自動車の車体構造
【課題】車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転できる自動車の車体構造を提供すること。
【解決手段】本発明の自動車の車体構造は、前輪3L,3Rの舵角θ2よりも後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とする舵角制御手段5と、右旋廻時に右側最大車体基準円11の内側に収まり、左旋廻時に左側最大車体基準円21の内側に収まる外側形状を有する車体2と、を有する。そして、右側最大車体基準円11は、右旋廻時最小回転半径の中心位置Pを中心点とし、車幅方向中心位置Oをはさんで中心位置Pと反対側の車体2上に設定する左車体基準点10を通る。また、左側最大車体基準円21は、左旋廻時最小回転半径の中心位置Qを中心点とし、車幅方向中心位置Oをはさんで中心位置Qと反対側の車体2に設定する右車体基準点20を通る。
【解決手段】本発明の自動車の車体構造は、前輪3L,3Rの舵角θ2よりも後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とする舵角制御手段5と、右旋廻時に右側最大車体基準円11の内側に収まり、左旋廻時に左側最大車体基準円21の内側に収まる外側形状を有する車体2と、を有する。そして、右側最大車体基準円11は、右旋廻時最小回転半径の中心位置Pを中心点とし、車幅方向中心位置Oをはさんで中心位置Pと反対側の車体2上に設定する左車体基準点10を通る。また、左側最大車体基準円21は、左旋廻時最小回転半径の中心位置Qを中心点とし、車幅方向中心位置Oをはさんで中心位置Qと反対側の車体2に設定する右車体基準点20を通る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪操舵ユニットと後輪操舵ユニットとを備え、旋廻時、前輪と後輪を逆位相に操舵する自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-191474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動車にあっては、後輪操舵角を前輪操舵角に対して逆位相に制御したときに生じる外輪差によって、旋廻外側に位置する車体後部が障害物と干渉するおそれがある。そのため、ドライバーは外輪差を考慮しながら運転する必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動車の車体構造は、舵角制御手段と、車体と、を備えている。
前記舵角制御手段は、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する。
前記車体は、最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、運転席側方又は運転席前方であって、車幅方向中心位置をはさんで前記中心点と反対側の車体上の任意の位置に設定する第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる外側形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、舵角制御手段により、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵されると共に、車体の外径形状が、最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる。これにより、最大舵角にて旋廻する間、車体は最大車体基準円の外側に出ることなく旋廻する。
すなわち、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵されることで、旋廻外側に位置する後輪の走行軌跡よりも、旋廻外側に位置する前輪の走行軌跡が旋廻方向内側になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
一方、車体を最大車体基準円の内側に収めることで、最大舵角にて旋廻する間、最小回転半径の中心位置から最も遠い車体位置(車体において旋廻中心から最も外側を通る部分)が第1車体基準点となる。
そのため、ドライバーはこの第1車体基準点が障害物等に接触しないことを確認すれば、この第1車体基準点よりも車両後方にある車体後部は、障害物に接触しないことになる。
この結果、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図2】実施例1の車体構造を適用した自動車の操舵システムを示すシステム構造図である。
【図3】実施例1の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【図4】実施例1の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【図5】実施例2の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図6】実施例2の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【図7】実施例2の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【図8】実施例3の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図9】実施例4の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図10】実施例5の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動車の車体構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例5に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動車の車体構造の構成を、「車体外側構造の構成」、「操舵システムの構成」、に分けて説明する。
【0011】
[車体外側構造の構成]
図1は、実施例1の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
以下、図1に基づき車体外側構造の構成を説明する。
【0012】
実施例1における自動車1は、図1に示すように、車体2と、左前輪3Lと、右前輪3Rと、左後輪4Lと、右後輪4Rと、を備えている。
【0013】
前記車体2は、自動車1の外郭を形成し、走行駆動源である走行用モータ(図示せず)、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを個別に操舵する操舵ユニット(舵角制御手段)5(図2参照)、ドライバーAが着座する運転席シート7a、同乗者Bが着座する助手席シート7b、を装備している。
【0014】
また、この車体2の外側形状は、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まる形状を呈している。すなわち、車体2は、平面視における車体右側面2aを左側最大車体基準円21に沿ったほぼ円弧状とすると共に、平面視における車体左側面2bを右側最大車体基準円11に沿ったほぼ円弧状とした。
ここで「右側最大車体基準円」とは、最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻する際の右旋廻中心位置Pを中心点とし、左車体基準点10を通る円である。なお、「左車体基準点」とは、右旋廻時の第1車体基準点であり、運転席シート(運転席)7aの前方位置又は側方位置であって、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで右旋廻中心位置Pと反対側の車体2上の任意の位置に設定する点である。ここでは、この左車体基準点10を、車体左側面2bと車体前面2cとの角部に設定する。
また、「左側最大車体基準円」とは、最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻する際の左旋廻中心位置Qを中心点とし、右車体基準点20を通る円である。なお、「右車体基準点」とは、左旋廻時の第1車体基準点であり、運転席シート(運転席)7aの前方位置又は側方位置であって、車幅方向の車両中心軸線Oをはさんで左旋廻中心位置Qと反対側の車体2上の任意の位置に設定する点である。ここでは、この右車体基準点20を、車体右側面2aと車体前面2cとの角部に設定する。
【0015】
前記左前輪3L及び前記右前輪3Rは、車体2の前部に左右対称に設けられ、操舵ユニット5によって操舵される。
【0016】
前記左後輪4L及び前記右後輪4Rは、車体2の後部に左右対称に設けられ、操舵ユニット5によって操舵される。ここで、左右後輪4L,4Rの間隔(後輪トレッド)は、左右前輪3L,3Rの間隔(前輪トレッド)よりも短くなっている。
【0017】
[操舵システムの構成]
図2は、実施例1の車体構造を適用した自動車の操舵システムを示すシステム構造図である。
【0018】
実施例1の車体2には、舵角制御手段として、操舵ユニット5が装備されている。
前記操舵ユニット5は、ステアリングハンドル51と、操舵角センサ52と、前輪操舵モータ53と、前輪ラックアンドピニオン機構54と、前輪左右ロッド55a,55bと、後輪操舵モータ56と、後輪ラックアンドピニオン機構57と、後輪左右ロッド58a,58bと、操舵コントローラ59と、を有している。
【0019】
前記ステアリングハンドル51は、車室内に配置され、ドライバーAにより回動操作される。前記操舵角センサ52は、ステアリングハンドル51の回動角度を検出し、検出した角度信号を操舵コントローラ59に入力する。
【0020】
前記前輪操舵モータ53は、操舵コントローラ59からの制御信号に基づいて駆動し、前輪ラックアンドピニオン機構54を駆動する。前記前輪ラックアンドピニオン機構54は、前輪操舵モータ53により駆動して、左右前輪3L,3Rを旋廻方向に転舵するよう操舵する。前記前輪左ロッド55aは、前輪ラックアンドピニオン機構54に一端が接続し、他端が左前輪3Lに連結されている。前記前輪右ロッド55bは、前輪ラックアンドピニオン機構54に一端が接続し、他端が右前輪3Rに連結されている。
【0021】
