説明

自脱形コンバインの防塵構造

【課題】 エンジンルームへのワラ屑の入り込みなどを効果的に抑制することのできる防塵構造を提供する。
【解決手段】 エンジンルーム29の横一側方に、刈取穀稈を後方の脱穀装置4に向けて搬送する穀稈搬送装置14を配備し、穀稈搬送装置14からの刈取穀稈を、その穂先側が脱穀装置4の供給口18から扱室19に供給されるように、その株元側を挟持して搬送する挟持搬送機構16と、穀稈搬送装置14の後部から供給口18にわたって刈取穀稈の穂先側を案内する穂先ガイド35とを装備してある自脱形コンバインの防塵構造において、エンジンルーム29を形成するエンジンカバー30の上部に、エンジンカバー30と穂先ガイド35との間に形成される隙間Sを塞ぐ防塵カバー38を装備してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの横一側方に、刈取穀稈を後方の脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置を配備し、前記穀稈搬送装置からの刈取穀稈を、その穂先側が前記脱穀装置の供給口から扱室に供給されるように、その株元側を挟持して搬送する挟持搬送機構と、前記穀稈搬送装置の後部から前記供給口にわたって刈取穀稈の穂先側を案内する穂先ガイドとを装備してある自脱形コンバインの防塵構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自脱形コンバインでは、穀稈搬送装置の横一側方に配備した搭乗運転部における運転座席の下方の位置にエンジンルームを形成することが一般的に行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして、自脱形コンバインの防塵構造としては、穀稈搬送装置の後部から脱穀装置の供給口にわたる穀稈搬送経路の上方を覆う防塵カバーを装備して、搬送中の刈取穀稈などから発生する塵埃が、穀稈搬送装置の横一側方に配備した搭乗運転部に向けて舞い上がることを防止するように構成したものがある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−123598号公報(段落番号0024、図1〜3)
【特許文献2】特開2002−58321号公報(段落番号0007、図1〜5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自脱形コンバインにおいては、エンジンルームを形成するエンジンカバーと、穀稈搬送装置の後部から脱穀装置の供給口にわたって刈取穀稈の穂先側を案内する穂先ガイドとの間に形成される隙間を塞ぐようには構成されていないことから、脱穀装置の供給口から漏れ出たワラ屑などが、その隙間からエンジンルームに向けて流れ落ち易くなっている。そのため、収穫作業後の清掃作業において、エンジンルームに入り込んだワラ屑などの除去に手間がかかるなどの不都合が生じるようになっていた。
【0006】
本発明の目的は、エンジンルームへのワラ屑の入り込みなどを効果的に抑制することのできる防塵構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、エンジンルームの横一側方に、刈取穀稈を後方の脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置を配備し、前記穀稈搬送装置からの刈取穀稈を、その穂先側が前記脱穀装置の供給口から扱室に供給されるように、その株元側を挟持して搬送する挟持搬送機構と、前記穀稈搬送装置の後部から前記供給口にわたって刈取穀稈の穂先側を案内する穂先ガイドとを装備してある自脱形コンバインの防塵構造において、前記エンジンルームを形成するエンジンカバーの上部に、前記エンジンカバーと前記穂先ガイドとの間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーを装備してあることを特徴とする。
【0008】
この特徴構成によると、防塵カバーによって、脱穀装置の供給口から漏れ出たワラ屑などが、その隙間からエンジンルームに向けて流れ落ちることを阻止することができる。
【0009】
従って、エンジンルームへのワラ屑の入り込みなどを効果的に抑制することができ、収穫作業後の清掃作業において、エンジンルームに入り込んだワラ屑などの除去に要する手間を軽減することができる。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記防塵カバーを、可撓性を有する素材で構成してあることを特徴とする。
【0011】
この特徴構成によると、防塵カバーを、エンジンカバー及び穂先ガイドに対する密接度の高い形状に形成することなく、エンジンカバーや穂先ガイドの形状に合わせた密接度の高い状態で、エンジンカバーと穂先ガイドとの間に形成される隙間を確実に塞ぐことができる。
【0012】
従って、高い加工精度や組み付け精度を要することなく、エンジンルームへのワラ屑の入り込みなどを効果的に抑制することができ、結果、製作や組み付けの容易化を図りながら、エンジンルームに入り込んだワラ屑などの除去に要する手間を軽減することができる。
【0013】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、前記防塵カバーを、透明性を有する素材で構成してあることを特徴とする。
【0014】
