説明

芝刈り車および芝刈りシステム

【課題】鉄道車両用の軌道上の芝を効率的に刈ることができる芝刈り車および芝刈りシステムを提供する。
【解決手段】鉄道車両用の軌道400に敷設された左右のレール401,402上を走行可能な台車4と、該台車4に取り付けられ、該台車4の走行に従って左右のレール401,402の内側と外側の所定の範囲とに亘り、所定幅で芝を刈り込む芝刈り機52〜55と、前記台車4上に設置され、前記芝刈り機52〜55によって刈り取られた芝を収容する収納箱130と、前記芝刈り機52〜55で刈り取られた芝を前記収納箱130へ吸い込む吸引装置172とで、芝刈り車2を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用の軌道を走行しながら該軌道上の芝を刈るための芝刈り車に関し、鉄道車両用軌道の保守技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、温暖化抑制および景観向上の観点から、路面電車等の鉄道車両用の軌道に芝生を設けることが望まれており、既に一部の路面電車では軌道の芝生化が導入されている。
【0003】
ところが、鉄道車両用の軌道を芝生化した場合、芝が長くなると、作業者が軌道上を歩きながら芝刈り機で芝を刈り、刈り取った芝を集めて運び出すといった作業が必要となり、芝生の保守管理に多大な労力および時間を要する。
【0004】
一方、特許文献1等に開示されているような乗用型の芝刈り車を用いて、鉄道車両用の軌道の芝を刈ることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−51278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在流通している芝刈り車は、鉄道車両用の軌道の幅に対応して設計されていないため、軌道の全幅に亘って芝刈りを行うために該軌道を往復しながら作業を行う必要がある。また、芝刈り車が停留所や中央分離帯等に接触しないように走行しなければならないため、芝刈り車の走行に相当の注意を要する。そのため、鉄道車両用の軌道において芝刈り作業を効率的に行うことができない問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、鉄道車両用の軌道上の芝を効率的に刈ることができる芝刈り車および芝刈りシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る芝刈り車は、次のように構成したことを特徴とする。
【0009】
まず、本願の請求項1に記載の発明に係る芝刈り車は、
鉄道車両用の軌道に敷設された左右のレール上を走行可能な台車と、
該台車に取り付けられ、該台車の走行に従って左右のレールの内側と外側の所定の範囲とに亘り、所定幅で芝を刈り込む芝刈り機と、
前記台車上に設置され、前記芝刈り機によって刈り取られた芝を収容する収納箱と、
前記芝刈り機で刈り取られた芝を前記収納箱へ吸い込む吸引装置とを有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記台車は走行用の前輪と後輪とを有し、前記芝刈り機は、前記前輪と後輪との間に設けられていることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記左右のレールの外側の芝を刈り込む芝刈り機は、車幅方向にスライド可能に前記台車に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
またさらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記収納箱は、前記台車上から車幅方向の一側方にスライド可能に設置されていると共に、前記一側方側の面に該収納箱に収容した芝を排出するための開閉扉が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、
軌道上での進行方向を逆転させるための旋回機構を有し、
該旋回機構は、
旋回中心となる旋回軸と、
該旋回軸を中心として旋回するときに前記軌道上を転動する旋回用の車輪と、
旋回時に、前記旋回軸と旋回用車輪とを下降させてこれらを接地させると共に、該旋回軸及び旋回用車輪が接地した状態で前記台車を浮上させることにより前記走行用車輪をレールからリフトアップさせるリフトアップ手段とを有することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項6に記載の発明に係る芝刈りシステムは、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の芝刈り車と、
該芝刈り車に連結可能であり、該芝刈り車を牽引しながら前記レール上を自走可能な牽引用車両とを有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の発明において、前記牽引用車両に、前記軌道上の芝に散水するための散水装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
まず、請求項1に記載の発明に係る芝刈り車によれば、該芝刈り車が有する台車を、鉄道車両用の軌道に敷設された左右のレールに沿って走行させながら、前記台車に取り付けられた芝刈り機により、前記軌道上の芝を前記レールの内側と外側の所定の範囲とに亘り所定幅で刈り込むことができるため、該軌道上の芝刈り作業を効率よく行うことができる。また、前記芝刈り機により刈り取られた芝を、芝刈り車が有する吸引装置により、前記台車上に設置された収納箱に吸い込んで収容することができるため、刈り取った芝の捕集・廃棄作業を効率よく行うことができる。
【0017】
また、請求項1に記載の発明に請求項2に記載の発明を適用すれば、前記芝刈り機が前記台車の前輪と後輪との間に設けられるため、芝刈り機が台車の前輪よりも前側または後輪よりも後側に設けられる場合に比べて、レールがカーブしている部分において該レールに対する前記芝刈り機の左右方向の位置ずれを小さくすることができる。よって、レールのカーブ部分においても、該レールに沿った芝刈りを良好に行うことができる。
【0018】
さらに、請求項2に記載の発明に請求項3に記載の発明を適用すれば、左右のレールの外側の芝を刈り込む芝刈り機が、車幅方向にスライド可能に前記台車に取り付けられるため、左右のレールの外側における芝刈りが必要な範囲の大きさに応じて、レールの外側への芝刈り機の突出量を適宜調整することができる。よって、レールの外側にある停留所や中央分離帯等の障害物との干渉を回避しつつ、刈り残しを極力防止しながら、芝刈り作業を進めることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明によれば、前記収納箱が、前記台車上から車幅方向の一側方にスライド可能に設置されていると共に、前記一側方側の面に該収納箱に収容した芝を排出するための開閉扉が設けられているため、収納箱に貯まった芝を、芝刈り車に横付けされたパッカー車等へ容易に廃棄することができる。