前記後輪操舵モータ56は、操舵コントローラ59からの制御信号に基づいて駆動し、後輪ラックアンドピニオン機構57を駆動する。前記後輪ラックアンドピニオン機構57は、後輪操舵モータ56により駆動して、左右後輪4L,4Rを旋廻方向とは逆方向に転舵するよう操舵する。前記後輪左ロッド58aは、後輪ラックアンドピニオン機構57に一端が接続し、他端が左後輪4Lに連結されている。前記後輪右ロッド58bは、後輪ラックアンドピニオン機構57に一端が接続し、他端が右後輪4Rに連結されている。
【0022】
前記操舵コントローラ59は、操舵角センサ52により検出されたステアリングハンドル51の操舵角(回動角度)に応じて、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rの転舵方向及び転舵角度を演算し、前輪操舵モータ53及び後輪操舵モータ56に制御信号を出力する。
このとき、操舵コントローラ59は、左右前輪3L,3Rの転舵方向を旋廻方向に合わせ、左右後輪4L,4Rの転舵方向を逆位相、つまり旋廻方向と逆方向に合わせる。また、左右前輪3L,3Rの舵角よりも左右後輪4L,4Rの舵角の方が相対的に大舵角となるように、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rの舵角制御を行う。すなわち、左右後輪4L,4Rは、前輪舵角よりも大きい舵角で、旋廻方向と逆方向に転舵する。
【0023】
次に、作用を説明する。
実施例1の自動車の車体構造における作用を、「右旋廻時走行作用」、「左旋廻時走行作用」に分けて説明する。
【0024】
[右旋廻時走行作用]
図3は、実施例1の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【0025】
自動車1を最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を右方向に最大に回動する。このとき、ステアリングハンドル51の操舵角を操舵角センサ52により検出し、操舵コントローラ59は、この検出角度に応じて所定の制御信号を出力する。これにより、左右前輪3L,3Rは、旋廻方向に転舵するように操舵される。また、左右後輪4L,4Rは、左右前輪3L,3Rの転舵方向と逆位相に転舵すると共に、左右後輪4L,4Rの舵角(転舵角)θ1の方が左右前輪3L,3Rの舵角(転舵角)θ2よりも相対的に大舵角となるように操舵される。
【0026】
すなわち、図3に示すように、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である右方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向の左方向に最大舵角となる。そして、自動車1は最小回転半径に沿って右方向に旋廻走行を行う。
ここで、車体2の旋廻外側に臨む車体左側面2bは、右側最大車体基準円11の内側に収まる形状となっている。そのため、車体2の旋廻外側に臨む車体左側面2bは、旋廻中、この右側最大車体基準円11の外側、つまり旋廻外側にはみ出ることはない。
【0027】
つまり、最大舵角にて車体2を右方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である右旋廻中心位置Pから最も遠い車体位置(車体2において旋廻中心から最も外側を通る部分)が左車体基準点10となる。
これにより、ドライバーAはこの左車体基準点10が旋廻外側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この左車体基準点10よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0028】
一方、自動車1が最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻外側に位置する左後輪4Lの走行軌跡αよりも、旋廻外側に位置する左前輪3Lの走行軌跡βが旋廻方向内側(右旋廻中心位置Pに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0029】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて右方向に旋廻し、自動車1が最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0030】
特に、実施例1の自動車1では、旋廻中、右旋廻中心位置Pから最も遠い位置である左車体基準点10を、ドライバーAからの視認性が優れる車体左側面2bと車体前面2cとの角部に設定している。そのため、ドライバーAからの視認性の優れる位置を基準とするため、車幅間隔がつかみやすくなり、より運転しやすくすることができる。
【0031】
また、実施例1の車体2では、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とするため、右旋廻中心位置Pは、車両前後方向中央位置よりも車両前方に位置することとなる。このため、車室空間を犠牲にすることなく右方向の旋廻時運転性を向上することができる。
【0032】
さらに、実施例1の車体2では、平面視における車体左側面2bが右側最大車体基準円11に沿ったほぼ円弧状となっている。そのため、車体左側面2bの前後方向中央部分が車両中心軸線O側にへこむことがなくなり、車室空間を広く確保することができると共に、いわゆる卵型の美しい造形ラインを得ることができる。
【0033】
[左旋廻時走行作用]
図4は、実施例1の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【0034】
自動車1を最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を左方向に最大に回動する。このとき、ステアリングハンドル51の操舵角を操舵角センサ52により検出し、操舵コントローラ59は、この検出角度に応じて所定の制御信号を出力する。これにより、左右前輪3L,3Rは、旋廻方向に転舵するように操舵される。また、左右後輪4L,4Rは、左右前輪3L,3Rの転舵方向と逆位相に転舵すると共に、左右後輪4L,4Rの舵角(転舵角)θ1の方が左右前輪3L,3Rの舵角(転舵角)θ2よりも相対的に大舵角となるように操舵される。
【0035】
すなわち、図4に示すように、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である左方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向の右方向に最大舵角となる。そして、自動車1は最小回転半径に沿って左方向に旋廻走行を行う。
ここで、車体2の旋廻外側に臨む車体右側面2aは、左側最大車体基準円21の内側に収まる形状となっている。そのため、車体2の旋廻外側に臨む車体右側面2aは、旋廻中、この左側最大車体基準円21の外側、つまり旋廻外側にはみ出ることはない。
【0036】
つまり、最大舵角にて車体2を左方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である左旋廻中心位置Qから最も遠い車体位置(車体2において旋廻中心から最も外側を通る部分)が右車体基準点20となる。
これにより、ドライバーAはこの右車体基準点20が旋廻外側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この右車体基準点20よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0037】
一方、自動車1が最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻外側に位置する右後輪4Rの走行軌跡γよりも、旋廻外側に位置する右前輪3Rの走行軌跡δが旋廻方向内側(左旋廻中心位置Qに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0038】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて左方向に旋廻し、自動車1が最小回転半径に沿って左方向に旋廻する際も、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0039】
そして、実施例1の自動車1では、旋廻中、左旋廻中心位置Qから最も遠い位置である右車体基準点20を、ドライバーAからの視認性が優れる車体右側面2aと車体前面2cとの角部に設定している。そのため、ドライバーAからの視認性の優れる位置を基準とするため、車幅間隔がつかみやすくなり、より運転しやすくすることができる。
【0040】
また、実施例1の車体2では、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とするため、左旋廻中心位置Qは、車両前後方向中央位置よりも車両前方に位置することとなる。このため、車室空間を犠牲にすることなく左方向の旋廻時運転性を向上することができる。
【0041】
さらに、実施例1の車体2では、平面視における車体右側面2aが左側最大車体基準円21に沿ったほぼ円弧状となっている。そのため、車体右側面2aの前後方向中央部分が車両中心軸線O側にへこむことがなくなり、車室空間を広く確保することができると共に、いわゆる卵型の美しい造形ラインを得ることができる。
【0042】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0043】
(1) 左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する操舵ユニット5(舵角制御手段)と、
右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とし、且つ、運転席シート7a側方又は運転席シート7a前方であって、車両中心軸線Oをはさんで前記右旋廻中心位置Pと反対側の車体2上の任意の位置に設定する左車体基準点10を通る右側最大車体基準円11の内側に収まると共に、
左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とし、且つ、運転席シート7a側方又は運転席シート7a前方であって、車両中心軸線Oをはさんで前記左旋廻中心位置Qと反対側の車体2上の任意の位置に設定する右車体基準点20を通る左側最大車体基準円21の内側に収まる外側形状を有する車体2と、
を備える構成とした。
このため、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0044】
(2) 前記車体2は、平面視における車体側面(車体右側面2a,車体左側面2b)がほぼ円弧状に沿った形状とする構成とした。
