採取されたBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍細胞に特異的に結合する抗原結合化合物を提供する工程と、ii)1人またはそれ以上の膵臓癌にかかっている患者から採取された腫瘍細胞に対するアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について抗原結合化合物を試験する工程と、iii)抗原結合化合物が、1人またはそれ以上の患者から採取された腫瘍細胞の相当数のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する場合、抗原結合化合物をヒトへの投与に適するようにする工程と、iv)場合によりヒトに適する抗原結合化合物を多量に生成する工程を含んでなる方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する細胞による抗体の内部移行が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で使用される抗体がBSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されないことを見いだすことで、膵臓癌の治療での使用するためのその適合性が確認される。別の実施態様では、前記方法は、化合物が抗体であり、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する抗体の能力が評価される追加的工程を含んでなり、当該工程中、工程iii)で使用される抗体がBSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のADCCを誘導できることを見いだすことで、膵臓癌の治療での使用するためのその適合性が確認される。
【0028】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、方法は、工程i)の前に、非ヒト哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒトIg遺伝子導入マウス)をBSDLまたはFAPPポリペプチドで免疫する工程を含んでなってもよい。別の実施態様では、前記方法は、工程i)の前に、(例えば、ファージディスプレイ方法およびこの類似方法を介して)抗原結合化合物のライブラリーを作成し、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する抗原結合化合物を選択する工程を含んでなる。
【0029】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、工程i)および/または工程ii)の抗原結合化合物または抗体は、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まない。
【0030】
各抗原結合化合物または抗体が細胞のアポトーシスを誘導し、またはその増殖を阻害する能力を試験する工程は、多様な利用できるいずれかの方法に従って実施できる。例えば、前記試験する工程は、標的細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞)の死滅を検出し、核断片化を検出し、(例えばmカスパーゼ活性化などの)活性を検出し、またはアポトーシスに関与するタンパク質レベルの増加および/または低下を検出する工程を含んでなってもよいが、これらに限定されるものではない。同様に、細胞の成長または増殖に影響を与える化合物を試験する工程は、例えば、細胞数、密度、DNA複製、分裂指数の計測、細胞成長または増殖に関与するタンパク質またはその他の分子のレベルの測定、または細胞成長または増殖のいずれのその他の測定などの多様な利用できる方法のいずれかに従って実施できる。
【0031】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、アポトーシス促進または抗細胞増殖活性を試験する工程は、抗原結合化合物がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または成長または増殖を阻害するかどうかを判定する工程を含んでなる。場合により、細胞は、脂質ラフト中でBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する。場合により、細胞は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するようにされる。場合により、細胞は腫瘍細胞系である。場合により、細胞は膵臓癌細胞であり、場合により、SOJ−6細胞である。場合により、細胞は、例えば、膵外分泌部癌などの癌がある患者から採取された腫瘍細胞である。
【0032】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するかどうか判断する工程を免疫エフェクター細胞、特にNK細胞の不在下で実施できる。
【0033】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、アポトーシス促進または抗細胞成長または増殖活性を試験する工程は、抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞内で、アポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質またはマーカーの活性またはレベルを調節するどうかを判定する工程を含んでなる。好ましくは、アポトーシスについては、調節タンパク質はカスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである。細胞成長または増殖については、調節タンパク質またはマーカーは、例えば、PCNA、Ki−67、サイクリンD(例えば、サイクリンD1)などのサイクリン、E2F、Rb、p53、MCM6、GSK−3β、Bcl10またはBrdU組み込みである。
【0034】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物をヒトへの投与に適するようにする工程は、抗BSDLまたはFAPP抗体をキメラ、ヒト、またはヒト化する工程を含んでなる。化合物をヒトへの投与に適するようにする工程はまた、化合物を薬学的に許容できる担体と共に処方する工程を含んでなることもできる。
【0035】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、多量の抗原結合化合物を生成する工程は、適切な培地中で抗原結合化合物を発現する細胞を培養し、抗原結合化合物を回収する工程を含んでなる。場合により、細胞は、抗原結合化合物を発現するように作成された組み換え宿主細胞である。一実施態様では、化合物はモノクローナル抗体であり、細胞はハイブリドーマである。
【0036】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物、特に、本方法によって生成された抗原結合化合物は、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まない。一実施態様では、抗原結合化合物はBSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体である。本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物はBSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。本発明のいずれかの方法の一実施態様では、化合物は、16D10以外の抗体である。本発明のいずれかの方法の別の実施態様では、化合物は、抗体16D10のキメラ、ヒト、またはヒト化バージョンである。
【0037】
本発明のいずれかの方法の一実施態様では、抗原結合化合物、好ましくは、抗体は、Fc受容体結合部分、好ましくは、IgGアイソタイプの重鎖定常部、場合により、ヒトIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する。好ましい実施態様では、抗体はIgG1抗体である。本発明はまた、(例えば、それは親の抗体と同一の抗原に結合できる)実質的に同一の抗原特異性および活性を有する抗体の断片および誘導体も包含する。このような断片としては、Fab断片、Fab’2断片、CDR、およびScFvが挙げられるが、これらに限定されるものではない。化合物が抗体である場合、抗体は、典型的に、例えば、キメラ、ヒト化またはヒト抗体である。一の好ましい実施態様では、抗体は、組み換えキメラ抗体である。一のかかる実施態様では、抗BSDLまたはFAPP抗体、例えば、16D10のマウス重鎖の領域Cu2、Cu3、およびCu4は、ヒトIgG、例えば、IgG1により置換される。別の好ましい実施態様では、抗体は、マウス抗BSDLまたはFAPP抗体、例えば、16D10の定常部が、重鎖および軽鎖の両方についてヒトIgG1定常部により置換されるキメラ抗体である。
【0038】
特定の実施態様では、本発明の化合物は、多量体(すなわち架橋)IgG抗体である。好ましい実施態様では、抗体は、四量体(2つの重鎖および2つの軽鎖)であり、それにより二価である。特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる。特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき、あるいはBSDLまたはFAPPを発現する細胞によって実質的に内部移行されない。その他の特に好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPを発現する腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき、BSDLまたはFAPPを発現する細胞の細胞介在性傷害(ADCC)もまた誘導できる。別の特に好ましい実施態様では、抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される組織と交差反応しない。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、SOJ−6細胞の表面に対して、少なくとも40、50、60、70、80、100、120、150、200分以上の結合半減期を有する。その他の好ましい実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPエピトープ(例えば、16D10によって認識されるエピトープ)に対して50、40、30、20、10、5、1またはそれより低いナノモル濃度の結合親和力を有する。
【0039】
別の実施態様では、本発明は、本発明のいずれかの方法に従って生成された抗原結合化合物を包含する。
【0040】
本発明はまた、抗原結合化合物のいずれかを含んでなる医薬製剤も包含し、特に本発明の抗体のいずれかと薬学的に許容できる担体とがキットとして提供される。キットは、例えば、膵臓癌の治療におけるその使用に関する説明書および化合物を含んでなってもよい。キットは、化合物および担体を含んでなってもよく、キットは製造された(例えば、ガラス、プラスチックなどの)容器中に化合物を含んでなってもよい。抗体を発現する細胞、例えば、ハイブリドーマもまた包含される。
【0041】
一実施態様では、本発明の抗原結合化合物または抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。本発明はまた、抗体16D10と実質的に同じ抗原特異性および活性を有する抗体の断片および誘導体も包含する(例えば、親の抗体と同一の抗原に結合できる)。このような断片としては、Fab断片、Fab’2断片、CDR、およびScFvが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
一実施態様では、本発明の組成物および/または方法は、抗体16D10、特に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された細胞によって産生されるIgM抗体16D10を特異的に除外する。
【0043】
したがって、別の実施態様では、本発明は、抗体、好ましくは、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる単離された抗体を提供し、前記抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合し、抗体は16D10ではない。
【0044】
別の実施態様では、本発明は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含んでなる二価の抗体を提供し、重鎖は、Fc受容体に結合できるIgG重鎖定常部を含んでなり、抗体は、(a)BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害でき;(b)BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導でき;(c)BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する。
【0045】
別の実施態様では、本発明は、(a)配列番号7のアミノ酸配列に由来して、ヒトIgG鎖定常部と融合する1つ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる重鎖、および(b)配列番号8のアミノ酸配列に由来して、場合によりヒトカッパ鎖定常部と融合する1つ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる軽鎖を含んでなる、二価の抗体を提供する。
【0046】
場合により、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されないことにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できることにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子などの細胞毒性薬物を含まないことにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できることにより特徴づけられる。本明細書での抗体のいずれかは、さらに、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞中で、アポトーシス調節タンパク質の活性またはレベルを調節できることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、カスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーの活性またはレベルを調節できることにより特徴づけられる。別の実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞中で、細胞増殖または成長調節タンパク質の活性またはレベルを調節する。別の実施態様では、抗体は、BSDLまたはFAPP発現細胞において、GSK−3β、サイクリンD1、およびp53からなる群から選択される細胞増殖または成長調節タンパク質の活性またはレベルを調節する。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、IgGアイソタイプ、場合によりヒトIgGまたはIgG1アイソタイプの重鎖定常部を有することにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、四量体であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、二価であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体であることにより特徴づけられる。別の実施態様では、本明細書での抗体のいずれかは、さらに、低フコシル化されることにより特徴づけられる。
【0047】
本明細書で述べられている抗体のいずれかの一実施態様では、抗体は、少なくとも40、60、80、100、120、180、240分以上の半減期で、BSDLまたはFAPP発現細胞の表面に結合する。別の実施態様では、抗体は、少なくとも50、40、30、20、10、5、または1ナノモル濃度の結合親和力でBSDLまたはFAPPエピトープに結合する。
【0048】
本発明はまた、本明細書で述べられている抗原結合化合物または抗体のいずれかと、薬学的に許容できる担体とを含んでなる医薬組成物も包含する。他の態様では、本発明は、本発明の抗原結合化合物または抗体と、膵臓病変またはFAPPまたはBSDLを発現する病変、例えば、膵臓癌の治療または診断における前記抗原結合化合物または抗体の使用のための説明書とを含んでなるキットを包含する。別の実施態様では、細胞、例えば、ハイブリドーマもまた提供される。
【0049】
その他の態様では、癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害し、および/または癌にかかっている患者または個体を治療する方法であって、a)癌または癌細胞がアポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するかどうかを判定する工程と、およびb)癌または癌細胞がアポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するという陽性判定の場合、癌細胞を有効量の本発明の抗原結合化合物のいずれかに接触させる工程を含んでなる方法が提供される。なお別の態様では、本発明は、癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害し、および/または癌にかかっている患者を治療する方法であって、a)癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現するかどうかを判定する工程と、b)癌または癌細胞がBSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現するという陽性判定の場合、癌細胞を有効量の上記請求項のいずれか1つに記載の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。場合により、これらの方法では、癌細胞を接触させる工程は、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる。好ましくは、薬学的有効量は、患者において癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに効果的な量である。場合により、これらの方法では、化合物は、抗体であり、方法は、抗体のBSDLまたはFAPP発現細胞による内部移行が評価され、または抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力が評価される追加的工程を含み、当該工程中、抗体が実質的に内部移行されず、またはBSDL−および/またはFAPP−発現細胞の細胞介在性傷害を誘導できるという判定が、抗体が工程b)における使用に適することを示す。特定の実施態様では、接触させる工程は、例えば、このような方法が生体外で実施される場合、またはそれらが免疫不全にかかっている患者(例えば、AIDSなどの病状、NK細胞レベルを低下させる病状、化学療法剤の投与、または例えば組織移植手順または自己免疫障害の治療に併用される免疫抑制剤の使用に起因する)において実施される場合、免疫エフェクター細胞、例えば、NK細胞の不在または相対的不足下で実施される。
【0050】
他の態様では、本発明は、患者において腫瘍容積を低下させる方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0051】
他の態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞、場合により腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する方法であって、細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに有効量で、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。場合により、前記接触させる工程は、免疫エフェクター細胞、例えば、NK細胞の不在または相対的不足下で、および/または生体外で実施される。場合により、前記方法は、抗原結合化合物が細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できるかどうかを判定する工程をさらに含んでなる。場合により、化合物は、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、および/またはBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる抗体であり、上記接触させる工程は免疫エフェクター(例えばNK)細胞の存在下で実施される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、mAb 16D10がSOJ−6細胞のアポトーシス細胞死を刺激する能力を実証する(RPMIおよびマウスIgMとの比較;y軸はアポトーシス細胞数/cm2を表す)。
【図2】図2は、カスパーゼ阻害剤(カスパーゼ9:Z−LEHD−fmk、カスパーゼ8:Z−IEDT−fmk、カスパーゼ3:Z−DEVED−fmk、およびカスパーゼミックス:Z−VAD−fmk)ありまたはなしで前処理され、次にmAb 16D10を用いて処理された膵臓SOJ−6細胞について、CaspAce FITC−VAD−fmkを用いて測定された16D10によるアポトーシス誘導を示す。mAb 16D10は、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9を通じてアポトーシスを刺激する。
【図3】図3は、DAPI染色により観察されるmAb 16D10によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスを示す。RPMIは細胞にアポトーシスを誘導せず、シスプラチンは低レベルのアポトーシスを誘導し、抗体16D10は顕著なレベルのアポトーシスを誘導した。
【図4】図4は、16D10による細胞処理が、Baxタンパク質の増加と関連付けられている、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2減少を誘導することを実証するゲル上の結果を示し、カスパーゼの活性化がBcl−2ファミリータンパク質によって制御されていることを示す。実験はまた、16D10の誘導するアポトーシスが、カスパーゼ8および9、およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断を通じて介在されることも実証した。左端のレーンはRPMI中のSOJ−6細胞を表し、中央のレーンは抗体16D10と共にインキュベートされたSOJ−6細胞を表し、右端のレーンはシスプラチンと共にインキュベートされたSOJ−6細胞を表す。
【図5】図5は、ヒトBDSL/FAPPを認識するポリクローナル抗体pAbL64の濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴う、MTTアッセイの結果を示す。pAbL64は細胞の成長または数の低下を引き起こせない(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図6】図6は、ヒトBDSL/FAPPを認識するが、本発明者らによって抗体16D10からのBDSL/FAPP上の異なるエピトープに結合することが実証されている、ポリクローナル抗体J28の濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。J28は細胞の成長または数の低下を引き起こすことができる(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図7】図7は、ヒトBDSL/FAPPを認識するポリクローナル抗体16D10(IgM)の濃度増加によるSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。図7は、16D10が16D10抗原を発現しないPANC−1細胞の成長または数の低下を引き起こせないが、FAPPを発現するSOJ−6細胞の低下を引き起こすことを示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図8】図8は、対照IgM抗体がPANC−1またはSOJ−6細胞のどちらの成長または数の低下も引き起こせないことを示す、対照IgM抗体の濃度増加によるSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図9】図9は、16D10が細胞の減少を引き起こすのに対し、対照IgM抗体は引き起こさないことを実証する、抗体16D10または対照IgM抗体どちらかの濃度増加によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す(x軸はmAb濃度、y軸は細胞の%成長である)。
【図10】図10は、16D10または対照IgM抗体のどちらかの抗体の濃度増加、および抗体16D10なしまたはありの様々な濃度のメチル−b−シクロデキストリン(MBCD)によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を伴うMTTアッセイの結果を示す。MBCDは16D10と組み合わせて使用すると、抗体16D10の細胞成長阻害活性を低下させまたは無効にする。このデータは、アポトーシス細胞死を刺激するmAb 16D10の能力が、膜脂質ラフトミクロドメイン中の16D10抗原の局在性に依存することを示唆する。
【図11】図11:mAb 16D10はG1/S相において細胞周期進行を停止させ、p53、サイクリンD1、およびGSK−3βの発現を制御する。等量の細胞溶解産物(50μg)をSDS−PAGEに装填し、ニトロセルロースに転写して、mAb 16D10による処理後、特異的抗体(p53、サイクリンD1、ホスホ−GSK−3β、およびGSK−3β)でプローブした。内部対照としてβ−アクチンを使用した。各実験は三連で実施した。
【図12】図12:膜ラフト構造の解体は、mAb 16D10の効果を低下させる。SOJ−6細胞を8000細胞/ウェルで接種して、一晩成育させた。培地を6時間にわたり、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)またはフィリピン(A)またはスフィンゴ糖脂質生合成の代謝阻害剤(B)を含有する新鮮な培地によって置換し、次に抗体と共に含有される不活性化FBSがある新鮮な培地によって置換した。細胞生存度をMTTアッセイによって判定した。結果を3つの独立した実験の平均±SDで表す。
【図13】図13:SOJ−6およびPANC−1細胞中のE−カドヘリン/β−カテニン複合体に対するmAb 16D10処理の効果。SOJ−6細胞を25μg/mlのmAb 16D10ありまたはなしで24時間にわたり処理した。等量の細胞溶解産物(50μg)をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースに転写して、特異的抗体(抗ホスホ−β−カテニン、抗β−カテニン、抗E−カドヘリン、および抗β−アクチン)でプローブした。
