説明

芳香族ポリアミド組成物および該組成物から製造した物品

【課題】反射体を製造するのにとりわけ良好に適し、且つ従来技術ポリマー組成物を上回る種々の利点、とりわけ、熱およびUV線への同時暴露に対する増大した耐性を、他の諸性質の全てを高レベルで維持しながら与えるポリマー組成物を提供すること。
【解決手段】芳香族ポリアミド;5質量%(組成物の総質量基準で)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料、および/または0.003質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤;および、1質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを含むポリマー組成物。該ポリマー組成物を含む物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本発明は、本明細書に参考として合体させる2004年7月01日に出願した米国出願第60/584,134号の利益を請求する。
(技術分野)
本発明は、反射体を製造するのにとりわけ良好に適するポリマー組成物、該組成物から製造した物品、および必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーのポリマー組成物の添加剤としての特定目的への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード装置(LED)は、光、とりわけ可視光線を発出する機器である;これらの装置は、多くの場合、反射板上に発光装置を取り付け、該装置をエポキシ樹脂等によりシーリングすることによって製造される。通常、LEDは、小型で軽量であり耐振動性であり、高い白色性および反射率を有することがとりわけ求められる。
望ましくは、LED類の反射板、要するに、これら反射板を製造するポリマー組成物は、とりわけ、光の高反射率(一般的に可視光線の)、高白色性、良好な加工性(例えば、良好な成形性)、高寸法安定性(とりわけ、低線膨張係数)、高機械的強度(小さい歪みにおいてさえでの反射性能低下の可能性故に)、高い熱変形温度および高耐熱性(例えば、ハンダ付け等による高温に暴露されたときの低変色および低反射率損減)のような幅広い1連の条件を満たさなければならない。
【0003】
反射板用の各種従来技術の組成物は、EP 1 466 944 A号 (Otsuka K.K.K.に付与された)の背景の項に記載されている。Otsukaによって正確に指摘されているように、これらの組成物のうちで、上述の条件の全てを満たすものはないので、満足し得るものはない;一方、EP 1 466 944 A号に記載されているようなOtsukaによって発明された組成物 (以下、Otsuka組成物と称する)は、これらの条件を満たしているようである。
ある種のOtsuka組成物は、特定の光線、即ち、UV発生源から発する紫外(UV)線を反射する反射体を製造するのに適するポリマー組成物に関し;そのような組成物は、チタン酸カリウム繊維のようなUV線を反射し得る特定の充填剤をベースとしている。Otsukaはチタン酸塩繊維系組成物が可視光線を反射する反射体を製造するのにも使用され得ることを教示しているものの、これらの組成物は、実際のところ、健康および環境的見地から多くの場合その使用が嫌悪されている。事実、チタン酸カリウム繊維の形態は、アスベスト繊維の形態に極めて類似している;チタン酸カリウムは発がん性であると通常みなされており、徹底した注意がその取扱いにおいて必要である。
【0004】
従って、本出願人の見解にとって実用上より興味あるのは、可視光線を反射する反射体を製造するのに適するある種の他のOthuka組成物である;該組成物は、30〜95質量%の少なくとも20モル%の芳香族モノマーを含有する半芳香族ポリアミドと5〜70質量%のウォラストナイトを含有する。Otsukaが教示しているように、反射性をさらに改良するためには、ウォラストナイトを二酸化チタンと組合せて使用することが望ましい。
さらに正確には、EP 1 466 944 A号の実施例3は、50質量%のAMODELR 4000ポリフタルアミド、30質量%のウォラストナイトおよび20質量%の二酸化チタンからなる組成物を記載している。EP 1 466 944 A号の背景の項に提示されている組成物よりも上述した条件の全てを本質的に満たす点ではるかに実用性があるものの、この組成物等は、ある種の用途、とりわけ、野外用途において使用する或いは使用しがちな可視光線を反射する反射体においては依然として不満足である。その主な理由は、Otsukaの特許出願の実施例3に従う組成物等は、日光に含まれる、とりわけ熱と日光に同時に曝されたときのUV線に対して貧弱な耐性しか有さず、この貧弱な耐性は可視スペクトル中での反射率の劇的な損減をもたらすことである。熱およびUV線への同時暴露後に高レベルの反射率を維持する問題は、420nm〜520nmに由来する可視光線範囲においてとりわけ深刻であることが判明している。この問題に対する解決法を見出すことは、とりわけ二酸化チタンが、反射率を増大させるのに有用であり且つUV線を吸収するものの、ポリマー組成物の分解の促進にも寄与し得ることから厄介であろう。
【0005】
Otsukaの特許出願の実施例3に従う組成物等が依然として不満足であるもう1つの理由は、これらの従来技術組成物から製造した反射体は、場合によっては、所望するよりも低い耐衝撃性しか有さないことである。
Otsukaの特許出願の実施例3に従う組成物等が依然として不満足であるさらにもう1つの理由は、これらの従来技術組成物から製造した反射体は、場合によっては、所望するほどには規則的でない表面特性を有することである。
【発明の概要】
【0006】
(発明の開示)
従って、本発明の目的は、反射体を製造するのにとりわけ良好に適し、且つ従来技術ポリマー組成物を上回る種々の利点、とりわけ、熱およびUV線への同時暴露に対する増大した耐性を、他の諸性質の全てを高レベルで維持しながら与えるポリマー組成物を提供することである。
この目的において、本発明は、下記を含むポリマー組成物に関する:
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;および、
‐1質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマー。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】結晶質ケイ酸塩であるNYGLOSR 8ウォラストナイト粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】結晶質ケイ酸塩であるNYGLOSR 8ウォラストナイト粒子のもう1つの電子顕微鏡写真である。
【図3】もう1つの結晶質ケイ酸塩であるNYADR 8ウォラストナイト粒子の電子顕微鏡写真である。
【図4】上面LEDの1つの実施態様の断面図である。
【図5】パワーLEDの1つの実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記ポリマー組成物は、1種の芳香族ポリアミドを含有し得る。また、上記ポリマー組成物は、数種の芳香族ポリアミドを含有し得る。
本発明の目的においては、“芳香族ポリアミド”とは、少なくとも1種のジ酸と少なくとも1種のジアミン間の重縮合反応によって形成された芳香族繰返し単位を50モル%よりも多く含む任意のポリマーを示すものとする。
芳香族繰返し単位の芳香族性は、上記ジ酸および/またはジアミンに由来し得る。芳香族ジ酸の非限定的な例は、フタル酸およびナフタレンジカルボン酸類である。メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンは、芳香族ジアミンの例である。
【0009】
第1の好ましい芳香族ポリアミド群は、PMXSA類、即ち、少なくとも1種の脂肪族ジ酸とメタキシリレンジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位を50モル%よりも多く含む芳香族ポリアミド類からなる。脂肪族ジ酸は、とりわけ、アジピン酸、セバシン酸または1,10-デカン二酸であり得;アジピン酸が好ましい。適切なPMXDA類は、Solvay Advanced Polymers, L.L.C社からIXEFR PMXDA類として入手し得る。
第2の好ましい芳香族ポリアミド群は、ポリフタルアミド類、即ち、少なくとも1種のフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位を50モル%よりも多く含む芳香族ポリアミド類からなる。フタル酸は、とりわけ、o-フタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸であり得る。脂肪族ジアミンは、とりわけ、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-オクタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミンまたは1,4-ジアミノブタンであり得;以下で特に断らない場合を除いては、C6ジアミン、とりわけヘキサメチレンジアミンが好ましい。適切なポリフタルアミド類は、とりわけ、Solvay Advanced Polymers, L.L.C社からAMODELR ポリフタルアミド類として入手し得る。
【0010】