このため、車室空間を広く確保することができると共に、美しい造形ラインを得ることができる。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、車体の外径形状を、最大車体基準円の内側に収まると共に、最小車体基準円の外側に収まるようにした例である。
【0046】
まず、構成を説明する。
[車体外側構造の構成]
図5は、実施例2の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0047】
実施例2における自動車1Aの車体2Aは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。すなわち、車体2Aは、車体右側面2aと車体左側面2bとの間隔寸法を実施例1の場合よりも小さくすることで、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の内側に張り出さない形状とした。
ここで「右側最大車体基準円」及び「左側最大車体基準円」については、実施例1と同様であるので説明を省略する。また、左右車体基準点10,20は、それぞれ車幅最大位置に設定する。
【0048】
そして、「右側最小車体基準円」とは、最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻する際の右旋廻中心位置Pを中心点とし、右車体基準点20を通る円である。なお、ここで「右車体基準点」は、右旋廻時の第2車体基準点となり、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで、右旋廻時の第1車体基準点となる左車体基準点10と反対側の車幅最大位置に設定する点である。
なお、ここでは、この右車体基準点20を、車体右側面2a上であって、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との交差位置に設定する。このため、右車体基準点20は、左旋廻時の第1車体基準点になると同時に、右旋廻時の第2車体基準点となる。また、この実施例2では、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12が一部重複するように、右車体基準点20を車体前面2c近傍に設定している。
【0049】
そして、「左側最小車体基準円」とは、最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻する際の左旋廻中心位置Qを中心点とし、左車体基準点10を通る円である。なお、ここで「左車体基準点」は、左旋廻時の第2車体基準点となり、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで、左旋廻時の第1車体基準点となる右車体基準点20と反対側の車幅最大位置に設定する点である。
なお、ここでは、この左車体基準点10を、車体左側面2b上であって、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との交差位置に設定する。このため、左車体基準点10は、右旋廻時の第1車体基準点になると同時に、左旋廻時の第2車体基準点となる。また、この実施例2では、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22が一部重複するように、左車体基準点10を車体前面2c近傍に設定している。
【0050】
次に、作用を説明する。
実施例2の自動車の車体構造における作用を、「右旋廻時走行作用」、「左旋廻時走行作用」に分けて説明する。
【0051】
[右旋廻時走行作用]
図6は、実施例2の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【0052】
自動車1Aを最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を右方向に最大に回動する。これにより、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である右方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向である左方向に最大舵角となる。さらにこのとき、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1の方が相対的に大舵角となる。
【0053】
これにより、図6に示すように、自動車1Aは最小回転半径に沿って右方向に旋廻走行を行う。ここで、車体2Aの旋廻内側に臨む車体右側面2aは、右側最小車体基準円12の外側に収まる形状となっている。そのため、車体2Aの旋廻内側に臨む車体右側面2aは、旋廻中、この右側最小車体基準円12の内側、つまり旋廻内側にはみ出ることはない。
【0054】
すなわち、最大舵角にて車体2Aを右方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である右旋廻中心位置Pから最も近い車体位置(車体2Aにおいて旋廻中心から最も内側を通る部分)が右車体基準点20となる。
これにより、ドライバーAはこの右車体基準点20が旋廻内側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この右車体基準点20よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0055】
一方、自動車1Aが最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻内側に位置する右後輪4Rの走行軌跡γよりも、旋廻内側に位置する右前輪3Rの走行軌跡δが旋廻方向内側(右旋廻中心位置Pに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0056】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて右方向に旋廻し、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【0057】
なお、実施例2の車体2Aは、右方向に旋廻時、旋廻外側に臨む車体左側面2bが、右側最大車体基準円11の内側に収まる形状となっている。このため、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0058】
[左旋廻時走行作用]
図7は、実施例2の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【0059】
自動車1Aを最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を左方向に最大に回動する。これにより、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である左方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向である右方向に最大舵角になる、さらにこのとき、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1の方が相対的に大舵角となる。
【0060】
これにより、図7に示すように、自動車1Aは最小回転半径に沿って左方向に旋廻走行を行う。ここで、車体2Aの旋廻内側に臨む車体左側面2bは、左側最小車体基準円22の外側に収まる形状となっている。そのため、車体2Aの旋廻内側に臨む車体左側面2bは、旋廻中、この左側最小車体基準円22の内側、つまり旋廻内側にはみ出ることはない。
【0061】
すなわち、最大舵角にて車体2Aを左方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である左旋廻中心位置Qから最も近い車体位置(車体2Aにおいて旋廻中心から最も内側を通る部分)が左車体基準点10となる。
これにより、ドライバーAはこの左車体基準点10が旋廻内側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この左車体基準点10よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0062】
一方、自動車1Aが最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻内側に位置する左後輪4Lの走行軌跡αよりも、旋廻内側に位置する左前輪3Lの走行軌跡βが旋廻方向内側(左旋廻中心位置Qに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0063】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて左方向に旋廻し、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【0064】
なお、実施例2の車体2Aは、左方向に旋廻時、旋廻外側に臨む車体右側面2aが、左側最大車体基準円21の内側に収まる形状となっている。このため、自動車1Aが最小回転半径に沿って左方向に旋廻する際、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0065】
次に、効果を説明する。
実施例2の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0066】
(3) 前記左車体基準点10及び前記右車体基準点20は、車幅最大位置に設定し、
前記車体2Aは、右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とし、且つ、車両中心軸線Oをはさんで左車体基準点10(右旋廻時の第1車体基準点)と反対側の車幅最大位置に設定する右車体基準点20(右旋廻時の第2車体基準点)を通る右側最小車体基準円12の外側に収まると共に、
左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とし、且つ、車両中心軸線Oをはさんで右車体基準点20(左旋廻時の第1車体基準点)と反対側の車幅最大位置に設定する左車体基準点10(左旋廻時の第2車体基準点)を通る左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を有する構成とした。
このため、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【実施例3】
【0067】
実施例3は、左右車体基準点を、車体の左右に位置するフェンダーミラーの設置位置に設定した例である。