【0020】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、旋回機構により軌道上での芝刈り車の進行方向を逆転させることができる。そのため、芝刈り車を前記軌道の往路の終点まで走行させながら芝刈り作業を行った後、旋回機構により芝刈り車の進行方向を逆転させることで、前記軌道の復路においても芝刈り車による芝刈り作業を行うことができる。
【0021】
具体的に、請求項5に記載の発明に係る旋回機構は、旋回中心となる旋回軸と、該旋回軸を中心として旋回するときに前記軌道上を転動する旋回用の車輪と、旋回時に、前記旋回軸と旋回用車輪とを下降させてこれらを接地させると共に、該旋回軸及び旋回用車輪が接地した状態で前記台車を浮上させることにより走行用車輪をレールからリフトアップさせるリフトアップ手段とを有する。したがって、リフトアップ手段により旋回軸と旋回用車輪とを接地させるとともに走行用車輪をレールからリフトアップさせた状態で、旋回軸を中心として前記軌道上を旋回用の車輪が転動することで、芝刈り車の進行方向を容易に逆転させることができる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明に係る芝刈りシステムでは、前記レール上を自走可能な牽引用車両により前記芝刈り車が牽引されるため、レール上を自走するための走行用の動力を芝刈り車に搭載する必要がない。また、牽引用車両として既存の鉄道用車両を使用することができるため、イニシャルコストを低減できる。
【0023】
さらに、請求項6に記載の発明に請求項7に記載の発明を適用すれば、前記牽引用車両に、前記軌道上の芝に散水するための散水装置が搭載されるため、該牽引用車両を前記レールに沿って走行させながら軌道上の芝への散水作業を効率的に行うことができる。また、該牽引用車両に、芝刈り車の牽引機能と散水機能とを兼ね備えさせることで、軌道上の芝の保守管理に要する設備コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る芝刈り車を示す側面図である。
【図2】図1に示す芝刈り車を進行方向後側から見た図である。
【図3】図1に示す芝刈り車の平面図である。
【図4】図1に示す芝刈り車の台車を示す平面図である。
【図5】図4に示す台車上に設置されたベースフレームを示す平面図である。
【図6】芝刈り機の取付位置を示す平面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】図6のB−B線断面図である。
【図9】芝刈り機のスライド機構を示す図である。
【図10】収納箱のスライド機構を示す図である。
【図11】図10のC−C線断面図である。
【図12】図10のD−D線断面図である。
【図13】芝刈り車の旋回機構を説明するための平面図である。
【図14】図5のE−E線断面図である。
【図15】図5のF−F線断面図である。
【図16】芝刈り車が牽引用車両に連結された状態を示す側面図である。
【図17】牽引用車両に搭載された散水装置のノズルを示す図である。
【図18】散水装置およびその他の搭載機器を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「前後」、「右」、「左」、「左右」等の方向を示す用語は、芝刈り車の進行方向を「前」とした場合の方向を指すものとする。
【0026】
[芝刈り車]
図1〜図3は、本実施形態に係る芝刈り車2を示す。この芝刈り車2は、例えば図2に示す鉄道車両用の軌道400に敷設された左右のレール401,402に沿って走行しながら、該軌道400に生えた芝410を刈り取るために使用される。なお、各レール401,402の車幅方向内側にはレール溝403,404が隣接して設けられており、鉄道車両の車輪は、その一部がレール溝403,404に嵌り込んだ状態でレール401,402上を転動するようになっている。
【0027】
芝刈り車2は、左右のレール401,402上を走行可能な台車4と、該台車4に取り付けられ、該台車4の走行に従って左右のレール401,402の内側P(図6参照)と外側の所定の範囲Q,R(図6参照)とに亘り、所定幅で芝を刈り込む芝刈り機としてのリールモア52〜55と、前記台車4上に設置され、リールモア52〜55によって刈り取られた芝を収容する収納箱130と、リールモア52〜55で刈り取られた芝を収納箱130へ吸い込む吸引装置としてのブロア172とを有する。
【0028】
この芝刈り車2を使用すれば、左右のレール401,402に沿って台車4を走行させながら、該台車4に取り付けられたリールモア52〜55により、前記軌道400上の芝410をレール401,402の内側と外側の所定の範囲とに亘り所定幅で刈り込むことができるため、該軌道400上の芝刈り作業を効率よく行うことができる。また、リールモア52〜55により刈り取られた芝を、ブロア172により収納箱130に吸い込んで収容することができるため、刈り取った芝の捕集・廃棄作業を効率よく行うことができる。
【0029】
[台車]
図4に示すように、台車4は、レール401,402上を転動する走行用の車輪6〜9と、該車輪6〜9を支持する例えば方形枠状の支持フレーム10とを有する。
【0030】
車輪6〜9は、例えば、左右一対の前輪6,7と左右一対の後輪8,9とで構成されている。
【0031】
支持フレーム10は、前後方向に延びる左右一対の縦フレーム11,12と、これら縦フレーム11,12間に跨って車幅方向に延びる前後一対の横フレーム13,14とを有する。左右の縦フレーム11,12には、前輪用の車軸17を支持する前輪用軸受部19,20と、後輪用の車軸18を支持する後輪用軸受部21,22とがそれぞれ設けられている。また、左右の縦フレーム11,12の中央部間に跨って、例えば前後一対の補強フレーム15,16が設けられている。
【0032】
好ましくは、台車4として、鉄道用車両で使用されていた台車を廃車時に取り外したものが利用され、これにより、鉄道用車両の廃材を少なくすることができるとともに、芝刈り車2の製造コストを低減できる。
【0033】
[ベースフレーム]
収納箱130やブロア172など、搭載機器の多くは、図5に示すベースフレーム30を介して台車4に取り付けられている。
【0034】
図5に示すように、ベースフレーム30は例えば方形枠状に形成されており、台車4の上に設置されている。このベースフレーム30は、前後方向に延びる左右一対の縦フレーム31,32と、これら縦フレーム31,32間に跨って車幅方向に延びる前後一対の横フレーム33,34とを有する。
【0035】