ポリフタルアミド類のうちでは、ポリテレフタルアミド類が好ましい。本発明の目的においては、ポリテレフタルアミド類は、テレフタル酸と少なくとも1種のジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位を50モル%よりも多く含む芳香族ポリアミド類として定義する。
第1の好ましいポリテレフタルアミド群は、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位から本質的になるポリテレフタルアミド類からなる[群(I)]。群(I)のポリテレフタルアミド類に関するときの例外としては、好ましいジアミンは、C6ジアミンではなくて、C9ジアミン、とりわけ1,9-ノナンジアミンである。
第2の好ましいポリテレフタルアミド群は、テレフタル酸、イソフタル酸および少なくとも1種の脂肪族ジアミン間の重縮合反応により形成された繰返し単位から本質的になるポリテレフタルアミド類からなる[群(II)]。
好ましくは、群IIのポリテレフタルアミド類は、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(II-a)およびイソフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(II-b)とから、%で表して60:40〜80:20範囲のモル比(II-a):(II-b)で本質的になる。
【0011】
第3の好ましいポリテレフタルアミド群は、テレフタル酸、少なくとも1種の脂肪族ジ酸および少なくとも1種のジアミン間の重縮合反応により形成された繰返し単位から本質的になるポリテレフタルアミド類からなる[群(III)]。脂肪族ジ酸は、とりわけ、アジピン酸、セバシン酸または1,10-デカン二酸であり得;アジピン酸が好ましい。
好ましくは、群IIIのポリテレフタルアミド類は、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(III-a)および少なくとも1種の脂肪族ジ酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(III-b)とから、%で表して55:45〜75:25範囲のモル比(III-a):(III-b)で本質的になる。
【0012】
第4の好ましいポリテレフタルアミド群は、テレフタル酸、イソフタル酸、少なくとも1種の脂肪族ジ酸および少なくとも1種のジアミン間の重縮合反応により形成された繰返し単位から本質的になるポリテレフタルアミド類からなる[群(IV)]。脂肪族ジ酸は、とりわけ、アジピン酸、セバシン酸または1,10-デカン二酸であり得;アジピン酸が好ましい。
好ましくは、群IVのポリテレフタルアミド類は、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(IV-a)、イソフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(IV-b)、および少なくとも1種の脂肪族ジ酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(IV-c)とから、%で表して55:45〜75:25範囲のモル比(IV-a):[(III-b) + (IV-c)]で本質的になる。さらにこれらのポリテレフタルアミド類においては、モル比(IV-b):(IV-c)は、好ましくは、60:40〜85:15の範囲である。
【0013】
上記芳香族ポリアミドは、好ましくは、無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸と少なくとも1種のジアミンとの重縮合反応により形成された繰返し単位(ポリイミドタイプ繰返し単位)を含まない。
上記芳香族ポリアミドは、通常、半結晶質である。上記芳香族ポリアミドは、通常、融点を有する。上記芳香族ポリアミドは、有利には275℃よりも高い、好ましくは290℃よりも高い、より好ましくは305℃よりも高い、さらにより好ましくは320℃よりも高い融点を有する。さらに、上記芳香族ポリアミドは、有利には350℃よりも低い、好ましくは340℃よりも低い、より好ましくは330℃よりも低い融点を有する。
【0014】
芳香族ポリアミドの融点は、当業者から公知の任意の適切な方法によって測定し得る;極めて多くの場合、上記融点は、示差走査熱量測定法によって測定する。正確には、本出願人は、Universal V3.7A Instruments DSC熱量計を使用して、上記芳香族ポリアミドの融点を測定した。本目的においては、上記熱量計が較正サンプルによって良好に較正されるかを事前にチェックした。その後、融点を測定すべき芳香族ポリアミドを以下の加熱/冷却サイクルに供した:室温から350℃までの10℃/分の速度での1回目の加熱、次に、350℃から室温までの20℃/分の速度での冷却、その後、室温から350℃までの10℃/分の速度での2回目の加熱。融点は、2回目の加熱中に測定した。溶融は、DSCスキャン上に負のピークとして現れる吸熱性1次転移である。融点は、有利には、熱流量曲線に関する構築手順によって測定する:ピークのいずれかの面上の屈折点でのピークに接する2本の線の交差点が、ピーク温度、即ち、融点を構成する。
芳香族ポリアミドは、ポリマー組成物中に、有利には30質量%よりも多い、好ましくは40質量%よりも多い、さらにより好ましくは50質量%よりも多い量(ポリマー組成物の総質量基準)で含ませる。
【0015】
ネソケイ酸塩の非限定的な例は、カンラン石[(Mg,Fe)2SiO4]、クドカンラン石(Mg2SiO4)、テツカンラン石(Fe2SiO4)、エーライト[Ca3(SiO4)O)]、ビーライト(Ca2SiO4)、コウチュウ石、ケイセン石およびランショウ石 [3つ全てが式Al2O(SiO4)を有する]、フェナス石、トパーズおよびトーマス石である。
ソロケイ酸塩の非限定的な例は、ブドウ石、イキョク鉱[Zn4(Si2O7)(OH)2]および式CaMg(Si2O7)の化合物である。
シクロケイ酸塩は、3個(Si3O9)-6、4個(Si4O12)-8、6個(Si6O18)-12または9個(Si9O27)-18の単位の環を形成するように通常結合している4面体を有するケイ酸塩である。リョクチュウ石は、シクロケイ酸塩である。
テクトケイ酸塩の非限定的な例は、石英、クリストバル石、リンケイ石、オルソース(orthose) [K(AlSi3O8)]、アノーサイト[Ca(Al2Si2O8)]およびセルシアン[Ba(Al2Si2O8)]である。
【0016】
イノケイ酸塩は、通常鎖形状の結晶構造を通常有する。イノケイ酸塩は、とりわけ、輝石[通常単鎖形状の結晶構造(SiO3)-2を有する]および角閃石[通常二重鎖形状の結晶構造(Si4O11)-6を有する]に細分類される。
輝石類の非限定的な例は、トウ輝石[CaMg(SiO3)2]、リチア輝石[LiAl(SiO3)2]、ウォラストナイト[Ca(SiO3)]、ガンカ輝石[Mg(SiO3)]、シソ輝石、ヘデン輝石、オージャイト、ペクトライト、イハク輝石、ファサ輝石、リチア輝石、ジェファーソナイト(jeffersonite)、エジリン、オンファス輝石およびヒデナイトである。
角閃石の非限定的な例は、トウ閃石[Ca2Mg5[Si4O11,(OH,F)]2]、緑閃石[Ca2(Mg,Fe)5[Si4O11,OH]2]およびホルンブレンドのようなカルシウム角閃石;グリュネ閃石およびカミントン閃石のような鉄-マグネシウム角閃石;および、グラウコファン(glaucophane)、アルベゾン閃石およびリーベック閃石のようなナトリウム角閃石である。
イノケイ酸塩は、他の結晶質ケイ酸塩よりも好ましい。輝石類は、極めて好ましい。
【0017】
結晶質ケイ酸塩は、その元素式、例えば、イキョク鉱におけるZn4Si2O9H2によってさらに特性決定し得る。
結晶質ケイ酸塩の元素式は、有利には少なくとも1種のアルカリ土類金属を含む。好ましくは、元素式は、1種以上のアルカリ土類金属を含み、該アルカリ土類金属(1種以上)は、元素式中に含ませた単なる金属(1種以上)である。このタイプの結晶質ケイ酸塩の例は、とりわけ、BaSiO3 (メタケイ酸バリウム)、Ba2Si3O7 (二ケイ酸バリウム)、Ba2SiO4 (ケイ酸二バリウム)、CaSiO3 (ケイ酸一カルシウムまたはウォラストナイト)、Ca2SiO4 (ケイ酸二カルシウム)、Ca3SiO5 (ケイ酸三カルシウム)、MgSiO3 (ガンカ輝石)、Mg2SiO4 (クドカンラン石)である。
アルカリ土類金属は、とりわけ、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムであり得る。アルカリ土類金属は、好ましくは、カルシウムである。
良好な結果は、結晶質ケイ酸塩がウォラストナイトである場合に得られた。
本発明の目的において、ウォラストナイトは、β-ウォラストナイトおよびα-ウォラストナイト(偽ウォラストナイトとも称する)エニアントロープ(eniantrope)類並びに単斜晶ウォラストナイトおよび三斜晶ウォラストナイト(パラウォラストナイトとも称する)のような、式Ca(SiO3)を有する任意の輝石を示すものとする。
ウォラストナイトは、NYCO社からNYADRまたはNYGLOSR ミネラル類としてとりわけ商業的に入手可能である。
【0018】
結晶質ケイ酸塩は、その形態によってさらに特性決定し得る。形態に関しては、結晶質ケイ酸塩は、好ましくは、針状粒子からなる。結晶質ケイ酸塩粒子の外貌は、とりわけ、数平均縦横比αによって定量し得る。αは、一般に、粒子の個々の縦横比αi(各粒子“i”を個々に捉える)の総和を粒子数で割ったものとして定義する。粒子“i”の縦横比αiは、粒子の長さLiをその直径Diで割った比である。
