説明

苗株植付機

【課題】苗株の植付走行中において投入苗株の苗箱が空になった際に、苗株投入作業の滞りを招くことなく、苗株収納台から次の苗箱を補充してスムーズに苗株投入を継続することができる苗株植付機を提供する。
【解決手段】苗株植付機は、圃場走行可能に構成した機体と、この機体の走行とともに投入された苗株を受ける周回移送機構5を備えて圃場に植付けする植付部5,6と、この植付部5,6の後方で機体を操作するための操縦ハンドル14とを備えて構成され、上記周回移送機構5の上部には、苗株を収容した苗箱Bの保持が可能な補助台21を設け、この補助台21の縁部21eから苗箱Bを低位置で受ける上部開口型の空箱収容部22を操縦ハンドル14の側に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦ハンドルを機体後部に備えるとともに周回移送機構を備えた植付部を装荷して投入苗株を植付け走行する苗株植付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される苗株植付機が知られている。この苗株植付機は、圃場走行可能に構成した機体に投入苗株を受けるテーブル型の周回移送機構を備えて圃場に植付けする植付部、機体後部の操縦ハンドル等を備えて構成される。
この苗株植付機は、植付部のテーブル型周回移送機構の移送カップに作業者が苗株を投入すると、移送カップから苗株を植付具に受け渡すことにより植付けを行う。
【0003】
上記苗株植付機による苗株の植付走行において、作業者は、植付部の移送カップの下方にある補助台上に置いた苗箱から苗株を取り出して移送カップに投入して植付け走行し、この苗箱の苗が無くなると、別途備えた苗株収納台から次の苗箱を補助台上に補充することにより苗株の投入作業を継続することができる。
【特許文献1】特開2006−254718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、苗箱の苗が無くなって次の苗箱を苗株収納台から補充する作業は、補助台上の空箱と引き替えに行う必要があるので、空の苗箱を所定位置に移動して次の苗箱を取出して補助台上に載せるまでの間について苗株投入作業の一時的な滞りを招くという問題があった。
【0005】
解決しようとする問題点は、苗株の植付走行中において苗箱の苗株が無くなった際に、苗株投入作業の中断を招くことなく、苗株収納台から次の苗箱を補充して苗株投入作業を継続することができる苗株植付機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に構成した機体と、この機体の走行とともに投入された苗株を受ける周回移送機構により圃場に植付けする植付部と、その周回移送機構に臨んで配置した作業座席と、同植付部の後方で機体を操作するための操縦ハンドルとを備える苗株植付機において、上記周回移送機構の上部には、苗株を収容した苗箱の保持が可能な補助台を設け、この補助台の縁部から苗箱を低位置で受ける上部開口型の空箱収容部を操縦ハンドルの側に設けたことを特徴とする。
【0007】
上記苗株植付機は、作業者が投入した苗株を周回移送機構によって周回移送しつつ苗株植付け走行を行い、この時、補助台は周回移送機構の上で投入苗株の苗箱を保持し、また、空箱収容部は周回移送機構の後方の操縦ハンドル側で補助台の縁部の低位置に控え、その縁部から苗箱が押し出されるとその下方で受けて収容する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の構成により、周回移送機構の上の補助台に置いた苗箱から苗株の投入作業をすることができ、その投入作業によって苗箱が空になった時は、この苗箱を補助台の縁部から後方の操縦ハンドル側に押し出すことによって空の苗箱を空箱収容部に収容することができるので、空の苗箱について特段の収容操作等を要することなく苗株収納台から次の苗箱の補充操作を進めることが可能となるので、苗株の投入作業を中断することなく苗箱の入れ替えが可能となる。また、圃場の端で機体から降りた作業者が操縦ハンドルを把持して機体の旋回操作をするとき、そのついでに空箱収容部の空箱を圃場の外へ回収する作業を容易に行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1、図2は、それぞれ本発明に係る後部ハンドル式苗株植付機の側面図、平面図である。なお、以下の図示例についての説明で前又は後というときは、エンジン側を「前」、操縦ハンドル側を「後」とし、右又は左というときは、機体後部において機体前部を向いて立つ作業者から見て右手側を「右」とし、左手側を「左」とする。
【0010】
苗株植付機は、左右の駆動輪2、2と機体の先端を案内支持する左右の前輪3、3とを備えた機体フレーム4により圃場走行が可能な機体を構成する。その機体フレーム4には投入苗株を圃場に植付けるための植付部を装荷し、この植付部は、作業者から受けた苗株を所定位置まで周回移送するテーブル状の周回移送機構5と、この周回移送機構5から苗株を受けて圃場に植付けする植付機構6,6と、この植付機構6,6の下方で埋め戻しする左右の鎮圧輪8,8とから構成される。
【0011】
また、機体フレーム4には、その前部のエンジン一体の変速伝動部11を備えて走行速度を調節可能に構成し、この変速伝動部11の上方で植付部5、6の前方に周回移送機構5に向く作業座席12や、その近傍で苗株を収納する苗箱枠による苗株収納台13を搭載する。同機体フレーム4の後部には操縦ハンドル14を延設する。この操縦ハンドル14は、押し下げ操作により機体前部を浮かして方向転換操作を可能に構成するとともに、エンジンスロットル、走行クラッチ、植付クラッチ等の操作系を集中配置する。その他に、機体フレーム4に畝高センサ17とその清掃用ブラシ18、後部ローラ19,19等を設ける。
【0012】