図1と図5を併せて参照すると、ベースフレーム30の前側の横フレーム33は、台車4の支持フレーム10の前側横フレーム13から立ち上がる例えば左右一対の立ち上がりフレーム46,47の上端部に固定されている。同様に、ベースフレーム30の後側の横フレーム34は、台車4の支持フレーム10の後側横フレーム14から立ち上がる例えば左右一対の立ち上がりフレーム48,49の上端部に固定されている。また、台車4の支持フレーム10の左右の縦フレーム11,12と、これに対応するベースフレーム30の縦フレーム31,32との間には、それぞれスペーサ50,51が介装されている。すなわち、ベースフレーム30は、前後の立ち上がりフレーム46〜49と、左右のスペーサ50,51とを介して、台車4の支持フレーム10に固定されている。
【0036】
また、ベースフレーム30の左右の縦フレーム31,32間に跨って、車幅方向に延びる前後一対の横メンバ35,36が設けられている。さらに、前側横フレーム33と前側横メンバ35とに跨って、前後方向に延びる例えば4本の縦メンバ37〜40が車幅方向に間隔を空けて設けられている。またさらに、これらの縦メンバ37〜40のうち左側2本の縦メンバ37,38間に跨って横メンバ41が車幅方向に延設され、残りの右側2本の縦メンバ39,40間に跨って横メンバ42が車幅方向に延設されている。また、後側横フレーム34と後側横メンバ36とに跨って、左右一対の縦メンバ43,44が前後方向に延設されている。さらに、これら左右の縦メンバ43,44間に跨って横メンバ45が車幅方向に延設されている。
【0037】
[リールモア]
図6に示すように、本実施形態に係る芝刈り車2は、第1〜第4のリールモア52〜55を備えている。各リールモア52〜55は、車幅方向に延びる軸心を中心として回転可能な回転刃56と、該回転刃56を収容するケース57と、回転刃56を回転駆動するモータ58と、地面上を転動するローラ59とを有する。このリールモア52〜55による芝刈り作業は、ローラ59を接地した状態でモータ58により回転駆動される回転刃56で芝を刈り取ることにより行われる。このとき、ローラ59は、台車4の走行状態に応じて地面上を転動する。また、各リールモア52〜55は、ローラ59を1つのみ有し、該ローラ59は、回転刃56よりも後側に設けられている。すなわち、回転刃56よりも前側にローラ59が設けられていないため、回転刃56の前方において刈り取り前の芝がローラ59により倒されて刈り取り難くなることが回避されている。
【0038】
これらのリールモア52〜55は、前後方向において台車4の前輪6,7と後輪8,9との間に設けられている。そのため、リールモア52〜55が台車4の前輪6,7よりも前側または後輪8,9よりも後側に設けられる場合に比べて、レール401,402がカーブしている部分においてレール401,402に対するリールモア52〜55の左右方向の位置ずれを小さくすることができる。よって、レール401,402のカーブ部分においても、該レール401,402に沿った芝刈りを良好に行うことができる。
【0039】
各リールモア52〜55の配置について、より具体的に説明する。
【0040】
第1及び第3のリールモア52,54は、前輪6,7と後輪8,9との中間よりもやや前側において車幅方向に並べて配置され、第2及び第4のリールモア53,55は、前輪6,7と後輪8,9との中間よりもやや後側において車幅方向に並べて配置されている。
【0041】
さらに具体的に説明すると、第1のリールモア52は、左右のレール溝403,404の内側の範囲Pのうち左右方向中央部から右端部までの範囲に亘って芝を刈り込み可能な位置に配置されている。また、第2のリールモア53は、左右のレール溝403,404の内側の範囲Pのうち左右方向中央部から左端部までの範囲に亘って芝を刈り込み可能な位置に配置されている。そのため、第1及び第2のリールモア52,53により、左右のレール溝403,404の内側の範囲Pの芝を確実に刈り取ることができる。
【0042】
なお、第1のリールモア52のモータ58は、第3のリールモア54から遠い側においてケース57の側面に取り付けられており、これにより、第3のリールモア54との干渉が回避されている。同様に、第2のリールモア53のモータ58は、第4のリールモア55から遠い側においてケース57の側面に取り付けられており、これにより、第4のリールモア55との干渉が回避されている。
【0043】
一方、第3及び第4のリールモア54,55は、レール401,402の外側の所定範囲R,Qで芝を刈り込み可能な位置に配置されている。具体的に、第3のリールモア54は、左側のレール401から左側への所定範囲Q(Qmin〜Qmax)で芝を刈り込み可能な位置に配置され、第4のリールモア55は、右側のレール402から右側への所定範囲R(Rmin〜Rmax)で芝を刈り込み可能な位置に配置されている。
【0044】
なお、第3及び第4のリールモア54,55のモータ58は、左右のレール401,402の内側に配置されるようにケース57の側面に取り付けられており、これにより、レール401,402の外側にある停留所や中央分離帯406(図17参照)等の障害物との干渉が回避されている。
【0045】
また、第3及び第4のリールモア54,55は、車幅方向にスライド可能に台車4に取り付けられている。よって、左右のレール401,402の外側への第3及び第4のリールモア54,55の突出量は、該リールモア54,55のスライド移動により調整可能となっている。これにより、左右のレール401,402の外側において第3及び第4のリールモア54,55により芝刈り可能な範囲は、所定の最小範囲Qmin,Rminと所定の最大範囲Qmax,Rmaxとの間で調整可能となっている。したがって、芝410が設けられている範囲の幅や、停留所または中央分離帯406等の障害物の有無などといった左右のレール401,402の外側の状況に応じて、第3及び第4のリールモア54,55による芝刈り可能な範囲を適宜調整することができる。よって、レール401,402の外側にある停留所や中央分離帯406等の障害物とリールモア54,55との干渉を回避しつつ、刈り残しを極力防止しながら、芝刈り作業を進めることができる。
【0046】
図7及び図8を参照しながら、リールモア52〜55の取付構造について説明する。
【0047】
図7は、第1のリールモア52の取付構造を示す。第1のリールモア52は、ベースフレーム30と、該ベースフレーム30の横メンバ35に取り付けられた昇降機構60とを介して台車4に取り付けられている。
【0048】
昇降機構60は、横メンバ35に固定された上側固定部材61と、該上側固定部材61よりも下側において昇降可能に配設された下側昇降部材64と、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダ66とを有する。
【0049】
下側昇降部材64は、略水平なプレート状に形成されている。この下側昇降部材64の下面には、第1のリールモア52に連結するための連結部77が下方へ突設されている。一方、第1のリールモア52のケース57の上面には、下側昇降部材64に連結するための連結部78が上方へ突設されており、この連結部78は、下側昇降部材64の連結部78に対して、前後方向に延びる軸心と中心として回転可能に取り付けられている。これにより、第1のリールモア52は、前後方向に延びる軸心を中心として揺動可能に下側昇降部材64に取り付けられている。そのため、接地した状態のリールモア54は、地面の傾斜に対応して該地面に沿うように傾いて配置されることができ、これにより、地面が傾斜していても回転刃56の左右方向の全幅に亘って芝を刈り取ることができる。
