説明

苗植嘴

【課題】 苗植嘴によって苗植付と同時に施肥を行う場合、肥料等の施用域が浅くなって、肥効が低下しやすい。
【解決手段】 嘴体中央部の苗室1に苗を収容して下降しながら土壌面に形成の植付穴にこの収容苗を植付る植付嘴2に、この苗室1の外周部から嘴下縁部3にわたって施用剤収容の施用室4を形成し、植付嘴2の開きによってこれら施用室4の施用剤を苗植付位置よりも深く施用することを特徴とする苗植嘴の構成とする。植付嘴2を開いて施用室4の収容施用剤を嘴下縁部3から下側の植付穴の土壌面部に施用する。又、これと同時に内側の苗室1に収容されていた苗を該施用剤の施用された植付穴の土壌面に落下させて植え付ける。このため、植付穴部においては下層の土壌面部には施用剤が施用されると共に、この上面部に苗が植え付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植嘴の構成に関し、苗植付と同時に、植付穴の底部に肥料、又は薬剤等を施用するものである。
【背景技術】
【0002】
苗植嘴の一側上部に施用嘴を設けて、苗植付時に施肥する技術(例えば、特許文献1参照)がしられている。
【特許文献1】特開2006ー14662号公報(第3頁、図3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
苗植嘴によって苗植付と同時に施肥を行う場合、肥料等の施用域が浅くなって、肥効が低下しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、嘴体中央部の苗室1に苗を収容して下降しながら土壌面に形成の植付穴にこの収容苗を植付る植付嘴2に、この苗室1の外部から嘴下縁部3にわたって施用剤収容の施用室4を形成し、植付嘴2の開きによってこれら施用室4の施用剤を苗植付位置よりも深く施用することを特徴とする苗植嘴の構成とする。植付嘴2の上方苗供給装置部と下方植付土壌面部との間の昇降苗植作動によって、苗供給装置部から供給された苗を植付嘴2の中央部の苗室1内に収容すると共に、この外側の施用室4部に収容して、この植付嘴2を閉鎖した状態で下降して土壌面に突き刺して適宜深さの植付穴を形成しながら、これら植付嘴2を開いて施用室4の収容施用剤を嘴下縁部3から下側の植付穴の土壌面部に施用する。又、これと同時に内側の苗室1に収容されていた苗を該施用剤の施用された植付穴の土壌面に落下させて植え付ける。このため、植付穴部においては下層の土壌面部には施用剤が施用されると共に、この上面部に苗が植え付けられる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、苗植付嘴2の構成を簡単な構成としながら、この植付嘴2の苗室1の外周部に施用室4、乃至施用間隔部を形成するため、供給された施用剤の流下が円滑に行われ、苗植付穴に対する肥料等の施用域を深く案内して的確な深層施用を行わせ、肥効、薬効を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図例に基づいて、苗植機車体は、左右前輪19間の上方部に位置するミッションケース20にハンドルフレーム21の前端部を一体に設け、このハンドルフレーム21は機体の左右一側寄りに偏倚して左右後輪22間を経て後方上部にわたって、下方湾曲、乃至屈曲する形態に構成し、後端部にハンドル25を形成する。このハンドルフレーム21を車体主体とし、このハンドルフレーム21の上方部にサブフレーム23を設けて、苗供給装置7や苗植嘴2等を設け、前記ミッションケース20の上部にエンジン24を設け、このエンジン24によって後輪22や、苗供給装置7、及び苗植嘴2等を駆動して苗植作用を行わせる。前記ハンドルフレーム21は、断面丸形チューブ材や、楕円形、乃至角形チューブ材等から構成されて、弓状形態に湾曲、乃至屈曲形成している。このハンドルフレーム21は、単一の構成にしているが、太さや、剛性等によって左右に二本、又は三本等に複数本を平行状に並べた形態に構成することもできる。このようなハンドルフレーム21を主体として、各前輪19や後輪22、更には苗供給装置7等を支持装着するための各部のサブフレーム23を設けている。
【0007】