【図14】図14は、抗体16D10がSOJ−6細胞上に見られる抗原に結合することが判明したことを実証するフローサイトメトリーの結果を示す。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【図15】図15は、抗体16D10がPANC−1細胞上に見られる抗原に結合しなかったことを実証するフローサイトメトリーの結果を示す。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【図16】図16は、HEK293T細胞中における二価の16D10キメラ抗体生成で使用されるストラテジーを示す。
【図17】図17は、VH、CH1、IgG1−Fc、およびVLおよびCk配列を表示する、16D10 VHおよびVLクローニングストラテジーを示す。
【図18】図18は、SOJ−6細胞増殖に対する16D10およびRec16D10処理の効果を示す。
【図19】図19は、Rec16D10介在NK細胞活性化を試験するのに使用されるストラテジーを示す。
【図20】図20は、Rec16D10によるNK細胞に対するCD107動員の誘導を示す。
【図21】図21は、Rec16D10によるNK細胞に対するIFN−γ分泌の誘導を示す。
【図22】図22は、Rec16D10とその他の抗体を使用した組織交差反応研究の結果を示す。
【図23】図23は、ネキシンVおよびV/PI染色により観察される、組み換えキメラIgG1 16D10抗体によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスを示す。細胞はそれだけでは低いまたは皆無のアポトーシスを被り、ツニカマイシン、IgM抗体16D10、およびIgG1抗体16D10のそれぞれは顕著なレベルのアポトーシスを誘導する。
【図24】図24は、VH−16D10−HuIgG1およびVL16D10−HuIgLカッパの配列をそれぞれ示す。CDR1、2、および3は、各配列について太字で示す。可変部配列は各配列について下線で示し、残りの配列はそれぞれヒトIgG1およびカッパタイプの定常部配列に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
定義
本明細書で用いられるように、以下の用語は、特に断りのない限り、それらに与えられた意味を有する。
【0054】
「抗体」という用語は、本明細書で用いられるように、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体をいう。重鎖中の定常ドメインのタイプ次第で、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要クラスの1つに配される。これらのいくつかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのサブクラスまたはアイソタイプに分割される。典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含んでなる。各四量体は2つの同一ペアのポリペプチド鎖から構成され、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。したがって、四量体、例えば、IgG四量体は、2つの抗原認識部位を有するので「二価」である。このような二価の四量体、特にIgG四量体は、(抗体がFc末端を含み、それによりFc受容体に結合できさえすれば)抗増殖/アポトーシス促進活性の両方を有して、標的細胞のADCCを誘導できるので本発明において好ましい。各鎖のN末端は、主として抗原認識の役割を担う、アミノ酸約100〜110個またはそれ以上の可変部を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖をいう。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」、および「μ」と称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置についてはよく知られている。IgGおよび/またはIgMは本発明で用いられる好ましいクラスの抗体であり、IgGが生理学的状況において最も一般的な抗体であり、実験室環境で最も容易に作製されることからIgGが特に好ましい。さらに、IgM抗体などの多量体抗体は、IgG四量体などの四量体形態よりも迅速に内部移行されることが知見されており、それにより腫瘍細胞の(ADCCを介した)免疫細胞介在性の標的化を誘導する効果が弱い。IgG四量体はより特異的でもあり、すなわち多量体IgM抗体よりも非特異結合が少ない。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。特に好ましいのは、ヒト化、キメラ、ヒト抗体、あるいはヒトに適する抗体である。「抗体」はまた、本明細書で述べられている抗体のいずれの断片または誘導体を含む。
【0055】
「特異的に結合する」という用語は、組み換え形態のタンパク質、その中のエピトープ、または関連する標的細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞など)の表面に存在する天然タンパク質のいずれかを用いて評価されるごとく、抗原結合化合物または抗体が、好ましくは、競合的結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドと結合できることを意味する。特異的な結合を判定するための競合的結合アッセイおよびその他の方法については、以下でさらに詳しく述べられ、当該技術分野でよく知られている。
【0056】
「ヒトに適する」抗体とは、例えば、本明細書で述べられる治療方法のために、ヒトにおいて安全に使用できる、いずれの抗体、誘導体化抗体、または抗体断片をいう。ヒトに適する抗体としては、全てのタイプのヒト化、キメラ、または完全ヒト抗体と、あるいは、少なくとも抗体の一部がヒトに由来するか、または天然の非ヒト抗体が使用される場合に一般に誘導される免疫応答を回避するように改変されたいずれかの抗体とが挙げられる。
【0057】
「毒性」または「細胞毒性」ペプチドまたは小分子は、細胞増殖を減速、停止、または逆転でき、あらゆる検出可能な様式でそれらの活性を低下させることができ、または直接または間接的にそれらを傷害するいずれの化合物を包含する。好ましくは、毒性または細胞毒性化合物は、細胞を直接傷害することにより、アポトーシスを誘導することにより、または別の方法により作用する。本明細書で用いられるように、毒性「ペプチド」は、非天然アミノ酸または修飾結合を有するペプチド−またはポリペプチド−誘導体を含む、あらゆるペプチド、ポリペプチド、またはそれらの誘導体が挙げられる。毒性「小分子」としては、好ましくは10kD、5kD、1kD、750D、600D、500D、400D、300D、またはより小さなサイズのあらゆる毒性化合物またはエレメントが挙げられる。
【0058】
「免疫原性断片」とは、本明細書では、(i)膜結合受容体およびそれに由来する変異体をはじめとする、前記断片に結合する抗体、および/または前記断片を含んでなるあらゆる形態の分子に結合する抗体の作成、(ii)MHC分子と前記断片に由来するペプチドとを含んでなる二分子複合体と反応するT細胞に関するT細胞応答の刺激、(iii)哺乳類の免疫グロブリンをコードする遺伝子を発現するバクテリオファージまたは細菌などの形質移入されたビヒクルの結合などの免疫応答を誘導できるいずれのポリペプチド断片またはペプチド断片を意味する。代替的に、免疫原性断片はまた、共有カップリングによってキャリアタンパク質に抱合されたペプチド断片、前記ペプチド断片をそのアミノ酸配列中に含んでなるキメラ組み換えポリペプチド構築物、および配列が前記断片をコードする部分を含んでなるcDNAで形質移入された細胞を含む、上で定義される免疫応答を誘導できるいずれの構築物もいう。
【0059】
本発明のために、「ヒト化」抗体とは、1つまたはそれ以上のヒト免疫グロブリンの定常および可変フレームワーク領域が、動物免疫グロブリンの結合領域、例えば、CDRと融合される抗体をいう。かかるヒト化抗体は、結合領域が由来する非ヒト抗体の結合特異性が維持されるが、非ヒト抗体に対する免疫反応が回避されるように設計される。
【0060】
「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変部)が、異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常部と、またはキメラ抗体、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬剤などに新しい特性を付与する全く異なる分子と結合するように、定常部またはその一部が改変、置換または交換されている抗体分子、または(b)可変部またはその一部が、異なるまたは改変された抗原特異性を有する可変部で改変、置換または交換されている抗体分子である。
【0061】
「ヒト」抗体とは、抗原投与に応じて特定のヒト抗体を産生するように「改変された」遺伝子導入マウスまたはその他の動物から得られる抗体である(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するGreen et al. (1994) Nature Genet 7:13; Lonberg et al. (1994) Nature 368:856;Taylor et al. (1994) Int Immun 6:579を参照のこと)。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体のトランスフェクション法、ならびにファージディスプレイ技術によっても構築でき、それらは全て当該技術分野で知られている(例えばMcCafferty et al. (1990) Nature 348:552-553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によっても作り出される(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するU. S. Pat. Nos. 5,567,610および5,229,275を参照のこと)。
【0062】
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、その天然状態に見出されるように、通常、それに付随する構成要素を実質的にまたは本質的に含まない物質をいう。純度および均質性は、典型的に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して調べられる。調製物中に存在する主な化学種であるタンパク質が実質的に精製される。
【0063】
「生物学的サンプル」という用語は、本明細書で用いられるように、生物学的な液体(例えば、血清、リンパ液、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄または膵臓生検)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーをいう。前記用語は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工化学模倣剤であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0065】
「組み換え」という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターに関連して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが異種の核酸またはタンパク質の導入または天然核酸またはタンパク質の改変によって修飾されていること、または細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。それゆえ、例えば、組み換え細胞は、細胞の天然(非組み換え)形態内では見出されない遺伝子を発現し、または異常に発現され、過小発現され、または全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0066】
抗原結合化合物を生成する一般法
「抗原結合化合物」という用語は、その他の化合物よりも高い親和性で、および/または非BSDLまたはFAPPポリペプチドを超える特異性または選択性で、抗原、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチド(または本明細書で定義されるような糖鎖変異体(glycovariant)またはその他の変異体またはその誘導体)に特異的に結合する分子、好ましくはタンパク様分子をいう。抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドと優先的に結合する、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、または小分子量化合物であってもよい。好ましい実施態様では、本発明による特異的な結合薬剤は、単独で、または公知技術により供されるその他のアミノ酸配列と組み合わせた、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、多特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、「裸」抗体、ならびにそれらの断片、変異型または誘導体である。
【0067】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物は、いずれかの適切な方法を使用して得ることができる。BSDLまたはFAPPポリペプチドに対するそれらの結合は、一般に、アポトーシスを誘導するか、または細胞増殖を阻害するそれらの能力(例えば、直接的な細胞傷害、アポトーシス調節経路を介したシグナル伝達、核断片化、細胞増殖の阻害、細胞周期の阻害)を評価する前に試験されるが、試験は、例えば、アッセイおよび関連する抗原結合化合物の性質による都合に応じて、あらゆる適切な順序で実施できるものと理解される。本発明の化合物は、BSDLまたはFAPP結合活性について、またはアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について、あらゆる適切な手段を用いて、例えば、多数の分子をスクリーンするハイスループットスクリーニングを用いて、同定することができる。代案としては、例えば、所望の特性を有する既知の化合物に関連する化合物の小数のグループまたはその誘導体などのより少数の分子または個々の分子でさえも調製して試験できる。
【0068】
化合物の活性試験
抗原結合化合物が得られると、一般に、標的細胞と反応し、その活性に影響し、および/またはそのアポトーシスを誘導し、またはその増殖を阻害するその能力について、評価する。抗原結合化合物が標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力を評価することは、方法のあらゆる適切な段階で実施でき、実施例が本明細書で提供される。このアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力の評価は、治療に使用するための抗体(またはその他の化合物)の同定、生成および/または開発に関わる様々な1つまたはそれ以上の工程において有用でありうる。例えば、アポトーシス促進または抗細胞成長/増殖の活性は、候補の抗原結合化合物を同定するスクリーニング法の中で評価されてもよく、あるいは、抗原結合化合物が選択され、ヒトに適するようにし(例えば、抗体の場合、キメラまたはヒト化する)、抗原結合化合物を発現する細胞(例えば、組み換え抗原結合化合物を発現する宿主細胞)が得られ、機能的な抗体(またはその他の化合物)を産生するその能力について評価し、および/または多量の抗原結合化合物が生成され、(例えば、製品のバッチまたはロットを試験するための)活性について評価する方法において評価されてもよい。一般に、抗原結合化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合することが知られている。工程は、アポトーシス促進または抗細胞増殖活性について、複数の(例えば、ハイスループットスクリーニング法に用いる極めて多数またはより少数の)抗原結合化合物を試験し、または(例えば、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドに結合する単一抗体が提供される場合、)単一化合物を試験する工程を含んでもよい。
【0069】
それゆえ、BSDLまたはFAPPポリペプチドへの結合に加えて、標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する抗原結合化合物の能力が評価されうる。一実施態様では、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現する細胞は、プレート、例えば、96ウェルプレート内に取り込まれ、様々な量の適当な化合物(例えば、抗体)に曝される。生体用色素、すなわち、アラマーブルー(AlamarBlue)(米国、カリフォルニア州、カマリロのバイオソース・インターナショナル(BioSource International))のごとき無傷細胞によって取り込まれる色素を添加し、洗浄して過剰な色素を除去することにより、光学濃度によって生存細胞数を測定できる(より多くの細胞が抗体により傷害されるか、または阻害されると、光学濃度がより低下する)。(例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するConnolly et al. (2001) J Pharm Exp Ther 298:25-33を参照のこと)。別の例は、核断片化を検出する染色の使用であり、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)がDNAに結合するのに用いられてもよく、次いで蛍光を検出することにより断片化を可視化できる。細胞増殖または成長を測定するために、細胞数または密度を判定する、分裂指数を判定するなどのいずれの適切な方法、または細胞周期中の細胞数またはそれらの局在を判定するいずれのその他の方法が使用できる。細胞増殖または生存を測定するアッセイ、または細胞活性を検出するアッセイなどのいずれのその他の適切なインビトロアポトーシスアッセイが等しく使用でき、例えば、標的細胞を含有するマウスなどの動物モデルに抗体を投与して、標的細胞の生存または活性に対する抗体投与の効果を経時的に検出するなどの生体内アッセイについても同様である。
【0070】
抗原結合化合物がアポトーシス促進活性を有するかどうかを判定するのに使用できるアッセイとしては、細胞性アポトーシス機構の構成要素に対する化合物の効果を判定するアッセイもまた挙げられる。例えば、本明細書の実施例で提供されるように、アポトーシスに関与するタンパク質の増加または減少を検出するアッセイが使用できる。一例では、細胞(例えば、SOJ−6細胞またはその他のBDSLおよび/またはFAPP−発現細胞)が抗原結合化合物に曝され、例えば、Bcl−2タンパク質ファミリーメンバー(例えばBcl−2、Bax、Bac、Badなど)、またはカスパーゼ(例えば、カスパーゼ3、7、8および/または9)などのアポトーシス促進および/または抗アポトーシスタンパク質のレベルまたは活性が測定される。16D10抗原を発現しない細胞(例えば、PANC−1細胞)は、場合により対照として使用できる。インビトロまたはインビボで腫瘍の増殖を検出可能な程度に停止させ、または逆転できるか、または腫瘍細胞を傷害し、またはその増殖を停止できる、いずれの抗原結合化合物、好ましくは、ヒトに適切な抗体が本方法で用いられうる。好ましくは、抗原結合化合物は、増殖を傷害し、または停止でき(例えば、インビトロまたはインビボで標的細胞数の増加を妨げる)、最も好ましくは、抗原結合化合物は、このような標的細胞の死を誘導し、このような細胞の総数の低下をもたらすことができる。特定の実施態様では、抗体は、標的細胞数または標的細胞増殖を10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低下させることができる。標的細胞は、例えばBDSLまたはFAPP−発現細胞、16D10によって認識されるBDSLまたはFAPPエピトープを発現する癌細胞、膵臓癌細胞、および/またはSOJ−6細胞であってもよい。
【0071】
したがって、好ましい一実施態様では、本発明は、膵臓癌などのBSDLまたはFAPPポリペプチド発現増殖性障害の治療で使用するのに適する抗原結合化合物を生成する方法であって、a)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、b)抗原結合化合物が結合して相当数の標的細胞のアポトーシスを直接誘導し、または増殖を阻害する能力を試験する工程と、c)標的細胞のアポトーシスを直接誘導し、または増殖を阻害できる前記複数の抗原結合化合物から、抗原結合化合物を選択および/または生成する工程を含んでなる方法を提供する。本方法のいずれにおいても、「相当数」は、例えば、細胞の30%、40%、50%、好ましくは60%、70%、80%、90%以上の百分率を意味できる。
【0072】
抗原結合化合物が得られれば、一般に、ADCCを誘導する能力について評価される。抗体依存性細胞傷害(ADCC)を試験する工程は、典型的に、結合する抗FAPP/BSDL抗体を有するFAPP/BSDL発現標的細胞(例えば、SOJ−6細胞またはその他のBDSLまたはFAPP−発現細胞)が、Fc受容体を保有するエフェクター細胞によって認識され、後に補体の関与を必要とせずに溶解される細胞介在細胞毒性反応を評価する工程に関する。16D10抗原を発現しない細胞(例えば、PANC−1細胞)は、場合により対照として使用できる。典型的なADCCアッセイは、本明細書の実施例セクションに記載される。ADCCを誘導する能力は、抗原結合化合物が標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力を有するかどうかについて試験しても試験しなくとも試験することができる。抗原結合化合物が、(a)ADCCを誘導し、(b)標的細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するその能力の両方について試験される場合、(a)および(b)のアッセイはいずれの順序で実施できる。
【0073】
一の好ましい実施態様では、本発明は、膵臓癌などのBSDLまたはFAPPポリペプチド発現増殖性障害の治療で使用するのに適する、抗原結合化合物を生成する方法であって、a)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する複数の抗原結合化合物を提供する工程と、b)抗原結合化合物が結合して相当数の標的細胞のADCCを誘導する能力を試験する工程と、c)前記複数抗原結合化合物から標的細胞のADCCを直接誘導できる抗原結合化合物を選択および/または生成する工程を含んでなる方法を提供する。本方法のいずれにおいても、「相当数」は、例えば、細胞の30%、40%、50%、好ましくは、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の百分率を意味できる。
【0074】
抗体またはその他の本発明の化合物はまた、典型的に、単にBSDLまたはFAPP抗原に対するそれらの特異性に関して評価されるだけでなく、癌細胞、例えば、膵臓癌細胞に対するそれらの特異性についても評価される。一般的な方法を用いて、動物におけるインビボ法(例えば、in situ免疫染色法)および単離された細胞または細胞系を使用するインビトロ法(例えば、ウエスタンブロッティング)を含む、異なる細胞または組織中において化合物または抗体の交差反応性を試験することができる。好ましい実施態様では、本発明の抗体は、扁桃、唾液腺、末梢神経、リンパ節、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱からなる群から選択される非腫瘍組織と交差反応しない。
【0075】
BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドの生成
本明細書で述べられるように、特定の実施態様では、抗原結合化合物を得る工程(例えば、マウスの免疫化)および/または抗原結合化合物を評価する(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合を評価する)工程は、BSDLまたはFAPPポリペプチドの使用に関していてもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、当該技術分野で知られているいずれの適切な様式で調製できる。BSDLまたはFAPPポリペプチドおよびそれらを調製する例示的な方法は、例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するWO2005/095594において提供される。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、全長BSDLまたはFAPPポリペプチドまたはその一部であってもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、場合により、第2のポリペプチド、タグ、ポリマー、またはいずれのその他の適切な分子を含むが、これらに限らない別のエレメントに連結されていてもよい。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、一般にグリコペプチドである。一例では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、正常な膵臓の分泌物中に存在する消化脂肪分解酵素であるBSDLの反復C末端配列を含んでなり、またはそれに由来する、グリコペプチドを含んでなり、またはそれからなる。別の例では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、膵臓の病変の特異的マーカーであるFAPP(BSDLの癌胎児性形態)の反復C末端配列を含んでなり、またはそれに由来する、グリコペプチドを含んでなり、またはそれからなる。特定の実施態様では、BSDLまたはFAPPポリペプチドは、配列Ala Pro Pro VaI Pro Pro Thrを有するアミノ酸7個の一般に不変の部分とグリコシル化部位とを含んでなる、アミノ酸11個の反復C末端ペプチド配列を含んでなる。前記一般に不変の部分は、グルタミン酸によって頻繁に置換されるグリシンがいずれかの側に位置し、アミノ酸AspおよびSerをN末端側に含有する。WO2005/095594に示されるように、グリコペプチド構造を有するこのようなポリペプチドは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に由来する宿主細胞による発現および分泌によって調製でき、C末端ペプチドの1つまたはそれ以上の反復配列をコードするDNA分子を含む遺伝子構築物、特に、BSDLの組み換え体、例えば、16反復配列の全部または一部を含んでなり、また、グリコシル基転移酵素活性を有する少なくとも1つの酵素をコードするDNA分子などの遺伝子構築物、特にCore 2β(1−6)N−アセチルグルコサミニル基転移酵素、α(1−3)およびα(1−4)フコシル基転移酵素活性を有するフコシル基転移酵素FUT3、またはα(1−3)フコシル基転移酵素活性のみを有するフコシル基転移酵素FUT7からなる群から選択され、前記膵臓癌の特異的マーカーを構成するものを含んでなる。一例では、WO2005/095594は、BSDLまたはFAPPのアミノ酸11個から構成される1〜40の反復C末端ポリペプチドを含んでなる、好ましくは組み換えされ、場合により単離され、または精製されたグリコペプチドを提供し、前記ポリペプチドがグリコシル化され、グリコシル化されたエピトープを保有し、場合によりタイプI糖尿病にかかっている患者において、誘導された抗体との特異的免疫学的反応を引き起こし、ヒトまたは動物の生物学的な液体から精製され、または組み換えられるかのいずれかである。組み換えポリペプチドは、グリコシル化を開始するのに必要とされる酵素機構を含んでなる従来の宿主細胞における発現によって生成でき、前記宿主細胞は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子と、グリコシル基転移酵素から、特にCore 2β(1−6)N−アセチルグルコサミニル基転移酵素(C2GnTと略記される)、α(1−3)ガラクトシル基転移酵素、フコシル基転移酵素3(FUT3と略記される)、およびフコシル基転移酵素7(FUT7と略記される)から選択される1つ以上の酵素をコードする遺伝子とを含んでなるように遺伝学的に改変される。
