説明

苗植機の株間変更装置及びこれを備えた田植機

【課題】株間変更装置のコストダウン等に資すると共に植付けタイミングの適正化に優れている田植機を提供する。
【手段】エンジンの動力の一部は株間変更装置37を介して苗植装置に伝達される。株間変更装置37は走行ミッションケースとは独立した株間ケース47を有しており、株間ケース47に入力軸48,出力軸49、中間軸65、アイドル軸70が配置されている。入力軸48の回転は主動ギア63,64及び従動ギア71を介してアイドル軸70に約半分に減速されて伝達される。出力軸49が低速回転であっても入力軸48と高速回転しているため、入力軸48の1回転当たりの負担が軽くなる。このめ入力軸48を細径化してコストダウンや軽量化に貢献できる。また、入力軸48は負担が軽くなることでねじれが抑制されるため、植付け爪の軌跡のずれを抑制して適正な植付けに貢献できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、苗植機の株間変更装置及びこれを備えた田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
苗植機(移植機)の代表例として田植機(稲の苗植機)がある。乗用型田植機は前輪及び後輪で支持された走行機体を有しており、走行機体の後方に苗植装置を高さ調節可能に配置している。そして、走行機体には座席と操縦ハンドルとが配置されていると共にエンジンが搭載されており、エンジンからの動力によって走行と苗植作業とが行われる。
【0003】
更に述べると、エンジンの動力(出力)は走行ミッションケースを有する走行変速装置に伝達され、エンジン出力の一部は走行動力となって前輪と後輪に伝達され、一部は株間変更装置を介して苗植装置に伝達される。整地ロータや施肥装置を備えている場合は、これらもエンジンの動力で駆動される。
【0004】
苗植装置は、植付け爪が閉ループ軌跡を描いて動くロータリー式又はクランク式の植付け機構を有しているのが一般的であり、いずれにしても、苗マットから苗を植付け爪で1株ずつ掻き取って圃場に植付けている。そして、苗植装置における植付け爪の作動サイクル(植付けサイクル)は走行機体の走行速度(或いは車輪の回転速度)に連動しており、走行速度が変化しても苗の植付け間隔(株間)は一定に保持される。
【0005】
そして、単位面積当たりに何株を植えるかは圃場の地力・肥沃度や品種、或いは気候等によって相違するものであり、そこで、乗用型田植機には走行速度と植付けサイクルとの連動関係を調節して苗の植付け間隔(株間)を変更できるように株間変更装置が設けられている。この株間変更装置は走行ミッションケースに内蔵されていることが多いが(例えば特許文献1)、株間変更装置を走行ミッションケースとは独立した構造としてこれをエンジンの右後ろに配置することも提案されている(例えば特許文献2)。いずれにしても、株間変更装置には変速操作用のレバーを配置しており、レバーを操作してギアの噛み合いを変えることで株間の調節を行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第35945764号公報
【特許文献2】特開2002−291309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
稲の株間は一般に3.3平方m当たりの株数で分類されており、37株、40株又は43株、50株、60株、70株、80株又は85株、90株といった株数設定が行われる。一般に、37株や40株は疎植と呼ばれ、60株以上は密植と呼ばれることが多い。稲の収量は株数に比例する訳ではなく、疎植によって苗の活性が高くなって分けつが促進されるという事実があり、このため、疎植しても単位面積当たりの収量は変わらなかったり、逆に疎植にすると収量が増大する場合もある。このような疎植のメリットが認識されて、近頃は疎植化の傾向にあると言える。
【0008】
他方、例えば特許文献1の図5から明瞭に把握できるように、入力軸の回転数に対する出力軸の回転数の関係を見ると、従来は、1:1の比率を最小として、出力軸の回転数が入力軸の回転数よりも高くなるように設定しているため、入力軸の1回転あたりのトルクが大きくなり、従って、入力軸を太くして剛性を高くせねばならず、すると、コストが嵩む問題や重量が増大する問題、或いは、ねじれ変形しやすいという問題がある。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は多面的に広がっており、その例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は上位概念を構成するもので、この発明は、走行機体の走行速度に比例して回転する入力軸と、苗植装置の駆動軸に連結される出力軸と、前記入力軸の回転と出力軸の回転との関係を変えるギア群とが備えられており、前記入力軸の回転は、当該入力軸に設けた主動ギアとこれに噛み合う従動ギアとの対によってまず伝達されるようになっている、という株間変更装置において、前記主動ギアと従動ギアとによって前記入力軸の回転数が減速されるように設定している。
【0011】
請求項2の発明は請求項1を具体化したもので、この発明は、請求項1において、前記入力軸及び出力軸と平行に配置されたアイドル軸を備えていてこのアイドル軸に前記従動ギアを設けており、前記アイドル軸の回転が他のギア群を介して出力軸に伝達される。請求項3の発明では、前記入力軸の回転数がおおよそ1/2に減速されて従動ギアに伝達されるように設定している。