図8は、実施例3の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0068】
実施例3における自動車1Bの車体2Bは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0069】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、車体2Bの左右側部に設けたフェンダーミラーFの設定位置に設定する。
【0070】
通常、フェンダーミラーFはドライバーAの視認性の高い位置に設定されるため、このフェンダーミラーFの設定位置に左右車体基準点10,20を設定することで、さらに旋廻時の運転性を向上することができる。
【0071】
さらに、フェンダーミラーFは、車体右側面2aや車体左側面2bから車体側方に突出している。そのため、右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とする円を設定する際、左車体基準点10を通る右側最大車体基準円11は比較的大きくなり、右側最小車体基準円12は比較的小さくなる。一方、左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とする円を設定する際には、右車体基準点20を通る左側最大車体基準円21は比較的大きくなり、左側最小車体基準円22は比較的小さくなる。これにより、車体幅寸法が大きくなって車室空間を広く確保したり、車体形状の設計自由度を向上することができる。
【0072】
すなわち、実施例3の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0073】
(4) 前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点となる左右車体基準点10,20は、車体2Bの左右に位置するフェンダーミラーFの設置位置に設定する構成とした。
このため、旋廻時の運転性を向上すると共に、車体幅寸法を大きく確保して車室空間を広くしたり、車体形状の設計自由度を向上することができる。
【実施例4】
【0074】
実施例4は、右側最大車体基準円と左側最小車体基準円が重複しない位置に右車体基準点を設定し、左側最大車体基準円と右側最小車体基準円が重複しない位置に左車体基準点を設定した例である。
図9は、実施例4の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0075】
実施例4における自動車1Cの車体2Cは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0076】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定する。
すなわち、左車体基準点10は、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との交差位置に設定されるが、このとき、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22が重複しないように左車体基準点10を前輪軸9Aよりも車両後側に設定する。
また、右車体基準点20は、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との交差位置に設定されるが、このとき、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12が重複しないように右車体基準点20を前輪軸9Aよりも車両後側に設定する。
【0077】
ここで、車体2Cを、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状とする場合、左右車体基準点10,20を車体2Cの前側に設定するほど、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径が大きくなる。このため、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が拡大する。これにより、車体2Cの前後方向の中心部分において、確保できる車幅寸法が減少する。
【0078】
さらに、左右前輪3L,3Rが存在するための空間(ホイールスペース)を確保しようとすると、前輪軸9Aよりも前側に左右車体基準点10,20を設定したとき、左右前輪3L,3Rの間隔よりも左車体基準点10と右車体基準点20の間隔を広く取る必要がある。その上、ドライバーAから左右車体基準点10,20までの距離が大きくなり、視認性の低下が懸念される。
【0079】
そこで、実施例4の自動車1Cのように、左右車体基準点10,20を、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定することで、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径を小さくすることができる。このため、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が縮小でき、これにより、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。
【0080】
また、左右車体基準点10,20がドライバーAに近い位置に設定されるため、これら左右車体基準点10,20の視認性を高めることができ、旋廻時の運転性をさらに向上することができる。
【0081】
すなわち、実施例4の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(5) 前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点となる左右車体基準点10,20は、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定する構成とした。
このため、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。また、左右車体基準点10,20の視認性を高めることができ、旋廻時の運転性をさらに向上することができる。
【実施例5】
【0083】
実施例5は、左右車体基準点を、車体の左右に位置するドアミラーの設置位置に設定した例である。
図10は、実施例5の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0084】
実施例5における自動車1Dの車体2Dは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0085】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、車体2Dの左右側部に設けたドアミラーDの設定位置に設定する。
【0086】
通常、ドアミラーDはドライバーAの側方で、視認性の高い位置に設定される。また、ドアミラーDは、前輪軸9Aと後輪軸9Bとの間に設けられる。このため、このドアミラーDの設定位置に左右車体基準点10,20を設定することで、旋廻時の運転性をさらに向上することができると共に、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。
【0087】
つまり、左右車体基準点10,20をドアミラーDの設定位置に設定することで、フェンダーミラーにこれらを設定する場合よりも、ドライバーAからの距離がより短くなって、目視しやすくなる。このため、更なる運転性の向上を図ることができる。また、ドライバーAに近い位置に左右車体基準点10,20を設定することで、フェンダーミラーにこれらを設定する場合よりも、設定位置が車両後方側にずれる。このため、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径を小さくすることができ、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が縮小する。この結果、広い車室空間を確保することができて、居住性の向上を図ることができる。
【0088】
以上、本発明の自動車の車体構造を実施例1〜実施例5に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0089】
上記各実施例では、操舵システムとして、電子制御するいわゆるステイバイワイヤ方式となっているが、これに限らない。ステアリングハンドルと前後輪を、リンク等を介して接続し、機械的に制御するもの(リンケージタイプ)であってもよい。また、後輪の操舵は油圧を用いるものに限らない。
【0090】
上記各実施例では、自動車として、走行用モータを走行駆動源とする電気自動車としたが、これに限らない。エンジンを駆動源とするエンジン車や、エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車両等であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 自動車
2 車体
2a 車体右側面
2b 車体左側面
3L,3R 左右前輪
4L,4R 左右後輪
5 操舵ユニット(舵角制御手段)
51 ステアリングハンドル
52 操舵角センサ
53 前輪操舵モータ
56 後輪操舵モータ
59 操舵コントローラ
7a 運転席シート(運転席)
10 左車体基準点(右旋廻時第1車体基準点、左旋廻時第2車体基準点)
11 右側最大車体基準円
12 右側最小車体基準円
20 右車体基準点(右旋廻時第2車体基準点、左旋廻時第1車体基準点)
21 左側最大車体基準円
22 左側最小車体基準円
P 右旋廻中心位置
Q 左旋廻中心位置
O 車両中心軸線(車幅方向中心位置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪操舵ユニットと後輪操舵ユニットとを備え、旋廻時、前輪と後輪を逆位相に操舵する自動車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-191474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の自動車にあっては、後輪操舵角を前輪操舵角に対して逆位相に制御したときに生じる外輪差によって、旋廻外側に位置する車体後部が障害物と干渉するおそれがある。そのため、ドライバーは外輪差を考慮しながら運転する必要があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動車の車体構造は、舵角制御手段と、車体と、を備えている。