【0076】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体の生成
本発明は、ヒトで使用するのに適し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを標的とする、抗体、抗体断片、または抗体誘導体の生成、同定および/または使用に関する。本発明の抗体は、当該技術分野で知られている多様な技術のいずれかによって生成されてもよい。典型的に、それらはBSDLまたはFAPPポリペプチドを含んでなる免疫原を用いて、非ヒト動物、好ましくはマウスの免疫化によって生成される。BSDLまたはFAPPポリペプチドは、細胞全体または細胞膜、単離されたBSDLまたはFAPPポリペプチド、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドの断片または誘導体、典型的には免疫原性断片、すなわち、ポリペプチド発現細胞の表面に露出したエピトープを含んでなるポリペプチドの一部を含んでなってもよい。このような断片は、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも7個の連続アミノ酸、なおより好ましくは、その少なくとも10個の連続アミノ酸を含有する。いずれのまたは全ての患者において、腫瘍細胞表面の全てのまたは一部分に時折または常に存在するいずれのその他のBSDLまたはFAPPタンパク質が、抗体の作成に使用できるものと理解される。一例では、免疫原は、SOJ−6細胞である。好ましい実施態様では、抗体を生じさせるのに使用されるBSDLまたはFAPPポリペプチドは、ヒトグリコペプチドである。
【0077】
本抗体は、全長の抗体または抗体断片または誘導体でありうる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFv断片;二重特異性抗体;単一鎖Fv(scFv)分子;重鎖部分を伴わずに、軽鎖可変領域の3つのCDRを含有する、1つの軽鎖可変領域のみを含有する単一鎖ポリペプチドまたはその断片;軽鎖部分を伴わずに、重鎖可変部の3つのCDRを含有する、1つの重鎖可変部のみを含有する単一鎖ポリペプチドまたはその断片;抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。このような断片および誘導体、およびそれらを調製する方法については当該技術分野でよく知られている。例えば、ペプシンを使用してヒンジ領域中のジスルフィド結合より下の抗体を消化し、それ自体はジスルフィド結合でVH−CHIに連結する軽鎖であるFab二量体のF(ab)’2を生成できる。F(ab)’2を穏やかな条件下で還元してヒンジ領域中のジスルフィド結合を切断し,それによりF(ab)’2二量体をFab’モノマーに変換してもよい。Fab’単量体は、本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)参照)。様々な抗体断片が、無傷の抗体の消化の観点から定義されるが、当業者は、このような断片が、化学的か、または組み換えDNA技術のいずれかを用いて新規に合成されうることを理解する。
【0078】
好ましい実施態様では、本発明の抗体は、IgG、例えば、IgG1抗体であり、四量体(二価)である。このような二価のIgG抗体は、調製および使用が比較的簡単であり、様々な特性を兼ね備えてBSDL/FAPP発現腫瘍細胞を最大限標的とすることが可能であることからそれらが好ましい。特に、それらは、BSDL/FAPP発現腫瘍細胞に対して十分な結合親和力を有する(例えば、一価の形態よりも優れており、一般に、ナノモル濃度レベル、例えば、10〜1ナノモル濃度の結合親和性を有する)ため、それらは、効果的に細胞のアポトーシスを誘導できるか、または増殖を阻害できる。さらに、それらはFc末端を含有するため、(BSDLまたはFAPP発現細胞を直接標的とする能力のためにこの特徴はそれらの有効性のためには必須でないものと理解されるが)標的細胞の免疫細胞介在性傷害(ADCC)を効果的に誘導できる。さらに、(多量体、例えばIgMの形態と対照的に)二価の抗FAPP/BSDL IgG抗体は、標的細胞によって実質的に内部移行され、それらのADCC介在特性を高めることはない。したがって、本発明の二価の抗BSDL/FAPP抗体は、これらの所望の特徴の全てを効果的に桑見合わせると、それらは、(BSDL/FAPP発現標的細胞を傷害するなお別のメカニズムを導入するであろうかかる改変形態も用いられ、本発明の範囲内であるが)「裸」、すなわち、細胞毒性ペプチドまたは放射性同位体などの付着部分なしに使用できる。
【0079】
モノクローナルまたはポリクローナル抗体の調製については、当該技術分野でよく知られており、多数の利用できる技術のいずれでも使用できる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozbor et al., Immunology Today 4:72 (1983); Cole et al., pp. 77-96 in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy (1985)を参照のこと)。単一鎖抗体を生成する技術(U.S. Pat. No. 4,946,778)は、所望のポリペプチド、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドに対する抗体を生成するのに用いられうる。また、トランスジェニックマウス、またはその他の哺乳類などのその他の生物を使用して、ヒト化、キメラ、または同様に修飾された抗体が発現されてもよい。代案としては、ファージディスプレイ技術を使用して、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFab断片を同定できる(例えば,McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Marks et al., Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照)。一実施態様では、方法は、ライブラリーまたはレパートリーから、BSDLまたはFAPPポリペプチドと交差反応するモノクローナル抗体あるいはその断片または誘導体を選択する工程を含んでなる。例えば、レパートリーは、場合により、いずれの適する構造物(例えば、ファージ、細菌、合成複合体)により提示される、抗体またはその断片のいずれの(組み換え)レパートリーであってもよい。
【0080】
抗原を用いて非ヒト哺乳類を免疫する工程は、当該技術分野でよく知られているいずれの様式で実施されてもよい(例えば、E. Harlowand D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照のこと)。一般に、免疫原は、緩衝液中に、場合により、完全フロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプ、およびアジュバントの量を判定する方法は、当業者によく知られており、本発明ではどのようにも制限されない。
【0081】
同様に、抗体の生成を刺激するのに十分な免疫化の位置および頻度についてもまた、当該技術分野でよく知られている。典型的な免疫化プロトコールでは、非ヒト動物に、1日目および約1週間後に抗原を腹腔内注射する。これに、20日目前後に、場合により不完全なフロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、抗原の復活注射(recall injection)が続く。復活注射(recall injection)は静脈内で実施され、連続して数日間繰り返してもよい。これに、40日目に、典型的には、アジュバントなしで、静脈内または腹腔内のいずれかのさらなる免疫注射が続く。このプロトコールは、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞の生成をもたらす。免疫化で使用された抗原に対する抗体を発現するB細胞の生成を生じさえすれば、その他のプロトコールが利用されてもよい。
【0082】
別の実施態様では、免疫されていない非ヒト哺乳類からリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで細胞培養で免疫原に曝される。次に、リンパ球が収集され、下記の融合工程が実施される。
【0083】
本発明のために好ましいモノクローナル抗体においては、次の工程は、免疫された非ヒト哺乳類から細胞、例えばリンパ球、脾細胞、またはB細胞を単離する工程と、次いで、抗体産生ハイブリドーマを形成するために、これらの脾細胞、またはB細胞、またはリンパ球を不死化細胞と融合させる工程である。したがって、「免疫された動物から抗体を調製する」という用語は、本明細書で用いられるように、免疫された動物からB細胞/脾細胞/リンパ球を得ること、これらの細胞を使用して抗体を発現するハイブリドーマを生成すること、ならびに免疫された動物の血清から抗体を直接得ることを含む。例えば、非ヒト哺乳類からの脾細胞の単離は、当該技術分野でよく知られており、例えば、麻酔された非ヒト哺乳類から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、脾膜から脾細胞を圧搾して細胞ストレーナーのナイロンメッシュを通して適切な緩衝液に単細胞懸濁液を生じるように入れることに関する。細胞が緩衝液で洗浄され、遠心分離され、次いで再懸濁されていずれの赤血球に溶解される。溶液が再度遠心分離され、ペレット中に残ったリンパ球が最終的に新鮮な緩衝液に再懸濁される。
【0084】
単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、抗体産生細胞は不死細胞系と融合される。これは、ハイブリドーマの作製に有用な多数のその他の不死細胞系が当該技術分野で知られているが、典型的にはマウス骨髄腫細胞系である。好ましいマウスの骨髄腫系統としては、米国カリフォルニア州サンディエゴのソーク研究所細胞配布センター(Salk Institute Cell Distribution Center(San Diego,Calif.U.S.A.))から入手できるMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、および米国メリーランド州ロックビル(Rockville,Maryland U.S.A.)の米国微生物系統保存機関から入手できるX63 Ag8653、およびSP−2細胞が挙げられるが、これらに限定されるものではない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して達成される。次に、得られたハイブリドーマは、融合しなかった親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたはそれ以上の物質を含有する選択培地で培養される。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル基転移酵素(HGPRTまたはHPRT)を欠乏する場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的に、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含む。
【0085】
ハイブリドーマは、マクロファージの支持細胞層上で増殖されうる。マクロファージは、好ましくは、脾細胞を単離するのに使用された非ヒト哺乳類の同腹子からのものであり、典型的には、ハイブリドーマの播種の数日前に不完全フロイントアジュバントなどを用いて予備刺激される。融合方法については、例えば、出典明示により本明細書に援用する(Goding, “Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,” pp. 59-103 (Academic Press, 1986))で述べられている。
【0086】
細胞は、コロニー形成および抗体産生のために十分な時間選択培地中で増殖させられる。これは、通常7〜14日間である。次に、ハイブリドーマのコロニーは、所望の基質、例えば、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体産生についてアッセイされる。アッセイは、典型的には、比色分析ELISA−タイプのアッセイであるが、ハイブリドーマが増殖されるウェルに適応できるいずれのアッセイを用いてもよい。
【0087】
その他のアッセイとしては、免疫沈降法および放射免疫測定法が挙げられる。所望の抗体産生について陽性のウェルは、1個またそれ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを判定するために検査される。1個よりも多いコロニーが存在する場合、細胞を再度クローン化されて増殖され、1個の細胞のみが所望の抗体を産生するコロニーを生じることを確実にされてもよい。単一の明らかなコロニーを有する陽性のウェルは、典型的には、再度クローン化され、再度アッセイされることにより、1個のモノクローナル抗体のみが検出され、生成されることが確実にされる。
【0088】
次に、アポトーシスを誘導できるか細胞周期を阻害できる抗体産生について、ハイブリドーマまたはハイブリドーマコロニーがアッセイされうる。このアッセイは、一般に、抗体が得られ、インビトロアッセイで評価することができれば、工程のあらゆる段階で実施されうる。しかし、最も好ましくは、BSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体が同定されると、それは、細胞(例えば、腫瘍細胞、SOJ−6細胞、その表面にBSDLおよび/またはFAPPポリペプチドを発現するいずれの細胞など)のアポトーシスを誘導するか、または成長または増殖を阻害する能力について試験できる。抗体はまた、(例えば、NK細胞活性化による;実施例参照)ADCCを誘導するそれらの能力についても試験できる。
【0089】
次に、本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマは、DMEMまたはRPMI−1640などの適切な培地中で大量に成育される。代案としては、ハイブリドーマ細胞は、動物内の腹水腫瘍としてインビボで増殖されうる。
【0090】
所望のモノクローナル抗体を産生するのに十分な増殖後、モノクローナル抗体を含有する増殖培地(または腹水)が分離され、その中に存在するモノクローナル抗体が精製される。精製は、典型的には、ゲル電気泳動法、透析、タンパク質Aまたはタンパク質G−セファロースまたはアガロースまたはセファロースビーズなどの固体担体に結合している抗マウスIgを使用したクロマトグラフィーによって達成される(例えば、出典明示により本明細書に援用するAntibody Purification Handbook, Amersham Biosciences, publication No. 18-1037-46, Edition ACで全て述べられている)。結合した抗体は、典型的には、低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシンまたは酢酸緩衝液)を使用してタンパク質A/タンパク質Gカラムから溶出され、抗体含有画分が即時に中和される。これらの画分をプールして透析し、必要に応じて濃縮する。
【0091】
好ましい実施態様では、BSDLまたはFAPPポリペプチド上に存在する決定因子と結合する抗体をコードするDNAがハイブリドーマから単離され、適切な宿主中への形質移入に適切な発現ベクター中に組み込まれる。次に、宿主は、抗体、その変異型、その活性断片、あるいは抗体の抗原認識部分を含んでなるヒト化またはキメラ抗体の組み換え生産のために用いられる。特定の実施態様に応じて、宿主細胞によって産生される抗体は、場合により、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する、またはNK細胞および(BSDLまたはFAPP発現)標的細胞の存在下でADCCを誘導する(例えばNK細胞活性化)それらの能力について評価できる。
【0092】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは容易に単離でき、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定される。単離されると、DNAを発現ベクター中に組み込むことができ、次に、それをさもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞に形質移入して、組み換え宿主細胞中においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中における組み換え発現は当該技術分野でよく知られている(例えば、Skerra et al. (1993) Curr. Op. Immunol. 5:256;およびPluckthun (1992) Immunol. Revs. 130:151を参照のこと)。抗体はまた、例えば、Ward et al. (1989) Nature 341:544で開示されるごとく、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって生成されてもよい。
【0093】
特定の実施態様では、抗体は本質的にモノクローナル抗体16D10と同一のエピトープまたは決定因子に結合する(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するWO2005/095594を参照のこと)。IgM抗体16D10を産生する細胞は、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された。特定の実施態様では、抗体は16D10以外の抗体である。
【0094】
モノクローナル抗体x「と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する」という用語は、抗体がxと「競合できる」ことを意味し、xは16D10などである。そのモノクローナル抗体と実質的に同一のエピトープと結合する1つまたはそれ以上の抗体の同定は、抗体競合を評価できる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのいずれか1つを使用して容易に判定できる。このようなアッセイは当該技術分野で通常である(例えば、参照によって本明細書に援用するU.S. Pat. No. 5,660,827を参照されたい)。抗体が結合するエピトープを実際に特定することは、そのモノクローナル抗体と同一のまたは実質的に同一のエピトープに結合する抗体を同定するのに、決して必須ではないものと理解される。
【0095】
例えば、調べられる試験抗体が異なる起源の動物から得られる場合、または異なるIgアイソタイプである場合でさえ、単純競合アッセイが用いられてもよく、このアッセイにおいて、対照(例えば、16D10)および試験抗体が予備混合(または予備吸着)され、エピトープ含有タンパク質を含有するサンプル、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドに適用される。ELISA、放射免疫測定法、ウエスタンブロット、およびBIACOREの使用に基づくプロトコールは、(例えば、実施例セクションで述べられるように)このような単純競合アッセイ研究で使用するのに適し、当該技術分野でよく知られている。
【0096】
特定の実施態様では、対照抗体(例えば、16D10)と試験抗体の各種量(例えば1:10または1:100)で抗原(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチド)含有サンプルに適用する前に一定時間予備混合する。別の実施態様では、対照と各種量の試験抗体は、抗原サンプルへの曝露中に単純に予備混合されうる。(例えば、分離または洗浄技術を用いて非結合抗体を除去することにより)結合抗体を遊離抗体から、(例えば、化学種またはアイソタイプ特異的二次抗体を使用して、または検出可能な標識を用いて対照抗体を特異的に標識して)対照抗体を試験抗体から区別できさえすれば、試験抗体が対照抗体と抗原の結合を低下させるかどうかを判定し、試験抗体が実質的に対照と同一のエピトープを認識することを示すことができるであろう。完全に無関係な抗体の不在下における(標識)対照抗体の結合は、対照の高い値を生じることになる。対照の低い値は、標識対照抗体(例えば16D10)を全く同じタイプの未標識抗体(例えば、16D10)と共にインキュベートして、競合させ、標識抗体の結合を低下させて得られる。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識抗体の反応性の顕著な低下は、同一エピトープを認識する試験抗体、すなわち、標識対照抗体と「交差反応する」ものの指標である。約1:10〜約1:100のあらゆる対照:試験抗体比率で、標識対照と各抗原との結合を少なくとも50%以上、好ましくは70%低下させるあらゆる試験抗体は、対照と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する抗体であると見なされる。好ましくは、このような試験抗体は、対照と抗原との結合を少なくとも90%低下させる。
【0097】
一実施態様では、競合は、フローサイトメトリー試験によって評価できる。所与の活性化受容体を保有する細胞を最初に受容体に特異的に結合することが知られている対照抗体(例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞、および16D10抗体)と共に、次に、例えば、蛍光色素またはビオチンで標識された試験抗体と共にインキュベートする。飽和量の対照抗体と共にプレインキュベーションして得られる結合が、対照とのプレインキュベーションなしの抗体によって得られる結合(蛍光の平均値)の80%、好ましくは、50、40またはそれ以下であれば、試験抗体は対照と競合するとされる。代案としては、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートされた細胞上で標識対照(蛍光色素またはビオチンによる)を用いて得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションなしで得られる結合の80%、好ましくは50%、40%またはそれ以下であれば、試験抗体は対照と競合するとされる。
【0098】
好ましい一例では、例えば、BSDLまたはFAPPポリペプチドなどの抗体の結合基質、または16D10によって結合されることが知られているそのエピトープ含有部分が固定化された表面に、試験抗体が予備吸着されて飽和濃度で適用される、単純な競合アッセイを用いてもよい。表面は、好ましくはビアコア(BIACORE)チップである。次に、対照抗体(例えば、16D10)を基質飽和濃度で表面に接触させ、基質表面と対照抗体との結合を測定する。この対照抗体の結合を、試験抗体不在下における基質含有表面と対照抗体との結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体存在下における対照抗体による基質含有表面の結合の顕著な低下は、同一エピトープを認識する試験抗体、すなわち対照抗体と「交差反応」するものの指標である。対照抗体と抗原含有基質との結合を少なくとも30%またはより好ましくは40%低下させるあらゆる試験抗体は、対照抗体と実質的に同一のエピトープまたは決定因子に結合する抗体であると見なされる。好ましくはこのような試験抗体は、対照抗体と基質との結合を少なくとも50%低下させる。対照と試験抗体の順序は逆転でき、すなわち、最初に対照抗体を表面に結合させ、その後試験抗体を表面に接触させることができるものと理解される。第2の抗体(抗体が交差反応していると仮定して)で見られる結合の低下は、より規模が大きいことが予期されるので、好ましくは基質抗原に対してより高い親和性を有する抗体が、基質含有表面に最初に結合する。このようなアッセイのさらなる例は、その開示を参照によって本明細書に援用するSaunal et al. (1995) J. Immunol. Meth 183: 33-41の実施例で提供される。
【0099】
BSDLまたはFAPPポリペプチドを特異的に認識する抗体が同定されると、標準法を使用して、SOJ−6細胞系、または膵臓癌などの癌がある患者から採取されたいずれのその他の細胞などの腫瘍細胞に結合するその能力について、および同細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害するその能力について、それを試験できる。NK細胞を活性化し、またはBSDLまたはFAPP発現標的細胞のADCCを誘導する細胞の能力についてもまた評価できる。
【0100】
ヒトでの使用に適する抗体の生成
一般に非ヒト動物において、BSDLまたはFAPPポリペプチドと特異的に結合できるモノクローナル抗体が得られると、抗体はヒトでの治療的用途に適するように、一般に修飾される。例えば、それらは、ヒト化、キメラ化されてもよく、または当該技術分野でよく知られている方法を使用して、ヒト抗体のライブラリーから選択されてもよい。このようなヒトに適切な抗体は、本治療法で直接使用でき、またはさらに誘導体化することができる。本明細書でもまた、特定の本発明の実施態様に応じて、抗体をヒトにおける治療用途に適するようにする前および/または後に、それらをアポトーシス促進または抗細胞増殖活性について試験できる。
【0101】
好ましい一実施態様では、例えば、相同的な非ヒト配列に代えてヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列で置換することにより(例えば、Morrison et al. (1984) PNAS 81:6851)、または免疫グロブリンのコード配列を非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部と共有結合させることにより、例えば、抗体16D10と同一のエピトープに結合する抗体などの本発明の抗体を産生するハイブリドーマのDNAを発現ベクターへの挿入前に修飾できる。このようにして元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインに置換される。特に好ましい一実施態様では、本発明の抗体はヒト化される。本発明による抗体の「ヒト化」形態は、マウスまたはその他の非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、または抗体のその他の抗原結合部分配列など)である。主として、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(受容抗体)であり、元の抗体の所望の特異性、親和性、および能力を維持しながら、受容抗体の相補的決定領域(CDR)からの残基が、元の抗体(供与抗体)のCDRからの残基によって置換されている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基によって置換されてもよい。さらに、ヒト化抗体は、受容抗体または移入されたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見られない残基を含んでなることができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練し、最適化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変領域を実質的に全てに含んでなり、CDR領域の全てまたは実質的に全てが元の抗体のCDR領域に対応して、FR領域の全て、または実質的に全てがヒト免疫グロブリン共通配列のFR領域である。さらに詳しくは、その各内容を参照によって本明細書に援用するJones et al. (1986) Nature 321: 522;Reichmann et al. (1988) Nature 332: 323;Verhoeyen et al. (1988) Science 239:1534 (1988);Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2:593を参照のこと。