便宜上、粒子の長さを、場合によって、粒子の最長寸法として(或いは、より実際的な見地によれば、粒子が写真上に現れているときの、写真上の粒子投影の最長寸法として)定義し、一方、粒子の直径を、場合によって、その長さに対して垂直な粒子の最長の次の寸法として(或いは、より実際的な見地によれば、その長さに対して垂直な写真上の粒子投影の最長寸法として)定義する。
【0019】
しかしながら、画像解析ソフトウェアを使用する場合は、有利には、例えば、測定粒子が完全な円筒形状を有する場合に、円筒体の有効高さと直径に正確に相応するであろう長さと直径を与えることを目的とする長さおよび直径ついてのより複雑な定義に依存し得る。その例として、粒子の長さは、粒子を包み込む最小容積の仮想円筒体の高さとして定義し得、一方、粒子の直径は、上記仮想円筒体の直径として定義し得る(“円筒体エンベロープ法”)。実際には、写真を使用する場合、写真上の粒子の投影を粒子自体に代って捉える;最小容積の仮想円筒体を粒子の投影を包み込む最小表面の仮想矩形に置き換え、該仮想矩形の長さと幅を粒子の長さと直径として定義する(“矩形エンベロープ法”)。粒子が針状である場合、熟練者にとっては、最小表面の矩形を正しく目視検査によって測定することが一般に容易であり、その後、矩形エンベロープ法を、画像解析ソフトウェアを後述するような“マニュアルモード”にセッティングすることによって応用し得る。
【0020】
結晶質ケイ酸塩粒子の数平均縦横比は、画像解析ソフトウェアと組合せた走査電子顕微鏡(SEM)によって有利に測定した。従って、結晶質ケイ酸塩粒子を、アルミニウムスタブ上に、両面カーボン接着テープにより分散させた。金-パラジウム薄層を粒子上に適用して電子伝導度を増大させた。その後、粒子を、HITACHI社からのS-4300Field Emission Scanning Electron Microscope (FESEM)により、後方散乱電子画像法(BSE)を使用して原子コントラストを増大させて観察した[画像セッティングは、最大幅の濃淡値スペクトル(ヒストグラムストレッチ)を得るように選定した];操作距離は14.5mmであり、加速電圧は20.0kVであり、倍率は200倍であった。各サンプルの顕微鏡写真は、例えば、図1におけるようにして得られた。個々に捉えた各粒子の長さおよび直径を、SCIENTIFIC IMAGE MANAGEMENT SYSTEM社からのQUARTZ PCI画像解析ソフトウェア(バージョン 5.1)を使用して測定した。該ソフトウェアは、GELLER MICROANALYTICAL LABORARORY社からのMRS3-XYZ R14-133 NIST追跡可能認証標準を使用して好ましく較正した。該ソフトウェアを“マニュアル”モード(即ち、自動形状認識および測定を行なわない)で有利に使用した;従って、各粒子の特性寸法(例えば、“矩形エンベロープ法”において定義したような長さと直径)を、特性寸法の先端上で連続してクリックすることによって個々に測定し;その後、各粒子の各々の特性寸法について、上記ソフトウェアにより、ピクセル数を算出し、これをミクロンに変換した。視野内で完全に目視し得る粒子のみを測定し;視野の端部に付着している粒子は無視した。互いに交差している粒子は、個々に測定し;互いに交差している粒子の1個の“半分”のみしか見えない場合、この粒子は、測定しなかった。多数回の測定を行い(良好には100回よりも多く、好ましくは1000回以上)、代表的なデータを得るようにした。結果をマイクロソフトEXCELにインポートし、統計データを算出した。
結晶質ケイ酸塩は、一般に2.5〜250範囲の数平均縦横比αを有する粒子からなる。αは、好ましくは5よりも上、より好ましくは10よりも上、さらにより好ましくは少なくとも15である。さらに、αは、好ましくは50よりも下、より好ましくは30よりも下、さらにより好ましくは高くとも25である。
【0021】
優れた結果は、結晶質ケイ酸塩がNYGLOSR 8ウォラストナイトであったときに得られた。図1および2は、NYGLOSR 8ウォラストナイト粒子の写真である。NKCO社の技術文書によれば、NYGLOSR 8ウォラストナイトは、19の縦横比αを有する。一方、図3は、これもNYCO社によって製造されるNYADR 400ウォラストナイト粒子の写真である。NYADR 400ウォラストナイトは、NYGLOSR 8ウォラストナイトよりも良好でない結果を与えた;NYADR 400ウォラストナイトは、5よりも低い縦横比αを有すると報告されている。即ち、とりわけ結晶質ケイ酸塩がウォラストナイトである場合(その場合のみではないけれども)、結晶質ケイ酸塩は、好ましくは、図3の粒子の数平均縦横比よりも実質的に高い数平均縦横比を有する粒子からなり、より好ましくは、結晶質ケイ酸塩は、熟練者が目視評価するような図1および2の粒子の数平均縦横比に実質的等しい数平均縦横比を有する粒子からなる。
好ましい特定範囲内の縦横比を有する結晶質ケイ酸塩を使用することによる利点は、より高めの引張強度、引張係数および熱変形温度(所望するよりも低い縦横比を有する結晶質ケイ酸塩の使用と比較したとき)、改良された加工性、並びにより良好な表面特性(所望するよりも高い縦横比を有する結晶質ケイ酸塩の使用と比較したとき)にある。
【0022】
結晶質ケイ酸塩は、その色合によってさらに特性決定し得る。この点に関しては、結晶質ケイ酸塩は、有利には、少なくとも白っぽい特性を有する。好ましくは、結晶質ケイ酸塩は、白色特性を有する。定量的見地によれば、結晶質ケイ酸塩のASTM E97に従って測定したときのGE白色度は、好ましくは82よりも上、より好ましくは86よりも上、さらにより好ましくは88よりも上である。
結晶質ケイ酸塩は、ポリマー組成物中に、好ましくは10質量%よりも多い、極めて好ましくは15質量%よりも多い量(ポリマー組成物の総質量基準)で含ませる。さらにまた、結晶質ケイ酸塩は、ポリマー組成物中に、有利には40質量%未満、好ましくは30質量%未満、極めて好ましくは25質量%未満の量(ポリマー組成物の総質量基準)で含ませる。
【0023】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、該用語の一般的な意味におけるコポリマーである、即ち、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、少なくとも2種のモノマーから誘導した繰返し単位を含む;コポリマーの例としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフト化コポリマー、並びにランダム共重合、ブロック共重合および/またはグラフト化の各方法を組合せることによって得られたコポリマーがある。必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、好ましくは、必要に応じてグラフト化したランダムコポリマーおよび必要に応じてグラフト化したブロックコポリマーから選択する。
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、該コポリマーが90質量%よりも多い、好ましくは95質量%よりも多いオレフィンに由来する繰返し単位を含む点でオレフィン性を有する。本発明の目的に適する必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの例として以下に挙げる種々のコポリマーの化学特性から明らかなように、本明細書において使用するときの“オレフィンに由来する”なる用語は、“少なくとも1種のオレフィンに由来する”と理解すべきである。
【0024】
オレフィンとは、本明細書においては、炭素および水素原子からなるモノ-またはポリエチレン系不飽和化合物を示すものとする。オレフィン類は、とりわけ、非環式モノオレフィン、非環式ジオレフィン、環状モノオレフィン、環状ジオレフィン、芳香族モノオレフィンおよび芳香族ジオレフィンの群から選択し得る。非環式モノオレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、2-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、これらの異性体がある。非環式ジオレフィンの例としては、1,3-ブタジエンおよび1,4-ブタジエンのようなブタジエン類、α,ω-ヘキサジエン、α,ω-オクタジエン、α,ω-デカジエン、α,ω-ドデカジエン、およびこれらの異性体がある。環状モノオレフィンの例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびノルボルネンがある。環状ジオレフィンの例としては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンおよびノルボルナジエンがある。芳香族モノオレフィンの例としては、スチレン、α-メチルスチレンのようなアルキル置換スチレンがある。好ましいオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブタジエンおよびスチレンの群から選択する。必要に応じて、ブタジエン類に由来する繰返し単位は、その重合の後、必要に応じて水素化工程に供して、部分的にまたは完全にブチレン繰返し単位に転換する。