前記舵角制御手段は、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する。
前記車体は、最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、運転席側方又は運転席前方であって、車幅方向中心位置をはさんで前記中心点と反対側の車体上の任意の位置に設定する第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる外側形状を有する。
【発明の効果】
【0007】
よって、舵角制御手段により、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵されると共に、車体の外径形状が、最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる。これにより、最大舵角にて旋廻する間、車体は最大車体基準円の外側に出ることなく旋廻する。
すなわち、前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵されることで、旋廻外側に位置する後輪の走行軌跡よりも、旋廻外側に位置する前輪の走行軌跡が旋廻方向内側になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
一方、車体を最大車体基準円の内側に収めることで、最大舵角にて旋廻する間、最小回転半径の中心位置から最も遠い車体位置(車体において旋廻中心から最も外側を通る部分)が第1車体基準点となる。
そのため、ドライバーはこの第1車体基準点が障害物等に接触しないことを確認すれば、この第1車体基準点よりも車両後方にある車体後部は、障害物に接触しないことになる。
この結果、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図2】実施例1の車体構造を適用した自動車の操舵システムを示すシステム構造図である。
【図3】実施例1の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【図4】実施例1の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【図5】実施例2の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図6】実施例2の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【図7】実施例2の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【図8】実施例3の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図9】実施例4の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【図10】実施例5の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動車の車体構造を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1〜実施例5に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1の自動車の車体構造の構成を、「車体外側構造の構成」、「操舵システムの構成」、に分けて説明する。
【0011】
[車体外側構造の構成]
図1は、実施例1の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
以下、図1に基づき車体外側構造の構成を説明する。
【0012】
実施例1における自動車1は、図1に示すように、車体2と、左前輪3Lと、右前輪3Rと、左後輪4Lと、右後輪4Rと、を備えている。
【0013】
前記車体2は、自動車1の外郭を形成し、走行駆動源である走行用モータ(図示せず)、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを個別に操舵する操舵ユニット(舵角制御手段)5(図2参照)、ドライバーAが着座する運転席シート7a、同乗者Bが着座する助手席シート7b、を装備している。
【0014】
また、この車体2の外側形状は、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まる形状を呈している。すなわち、車体2は、平面視における車体右側面2aを左側最大車体基準円21に沿ったほぼ円弧状とすると共に、平面視における車体左側面2bを右側最大車体基準円11に沿ったほぼ円弧状とした。
ここで「右側最大車体基準円」とは、最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻する際の右旋廻中心位置Pを中心点とし、左車体基準点10を通る円である。なお、「左車体基準点」とは、右旋廻時の第1車体基準点であり、運転席シート(運転席)7aの前方位置又は側方位置であって、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで右旋廻中心位置Pと反対側の車体2上の任意の位置に設定する点である。ここでは、この左車体基準点10を、車体左側面2bと車体前面2cとの角部に設定する。
また、「左側最大車体基準円」とは、最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻する際の左旋廻中心位置Qを中心点とし、右車体基準点20を通る円である。なお、「右車体基準点」とは、左旋廻時の第1車体基準点であり、運転席シート(運転席)7aの前方位置又は側方位置であって、車幅方向の車両中心軸線Oをはさんで左旋廻中心位置Qと反対側の車体2上の任意の位置に設定する点である。ここでは、この右車体基準点20を、車体右側面2aと車体前面2cとの角部に設定する。
【0015】
前記左前輪3L及び前記右前輪3Rは、車体2の前部に左右対称に設けられ、操舵ユニット5によって操舵される。
【0016】
前記左後輪4L及び前記右後輪4Rは、車体2の後部に左右対称に設けられ、操舵ユニット5によって操舵される。ここで、左右後輪4L,4Rの間隔(後輪トレッド)は、左右前輪3L,3Rの間隔(前輪トレッド)よりも短くなっている。
【0017】
[操舵システムの構成]
図2は、実施例1の車体構造を適用した自動車の操舵システムを示すシステム構造図である。
【0018】
実施例1の車体2には、舵角制御手段として、操舵ユニット5が装備されている。
前記操舵ユニット5は、ステアリングハンドル51と、操舵角センサ52と、前輪操舵モータ53と、前輪ラックアンドピニオン機構54と、前輪左右ロッド55a,55bと、後輪操舵モータ56と、後輪ラックアンドピニオン機構57と、後輪左右ロッド58a,58bと、操舵コントローラ59と、を有している。
【0019】
前記ステアリングハンドル51は、車室内に配置され、ドライバーAにより回動操作される。前記操舵角センサ52は、ステアリングハンドル51の回動角度を検出し、検出した角度信号を操舵コントローラ59に入力する。
【0020】
前記前輪操舵モータ53は、操舵コントローラ59からの制御信号に基づいて駆動し、前輪ラックアンドピニオン機構54を駆動する。前記前輪ラックアンドピニオン機構54は、前輪操舵モータ53により駆動して、左右前輪3L,3Rを旋廻方向に転舵するよう操舵する。前記前輪左ロッド55aは、前輪ラックアンドピニオン機構54に一端が接続し、他端が左前輪3Lに連結されている。前記前輪右ロッド55bは、前輪ラックアンドピニオン機構54に一端が接続し、他端が右前輪3Rに連結されている。
【0021】
前記後輪操舵モータ56は、操舵コントローラ59からの制御信号に基づいて駆動し、後輪ラックアンドピニオン機構57を駆動する。前記後輪ラックアンドピニオン機構57は、後輪操舵モータ56により駆動して、左右後輪4L,4Rを旋廻方向とは逆方向に転舵するよう操舵する。前記後輪左ロッド58aは、後輪ラックアンドピニオン機構57に一端が接続し、他端が左後輪4Lに連結されている。前記後輪右ロッド58bは、後輪ラックアンドピニオン機構57に一端が接続し、他端が右後輪4Rに連結されている。
【0022】
前記操舵コントローラ59は、操舵角センサ52により検出されたステアリングハンドル51の操舵角(回動角度)に応じて、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rの転舵方向及び転舵角度を演算し、前輪操舵モータ53及び後輪操舵モータ56に制御信号を出力する。
このとき、操舵コントローラ59は、左右前輪3L,3Rの転舵方向を旋廻方向に合わせ、左右後輪4L,4Rの転舵方向を逆位相、つまり旋廻方向と逆方向に合わせる。また、左右前輪3L,3Rの舵角よりも左右後輪4L,4Rの舵角の方が相対的に大舵角となるように、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rの舵角制御を行う。すなわち、左右後輪4L,4Rは、前輪舵角よりも大きい舵角で、旋廻方向と逆方向に転舵する。
【0023】
次に、作用を説明する。
実施例1の自動車の車体構造における作用を、「右旋廻時走行作用」、「左旋廻時走行作用」に分けて説明する。
【0024】
[右旋廻時走行作用]
図3は、実施例1の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【0025】
自動車1を最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を右方向に最大に回動する。このとき、ステアリングハンドル51の操舵角を操舵角センサ52により検出し、操舵コントローラ59は、この検出角度に応じて所定の制御信号を出力する。これにより、左右前輪3L,3Rは、旋廻方向に転舵するように操舵される。また、左右後輪4L,4Rは、左右前輪3L,3Rの転舵方向と逆位相に転舵すると共に、左右後輪4L,4Rの舵角(転舵角)θ1の方が左右前輪3L,3Rの舵角(転舵角)θ2よりも相対的に大舵角となるように操舵される。
【0026】
すなわち、図3に示すように、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である右方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向の左方向に最大舵角となる。そして、自動車1は最小回転半径に沿って右方向に旋廻走行を行う。