【0102】
ヒト化抗体を作製するのに使用される軽鎖および重鎖の両方のヒト可変領域の選択は、抗原性を低下させる上で非常に重要である。いわゆる「ベストフィット(best−fit)」法に従って、本発明の抗体の可変領域の配列は、公知のヒト可変領域配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次に、マウスの配列と最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる(Sims et al. (1993) J. Immun.,151: 2296; Chothia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の部分集団の全てのヒト抗体の共通配列からの特定のフレームワークを用いる。同一のフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用できる(Carter et al. (1992) PNAS 89: 4285; Presta et al. (1993) J. Immunol. 51:1993))。
【0103】
FAPP/BSDL、好ましくは、ヒトFAPP/BSDL、最も好ましくは、16D10により特異的に認識されるエピトープ(例えば、16D10との結合についてエピトープと競合できる抗体)に対する高親和性、およびその他の好ましい生物学的特性を維持しながら抗体をヒト化することがさらに重要である。この目的を達成するために、好ましい方法により、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いて親配列および様々な概念的なヒト化生成物の解析方法により調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元立体構造を図解して表示するコンピュータプログラムが利用できる。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能な役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能にする。この方法において、FR残基は、標的抗原に対する親和性増加などの所望の抗体の特徴が達成されるように、共通かつ移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響において直接的かつ最も実質的に関与する。
【0104】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように改変されたその他の遺伝子導入動物を使用するなどの様々なその他の技術により生成されてもよい。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性の重鎖および軽鎖の遺伝子座の標的破壊によりマウスまたはその他の動物に導入される(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するJakobovitz et al. (1993) Nature 362:255;Green et al. (1994) Nature Genet. 7: 13; Lonberg et al. (1994) Nature 368:856;Taylor et al. (1994) Int. Immun. 6:579を参照のこと)。代案としては、ヒト抗体は、遺伝子または染色体の形質移入法によって、またはファージディスプレイ法を使用した抗体レパートリー選択を通じて構築できる。この技術では、抗体可変領域遺伝子は、繊維状バクテリオファージの主要またはマイナー被膜タンパク質遺伝子のいずれかの中にインフレームでクローン化され、ファージ粒子表面に機能性抗体断片として提示される。繊維状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、抗体の機能特性に基づく選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。この方法において、ファージは、B細胞特性のいくつかを模倣する(例えば、その開示全体を参照によって本明細書に援用するJohnson et al. (1993) Curr Op Struct Biol 3:5564-571;McCafferty et al. (1990) Nature 348:552-553を参照のこと)。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によっても作り出される(例えば、その全体を参照によって援用するU.S. Pat. Nos. 5,567,610および5,229,275を参照のこと)。
【0105】
一実施態様では、「ヒト化」モノクローナル抗体は、カリフォルニア州フレモントのアブジェニックス(Abgenix(Fremont,CA)からの免疫化のためのゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)などの動物を使用して作られる。ゼノマウス(XenoMouse)は、その免疫グロブリン遺伝子が機能性ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置換されているマウス宿主である。それゆえ、このマウスにより、またはこのマウスのB細胞から作成されたハイブリドーマにおいて生成される抗体は、既にヒト化されている。ゼノマウス(XenoMouse)については、その全体を参照によって本明細書に援用するUnited States Patent No. 6,162,963で述べられている。同様の方法は、HuMAb−Mouse(登録商標)(Medarex)を用いて達成されうる。
【0106】
本発明の抗体はまた、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)に誘導体化されてもよく、ここで、前記抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が元の抗体中の対応する配列と同一または相同的であり、一方で、それらが所望の生物学的活性を示す限り、鎖の残りが、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体ならびにこのような抗体の断片中の対応する配列と同一または相同的である(例えば、Morrison et al. (1984) PNAS 81:6851; U. S. Pat. No. 4,816,567を参照のこと)。
【0107】
組み換え16D10抗体の構造特性
好ましい一実施態様では、本発明の抗体は、16D10抗体(または16D10と同一エピトープに結合する別の抗体)の可変領域配列(例えば、可変領域全体、その一部、またはCDR)を使用して調製されるキメラまたはヒト化IgG抗体である。例えば、抗体は、Rec16d10または同等の抗体、16D10のマウス重鎖定常部のCu2、Cu3、およびCu4領域がヒトIgG1 Fcによって置換されているキメラ抗体でありうる。別の好ましい実施態様では、抗体は、16D10などの抗FAPP/BSDL抗体のVHおよびVLが、重鎖および軽鎖の両方についてヒトIgG(例えば、IgG1)定常部によって置換されているキメラ抗体である。
【0108】
本発明の好ましい抗体は、生成され、単離され、構造的および機能的に特徴づけられ、本明細書で述べられるごとく、16D10の可変部またはCDRを含んでなる二価のモノクローナル抗体である。一例では、抗体は、実施例9で述べられているキメラ抗体(rec16D10)であり、別の例では、抗体は、ヒトIgG1定常部と融合した16D10の重鎖可変部を含んでなる(2本の)重鎖と、ヒトIgLカッパ定常部と融合した16D10の軽鎖可変部を含んでなる(2本の)軽鎖とからなる代替的な二価キメラ抗体である。これらの抗体の全長、変量、およびCDR配列を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
したがって、一態様では、本発明は、(a)配列番号3、5、7、および9〜11からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるVH領域、および(b)配列番号4、6、8、および12〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるVL領域を含んでなり、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。好ましい重鎖および軽鎖の組み合わせとしては、(a)配列番号3のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と(b)配列番号4のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と(b)配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖、および(a)配列番号7のアミノ酸配列を含んでなる重鎖可変部と(b)配列番号8のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖可変部が挙げられる。
【0111】
他の態様では、本発明は、16D10の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2および/またはCDR3またはそれらの組み合わせを含んでなる抗体を提供する。CDR領域は、カバット(Kabat)システム(Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を使用して記述される。16D10の重鎖CDRは、配列番号7中のアミノ酸位置31〜35(CDR1;CDR1のコチア(Chotia)番号は26〜35)、位置50〜67(CDR2)、および位置97〜106(CDR3)に位置する。16D10の軽鎖CDRは、配列番号8中のアミノ酸位置24〜40(CDR1)、位置56〜62(CDR2)、および位置95〜102(CDR3)に位置する。
【0112】
したがって、他の態様では、本発明は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR2、(c)配列番号11のアミノ酸配列を含んでなるVH CDR3、(d)配列番号12のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR1、(e)配列番号13のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR2、および(f)配列番号14のアミノ酸配列を含んでなるVL CDR3を含んでなり、FAPPまたはBSDLに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。好ましくは、前記抗体は、ヒトIgG鎖定常部と融合したVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含んでなる重鎖可変部、およびヒトカッパ鎖定常部と融合したVL CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含んでなる軽鎖可変部を含んでなる。好ましくは、前記ヒトIgG鎖定常部は、配列番号15のアミノ酸配列またはその一部、または少なくともそれと80%、90%または95%同一の配列を含んでなる。好ましくは、前記ヒトカッパ鎖定常部は、配列番号16のアミノ酸配列またはその一部、または少なくともそれと80%、90%または95%同一の配列を含んでなる。好ましくは、抗体は、2つの前記重鎖および2つの前記軽鎖を含んでなる四量体である。
【0113】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、VH J558.48マウス生殖細胞系H鎖免疫グロブリン遺伝子からのVH領域および/またはVK 8−27マウス生殖細胞系L鎖免疫グロブリン遺伝子からのVL領域を含んでなる。
【0114】
一態様では、本発明は、(a)本明細書で述べられるVH領域(例えば、可変部、その一部、または本明細書で述べられるVH CDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなる可変部)と融合したヒトIgG鎖定常部、および(b)本明細書で述べられるVL領域(すなわち、可変部、その一部、または本明細書で述べられるVH CDR1、CDR2および/またはCDR3を含んでなる可変部)と融合したヒトカッパ鎖定常部を含んでなり、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供する。例示的なIgG鎖定常部としては、抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、カリフォルニア州のジェネンテック(Genentech))から得られる配列番号15の配列を有する定常部、またはその一部が挙げられる。例示的なヒトカッパ鎖定常部としては、抗体リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、カリフォルニア州のジェネンテック(Genentech))から得られる配列番号16の配列を有する定常部、またはその一部が挙げられる。
【0115】
さらに別の実施態様では、本発明の抗体は、本明細書で述べられる好ましい抗体のアミノ酸配列と相同的なアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖可変部を含んでなり、抗体は、本発明の抗FAPP/BSDL抗体の所望の機能特性を保持する。例えば、本発明は、重鎖可変部および軽鎖可変部を含んでなる単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部位を提供し、(a)VH領域は、配列番号3、5、7、および9〜11からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなり、(b)VL領域は、配列番号4、6、8、および12〜14からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなり、(c)抗体はFAPPまたはBSDLポリペプチドと特異的に結合して、本明細書で述べられる機能特性の少なくとも1つ、好ましくは、本明細書で述べられる機能特性のいくつかを示す。
【0116】
別の実施態様では、CDR、VHおよび/またはVL、または定常部アミノ酸配列は、上で述べた配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であってもよい。CDR、VHおよび/またはVL、または上で述べた配列の定常部領域と高い(すなわち、80%またはそれ以上の)同一性を有するCDR、VHおよび/またはVL領域を有する抗体は、配列番号3〜14のCDR、VHおよび/またはVLまたは配列番号15および16の定常部をコードする核酸分子の変異誘導(例えば、部位特異的またはPCR介在変異誘導)と、次いでコードされた改変抗体を、維持された機能(例えば、FAPP/BSDL結合親和力、腫瘍細胞のアポトーシス誘導または増殖減速、ADCCの誘導)について試験することによって得ることができる。
【0117】
2つの配列間の%同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要があるギャップ数、および各ギャップの長さを考慮に入れた、配列により共有される同一の位置数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置数/位置総数×100)。2つの配列間の配列比較および%同一性の判定は、配列分析ソフトウェアの数学的アルゴリズムを使用して達成できる。タンパク質分析ソフトウェアは、保存アミノ酸置換をはじめとする様々な置換、欠失、およびその他の修飾に割り当てられた類似性の測定を用いて類似の配列を適合する。
【0118】
2つのアミノ酸配列間の%同一性は、例えば、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手できる)に組み込まれている、ニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)(J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを使用して、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のgap weightおよび1、2、3、4、5、または6のlength weightを使用して判定できる。
【0119】
ポリペプチド配列はまた、FASTAを使用して、デフォルトまたは推奨パラメーターを適用して比較できる。GCGバージョン6.1中のプログラムであるFASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリーおよび検索配列間の最良重複の領域のアラインメントおよび%配列同一性を提供する(Pearson, Methods Enzymol. 1990;183:63-98;Pearson, Methods Mol. Biol. 2000;132:185-219)。
【0120】
2つのアミノ酸配列間の%同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E.メイヤーズ(Meyers)およびW.ミラー(Miller)(Comput. Appl. Biosci., 1988;11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120 weight residue table、gap length penalty 12、およびgap penalty 4を使用して判定できる。
【0121】
配列をデータベース中に含有されるその他の配列と比較するための別のアルゴリズムは、デフォルトパラメーターを使用した、コンピュータプログラムBLAST、特にblastpである。例えば、それぞれ参照によって本明細書に援用する、Altschul et al., J. Mol. Biol. 1990;215 403-410; Altschul et al., Nucleic Acids Res. 1997;25:3389-402 (1997)を参照されたい。そこでは本発明のタンパク質配列を「クエリー配列」として使用して、公表データベースに対する検索を実施して、例えば関連配列を同定できる。このような検索は、Altschul, et al., 1990(前出)のXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施できる。BLASTタンパク質検索はscore=50、wordlength=3でXBLASTプログラムを用いて、本発明の抗体分子と相同的なアミノ酸配列を得て実施できる。比較のためにギャップドアラインメント(gapped alignment)を得るために、Altschul et al., 1997(前出)で述べられるようにギャップド(Gapped)BLASTが利用できる。BLASTおよびギャップド(Gapped)BLASTプログラムを使用する際、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーターを使用できる(例えば、XBLASTおよびNBLAST)。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。
【0122】
特定の実施態様では、本発明の抗体は、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなるVH領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3配列を含んでなるVL領域とを含んでなり、これらのCDRまたは可変部配列の1つまたはそれ以上は、本明細書で述べられる好ましい抗体に基づいて定義されるアミノ酸配列(例えば、16D10および配列番号3〜14のいずれか)またはその保存的な修飾を含んでなり、抗体は、本発明の抗FAPP/BSDL抗体の所望の機能特性を保持する。保存的な配列の修飾は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に顕著に影響を及ぼさず、またはそれを変更しないあらゆるアミノ酸修飾でありうる。このような保存的な修飾としては、アミノ酸置換、付加、および欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的変異誘導およびPCR介在変異誘導などの当該技術分野で知られている一般的な技術によって本発明の抗体に導入できる。「保存的」アミノ酸置換は、典型的にアミノ酸残基が、類似した物理化学的特性がある側鎖を有するアミノ酸残基によって置換されているものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーについて、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のあるアミノ酸が挙げられる。
【0123】
したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基を同一側鎖ファミリーからのその他のアミノ酸残基により置換でき、改変された抗体を本明細書で述べられる機能性アッセイを使用して、保持される機能(すなわち上の(c)、(d)および(e)で述べられる機能)について試験できる。
【0124】
16D10抗体の重鎖および軽鎖可変部をコードする核酸配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。一実施態様では、本発明は、配列番号1またはその断片(例えば、16D10 VH領域の配列CDR1、CDR2および/またはCDR3をコードする)を含んでなるヌクレオチド配列から転写され、翻訳された16D10の可変重鎖領域と、配列番号2またはその断片(例えば、16D10 VL領域のCDR1、CDR2および/またはCDR3をコードする配列)を含んでなるヌクレオチド配列から転写され、翻訳された16D10の可変軽鎖領域を含んでなる、二価のモノクローナル抗体を提供する。さらに別の好ましい実施態様では、二価の抗体は、その重鎖中に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された抗体16D10中に存在する、CDR1、CDR2および/またはCDR3または重鎖可変部を含んでなり、軽鎖中に、2004年3月16日にパリの国立培養微生物コレクション(Collection Nationale de Culture de Microorganismes(CNCM))に番号I−3188の下に寄託された前記抗体16D10中に存在するCDR1、CDR2および/またはCDR3または軽鎖可変部を含んでなる。
【0125】
定常部の最適化
FAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する細胞のADCCを誘導する本発明の抗体の能力を考慮して、本発明の抗体はまた、ADCCを誘導するそれらの能力を増加させる修飾と共に作製できる。典型的な修飾としては、少なくとも1つのアミノ酸の修飾(例えば置換、欠失、挿入)および/またはグリコシル化の改変タイプ、例えば、低フコシル化を含んでなる、修飾ヒトIgG1定常部が挙げられる。このような修飾は、例えば、エフェクター(例えば、NK)細胞上のFcyRIIIaへの結合を増加できる。
【0126】
抗体のADCC能力を増加させる、定常部中の特定の改変グリコシル化パターンが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞中において、抗体を発現することで達成できる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞については当該技術分野で述べられており、本発明の組み換え抗体を発現させる宿主細胞として使用でき、それにより改変されたグリコシル化を有する抗体が生成される。例えば、それぞれその全体を参照によって本明細書に援用する、Shields, R. L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1ならびにEuropean Patent No: EP 1,176,195; PCT Publications WO 06/133148; WO 03/035835; WO 99/5434280を参照されたい。
【0127】
一般に、改変されたグリコシル化を有するこのような抗体は、特定の望ましい特性を生じる特有のN−グリカン構造を有し、それらは、マウス骨髄腫NSOおよびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Chuand Robinson, Current Opinion Biotechnol. 2001, 12: 180-7)、本明細書で実施例セクションにおいて生成されるようなHEK293T発現抗体、または組み換え治療抗体を生成するのに一般に使用されるその他の哺乳類の宿主細胞系によって産生される、非修飾抗体または天然定常部を有する抗体と比較して、改善されたADCCおよびエフェクター細胞受容体結合活性を含むが、これらに限定されるものではない。
【0128】
哺乳類の宿主細胞中で産生されるモノクローナル抗体は、各重鎖のAsn297にN結合グリコシル化部位を含有する。抗体におけるグリカンは、典型的に、非常に低いか、または皆無の二分N−アセチルグルコサミン(二分GlcNAc)および高いレベルのコアフコシル化を有する複合二分岐構造物である。グリカン末端は、非常に低いか、または皆無の末端シアル酸、および可変量のガラクトースを含有する。抗体機能のグリコシル化の総説については、例えば、Wright & Morrison, Trend Biotechnol. 15:26-31 (1997)を参照されたい。相当数の研究が、抗体グリカン構造の糖組成に対する変化がFcエフェクター機能を改変できることを示す。抗体活性に寄与する重要な炭水化物の構造は、α−1,6結合を介してFc領域N結合オリゴ糖類の最内側のN−アセチルグルコサミン(GlacNAc)残基に付着するフコース残基であると考えられる(Shields et al., 2002)。FcγR結合は、Fc領域中の保存されたAsn297の共有結合で付着するオリゴ糖類の存在を必要とする。非フコシル化の構造は、近年、インビトロADCC活性の劇的な増加と関連付けられている。