【0050】
また、下側昇降部材64には、連結部77を挟んだ左右両側にストッパ80が下方へ突設されている。これらのストッパ80は例えばボルトで構成されるが、特にこれに限定されるものでない。各ストッパ80は、リールモア52が右側または左側に大きく揺動したときに該リールモア52と共に揺動する連結部78に当接するように配設されており、これにより、リールモア52が所定範囲を超えて揺動しないように規制されている。
【0051】
一方、上側固定部材61は、例えばL字形のプレートからなり、略鉛直方向に配設されて横メンバ35に固定される鉛直部62と、該鉛直部62の下端から略水平方向に延設された水平部63とを有する。
【0052】
水平部63の上面には、シリンダ66のシリンダ本体67が固定されている。また、シリンダ66のロッド68は上下方向に延設されており、該ロッド68の上端は、シリンダ本体67の内部を移動するピストンに固定されている。一方、ロッド68の下端には拡径部69が設けられており、この拡径部69は、相互に対向配置されるように下側昇降部材64から立ち上がる一対の対向部材70,71間に介装されている。これらの対向部材70,71の上端には、拡径部69の上面に係止するための係止片72が設けられている。
【0053】
この係止片72に拡径部69が係止した状態でシリンダ66が収縮すると、ロッド68の拡径部69は上昇し、該拡径部69に係止する対向部材70,71と共に下側昇降部材64及びリールモア52が上昇する。リールモア52のローラ59が地面から離間するまで上昇した状態では、前記係止片72に拡径部69が係止していることにより、リールモア52が吊り上げ支持された状態が維持される。逆に、シリンダ66が伸長すると拡径部69は下降し、これに伴い、拡径部69と対向部材70,71との係止状態が解除されて、下側昇降部材64およびリールモア52が自重により下降して、リールモア52のローラ59が接地される。リールモア52のローラ59が接地した状態においては、拡径部69が係止片72の下方で且つ下側昇降部材64の上面の上方に配置されるようになっている。これにより、芝刈り作業中における地面の不陸に伴うリールモア52の昇降が所定範囲内で許容されている。
【0054】
また、昇降機構60は、複数のガイドロッド74と、該ガイドロッド74が挿通される円筒状のガイド部材76とを有する。ガイドロッド74は、下側昇降部材64から立ち上がるように該下側昇降部材64に固定されている。一方、ガイド部材76は、ガイドロッド74に対応する位置において水平部63の下面に固定されている。各ガイド部材76には、ガイドロッド74が上下方向にスライド可能に挿通されており、これにより、下側昇降部材64およびリールモア52の昇降が確実に上下方向に沿って行われるように案内される。
【0055】
さらに、上側固定部材61の水平部63には、シリンダ66の収縮によりリールモア52が上昇した状態において該リールモア52のケース57の上面に当接する左右一対の当接部材82が下方へ突設されており、これにより、上昇時のリールモア52の揺動を抑制できるようになっている。なお、当接部材82は例えばボルトで構成されるが、特にこれに限定されるものでない。
【0056】
同様に、第2のリールモア53も、上記と同様の昇降機構60を介して、ベースフレーム30の横メンバ36に取り付けられており、第1のリールモア52と同様に昇降可能となっている。
【0057】
このように、第1及び第2のリールモア52,53は、上述の昇降機構60により昇降可能となっているため、芝刈り作業を行わないときはリールモア52,53を上昇位置に退避させておき、芝刈り作業を行うときのみローラ59が接地するまでリールモア52,53を下降させて使用することができる。
【0058】
図8は、第3のリールモア54の取付構造を示す。第3のリールモア54は、昇降機構100とスライド機構84とを介して台車4の横メンバ15に取り付けられている。
【0059】
スライド機構84は、横メンバ15に固定されたベース部材85と、車幅方向にスライド可能に該ベース部材85に取り付けられたスライド部材86とを有する。ベース部材85は、例えば、鉛直方向と車幅方向とに略平行な方向に沿って配設されたプレートで構成されている。スライド部材86は、例えばベース部材85に対向配置された対向プレート87と、該対向プレート87の車幅方向一端からベース部材85に向かって延びる第1の端部プレート88と、対向プレート87の車幅方向他端からベース部材85に向かって延びる第2の端部プレート89とを有する。なお、第2の端部プレート89は、後述のシリンダ90との干渉を回避するために上下に分割して設けられている。
【0060】
図9を参照しながら、スライド機構84について更に具体的に説明する。ただし、図9において、スライド機構84は、前記対向プレート87の左右方向中間部を切り欠いて図示されている。
【0061】
スライド機構84は、車幅方向に伸縮可能な油圧シリンダ90を有する。このシリンダ90のシリンダ本体91はベース部材85に固定されている。一方、シリンダ90のロッド92は、その一端においてシリンダ本体91の内部で移動するピストンに固定され、他端においてスライド部材86の第1の端部プレート88に固定されている。
【0062】
また、スライド部材86には、第1の端部プレート88と第2の端部プレート89とに跨って車幅方向に延びる上下一対のガイドロッド94,95が設けられている。一方、ベース部材85には、上側のガイドロッド94が挿通される例えば筒状の上側ガイド部材96,97と、下側のガイドロッド95が挿通される例えば筒状の下側ガイド部材98,99とが固定されている。これにより、ベース部材85に対するスライド部材86のスライド移動が、確実に車幅方向に沿って行われるように案内される。
【0063】
図8に示すように、昇降機構100は、スライド部材86の前記対向プレート87に固定された上側固定部材101と、該上側固定部材101よりも下側において昇降可能に配設された下側昇降部材105と、上下方向に伸縮可能な油圧シリンダ112とを有する。
【0064】
下側昇降部材105は、略水平なプレート状に形成されている。この下側昇降部材105の下面には、第3のリールモア54に連結するための連結部106が下方へ突設されている。一方、第3のリールモア54のケース57の上面には、下側昇降部材105に連結するための連結部107が上方へ突設されており、この連結部107は、下側昇降部材105の連結部106に対して、前後方向に延びる軸心を中心として回転可能に取り付けられている。これにより、第3のリールモア54は、前後方向に延びる軸心を中心として揺動可能に下側昇降部材105に取り付けられている。そのため、接地した状態のリールモア54は、地面の傾斜に対応して該地面に沿うように傾いて配置されることができ、これにより、地面が傾斜していても回転刃56の左右方向の全幅に亘って芝を刈り取ることができる。