【0025】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、必要に応じて、10質量%未満、好ましくは5質量%未満のオレフィン以外のモノマーに由来する繰返し単位をさらに含み得る。オレフィン以外のモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸のエステル類(例えば、メチルアクリレートまたはn-ブチルアクリレート)、メタクリル酸のエステル類(例えば、メチルメタクリレートまたはn-ブチルメタクリレート)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸またはフマル酸のような不飽和ジカルボン酸類、不飽和ジカルボン酸のエステル類、不飽和ジカルボン酸の無水物(例えば、無水マレイン酸または無水コハク酸)、エポキシ化合物(例えば、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート)、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニルモノマー類(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンおよびパーフルオロビニルエーテル類)がある。
【0026】
ある場合には、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、1種のオレフィンと少なくとも1種のオレフィン以外のモノマーに由来し得る。そのようなコポリマーの例としては、エチレン-(メタクリル)アクリル酸コポリマーおよびそれらのアルカリ(ナトリウムのような)またはアルカリ土類(亜鉛のような)金属塩がある。より頻繁で且つ好ましい態様においては、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、少なくとも2種のオレフィン或いは少なくとも2種のオレフィンと少なくとも1種のオレフィン以外のモノマーのいずれかに由来し得る。
【0027】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、1つまたは幾つかの明確なガラス転移温度を有し得る。幾つかの明確なガラス転移温度を有し得る必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの非限定的な例は、(i) スチレン由来の繰返し単位および少なくとも1種のモノオレフィン由来の繰返し単位を含む必要に応じて官能化させたオレフィンブロックコポリマー(一般に、“必要に応じて官能化させたスチレン-モノオレフィンブロックコポリマーとして知られる)、例えば、必要に応じて無水マレイン酸をグラフトさせたSEBS、SEB、SEPSおよびSEP (Sはスチレンであり、Eはエチレンであり、Pはプロピレンであり、Bはブタジエン由来の繰返し単位の水素化によって得られたブチレンである)、および(ii) スチレン由来の繰返し単位および少なくとも1種のジオレフィン由来の非水素化繰返し単位を含む必要に応じて官能化させたブロックコポリマー(一般に、”必要に応じて官能化させたスチレン-ジオレフィンブロックコポリマー“として知られている)、例えば、必要に応じて無水マレイン酸をグラフトさせたSβ、SβS、SISおよびAβS (Sはスチレンであり、βはブタジエンであり、Iはイソプレンであり、Aはアクリロニトリルである)。上記の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、本明細書においては、全て、その官能化していない形並びにその無水マレイン酸グラフト化形において詳細に開示したように考えるべきである。
【0028】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、好ましくは、-10℃よりも低い、より好ましくは-20℃よりも低い、さらにより好ましくは-30℃よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度(次のパラグラフにおいて詳述するように、10℃/分の傾斜による2回目の加熱中にDSCによって測定した)を有する;さらにまた、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、好ましくは、-65℃よりも高いガラス転移温度(1以上)を有する。
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーのガラス転移温度(1以上)は、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定する。例えば、Mettler DSC 30熱量計を使用し得る。有利には、熱量計が較正サンプルによって良好に較正されるかを事前にチェックする。その後、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを次の冷却/加熱サイクルに供する:1回目の室温から-100℃までの20℃/分の速度での冷却、次の1回目の-100℃から+100℃までの10℃/分の速度での加熱、その後の2回目の+100℃から-100℃までの20℃/分の速度での冷却、次の2回目の-100℃から+100℃までの10℃/分の速度での加熱。ガラス転移温度は、2回目の加熱中に測定する。ガラス転移温度は、有利には、熱流量曲線上での構築手順によって測定する:転移領域よりも上の曲線への第1の接線を構築する;また、転移領域よりも下の曲線への第2の接線も構築する;2本の接線間の中間の曲線上の温度、即ち、1/2デルタCpがガラス転移温度である。
【0029】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、有利にはゴム状である。
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、好ましくは官能化されている。さらに好ましくは、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、カルボキシル基によって官能化されている。さらにより好ましくは、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、少なくとも0.1質量%から5質量%までのカルボキシル基を含む。
官能化は、とりわけ、少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーをグラフトさせるかおよび/またはランダム-またはブロック-共重合させることによって達成し得る。官能化は、好ましくは、グラフト化によって達成する。
官能性モノマーは、好ましくは、無水マレイン酸、メタクリル酸またはアクリル酸、およびこれらのアルカリ(ナトリウムのような)またはアルカリ土類(亜鉛のような)金属塩、並びに(メタ)アクリル酸エステル類のようなカルボキシル基を担持するモノマーである。より好ましくは、官能性モノマーは、無水マレイン酸である。必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーがカルボン酸基を含有する場合、これらのカルボン酸基は、共重合またはグラフト化工程の後に、アルカリまたはアルカリ土類水酸化物または塩により部分的にまたは完全に中和し得る。適切な官能化オレフィンコポリマーは、とりわけ下記の各販売元から入手可能である:
‐EXXELORR VA 1801のような、Exxon Mobil Chemical Company社からEXXELORR VAとして入手し得るペンダント無水コハク酸基を含むエチレン-プロピレンコポリマーゴム;
‐KRATONR FG1901Xのような、Kraton Polymers社からKRATONR FGとして入手し得る無水マレイン酸グラフト化スチレン/エチレン-ブチレン/スチレンブロックコポリマーゴム; ‐無水マレイン酸官能化エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴム(EPDM)、例えば、Crompton Corporation社から入手し得る1%無水マレイン酸グラフト化EPDMであるROYALTUFR 498。
【0030】
本発明のある実施態様において使用するのに適する必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、エチレンに由来する繰返し単位を含む。好ましくは、これらのコポリマーは、エチレンおよび少なくとも1種の、C3〜C12モノオレフィン類(プロピレン、1-ブテンおよび1-ヘキセンのような)およびジオレフィン類(イソプレン、1,3-ブタジエン、1,4-ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびアルケニルノルボルネン類のような)から選ばれた他のオレフィンに由来する繰返し単位を含む。より好ましくは、これらのコポリマーは、エチレンと少なくとも1種のC3〜C12モノオレフィンに由来する繰返し単位を含む。さらにより好ましくは、これらのコポリマーは、唯一の繰返し単位として、(i) エチレンと少なくとも1種のC3〜C12モノオレフィンに由来する繰返し単位、および、さらに任意構成成分としての、カルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーに由来するペンダント繰返し単位、または(ii) エチレン、少なくとも1種のC3〜C12モノオレフィンおよび少なくとも1種のジオレフィンに由来する繰返し単位、および、さらに任意構成成分としての、カルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーに由来するペンダント繰返し単位のいずれかを含む。
【0031】
本発明のある実施態様において使用するのに適する必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、スチレンに由来する繰返し単位を、下記の量で含む:
‐好ましくは5質量%よりも多い、より好ましくは10質量%よりも多い、さらにより好ましくは20質量%よりも多い量(コポリマーの総質量基準);および、