【0129】
歴史的に、CHO細胞中で産生される抗体は、集団中にフコシル化されていないものを約2〜6%含有する。YB2/0(ラット骨髄腫)およびLecl3細胞系(欠損GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼを有するCHO系統のレクチン変異体であって、α6−フコシル基転移酵素の基質であるGDP−フコースまたはGDP糖中間体の欠乏症を生じる)が、78〜98%の非フコシル化化学種を有する抗体を産生することが報告されている。その他の例では、RNA干渉(RNAi)またはノックアウト技術を用いて、FUT8m RNA転写物レベルを低下させ、または遺伝子発現を完全にノックアウトさせるように細胞を操作することができ、このような抗体は、70%までの非フコシル化グリカンを含有することが報告されている。その他の例では、抗体を産生する細胞系は、グリコシル化阻害剤で処理されうる。Zhou et al. Biotech and Bioengin. 99: 652-665 (2008)は、アルファ−マンノシダーゼI阻害剤、キフネンシンを用いるCHO細胞の処理が、非フコシル化オリゴマンノース−N型−グルカンを有する抗体の産生をもたらすことを述べている。
【0130】
したがって、本発明の一実施態様では、抗体は、FcyRIIIaおよび/またはADCCへの抗体結合を改善する、Fc領域中の少なくとも1つのアミノ酸改変を含んでなる定常部を含んでなる。別の態様では、本発明の抗体組成物は、本明細書で述べられるキメラ、ヒトまたはヒト化抗体を含んでなり、組成物中の抗体の少なくとも20、30、40、50、60、75、85または95%は、フコースを欠くコア炭水化物構造を含んでなる定常部を有する。
【0131】
定常部中に修飾を含むFcyRIIIaへの抗体結合および/またはADCCが改善されている、特に、IgG1またはIgG3タイプの非誘導体化または無修飾形態である抗体、または非誘導体化抗体は、膵臓癌にかかっている患者からのものなどのFAPPまたはBDSLポリペプチド発現腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、および/または増殖を阻害することが予想される一方で、誘導体化抗体を調製してそれらを細胞毒性にすることもまた可能である。このような誘導体化抗体の二価のIgG形態が使用される場合、それにより、それらは、少なくとも3つの異なる方法:ADCCにより(例えば、抗体が結合Fc受容体を含んでなる場合、例えば、それらの定常部を介して)、アポトーシスの誘導または細胞増殖阻害により、ならびに細胞毒性部分を介して細胞を傷害することにより、腫瘍細胞を標的とすることができる。一実施態様では、抗体の1つが単離され、ヒトでの使用に適するようにされると、それらは誘導体化されて細胞にとって毒性となる。この方法において、抗体の癌にかかっている患者への投与は、抗体のFAPPおよび/またはBDSLポリペプチド発現癌細胞への相対的に特異的な結合を生じ、それにより細胞を直接傷害し、または阻害するための追加的手段を提供する。
【0132】
治療における化合物の使用
本方法を使用して生成される抗体は、膵臓癌および/またはBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する腫瘍(例えば、乳癌)を治療するのに特に効果的である。
【0133】
一態様では、本発明を実施する場合、患者の癌が特徴付けられるか、または評価されうる。これは、癌が本発明により有利に治療されうるかどうかを判定するのに有用でありうる。例えば、本発明の抗原結合化合物は、アポトーシス促進および抗細胞増殖活性を有するため、それらは、腫瘍細胞を直接傷害し、および/または腫瘍容積を低下させるか、または制限するのに用いられてもよい。抗原結合化合物は、上皮内癌を超えて広がり、いずれの方向で2cm未満のサイズを有するBDSLまたはFAPPポリペプチド発現腫瘍の治療において、ならびに/あるいは転移および/または転移性腫瘍の治療において、特定の有利な特性を有していてもよい。
【0134】
本発明の化合物は、膵臓癌を治療するのによく適し、それは腫瘍細胞死を誘導し、またはそれらの成長または増殖を減速させるのに有用および/または必要である。これは、例えば、膵臓癌が少なくともI期癌に分類されおよび/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmまたはそれ以下である、または膵臓癌が少なくともII期癌に分類され、および/または膵臓中の腫瘍サイズがいずれの方向で2cmを超える、膵臓癌がII期癌に分類され、および/または癌が膵臓周辺の近傍組織内で成長し始めているが、近傍リンパ節内では成長していない、膵臓癌がIII期癌に分類され、および/または膵臓周囲の組織内に向かって伸びているかもしれない、または膵臓癌がIV期癌に分類され、および/または近傍臓器内に向かって伸びているような腫瘍が樹立し、または広がり、癌が上皮内癌を超えて進行した膵臓癌が挙げられるが、これらに限定されるものではない。膵臓癌は、かなり進んだ進行段階で診断されることが多いため、上皮内癌を超えて進行した腫瘍中の腫瘍細胞を傷害し、または成長を止める能力は、このような癌において顕著である。
【0135】
一般的に実施される方法のいずれか1つまたはそれ以上を使用して、膵臓癌が評価され、または特徴付けられる。膵臓癌は、通常、膵臓とその周辺の画像を生じる試験および手順を用いて診断される。癌細胞が膵臓内および周囲に広がっているかどうかを見いだすのに使用される方法は、病期分類と称される。膵臓癌を検出、診断、および病期分類する試験と手順は、通常、同時に行われる。疾患の病期、および膵臓癌が外科手術によって除去できるかどうかは、胸部X線、理学的検査および病歴、CTスキャン(CATスキャン)、MRI(磁気共鳴画像法)、PETスキャン(陽電子放射型断層撮影法スキャン)、超音波内視鏡(EUS)、腹腔鏡検査、内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERCP)、経皮経肝胆管造影(PTC)などの手順によって、および/または生検によって評価できる。生検では、病理学者がそれらを顕微鏡下で観察し、癌の指標、および/または場合によりBDSLまたはFAPPポリペプチドの発現について検査できるように、細胞または組織が採取される。
【0136】
本明細書で論じるように、発明者らは、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットを使用して、16D10による細胞の処理が、抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の低下、ならびにアポトーシス促進Baxタンパク質の増加を誘導することを実証した。抗体がp53およびGSK−3β活性を増加させ、サイクリンD1レベルを低下させることもまた実証された。したがって、本発明の抗原結合化合物および方法は、細胞中でBcl−2ファミリーメンバータンパク質活性を調節し、好ましくは、細胞中でBcl−2ファミリーメンバータンパク質レベルを調節し、好ましくは、Bcl−2タンパク質発現を低下させ、および/またはBaxタンパク質発現を増加させる方法において有利に使用できる。同様に、本発明の抗原結合化合物および方法はまた、細胞中の細胞周期活性を調節し、および/またはG1/S移行において細胞をブロックし、好ましくは、p53またはGSK−3β活性を増加させ、またはおよび/またはサイクリンD1レベルを低下させる方法においても有利に使用できる。細胞は、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現するいずれの細胞、好ましくは、腫瘍細胞(例えば、膵臓腫瘍細胞)、好ましくは、脂質ラフト中にBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞であってもよい。細胞は、1つまたはそれ以上のBcl−2ファミリーメンバーの活性(またはp53、サイクリンD1、またはGSK−3β)(例えば、生物学的活性および/またはタンパク質発現)が調節不全であり、すなわち、正常な細胞(例えば、非腫瘍細胞)と比較して活性が増加または低下しており、および/またはその他のアポトーシス促進または抗アポトーシスまたは細胞周期促進または抗細胞周期タンパク質と比較して不均衡によって特徴づけられる、細胞(例えば、腫瘍細胞)であってもよい。
【0137】
ヒトBcl−2ファミリーのメンバーは、Bcl−2相同性(BH)領域と称される4つの特徴的な相同性領域(BH1、BH2、BH3、およびBH4と命名される)の1つまたはそれ以上を共有する。BH領域は、機能に重要であることが知られており、分子クローニングを介したこれらの領域の欠失は、生存/アポトーシス率に影響を与える。Bcl−2およびBcl−xLなどの抗アポトーシスBcl−2タンパク質は、4つのBH領域を全て保存する。BH領域はまた、アポトーシス促進Bcl−2タンパク質を、いくつかのBH領域を有するタンパク質(例えばBax、Bcl−xS、およびBak)またはBH3領域のみを有するタンパク質(例えばBid、Bim and Bad)に細分する役割を果たす。
【0138】
Bcl−2は、細胞死過程の開始を抑制するため、アポトーシス過程に必須である。免疫組織化学染色は、典型的には、腫瘍中のBcl−2ファミリーメンバーの発現レベルを検出するのに使用されている。場合によっては、膵臓の腫瘍がBcl−2を過剰に発現しうることが見出され、これらの腫瘍細胞は、アポトーシスに抵抗性を示すことが予想される。膵臓の腫瘍の約50%が抗アポトーシスBcl−xLを過剰発現し、Bcl−xLの高まった発現が患者のより短い生存に関連する一方で、Baxの上方制御はより長い生存と関連付けられていることもまた示されている。
【0139】
一態様では、本発明は、Bcl−2ファミリーメンバー調節不全を有するBSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。別の態様では、本発明は、Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全を有する腫瘍を有する患者を治療する方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0140】
一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、(a)細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられるかどうかを判定する工程と、(b)細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる場合、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。他の態様では、本発明は、腫瘍を有する患者を治療する方法であって、(a)患者がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる腫瘍を有するかどうかを判定する工程と、(b)腫瘍がBcl−2ファミリーメンバー調節不全によって特徴づけられる場合、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる方法を提供する。
【0141】
別の実施態様では、本発明は、BSDLまたはFAPP発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、a)細胞がサイクリンD1の過剰発現またはp53またはGSK−3β活性の欠如によって特徴づけられるかどうかを判定する工程と、b)細胞がサイクリンD1の過剰発現またはp53またはGSK−3β活性の欠如によって特徴づけられる場合、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。一方法では、細胞は、癌、例えば、膵臓癌にかかっている患者に存在する腫瘍細胞であり、方法は患者を治療するために使用される。
【0142】
腫瘍または細胞がBcl−2ファミリーメンバー調節不全(または改変されたサイクリンD1またはp53またはGSK−3β活性またはレベル)を有するかどうかの判定は、いずれかの適切な方法、例えば、免疫組織化学または核酸プローブまたはプライマーに基づいたアプローチによって実施でき、例えば、腫瘍または細胞が、Bcl−2ファミリーメンバー調節不全(または改変されたサイクリンD1またはp53またはGSK−3β活性またはレベル)、変異Bcl−2ファミリーメンバー(またはサイクリンD1またはp53またはGSK−3β)、(例えば、タンパク質レベルおよび/または転写物を判定することによる)Bcl−2ファミリーメンバー(またはサイクリンD1またはp53またはGSK−3β)の発現増加または低下を引き起こす変異を有するかどうかを判定するなどのいくつかのパラメーターのいずれを検出してもよい。一態様では、調節不全は、抗アポトーシスBcl−2ファミリーメンバー(例えば、Bcl−2、Bcl−xL)の活性増加および/またはアポトーシス促進Bcl−2ファミリーメンバー(例えば、Baxなど)の活性低下を含んでなる。
【0143】
Giovannetti et al. (2006) Mol. Cancer. Ther. 5 (6): 1387-1395で要約されるように、アポトーシス経路の調節は、膵臓癌が抗癌化学療法に対して限定された感受性のみを示す理由の1つでありうると考えられる。Fahy et al. (British Journal of Cancer (2003) 89, 391-397)は、化学増感におけるBcl−2およびBaxの調節を調べた。セリン/スレオニンキナーゼAKTの活性化は、膵臓癌において一般的であり、その阻害は、細胞を化学療法のアポトーシス効果に対して感作させる。Fahy et al.は、膵臓癌細胞におけるNF−kB転写因子の活性化、続いてBCL−2遺伝子ファミリーの転写調節について調べた。ホスファチジルイノシトール−3キナーゼまたはAKTのいずれかの阻害は、Bcl−2のタンパク質レベルの低下およびBaxのタンパク質レベルの増加を生じた。さらに、AKTの阻害は、Bcl−2遺伝子の転写調節ができるNF−kBの機能を低下させた。この経路の阻害は、膵臓癌細胞中のアポトーシスの基底レベルに対してほとんど影響を示されなかったが、化学療法のアポトーシス効果を増加させた。
【0144】
したがって、本発明の抗原結合化合物を有利に使用して、BDSLまたはFAPPポリペプチド発現細胞、特に、腫瘍細胞(例えば、膵臓腫瘍細胞)を化学療法剤による治療に対して感作させることができる。薬剤は、一般に、効果的であるために、細胞がアポトーシスを経ることができる細胞を要するいずれの薬剤であってもよい。好ましい実施態様では、薬剤は、膵臓腫瘍または腫瘍細胞が、それに対して部分的または完全に抵抗性であるか、または抵抗性になることが知られている薬剤である。一実施態様では、本発明の抗原結合化合物を使用して、化学療法抵抗性のBDSLまたはFAPPポリペプチド発現腫瘍を有する患者を治療できる。別の実施態様では、一般に作用機序の一環として、細胞標的がアポトーシスを経ることができる(またはアポトーシスに対して抵抗性でない)ことを要する薬剤である化学療法剤との併用で、本発明の抗原結合化合物を使用して、BDSLおよび/またはFAPPポリペプチド発現腫瘍を有する患者を治療できる。場合により腫瘍または患者は化学療法剤によって前処理されており、および/または(すなわち、本発明の抗原結合化合物との共同治療の不在下で)腫瘍は化学療法剤による治療に対して抵抗性である。一例では、特に膵臓癌の治療のためには、薬剤は、ヌクレオシド類似体(例えば、ゲムシタビン)である。別の例では、薬剤は、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルおよびそれらの類似薬剤)である。別の例では、薬剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、細胞毒性抗生物質またはトポイソメラーゼ阻害剤である。本発明の抗原結合化合物および化学療法剤は、別々に投与されることが多いと理解されるが、本発明の抗原結合化合物および化学療法剤を含んでなる組成物もまた包含される。このような組成物は、本明細書で述べられる方法のいずれかで使用できる。
【0145】
したがって、一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を化学療法剤に感作させる方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。一態様では、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチド発現細胞を処理し、または傷害する方法であって、細胞を本発明の抗原結合化合物および化学療法剤に接触させる工程を含んでなる方法を提供する。別の態様では、本発明は、腫瘍を有する患者を治療する方法であって、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物および化学療法剤を患者に共同で投与する工程を含んでなる方法を提供する。本明細書で用いられるように、「共同」、「併用」または「併用療法」という用語は同義的に使用されて、2種またはそれ以上の薬剤(例えば、本発明の抗原結合化合物および化学療法剤)が同一疾患の治療または予防に影響を及ぼす状況をいう。「共同」、「併用」または「併用療法」という用語の使用は、疾患にかかっている対象に薬剤を投与する順序を限定しない。第1の療法は、疾患にかかっている対象に、第2の療法施行前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)に、同時に、またはその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に施行できる。
【0146】
さらに、本化合物は、単にそれらの細胞との結合により、すなわち、細胞毒性部分またはADCCを誘導する必要なしに、BSDLまたはFAPP発現細胞を効果的に標的にできるため、それらは(免疫細胞または免疫機能の「相対的不足」を有すると言える)免疫不全患者を治療する上で特に有用である。このような患者としては、例えば、先天性または後天性免疫不全症障害、HIV感染症、リンパ腫、白血病、慢性疲労免疫機能障害症候群、エプスタイン−バーウィルス感染症、ウイルス感染後疲労症候群などの、または例えば組織移植と併用される、自己免疫障害などの障害の治療のための免疫抑制化合物の投与、または癌の治療のための化学療法剤の使用に起因する、免疫系に影響を及ぼす疾患または病状があるものが挙げられる。したがって、本発明は、薬学的有効量の本発明の抗原結合化合物を患者に投与する工程を含んでなる、癌がある免疫不全患者を治療する方法を提供する。好ましい実施態様では、化合物は、抗体である。別の実施態様では、抗体は、細胞毒性部分によって誘導体化され、BSDLまたはFAPP発現細胞の直接傷害が高められる。特定の実施態様では、方法は、投与工程前に、癌細胞サンプルが患者から得られる工程と、化合物が細胞に結合し、および/またはそのアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害する能力が確認される工程を含んでなる。一実施態様では、薬学的有効量は、BSDLまたはFAPP発現細胞、例えば、患者から採取される癌細胞のアポトーシスを誘導し、または増殖を阻害するのに十分な量である。
【0147】
本発明はまた、患者においてBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞の増殖または活性を阻害し、または傷害するのに効果的な量で、いずれの適切なビヒクル中に本化合物のいずれか、抗体、その断片および誘導体を含んでなる組成物、例えば、医薬組成物も提供する。組成物は、さらに、一般に薬学的に許容できる担体を含んでなる。抗体および組成物を患者に投与する本方法はまた、動物を治療すること、またはヒト疾患のための動物モデルにおいて、本明細書で述べられる方法または組成物のいずれかの有効性を試験することにも使用できるものと理解される。
【0148】
これらの組成物中で使用してもよい薬学的に許容できる担体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミンとリン酸水素二ナトリウムとリン酸水素カリウムと塩化ナトリウムと亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、ポリエチレングリコール、およびが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
別の実施態様に従って、本発明の抗体組成物は、さらに、抗体が投与されるため(例えば、膵臓癌)の特定の治療目的のために通常利用される薬剤を含む、1つまたはそれ以上のさらなる治療薬を含んでなってもよい。さらなる治療薬は、通常、治療される特定の疾患または病状のための単一剤療法中でその薬剤について典型的に用いられる量で組成物中に存在する。
【0150】
固形腫瘍治療との関連で、本発明は、外科手術、放射線療法、化学療法などの古典的アプローチと組み合わせて使用されてもよい。したがって、本発明は、BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物が、外科手術または放射線治療と同時に、その前または後に使用され、または患者に従来の化学療法剤、放射線治療または抗血管新生剤、または標的を定めた免疫毒素と共に、その前または後に投与される併用療法を提供する。BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物と抗癌剤は、単一組成物中で、または異なる投与経路を使用して2つの別々の組成物としてのいずれかで患者に同時に投与してもよい。
【0151】
1つまたはそれ以上の薬剤(例えば、抗癌剤)を本治療方法と組み合わせて使用する場合、合わせた結果が、各治療を別個に行った際に観察される相加的効果である必要はない。少なくとも相加効果が一般的に望ましいが、単一治療法の効果に優る腫瘍細胞の増殖効果のいずれの増加が有用である。また、併用治療が相乗効果を示す特別な必要性はないが、これは確かに可能性があり、有利である。BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物を用いた治療は、例えば、数分から数週間および数ヶ月にわたる間隔で、その他の抗膵臓癌剤治療に先行しても、またはそれに続いてもよい。
【0152】
本発明のBSDLまたはFAPPポリペプチドに結合する化合物は、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞に対して、免疫介在機序(例えば、ADCC)に主に依存するのではなく、直接にアポトーシスを誘導し、または細胞増殖を阻害するため、本発明の化合物は、免疫系に対して有害な、または抑制的な効果を有することが報告されている薬剤と併せて使用できることが考えられる。例えば、化学療法を使用して、膵臓癌を含む癌を治療してもよい。本明細書で開示される併用治療法において、多様な化学療法剤を使用してもよい。具体例として考えられる化学療法剤としては、DNA複製、有糸分裂、および染色体分離を妨げる薬剤、およびポリヌクレオチド前駆物質の合成および忠実度を乱す薬剤が挙げられる。例えば、薬剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、チロシンキナーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ、およびCOX−2阻害剤が挙げられる。チロシンキナーゼ阻害剤は、患者の生体内免疫応答に有害効果を有することが報告されており、メタロプロテイナーゼ阻害剤は、血液毒性を有することが報告されている。さらに、化合物は、AIDSまたはその他の免疫疾患(例えばリンパ腫、白血病)にかかっている患者などの免疫不全患者において、または臓器移植と併せて、または乾癬、関節リウマチ、またはクローン病などの免疫障害の治療として、シクロスポリン、アザチオプリン(イムラン)、またはコルチコステロイドなどの免疫抑制薬を服用している患者において効果的に使用できる。
【0153】
診断または予後診断における化合物の使用
本明細書で実証されるように、抗体は二価の形態であれば、高親和性を有し、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現しない組織に対する非特異的染色がないため、本発明の二価の抗体は、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞(例えば、乳癌)を検出するのに特に効果的である。したがって、抗体は、膵臓癌、膵臓炎とI型糖尿病などの膵臓病変をはじめとし、乳癌および心血管疾患などのBDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞が関与する病態の診断、予後診断および/または予測で使用するための利点を有する。例えば、患者中の膵臓(または乳)癌は、本発明の抗体を使用して特徴付けられ、または評価されうる。これは、BDSLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞が関与する病態を患者が有するかどうかを判定するのに有用でありうる。方法はまた、このような病態を有する患者が、BDSLまたはFAPP発現細胞中で効果的な治療方法を用いて治療できるかどうかを判定するのに有用でありうる。例えば、方法は、BDSLまたはFAPPに結合する抗原結合化合物(例えば、本発明のいずれの抗体)に患者が反応するかどうかを判定するのに使用できる。
【0154】
したがって、本明細書で述べられる抗体は、膵臓病変、特に、特定の膵臓癌の、好ましくは、インビトロにおける検出に使用できる。このような方法は、典型的には、患者からの生物学的サンプルを本発明による抗体に接触させ、抗体および生物学的サンプル間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体の形成を検出する工程を伴う。好ましくは、生物学的サンプルは、生検によって得られる膵臓組織(免疫組織化学アッセイのための組織切片)または生物学的な液体(例えば、血清、尿、膵液または乳)のサンプルである。複合体は、本発明に従った抗体を標識することにより直接検出でき、または本発明に従った抗体の存在を明らかにする分子(二次抗体、ストレプトアビジン/ビオチンタグなど)を添加することにより間接的に検出できる。例えば、標識は、抗体を放射性または蛍光性のタグとカップリングさせることで達成できる。これらの方法は、当業者によく知られている。癌を検出する場合、FAPPまたはBDSLポリペプチドが生物学的サンプル中に存在するという陽性判定は、一般に患者が膵臓病変(例えば膵臓癌)について陽性であることを示す。したがって、本発明はまた、インビボまたはインビトロで膵臓病変を検出するのに使用できる診断用組成物を調製するための本発明による抗体の使用にも関する。
【0155】
本発明の抗体はまた、対象がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する細胞に向けた治療薬を用いた治療、またはFAPPまたはBSDLポリペプチドそれ自体を対象とする治療に適するかどうかを判定するのに、または対象のそれに対する応答を予測するのにも有用である。好ましくは、治療薬は、FAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗原結合断片(例えば、抗体、本発明の抗体)である。
【0156】