【0012】
請求項4の発明は請求項2又は3の発明を具体化したものであり、この発明では、前記アイドル軸には、当該アイドル軸と一緒に回転する1枚又は2枚の従動ギアがスライド自在に嵌まっている一方、前記入力軸には、前記従動ギアが選択的に噛み合う複数枚の主動ギアを固定しており、前記主動ギアと従動ギアとの噛み合いの切り換えによって前記アイドル軸の回転数が変更可能になっており、更に、前記従動ギアから出力軸への動力伝達経路中に、前記出力軸を不等速回転させるための不等速ギアの対と、前記不等速ギアの対による不等速回転が出力軸に伝わることを継断する中間クラッチとを設けている。
【0013】
請求項5の発明は請求項4の発明を具体化したもので、この発明では、前記入力軸と出力軸とは同心に配置されており、前記出力軸には当該出力軸と一緒に回転する筒形の中間軸がスライド自在に取付けられており、前記中間軸に、前記アイドル軸に設けた等速ギアと噛み合う等速ギアが固定されていると共に、前記不等速ギアの対のうち従動側不等速ギアが相対回転自在に嵌まっており、前記中間軸と従動側不等速ギアとに前記中間クラッチを設けており、前記中間軸のスライドにより、等速ギアが噛み合って中間クラッチは切れている状態と等速ギアが噛み合わずに中間クラッチが入っている状態とに選択的に切り換えられる。
【0014】
本願発明は田植機も含んでいる。すなわちこの田植機は、請求項1〜5のうちのいずれかに記載した株間変更装置を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本願発明では入力軸の回転がまず減速されるが、これは、出力軸の回転数が従来と同じであると入力軸の回転数は従来よりも高くなることに他ならない。つまり、株間変更装置の入力軸を従来よりも高速で回転させつつ苗植作業は低速で行うことができるのであり、その結果、入力軸の軸径を従来よりも小さくしてコストダウン・軽量化に貢献できると共に、1回転あたりの応力を小さくしてねじれ変形を著しく抑制できる(これにより、植付け爪の軌跡のずれを防止して適切な植付けを実現できる。)。
【0016】
さて、田植機等の苗植機では、エンジンの回転は走行ミッションケースを有する変速装置に伝達されて、動力の一部は走行に消費されて他の一部は苗植の作業に消費される。そこで、走行ミッションケースに減速ギアを設けて、この減速された回転を株間変更装置に伝えるという手段も採用できない訳ではないが、これでは走行ミッションケースの内部の構造が複雑化するおそれがある。
【0017】
これに対して本願発明は株間変更装置に動力を入れる段階で減速するものであり、株間変更装置自体に減速機能を持たせているため、走行ミッションケースの内部の変速機構が複雑化することを防止できるのである。端的に述べると、本願発明は、株間変更装置としての変速機構のうちの最も上流の部分に減速機能を持たせることにより、走行変速装置を複雑化することなく低速作業荷域においてエンジンを適度の回転数に維持できるのである。
【0018】
入力軸の回転を減速する手段は種々採用し得るが、請求項2のようにアイドル軸を設けてこのアイドル軸を入力軸よりも低回転に減速させると、入力軸とアイドル軸とに設けた平ギアを噛み合わせるだけで足りるため、簡単な構造で減速できて好適である。また、アイドル軸に変速用のギアを設けることにより、株間を疎植から密植まで広い範囲にわたって調節できように設定することが可能になる。
【0019】
入力軸の回転数をどの程度に落とすかは必要に応じて選択できるが、一般的には、請求項3に記載したように1/2程度に減速するのが好適である。概ね60〜40%程度の減速率が好ましいと言える。
【0020】
請求項4の発明を採用すると、アイドル軸を設けたことの利点がより強く発揮される。すなわち請求項4の発明を採用すると、従動ギアをスライドさせることでアイドル軸の回転数を複数に変更できるため、アイドル軸から出力軸への変速と組み合わせることで広い範囲の株間変速を容易に実現できる。
【0021】
さて、疎植状態のときに苗を植付け爪で蹴る現象を防止するため株間変更装置に不等速ギアを設けること自体から行われているが、従来は、特許文献1,2に開示されているように入力軸と出力軸とに不等速ギアを設けているため、不等速ギアを噛み合わせると入力軸と出力軸との回転数は同一にならざるを得ず、このため、入力軸の回転数を高くできなかったと言える。
【0022】
これに対して請求項4の発明では、入力軸よりも下流側に設けているため、入力軸は高い回転を維持しつつ不等速ギアを機能させた出力軸に不等速回転を付与することができるのであり、これにより、入力軸の細径化を図りつつ円滑な疎植作業を実現できる。更に、請求項4の構成において請求項5の構成を採用すると、中間軸をスライドさせる操作により、平ギアの噛み合わせと不等速ギア用中間クラッチの入り切りとを行えるため、アイドル軸に設けた従動ギアのスライドと出力軸に設けた中間軸のスライドとにより、疎植から密植まで広い範囲での株間変更を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】田植機の全体側面図である。
【図2】田植機の平面図である。
【図3】車体カバーを取り付けた状態での走行機体の斜視図である。
【図4】車体カバーを省略した状態での走行機体の斜視図である。
【図5】(A)は骨組み部分の側面図、(B)は走行ミッションケースとフロントフレームとの関係を示す斜視図である。