上記変速伝動部11は、その両側に左右の駆動輪2、2に伝動しつつ上下に回動可能なアーム状の左右の走行伝動支持部15,15を備えて機体の支持高さを調整可能に構成するとともに、植付部の周回移送機構5と植付機構6,6に走行同期駆動用動力を供給するべく連結する。
【0013】
(周回移送機構)
周回移送機構5について詳細に説明すると、周回移送機構5は、作業者が投入した苗株を周回移送する多数の移送カップ5c…を周回連鎖状に備えて上部をテーブル状に構成し、その移送カップ5c…の底蓋5bを開閉可能に構成して所定位置で移送苗株を植付機構6に投下して植付けをする。この周回移送機構5の上部には苗株入の苗箱の保持が可能な補助台21を作業座席12側に傾斜して構成するとともに、この補助台21の縁部21eから苗箱Bを低位置で受ける上部開口箱枠による空箱収容部22を操縦ハンドル14側に構成する。
【0014】
上記構成の苗株植付機は、作業者が投入した苗株を周回移送機構5によって周回移送しつつ苗株植付け走行を行い、この時、補助台21は周回移送機構5の上で投入苗株の苗箱Bを保持し、また、空箱収容部22は周回移送機構5の後方の操縦ハンドル14の側で補助台21の縁部21eの低位置に控えて構成することにより、縁部21eから苗箱Bが押し出されるとその下方で受けて収容する。
【0015】
したがって、周回移送機構5の上の補助台21に置いた苗箱Bから苗株を取出して投入作業をすることができ、補助台21上の苗箱が苗株の投入作業によって空になった時は、この苗箱を補助台21の縁部21eから後方の操縦ハンドル14の側に押し出すことによって空の苗箱を空箱収容部22に収容することができるので、空の苗箱について特段の収容操作等を要することなく苗株収納台13から次の苗箱の補充操作を進めることが可能となるので、苗株の投入作業を中断することなく苗箱の入れ替えが可能となる。また、圃場の端で機体から降りた作業者が操縦ハンドル14を把持して機体の旋回操作をするとき、そのついでに空箱収容部22の空箱Bを圃場の外へ回収する作業を容易に行うこともできる。
【0016】
(後部ローラ)
左右の後部ローラ19,19は、操縦ハンドル14の両側方に支持高さ調節可能に、かつ、トレッドに合わせて位置調節可能に構成し、また、転動を止めるロック機構19Sをそれぞれに設ける。この後部ローラ19,19は、苗株植付機を搬送するトラックに苗株植付機を積み卸しする際に、荷台と地面との間に掛け渡した傾斜板の傾斜に合わせて支持高さを調節することにより、苗株植付機を安定して積み込むことができる。また、ローラ19,19の転動をロック機構19Sで規制した上でスタンドとして機体を支持することにより苗株植付機のトレッド調節作業をすることができる。
【0017】
(底蓋洗浄装置)
周回移送機構5には、苗株が全部落ちた後の周回位置に底蓋洗浄用タンク31を設ける。詳細には、図3の要部拡大側面図(a)に示すように、給水ホース32を潅水ポンプから分岐して底蓋洗浄用タンク31に接続し、切替バルブ32vでホッパーと切替えて底蓋洗浄用タンク31に給水することにより、移送カップ5cの底蓋5bを洗浄してその泥を落とすことができる。また、別例として、図3(b)の拡大側面図に示すように、移送カップ5cの底蓋5bに給水ホース32からノズル32nで直接洗浄することにより泥を落とすことができる。
【0018】
その他に、図4の拡大平面図(a)とその側面図(b)に示すように、底蓋5bを挟んで泥を落とす泥落とし棒33a、33bを設ける。底蓋5bは横に開くように構成し、開いた底蓋5bは泥落とし棒33bで閉じるように構成する。
【0019】
(センサ用ブラシ)
畝高センサ17の清掃用ブラシ18は、変速伝動部11から片側方(図例は右側)の走行伝動支持部15に延びる車軸駆動シャフト15aから下方に伝動軸18aを分岐して駆動する。
【0020】
(鎮圧輪)
左右の鎮圧輪8,8は、図5の正面図(a)と側面図(b)に示すように、それぞれ、板状に構成した複数の板状輪8a…を重ね、その枚数を変更可能に構成する。板状輪8a…の枚数を変更することにより、面圧を変えて鎮圧力を調節することができる。また、間隔を空けることにより、株元P1と端P2の位置の間で鎮圧位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る後部ハンドル式苗株植付機の側面図である。
【図2】図1の後部ハンドル式苗株植付機の平面図である。
【図3】底蓋洗浄部の要部拡大側面図(a)および別構成例の側面図(b)である。
【図4】底蓋洗浄部のその他の構成例の拡大平面図(a)とその側面図(b)である。
【図5】鎮圧輪の正面図(a)と側面図(b)である。
【符号の説明】
【0022】
2 駆動輪
3 前輪
4 機体フレーム
5 周回移送機構(植付部)
6 植付機構(植付部)
12 作業座席
13 苗株収納台
14 操縦ハンドル
18 清掃用ブラシ
19 後部ローラ
21 補助台
21e 縁部
22 空箱収容部
B 苗箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能に構成した機体と、この機体の走行とともに投入された苗株を受ける周回移送機構(5)により圃場に植付けする植付部(5,6)と、その周回移送機構(5)に臨んで配置した作業座席(12)と、同植付部(5,6)の後方で機体を操作するための操縦ハンドル(14)とを備える苗株植付機において、
上記周回移送機構(5)の上部には、苗株を収容した苗箱(B)の保持が可能な補助台(21)を設け、この補助台(21)の縁部(21e)から苗箱(B)を低位置で受ける上部開口型の空箱収容部(22)を操縦ハンドル(14)の側に設けたことを特徴とする苗株植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−295359(P2008−295359A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144497(P2007−144497)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】