【0065】
また、下側昇降部材105には、連結部106を挟んだ左右両側にストッパ108が下方へ突設されている。これらのストッパ108は例えばボルトで構成されるが、特にこれに限定されるものでない。各ストッパ108は、リールモア54が右側または左側に大きく揺動したときに該リールモア54と共に揺動する連結部107に当接するように配設されており、これにより、リールモア54が所定範囲を超えて揺動しないように規制されている。
【0066】
さらに、下側昇降部材105は、上側固定部材101よりも車幅方向外側へ張り出して設けられており、この張り出し部110において連結部106,107を介してリールモア54が取り付けられている。そのため、リールモア54をレール401,402の外側へ張り出して配置することができ、これにより、レール401,402の外側における芝の刈り取りが可能となっている。
【0067】
一方、上側固定部材101は、例えばL字形のプレートからなり、略鉛直方向に沿って配設されてスライド部材86の前記対向プレート87に固定された鉛直部102と、該鉛直部102の例えば上端から略水平方向に延設された水平部103とを有する。
【0068】
水平部103の上面には、シリンダ112のシリンダ本体113が固定されている。また、シリンダ112のロッド114は上下方向に延設されており、ロッド114の上端は、シリンダ本体113の内部を移動するピストンに固定されている。一方、ロッド114の下端には拡径部115が設けられており、この拡径部115は、相互に対向配置されるように下側昇降部材105から立ち上がる一対の対向部材116,117間に介装されている。これらの対向部材116,117の上端には、拡径部115に係止するための係止片118が設けられている。
【0069】
この係止片118に拡径部115が係止した状態でシリンダ112が収縮すると、ロッド114の拡径部115は上昇し、該拡径部115に係止する対向部材116,117と共に下側昇降部材105及びリールモア54が上昇する。リールモア54のローラ56が地面から離間するまで上昇した状態では、前記係止片118に拡径部115が係止していることにより、リールモア54が吊り上げ支持された状態が維持される。逆に、シリンダ112が伸長すると拡径部115は下降し、これに伴い、拡径部115と対向部材116,117との係止状態が解除されて、下側昇降部材105およびリールモア54が自重により下降して、リールモア54のローラ56が接地される。リールモア54のローラ56が接地した状態においては、拡径部115が係止片118の下方で且つ下側昇降部材105の上面の上方に配置されるようになっている。これにより、芝刈り作業中における地面の不陸に伴うリールモア54の昇降が所定範囲内で許容されている。
【0070】
また、昇降機構100は、複数のガイドロッド120と、該ガイドロッド120が挿通される円筒状のガイド部材122とを有する。ガイドロッド120は、下側昇降部材105から立ち上がるように下側昇降部材105に固定されている。一方、ガイド部材122は、ガイドロッド120に対応する位置において上側固定部材101の水平部103の下面に固定されている。各ガイド部材122には、ガイドロッド120が上下方向にスライド可能に挿通されており、これにより、下側昇降部材105およびリールモア54の昇降が確実に上下方向に沿って行われるように案内される。
【0071】
さらに、上側固定部材101の水平部103と、スライド部材86の前記対向プレート87の下端部から車幅方向外側へ延びるように該対向プレート87に固定された延長部材124とに、リールモア54が上昇した状態において該リールモア54のケース57の上面に当接する左右一対の当接部材125,126が下方へ突設されており、これにより、上昇時のリールモア54の揺動を抑制できるようになっている。なお、当接部材125,126は例えばボルトで構成されるが、特にこれに限定されるものでない。また、下側昇降部材105には、前記水平部103から下方へ突設された当接部材125との干渉を避けるための回避用穴127が形成されている。
【0072】
同様に、第4のリールモア55も、上記と同様の昇降機構100及びスライド機構84を介して、台車4の横メンバ16に取り付けられており、第3のリールモア54と同様に昇降およびスライド可能となっている。
【0073】
このように、第3及び第4のリールモア54,55は、上述の昇降機構100により昇降可能となっているため、第1及び第2のリールモア52,53と同様、芝刈り作業を行わないときはリールモア54,55を上昇位置に退避させておき、芝刈り作業を行うときのみローラ56が接地するまでリールモア54,55を下降させて使用することができる。
【0074】
また、第3及び第4のリールモア54,55は、上述のスライド機構84により車幅方向にスライド可能となっているため、左右のレール401,402の外側の状況に応じて、第3及び/又は第4のリールモア54,55のスライド位置を適宜調整しながら芝刈り作業を行うことができる。これにより、リールモア54,55が停留所または中央分離帯406(図17参照)等の障害物に干渉することを回避しつつ、レール401,402の外側において芝の刈り残しを極力防止することができる。
【0075】
[収納箱]
図1〜図3に示すように、収納箱130は、スライド機構140を介してベースフレーム30上に設置されている。収納箱130の後面上端部には、リールモア52〜55で刈り取られた芝を収納箱130へ導く複数のダクト132〜135の一端が接続されている。各ダクト132〜135は、芝刈り車2の後部を通って、対応するリールモア52〜55のケース57との接続部に導かれている。
【0076】
図10〜図12に示すように、スライド機構140は、車幅方向に伸縮する油圧シリンダ160と、車幅方向に延びる例えば前後一対のレール142と、油圧シリンダ160の伸縮に伴ってレール142に沿ってスライド移動すると共に収納箱130が載置される載置部150とを有する。
【0077】
載置部150は、例えば、方形枠状のフレームの上面と下面とにパネルが張り付けられて構成されている。図10及び図11に示されるように、載置部150の下面には、レール142に沿って転動する複数のローラ152,154が取り付けられている。
【0078】
各レール142は、車幅方向に延びる上下一対のレール部材143,144を備え、該上下のレール部材143,144の間に、ローラ152,154が転動可能に介装されている。下側のレール部材144は、ベースフレーム30の左右の縦フレーム31,32の上面に固定され、上側のレール部材143は、その両端部において、上下方向に延びる連結フレーム145,146を介して下側のレール部材144に連結されている。
【0079】