本発明の抗体はまた、FAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体を用いた治療に対する、癌を有する対象の応答を評価するのにも有用でもある。このような方法は、典型的には、患者が、本発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかを評価する工程に関し、FAPPまたはBSDLポリペプチドの発現が応答する対象の指標である。患者がFAPPまたはBDSLを発現する癌細胞を有するという陽性判定は、患者がFAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体(例えば本発明の抗体)を用いた治療に対して陽性応答者であることを示す。
【0157】
応答する対象の同定はまた、癌を有する対象を治療する方法を可能にする。患者が本発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかを評価することが可能であり、発明の抗体により結合されるFAPPまたはBSDLポリペプチドの発現は、応答する対象の指標であり、癌細胞がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する前記対象をFAPPまたはBSDLポリペプチドに結合する抗体(例えば、本発明の抗体)を用いて治療することが可能である。患者がFAPPまたはBSDLポリペプチドを発現する癌細胞を有するかどうかの評価は、例えば、患者から生物学的サンプルを得、サンプルを本発明に従った抗体と接触させ、前記抗体および前記生物学的サンプル間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体の形成を検出するなどの、本明細書で述べられる診断法を使用して実施できる。生物学的サンプルは、膵臓組織(生検)または生物学的な液体(例えば、血清、尿、膵液および乳)のサンプルであり得る。
【0158】
膵臓病変、特に、本発明に従った抗体を含んでなる膵臓癌のための診断または予後診断キットもまた包含される。場合により、キットは、診断または予後診断として使用するための本発明の抗体、および治療として使用するための本発明の抗体を含んでなる。前記キットは、生物学的サンプルおよび本発明の抗体間の免疫学的反応に起因する免疫学的複合体を検出する手段、特に、前記抗体を検出可能にする試薬をさらに含んでなることができる。
【0159】
当業者によって理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、一般に、臨床治療で用いられる量前後であり、化学療法剤は、単独で、またはその他の化学療法剤と組み合わせて投与される。
【0160】
本発明のさらなる態様と利点が以下の項目で開示されるが、それらは例証的であり、本明細書の範囲を制限するものではないものとする。
【実施例1】
【0161】
材料と方法
抗体およびその他の試薬
POD標識抗ウサギIgG、POD標識抗マウスIgG、およびウサギおよびマウス免疫グロブリンに対するその他の抗体を、ドイツ国マンハイムのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics(Manheim,Germany))、カリフォルニア州サンディエゴのカルビオケム(Calbiochem(SanDiego,CA))またはマサチューセッツ州ベバリーのセル・シグナリング(Cell Signaling(Beverly,MA))から得た。ペルオキシダーゼ(POD)抱合ヤギ抗ウサギIgGおよび抗マウスIgGを、それぞれセル・シグナリング(Cell Signaling)およびカリフォルニア州サンディエゴのカルビオケム(Calbiochem(SanDiego,CA))から得た。アクチンおよび無関連マウスカッパIgMに対する抗体、プロテアーゼ阻害剤カクテル、ヨウ化プロピジウム、およびアフィジコリンを、ミズーリ州セントルイスのシグマ(Sigma(StLouis、MO))から得た。Bcl−2に対する抗体を、カリフォルニア州サンタクルーズのサンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA))から得た。その他の抗体(切断カスパーゼ−3(Asp175)、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7(Aspl75)、カスパーゼ−7、切断カスパーゼ−9(Asp330)、カスパーゼ−9、切断PARP(Asp214)、PARP、およびBcl−2)を、マサチューセッツ州ベバリーのセル・シグナリング(Cell Signaling(Beverly,MA))から得た。RPMI1640、DMEM培地、ペニシリン、ストレプトマイシン、トリプシン−EDTAおよび非酵素性細胞剥離液を、フランス国エムランビルのケンブレックス・バイオサイエンス(Cambrex Biosciences(Emerainville,France))またはフランス国ルヴァロワ・ペレのロンザ(Lonza(Le Vallois−Perret,France))から購入した。カスパーゼ阻害剤を、カリフォルニア州サンディエゴのアレクシス(Alexis(SanDiego,CA))またはカリビオケム(Calbiochem)から得た。BaxおよびE−カドヘリンに対する抗体を、カリフォルニア州サンタクルーズのサンタクルーズバイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA))から得た。β−カテニンに対する抗体を、英国ケンブリッジのアブカム(Abcam(Cambridge,UK))から得た。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抱合ヤギ抗マウスIgMは、シグマ(Sigma)から得られた。Alexa−抱合ヤギ抗ウサギIgGおよび抗マウスIgGを、カリフォルニア州カールスバッドのモレキュラープローブス(MolecularProbes(Carlsbad,CA))から得た。フモニシンB1、フモニシンB2、L−シクロセリン、フェニル−2−デカノイルアミノ−3−モルホリノ−1−プロパノール(PDMP)、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)、フィリピン、トリトンX−100、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウムブロミド(MTT)、ヨウ化プロピジウム(PI)、およびアフィディコリンを、シグマ(Sigma)から得た。プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤を、フランス国メイランのロシュ・ダイアグノスティック(Roche Diagnostic(Meylan,France))から得た。DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、二塩酸塩)を、ウィスコンシン州マディソンのプロメガ(Promega(Madison,WI))から得た。
【0162】
ペプチドを認識して胎児膵腺房性膵臓タンパク質(FAPP)のO−グリコシル化C末端領域を認識しうるモノクローナル抗体mAb 16D10、膵臓胆汁酸塩依存リパーゼ(BSDL)の癌胎児性グリコアイソフォーム、およびヒトBSDL(およびFAPP)に対するポリクローナル抗体(pAbL64)を、WO2005/095594で述べられるようにして本発明者らの実験室で作り出した。その他の全ての生成物は、最も良い利用可能な等級であった。
【0163】
細胞および試薬
ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、および10%熱不活性化FCS(PAN Biotech)を添加したDMEM(Gibco)中で、HEK293T細胞を培養した。ピルビン酸ナトリウム(1mM)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および10%熱不活性化FCS(PAN biotech)を添加したRPMI(Gibco)中でSOJ−6細胞を培養した。リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000試薬、トリゾール、スーパースクリプト(Superscript)II逆転写酵素、およびpcDNA3.1ベクターを、インビトロジェン(Invitrogen)から購入した。
【0164】
細胞培養
細胞系(SOJ−6およびPanc−1)はヒト膵臓(アデノ)癌腫が起源である。FAPPを構成的に発現するSOJ−6細胞を、10%FCS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したRPMI 1640培地中で37℃で成育させた。FAPPを発現しないPANC−1細胞を、10%FCS、グルタミン(2Mm)、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したDMEM培地中で37℃で成育させた。mAb 16D10を発現する16D10ハイブリドーマを、10%不活性化FCS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、およびファンギゾン(0.1%)を添加したRPMI 1640培地中で37℃で成育させた。
【0165】
細胞死分析
不活性化FCS添加RPMI1640中でのmAb 16D10またはシスプラチンによる処理後に、細胞を収集して氷冷PBSで洗浄し、暗所においてアイソフロー(IsoFlow)緩衝液中の冷ヨウ化プロピジウム溶液(0.5mg/ml)に、室温で10分間再懸濁した。フローサイトメトリー分析を、クールター(Coulter)FACSCaliburを使用して実施した。
【0166】
細胞成長および増殖
細胞増殖を、以前述べられたようにして(Mosmann et al., 1983 J Immunol Methods, 65 (l-2): 55-63)MTTアッセイを使用して判定した。簡単に述べると、細胞を96ウェル培養プレート内の10%FCSを含有する適切な完全培地においてサブコンフルエンス(subconfluence)で播種した。培地を、増加する濃度のFAPPに対する抗体(pAbL64、mAbJ28、およびmAb 16D10)を含む10%不活性化FCS添加の新鮮な培地により24時間で交換した。細胞を、PBSで洗浄し、完全培地中で3時間、100μlのMTT(0.5mg/ml)と共にインキュベートしてPBSで洗浄し、最後に、DMSOと共に37℃で30分間インキュベートした。細胞成長を、MR 5000マイクロプレート分光光度計を使用して550nmで吸光度を測定して判定した。全ての独立した判定を三連で行い、対照と比較した。
【0167】
CD107動員およびIFN−γ産生に関するフローサイトメトリーアッセイ
100 UI/mLのIL−2を用いて一晩刺激したか、または刺激していない、融解し、精製したヒトNK細胞を、SOJ−6またはB221細胞系と、単独で、またはrec16D10(30μg/mL)またはリツキサン(10μg/mL)の存在下で、1に等しいエフェクター/標的比で混合した。次いで、FITC抱合型抗CD107 mAb(Becton Dickinson)およびモネンシン(sigma)の存在下で、細胞を37℃で4時間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、細胞を、2mM EDTAを含有するPBSで洗浄し、細胞抱合を中断して、細胞外マーカーについて染色した(ベックマン・コールター(Beckman Coulter)から購入したPC5抱合抗CD56およびPC7抱合抗CD3)。次に、細胞を固定し、IntraPrep試薬(Beckman Coulter)を使用して透過処理した。細胞内IFN−γを、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)から購入されたPE抱合抗IFN−γを使用して明らかにした。次に、サンプルを、FACScanto(Becton Dickinson)上で分析した。
【0168】
フローサイトメトリー
SOJ−6およびPANC−1細胞表面における抗原の検出を、次の条件下での間接的蛍光によって行った。細胞を、非酵素性細胞剥離液(Calbiochem)を用いて、37℃で15分間処理して培養プレートから剥離した。後の全工程を4℃で実施した。細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで15分間固定して、PBS中の1%BSAで15分間洗浄した。抗原を、特異的抗体に2時間曝してPBSで洗浄し、最後に、適切なFITC標識二次抗体と共に45分間インキュベートした。次に、細胞を、アイソフロー(IsoFlow)緩衝液で洗浄して再懸濁し、クールター(Coulter)FACSCalibur装置上で分析した。
【0169】
細胞を、冷PBS1×/BSA 0.2%/アジ化ナトリウム0.05%緩衝液を使用して2回洗浄した。染色を、丸形96ウェルプレート内でウェルあたり5×104個の細胞を使用し、異なる抗体を使用して4℃で1時間行った。次に、二次試薬と共にインキュベートする前に、細胞を2回洗浄した。2回の洗浄後、細胞を、PBS1×/ホルムアルデヒド1%内への捕捉前に再懸濁した。染色を、FACScan(カリフォルニア州サンノゼのBecton Dickinson)上で得、結果をFlowJoソフトウェアを使用して分析した。次に、5μg/mlのアフィディコリン(細胞周期を初期S相でブロックする真核生物核DNA複製の可逆的阻害剤)で6時間前処理し、またはしていないSOJ−6細胞を、mAb 16D10、または陰性対照として使用した無関連IgMと共にインキュベートした。非酵素性細胞剥離液を用いて培養プレートから剥離した細胞を、PBS+/+で洗浄し、−20℃の70%エタノールを用いて固定し、PBS+/+で洗浄した。細胞を、既に述べられているようにして[Mi-Lian et al., 2004]、アイソフロー(IsoFlow)緩衝液中の400μg/mlヨウ化プロピジウム溶液に再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。細胞周期分布をフローサイトメトリーによって検出し、Mod Fitソフトウェアメイン州トプシャムのVerity Software House,Inc.)によって分析した。単一事象の赤色蛍光を、それぞれ488nmおよび610nmにおける励起および発光を使用して記録し、DNAインデックスを測定した。
【0170】
16D10ハイブリドーマからのRNA抽出およびcDNA調製
16D10ハイブリドーマ細胞(5×106細胞)を、1mlのトリゾール試薬に再懸濁した。200μlのクロロホルムを添加してRNA抽出を行った。遠心分離(15分間、13,000rpm)後に、RNAを、500μlのイソプロパノールを用いて水相から沈殿させた。インキュベーション(10分間、RT)および遠心分離(10分間、13,000)後に、RNAを、70%エタノールで洗浄し、再度遠心分離した(5分間、13,000rpm)。RNAを、H2O(RNA分解酵素を含まない水)に再懸濁した。2μgの特異的RNAを使用し、製造業者の使用説明書に従って、スーパースクリプトII逆転写酵素を使用してcDNAを得た。5’GTGAAGGTCGGTGTGAACGGATT(配列番号17)および3’CTAAGCAGTTGGTGGTGCAGGAT(配列番号18)オリゴヌクレオチドを使用して、PCR反応によってGAPDHを増幅し、cDNAの質をチェックした。
【0171】
16D10抗体のVHおよびVL領域のクローニング
5’AAGCTAGCATGGAATCACAGACTCAGGCT(配列番号19)および3’AAGCGGCCGCCTAACACTCATTTCTGTTGAAG(配列番号20)オリゴヌクレオチドを使用して、PCRによってcDNAから16D10抗体のVL−Ck領域を増幅した。TA−クローニングおよび配列決定後に、配列をNheIおよびNotI制限部位の間でpcDNA3.1ベクターにクローン化した。5’AAGAATTCATGGAATGGAGCTGGGTCTTTC(配列番号21)および3’AAGGTACCTGGAATGGGCACATGCAGATC(配列番号22)オリゴヌクレオチドを使用して、PCRによってcDNAから16D10抗体のVH−CH1領域を増幅した。TA−クローニングおよび配列決定後に、配列をEcoRIおよびKpnI制限部位の間で958 cosFClinkベクターにクローン化した。
【0172】
形質移入
形質移入の24時間前に、HEK−293T細胞を、75cm2フラスコ(5×106細胞/フラスコ)内の抗生物質無添加DMEMに播種した。15μgのpcDNA3.1/VL−Ck構築物および15μgの958 cosFClink/VH−CH1構築物を使用して、製造業者の使用説明書に従って、リポフェクトアミン(Lipofectamine)2000を使用して形質移入を実施した。形質移入のために、DNA純度を確実にするため、Maxi−prep内毒素フリーキット(Qiagen)を使用した。使用したリポフェクトアミン(Lipofectamine):DNA比を、2:1に固定した。形質移入の4、8、および12日後に培養上清物を収集した。
【0173】
抗体の精製
プロテインAセファロースCL−4Bビーズ(GE Healthcare)を使用して上清物から16D10を精製した。4℃の回転下でバッチ精製を実施した。次に、ビーズを、カラム装填前に4℃で5分間1500rpmで遠心分離した。1XPBS中での徹底的な洗浄後、グリシン0.1MpH3緩衝液を使用して抗体を溶出し、1XPBS緩衝液に対して4℃で一晩透析した。
【0174】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット
SOJ−6細胞を、6ウェル培養プレートにおいて、10%FCS添加RPMI1640培地中で成育させた。密集度(subconfluency)において、培地を除去し、10%不活性化FCS添加の新鮮なRPMI培地により24時間で交換した。次に、SOJ−6細胞を、mAb 16D10またはシスプラチンと共に24時間インキュベートした。インキュベーション終了時に、細胞を、氷冷PBS(Na+およびMg++含まない)で3回洗浄し、遠心分離によって収集し、ペレット化した。ペレットを、2回洗浄し、0.5mlの溶解緩衝液(10mM Tris−HCl pH7.4、150mM NaCl、1%トリトンX−100、1mMベンズアミジンおよびホスファターゼ阻害剤)中で4℃で溶解した。溶解後、ホモジェネートを、4℃において10,000gで10分間遠心分離して透明化した。ビシンコニン酸アッセイ(イリノイ州ロックフォードのPierce)を使用したタンパク質判定のために、アリコートを保存した。還元性SDS緩衝液中のタンパク質(50μg/レーン)を、(分離するタンパク質の分子量範囲に応じて)0.1%SDS添加10、12、または15%ポリアクリルアミド上に分離した。電気泳動後、タンパク質を銀染色した。代替的に、Mini Transblot電気泳動セル(カリフォルニア州ハーキリーズのBioRad)を使用して、タンパク質をニトロセルロース膜上に転写し、適切な一次および二次抗体を使用して転写タンパク質を免役検出した。洗浄後、化学発光基質を用いて、製造業者の使用説明書(スイスのRoche Diagnostics)に従って膜を発色させた。各実験では、一次抗体を取り除くことにより、または非免疫性血清を使用することにより、対照を含めた。
【0175】
アポトーシスおよびカスパーゼ活性
製造業者の使用説明書に従って、プロメガからのCaspACEFITC−VAD−fmk in situ マーカー(Promega)を培地中10μMの最終濃度で添加する前に、8ウェルプレート(ポリスチレン容器、BD Falcon))内で増殖した細胞を、不活性化FCSを含有するRPMI中のmAb 16D10またはマウスIgMで24時間処理した。次に、細胞を、PBS中で洗浄し、2%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、再び1回洗浄した。FITC−VAD−fmkにカスパーゼが作用するとアポトーシス細胞は蛍光性になり、蛍光顕微鏡下で無作為に試験した10視野の集合物において蛍光性細胞数を三連で判定した。
【0176】
実施例14のためのアポトーシスアッセイ(キメラ組み換え16D10によるアポトーシス)
実験を開始する72時間前に、SOJ−6細胞(ウェルあたり20×104細胞)を24ウェルプレート上に播種した。細胞を、20μg/mlの16D10 IgM、またはそれぞれ重鎖および軽鎖についてヒトIgG1定常部およびヒトカッパ軽鎖領域に連結し融合した16D10可変部を含有する20μg/mlのさらなる組み換え16D10 IgG1抗体、25μg/mlツニカマイシンまたは50μg/mlツニカマイシンのいずれかと共にインキュベートした。培養24時間後に、アネキシンV−FITCアポトーシス検出キットI(BD Pharmingen)を使用して、製造業者の説明書に従ってアネキシンV/PI染色を実施した。FACScan(カリフォルニア州サンノゼのBecton Dickinson)上で染色を得て、FlowJoソフトウェアを使用して結果を分析した。
【0177】
核染色
mAb 16D10またはシスプラチンによる処理後、細胞を氷冷PBS中で洗浄し、固定して−20℃において70%エタノールで5分間透過処理し、PBS中の希釈1/1000 DAPI溶液を用いて室温で1分間染色した。次に細胞をPBSで洗浄した。細胞の核形態を蛍光顕微鏡によって調べた。
【0178】
統計学的分析
全てのデータを平均±SDで示した。群間の有意差を、独立スチューデントt検定を使用して判定した。*P<0.01の値は、統計学的に有意であると認められた。
【0179】
実施例1−mAb 16D10で処理した膵臓SOJ−6細胞は、24時間にわたりアポトーシスによる細胞死を経る
SOJ−6細胞のアポトーシス細胞死を刺激するmAb 16D10の能力を、本明細書で述べられるようにして調査した。抗体16D10がSOJ−6細胞のアポトーシスをもたらすことを観察した(図1に示すように、RPMIおよびマウスIgMと比較して、y軸はアポトーシス細胞数/cm2を表す)。
【0180】
実施例2−16D10誘導アポトーシスは、カスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9活性化によって介在される
この実験では、16D10によって誘導されるアポトーシスを、カスパーゼ阻害剤(カスパーゼ9:Z−LEHD−fmk、カスパーゼ8:Z−IEDT−fmk、カスパーゼ3:Z−DEVED−fmk、およびカスパーゼ混合物:Z−VAD−fmk)の存在下または不在下で前処理し、次に、mAb 16D10で処理した膵臓のSOJ−6細胞上でCaspAceFITC−VAD−fmkを用いて測定した。図2は、mAb 16D10がカスパーゼ−3、カスパーゼ−8、およびカスパーゼ−9を介してアポトーシスを刺激することを示す。
【0181】
mAb 16D10によって誘導されるSOJ−6細胞のアポトーシスをDAPI染色によっても観察した。結果を図3に示し、図3において核断片化に対応する細胞の軽度の着色によって観察されるように、RPMIは細胞にアポトーシスを誘導せず、シスプラチンは低レベルのアポトーシスを誘導し、抗体16D10は顕著なレベルのアポトーシスを誘導する。
【0182】
実施例3−16D10はBcl−2ファミリーのタンパク質によって制御される
16D10による細胞の処理がBaxタンパク質の増加に付随する抗アポトーシスタンパク質Bcl−2の低下を誘導することを、本明細書で述べられるようにSDS−PAGEおよびウエスタンブロットを使用して観察することにより、カスパーゼ活性化がBcl−2ファミリーのタンパク質によって制御されることを示した。実験はまた、16D10の誘導するアポトーシスが、カスパーゼ8および9、およびポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)切断によって介在されることも実証した。図4は、ゲル上の結果を示し、左端のレーンはRPMI中のSOJ−6細胞を表し、中央のレーンは抗体16D10と共にインキュベートしたSOJ−6細胞を表し、右端のレーンはシスプラチンと共にインキュベートしたSOJ−6細胞を表す。
【0183】
実施例4−mAb 16D10、抗体pAbL64、およびmAbJ 28は、全てBDSLおよび/またはFAPPに対する抗体であるが、mAb16D10のみが膵臓腫瘍細胞成長を阻害できる
本明細書で述べられるMTTアッセイを使用して細胞成長を評価した。図5は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識する増加濃度のポリクローナル抗体pAbL64を用いた、SOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図5は、pAbL64が細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図6は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識するが、本発明者らによって抗体16D10からのBDSLおよび/またはFAPPの異なるエピトープに結合することが以前に実証されている、増加濃度のポリクローナル抗体J28を用いた、SOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図6は、J28が細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図7は、ヒトBDSLおよび/またはFAPPを認識する増加濃度のポリクローナル抗体16D10(IgM)による、SOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理を示す。図7は、16D10が、16D10抗原を発現しないが、FAPPを発現するSOJ−6細胞の低下を引き起こすPANC−1細胞の成長または数の低下を引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図8は、増加濃度の対照IgM抗体を用いたSOJ−6またはPANC−1膵臓腫瘍細胞の処理は、対照IgM抗体が、PANC−1およびSOJ−6細胞のいずれの成長または数の低下も引き起こすことができないことを示す(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。図9は、増加濃度の抗体16D10または対照IgM抗体のいずれかを用いたSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示し、対照IgM抗体が細胞の減少を引き起こすことができない一方で、16D10が細胞の減少を引き起こすことを実証する(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。
【0184】
図10は、増加濃度の抗体16D10または対照IgM抗体のいずれか、および抗体16D10の存在下または不在下での様々な濃度のメチル−b−シクロデキストリン(MBCD)によるSOJ−6膵臓腫瘍細胞の処理を示し、対照IgM抗体が細胞の減少を引き起こさない一方で、16D10が細胞の減少を引き起こすことが実証する(x軸はmAb濃度であり、y軸は細胞の%成長である)。MBCDを、16D10と組み合せて使用すると、抗体16D10の細胞成長阻害活性が低下または消失する。これらのデータは、アポトーシス性の細胞死を刺激するmAb 16D10の能力が、膜脂質ラフトミクロドメイン中の16D10抗原の局在に依存することを示す。
【0185】
実施例5−mAb 16D10は、SOJ−6細胞の細胞周期および細胞周期調節タンパク質の発現を調節する