‐好ましくは60質量%よりも少ない、より好ましくは50質量%よりも少ない、さらにより好ましくは40質量%よりも少ない量(コポリマーの総質量基準)。
【0032】
好ましくは、これらのコポリマーは、スチレンと、ジオレフィン類(1,3-ブタジエン、1,4-ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびアルケニルノルボルネン類のような)およびC2〜C12モノオレフィン類(エチレン、プロピレン、1-ブテンおよび1-ヘキセンのような)から選ばれた少なくとも1種の他のオレフィンとに由来する繰返し単位を含む。より好ましくは、これらのコポリマーは、スチレンと少なくとも1種のジオレフィンに由来する繰返し単位を含む。さらにより好ましくは、これらのコポリマーは、唯一の繰返し単位として、(i) スチレンと少なくとも1種のジオレフィンに由来する繰返し単位、および、さらに任意構成成分としての、カルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーに由来するペンダント繰返し単位、または(ii) スチレン、少なくとも1種のジオレフィンおよび少なくとも1種のC2〜C12モノオレフィンに由来する繰返し単位、および、さらに任意構成成分としての、カルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーに由来するペンダント繰返し単位のいずれかを含む。上記のコポリマーにおいて、ジオレフィンに由来する繰返し単位は、水素化しなくても、部分的に水素化しても、或いは完全に水素化してもよい。最も好ましくは、上記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、唯一の繰返し単位として、スチレン、少なくとも1種のジオレフィン、少なくとも1種のC2〜C12モノオレフィンに由来する繰返し単位、および、さらに任意構成成分としての、カルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和官能性モノマーに由来するペンダント繰返し単位を含み、ジオレフィンに由来する繰返し単位は、部分的に水素化または完全に水素化されている。優れた結果は、KRATONR FG1901X、即ち、Kraton Polymers社から入手し得る約30質量%のポリスチレンブロックを含む1%無水マレイン酸グラフト化スチレン/エチレン-ブチレン/スチレンブロックコポリマーによって得られた。
本発明に従うポリマー組成物を製造するための必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、上記の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーに限定するものではない。
【0033】
必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、ポリマー組成物中に、好ましくは2質量%よりも多い、より好ましくは3質量%よりも多い、さらにより好ましくは6質量%よりも多い量(ポリマー組成物の総質量基準)で含ませる。さらにまた、必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、ポリマー組成物中に、有利には35質量%未満、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満、さらにより好ましくは12質量%未満の量(ポリマー組成物の総質量基準)で含ませる。
【0034】
白色顔料の非限定的な例としては、二硫化亜鉛(ZnS2)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタンがある。
白色顔料は、有利には、好ましくは5μm未満の重量平均粒度(等価の直径)を有する粒子形状である;それよりも大きい粒度は、組成物の諸特性に有害に影響し得るからである。好ましくは、粒子の重量平均粒度は、1μm未満である。さらにまた、粒子は、好ましくは0.1μmよりも大きい。粒子の形状は、特に限定されない;粒子形状は、丸型、フレーク状、平坦型であり得る。
白色顔料は、好ましくは二酸化チタンである。本発明の組成物において使用する二酸化チタンは、商業的に入手可能である。二酸化チタンは特に限定されず、アナターゼ形、ルチル形および単斜晶タイプのような種々の結晶形を使用し得る。しかしながら、ルチル形が、その高い反射指数およびその優れた光安定性故に好ましい。二酸化チタンは、表面処理剤で処理しても処理しなくてもよい。
好ましくは、上記ポリマー組成物は、4質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い白色顔料を含む。さらにより好ましくは、当該ポリマー組成物は、6質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い白色顔料を含む。最も好ましくは、当該ポリマー組成物は、8質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い白色顔料を含む。
さらにまた、上記ポリマー組成物は、有利には50質量%未満、好ましくは25質量%未満、さらにより好ましくは15質量%未満(ポリマー組成物の総質量基準)の白色顔料を含む。
【0035】
好ましい実施態様においては、当該ポリマー組成物は、0.003質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤をさらに含む。
蛍光増白剤は、とりわけEastman Chemicals社からEASTOBRITER添加剤として商業的に入手可能である。蛍光増白剤は、好ましくは、ベンズオキサゾール誘導体に由来する。さらにより好ましくは、蛍光増白剤は、4,4'-ビス(2-ベンズオキサゾリル)スチルベンである。
より好ましくは、上記ポリマー組成物は、0.010質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い蛍光増白剤を含む。さらにより好ましくは、当該ポリマー組成物は、0.020質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い蛍光増白剤を含む。
さらにまた、当該ポリマー組成物は、有利には1.00質量%未満、好ましくは0.25質量%未満、さらにより好ましくは0.10質量%未満(ポリマー組成物の総質量基準)の蛍光増白剤を含む。
【0036】
上記ポリマー組成物は、必要に応じて、さらなる成分、とりわけ、金型剥離剤、可塑剤、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、および上述した結晶質ケイ酸塩以外の充填剤、とりわけガラス繊維を含み得る。
これらの任意成分としての添加剤の量は、意図する特定の用途によって決まり、一般に50質量%まで、好ましくは20質量%まで、より好ましくは10質量%まで、さらにより好ましくは5質量%まで(ポリマー組成物の総質量基準)のそのようなさらなる添加剤が押出技術における通常の基準の範囲内とみなされる。
上記で詳述したようなポリマー組成物の特定の実施態様においては、2質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料からなる成分を、0.003質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤からなる成分によって置換え得る。
【0037】
従って、この特定の実施態様においては、上記ポリマー組成物は、下記を含む:
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;
‐0.003質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤;および、
‐1質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマー。
【0038】
本発明のもう1つの目的は、従来技術の物品を上回る種々の利点、とりわけ、熱およびUV線への同時暴露に対する改良された耐性を、他の全ての特性を高レベルに維持しながら与える物品、とりわけ、反射体および反射体を含むLEDを提供することである。
この目的において、本発明は、上述したようなポリマー組成物を含み、その全ての実施態様における物品に関する。
【0039】
本発明に従う物品の非限定的な例としては、電気部品類、電気ハウジング類、電気通信部品類、電子部品類、並びに電気光学部品類、例えば、発光電気化学電池および一般に発光ダイオード装置類(短縮して、“発光ダイオード類”または“LED類”)として知られる、電磁線を発出するおよび/または伝達する少なくとも1種の半導体チップを含む電気光学部品類がある。
物品は、好ましくは電気光学部品である。
さらに好ましくは、物品は、光を発出する電気光学部品(以下、“発光装置”)である。発光装置の非限定的な例は、自動車のキーレスエントリー、冷蔵庫内の照明、液晶ディスプレー装置、自動車の前面パネル証明装置、卓上スタンド、ヘッドライト、家庭用電気器具表示器および交通信号のような野外ディスプレー装置、並びにLED類である。
【0040】
さらにより好ましくは、物品はLEDである。
上記LEDは、上述したようなポリマー組成物を含む少なくとも1個の部品を含む。
好ましくは、部品の50質量%よりも多くが上記ポリマー組成物からなる(部品は、必要に応じて、とりわけ金属をさらに含有し得る;例えば、部品の内壁は、金属メッキし得る)。より好ましくは、部品の90質量%よりも多くが上記ポリマー組成物からなる。さらにより好ましくは、部品は、上記ポリマー組成物から本質的になる。最も好ましくは、部品は、上記ポリマー組成物からなる。