【図6】エンジンの支持構造を示す分離斜視図である。
【図7】リアアクスルケースの斜視図である。
【図8】要部を右方向から見た斜視図である。
【図9】要部の右側面図である。
【図10】要部の平面図である。
【図11】要部の分離斜視図である。
【図12】(A)は要部を後ろから見た斜視図、(B)は株間ケースをひっくり返した状態での斜視図である。
【図13】(A)株間変更装置の伝動系統図、(B)はギアの組み合わせを示す図である。
【図14】株間変更用ギア群の斜視図である。
【図15】(A)は株間変更用ギア群の左側面図、(B)は要部の側面図である。
【図16】(A)は操作系統を示すための側面図、(B)は株間ケースを下方から見た図である。
【図17】株間ケースを中心にした部分の斜視図である。
【図18】操作系統を右後ろから見た斜視図である。
【図19】(A)は操作系統を左後ろから見た斜視図、(B)はクラッチ操作機構部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は乗用型苗植機の代表である乗用型田植機(以下、単に「田植機」と略す)に適用している。以下の説明では、方向を特定するために「前後」「左右」の文言を使用するが、これらの文言は、特に断らない限り、前進方向を向いて着座した運転者の向きを基準にしている。
【0025】
(1).田植機の概要
まず、田植機の概要を説明する。図1,2に示すように、田植機は大きな要素として走行機体1と苗植装置2とを有しており、走行機体1は左右の前輪3と後輪4を有する。苗植装置2は苗マットから植付け爪で1株ずつ掻き取る方式であり、植付け爪はロータリーケースに一対取り付けられている。また、苗植装置は苗台や送り装置やフロート等の多くの部材から成っているが、苗植装置の構成自体は本願発明と直接の関連はないので説明は省略する。
【0026】
走行機体1は、運転者が腰掛ける背もたれ付き座席5とその前方に配置された操縦ハンドル6とを有している。座席5と操縦ハンドル6は走行機体1の左右中間位置に配置されている。座席5の後ろには施肥装置7を設けている。図3に示すように、走行機体1のうち人が載る部分は車体カバー8で覆われている。
【0027】
例えば図4から理解できるように、走行機体1は、前後方向に延びる左右のサイドフレーム9と、左右のサイドフレーム9をその前端寄り部位において連結したフロントフレーム10と、左右サイドフレーム9の後端に連結された左右長手のリアフレーム11とを有している。これらサイドフレーム9とフロントフレーム10とリアフレーム11とにより、走行機体1の中核を成す車体フレーム(シャーシ)が構成されている。
【0028】
サイドフレーム9は、ほぼ前後中間部を境にして略前半部は略水平姿勢になって後半部は後傾姿勢となるように屈曲している。すなわち、サイドフレーム9の後半部は、後ろに行くほど高さが高くなる傾斜部9aになっている。
【0029】
例えば図1に示すように、、側面視でサイドフレーム9における傾斜部9aの下方に位置した高さ部位には、エンジン12がクランク軸を左右横長にした姿勢で配置されており、エンジン12の手前でかつサイドフレーム9の水平状部の下方位置には、変速装置を構成する走行ミッションケース13が配置されている。敢えて述べるまでもないが、走行ミッションケース13にはギア群やクラッチ、デフ装置、ブレーキ等の変速伝動要素が内蔵されている。
【0030】
エンジン12のクランク軸(出力軸)は左側に露出している一方、走行ミッションケース13の左側面には無段変速機の一例として静油圧式無段変速機(HST)14が取り付けられており、エンジン12の動力はベルト15で(HST)14に送られる。エンジン12はシリンダボアが鉛直線に対して後傾した姿勢になっており、傾斜角度は概ねサイドフレーム9における傾斜部9aの傾斜角度と同じである。
【0031】
走行ミッションケース13の前部の左右側面にはフロントアクスル装置16が取り付けられており、フロントアクスル装置16で前輪3が回転自在に支持されている。座席5は、走行機体1のほぼ左右中間部の位置でかつ側面視では概ねサイドフレーム9における傾斜部9aの前半部の上方に位置している。座席5とエンジン12との間には空間が空いており、この空間に燃料タンク18を配置している。
【0032】
エンジン12の後方下部にはリアアクスルケース19が配置されており、リアアクスルケース19から左右に突出した後ろ車軸に後輪4を固定している。図5に示すように、リアアクスルケース19は、左右長手の基部19aから左右の後ろ向き張り出し部19bを突設した形態であり、後ろ車軸は後ろ向き張り出し部19bに設けている。また、左右の後ろ向き張り出し部19bにはそれぞれブラケットを介してリア支柱22が固定されており、リア支柱22をリアフレーム11に固定している。リア支柱22は側面視で若干前傾している。
【0033】
図1及び図3に示すように、走行機体1の後端にはトップリンク23とロアリンク24とから成るリンク機構が連結されており、両リンク23,24の後端に連結したヒッチ25に苗植装置2が連結されている。トップリンク23はリアフレーム11に上下回動自在に連結され、ロアリンク24はリア支柱22に上下回動自在に連結されている。リンク機構は油圧シリンダ(昇降シリンダ)26で上下回動し、これによって苗植装置2が昇降する。
【0034】
