説明

苗植機等の車輪

【課題】 苗植機の前車輪には、操向等による車輪の土壌掻き回しを少なくし、直進性を良好に、安定維持させる等のためにホイルカバーを設ける。しかし、このホイルカバーに着き回りされる泥土が、回転中心部の車軸ボス部の周りに付着、堆積して、大きな泥土塊となって、ついには隣接の既植付苗上に落下して、植付苗を傷めることとなり易い。
【解決手段】 車輪リム1部の外側で、かつスポーク2部の外側に沿って板状のホイルカバー3を設け、このホイルカバー3の回転中心部に内外側に開通の泥抜穴4を形成したことを特徴とする苗植機等の車輪の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植機や水田管理作業機等の車輪において、この走行車輪に対する泥土の着回り堆積を少なくする苗植機等の車輪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輪のスポーク部の内外両側を被覆するように板状のホイルカバーを設ける技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平10ー155319号公報(第1頁、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
苗植機の前車輪には、操向等による車輪の土壌掻き回しを少なくし、直進性を良好に、安定維持させる等のためにホイルカバーを設ける。しかし、このホイルカバーに着き回りされる泥土が、回転中心部の車軸ボス部の周りに付着、堆積して、大きな泥土塊となって、ついには隣接の既植付苗上に落下して、植付苗を傷めることとなり易い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、車輪リム1部の外側で、かつスポーク2部の外側に沿って板状のホイルカバー3を設け、このホイルカバー3の回転中心部に内外側に開通の泥抜穴4を形成したことを特徴とする苗植機等の車輪の構成とする。車体走行中は、車輪の回転によってホイルカバー3の側面に付着する泥土が、この土壌面上方位置への回転上昇に伴って、このホイルカバー3面を回転中心部へ向けて流下される。そしてこの中心部の泥抜穴4の位置にくると、泥土がこの泥抜穴4で落下したり、この泥抜穴4部のボス部やスポーク2部等の回転に叩かれたり、また、この泥抜穴4を通して反対側面へ抜ける等して落下される。このため泥土がホイルカバー3の中心部で付着したまま停滞して堆積し塊まることが少なくなる。
【0005】
請求項2に記載の発明は、前記ホイルカバー3の泥抜穴4は、車軸ボス5周りのスポーク2取付部を補強する補強板6の板縁7との間に形成することを特徴とするものである。前記のように、車輪の回転によってホイルカバー3の外側面に付着して着き回りする泥土が、この回転中心部の泥抜穴4に達すると塊になり難く落下し易い状態となるが、とくに、この泥抜穴4に位置した泥土は、ホイルカバー3と一体回転の補強板6の板縁7による接触を受けて打ち砕かれて塊ることなく落下され易い状態となる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ホイルカバー3の泥抜穴4によって、車輪リム1の回転中心部に対する泥土堆積、及び塊成形を阻止することができる。即ち、ホイルカバー3面に沿って回転中心部へ移動する泥土は、この泥抜き穴4を内側へ、又は外側へ通り抜けて落下され易くなり、泥土の堆積し難い状態とすることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、ホイルカバー3の泥抜穴4に流下した泥土は、この泥土穴4内の補強板6やこの板縁7等の回転接触によって、砕かれたり掻き落されて、直ちに泥抜穴4の外側へ落下され易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図3に基づいて、苗植車体11は、フロントアクスルハウジングの左右両端に前輪13をハンドル14によって操向可能に設け、リヤアクスルハウジング15の左右両端に後輪16を軸装し、運転席12下側のシートフロア17下に搭載のエンジンによって伝動回転して走行する構成としている。この車体11の上側には、前側のダッシュボード18と後部のシートフロア17との間にセンタフロア19を設け、このセンタフロア19から前後のダッシュボード18、及びシートフロア17にわたる左右両側部にサイドステップフロア20が設けられる。このサイドステップフロア20の前端は、ダッシュボード18の外側部において前側に開放されて、運転者の乗降はこのサイドステップフロア20の横側はもとより、前端側からも行われ易くしている。
【0009】