部品は、好ましくは、基礎ハウジング類およびヒートシンクスラグ類から選ばれる。
部品は、通常、反射体として機能する。
【0041】
LED類は、好ましくは、上面LED類、側面LED類およびパワーLED類から選ばれる。上面LEDおよび側面LED類は、通常、基礎ハウジングを含み、該ハウジングは、一般に、反射体として機能する;さらにまた、上面および側面LEDは、通常、何らのヒートシンクスラグを含まない。一方、パワーLED類は、通常、ヒートシンクスラグを含み、該スラグは、一般に、反射体として機能する;パワーLED類は、通常、基礎ハウジングをさらに含み、該ハウジングは、ヒートシンクスラグとは異なる部品である。
上面LED類は、通常、計器パネルディスプレー、ストップライトおよび方向指示器のような自動車照明用途において使用する。側面LED類は、とりわけ、例えば、携帶電話およびPDA類のような携帯器具用途において使用する。パワーLED類は、とりわけ、懐中電灯、自動車昼光ランニングライト、標識において、さらに、LCDディスプレーおよびTV類用のバックライトとして使用する。
【0042】
上面LEDの1つの実施態様を図4に示しており、図4は、該実施態様の断面図を示している。上面LED(1)は、上記ポリマー組成物を含む基礎ハウジング(2)を含む。以下で詳述するように、基礎ハウジング(2)は、反射体としても機能する。ヒートシンクスラグは存在しない。
LED(1)は、導線フレーム(3)をさらに含む。導線フレーム(3)は、基礎ハウジング(2)に含ませたポリマー組成物によって、有利には射出成形により封入されている;導線フレーム(3)は端末を含む。
基礎ハウジング(2)は、空洞(6)を提供する。LEDチップのような、電磁線を発出する半導体チップ(4)を空洞内部に取付ける。半導体チップ(4)は、一般に、接続線(5)により、導線フレーム端末に接続し、電気的に接点接続している。
透明または半透明注封材料(例えば、エポキシ、ポリカーボネートまたはシリコーン樹脂、図4には示していない)を空洞内に一般的に組入れてLEDチップ(4)を保護する。
LEDチップ(4)の外部効果を増大させる目的で、垂直でない内部領域を有する基礎ハウジング(2)の空洞(6)を前面に対して開放する形を獲得するような方法で形成させることは、常套的である(空洞の内壁の断面図は、例えば、図4に従う例示としての実施態様におけるような傾斜直線の形状、またはパラボラの形状を有し得る)。
即ち、基礎ハウジング(2)の空洞(6)の内壁(7)は、半導体チップ(4)によって横方向に発出される放射線に対する反射体として機能し、とりわけ、この放射線を基礎ハウジング(2)の前面に向けて反射する。
言うまでもないが、基礎ハウジングの空洞内に取付けるチップの数並びに基礎ハウジング内に形成させ得る空洞の数は、1個に限定されない。
【0043】
パワーLEDの1つの実施態様を図5に示しており、図5は、該実施態様の断面図を示している。パワーLED(8)は、上記ポリマー組成物を含む基礎ハウジング(2)を含む。
LED(8)は、導線フレーム(3)をさらに含み、該フレームは電気端末を含む。
また、パワーLEDは、金属(例えば、アルミニウム)であり得る或いは上記ポリマー組成物を含み得る担体、即ち、ヒートシンクスラグ(9)も含む。空洞(6)は、ヒートシンクスラグ(9)の上部に実現させる。
電磁線を発出する半導体LEDチップ(4)は、空洞(6)の底部領域上に取付けられており、一般に、チップ担持基体、即ち、ヒートシンクスラグ(9)へのハンダ接続部(10)によって固定される。ハンダ接続部(10)は、一般に、エポキシ樹脂または他の等価の接着材料である。
LEDチップ(4)は、一般に、導線フレーム(3)の電気末端に接続線(5)によって導電接続されている。
空洞(6)の内壁(7)は、有利には、空洞底部領域から前面まで続いて、LEDチップ(4)の外部効果を増大させる反射体を形成している。該反射体の内壁(7)は、例えば、直線で傾斜し得(図5に従う例示として実施態様におけるように)、或いは凹面をなし得る。
導線フレーム(3)およびヒートシンクスラグ(9)は、基礎ハウジング(2)内に封入されている。LEDチップ(4)を保護するためには、空洞は、上記で詳述した実施態様におけるように、放射線透過性、例えば、透明な注封材料(注封剤は図5には示していない)で一般に完全に充填する。
【0044】
本発明のポリマー組成物は、優れた熱伝導性を有しそれによってオプトエレクトロニクス装置によって発生する熱を容易に消散させ得るのに加え、良好な機械的性質、高熱変形温度、良好なメッキ性、導線フレームに対する良好な接着性、優れた光学特性(とりわけ、優れた初期白色性および反射率の高維持性も有することから、上述したような基礎ハウジングおよび/またはヒートシンクスラグの製造にとりわけ適する。
【0045】
上記ポリマー組成物の光学特性は、内壁が優れた反射率を有する反射体を得る目的において一般に十分に高い。
従って、本発明のもう1つの局面は、発光装置、とりわけLEDにおいて反射体として機能し得る部品に関し、該部品は、上述したようなポリマー組成物を含む。好ましくは、部品の50質量%よりも多くが上記ポリマー組成物からなる(部品は、必要に応じて、とりわけ金属を含有し得る;例えば、部品の内壁は、金属メッキし得る)。より好ましくは、部品の90質量%よりも多くが上記ポリマー組成物からなる。さらにより好ましくは、部品は、上記ポリマー組成物から本質的になる。最も好ましくは、部品は、上記ポリマー組成物からなる。
好ましくは、上記部品は、LEDの基礎ハウジングおよび/またはヒートシンクスラグを構成し得る。より好ましくは、上記部品は、LEDの基礎ハウジングかまたはLEDのヒートシンクスラグのいずれかである。
本発明に従う組成物および物品は、UV線への暴露に対して高い耐性、とりわけ、熱およびUV線への同時暴露に対する高い耐性を示し、この耐UV性は必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを含まない従来技術の組成物および物品、とりわけ、Otsukaに付与されたEP 1 466 944号の実施例3のウォラストナイト充填TiO2着色ポリフタルアミド組成物と比較したとき著しく増大している。本発明の組成物および物品の優越性は、420nm〜520nmの可視光線範囲においてとりわけ高い。従って、本発明の組成物および物品は、野外用途においてとりわけ良好に適している。
【0046】
従って、本発明のもう1つの局面は、芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用に関する。
関連する本発明の他の局面は、下記のとおりである:
‐芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物を含む物品の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用;および、
‐芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物を含み、発光装置内、とりわけLED内の反射体として機能し得る部品の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用。
【0047】
本発明の使用においては、上記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーは、好ましくは、熱およびUV線への同時暴露に対するポリマー組成物の耐性を増大させるのに使用する。
本発明の使用においては、上記ポリマー組成物は、上述したような本発明のポリマー組成物の本質的特性の1部、好ましくは全てを有利に満たす。即ち、本発明の使用に関しては、下記のとおりである:
‐上記必要に応じて官能化させたコポリマーは、1質量%よりも多い量(組成物の総質量基準、従って上記必要に応じて官能化させたコポリマー自体の質量も含む)で使用する。
‐さらにまた有利には、上記ポリマー組成物は、5質量%(組成物の総質量基準)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩をさらに含む;
‐さらにまた有利には、上記ポリマー組成物は、2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料、および/または0.003質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤をさらに含む。
本発明の使用においては、上記ポリマー組成物は、上述したような本発明のポリマー組成物の好ましい特性の1部、好ましくは全ても好ましく満たす。
本発明のポリマー組成物および物品の他の利点は、その改良された耐衝撃性に、さらにまた、より規則的な表面特性にある。
一方、本発明の組成物および物品は、LED反射体用途において所望される、とりわけ、光の高い反射性、高白色性、良好な加工性、高寸法安定性(とりわけ、低い線膨張係数)、高機械強度、高い熱変形温度および高耐熱性のような特性の全てを高レベルで維持する。
【0048】
(実施例)
組成物の調製
実施例 E1およびE2 (本発明に従う組成物)
SOLVAY ADVANCED POLYMERS社からAMODELR ポリフタルアミドとして商業的に入手し得る群(I)のポリテレフタルアミド樹脂、DU PONT社から商業的に入手し得るルチル二酸化チタン、KRATONR FG1901Xオレフィンコポリマー、潤滑剤、EASTMAN社からEASTOBRITER 添加剤として商業的に入手し得る蛍光増白剤、並びに酸化防止剤および熱安定剤を、下記の表1に示す質量比で、均質混合物が得られるまで容器内で物理的にブレンド(ドラムタンブリング)した。