この特徴構成によると、エンジンルームへのワラ屑の進入状態などを、防塵カバーを透して容易に把握することができる。
【0015】
従って、エンジンルームへのワラ屑の入り込みなどを効果的に抑制しながら、エンジンルームに入り込んだワラ屑などの除去を適時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には自脱形コンバインの全体側面が、図2にはその前半部の平面がそれぞれ示されており、このコンバインは、角パイプ材などによって枠状に形成された機体フレーム1、機体フレーム1の下部に装備された左右一対のクローラ式走行装置2、機体フレーム1の左前部に昇降揺動可能に連結された刈取搬送部3、機体フレーム1の左半部に搭載された脱穀装置4、機体フレーム1の右後部に搭載された袋詰め装置5、機体フレーム1の右前部に形成された搭乗運転部6、及び、機体フレーム1の右前部に搭載されたエンジン7、などによって構成されている。
【0017】
左右のクローラ式走行装置2は、エンジン7から主変速装置(図示せず)や副変速装置(図示せず)などを介して伝達される動力で駆動され、搭乗運転部6に備えた主変速レバー8や副変速レバー9の操作に基づいて変速され、その駆動状態では、搭乗運転部6に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー10の左右方向への揺動操作に基づいて、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回走行状態とに切り換えられる。
【0018】
刈取搬送部3は、エンジン7からの動力が主変速装置や刈取クラッチ(図示せず)などを介して伝達され、その作動状態では、機体の走行に伴って、先端に備えた複数のデバイダ11が収穫対象の植立穀稈を植え付け条ごとに梳き分けながら梳き起こし、条分けされた植立穀稈を複数の引起装置12が所定の刈取姿勢に引き起こし、引き起こされた植立穀稈の株元側をバリカン型の刈取装置13が切断し、切断後の植立穀稈である刈取穀稈を穀稈搬送装置14が刈取用の起立姿勢から脱穀用の横倒れ姿勢に姿勢変更しながら脱穀装置4に向けて搬送するように構成されている。
【0019】
又、操縦レバー10の前後方向への揺動操作に基づいて、機体フレーム1と刈取搬送部3とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ15が伸縮作動することで、左右向きの支点P周りに昇降揺動する。
【0020】
脱穀装置4は、エンジン7からの動力が脱穀クラッチ(図示せず)などを介して伝達され、その作動状態では、左側部に備えた挟持搬送機構16が、穀稈搬送装置14からの刈取穀稈を受け取るとともに、その穂先側が脱穀装置4の前壁17に形成した供給口18から扱室19に供給されるように、刈取穀稈の株元側を挟持して搬送し、脱穀装置4に内装した扱胴20が、扱室19に供給された刈取穀稈の穂先側に脱穀処理を施し、その脱穀処理で得られた処理物を受網(図示せず)などから漏下させ、漏下した処理物に、揺動選別機構(図示せず)による篩い選別や唐箕(図示せず)からの選別風による風力選別などを施して、処理物を、1番物としての単粒化穀粒、2番物としての枝梗付き穀粒やワラ屑などの混在物、及び、3番物としての切れワラやワラ屑などに選別し、単粒化穀粒を回収して袋詰め装置5に供給するように構成されている。
【0021】
搭乗運転部6は、機体フレーム1の右前部に搭乗ステップ21を敷設し、搭乗ステップ21の前側に、操縦レバー10などを備えたフロントパネル22を立設し、搭乗ステップ21の左側に、主変速レバー8や副変速レバー9などを備えたサイドパネル23を立設し、搭乗ステップ21の後側に、運転座席24を支持する支持台25を配備して形成されている。
【0022】
図2〜4に示すように、支持台25は、開放部が下向きになる側面視略コの字状で、その右側端部に、除塵網26などを備えた右側壁27が連設され、その左側端部にサイドプレート23が連設されることで、エンジン7やラジエータ28などが配備されるエンジンルーム29を形成するエンジンカバー30として機能するように構成されている。
【0023】
エンジン7は、その左側部に備えた出力プーリ31が、エンジンカバー30の左側部に形成された開口32から穀稈搬送装置14側に突出し、その出力プーリ31から前方の主変速装置や後方の脱穀装置などに対応する伝動ベルト33,34を介して伝動するように構成されている。
【0024】
穀稈搬送装置14と脱穀装置4との間には、挟持搬送機構16によって株元側が挟持された状態で搬送される刈取穀稈の穂先側を受け止めて、穀稈搬送装置14の後部から脱穀装置4の供給口18にわたって案内する穂先ガイド35が配備されている。穂先ガイド35は、穀稈搬送装置14の後部から後方に向けて延出するように穀稈搬送装置14に連結されたゴム製の第1ガイド36と、脱穀装置4の前壁17から前方に向けて延出するように前壁17に装備された板金製の第2ガイド37とを、第1ガイド36が第2ガイド37によって受け止め支持された状態となるように重合させることで、刈取搬送部3の昇降揺動を許容しながら刈取穀稈の穂先側を円滑に案内するように構成されている。
【0025】
図1〜4に示すように、エンジンカバー30の左上部には、サイドパネル23と穂先ガイド35との間に形成される隙間Sを塞ぐことで、脱穀処理の際に脱穀装置4の供給口18から漏れ出たワラ屑などの塵埃が、その隙間Sから下方に向けて流れ落ちることを阻止する防塵カバー38が装備されている。