ここで、車体2の旋廻外側に臨む車体左側面2bは、右側最大車体基準円11の内側に収まる形状となっている。そのため、車体2の旋廻外側に臨む車体左側面2bは、旋廻中、この右側最大車体基準円11の外側、つまり旋廻外側にはみ出ることはない。
【0027】
つまり、最大舵角にて車体2を右方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である右旋廻中心位置Pから最も遠い車体位置(車体2において旋廻中心から最も外側を通る部分)が左車体基準点10となる。
これにより、ドライバーAはこの左車体基準点10が旋廻外側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この左車体基準点10よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0028】
一方、自動車1が最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻外側に位置する左後輪4Lの走行軌跡αよりも、旋廻外側に位置する左前輪3Lの走行軌跡βが旋廻方向内側(右旋廻中心位置Pに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0029】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて右方向に旋廻し、自動車1が最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0030】
特に、実施例1の自動車1では、旋廻中、右旋廻中心位置Pから最も遠い位置である左車体基準点10を、ドライバーAからの視認性が優れる車体左側面2bと車体前面2cとの角部に設定している。そのため、ドライバーAからの視認性の優れる位置を基準とするため、車幅間隔がつかみやすくなり、より運転しやすくすることができる。
【0031】
また、実施例1の車体2では、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とするため、右旋廻中心位置Pは、車両前後方向中央位置よりも車両前方に位置することとなる。このため、車室空間を犠牲にすることなく右方向の旋廻時運転性を向上することができる。
【0032】
さらに、実施例1の車体2では、平面視における車体左側面2bが右側最大車体基準円11に沿ったほぼ円弧状となっている。そのため、車体左側面2bの前後方向中央部分が車両中心軸線O側にへこむことがなくなり、車室空間を広く確保することができると共に、いわゆる卵型の美しい造形ラインを得ることができる。
【0033】
[左旋廻時走行作用]
図4は、実施例1の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【0034】
自動車1を最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を左方向に最大に回動する。このとき、ステアリングハンドル51の操舵角を操舵角センサ52により検出し、操舵コントローラ59は、この検出角度に応じて所定の制御信号を出力する。これにより、左右前輪3L,3Rは、旋廻方向に転舵するように操舵される。また、左右後輪4L,4Rは、左右前輪3L,3Rの転舵方向と逆位相に転舵すると共に、左右後輪4L,4Rの舵角(転舵角)θ1の方が左右前輪3L,3Rの舵角(転舵角)θ2よりも相対的に大舵角となるように操舵される。
【0035】
すなわち、図4に示すように、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である左方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向の右方向に最大舵角となる。そして、自動車1は最小回転半径に沿って左方向に旋廻走行を行う。
ここで、車体2の旋廻外側に臨む車体右側面2aは、左側最大車体基準円21の内側に収まる形状となっている。そのため、車体2の旋廻外側に臨む車体右側面2aは、旋廻中、この左側最大車体基準円21の外側、つまり旋廻外側にはみ出ることはない。
【0036】
つまり、最大舵角にて車体2を左方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である左旋廻中心位置Qから最も遠い車体位置(車体2において旋廻中心から最も外側を通る部分)が右車体基準点20となる。
これにより、ドライバーAはこの右車体基準点20が旋廻外側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この右車体基準点20よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0037】
一方、自動車1が最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻外側に位置する右後輪4Rの走行軌跡γよりも、旋廻外側に位置する右前輪3Rの走行軌跡δが旋廻方向内側(左旋廻中心位置Qに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0038】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて左方向に旋廻し、自動車1が最小回転半径に沿って左方向に旋廻する際も、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0039】
そして、実施例1の自動車1では、旋廻中、左旋廻中心位置Qから最も遠い位置である右車体基準点20を、ドライバーAからの視認性が優れる車体右側面2aと車体前面2cとの角部に設定している。そのため、ドライバーAからの視認性の優れる位置を基準とするため、車幅間隔がつかみやすくなり、より運転しやすくすることができる。
【0040】
また、実施例1の車体2では、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角とするため、左旋廻中心位置Qは、車両前後方向中央位置よりも車両前方に位置することとなる。このため、車室空間を犠牲にすることなく左方向の旋廻時運転性を向上することができる。
【0041】
さらに、実施例1の車体2では、平面視における車体右側面2aが左側最大車体基準円21に沿ったほぼ円弧状となっている。そのため、車体右側面2aの前後方向中央部分が車両中心軸線O側にへこむことがなくなり、車室空間を広く確保することができると共に、いわゆる卵型の美しい造形ラインを得ることができる。
【0042】
次に、効果を説明する。
実施例1の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0043】
(1) 左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する操舵ユニット5(舵角制御手段)と、
右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とし、且つ、運転席シート7a側方又は運転席シート7a前方であって、車両中心軸線Oをはさんで前記右旋廻中心位置Pと反対側の車体2上の任意の位置に設定する左車体基準点10を通る右側最大車体基準円11の内側に収まると共に、
左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とし、且つ、運転席シート7a側方又は運転席シート7a前方であって、車両中心軸線Oをはさんで前記左旋廻中心位置Qと反対側の車体2上の任意の位置に設定する右車体基準点20を通る左側最大車体基準円21の内側に収まる外側形状を有する車体2と、
を備える構成とした。
このため、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0044】
(2) 前記車体2は、平面視における車体側面(車体右側面2a,車体左側面2b)がほぼ円弧状に沿った形状とする構成とした。
このため、車室空間を広く確保することができると共に、美しい造形ラインを得ることができる。
【実施例2】
【0045】
実施例2は、車体の外径形状を、最大車体基準円の内側に収まると共に、最小車体基準円の外側に収まるようにした例である。
【0046】
まず、構成を説明する。
[車体外側構造の構成]
図5は、実施例2の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0047】
実施例2における自動車1Aの車体2Aは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。すなわち、車体2Aは、車体右側面2aと車体左側面2bとの間隔寸法を実施例1の場合よりも小さくすることで、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の内側に張り出さない形状とした。
ここで「右側最大車体基準円」及び「左側最大車体基準円」については、実施例1と同様であるので説明を省略する。また、左右車体基準点10,20は、それぞれ車幅最大位置に設定する。
【0048】
そして、「右側最小車体基準円」とは、最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻する際の右旋廻中心位置Pを中心点とし、右車体基準点20を通る円である。なお、ここで「右車体基準点」は、右旋廻時の第2車体基準点となり、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで、右旋廻時の第1車体基準点となる左車体基準点10と反対側の車幅最大位置に設定する点である。
なお、ここでは、この右車体基準点20を、車体右側面2a上であって、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との交差位置に設定する。このため、右車体基準点20は、左旋廻時の第1車体基準点になると同時に、右旋廻時の第2車体基準点となる。また、この実施例2では、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12が一部重複するように、右車体基準点20を車体前面2c近傍に設定している。
【0049】
そして、「左側最小車体基準円」とは、最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻する際の左旋廻中心位置Qを中心点とし、左車体基準点10を通る円である。なお、ここで「左車体基準点」は、左旋廻時の第2車体基準点となり、車幅方向の車両中心軸線(車幅方向中心位置)Oをはさんで、左旋廻時の第1車体基準点となる右車体基準点20と反対側の車幅最大位置に設定する点である。