その後、ブレンドした混合物を、8基のバレルを含むBerstorff ZE-25ツインスクリュー押出機の第1バレルに、重量供給機内の損減によって供給した。混合物を、バレル5の前で、溶融し、反応させ、分散させた。バレル5において、サイドスタッファー(side stuffer)により、NYCO社からNYGLOSR 8ウォラストナイトとして商業化されたウォラストナイトを、表1に示す質量比で導入した;このウォラストナイトは、重量供給機内の損減によってサイドスタッファーに計量して導入した。
ウォラストナイトは、押出機のバレル6内で、溶融混合物全体に亘って分布させた。この新たな混合物を押出機のバレル7内で吸引により脱ガスさせた。この新たな混合物をバレル8内で圧縮し、冷却した。
押出機の温度プロフィールは、バレル1における無加熱/バレル2〜5における330℃/バレル6における315℃/バレル7における300℃およびバレル8における285℃であった。
スクリュー速度は、250rpmであった。
バレル8からの押出物を冷却し、通常の装置でペレット化した。
【0049】
表1

【0050】
実施例 CE1およびCE2 (比較用組成物)
実施例 CE1:KRATONR FG1901Xオレフィンコポリマーを押出機に導入しなかった以外は、正確に実施例 E2におけるようにして進めた;上記オレフィンコポリマーは、群(III)のポリテレフタルアミドと等量で置換えた。
実施例 CE2:ウォラストナイトを押出機に導入しなかった以外は、正確に実施例 E2におけるようにして進めた;上記ウォラストナイトは、群(III)のポリテレフタルアミドと等量で置換えた。
【0051】
表2

【0052】
実施例 E3およびE4 (本発明に従う組成物)
実施例 E3およびE4においては、SOLVAY ADVANCED POLYMERS社からAMODELR ポリフタルアミドとして商業的に入手可能でもある群(IV)のポリテレフタルアミド樹脂を群(III)のポリテレフタルアミド樹脂の代りに使用した以外は、それぞれ正確に実施例 E1およびE2におけるようにして進めた。
実施例 CE3およびCE4 (比較用組成物)
実施例 CE3:KRATONR FG1901Xオレフィンコポリマーを押出機に導入しなかった以外は、正確に実施例 E4におけるようにして進めた;上記オレフィンコポリマーは、群(IV)のポリテレフタルアミドと等量で置換えた。
実施例 CE4:ウォラストナイトを押出機に導入しなかった以外は、正確に実施例 E4におけるようにして進めた;上記ウォラストナイトは、群(IV)のポリテレフタルアミドと等量で置換えた。
組成物(E1)、(E2)、(E3)および(E4) (本発明に従う)は、比較用組成物(CE1)、(CE2)、(CE3)および(CE4)を上回る幾つかの有益な特性を示しており、種々の物品、とりわけLED類の製造において有利に使用するのに適切であることが判明した。
【0053】
ポリマー組成物の評価
反射率
3つのポリマー組成物、即ち、E2 (本発明に従う)、CE1およびCE2 (比較用組成物)を深く評価した。
可視光線スペクトル(400〜700nm)内の材料の反射率は、通常の反射体を製造するのに使用する材料の最も重要な性質ではないとしても、可視光線を正確に反射すべき極めて重要な基本的性質である。
材料の反射率は、測定する波長に依存する。
本発明の目的においては、可視光線スペクトル内の%で表す材料の総反射率を下記のように示すものとする:
RT = ( R420 + R440 + R460 + R480 + R500 + R520 + R540 + R560 + R580 + R600 + R620 + R640 + R660 + R680 + R700 ):15
上記式中、Rλは、波長λにおける材料の反射率である。
反射体用途においてとりわけ興味あるのは、420〜520nm波長領域における材料の反射率である(上記領域は、青色領域に相当するので)。この範囲の反射率は、下記によって定量し得る:
R420-520 = ( R420 + R440 + R460 + R480 + R500 + R520 ):6 (%で表す)
Rλは、上記で定義したとおりである。
【0054】
初期反射率(未露光サンプルにおいて)
直径 5.08cm (2インチ)および厚さ 3.175mm (1/8インチ)を有する組成物 E2 CE1およびCE2からなるディスクを、ノズルから供給まで、それぞれ337.8℃ (640°F)、332.2℃ (630°F)、326.7℃ (620°F)および318.3℃ (605°F)の加熱器領域を有するToyo 55T射出成形機を使用して成形した。
8°の入射角での各ディスクの反射率を、BYK Gardner Color-Sphere分光光度計を使用して、波長(400〜700nm)の関数として測定した。光源として、昼光を模倣するD65標準光源を測定には使用した。観測としては、10°観測を測定には使用した。反射鏡コンポーネントは含ませたが、スペクトルのUV部分は除外した。測定は、“大”測定面積(30mm)および“大”照射面積(36mm)で実施した。
初期反射率は、成形したときの各ディスクにおいて測定した。
結果は、下記の表3に示している。
熱およびUV線への同時暴露後の反射率
その後、各ディスクを、モデルESP-400C-5のBlue MオーブンおよびHONLE UV America社から商業的に入手し得、UV源としてハロゲン化金属Fランプを備えたUVASPOT 400/T UV硬化装置を使用して、150℃およびUV線に5時間同時暴露させた。オーブンは、150℃に前以って加熱した。各ディスクをUV源から14cmの距離でおいた;フィルターは、使用しなかった。各ディスクを1時間毎に回転させ、均一な暴露を確保した。5時間の暴露後、各ディスクをティッシュペーパーで包み、反射率試験に供した。
この結果も表3に示している。
【0055】
反射率結果および考察
表3:初期反射率測定並びに熱およびUV線への同時暴露後の反射率

【0056】
試験した全てのディスクが、優れた(即ち、高い)反射率を示した。
CE2およびE2から、即ち、オレフィンコポリマーを含むポリアミド組成物から製造したディスクは、オレフィンコポリマーを含まないCE1から製造したディスクよりも良好に熱およびUV線への同時暴露に耐えていた。オレフィンコポリマーは、420〜520nm領域における反射率に関連して、熱およびUV線への同時暴露に対する耐性を増大させるのにとりわけ有効であることが注目された;このことは、反射体用途においてとりわけ興味あることである。
【0057】
従って、本発明のさらにもう1つの局面は、
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準で)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;および、
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;
を含み、モデルESP-400C-5のBlue MオーブンおよびUV源としてのハロゲン化金属Fランプを備えたUVASPOT 400/T UV硬化装置を使用して、14cmのUV源-組成物距離で何らフィルターを使用せずに150℃の熱およびUV線に5時間同時暴露させた場合に、55%よりも高い可視光線スペクトル中の総反射率RTを有し、RTが可視光線スペクトル中の反射率Rλを数平均することによって算出され、該反射率RλがBYK Gardner Color-Sphere分光光度計、D65標準光源および10°観測を使用して8°の入射角で測定される、ポリマー組成物に関する。
【0058】
本発明の最後の局面は、
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準で)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;および、
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;
を含み、モデルESP-400C-5のBlue MオーブンおよびUV源としてのハロゲン化金属Fランプを備えたUVASPOT 400/T UV硬化装置を使用して、14cmのUV源-組成物距離で何らフィルターを使用せずに150℃の熱およびUV線に5時間同時暴露させた場合に、40%よりも高い、好ましくは45%よりも高い420〜520mn波長領域中の反射率R420-520を有し、R420-520が420〜520mn波長領域中の反射率Rλを数平均することによって算出され、該反射率RλがBYK Gardner Color-Sphere分光光度計、D65標準光源および10°観測を使用して8°の入射角で測定される、ポリマー組成物に関する。
【0059】
他の諸特性
反射率以外の諸特性、即ち、引張強度、引張係数、熱変形温度、およびIZOD衝撃値を評価した。
組成物CE1およびE2から製造した試験片、即ち、ウォラストナイトを含むポリアミド組成物から製造した試験片は、ウォラストナイトを含まないCE2から製造した試験片と比較したとき、増大した引張強度および増大した引張係数を示した。
組成物CE1およびE2から製造した試験片は、ウォラストナイトを含まないCE2から製造した試験片と比較したとき、さらに、熱変形温度の上昇を示した。
組成物CE2は、とりわけその低い引張強度、その低い引張係数およびその低い熱変形温度故に、LED反射体を製造するのに通常適していない。
さらにまた、組成物CE2およびE2から製造した試験片、即ち、オレフィンコポリマーを含むポリアミド組成物から製造した試験片は、オレフィンコポリマーを含まないCE2から製造した試験片と比較したとき、増大したIZOD衝撃値を示した。