図5(B)に示すように、フロントフレーム10にはブラケット27を介してパワーステアリングユニット28が固定されており、このパワーステアリングユニット28と走行走行ミッションケース13の前端部とがボルトで固定されている。
【0035】
例えば図5(A)に示すように、走行ミッションケース13の後端部とリアアクスルケース19の前端部とは中空角形のジョイント部材29で連結されている。走行ミッションケース13のうち後端側のある程度の範囲は左右巾が薄くなった細巾部13aになっており、細巾部13aの下端にホルダー部29aを介してジョイント部材29が固定されている。ホルダー部29aは平面視でコの字形をなしており、ボルト30で走行ミッションケース13に締結されている。
【0036】
例えば図10に示すように、走行ミッションケース13のうち細巾部13aの付け根箇所の左側は段部13bになっており、この段部13bから前後方向の軸線を有する後輪ドライブ出力軸32が突出している。後輪ドライブ出力軸32には自在継手を介して後輪ドライブ軸33の前端が接続されており、後輪ドライブ軸33の後端はリアアクスルケース19に設けた入力軸(図示せず)に自在継手で連結されている。
【0037】
ジョイント部材29とリアアクスルケース19との固定構造は図7で明示している。すなわち、ジョイント部材29の後端面にエンド板34を溶接によって固定し、エンド板34をリアアクスルケース19の基部19aの前面にボルト44で固定している。リアアクスルケース19の基部19aのうちエンド板34が重なる部分は、前向きに開口した中空構造になっている。
【0038】
図8〜10に示すように、走行ミッションケース13の右側面部の後部には横向きに突出した作業動力出力部35を設けており、この作業動力出力部35に作業動力軸36が自在継手を介して接続されている。この作業動力軸36は例えば図8に示す株間変更装置37に接続されている。この点は後述する。
【0039】
例えば図6に示すように、エンジン12は、その前部はジョイント部材29に固定した前部ブラケット38及び前部防振ゴム42で支持され、その後部は後部ブラケット43及び防振ゴム44を介してリアアクスルケース19で支持されている。前部ブラケット38は、ジョイント部材29の側面に固定された左右の足部39と、左右の足部39に防振ゴムを介して差し渡し配置された上部材40とを有しており、エンジン12の下端部が前部防振ゴム42を介して上部材40にボルトで締結されている。
【0040】
(3).株間変更装置の取り付け構造
次に、株間変更装置37を説明する。まず、主として図11〜図12に基づいて外観と取り付け構造と内部機構とを説明する。株間変更装置37は株間ケース47を有しており、株間ケース47の内部にギア等の部材が配置されている。株間ケース47は前後2個のシェル体を重ね固定して中空状に形成されており、株間ケース47からは、入力軸48が前向き突出して出力軸(PTO軸)49が後ろ向きに突出し、施肥駆動軸50が上向きに突出している。また、前面には第1操作軸51と第2操作軸52とが上下に離反して配置されており、上面からはメインクラッチ操作軸53が突出している。
【0041】
図12(B)は株間ケース47をひっくり返した状態の図であるが、この図から容易に理解できるように、株間ケース47の下端には下向きに突出したリブ状の下締結部54を設けており、この下締結部54にタップ穴55を設けている。そして、図11に示すように、ジョイント部材29の後端に固定されたエンド板34に右向きの張り出し部34aを形成し、張り出し部34aを株間ケース47の下締結部54に前から重ねてボルト56で締結している。図7から理解できるように、エンド板34の下端に張り出し部34aまで広がる水平片34bを設けており、このため頑丈な構造になっている。
【0042】
また、株間ケース47の後部に設けた横向きボス57に側面視L形のリアブラケット58を横向きボルト59で固定しており、リアブラケット58の水平片をリアアクスルケース19に縦向きボルト60で固定している。リアアクスルケース19にはリアブラケット58を支持する上向きボス体61を設けている。例えば図10に明示するように、株間ケース47は平面視でエンジン12の右側方に位置している。
【0043】
(4).株間ケースの内部構造
次に、図13〜図15を参照して株間ケース47の内部構造(伝動系統)を説明する。図13(A)に示すように、入力軸48には同径の第1ギア63と第2ギア64とが固定されている。両ギア63,64は同径ではあるが、歯数は第1ギア63よりも第2ギア64が僅かに少なくなっている。第1ギア63と第2ギア64とが請求項に記載した主動ギアに相当する。正確には、第1ギア63は第1主動ギアであり、第2ギア64は第2主動ギアである。
【0044】
入力軸48と出力軸49とは同心に配置されている。入力軸48には筒型の中間軸65が相対回転可能に嵌まっており、中間軸65は出力軸49と一緒に回転する状態(相対回転不能な状態)で嵌まっている。中間軸65には第3ギア66と第4ギア67とがスプライン嵌合等によってスライド可能で相対回転不能に嵌まっている。更に、中間軸65には、従動側不等速ギアである第1不等速ギア68が相対回転自在でスライド可能に嵌まっている。
【0045】
出力軸49にはカム式のメインクラッチ69を設けている。メインクラッチ69は固定パーツ69aとスライドパーツ69bとから成っており、スライドパーツ69bはクラッチばね69c(図15(A)参照)で固定パーツ69aに向けて付勢されている。スライドパーツ69bがクラッチばね69cに抗して固定パーツ69aから離反すると入力軸48から出力軸49への動力伝達は遮断される。路上走行時や植付け作業での旋回時等にはメインクラッチ69が切れる。メインクラッチ69の切り操作はメインクラッチ操作軸53を下降させることで行われる。
