説明

苗植機

【課題】狭い圃場などで機体が前後進のいずれの方向に進行する場合にでも苗を植え付けることができる苗植機を提供すること。
【解決手段】走行装置1の前後進方向への駆動系に連動してループ状の軌跡を描きながら昇降して苗を圃場に植え付ける苗植付け体25を備え、走行装置1の前後進方向への駆動系に連動する苗植付け体25の昇降リンク40,41の基部側に植付出力軸50の軸心に対して偏心した昇降支点40aを備えた偏心カム51を設け、該偏心カム51の昇降支点40aの植付出力軸50の軸心に対する偏心位相を変えることで、苗植付け体25のループ軌跡における作動方向を正逆切替可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑圃場にレタスやキャベツなどの苗を植付ける苗植付け体を備えた苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、機体を前進走行可能とする走行車体と、昇降して圃場に苗を植付けるくちばし状の苗植付け体とを備えた苗植機において、苗の植え付け時には苗を抱え込んだ苗植付け体は、上下方向への細長い往復運動をする昇降軌跡の過程で、最下端部ある時にくちばしを開くことで苗を圃場に植え付けるリンク機構を備えた構成が知られている。
【特許文献1】特開2005−237347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に示された苗植機の苗植付け体のリンク機構は機体が前進する場合にだけ苗植付け体を昇降させる構成である。従って苗植機が後進する場合には苗植付け体のリンク機構は苗植付け体を昇降させることができなかった。
そこで、本発明の課題は、狭い圃場などで、機体が前後進のいずれの方向に進行する場合にでも苗を植え付けることができる苗植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記本発明の課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、機体を前後進させる走行装置(1)と該走行装置(1)の前後進方向への駆動系に連動してループ状の軌跡を描きながら昇降して苗を圃場に植え付ける苗植付け体(25)とを備えた苗植機において、苗植付け体(25)の前記ループ軌跡における作動方向を走行装置(1)の前後進方向に対応させてそれぞれ正逆切替可能な構成を備えた苗植機である。
【0005】
請求項2記載の発明は、走行装置(1)の前後進方向への駆動系に連動する苗植付け体(25)の上下動機構(26)と該苗植付け体(25)の上下動機構(26)の基部側に植付出力軸(50)の軸心に対して偏心した昇降支点(40a)を備えた偏心カム(51)を設け、前記昇降支点(40a)を植付出力軸(50)の軸心に対する偏心位相を変えて、苗植付け体(25)の前記ループ軌跡における作動方向を正逆方向に切替可能な切替手段(54a,54b、55)を設けた請求項1記載の苗植機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、走行装置(1)が前進と後進のいづれの方向へ走行する場合にも苗を植付することができ、狭い圃場への適応性が高まる。
請求項2記載の発明によれば、 請求項1記載の発明の効果に加えて、簡単な切替手段(54a,54b、55)で苗植付け体(25)のループ軌跡における作動方向を正逆切替でき、作業性が向上する
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施例について図面とともに説明する。
本実施例の苗植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動する上下動機構26と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付け体25を備えた構成としている。なお、以下の各実施例についての説明では苗植機の前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前と後といい、前進方向に向かって右と左をそれぞれ右と左という。
【0008】
図1と図2に本発明の実施例1の苗植機の側面図、平面図を示す。
苗植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動する上下動機構26と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の苗植付け体25を備えているが、走行装置1は、転動自在に支持した左右一対の前輪6,6とエンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7,7とを備えたものとしている。