また、各レール142の近傍には、ベースフレーム30の左側の縦フレーム31から立ち上がる支持部材148が設けられている。各支持部材148は、前後方向に延びる軸心と中心として回転可能な支持ローラ149を有する。この支持ローラ149により、載置部150は、車幅方向のスライド移動が阻害されることなく下側から支持される。
【0080】
図12に示すように、シリンダ160のシリンダ本体162は、連結部材166を介してベースフレーム30の横メンバ36に連結されている。一方、シリンダ160のロッド164は左右方向に延設されており、該ロッド164の右端は、シリンダ本体162の内部を移動するピストンに固定され、ロッド164の左端は、連結部材166を介して載置部150の左端部の下面に固定されている。
【0081】
載置部150は、シリンダ160の伸縮に伴い車幅方向にスライド移動する。具体的には、シリンダ160が完全に収縮した状態において、載置部150は、正規の位置、すなわち、レール142から左右方向に張り出すことのない位置に配置される。このとき、前記ローラ152,154はレール142の左右方向中央部と右端部とに配置される(図11参照)。一方、シリンダ160が伸長すると、載置部150は、左方向へスライド移動して、レール142の左端よりも左側へ張り出した位置に配置される。このとき、前記ローラ152,154は、レール142の左端部と左右方向中央部とに配置される(図11参照)。
【0082】
以上の通り、収納箱130は、台車4上から左方向へスライド可能に設置されている。また、図1に示すように、収納箱130の左側面には、収納箱130に収容した芝を排出するための開閉扉132が設けられている。そのため、収納箱130に貯まった芝を廃棄する際は、前記シリンダ160の伸長により収納箱130を台車4上から左方向へスライドさせた位置で開閉扉132を開くことで、収納箱130内の芝を、芝刈り車2に横付けしたパッカー車等へ容易に廃棄することができる。
【0083】
[ブロア]
図1〜図3に示すように、ブロア172は、収納箱130の右側において載置部150上に設置されている。このブロア172の吸い込み口は、収納箱130の空気出口134よりも低い位置に設けられているが、連通室170を介して該空気出口134に連通している。また、ブロア172はモータ174により駆動されるようになっており、該モータ174は、ブロア172の右側において設置台176を介して載置部150上に設置されている。モータ174は、例えば電動モータであり、後述の電源354から供給される電力により駆動される。
【0084】
ブロア172が駆動されると、リールモア52〜55のケース57の内部空間からダクト132〜135、収納箱130、及び連通室170を通ってブロア172へ導かれる気流が発生し、これにより、リールモア52〜55で刈り取られた芝がダクト132〜135を通って収納箱130へ吸い込まれるようになっている。なお、収納箱130の空気出口134にはフィルタが設けられており、収納箱130に収容された芝が収納箱130の外部へ流出しないようになっている。
【0085】
[旋回機構]
芝刈り車2はさらに、軌道400上での進行方向を逆転させるための旋回機構180を有する。
【0086】
図13に示すように、旋回機構180は、旋回中心となる旋回軸181と、該旋回軸181を中心として旋回するときに軌道400上を転動する旋回用のキャスタ184と、を有する。旋回軸181は、平面視において台車4の車幅方向中央部で且つ前後方向の中央やや後方部分に配設されている。一方、キャスタ184は、平面視において台車4の前端部において左右一対配設されている。
【0087】
また、図14及び図15に示すように、旋回機構180は、旋回時に、旋回軸181と例えば一対のキャスタ184とを下降させてこれらを接地させると共に、旋回軸181及びキャスタ184が接地した状態で台車4を浮上させることにより走行用車輪6〜9をレール401,402からリフトアップさせるリフトアップ手段186を有する。このリフトアップ手段186は、旋回軸181を昇降させる昇降機構190と、キャスタ184を昇降させる昇降機構202とを有する。
【0088】
図14及び図5に示すように、旋回軸181は、昇降機構190を介してベースフレーム30に固定されており、この昇降機構190は油圧シリンダ192を有する。このシリンダ192のシリンダ本体193は、ベースフレーム30の一対の縦メンバ43,44と一対の横メンバ36,45とで囲まれた開口部を塞ぐように該メンバ36,43〜45の下面に固定された例えばプレート状の上側固定部材195の上面に固定されている。また、シリンダ192のロッド194は、上下方向に延設されており、その上端においてシリンダ本体193の内部を移動するピストンに固定され、下端において、上側固定部材195の下方において昇降可能に配設された例えばプレート状の下側昇降部材196に固定されている。
【0089】
この下側昇降部材196には、該下側昇降部材196から立ち上がる複数のガイドロッド197が固定されており、該ガイドロッド197に対応する位置において、該ガイドロッド197が挿通される筒状のガイド部材198が上側固定部材195に固定されている。各ガイド部材198には、ガイドロッド197が上下方向にスライド可能に挿通されており、これにより、下側昇降部材196の昇降が確実に上下方向に沿って行われるように案内される。
【0090】
旋回軸181は、上下方向に延設された固定軸部182と、該固定軸部182に例えば軸受を介して回転自在に外装された筒状部183とを有する。この筒状部183の上端は、下側昇降部材196の下面に固定されており、これにより、旋回軸181は、シリンダ192の伸縮により下側昇降部材196と共に昇降可能となっている。一方、固定軸部182の下端は、旋回時に地面に載置される接地プレート200に連結されている。この接地プレート200に対して固定軸部182の下端はフローティングジョイント199を介して連結されている。そのため、接地プレート200は、固定軸部182に対して全ての角度に揺動可能となっている。そのため、接地プレート200は傾斜面にも安定して載置される。
【0091】
図5及び図15に示すように、キャスタ184は、昇降機構202を介してベースフレーム30に固定されており、この昇降機構202は油圧シリンダ204を有する。このシリンダ204のシリンダ本体205は、例えばプレート状の上側固定部材207の上面に固定されている。この上側固定部材207は、平面視においてベースフレーム30の一対の縦メンバ39,40(または37,38)と横フレーム33と横メンバ42(または41)とで囲まれた開口部を塞ぐように配設され、横フレーム33の下面と横メンバ42(または41)の下面とにスペーサ208を介して固定されている。前記シリンダ204のシリンダ本体205は上側固定部材207の上面に固定されている。また、シリンダ204のロッド206は、上下方向に延設されており、その上端においてシリンダ本体205の内部を移動するピストンに固定され、下端において、上側固定部材207の下方において昇降可能に配設された例えばプレート状の下側昇降部材209に固定されている。
【0092】