【0046】
株間ケース47の内部には、側面視で入力軸48及び出力軸49と平行に延びるアイドル軸70が回転自在に配置されており、このアイドル軸70に第1ギア63又は第2ギア64に噛み合い得る第5ギア71がスプライン嵌合等によってスライド可能・相対回転不能に嵌まっている。第5ギア71は請求項に記載した従動ギアに相当する。第5ギア71は第1ギア63又は第2ギア64の2倍程度の歯数であり、第1ギア63に噛合した第1ポジションと、第2ギア63に噛合した第2ポジションと、第1及び第2のギア63,64から離反している中立ポジションとを選択できる。
【0047】
本実施形態では1枚の第5ギア71を第1ギア63又は第2ギア64に選択的に噛み合わせているが、第1ギア63に噛合する第1減速用ギアと第2ギア64に噛合する第2減速用ギアとを一つのスライド筒に設けて、レバーの操作によるスライド筒の移動にによって両減速用ギアのいずれかに動力を伝達する構成を採用することも可能である(この場合は単純な形状のギアを使用できるため設計的に有利である。)。
【0048】
第1ギア63と第2ギア64に対する第5ギア71の歯数の比率は、例えば、第1ギア63に対する第5ギア71の歯数の比率を2.0倍に設定し、第2ギア64に対する第5ギア71の歯数の比率を約2.3倍に設定することができる。
【0049】
アイドル軸70には、第3ギア66に対して噛み合い・離反する第6ギア72、第4ギア67に噛み合い・離反する第7ギア73、及び、第1不等速ギア68と常に噛み合っている第2不等速ギア74が固定されている。第2不等速ギア74は主動側不等速ギアである。
【0050】
第3ギア66に対する第6ギア72の比率よりも、第4ギア67に対する第7ギア73の歯数の比率が小さくなるように設定している。従って、中間軸65(及び出力軸49)の回転数は、第3ギア66と第6ギア72とが噛み合っている状態よりも、第4ギア67と第7ギア73とが噛み合っている状態の方が低くなっている。具体的な歯数の比率としては、例えば、第3ギア66に対する第6ギア72の歯数の比率を約1.94、第4ギア66に対する第7ギア73の歯数の比率を約1.41と成すことができる。
【0051】
第1不等速ギア68と第2不等速ギア73とは楕円のような非円形のプロフィールであり、歯数は同じに設定されている。従って、両不等速ギア68,73を介してアイドル軸70の回転が中間軸65及び出力軸49が伝えられている状態では、アイドル軸70と出力軸49との回転数は同じで、かつ、出力軸49は角速度を周期的に変化させた状態で回転する。両不等速ギア68,73は非円形であって噛み合い姿勢が一定に決まっているという特殊性から、常に噛み合い状態に保持されている。
【0052】
第4ギア67と第1不等速ギア68とには、噛み合い・離間自在な中間クラッチ75を設けている。第4ギア67は、図13(A)の状態からいったん第7ギア73と噛合した状態を経て更に右向きにスライドすると、中間クラッチ75が噛み合う。中間クラッチ75が噛み合った状態では、アイドル軸70の動力は不等速ギア74,68を介して出力軸49に伝えられる。
【0053】
中間クラッチ75が噛み合っている状態では第3ギア66と第4ギア67は空転している。従って、中間クラッチ75は中間軸65と第1不等速ギア68との連結を継断する働きをしている。中間軸65と第1不等速ギア68との連結を継断する他の手段として、中間軸65に可動クラッチ体を設けて、これをスライドさせて第1不等速ギア74のクラッチ体に継断することも可能であるが、この場合はクラッチ体を動かすためのシフターやレバーが別に必要になる。これに対して本実施形態では、第3ギア66と第4ギア67とを操作するレバーによって中間クラッチ75を入り切り操作できるため、構造がごく簡単になる利点がある。
【0054】
図13(A)は、入力軸48から出力軸49に動力伝達されないニュートラル状態を示している。第5ギア71が第1ギア63と第2ギア64とに選択的に切り換わることで、入力軸48の回転が増幅した状態でアイドル軸70に伝えられる。既述のとおり、回転増幅率は第5ギア71が第2ギア64に噛み合っている状態の方が高い。
【0055】
また、中間軸65がスライドして第3ギア66と第4ギア67とがそれぞれ第6ギア72と第7ギア73とに選択的に噛み合うことにより、アイドル軸70の回転数が中間軸65(出力軸49)に増幅して伝えられる。この場合も、既述のとおり第6ギア62が第3ギア66に噛み合っている状態の方が増幅率が高い。更に、中間軸65がスライドして中間クラッチ66が入りとなることで、アイドル軸70の回転が中間軸65(出力軸49)に伝えられる。この場合、アイドル軸70と中間軸65(出力軸49)との回転数の比率は既述のとおり1:1になっている。
【0056】
結局、第5ギア71がスライドすることで2段階の切り換えが行われ、中間軸64がスライドすることで3段階の切り換えが行われる。従って、全体として6段階の組み合わせが存在する。この組み合わせを図13(B)で表示している。表ではギアの名称は省略して符号の数字のみを示している。また、矢印は動力が伝えられる経路を示している。表は、入力軸48の回転数に対する出力軸49の回転数の増幅率が低い順番にローマ数字の