なお、ここでは、この左車体基準点10を、車体左側面2b上であって、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との交差位置に設定する。このため、左車体基準点10は、右旋廻時の第1車体基準点になると同時に、左旋廻時の第2車体基準点となる。また、この実施例2では、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22が一部重複するように、左車体基準点10を車体前面2c近傍に設定している。
【0050】
次に、作用を説明する。
実施例2の自動車の車体構造における作用を、「右旋廻時走行作用」、「左旋廻時走行作用」に分けて説明する。
【0051】
[右旋廻時走行作用]
図6は、実施例2の自動車における右旋廻時を示す平面模式図である。
【0052】
自動車1Aを最小回転半径にて右方向(時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を右方向に最大に回動する。これにより、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である右方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向である左方向に最大舵角となる。さらにこのとき、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1の方が相対的に大舵角となる。
【0053】
これにより、図6に示すように、自動車1Aは最小回転半径に沿って右方向に旋廻走行を行う。ここで、車体2Aの旋廻内側に臨む車体右側面2aは、右側最小車体基準円12の外側に収まる形状となっている。そのため、車体2Aの旋廻内側に臨む車体右側面2aは、旋廻中、この右側最小車体基準円12の内側、つまり旋廻内側にはみ出ることはない。
【0054】
すなわち、最大舵角にて車体2Aを右方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である右旋廻中心位置Pから最も近い車体位置(車体2Aにおいて旋廻中心から最も内側を通る部分)が右車体基準点20となる。
これにより、ドライバーAはこの右車体基準点20が旋廻内側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この右車体基準点20よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0055】
一方、自動車1Aが最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻内側に位置する右後輪4Rの走行軌跡γよりも、旋廻内側に位置する右前輪3Rの走行軌跡δが旋廻方向内側(右旋廻中心位置Pに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0056】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて右方向に旋廻し、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【0057】
なお、実施例2の車体2Aは、右方向に旋廻時、旋廻外側に臨む車体左側面2bが、右側最大車体基準円11の内側に収まる形状となっている。このため、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0058】
[左旋廻時走行作用]
図7は、実施例2の自動車における左旋廻時を示す平面模式図である。
【0059】
自動車1Aを最小回転半径にて左方向(反時計回り方向)に旋廻させるには、ステアリングハンドル51を左方向に最大に回動する。これにより、左右前輪3L,3Rは旋廻方向である左方向に最大舵角になる。また、左右後輪4L,4Rは旋廻方向と逆方向である右方向に最大舵角になる、さらにこのとき、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1の方が相対的に大舵角となる。
【0060】
これにより、図7に示すように、自動車1Aは最小回転半径に沿って左方向に旋廻走行を行う。ここで、車体2Aの旋廻内側に臨む車体左側面2bは、左側最小車体基準円22の外側に収まる形状となっている。そのため、車体2Aの旋廻内側に臨む車体左側面2bは、旋廻中、この左側最小車体基準円22の内側、つまり旋廻内側にはみ出ることはない。
【0061】
すなわち、最大舵角にて車体2Aを左方向に旋廻する間、最小回転半径の中心位置である左旋廻中心位置Qから最も近い車体位置(車体2Aにおいて旋廻中心から最も内側を通る部分)が左車体基準点10となる。
これにより、ドライバーAはこの左車体基準点10が旋廻内側に位置する障害物等に接触しないことを確認すれば、この左車体基準点10よりも車両後方にある車体後部は、障害物等に接触しないことになる。
【0062】
一方、自動車1Aが最小回転半径に沿って旋廻走行を行う際、左右前輪3L,3Rの舵角θ2よりも左右後輪4L,4Rの舵角θ1が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵される。このため、旋廻内側に位置する左後輪4Lの走行軌跡αよりも、旋廻内側に位置する左前輪3Lの走行軌跡βが旋廻方向内側(左旋廻中心位置Qに近い位置)になる。そのため、最小回転半径を小さくでき、いわゆる旋廻時の小回り性能を向上することができる。
【0063】
この結果、左右前輪3L,3R及び左右後輪4L,4Rを最大舵角にて左方向に旋廻し、自動車1Aが最小回転半径に沿って右方向に旋廻する際、小回り性能を向上させると共に、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【0064】
なお、実施例2の車体2Aは、左方向に旋廻時、旋廻外側に臨む車体右側面2aが、左側最大車体基準円21の内側に収まる形状となっている。このため、自動車1Aが最小回転半径に沿って左方向に旋廻する際、車両後部が車両前部よりも旋廻外側に張り出すことを防止し、外輪差を気にすることなく運転することができる。
【0065】
次に、効果を説明する。
実施例2の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0066】
(3) 前記左車体基準点10及び前記右車体基準点20は、車幅最大位置に設定し、
前記車体2Aは、右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とし、且つ、車両中心軸線Oをはさんで左車体基準点10(右旋廻時の第1車体基準点)と反対側の車幅最大位置に設定する右車体基準点20(右旋廻時の第2車体基準点)を通る右側最小車体基準円12の外側に収まると共に、
左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とし、且つ、車両中心軸線Oをはさんで右車体基準点20(左旋廻時の第1車体基準点)と反対側の車幅最大位置に設定する左車体基準点10(左旋廻時の第2車体基準点)を通る左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を有する構成とした。
このため、車両旋廻時、車両後部が車両前部よりも旋廻内側に張り出すことを防止し、内輪差を気にすることなく運転することができる。
【実施例3】
【0067】
実施例3は、左右車体基準点を、車体の左右に位置するフェンダーミラーの設置位置に設定した例である。
図8は、実施例3の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0068】
実施例3における自動車1Bの車体2Bは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0069】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、車体2Bの左右側部に設けたフェンダーミラーFの設定位置に設定する。
【0070】
通常、フェンダーミラーFはドライバーAの視認性の高い位置に設定されるため、このフェンダーミラーFの設定位置に左右車体基準点10,20を設定することで、さらに旋廻時の運転性を向上することができる。
【0071】
さらに、フェンダーミラーFは、車体右側面2aや車体左側面2bから車体側方に突出している。そのため、右旋廻時の最小回転半径の中心位置(右旋廻中心位置P)を中心点とする円を設定する際、左車体基準点10を通る右側最大車体基準円11は比較的大きくなり、右側最小車体基準円12は比較的小さくなる。一方、左旋廻時の最小回転半径の中心位置(左旋廻中心位置Q)を中心点とする円を設定する際には、右車体基準点20を通る左側最大車体基準円21は比較的大きくなり、左側最小車体基準円22は比較的小さくなる。これにより、車体幅寸法が大きくなって車室空間を広く確保したり、車体形状の設計自由度を向上することができる。
【0072】
すなわち、実施例3の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0073】
(4) 前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点となる左右車体基準点10,20は、車体2Bの左右に位置するフェンダーミラーFの設置位置に設定する構成とした。
このため、旋廻時の運転性を向上すると共に、車体幅寸法を大きく確保して車室空間を広くしたり、車体形状の設計自由度を向上することができる。
【実施例4】
【0074】
実施例4は、右側最大車体基準円と左側最小車体基準円が重複しない位置に右車体基準点を設定し、左側最大車体基準円と右側最小車体基準円が重複しない位置に左車体基準点を設定した例である。
図9は、実施例4の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0075】
実施例4における自動車1Cの車体2Cは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0076】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定する。