次に、出願人らは、mAb 16D10誘導アポトーシスが、細胞周期の停止によるものかどうかを知ることを望んだ。SOJ−6細胞を、アフィディコリン不在または存在下による前処理後、mAb 16D10不在または存在下による前処理後にDNAプロフィルを観察することにより、処理後のSOJ−6細胞の細胞周期分布を評価した。各実験を三連で実施した。本発明者らは、特異的DNAマーカーであるヨウ化プロピジウムを使用して、フローサイトメトリーによって細胞周期の異なる周期を判定した。mAb 16D10によるSOJ−6細胞の処理は、G1/S停止(G1/S:96%)およびアポトーシス細胞の増加(6%)の両方をもたらす一方で、G2/M相中の細胞の百分率を減少した(4%)。これらの結果は、アフィディコリンによって細胞をG1/S期中で同期化した際に確認した。実際、G2/MからG1/S期へ、次いでG1/Sからアポトーシスへの細胞の移行もまた、アフィディコリン処理後に観察した。後者の場合、細胞はG1/S期でブロックされたため、S期からG0/G1期へ、次いでG0/G1期からアポトーシスへの移行が生じた。
【0186】
本発明者らは、PANC−1細胞において同一実験を実施し、mAb 16D10処理に際して細胞周期における効果がないことを観察した。次に、異なる細胞周期調節タンパク質、具体的にはp53およびサイクリンD1の発現を分析した。予想したとおり、mAb16D10による細胞処理はp53の発現を増加させ、サイクリンD1の発現を低下させた(図11)。サイクリンD1発現は、GSK−3βによって直接調節されうるため(Diehl et al., 1998 Genes Dev. 12 (22):3499-511)、次に、本発明者らは、mAb 16D10で一度チャレンジされた、SOJ−6細胞中の本キナーゼの発現レベルに着目した。総GSK−3βの発現は一定であったが、mAb 16D10とのインキュベーションによる細胞のインキュベーションにおいて、ホスホ−GSK−3β(不活性形態)の減少を観察した(図11)。同時に、これらの結果は、mAb 16D10による細胞の処理がGSK−3βの活性化を誘導し、それがサイクリンD1の分解を導き、G1/S相中の細胞停止を生じることを示唆する。
【0187】
実施例6−膜ラフト構造の組織崩壊は、mAb 16D10の抗増殖効果を低下させる
いくつかの研究は、BSDLがヒト膵臓のSOJ−6腫瘍細胞表面のラフト脂質ドメインと関連することを示している(Aubert-Jousset et al., 2004 Structure, 12 (8):1437-47)。多くのシステムにおいて、脂質ラフトの役割に対処するために、文書で十分に立証されている薬剤を用いた膜脂質ドメインの薬理学的操作が使用されている。この目的で、本発明者らは、それぞれ膜ラフト中のコレステロールを激減させ、またはコレステロールを抑制すると述べられている薬剤、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)およびフィリピンを使用した(Chen et al., 2002 J Biol Chem.;277(51):49631-7)。図12Aで例証されるように、メチル−β−シクロデキストリンおよびフィリピン存在下において、mAb 16D10の抗増殖性効果は低下した。
【0188】
スフィンゴ脂質もまたラフト構造に関与する。したがって、本発明者らは、(グリコ)スフィンゴ脂質生合成代謝阻害剤を使用した(Aubert-Jousset et al., 2004)。効果的な濃度(10μM)で試験したが、L−シクロ−セリン(LCS)(セリンパルミトイル基転移酵素の阻害剤)およびフモニシン1または2(どちらもジヒドロセラミドシンセターゼの阻害剤)のいずれもmAb 16D10の抗増殖性効果を妨げなかった(図12B)。次に、本発明者らは、スフィンゴ脂質合成の最終段階に作用するスフィンゴ糖脂質合成の阻害剤であるフェニル−デカノイルイミノ−モルホリノ−プロパノール(PDMP)を試験した(Lefrancois et al., 2002, J Biol Chem. 277(19): 17188-99)。図12Bに例証されるように、PDMPは、SOJ−6細胞増殖に対するmAb 16D10の効果を損なった。これらの結果は、16D10抗原が、コレステロールに富むミクロドメインに局在しうること、この16D10抗原とこれらのラフトミクロドメインとのつながりがアポトーシスを誘導するのに必要でありうることを示す。しかし、これらのミクロドメインの新合成は、この経路に関連していないようであった。したがって、コレステロールに富むミクロドメインの完全性は、膵臓腫瘍細胞表面に16D10抗原が存在するための必要条件である。
【0189】
実施例7−mAb 16D10は、E−カドヘリン発現およびSOJ−6細胞中のβ−カテニン局在を調節する
Roitbak et al. (2005)は、β−カテニンおよびE−カドヘリン複合体が、ヒト腎臓上皮細胞中の脂質ラフトマーカー、カベオリン−1と関連することを示した。これらの分子は、これらの脂質ラフトドメインにシグナル伝達の役割を付与しうる。免疫ブロット法を実施して、膵臓腫瘍細胞によるE−カドヘリンおよびβ−カテニンの発現を調べた。図13で例証されるように、mAb 16D10で処理したSOJ−6細胞からの溶解産物は、無関連IgMで処理した細胞とは対照的に、高いE−カドヘリンタンパク質発現を示す。mAb 16D10処理に応じた、SOJ−6細胞の細胞膜におけるE−カドヘリンの過剰発現を免疫蛍光顕微鏡の観察により実証し、SOJ−6細胞を、mAb 16D10存在下または不在下で24時間処理し、洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定して、PBS中の1%BSAおよび0.05%サポニンで飽和し、さらに、一次抗体(抗E−カドヘリン、抗β−カテニン、抗ホスホ−β−カテニン)、続いて二次抗体FITC 488nmまたはAlexa 594 nmでインキュベートした。mAb 16D10で処理したか、または処理していないPANC−1細胞は、それらの細胞膜にE−カドヘリンを発現しなかった(データ示さず)。この結果は、E−カドヘリンの過剰発現が、細胞表面における16D10抗原の存在、およびmAb 16D10での処理に依存することを示唆する。しかしながら、mAb 16D10は、β−カテニンの発現に顕著な変化を誘導しなかった(図13)。
【0190】
次に、mAb 16D10を用いた処理がβ−カテニンの局在に影響するかどうかを判定するために、蛍光顕微鏡分析を実施した。mAb 16D10によるSOJ−6細胞の処理後には、β−カテニンは細胞質ゾル区画に見られたが、未処理細胞ではそれは細胞膜に局在した。いくつかの研究は、、Wntシグナル伝達不在下では、β−カテニン残基のリン酸化が、このタンパク質をユビキチン依存性プロテアソーム経路による分解に向かわせることを示している(Aberle et al., 1997 EMBO J. 16 (13): 3797-804およびOrford et al., 1997 Biol Chem. 272(40): 24735-8)。実際に、β−カテニンはmAb 16D10で処理した細胞内でリン酸化され(図13)、それはβ−カテニンが核に転位してサイクリンD1などの標的遺伝子を活性化することができず、代わりに分解されることを示唆する。さらに、β−カテニンは、GSK−3βにより調節され、mAb 16D10で処理されると、それ自体が細胞内で活性化されうる(図11)。これらの結果は、本発明者らの以前の実験が、mAb 16D10がG1/S期において細胞周期停止を引き起こすことを示すことを確認する。これらの結果は、mAb 16D10が、ヒト膵臓腫瘍細胞中においてβ−カテニンを不活性化し、E−カドヘリンの発現を直接または間接的に回復することを示す。最後に、本発明者らは、ラフトミクロドメイン中のE−カドヘリン、β−カテニン、および16D10抗原の結合が、mAb 16D10がアポトーシスを誘導するのに必要かどうかを調べることを所望した(図13)。
【0191】
実施例8−SOJ−6は16D10によって認識される抗原を発現するが、PANC−1細胞は発現しない
本明細書で実証されるように、抗体16D10は、SOJ−6細胞中で細胞成長を阻害できるが、PANC−1細胞中では阻害できない。フローサイトメトリー実験を実施して、16D10によって認識される抗原が細胞表面に見られるかどうかを調査した。SOJ−6およびPANC−1細胞それぞれを表す図14および15に結果を示す。図14において、抗体16D10はSOJ−6細胞上に存在する抗原に結合することを見出し、図15において、抗体16D10はPANC−1細胞上に存在する抗原に結合しなかった。各例において、16D10結合を陰性対照および対照マウスIgM(Sigma)と比較した。x軸は蛍光強度を示し、y軸はカウントを示す。
【0192】
実施例9−HEK293T細胞中における二価の16D10キメラ抗体の生成
マウス16D10抗体のVHおよびVL鎖に対応するcDNAを、ハイブリドーマDNAのRT−PCR増幅によって得た。H:VHおよびCH1領域を増幅してクローン化し、配列決定してヒトIgG1−FcとインフレームでCOS−fc−結合ベクターにサブクローン化した。L:VLおよびCk領域を増幅してクローンし、配列決定してpcDNA3発現ベクターにサブクローン化した。
【0193】
マウス16D10抗体の可変(Fab2’様)領域、およびヒトIgG1抗体の定常(Fc)領域を含んでなるキメラ抗体を生成した。この抗体をrec16D10と称する。抗体を、HEK293T細胞内において、(958COS−Fc−結合−VH−16D10およびpcDNA3−VL−16D10ベクターの同時形質移入によって)一過的に、または(pcDNA6−Fc−VH−16D1OおよびpcDNA3−VL−16D10ベクターを使用した同時形質移入によって)安定的に、生成した。生成した抗体の純度および収率を、Prot−A精製後にSDS−PAGE分析によって確認し、活性をSOJ−6細胞におけるFACSによって確認した。図16、17を参照されたい。
【0194】
IgM 16D10抗体およびキメラrec16D10をそれぞれトリプシンと共にインキュベートしてSOJ−6細胞への結合に対するその効果を調査した。トリプシンが両方の抗体の細胞への結合を実質的に低下させることを見出した。
【0195】
実施例10−IgM 16D10の内部移行
共焦点顕微鏡を用いるパルスチェイス実験を使用して、培養液中におけるIgM 16D10抗体との生存細胞との相互作用を評価した(パルス:4℃で30分;チェイス:培養液中37℃で0または2時間)。実質的に全てのmAbが2時間以内に内部移行したことを観察した。mAbのフラクションはLAMP1と共に共局在した。
【0196】
実施例11−細胞増殖に対する抗体の効果
IgM抗体16D10およびキメラ抗体rec16D10のSOJ−6細胞増殖に対する効果を調べた。細胞を抗体なし、様々な量の16D10またはrec16D10抗体、または無関連IgG抗体の培養中でインキュベートした。抗体16D10が、細胞増殖を、25または50μg/mlのいずれかにおいて約50%低下させたのに対し、rec16D10は、増殖を、25および50μg/mlにおいて、それぞれ20%より多く、および35%より多く、低下させた(図18)。したがって、Rec16D10および16D10IgMのいずれもSOJ−6増殖における直接否定的な効果を及ぼした。
【0197】
実施例12−rec16D10がNK細胞(ADCC)を活性化する能力の試験
キメラ抗体rec16D10(30μg/ml)を、標的SOJ−6細胞と、NK細胞と共に、IL−2(100U/ml)(図19)による一晩の処理の存否でインキュベートした。対照として、リツキサン抗体(10μg/ml)を、標的B221細胞と共に使用した。エフェクター細胞および標的細胞を、1/1(100000NK/ウェル)の比率で使用した。2つのドナーに由来する溶解し、精製したNK細胞(NK1およびNK2)を、抗体および標的細胞と共にインキュベートした。CD107染色およびIFN−γ分泌によりNK細胞の活性化を調べた。IL−2処理後、SOJ−6細胞存在下で、rec16D10は、(抗体なしまたはリツキサン存在の対照中の<30%および<20%に対して)それぞれおよそ53%および45%のNK1およびNK2細胞中でCD107陽性染色を誘導した(図20)。同様の条件下で、約30%のNK1およびNK2細胞は、(それぞれ抗体の不在下またはリツキサンありのNK1およびNK2細胞中の16%および13%未満に対して)IFN−γを分泌した(図21)。これらの結果は、(ヒトIgGのFc部分を有する)二価の抗体rec16D10は標的細胞の存在下でNK細胞を効果的に活性化でき、それにより標的細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できることを実証する。
【0198】
実施例13−IgM 16D10およびIgG rec16D10抗体の組織特異性
IgM 16D10およびキメラIgG rec16D10抗体の染色特異性を、様々な健康な組織のそれらの各染色を調べることにより評価した。IgM抗体16D10は、扁桃、唾液腺、末梢神経、眼、骨髄、卵巣、卵管、副甲状腺、前立腺、脾臓、腎臓、副腎、精巣、胸腺、尿管、子宮、および膀胱をはじめとする多くの組織において陽性染色を示した。対照的に、キメラ抗体rec16D10を用いた染色は、これらの健康な各組織に対して陰性であった。したがって、キメラIgG抗体rec16D10は、非特異的交差反応性の欠如に関してIgM抗体16D10よりも優れている(図22)。
【0199】
実施例14−16D10およびrec16D10の固定化したSOJ−6細胞への結合
予備FACS実験において、レギュラーの16D10mAb染色は、固定化したSOJ−6細胞において安定しているように見えることを観察し、このことはIgM形態が良好な結合活性で細胞表面抗原に結合することを示す。二価の16D10形態では、細胞表面結合は安定性がより低く、平均半減期は約80分であった。これまでにイネイト・ファルマ(Innate Pharma)で研究されている抗体のほとんどが5×105〜5×106M−1s−1の範囲のkon結合速度定数を有することを考慮すると、組み換え16D10抗体二価の親和力は治療用抗体の工業開発に適合するナノモル濃度程度(例えば、10〜1nM)であることを推定できる。
【0200】
実施例15−組み換え16D10 IgG1を使用したSOJ−6細胞アポトーシスの誘導
予備実験において、2時間の培養後のアネキシンVおよびアネキシンV/PI染色により評価されるごとく、二価のキメラ組み換え16D10抗体がSOJ−6細胞のアポトーシスを誘導できることを観察した。16D10のIgG1およびIgMの形態のいずれもSOJ−6細胞のアポトーシスを誘導した。2つの抗体のアポトーシス活性をツニカマイシン、および処理なしの対照と比較した。結果を図23に示す。
【0201】
本明細書で引用した全ての公報および特許出願は、それぞれの各公報または特許出願が参照によって具体的に個々に援用されたとおり、その内容全体を参照によって本明細書に援用したものとする。
【0202】
前述の発明は、明確な理解のために例示および実施例によりある程度詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲の精神と範囲を逸脱することなく、それに特定の変更および修飾を加えてもよいことは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療で使用するのに適した抗原結合化合物を生成する方法であって、
i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を提供し;
ii)前記抗原結合化合物をBSDLまたはFAPP発現細胞に対するアポトーシス促進活性について試験し;
iii)前記抗原結合化合物がBSDLまたはFAPP発現細胞に対するアポトーシス促進活性を有すると判定された場合、それを選択し;次いで
iv)選択された抗原結合化合物を多量に生成すること
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記抗原結合化合物を、BSDLまたはFAPP発現細胞のADCC活性を誘導する能力について試験し、次いで、前記抗原結合化合物がBSDLまたはFAPP発現細胞のADCC活性を誘導する能力を有すると判定された場合、前記抗原結合化合物を選択することを含む工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原結合化合物をヒトへの投与のために調製する工程をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ヒトへの投与のために調製する工程が、前記化合物を薬学的に許容できる担体と配合する工程を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が腫瘍細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍細胞が1人またはそれ以上の癌にかかっている患者から採取される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が脂質ラフト中でBSDLおよび/またはFAPPを発現する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、BSDLまたはFAPPを発現するように作製された組み換え細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がSOJ−6細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が免疫エフェクター細胞の不在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫エフェクター細胞がNK細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程ii)が、前記抗原結合化合物が前記BSDLまたはFAPP発現細胞においてアポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質の活性またはレベルを調節するかどうかを判定する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記調節タンパク質がカスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程iv)が、前記抗原結合化合物を産生する宿主細胞を適切な培地中で培養し、次いで前記抗原結合化合物を回収することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原結合化合物が抗体であり、前記宿主細胞が前記抗体を産生するハイブリドーマである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原結合化合物が、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子のごとき細胞毒性薬物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体がIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記IgGアイソタイプがヒトIgG1アイソタイプである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、抗体16D10の可変部、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する別の抗体の可変部を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が抗体16D10のキメラ組み換え形態であって、抗体16D10の重鎖定常部のCμ2、Cμ3、およびCμ4領域がヒトIgG1配列により置換されている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が二価の抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞により実質的に内部移行されない、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞による前記抗体の内部移行を評価し、前記抗体が前記細胞によって実質的に内部移行されないことを見出すことが、前記抗体が癌の治療で使用するのに適することを確認するさらなる工程をさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力を評価し、前記抗体が前記細胞の前記細胞介在性傷害を誘導できることを見出すことが、前記抗体が癌の治療で使用するのに適することを確認するさらなる工程をさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法に従って生成される、抗原結合化合物。
【請求項30】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、請求項29に記載の抗原結合化合物。
【請求項31】
前記化合物が抗体16D10以外の抗体である、請求項29に記載の抗原結合化合物。
【請求項32】
請求項29に記載の抗原結合化合物および薬学的に許容できる担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項33】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害できる抗体であって、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する抗体であって、16D10以外の抗体である抗体。
【請求項34】
抗体が二価である、請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体がIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項33または34に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体がヒトIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
前記抗体がFc受容体に結合できる重鎖定常部を有する、請求項35または36に記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
2つの重鎖および2つの軽鎖からなる二価の抗体であって、重鎖がFc受容体に結合できるIgG重鎖定常部を含んでなる抗体であって、
(a)BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害でき、
(b)BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導でき、
(c)BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、抗体。
【請求項40】
(a)ヒトIgG鎖定常部に融合した配列番号7のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる重鎖;および(b)任意選択的にヒトカッパ鎖定常部に融合した配列番号8のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる軽鎖:を含んでなる二価の抗体。
【請求項41】
重鎖が、配列番号7のアミノ酸配列に由来するCDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなり、軽鎖が、配列番号8のアミノ酸配列に由来するCDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなる、請求項33〜40のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項42】
重鎖が配列番号7のアミノ酸配列を含んでなる、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
軽鎖が配列番号8のアミノ酸配列を含んでなる、請求項41または42に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が配列番号1を含んでなる核酸配列から生成される、請求項42に記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が配列番号2を含んでなる核酸配列から生成される、請求項43に記載の抗体。
【請求項46】
前記重鎖定常部またはIgGアイソタイプが、ヒトIgG1である、請求項40〜45のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項47】
前記重鎖定常部またはIgGアイソタイプが、非ヒトIgGアイソタイプである、請求項40〜45のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
重鎖定常部が、配列番号15と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項46に記載の抗体。
【請求項49】
軽鎖定常部が、配列番号16と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項40〜48のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項50】
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含んでなる重鎖;および(b)配列番号6のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる軽鎖:を含んでなる、二価の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、放射性同位体、毒性ポリペプチド、および毒性小分子からなる群から選択される細胞毒性薬物を含まない、請求項33〜50のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項52】
前記抗体が、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害できる、請求項33〜51のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項53】
前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞においてアポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質の活性またはレベルを調節する、請求項52に記載の抗体。
【請求項54】
前記調節タンパク質が、カスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである、請求項53に記載の抗体。
【請求項55】
前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞により実質的に内部移行されない、請求項33〜54のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体である、請求項33〜55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項57】
前記抗体が、少なくとも80分の半減期でBSDLまたはFAPP発現細胞に結合する、請求項33〜56のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が、SOJ−6細胞である、請求項57に記載の抗体。
【請求項59】
前記抗体が、10ナノモル濃度未満のBSDLまたはFAPPエピトープに対する結合親和力を有する、請求項33〜58のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項60】