【0009】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8内にはエンジン5の出力軸が入り込んでおり、エンジン5の出力軸からミッションケース8内の伝動機構にエンジン動力が伝達される構成となっている。ミッションケース8の左右両側部にチェーン伝動ケース9,9を回動支点9bを中心に回動自在に取り付け、このチェーン伝動ケース9,9の回動支点9bにミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸9aの先端が入り込んでチェーン伝動ケース9,9内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力はチェーン伝動ケース9,9内の伝動機構を介して機体後方側に伸びてその後端側側方に突出する車軸10,10に伝動し、後輪7,7が駆動回転するようになっている。
【0010】
左右水平用油圧式の伸縮作動可能なローリングシリンダ15が機体の左側に設けられ、該左右水平用ローリングシリンダ15のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に天秤杆13が取り付られている。また、天秤杆13の連結部の右側はロッド14に連結している。
【0011】
機体中央部に設けられた昇降用油圧シリンダ12が畝高さ検知センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、そのピストンロッド12aが機体後方に突出すると、ロッド14や左右水平制御用ローリングシリンダ15も後方に移動し、前記ロッド14とローリングシリンダ15にそれぞれ連結しているアーム11,11が機体側面視で後方に回動し、これに伴い左右のチェーン伝動ケース9,9が回動支点9bを中心に下方に回動して機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド12aが機体前方に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴いチェーン伝動ケース9,9が回動支点9bを中心に上方に回動して、機体が下降する。
【0012】
また、前記左右水平制御用ローリングシリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド12a先端と連結する上下軸心周りに回動して左右のチェーン伝動ケース9,9を互い違いに上下動させて機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用ローリングシリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成にしている。
【0013】
一対の前輪6,6は、エンジン5の下方の左右中央位置から左右に伸びる支持軸20に取り付けた前輪支持フレーム16の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸17に回転自在に取り付けている。
【0014】
操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム22の後端部に取り付けられている。機体フレーム22は、機体の左右中央に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム22の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部2aとしても良い。
【0015】
苗植付け体25作動用の上下動機構26は、ミッションケース8内から苗植付け体25を駆動させる動力を伝動軸21を介して伝動する伝動機構を内装する植付伝動ケース18に装着している。植付伝動ケース18内には苗植付け体上下動機構26を昇降駆動するための動力を伝達する伝動機構を内装している。
【0016】
なお、植付伝動ケース18内の伝動機構には、上下動機構26及び左右一対の苗植付け体25,25をその昇降動最上位の位置で、又はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構と、上下動機構26及び苗植付け体25,25の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付け体25,25による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0017】
図3には苗植付装置28の側面図を示す。苗植付装置28は、先端が下方に向かうくちばし状の前後苗植付け体25F,25Rからなる苗植付け体25と、該苗植付け体25の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付け体25を上下動させる上下動機構26と、くちばし状の苗植付け体25の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体25の下端部が前後に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体25を開閉する開閉機構27を備えている。