このハンドルフレーム21の前部で左右側に配置の前輪19は、ミッションケース20の前側から左右外側へ前輪支持軸26を張り出して設け、この前輪支持軸26の両端部から前下方へ突出の前輪アーム27端の車軸28周りに回転自在に軸受している。前記ミッションケース20から左右両側へ突出のアクスルハウジング29の外端に、後輪22を軸受した伝動ケース30を上下回動可能に取り付けて、該エンジン24の駆動により伝動回転して走行することができる。又、この後輪22はハンドルフレーム21の湾曲部の左右両側に位置して配置され、伝動ケース30と一体のブラケットアーム31と、ミッションケース20から後方へ突出して支持されるピッチングシリンダ52によって前後動されるシーソアーム53の左右両端部との間には、左側にはローリングシリンダ54を設け、右側には連結ロッド55を設けている。ピッチングシリンダ52の伸縮制御によって左右の後輪22を上下動して車高を変更制御すると共に、ローリングシリンダ54の伸縮制御によって左側の後輪22を上下動して、車体の左右傾斜を変更制御するものである。
【0008】
前記苗植嘴2を伝動する苗植伝動装置32は、ミッションケース20の後側に連結した苗植伝動ケース34と、サブフレーム23とにわたって支持した伝動ケース33によって作動するように構成している。前後方向へ開閉回動可能の苗植嘴2を有した嘴ホルダ8を前後一対の昇降リンク9、10によって平行状態に維持して植付作動するように構成し、苗植嘴2を略楕円形状形態の苗植軌跡線Dを作動させるものである。この昇降リンク9を伝動ケース33のクランクアーム11によって回転駆動して昇降させると共に、揺動リンク12によって植付嘴2を前後に揺動させて、植付嘴2を苗植軌跡線Dに添わせて作動させる。
【0009】
ここにおいて、この発明に係る苗植嘴2は、嘴体中央部の苗室1に苗を収容して下降しながら土壌面に形成の植付穴にこの収容苗を植付ける植付嘴2に、この苗室1の外周部から嘴下縁部3にわたって施用剤収容の施用室4を形成し、植付嘴2の開きによってこれら施用室4の施用剤を苗植付位置よりも深く施用することを特徴とする。植付嘴2の上方苗供給装置部と下方植付土壌面部との間の昇降苗植作動によって、苗供給装置部から供給された苗を植付嘴2の中央部の苗室1内に収容すると共に、この外側の施用室4部に収容して、この植付嘴2を閉鎖した状態で下降して土壌面に突き刺して適宜深さの植付穴を形成しながら、これら植付嘴2を開いて施用室4の収容施用剤を嘴下縁部3から下側の植付穴の土壌面部に施用する。又、これと同時に内側の苗室1に収容されていた苗を該施用剤の施用された植付穴の土壌面に落下させて植え付ける。このため、植付穴部においては下層の土壌面部には施用剤が施用されると共に、この上側面部に苗が植え付けられる。
【0010】
これら苗植嘴2の構成は中心部に苗室1を形成し、この外周部に施用室4を一体的に形成したもので、嘴ホルダ8に対して前後方向へ回動して前後対向面部を開閉して、閉鎖時には内部に苗や、施用剤を収容保持し、開放時にはこれらを下方の植付穴部へ向けて落下排出させるものである。この嘴ホルダ8の上側には苗ホッパ13を設けて、前記苗供給装置7や、施用剤繰出装置5からの苗の供給、及び施用剤の供給等を受けることができるように構成し、この苗ホッパ13にはホッパカバー14を設けて、このカバー14を苗植嘴2の昇降作動によってリンク15連動して開閉作動するように構成している。そして、苗を供給するときは施用剤の繰出をこのカバー14で閉鎖して、苗に対して施用剤が直接降りかからないようにしている。又、この繰出装置5は上部にホッパ16を有して、前記昇降リンク9の昇降作動等と連動して連動ロンク17を介して繰出連動される。この繰出装置5による施用剤の繰出は各施用室4にのぞむ施用ノズル18を介して流下案内される。
【0011】
前輪19、後輪22の駆動によって車体を苗植畝面に添わせて走行させながらクランクアーム11の回転により苗植嘴2を駆動して昇降させる。苗植嘴2が上昇すると閉鎖した状態となり、作業者が苗供給装置7から苗を取出しながらカバー14の開かれたホッパ13内へ供給する。このカバー14が閉鎖されると繰出装置5が連動ロッド17等を介して連動されて、ホッパ16の施用剤が施用ノズル18から繰り出されて、収容苗の外周部の施用室4内に供給される。このようにして苗植嘴2の苗室1に苗を収容保持し、施用室4に施用剤を収容した状態で、この苗植嘴2が下降されて、閉鎖形態の苗植嘴2の下端部が植付土壌面に突き刺して、所定深さの植付穴を形成する。