前記抗体が、Fc受容体への結合が増加されるように修飾されているIgG1領域を含んでなる、請求項33〜59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
前記抗体が低フコシル化される、請求項33〜59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
請求項33〜61のいずれか一項に記載の抗体、および薬学的に許容できる担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項63】
請求項62に記載の抗体、および膵臓癌の治療における前記抗体の使用に関する説明書を含んでなるキット。
【請求項64】
医薬の製造のための請求項29〜62のいずれか一項に記載の抗体または医薬組成物の使用。
【請求項65】
10ナノモル濃度未満のBSDLまたはFAPPエピトープに対する結合親和力を有し、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、二価の抗体。
【請求項66】
前記抗体が、IgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項65に記載の抗体。
【請求項67】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が、SOJ−6細胞である、請求項43に記載の抗体。
【請求項68】
請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体および検出可能なマーカーを含んでなる、抱合体。
【請求項69】
前記検出可能なマーカーが、放射性同位体、蛍光色素、BSDLまたはFAPPポリペプチドに対する抗体以外の抗原−抗体ペアのメンバー、レクチン−炭水化物ペアのメンバー、アビジン、ビオチン、受容体−リガンドペアのメンバー、または分子的に刷り込まれたポリマー−プリント分子システムのメンバーから選択される、請求項68に記載の抱合体。
【請求項70】
請求項33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体を発現する宿主細胞。
【請求項71】
請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体、および前記抗体を膵臓癌の診断で使用するための説明書を含んでなるキット。
【請求項72】
BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞を検出するための請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項73】
細胞が膵臓癌細胞である、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
膵臓癌を診断する方法における、請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項75】
癌細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害するか、あるいは癌にかかっている患者を治療する方法であって、前記方法が、
a)前記癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現し、アポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するかどうかを判定し;次いで
b)前記癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現し、アポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するという陽性判定の場合、前記癌または癌細胞を請求項29〜31または33〜61のいずれか一項に記載の抗原結合化合物の有効量と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項76】
前記癌または癌細胞を接触させる前記工程が、薬学的有効量の前記抗原結合化合物を前記患者に投与することを含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記薬学的有効量が、前記患者において癌細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害するのに十分な量である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記接触させる工程が、免疫エフェクター細胞の不在下または相対的不足下である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫エフェクター細胞がNK細胞である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
せいb
前記接触させる工程がインビトロで行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記患者に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記患者が免疫不全である、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記抗原結合化合物が抗体である、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体が二価のIgG抗体である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
BSDLまたはFAPP発現細胞による前記抗体の内部移行、またはBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する前記抗体の能力が、評価される工程をさらに含んでなり、前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、またはその細胞介在性傷害を誘導できるという知見が、前記抗体が前記患者の治療で使用するのに適することを示す、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記癌または癌細胞が、Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項87】
前記Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全が、Bcl−2の過剰発現またはBaxの発現低下である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記癌または癌細胞が、化学療法剤に対して抵抗性である、請求項75に記載の方法。
【請求項89】
前記癌または癌細胞が膵臓癌である、請求項75に記載の方法。
【請求項1】
癌の治療で使用するのに適した抗原結合化合物を生成する方法であって、
i)BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗原結合化合物を提供し;
ii)前記抗原結合化合物をBSDLまたはFAPP発現細胞に対するアポトーシス促進活性について試験し;
iii)前記抗原結合化合物がBSDLまたはFAPP発現細胞に対するアポトーシス促進活性を有すると判定された場合、それを選択し;次いで
iv)選択された抗原結合化合物を多量に生成すること
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記抗原結合化合物を、BSDLまたはFAPP発現細胞のADCC活性を誘導する能力について試験し、次いで、前記抗原結合化合物がBSDLまたはFAPP発現細胞のADCC活性を誘導する能力を有すると判定された場合、前記抗原結合化合物を選択することを含む工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原結合化合物をヒトへの投与のために調製する工程をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ヒトへの投与のために調製する工程が、前記化合物を薬学的に許容できる担体と配合する工程を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が腫瘍細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍細胞が1人またはそれ以上の癌にかかっている患者から採取される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が脂質ラフト中でBSDLおよび/またはFAPPを発現する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、BSDLまたはFAPPを発現するように作製された組み換え細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞がSOJ−6細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
工程ii)が免疫エフェクター細胞の不在下で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫エフェクター細胞がNK細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程ii)が、前記抗原結合化合物が前記BSDLまたはFAPP発現細胞においてアポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質の活性またはレベルを調節するかどうかを判定する工程を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記調節タンパク質がカスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程iv)が、前記抗原結合化合物を産生する宿主細胞を適切な培地中で培養し、次いで前記抗原結合化合物を回収することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原結合化合物が抗体であり、前記宿主細胞が前記抗体を産生するハイブリドーマである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗原結合化合物が、放射性同位体、毒性ポリペプチド、または毒性小分子のごとき細胞毒性薬物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドに特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体がIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記IgGアイソタイプがヒトIgG1アイソタイプである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、抗体16D10の可変部、またはBSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する別の抗体の可変部を含んでなる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が抗体16D10のキメラ組み換え形態であって、抗体16D10の重鎖定常部のCμ2、Cμ3、およびCμ4領域がヒトIgG1配列により置換されている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が二価の抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞により実質的に内部移行されない、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞による前記抗体の内部移行を評価し、前記抗体が前記細胞によって実質的に内部移行されないことを見出すことが、前記抗体が癌の治療で使用するのに適することを確認するさらなる工程をさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する能力を評価し、前記抗体が前記細胞の前記細胞介在性傷害を誘導できることを見出すことが、前記抗体が癌の治療で使用するのに適することを確認するさらなる工程をさらに含んでなる、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法に従って生成される、抗原結合化合物。
【請求項30】
前記抗原結合化合物が、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、請求項29に記載の抗原結合化合物。
【請求項31】
前記化合物が抗体16D10以外の抗体である、請求項29に記載の抗原結合化合物。
【請求項32】
請求項29に記載の抗原結合化合物および薬学的に許容できる担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項33】
BSDLまたはFAPPポリペプチドに結合し、BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害できる抗体であって、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する抗体であって、16D10以外の抗体である抗体。
【請求項34】
抗体が二価である、請求項33に記載の抗体。
【請求項35】
前記抗体がIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項33または34に記載の抗体。
【請求項36】
前記抗体がヒトIgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項35に記載の抗体。
【請求項37】
前記抗体がFc受容体に結合できる重鎖定常部を有する、請求項35または36に記載の抗体。
【請求項38】
前記抗体がBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導できる、請求項37に記載の抗体。
【請求項39】
2つの重鎖および2つの軽鎖からなる二価の抗体であって、重鎖がFc受容体に結合できるIgG重鎖定常部を含んでなる抗体であって、
(a)BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害でき、
(b)BSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導でき、
(c)BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、抗体。
【請求項40】
(a)ヒトIgG鎖定常部に融合した配列番号7のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる重鎖;および(b)任意選択的にヒトカッパ鎖定常部に融合した配列番号8のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる可変部を含んでなる軽鎖:を含んでなる二価の抗体。
【請求項41】
重鎖が、配列番号7のアミノ酸配列に由来するCDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなり、軽鎖が、配列番号8のアミノ酸配列に由来するCDR1、CDR2、およびCDR3を含んでなる、請求項33〜40のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項42】
重鎖が配列番号7のアミノ酸配列を含んでなる、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
軽鎖が配列番号8のアミノ酸配列を含んでなる、請求項41または42に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が配列番号1を含んでなる核酸配列から生成される、請求項42に記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が配列番号2を含んでなる核酸配列から生成される、請求項43に記載の抗体。
【請求項46】
前記重鎖定常部またはIgGアイソタイプが、ヒトIgG1である、請求項40〜45のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項47】
前記重鎖定常部またはIgGアイソタイプが、非ヒトIgGアイソタイプである、請求項40〜45のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
重鎖定常部が、配列番号15と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項46に記載の抗体。
【請求項49】
軽鎖定常部が、配列番号16と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項40〜48のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項50】
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含んでなる重鎖;および(b)配列番号6のアミノ酸配列に由来する1つまたはそれ以上のCDRを含んでなる軽鎖:を含んでなる、二価の抗体。
【請求項51】
前記抗体が、放射性同位体、毒性ポリペプチド、および毒性小分子からなる群から選択される細胞毒性薬物を含まない、請求項33〜50のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項52】
前記抗体が、膵臓腫瘍細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害できる、請求項33〜51のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項53】
前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞においてアポトーシスまたは細胞増殖調節タンパク質の活性またはレベルを調節する、請求項52に記載の抗体。
【請求項54】
前記調節タンパク質が、カスパーゼまたはBcl−2ファミリーメンバーである、請求項53に記載の抗体。
【請求項55】
前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞により実質的に内部移行されない、請求項33〜54のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項56】
前記抗体が、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体である、請求項33〜55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項57】
前記抗体が、少なくとも80分の半減期でBSDLまたはFAPP発現細胞に結合する、請求項33〜56のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が、SOJ−6細胞である、請求項57に記載の抗体。
【請求項59】
前記抗体が、10ナノモル濃度未満のBSDLまたはFAPPエピトープに対する結合親和力を有する、請求項33〜58のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項60】
前記抗体が、Fc受容体への結合が増加されるように修飾されているIgG1領域を含んでなる、請求項33〜59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
前記抗体が低フコシル化される、請求項33〜59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
請求項33〜61のいずれか一項に記載の抗体、および薬学的に許容できる担体を含んでなる、医薬組成物。
【請求項63】
請求項62に記載の抗体、および膵臓癌の治療における前記抗体の使用に関する説明書を含んでなるキット。
【請求項64】
医薬の製造のための請求項29〜62のいずれか一項に記載の抗体または医薬組成物の使用。
【請求項65】
10ナノモル濃度未満のBSDLまたはFAPPエピトープに対する結合親和力を有し、BSDLまたはFAPPポリペプチドとの結合について抗体16D10と競合する、二価の抗体。
【請求項66】
前記抗体が、IgGアイソタイプの重鎖定常部を有する、請求項65に記載の抗体。
【請求項67】
前記BSDLまたはFAPP発現細胞が、SOJ−6細胞である、請求項43に記載の抗体。
【請求項68】
請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体および検出可能なマーカーを含んでなる、抱合体。
【請求項69】
前記検出可能なマーカーが、放射性同位体、蛍光色素、BSDLまたはFAPPポリペプチドに対する抗体以外の抗原−抗体ペアのメンバー、レクチン−炭水化物ペアのメンバー、アビジン、ビオチン、受容体−リガンドペアのメンバー、または分子的に刷り込まれたポリマー−プリント分子システムのメンバーから選択される、請求項68に記載の抱合体。
【請求項70】
請求項33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体を発現する宿主細胞。
【請求項71】
請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体、および前記抗体を膵臓癌の診断で使用するための説明書を含んでなるキット。
【請求項72】
BSDLまたはFAPPポリペプチドを発現する細胞を検出するための請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項73】
細胞が膵臓癌細胞である、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
膵臓癌を診断する方法における、請求項29〜31、33〜61または65〜67のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項75】
癌細胞のアポトーシスを誘導するか、または増殖を阻害するか、あるいは癌にかかっている患者を治療する方法であって、前記方法が、
a)前記癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現し、アポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するかどうかを判定し;次いで
b)前記癌または癌細胞がBSDLまたはFAPPポリペプチドを発現し、アポトーシス促進剤または抗細胞増殖剤を用いた治療に適するという陽性判定の場合、前記癌または癌細胞を請求項29〜31または33〜61のいずれか一項に記載の抗原結合化合物の有効量と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項76】
前記癌または癌細胞を接触させる前記工程が、薬学的有効量の前記抗原結合化合物を前記患者に投与することを含んでなる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記薬学的有効量が、前記患者において癌細胞のアポトーシスを誘導または増殖を阻害するのに十分な量である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記接触させる工程が、免疫エフェクター細胞の不在下または相対的不足下である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記免疫エフェクター細胞がNK細胞である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
せいb
前記接触させる工程がインビトロで行われる、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記患者に化学療法剤を投与することをさらに含んでなる、請求項76に記載の方法。
【請求項82】
前記患者が免疫不全である、請求項76に記載の方法。
【請求項83】
前記抗原結合化合物が抗体である、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
前記抗体が二価のIgG抗体である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
BSDLまたはFAPP発現細胞による前記抗体の内部移行、またはBSDLまたはFAPP発現細胞の細胞介在性傷害(ADCC)を誘導する前記抗体の能力が、評価される工程をさらに含んでなり、前記抗体が、BSDLまたはFAPP発現細胞によって実質的に内部移行されず、またはその細胞介在性傷害を誘導できるという知見が、前記抗体が前記患者の治療で使用するのに適することを示す、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記癌または癌細胞が、Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全を有する、請求項75に記載の方法。
【請求項87】
前記Bcl−2ファミリーメンバーの調節不全が、Bcl−2の過剰発現またはBaxの発現低下である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記癌または癌細胞が、化学療法剤に対して抵抗性である、請求項75に記載の方法。
【請求項89】
前記癌または癌細胞が膵臓癌である、請求項75に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−532976(P2010−532976A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510824(P2010−510824)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057112
【国際公開番号】WO2008/148884
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(503285612)ユニヴェルシテ・ドゥ・ラ・メディテラネ (15)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA MEDITERRANEE
【出願人】(591049848)
【氏名又は名称原語表記】INSERM
【出願人】(506000184)イナート・ファルマ (15)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057112
【国際公開番号】WO2008/148884
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(503285612)ユニヴェルシテ・ドゥ・ラ・メディテラネ (15)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA MEDITERRANEE
【出願人】(591049848)
【氏名又は名称原語表記】INSERM
【出願人】(506000184)イナート・ファルマ (15)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【Fターム(参考)】
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