すなわち、左車体基準点10は、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との交差位置に設定されるが、このとき、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22が重複しないように左車体基準点10を前輪軸9Aよりも車両後側に設定する。
また、右車体基準点20は、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との交差位置に設定されるが、このとき、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12が重複しないように右車体基準点20を前輪軸9Aよりも車両後側に設定する。
【0077】
ここで、車体2Cを、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状とする場合、左右車体基準点10,20を車体2Cの前側に設定するほど、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径が大きくなる。このため、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が拡大する。これにより、車体2Cの前後方向の中心部分において、確保できる車幅寸法が減少する。
【0078】
さらに、左右前輪3L,3Rが存在するための空間(ホイールスペース)を確保しようとすると、前輪軸9Aよりも前側に左右車体基準点10,20を設定したとき、左右前輪3L,3Rの間隔よりも左車体基準点10と右車体基準点20の間隔を広く取る必要がある。その上、ドライバーAから左右車体基準点10,20までの距離が大きくなり、視認性の低下が懸念される。
【0079】
そこで、実施例4の自動車1Cのように、左右車体基準点10,20を、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定することで、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径を小さくすることができる。このため、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が縮小でき、これにより、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。
【0080】
また、左右車体基準点10,20がドライバーAに近い位置に設定されるため、これら左右車体基準点10,20の視認性を高めることができ、旋廻時の運転性をさらに向上することができる。
【0081】
すなわち、実施例4の自動車の車体構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0082】
(5) 前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点となる左右車体基準点10,20は、左右前輪3L,3Rを支持する前輪軸9Aと左右後輪4L,4Rを支持する後輪軸9Bとの間に設定する構成とした。
このため、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。また、左右車体基準点10,20の視認性を高めることができ、旋廻時の運転性をさらに向上することができる。
【実施例5】
【0083】
実施例5は、左右車体基準点を、車体の左右に位置するドアミラーの設置位置に設定した例である。
図10は、実施例5の車体構造を適用した自動車を示す平面模式図である。
【0084】
実施例5における自動車1Dの車体2Dは、右側最大車体基準円11及び左側最大車体基準円21の内側に収まり、且つ、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の外側に収まる外側形状を呈している。
【0085】
このとき、右側最大車体基準円11、左側最大車体基準円21、右側最小車体基準円12、左側最小車体基準円22を設定する際に基準となる左右車体基準点10,20は、車体2Dの左右側部に設けたドアミラーDの設定位置に設定する。
【0086】
通常、ドアミラーDはドライバーAの側方で、視認性の高い位置に設定される。また、ドアミラーDは、前輪軸9Aと後輪軸9Bとの間に設けられる。このため、このドアミラーDの設定位置に左右車体基準点10,20を設定することで、旋廻時の運転性をさらに向上することができると共に、広い車室空間を確保することができて、居住性が向上する。
【0087】
つまり、左右車体基準点10,20をドアミラーDの設定位置に設定することで、フェンダーミラーにこれらを設定する場合よりも、ドライバーAからの距離がより短くなって、目視しやすくなる。このため、更なる運転性の向上を図ることができる。また、ドライバーAに近い位置に左右車体基準点10,20を設定することで、フェンダーミラーにこれらを設定する場合よりも、設定位置が車両後方側にずれる。このため、右側最小車体基準円12及び左側最小車体基準円22の半径を小さくすることができ、右側最大車体基準円11と左側最小車体基準円22との重複面積、及び、左側最大車体基準円21と右側最小車体基準円12との重複面積が縮小する。この結果、広い車室空間を確保することができて、居住性の向上を図ることができる。
【0088】
以上、本発明の自動車の車体構造を実施例1〜実施例5に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0089】
上記各実施例では、操舵システムとして、電子制御するいわゆるステイバイワイヤ方式となっているが、これに限らない。ステアリングハンドルと前後輪を、リンク等を介して接続し、機械的に制御するもの(リンケージタイプ)であってもよい。また、後輪の操舵は油圧を用いるものに限らない。
【0090】
上記各実施例では、自動車として、走行用モータを走行駆動源とする電気自動車としたが、これに限らない。エンジンを駆動源とするエンジン車や、エンジンとモータを駆動源とするハイブリッド車両等であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 自動車
2 車体
2a 車体右側面
2b 車体左側面
3L,3R 左右前輪
4L,4R 左右後輪
5 操舵ユニット(舵角制御手段)
51 ステアリングハンドル
52 操舵角センサ
53 前輪操舵モータ
56 後輪操舵モータ
59 操舵コントローラ
7a 運転席シート(運転席)
10 左車体基準点(右旋廻時第1車体基準点、左旋廻時第2車体基準点)
11 右側最大車体基準円
12 右側最小車体基準円
20 右車体基準点(右旋廻時第2車体基準点、左旋廻時第1車体基準点)
21 左側最大車体基準円
22 左側最小車体基準円
P 右旋廻中心位置
Q 左旋廻中心位置
O 車両中心軸線(車幅方向中心位置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する舵角制御手段と、
最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、運転席側方又は運転席前方であって、車幅方向中心位置をはさんで前記中心点と反対側の車体上の任意の位置に設定する第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる外側形状を有する車体と、
を備えることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点は、車幅最大位置に設定し、
前記車体は、最小回転半径の中心位置を中心点とすると共に、車幅方向中心位置をはさんで前記第1車体基準点と反対側の車幅最大位置に設定する第2車体基準点を通る最小車体基準円の外側に収まる外側形状を有する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点又は前記第2車体基準点は、前記前輪を支持する前輪軸と前記後輪を支持する後輪軸との間に設定する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点は、車体の左右に位置するドアミラー又はフェンダーミラーの設置位置に設定する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された自動車の車体構造において、
前記車体は、平面視における車体側面がほぼ円弧状に沿った形状とする
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項1】
前輪の舵角よりも後輪の舵角が逆位相で相対的に大舵角となるように操舵する舵角制御手段と、
最小回転半径の中心位置を中心点とし、且つ、運転席側方又は運転席前方であって、車幅方向中心位置をはさんで前記中心点と反対側の車体上の任意の位置に設定する第1車体基準点を通る最大車体基準円の内側に収まる外側形状を有する車体と、
を備えることを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点は、車幅最大位置に設定し、
前記車体は、最小回転半径の中心位置を中心点とすると共に、車幅方向中心位置をはさんで前記第1車体基準点と反対側の車幅最大位置に設定する第2車体基準点を通る最小車体基準円の外側に収まる外側形状を有する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点又は前記第2車体基準点は、前記前輪を支持する前輪軸と前記後輪を支持する後輪軸との間に設定する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載された自動車の車体構造において、
前記第1車体基準点及び前記第2車体基準点は、車体の左右に位置するドアミラー又はフェンダーミラーの設置位置に設定する
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された自動車の車体構造において、
前記車体は、平面視における車体側面がほぼ円弧状に沿った形状とする
ことを特徴とする自動車の車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−86653(P2013−86653A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228833(P2011−228833)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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