【0018】
また、苗植付装置28に苗を供給する苗供給装置32は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗供給カップ29と、該苗供給カップ29を苗植付け体25の上方を通過するように周回移動させる移動機構30と、苗植付け体25の上方位置で苗供給カップ29の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体25に苗を供給する開放機構31(詳細は図示せず)を備えている。
苗植付装置28は、苗植付け体25を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体25を左右に設定間隔で二体並べて配備した二条植えの構成としている。
【0019】
二体の苗植付け体25,25は、植付伝動ケース18の左右両側部に設けた上下動機構26,26に一体づつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体25,25の前側苗植付け体25F,25Fの上部で後側に伸びる左右のアーム部25Fa…の後端部を後側の苗植付け体支持軸34に回動自在に取付け、後側苗植付け体25R…の上部で前側にのびる左右のアーム部25Ra…の前端部を前側の苗植付け体支持軸33に回動自在に取付け、前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa…と後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra…のそれぞれ前後中間部では、一方側のアーム部25Ra…に設けた横方向のピン25a…を他方側のアーム部に設けた左右方向の長孔25b…に係合させている。前後の苗植付け体支持軸33,34の左右両端部は、連結部材35,35で連結している。
【0020】
そして、前後の苗植付け体支持軸33,34の左右中間部はそれぞれ苗ガイド連結部材36,36を介して、苗を苗植付け体25内に案内する筒状の苗ガイド37に連結している。更に、左右の苗ガイド37,37には、その左右間側に連結部材38、38を着脱自在に、且つ一体的に装着していて、その連結部材38、38を介して左右の一対の苗ガイド37,37の左右間に配置した一対の連結部材39,39とそれぞれ連結している。
【0021】
連結部材39は、上下動機構26の上下の昇降リンク40,41の各先端部を上下に連結している。後側苗植付け体25Rのアーム部25Raが前側の苗植付け体支持軸33回りに上方に回動すると、前記ピン25aによる連結によって前側苗植付け体25Fのアーム部25Faも連動して上方に回動し、よって、前側苗植付け体25Fは後側の苗植付け体支持軸34回りの回動によって前方に移動し、後側苗植付け体25Rは、前側の苗植付け体支持軸33回りの回動によって後方に移動し、よって、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。また、逆の動作によって、前後に開いた苗植付け体25…の下部側は閉じる。
【0022】
前記苗ガイド37は、苗供給装置32から供給された苗を苗植付け体25内に案内する筒状体であり、上部には、苗供給装置32の苗落下部下方に向ってのびる上部ガイド37aを設けている。これにより、苗植付け体が苗供給装置32の苗落下部下方からずれて位置していても、苗供給装置32から落下供給される苗を適確に苗植付け体25内に供給することができる。
【0023】
苗植付け体25…の上下動機構26は、植付伝動ケース18の左右両側部に設けている。具体的には、機体に固着した支持フレーム19の上部に固着した植付伝動ケース18の左右側方に突出させた軸に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体25…に連結した上側と下側の昇降リンク40,41と、植付伝動ケース18の側部から突出させた駆動回転する駆動軸42と、該駆動軸42の先端部に一端側を一体回転するように取付けた駆動アーム43と、該駆動アーム43の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク40とに回動自在に連結する連動アーム44とで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク40,41の各後端部を前記苗植付け体支持軸33,34の左右中間部付近に取付けた連結部材39に回動自在に取付け、上側と下側の昇降リンク40,41と伝動ケース12と連結部材39とで苗植付け体上下動機構26を形成するように設けている。