車体11の後端には平行リンク形態のリフトリンク21を介して苗植装置22が連結されて、車体11との間に設けられるリフトシリンダの伸縮によって昇降される。この苗植装置22は、下部にセンタフロート23と、この左右両側部のサイドフロート24を有し後部には各フロート23、24で均平された土壌面に苗植付する苗植付機構25を配置し、上部には前上がり傾斜の苗タンク26を左右移動可能に設け、苗タンク26に供給されるマット形態の苗を後下部へ繰出しながら各苗植付機構25の作動域へ供給しながら6条植形態等の多条植付を行う構成としている。又、車体11の前部で前記サイドステップフロア20の前部外側には、支持ブラケットによって複数段の苗受棚28を有する補助苗載枠29を装着する。車体11の後部には、施肥タンク30や、肥料繰出装置31、施肥ホース等からなる施肥装置が搭載されて、各フロート23、24の均平部に設けられる作溝器32に肥料を流下案内させて、苗植装置22の各植付機構25による植付条位置に施肥することができる。
【0010】
前記後輪16の連動は、図7のように、前部のミッションケース35から後輪駆動軸36を介してリヤアクスルハウジング15に軸装される左右の後輪軸37を伝動回転するように構成している。この後輪駆動軸36は前後端部に自在継手37や、スプライン軸継手38、39を有するが、このスプライン軸継手38、39部に泥土の浸入を防止するために、これらスプライン軸38と39との嵌合端部を適宜の長さにわたって、内側のスプライン軸39の基端部を、単なる丸削状形態としたスプライン無部40を形成し、このスプライン無部40の外周にスプライン軸38の先端部を位置させてオーバラップAした嵌合形態とする。41は該スプライン軸継手39の軸受ベアリング、このスプライン軸継手39の先端にベベルギヤ42を有し、後輪軸43に連動の連動ギヤ44に噛合して、左右の後輪16を伝動する構成である。該外側のスプライン軸継手38には先端部にわたってスプラインを形成しているが、該スプライン軸継手39のスプライン無部40と同様に丸削形態に形成することもできる。
【0011】
又、車体11の前端部には、図8、図9、図10のように、運転者の運転指標となるセンタマーカ47や、畦越え等で運転者の体重を載せて車体重心を前側へ移行させるペダルステップ48等を設けている。このセンタマーカ47はランプ点灯されるもので、長いマーカポール49の先端部に設けられて、この内側に配線の電線を介して点灯される。このマーカポール49は高く突出しているために邪魔になることが多い、このため、このマーカポール49を前後方向と、左右方向とに倒して、低くすることができるように構成したものである。該マーカポール49の基部50はL字形態に形成されて、車体11前端部のソケット51に嵌合して支持できる。このソケット51は前後方向に向けて形成され、車体11の下側に左右横方向の横軸52の周りに回動可能に設けられている。該マーカポール49の基部50をソケット51に嵌合させて、この基部50の先端部に嵌合するスプリング53で後方へ弾発し、この基部50の前側に位置して突出するピン54をソケット51の前端縁部に形成のノッチ55に係合させて、マーカポール49の横倒れを係止できるように構成している。このノッチ55は適宜角度間隔に形成して、マーカポール49の倒れ角度を適宜に選択できるようにしている。このマーカポール49の前後回動は、該横軸52上のボルトを締め付けることによって戦後の倒れ角度を固定できる構成とすることができるが、このマーカポール49の前後回動域に沿って車体11側に一体の案内縁56にノッチ57を形成して前後方向の傾斜角度に係止できる構成としている。
【0012】
又、前記ペダルステップ48はステップ軸58の周りに上下回動自在に支持させて、戻りスプリングで常に上側へ弾発回動させると収納状態Cとすることができるが、この戻りスプリングに抗して前側へ回動するとステップとして運転者が足Bで踏んで乗ることができる。このとき、このペダルステップ48の後側に突出のロック片59が、前記ステアリングハンドル14によって操向連動されるピットマンアーム60の搖動位置に接当して、このピットマンアーム60の操向搖動を固定することができる。この固定位置では前輪13が直進状態に維持されるように設定している。61はピットマンアーム60と前輪13側の操向アームとの間を連結するタイロッドである。運転者がペダルステップ48上に上がって、車体11の重心を前側に偏位させているときは、該ピットマンアーム60が回動できないために、前輪13は直進状態に維持されている。
【0013】