この植付穴を形成するとき植付嘴2が開くことによって苗室1、及び施用室4が開放されて、下方の植付穴部に苗を落下させると共に、施用剤を落下させる。このとき施用剤は、施用室4が植付嘴2の嘴下縁部3にまでわたって形成されているため、植付穴土壌面に深く施用することができる。そして、これらの中央部に植え付けられる苗は施用剤の施用された植付土壌面部の上側に位置して植え込まれるものであるから、苗根と施用剤との直接の接触を少なくすることができ、苗根毛部の傷みをを少なくすることができる。植付穴に苗を植え付けた植付嘴2は開放した状態で上昇して閉鎖状態に戻り、再度苗や、施用剤等の供給を待つ。又、苗の植え付けられた植付穴部は後続の培土輪34による培土作用によって埋め戻されて、植付姿勢を維持される。
【0012】
次に、主として図7、図8に基づいて、前記苗植嘴2の上側に設ける苗や施用剤等を落下案内するためのホッパ13を、内側の苗供給案内用の苗ホッパ36を、外側の施用剤供給案内用の施用ホッパ35よりも高く形成して、この施用ホッパ35へ施用剤を供給するとき、内側の苗ホッパ36側へ混入を防止するものである。又、植付嘴2の嘴ホルダ8に対する前後開閉において、外側の施用嘴37を内側の苗嘴38よりも大きく開くように構成したものである。苗を植付穴に植え付けた後で外周部の施用剤を外方へ拡散させて施用することができる。嘴ホルダ8に対する開閉作動ピン39周りの開閉回動を、これら施用嘴37と一体のアーム40を、苗嘴38と一体のアーム41のピン42に係合させることによって開閉連動するように構成している。アーム41を連動リンク43を介して連動することによって、アーム41のピン42に係合して施用嘴37を開閉する。このアーム41の長さ方向には多段のピン穴44を形成していて、この各ピン穴44にピン42を差し替えることによって、作動てこ比を代えて苗嘴38と施用嘴37との開閉角度を変更することができる。
【0013】
次に、主として図9に基づいて、前記苗植嘴2の下端部外周部に土掻きホッパ45を設け、この土掻きホッパ45と苗植嘴2の苗嘴38の外周面との間に適宜の土壌掻込用の土入間隔46を形成して、苗植付時にこの土掻きホッパ45を苗植付部の土壌面に差し込ませて、開放時にはこの土壌部分を土掻きホッパ45の土入間隔46に掬い込ませて、下端開放部から苗と共に落下させて、植付苗に対する覆土を行わせる。
【0014】
次に、主として図10に基づいて、供給苗を収容して植付作動する苗植嘴2の内周面に上下方向に添う適宜高さのリブ47を適宜間隔の施用路48として形成する。この施用路48を通して施用剤を流下させるもので、前記施用室4の構成に代える形態である。苗はこれら各リブ47で囲われた中央部に案内されて、各リブ47間の施用路48間隔を維持する。この施用路47の上端部には蛇腹形態の可撓性ホース49を介して連結の施用ノズル50をのぞませて連結している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】苗植嘴部の側面図。
【図2】苗植機の側面図。
【図3】その平面図。
【図4】その苗植嘴部の平面図。
【図5】その側面図。
【図6】施用剤繰出装置部、及び苗植嘴部の側面図と、平面図。
【図7】一部別実施例を示す苗植嘴部の斜視図。
【図8】その作動状態を示す側面図。
【図9】一部別実施例を示す苗植嘴部の斜視図。
【図10】一部別実施例を示す苗植嘴部の側面図と、平面図。
【符号の説明】
【0016】
1 苗室
2 苗植嘴
3 嘴下縁部
4 施用室
5 繰出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嘴体中央部の苗室(1)に苗を収容して下降しながら土壌面に形成の植付穴にこの収容苗を植付ける植付嘴(2)に、この苗室(1)の外部から嘴下縁部(3)にわたって施用剤収容の施用室(4)を形成し、植付嘴(2)の開きによってこれら施用室(4)の施用剤を苗植付位置よりも深く施用することを特徴とする苗植嘴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−283939(P2008−283939A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134478(P2007−134478)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】