【0024】
従って、駆動軸42の回転により駆動アーム43が駆動回転すると、昇降リンク40,41が植付伝動ケース18の左右側部に設けた二つの回転軸40a,41aを回動中心に上下動して、左右の苗植付け体25…が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0025】
また、この苗植機では、苗植付け体25…を昇降する上下動機構26を、第一植付出力軸50の先端部(図5参照)の回転軸40a回りに昇降駆動される第一昇降リンク40と、該第一昇降リンク40の下側で下側支点軸52(図5参照)の第二回転軸41a回りに昇降自在に設けた第二昇降リンク41と、該第一昇降リンク40及び第二昇降リンク41の各先端部を連結する連結部材39とで構成し、該連結部材39と苗植付け体25…を連結して苗植付け体25…を昇降する構成とし、第一軸40aを、植付伝動ケース18内の伝動機構を介して伝達された動力により回転駆動される植付出力軸50の先端部に該出力軸50の中心軸心より偏心させた位置に回転軸40aを有する偏心カム51を介して取り付け、該植付出力軸50の回転によって植付出力軸50の軸芯を中心として偏心カム51の偏心量(第一軸40aと植付出力軸50の軸芯との間隔)を半径として回転駆動される構成とし、前記第一昇降リンク40の昇降駆動中に回転軸40aが回転駆動することにより苗植付け体25をその昇降動中に前後に傾けるように構成している。
【0026】
苗植付け体25…の開閉機構27は後側苗植付け体25Rb,作動アーム45及び連結ロッド46から構成され、後側苗植付け体25R…の上部で後側にのびる開閉用アーム部25Rb…の先端部は連結ロッド46に接続可能になっており、作動アーム45は上側の昇降リンク40の基部を枢着している軸40aに回動自在に取付けられている。この作動アーム45の先端部と開閉用アーム部25Rb…の先端部を長さ調節可能な連結ロッド46で連結し、そして、作動アーム45が駆動軸42の駆動回転中に、該駆動軸42に一体回転するよう取付けたカム47の作用を受けて、設定したタイミングで苗植付け体25…に対して上昇動作するようにして構成している。
【0027】
これにより、駆動軸42が駆動回転して苗植付け体25…が上下動すると、作動アーム45も苗植付け体25…と共に上下回動し、そして、苗植付け体25…が下降下端位置に達すると、カム47の作用位置の変化により作動アーム45が苗植付け体25…に対して上昇動作し、これにより、後側苗植付け体25R…が前側の苗植付け体支持軸33回りに回動して後方に移動し、また、これに連動して前側苗植付け体25F…が後側の苗植付け体支持軸34回りに回動して前方に移動して、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体25…が上昇してカム47の作用位置の変化により作動アーム45が苗植付け体25…に対して元の位置に下降動作して、前後に開いた苗植付け体25…の下部側が閉じる。
【0028】
上記構成で、図4に一対の昇降リンク40,41と苗植付け体25との取付状態の側面図を示し、図5に一対の昇降リンク40,41の回転軸40a,41aの取付構造図を示す。図5は図4(a)に示す状態での偏心カム51を植付出力軸50の両端部に取り付け、第一昇降リンク40の回転軸40aに偏心カム51の回転軸(偏心軸)40aを装着した状態と第二昇降リンク41の回転軸41aに下側支点軸52の両端を取り付けた状態を示す。
【0029】
図4(a)には苗植機が前進しながら苗植付を行う通常時における植付出力軸50の先端部に取り付けた偏心カム51の回転軸(=偏心軸)40aを植付出力軸50の軸心より偏心して取り付けた場合の苗植付け体25の苗植付時のループ軌跡の側面図を示し、図4(b)には苗植機が後進しながら苗植付を行う時などにおいて苗植付時のループ軌跡を図4(a)に示す軌跡とは逆向にしたい場合(逆作動時)には植付出力軸50の先端部に取り付けた偏心カム51の偏心軸40aを図4(a)における偏心位置から180度位相をずらせて植付出力軸50に取り付けた場合の苗植付け体25の苗植付軌跡の側面図を示す。図4(a)に示す通常時には苗植付け体25は前傾しながら上昇し、図4(b)に示す逆作動時には苗植付け体25は後傾しながら上昇するループ軌跡を形成する。
【0030】
図5に示すように、2つ並列で180度位相が異なる位置の植付出力軸50に設けられる一対のキー54a,54bにより植付出力軸50はエンジン駆動動力が伝達されるスプロケット55と連結する構成であり、スプロケット55を図5(a)に示すようにキー54aに係止させると図4(a)の位置で偏心カム51が昇降リンク40に取り付けられることになり、該位置から図5(b)に示すように別のキー54bに係止される位置に植付出力軸50に沿って移動させて、植付出力軸50を180度回転させてスプロケット55の溝にキー54bを係止させると図4(b)の位置で偏心カム51が昇降リンク40に取り付けられることになる。