IからVIまで番号を付して表示している。ローマ数字の右に付しているかっこ付きの数字は3.3平方m当たりの株数の例を示している。この表から理解できるように、本実施形態の株間変更装置37は一般に使用されている疎植・密植の全株数を殆ど網羅している。
【0057】
株間ケース47の上部には、入力軸48及び出力軸49と平行に延びる施肥用回転軸76を回転自在に配置されており、この施肥用回転軸76に、第1ギア63と噛合する第8ギア77が相対回転自在に嵌まっていると共に、施肥用クラッチ78を設けている。施肥用クラッチ78は、第9ギア77に固定された固定側パーツ78aと、施肥用回転軸76にスプライン嵌合等でスライド自在で相対回転不能に嵌まったスライドパーツ78bとから成っており、スライドパーツ78bがばねで固定パーツ78aに向けて付勢されている。施肥用回転軸76と施肥駆動軸50とには、互いに噛み合うベベルギア79の対を設けている。
【0058】
(5).株間変更の操作態様
次に、前記した第1操作軸51,第2操作軸52とメインクラッチ操作軸53との操作態様を主として図15〜図19に基づいて説明する。図15(A)から理解できるように、第1操作軸51は第5ギア71をスライド操作するためのものであり、第5ギア71をスライドさせる第1シフター51aを有している。他方、第5ギア71には第1シフター51aと相対回転可能に係合する第1シフター受け71aが設けられている。
【0059】
従って、第1操作軸51を手前側に一杯に引くと第5ギア71が第1ギア63に噛み合い、逆に奥側に一杯に押し込むと第5ギア71が第2ギア64に噛み合う。第1操作軸15は、前後中間部に位置させることで第5ギア71は第1ギア63及び第2ギア64に噛み合っていない中立状態に保持し得るが、一般には、手前に引き切った状態か奥に押し切った状態のいずれかに保持されている。
【0060】
第2操作軸52は中間軸65をスライド操作するためのものであり、中間軸65のうち第4ギア66と第4ギア67との間の部分にはシフター受けリング65aを設けている一方、第2操作軸52にはシフター受けリング65aに係合する切欠き部52aを設けており、第2操作軸52を軸方向にスライドさせることで、第3ギア66が第6ギア72に噛み合った状態と、第4ギア67が第7ギア73に噛み合った状態と、中間クラッチ75が入った状態との3つのポジションに切り換えることができる。
【0061】
例えば図16,17に示すように、株間ケース47の手前箇所にはレバーブラケット81が配置されている。レバーブラケット81は上向きの側板81aを有する正面視L形の形態であり、その下端には下向き片81b(図16(B)参照)を設け、下向き片81bを株間ケース47の前面にボルト82で固定している。
【0062】
レバーブラケット81には、第1操作軸51を操作する第1操作レバー83と第2操作軸52を操作する第2操作レバー84とがピン85で略水平回動するように連結されている。第1操作レバー83は基部がコの字形になっていて下端部が長く延びており、長く延びる部分の先端はレバーブラケット81の側板81aに空けた第1長穴86から外向きに突出している。先端には指当て83aを装着している。図17(B)から明瞭に把握できるように、第1操作レバー83はレバーブラケット81から段上がり状して外向きに延びるように屈曲しており、係止部83bを第1操作軸51に形成した切欠き溝87に嵌め込んでいる。このため、第1操作レバー83は水平回動させて中立位置を挟んだ2つのポジションを切り換えることができる。
【0063】
図17(B)に示すように、第2操作レバー84もコの字形の形態を成しており、図17や図19(A)に示すように、コの字形の基部は第1操作レバー83の基部に嵌まり込でおり、このため両レバー83,84は1本のピン85で水平回動可能に連結されている。従って、それだけコンパクト化できると共にコストダウンにも貢献できる。
【0064】
そして、図17(B)から理解できるように、第2操作軸52には円筒型ブロック体88がナットによって位置調節可能に嵌め込まれており、このブロック体88に設けた上下の頭付きピン88aが、第2操作レバー84に形成した上下の長穴89に嵌まっている。頭付きピン88aはT形になっており、第2操作レバー83の長穴89に嵌め込んでから90°回転させて、その姿勢で第2操作軸52に嵌め込んでいる。
【0065】
第2操作レバー84の上片は下片よりも長く延びていてレバーブラケット81の側板81aに設けた第2長穴90を貫通している。第2操作レバー84の先端にも指当て84aを装着している。図15(B)や図17に示すように、第2操作レバー84のうち第2長穴90に嵌まる部分には下向きの係止片84bを設けている一方、第2長穴90の下端縁には係止片84bが嵌脱する3つの係止溝90aを前後方向に沿って飛び飛びに形成している。このため、第2操作レバー84は(第2操作軸52は)3つのポジションに選択的に保持できる。
【0066】
本実施形態では、操作軸51,52を操作するためのレバー83,84を株間ケース47に固定されたレバーブラケット81に取り付けているため、株間変更装置37の大部分をユニット化できる。その結果、乗用型田植機の組み立て能率を向上できる。
【0067】
図15(B)に示すように、レバーブラケット81の側板81aには、レバー83,84の位置と株数との関係を示す表示を施している。すなわち、第1操作レバー83の移動位置によって株数が少なくなったり多くなったりすることを「少」「多」の文字で表示すると共に、第2長穴90を挟んだ上下には第1操作レバー81の機能を表示する文言に対応して「少」「多」の文字を表示し、かつ、第2長穴90を挟んだ上下に株数を表示している。