前記操向可能の前輪13にホイルカバー3を設けて、この前輪13の回転時の泥土の持ち上げを少なくするように構成している。前輪13は回転中心部の車軸ボス5部の周りに放射方向にスポーク2が配置され、この外周に車輪リム1が設けられる。この車輪リム1にはラグを形成のゴムタイヤ65が嵌合される。この車軸ボス5の周りにはスポーク2の取付部との間にわたって内側と外側とから挾むようにして補強板6を設け、この補強板6の各スポーク2間に形成される板縁7は、内、外両補強板6の外周部を溶接してスポーク2部等と一体構成とし、このスポーク2の外側面に固定したホイルカバー3の中心部の円形穴状、乃至三角形状の中心穴との間に泥抜穴4を形成する。このような前輪13は該車軸ボス5部を車軸66に嵌合させて伝動回転させる。ここに、車体走行中は、車輪の回転によってホイルカバー3の側面に付着する泥土が、この土壌面上方位置への回転上昇に伴って、このホイルカバー3面を回転中心部へ向けて流下される。そしてこの中心部の泥抜穴4の位置にくると、泥土がこの泥抜穴4で落下したり、この泥抜穴4部のボス部やスポーク2部等の回転に叩かれたり、また、この泥抜穴4を通して反対側の内側面へ抜ける等して落下される。このため泥土がホイルカバー3の中心部で付着したまま停滞、堆積したり塊まることは少なくなる。該前輪13の回転によってホイルカバー3の外側面に付着して着き回りする泥土が、この回転中心部の泥抜き穴4に達すると塊になり難く落下し易い状態となるが、とくに、この泥抜穴4に位置した泥土は、ホイルカバー3と一体回転の補強板6の板縁7による接触を受けて打ち砕かれて塊ることなく落下され易い状態となる。
【0014】
このようなホイルかバー3は、泥付着防止効果を高めるためにABS(アクリル.ニトリル.ブタリエン.スチレン)樹脂材等のポリエステル系樹脂、又は、これを基材としてフッソを配合した樹脂を薄肉フイルム状に形成したものを一体成形した構成とすることによって、泥土の付着堆積を阻止することができる。
【0015】
次に、主として図4に基づいて、前記ホイルカバー3の中央部を外側へ円錐状に膨出させた円錐部67を形成し、この円錐部67各スポーク2間の間隔部に対向して泥抜穴4を形成している。このような形態では、このホイルカバー3の内側面の円錐部67の内側に流動する泥水がこの泥抜穴4から外側面部へ流出し易くなって、このホイルカバー3の外側面に沿って中心部へ流れて堆積しようとする泥土は、この泥水によって洗い流されて、ホイルカバー3の表面における泥土の付着堆積を少なくするころができる。
【0016】
次に、主として図5に基づいて、ホイルカバー3の中心穴を略三角状形態に形成して、この三角状の中心穴と、この内側部に位置する前記補強板6の板縁7との間に、スリット状の泥抜穴4を形成する。又、これらの泥抜穴4の穴縁には、内側中心部へ向けて傾斜する案内縁68、69を形成する。このような案内縁68、69によって、ホイルカバー3の内側面に沿って中心部へ流動する泥水は、泥抜穴4から外側への流出を円滑に行わせて、外側中心部への泥土の付着堆積を防止することができる。このホイルカバー3は各スポーク2部の内側部から重合の挾持片70との間に挾んで、ボルト71締め等によって固定している。
【0017】
次に、主として図6に基づいて、前輪13とこのホイルカバー3との取付けを同じボルト72によって共用化したものである。スポーク2の中央部に前記車軸ボス5に代わる補強板6、乃至ディスクを形成し、この補強板6を車軸66の取付ディスク74の外側に重合させてボルト72締めによって取付できる。このとき、このディスク乃至補強板6の外側面に適宜厚さのスペーサリング75を介在させて、ホイルカバー3を重合させて、同ボルト72を挿通して締付けて固定する。着脱構成を簡単、容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】苗植機全体の側面図。
【図2】その前輪部の側面図と、正断面図。
【図3】その苗植機の平面図。
【図4】そのー部別例を示す前輪部の側面図と、正断面図。
【図5】そのー部別例を示す前輪部の側面図と、正断面図。
【図6】そのー部別例を示す前輪部の正断面図。
【図7】その後輪駆動軸部の平易断面図。
【図8】そのセンタマーカ部の正面図と、その側面図。
【図9】その一部の分解斜面図。
【図10】そのペダルステップ部の作動状態を示す側面図と、その一部の平面図。
【符号の説明】
【0019】
1 車輪リム
2 スポーク
3 ホイルカバー
4 泥抜穴
5 車軸ボス
6 補強板
7 板縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪リム1部の外側で、かつスポーク2部の外側に沿って板状のホイルカバー3を設け、このホイルカバー3の回転中心部に内外側に開通の泥抜穴4を形成したことを特徴とする苗植機等の車輪。
【請求項2】
前記ホイルカバー3の泥抜穴4は、車軸ボス5周りのスポーク2取付部を補強する補強板6の板縁7との間に形成することを特徴とする請求項1に記載の苗植機等の車輪。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−75127(P2006−75127A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265525(P2004−265525)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】