この下側昇降部材209には、該下側昇降部材209から立ち上がる複数のガイドロッド210が固定されており、該ガイドロッド210に対応する位置において、該ガイドロッド210が挿通される筒状のガイド部材212が上側固定部材207に固定されている。各ガイド部材212には、ガイドロッド210が上下方向にスライド可能に挿通されており、これにより、下側昇降部材209の昇降が確実に上下方向に沿って行われるように案内される。
【0093】
キャスタ184は下側昇降部材209の下面に固定されており、これにより、下側昇降部材209と共に昇降可能となっている。図13に示すように、キャスタ184は、平面視において旋回軸181とキャスタ184とを結ぶ仮想の直線に対して直角な方向に転動可能な向きで設けられている。
【0094】
上記のシリンダ192,204が完全に収縮した状態において、接地プレート200とキャスタ184とは地面から離間する所定高さに退避するようになっている。一方、シリンダ192,204が所定量だけ伸長すると接地プレート200とキャスタ184とは地面に載置され、接地プレート200とキャスタ184とが地面に載置された状態でシリンダ192,204が更に伸長すると、シリンダ本体193,205が上昇すると共に、これらのシリンダ本体193,205が取り付けられたベースフレーム30と共に台車4がリフトアップされて、この台車4の走行用車輪6〜9が地面から離間する。このとき、芝刈り車2は、接地プレート200と一対のキャスタ184の3点のみで接地された状態となり、キャスタ184を転動させることにより、旋回軸181を中心として芝刈り車2を旋回させることが可能になる。
【0095】
図13に示すように、旋回機構180による芝刈り車2の旋回には、左右のレール401,402を跨ぐように環状に連結した状態で地面に敷設される複数のパネル248,250が用いられる。
【0096】
具体的には、先ず、レール401,402上で芝刈り車2を停車させ、旋回軸181とキャスタ184とを所定高さに退避させた状態のままで、左右の前輪6,7の間で且つキャスタ184の下方の地面にパネル248を敷設する。このパネル248の敷設後、リフトアップ手段186の昇降機構190,202により旋回軸181とキャスタ184とを下降させて地面に載置すると共に、走行用車輪6〜9が地面から離間するように台車4をリフトアップする。このリフトアップ完了後、キャスタ184の旋回軌道に沿って、残りのパネル250を環状に連結させながら地面に敷設する。全てのパネル248,250の敷設後、芝刈り車2の進行方向を逆転させるように旋回軸181を中心として芝刈り車2を旋回させる。このとき、芝刈り車2は、旋回軸181とキャスタ184の3点のみで接地しているため、芝刈り車2の旋回作業を手動で容易に行うことができる。また、このとき、キャスタ184は、レール401,402を跨いで敷設されたパネル248,250上を転動するため、レール401,402の上を通過する際のがたつきを抑制できる。この旋回完了後、リフトアップ手段186の昇降機構190,202により走行用車輪6〜9を接地させると共に、旋回軸181とキャスタ184とを所定の退避高さまで上昇させた後、地面からパネル248,250を除去することで、芝刈り車2の旋回作業が終了する。
【0097】
この旋回作業により、芝刈り車2は、旋回前とは逆方向に走行可能となる。したがって、芝刈り車2を軌道400の往路の終点まで走行させながら芝刈り作業を行った後、旋回機構180により芝刈り車2の進行方向を逆転させることで、軌道400の復路においても芝刈り車2による芝刈り作業を行うことができる。
【0098】
[その他の装備]
上記で説明した搭載機器以外にも、芝刈り車2には種々の機器が搭載されており、例えば、図1及び図3に示すように、上述した各種油圧シリンダや油圧式モータ等の油圧アクチュエータに油圧を供給するための油圧ユニット218が搭載されている。油圧ユニット218は、油を貯留するためのオイルタンク220と、該オイルタンク220内のオイルを送り出す油圧ポンプ222とを有する。この油圧ポンプ222は図示しない電動モータにより駆動され、該電動モータは、後述の電源354から供給される電力により駆動される。なお、オイルタンク220は、設置台224を介してベースフレーム30上に固定され、油圧ポンプ222はオイルタンク220上に設置されている。また、ベースフレーム30上には、芝刈り車2の種々の搭載機器を操作するための操作盤226も設置されている。
【0099】
[牽引用車両]
以上のように構成された芝刈り車2は非自走式の車両であり、図16に示すように、芝刈り車2は、レール401,402上を自走可能な牽引用車両300により牽引されて使用可能である。そのため、レール走行用の動力を芝刈り車2に搭載する必要がなく、芝刈り車2の製造コストの低減が図られている。この牽引用車両300と芝刈り車2とは、連結シャフト230を介して連結される。具体的には、連結シャフト230の一端が牽引用車両300の後端部にピン232で固定され、同様に、連結シャフト230の他端が芝刈り車2の台車4の前端部に図示しないピンで固定されることで、牽引用車両300の後部に芝刈り車2が連結され、これにより、牽引用車両300により芝刈り車2を牽引可能となっている。
【0100】
本実施形態において、牽引用車両300には、旅客車両として使用されていた鉄道車両を改造したものが使用されている。このように牽引用車両300として既存の鉄道車両を使用することで、イニシャルコストの低減が図られている。
【0101】
また、この牽引用車両300は、軌道400上の芝410に散水するための散水装置310を搭載しており、レール401,402に沿って軌道400を走行しながら散水装置310により軌道400上の芝410に散水できるようになっている。なお、牽引用車両300を散水車として使用する際は、重量負荷を軽減するために芝刈り車2を切り離して単独で使用することが好ましい。
【0102】
図17及び図18に示すように、散水装置310は、貯水タンク316と、該貯水タンク316に給水するための給水口318,320と、軌道400上の芝410に向けて水を噴射する複数の散水用ノズル312と、レール溝403,404に入り込んだ火山灰や砂等の異物を除去するために該レール溝403,404内に向けて水を噴射する洗浄用ノズル314と、貯水タンク316から各ノズル312,314へ水を導くための配管322とを有する。なお、牽引用車両300が芝刈り車2を牽引して走行するときは、貯水タンク316を空にすることで重量を低減しておくことが好ましい。
【0103】
散水用ノズル312は、牽引用車両300の前面部と後面部のそれぞれにおいて、車幅方向に複数並べて設けられており、軌道400上の芝410がレール401,402の内側および外側の所定幅に亘ってむら無く散水されるようになっている。また、洗浄用ノズル314は、牽引用車両300の前面部と後面部のそれぞれにおいて、左右のレール溝403,404に対応して左右一対設けられている。洗浄用ノズル314は散水用ノズル312よりも低い位置に配設されており、散水用ノズル312からレール溝403,404へ水が集中的に噴射されるようになっている。