【0068】
これにより、人は、第1操作レバー83と第2操作レバー84との位置から植付け株数を人目で理解できる。つまり、第1操作レバー83が「少」の場合には、第2操作レバー84の位置は第2長穴90の下に表示した植付け株数に対応しており、第1操作レバー83が「多」の場合には、第2操作レバー84の位置は第2長穴90の上に表示した植付け株数に対応している。
【0069】
(6).クラッチ操作軸の操作態様
次に、メインクラッチ69及び施肥用クラッチ78の操作態様を主として図15,1 7〜18に基づいて説明する。図15に示すように、メインクラッチ操作軸53には棒状の第1カム53aが固定されており、第1カム53aにはリング状の第2カム53bが後ろから重なっている。第2カム53bは出力軸49に遊転する状態で嵌まっており、かつ、第2カム53bは出力軸49に回転不能でスライド自在に嵌まっており、この第2カム53bにメインクラッチ69のスライドパーツ69bが相対回転自在でスライド不能に連結されている。また、第2カム53bはクラッチばね69cで手前に付勢されている。
【0070】
第1カム53aと第2カム53bとの接触面は、側面視でメインクラッチ操作軸53の軸線に対して傾斜しており、第1カム53aが上昇すると第2カム543bがクラッチばね69cに押されて前進し、するとメインクラッチ69は可動パーツ69bが前進して入りになる。第1カム53aが下降すると第2カム543bがクラッチばね69cに抗して後退し、するとメインクラッチ69は可動パーツ69bが固定パーツ69aから後退して切りになる。
【0071】
図17〜図18に示すように、株間ケース47の上端部には平面視で後ろ向き開口コの字形の天ブラケット92が固定されており、この天ブラケット92に左右長手の作動軸93を取り付けている。他方、メインクラッチ操作軸53には環状溝が形成されており、作動軸93に固定した後ろ向きの第1アーム94をメインクラッチ操作軸53の環状溝に嵌め込んでいる。
【0072】
従って、作動軸93が回転してメインクラッチ操作軸53が上昇すると、メインクラッチ69が入りになる。図17で第1アーム94をメインクラッチ操作軸53の上に描いているが、これは第1アーム94の回動姿勢を表示するためであり、実際には、図19に示すように、第1アーム94はメインクラッチ操作軸53の環状溝に嵌合している。
【0073】
作動軸93には上向きの第2アーム95が固定されており、この第2アーム95に前後長手のロッド96の後端がピンで連結されている(図18,19ではロッド96は第2アーム95から分離して表示している。)。そして、図16(A)に示すように、サイドフレーム9が傾斜し始める部分の上の部分にレバーパネル97を配置し、レバーパネル97に上端を連結した第3アーム98の下端に操作ロッド96の前端を連結している。
【0074】
第3アーム98の下端にはばね99を介して索導管入りワイヤー99aの一端が連結されており、ワイヤー99aの他端は操縦ハンドル6の右側に設けた植付け操作レバー105(図3参照)に連結されている。植付け操作レバー105の操作で第3アーム98を介してロッド96が手前に引かれると、メインクラッチ操作軸53が上昇してメインクラッチ100が入る。作動軸93にはトーション式のねじりばね100がは嵌め込まれており、作動軸93をクラッチ入り方向に付勢している。
【0075】
図15(A)に示すように、施肥用クラッチ78における可動パーツ78bにはフランジ付きのシフター78cが相対回転自在でスライド不能に取付けられており、シフター78cはばね78dで入り方向に付勢されている。そして、シフター78cにおけるフランジの側面に施肥クラッチ操作軸102の下端に設けた平坦面が対向可能になっている。
【0076】
施肥クラッチ操作軸102は株間ケース47に回転自在に支持されており、その下端の平坦面がシフター78cのフランジに密着した状態で施肥用クラッチ78入りになっており、施肥クラッチ操作軸102における下端部の円弧面がシフター78cのフランジに密着した状態では、シフター78cと可動パーツ78bとはばね78dに抗して後退し、施肥用クラッチ78は切りになっている。
【0077】
図19に示すように、施肥クラッチ操作軸102の上端部は株間ケース47から上向きに突出しており、この施肥クラッチ操作軸102に第4アーム103を固定し、この第4アーム103と作動軸93に固定した第2アーム95とを線材104で連結している。操作ロッド96が前向きに引かれると、第2アーム95の回動に伴って施肥クラッチ操作軸102が入り方向に回転する。すなわち、メインクラッチ69と施肥用クラッチ78とは同時に入り切りされる。
【0078】
(7).まとめ
以上の構成において、入力軸48の回転は約半分程度に減速されてアイドル軸70に伝達されるため、出力軸49が低速回転している状態であっても入力軸48はある程度の高速回転になっており、このため、低速作業域においてもエンジン28はある程度の高さの回転数に維持することができ、その結果、エンジンストールを防止できる。
【0079】
また、本実施形態では2本のレバー81,82を操作することで株間を6段階に調節することができるため、ギアの交換のような面倒な作業を要することなく、顧客の幅広い要望にごく簡単に応えることができる。また、実施形態のようにレバー81,82を走行機体1の外側に露出させた構成を採用すると、レバー81,82の操作を簡単に行える利点がある。