【符号の説明】
【0060】
1 上面LED
2 基礎ハウジング
3 導線フレーム
4 半導体チップ
5 接続線
6 空洞
7 空洞内壁
8 パワーLED
9 ヒートシンクスラグ
10 ハンダ接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むポリマー組成物:
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;および、
‐1質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマー。
【請求項2】
前記白色顔料が二酸化チタンである、請求項1記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、8質量%(組成物の総質量基準)よりも多い白色顔料を含む、請求項1または2記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ポリマー組成物が、0.003質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項5】
下記を含むポリマー組成物:
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;
‐0.003質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の蛍光増白剤;および、
‐1質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマー。
【請求項6】
前記蛍光増白剤が、4,4'-ビス(2-ベンズオキサゾリル)スチルベンである、請求項4または5記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ポリマー組成物が、0.020質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い蛍光増白剤を含む、請求項4〜6のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記芳香族ポリアミドがポリテレフタルアミドである、請求項1〜7のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記芳香族ポリアミドを、前記ポリマー組成物中に、50質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い量で含ませる、請求項1〜8のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記結晶質ケイ酸塩がウォラストナイトである、請求項1〜9のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記結晶質ケイ酸塩が、10よりも高い数平均縦横比αを有する粒子からなる、請求項1〜10のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記結晶質ケイ酸塩を、前記ポリマー組成物中に、15質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い量で含ませる、請求項1〜11のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーが、必要に応じて官能化させたスチレン-モノオレフィンブロックコポリマーおよび必要に応じて官能化させたスチレン-ジオレフィンブロックポリマーから選ばれる、請求項1〜12のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーが、-20℃よりも低い少なくとも1つのガラス転移温度(10℃/分の傾斜による2回目の加熱中にDSCにより測定した)を有する、請求項1〜13のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーが官能化されており、該官能化がカルボキシル基を担持する少なくとも1種のエチレン系不飽和モノマーをグラフトさせることによって達成される、請求項1〜14のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを、前記ポリマー組成物中に、3質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い量で含ませる、請求項1〜15のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを、前記ポリマー組成物中に、6質量%(ポリマー組成物の総質量基準)よりも多い量で含ませる、請求項16記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーが、前記ポリマー組成物中に、15質量%(ポリマー組成物の総質量基準)未満の量で含ませる、請求項1〜15のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項記載のポリマー組成物を含む物品。
【請求項20】
前記物品が電気光学部品である、請求項19記載の物品。
【請求項21】
前記物品がLEDである、請求項20記載の物品。
【請求項22】
請求項1〜18のいずれか1項記載のポリマー組成物を含む、発光装置内の反射体として機能可能な部品。
【請求項23】
LEDの基礎ハウジングである、請求項22記載の部品。
【請求項24】
LEDのヒートシンクスラグである、請求項22記載の部品。
【請求項25】
芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用。
【請求項26】
芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物を含む物品の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用。
【請求項27】
芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物の添加剤としての、該ポリマー組成物を含み、発光装置内の反射体として機能可能な部品の耐UV性を増大させるための少なくとも1種の必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーの使用。
【請求項28】
前記必要に応じて官能化させたオレフィンコポリマーを、熱およびUV線への同時暴露に対する前記ポリマー組成物の耐性を増大させるために使用する、請求項25〜27のいずれか1項記載の使用。
【請求項29】
前記ポリマー組成物が、請求項1〜18のいずれか1項記載のポリマー組成物である、請求項25〜28のいずれか1項記載の使用。
【請求項30】
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準で)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;および、
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;
を含み、モデルESP-400C-5のBlue MオーブンおよびUV源としてのハロゲン化金属Fランプを備えたUVASPOT 400/T UV硬化装置を使用して、14cmのUV源-組成物距離で何らフィルターを使用せずに150℃の熱およびUV線に5時間同時暴露させた場合に、55%よりも高い可視光線スペクトル中の総反射率RTを有し、RTが可視光線スペクトル中の反射率Rλを数平均することによって算出され、該反射率RλがBYK Gardner Color-Sphere分光光度計、D65標準光源および10°観測を使用して8°の入射角で測定される、ポリマー組成物。
【請求項31】
‐芳香族ポリアミド;
‐5質量%(組成物の総質量基準で)よりも多い、ネソケイ酸塩、ソロケイ酸塩、シクロケイ酸塩、テクトケイ酸塩およびイノケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の結晶質ケイ酸塩;および、
‐2質量%(組成物の総質量基準)よりも多い少なくとも1種の白色顔料;
を含み、モデルESP-400C-5のBlue MオーブンおよびUV源としてのハロゲン化金属Fランプを備えたUVASPOT 400/T UV硬化装置を使用して、14cmのUV源-組成物距離で何らフィルターを使用せずに150℃の熱およびUV線に5時間同時暴露させた場合に、40%よりも高い420〜520mn波長領域中の反射率R420-520を有し、R420-520が420〜520mn波長領域中の反射率Rλを数平均することによって算出され、該反射率RλがBYK Gardner Color-Sphere分光光度計、D65標準光源および10°観測を使用して8°の入射角で測定される、ポリマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−229439(P2012−229439A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−171937(P2012−171937)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2007−519504(P2007−519504)の分割
【原出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】