【0104】
芝410への散水またはレール溝403,404の洗浄を行う際は、牽引用車両300の進行方向前側または後側のいずれか一方の散水用ノズル312又は洗浄用ノズル314が使用される。これらのノズル312,314は牽引用車両300の前後それぞれに設けられているため、牽引用車両300は、軌道400の往路または復路のいずれを走行するときも上記の散水および洗浄を行うことができる。
【0105】
配管322の上流部340には第1バルブ324が設けられており、この第1バルブ324の下流側において、配管322は、前側のノズル312,314へ水を導く前側配管部342と、後側のノズル312,314へ水を導く後側配管部344とに分岐している。前側配管部342及び後側配管部344の各上流部には第2バルブ326が設けられており、前後の各配管部342,344は、第2バルブ326の下流側において、散水用のノズル312に接続された散水用配管部346と、洗浄用のノズル314に接続された洗浄用配管部348とに分岐している。散水用配管部346と洗浄用配管部348との分岐点には切換バルブ330が設けられている。また、散水用配管部346には第3バルブ332が設けられ、洗浄用配管部348には第4バルブ334が設けられている。
【0106】
このように、牽引用車両300には散水装置310が搭載されているため、該牽引用車両300をレール401,402に沿って走行させながら軌道400上の芝410への散水作業またはレール溝403,404の洗浄作業を効率的に行うことができる。また、牽引用車両300は上記の牽引機能と散水機能とを兼ね備えているため、軌道400上の芝410の保守管理に要する設備コストを抑制することができる。
【0107】
また、図18に示すように、牽引用車両300には、芝刈り車2の各種搭載機器及び散水装置310の種々の動作を制御するための制御盤352が搭載されている。さらに、牽引用車両300には、芝刈り車2の各種搭載機器(電動モータ等)に電力を供給するための電源354が搭載されている。よって、芝刈り車2を使用する際、電力供給を必要とする芝刈り車2の搭載機器は、牽引用車両300に搭載された電源354に電気的に接続される。
【0108】
またさらに、牽引用車両300の前後の運転席には、芝刈り車2の各種搭載機器及び散水装置310を操作するための操作盤350が設けられている。この操作盤350は前後いずれの運転席にも設けられているため、牽引用車両300が軌道400の往路または復路のいずれを走行する際も、牽引用車両300の進行方向に応じた一方の操作盤350を用いて、芝刈り車2の各種搭載機器または散水装置310を操作することができる。具体的に、芝刈り車2の各種搭載機器の操作は、後側の運転席の操作盤350を用いて行われ、散水装置310の操作は、使用されるノズル312,314に近い運転席の操作盤350を用いて行われる。
【0109】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0110】
例えば、上述の実施形態では、芝刈り機としてリールモアを用いる構成について説明したが、本発明には、リールモア以外の芝刈り機を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、本発明によれば、鉄道車両用の軌道上の芝を効率的に刈ることが可能となるから、鉄道関連産業の分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0112】
2:芝刈り車、4:台車、6,7:走行用の前輪、8,9:走行用の後輪、52〜55:リールモア(芝刈り機)、60,100:リールモアの昇降機構、84:リールモアのスライド機構、130:収納箱、132:収納箱の開閉扉、140:収納箱のスライド機構、172:ブロア(吸引装置)、180:旋回機構、182:旋回軸、184:キャスタ、186:リフトアップ手段、300:牽引用車両、310:散水装置、400:軌道、401,402:レール、403,404:レール溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の軌道に敷設された左右のレール上を走行可能な台車と、
該台車に取り付けられ、該台車の走行に従って左右のレールの内側と外側の所定の範囲とに亘り、所定幅で芝を刈り込む芝刈り機と、
前記台車上に設置され、前記芝刈り機によって刈り取られた芝を収容する収納箱と、
前記芝刈り機で刈り取られた芝を前記収納箱へ吸い込む吸引装置とを有することを特徴とする芝刈り車。
【請求項2】
前記台車は走行用の前輪と後輪とを有し、前記芝刈り機は、前記前輪と後輪との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の芝刈り車。
【請求項3】
前記左右のレールの外側の芝を刈り込む芝刈り機は、車幅方向にスライド可能に前記台車に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の芝刈り車。
【請求項4】
前記収納箱は、前記台車上から車幅方向の一側方にスライド可能に設置されていると共に、前記一側方側の面に該収納箱に収容した芝を排出するための開閉扉が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の芝刈り車。
【請求項5】
軌道上での進行方向を逆転させるための旋回機構を有し、
該旋回機構は、
旋回中心となる旋回軸と、
該旋回軸を中心として旋回するときに前記軌道上を転動する旋回用の車輪と、
旋回時に、前記旋回軸と旋回用車輪とを下降させてこれらを接地させると共に、該旋回軸及び旋回用車輪が接地した状態で前記台車を浮上させることにより前記走行用車輪をレールからリフトアップさせるリフトアップ手段とを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の芝刈り車。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の芝刈り車と、
該芝刈り車に連結可能であり、該芝刈り車を牽引しながら前記レール上を自走可能な牽引用車両とを有することを特徴とする芝刈りシステム。
【請求項7】
前記牽引用車両に、前記軌道上の芝に散水するための散水装置が搭載されていることを特徴とする請求項6に記載の芝刈りシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−234634(P2011−234634A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106639(P2010−106639)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(391004241)大阪車輌工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】