【0080】
株間変更装置37を走行ミッションケース13に内蔵したり、株間ケース47を走行ミッションケース13に固定したりすることも可能であるが、本実施形態のように株間ケース47をリアアクスルケース19の近傍に配置すると、苗植装置2及び施肥装置7への動力の取り出し構造が簡単になる利点がある。また、本実施形態のように出力軸48と入力軸49とを同心(同軸)に配置すると、ギアのシフト構造を簡素化して株間変更装置37をコンパクト化できる。
【0081】
また、アイドル軸70は入力軸48及び出力軸49の横に配置することも可能であるが、本実施形態のようにアイドル軸70を入力軸48及び出力軸49の下に配置すると、株間変更装置37の横幅をできるだけ小さくできるため、株間ケース47をできるだけ走行機体1の内側に寄せることができ、その結果、株間ケース47に物が当たることを防止できる。
【0082】
本実施形態では株間を6段階に切り換えているが、切り換え段数は任意に設定できる。例えば37株、43株といった株数(株間)の数値も必要に応じて設定できることはいうまでもない。入力軸48に1つの主動ギアを固定してアイドル軸70に複数(例えば2枚)のスライド式従動ギアを設ける態様や、入力軸48とアイドル軸70との両方に複数枚ずつの主動ギアと従動ギアとを設けることも可能である。更に、アイドル軸70の従動ギアを固定式として入力軸の従動ギアをスライド式とすることも可能である。
【0083】
更に、操作しもとしては3本以上の操作レバーを設けることも可能である。また、レバーは水平回動式等の回動式に限定されるものではなく、回転式(摘まみ方式、ハンドル式)や軸上をスライドする方式などの様々なタイプを採用できる。本願発明の適用対象は田植機に限定されるものではなく、例えば野菜の苗を植える移植機など、各種の苗植機に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本願発明は乗用型田植機に実施して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 走行機体
2 苗植装置
12 エンジン
19 走行ミッションケース
34 株間変更装置
47 株間ケース
48 入力軸
49 出力軸(PTO軸)
63 第1ギア(第1主動ギア)
64 第2ギア(第2主動ギア)
65 中間軸
68,74 不等速ギア
70 アイドル軸
71 第5ギア(従動ギア)
75 中間クラッチ
81,82 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の走行速度に比例して回転する入力軸と、苗植装置の駆動軸に連結される出力軸と、前記入力軸の回転と出力軸の回転との関係を変えるギア群とが備えられており、前記入力軸の回転は、当該入力軸に設けた主動ギアとこれに噛み合う従動ギアとの対によってまず伝達されるようになっている、という株間変更装置であって、
前記主動ギアと従動ギアとによって前記入力軸の回転数が減速されるように設定している、
苗植機の株間変更装置。
【請求項2】
前記入力軸及び出力軸と平行に配置されたアイドル軸を備えていてこのアイドル軸に前記従動ギアを設けており、前記アイドル軸の回転が他のギア群を介して出力軸に伝達される、
請求項1に記載した苗植機の株間変更装置。
【請求項3】
前記入力軸の回転数がおおよそ1/2に減速されて従動ギアに伝達されるように設定し ている、
請求項1又は2に記載した苗植機の株間変更装置。
【請求項4】
前記アイドル軸には、当該アイドル軸と一緒に回転する1枚又は2枚の従動ギアがスライド自在に嵌まっている一方、前記入力軸には、前記従動ギアが選択的に噛み合う複数枚の主動ギアを固定しており、前記主動ギアと従動ギアとの噛み合いの切り換えによって前記アイドル軸の回転数が変更可能になっており、
更に、前記従動ギアから出力軸への動力伝達経路中に、前記出力軸を不等速回転させるための不等速ギアの対と、前記不等速ギアの対による不等速回転が出力軸に伝わることを継断する中間クラッチとを設けている、
請求項2又は3に記載した苗植機の株間変更装置。
【請求項5】
前記入力軸と出力軸とは同心に配置されており、前記出力軸には当該出力軸と一緒に回転する筒形の中間軸がスライド自在に取付けられており、前記中間軸に、前記アイドル軸に設けた等速ギアと噛み合う等速ギアが固定されていると共に、前記不等速ギアの対のうち従動側不等速ギアが相対回転自在に嵌まっており、前記中間軸と従動側不等速ギアとに前記中間クラッチを設けており、前記中間軸のスライドにより、等速ギアが噛み合って中間クラッチは切れている状態と等速ギアが噛み合わずに中間クラッチが入っている状態とに選択的に切り換えられる、
請求項4に記載した苗植機の株間変更装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれかに記載した株間変更装置を備えている田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−193768(P2011−193768A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62783(P2010−62783)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】