【0026】
防塵カバー38は、サイドパネル23の上部にボルト連結されることで、エンジンカバー30の左上部から穂先ガイド35に向けて延出する状態となる正面視L字状に屈曲形成された板金製の第1カバー39と、第1カバー39から穂先ガイド35にわたるように延出された可撓性を有する透明の樹脂シートからなる第2カバー40とから構成されている。
【0027】
第2カバー40は、その延出端部における脱穀装置4との隣接箇所40Aが縦壁17に固定され、又、その延出端部における穂先ガイド35との重合箇所40Bが第1ガイド36と第2ガイド37との間に入り込んで挟まれることで、刈取搬送部3の昇降揺動を許容しながら、第1カバー39と穂先ガイド35とにわたる状態を維持するように構成されている。
【0028】
つまり、上記のように防塵カバー38を設けたことで、脱穀装置4の供給口18から漏れ出たワラ屑などの塵埃が、サイドパネル23と穂先ガイド35との隙間Sから流下して、エンジンルーム29に入り込む、あるいは、エンジン7から主変速装置や脱穀装置4にわたる伝動系、及び、主変速レバー8から主変速装置にわたる操作系に付着する、といったことなどが生じるのを効果的に抑制することができる。
【0029】
その結果、収穫作業後の清掃作業において、エンジンルーム29に入り込んだワラ屑、あるいは、伝動系や操作系に付着したワラ屑、などの除去に要する手間を軽減することができる。
【0030】
又、防塵カバー38において、穂先ガイド35に接合される第2カバー40を、可撓性を有する樹脂シートで構成したことによって、防塵カバー38を、穂先ガイド35に対する密接度の高い形状に形成することなく、穂先ガイド35の形状に合わせた密接度の高い状態で穂先ガイド35に接合させることができ、これによって、高い加工精度や組み付け精度を要することなく、エンジンカバー30と穂先ガイド35との間に形成される隙間Sを確実に塞ぐことができる。
【0031】
しかも、第2カバー40が透明であることから、エンジンルーム29へのワラ屑などの進入状態、及び、伝動系や操作系などに対するワラ屑などの付着状態、などを第2カバー40を透して容易に把握することができ、エンジンルーム29に入り込んだワラ屑、あるいは、伝動系や操作系などに付着したワラ屑、などの除去を適時に行うことができる。
【0032】
サイドパネル23の上部には、サイドパネル23から上方に向けて延出し、かつ、その上端部が、上部側ほど穀稈搬送装置14側に位置する左傾姿勢に形成された防音壁41が立設されている。これによって、エンジンカバー30の開口32から漏れ出るエンジン音、及び、刈取搬送部3や脱穀装置4の作動音、などの騒音が搭乗運転部6に及ぶことを効果的に抑制することができ、搭乗運転部6での居住性の向上を図ることができる。
【0033】
〔別実施形態〕
【0034】
〔1〕防塵カバー38を、サイドパネル23の上部と穂先ガイド35とにわたるように形成された板金材や樹脂材のみで構成してもよく、又、サイドパネル23の上部と穂先ガイド35とにわたる可撓性を有する樹脂シートのみで構成してもよい。
【0035】
〔2〕防塵カバー38を、その全体が透明になるように構成してもよく、又、その全体あるいは一部が半透明になるように構成してもよく、更に、その全体が不透明になるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】自脱形コンバインの全体側面図
【図2】自脱形コンバインにおける前半部の平面図
【図3】防塵構造を示す要部の縦断正面図
【図4】防塵構造を示す要部の斜視図
【符号の説明】
【0037】
4 脱穀装置
14 穀稈搬送装置
16 挟持搬送機構
18 供給口
19 扱室
29 エンジンルーム
30 エンジンカバー
35 穂先ガイド
38 防塵カバー
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの横一側方に、刈取穀稈を後方の脱穀装置に向けて搬送する穀稈搬送装置を配備し、
前記穀稈搬送装置からの刈取穀稈を、その穂先側が前記脱穀装置の供給口から扱室に供給されるように、その株元側を挟持して搬送する挟持搬送機構と、
前記穀稈搬送装置の後部から前記供給口にわたって刈取穀稈の穂先側を案内する穂先ガイドとを装備してある自脱形コンバインの防塵構造であって、
前記エンジンルームを形成するエンジンカバーの上部に、前記エンジンカバーと前記穂先ガイドとの間に形成される隙間を塞ぐ防塵カバーを装備してあることを特徴とする自脱形コンバインの防塵構造。
【請求項2】
前記防塵カバーを、可撓性を有する素材で構成してあることを特徴とする請求項1に記載の自脱形コンバインの防塵構造。
【請求項3】
前記防塵カバーを、透明性を有する素材で構成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の自脱形コンバインの防塵構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193908(P2008−193908A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29603(P2007−29603)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】