【0031】
前記スプロケット55の植付出力軸50に沿う移動は、植付伝動ケース18に固定支持された植付左右移動モータ56で行う。前記モータ56の回転軸56aに設けられたピニオン57と噛合するラック52aを下側支点軸52に形成しているので、モータ56の駆動で植付伝動ケース18が植付出力軸50と下側支点軸52の軸方向に移動することができる。
【0032】
スプロケット55の植付出力軸50との連結部分には、植付出力軸50に沿って溝(図示せず)があり、該溝とキー54a又は54bが噛合する構成になっている。よって、モータ56の駆動でスプロケット55を植付出力軸50に沿って移動させ、植付出力軸50を180度回転させてスプロケット55の前記溝への植付出力軸50の取付位置を変更すると、偏心カム51の昇降リンク40の回動支点40aへの取付位置が180度位相ずれするので図4(a)と図4(b)に示す2つの苗植付け体25の苗植付軌跡を得ることができる。
【0033】
このように植付左右移動モータ56と前後進切換レバー59の作動に連動する前後進センサ60を制御部61による制御で連動させることで機体の前進時と後進時で上下昇降リンク40,41の動きを変えることができる。
【0034】
このような簡単な切替手段で苗植付け体25の苗植付時のループ軌跡を正逆切替ることができるため、苗植機の前進時と後進時のいづれの方向においても苗の植え付けができ、後進時に連動して苗植付け体25をループ軌跡を前進時と変えることにより、従来技術に比べて狭い圃場への適応性が高まり、作業性が向上する。
【0035】
また本実施例の苗植機には鎮圧輪が前後一対ずつあり、一対の前鎮圧輪24a,24aは苗植え付け前の畝面を均すだけでなく、苗植え付け高さの調節用のセンサー輪を兼ねており、該前鎮圧輪24a,24aの接地位置に応じてミッションケース8内の図示しない油圧バルブを作動制御して昇降用油圧シリンダ12を作動させて機体の高さを調整する機能も備えている。また、後鎮圧輪24b,24bは苗植え付け後の苗植え付け面を均す機能がある。
【0036】
前後鎮圧輪24a,24bの回動軸部が支持フレーム19の下端部の支点19aを中心回動自在に支持された左右一対のアーム63,63に固定されている。
また、後鎮圧輪24bの後方に一対の畝案内ローラ64,64が配置され、該畝案内ローラ64,64の回動軸64aの部分は支持フレーム19の下端部の支点19aを中心回動自在に支持されたアーム65,65に固定されている。またアーム65,65の側面の下方にアーム63,63の側面から突出させた突起63a,63aが当接しているので前後鎮圧輪24a,24bを収納するレバー67をリフトさせると、前後鎮圧輪24a,24bだけでなく畝案内ローラ64,64も上方移動する。
【0037】
また、ボンネット69の上部に座席23を設け、苗供給装置32との間に足を乗せる平面状のステップ70を設けている。
さらに、エンジン動力は後輪7,7に伝達されて後輪7,7を駆動し、一対の畝案内ローラ64,64が畝Uの傾斜面上を回転し、畝溝を後輪7,7が走行することで機体が進行し、畝U上に苗の植え付けができる。すなわち、図2に示すように一対の畝案内ローラ64,64が畝Uの傾斜面上を回転するときに畝Uの傾斜面の位置によって左右方向に振れると、その振れに対応してアーム65に連結したリンク部材72を介し前輪6,6の操舵角度を変えることができる。
【0038】
また、前記ステップ70上には左右のサイドクラッチペダル73,73があるので、該サイドクラッチペダル73,73を踏み込むと、図1に示す該ペダル73,73と一体のアーム74,74の回転軸74aを中心に図示しないミッション内のサイドクラッチが切れるので機体の操舵が出来る。
図1の側面図に示したように、本実施例の苗植機に乗車している補助者用のサイドクラッチレバー75の位置を苗供給装置32の下から補助者の足元の間に配置した構成にしてもよい。
【0039】
図6には補助者座席23の横にメイン苗枠77を配置した構成を備えた苗植機の側面図を示す。苗枠77の鉛直方向を向いた回動軸78を有する支持アーム79を機体に取り付け、その回動軸78にメイン苗枠77を設置可能にしているので、補助者がメイン苗枠77内に苗を取りやすい位置に保ちつつ、苗昇降時には回動させて、補助者が苗植機への乗降りの邪魔にならない。
【0040】
図7には苗植付け体25に上下動機構26を取り付けたハンドル80の操作による苗の植え付け条間の調節を容易に行うことが可能な構成を示す。
ハンドル80を第一昇降リンク40と第二昇降リンク41の共通基部に設け、該ハンドル80の回転軸80aに螺子部80bを設け、該螺子部80bを苗植付け体25の基部に設けた雌螺子穴25aに取り付ける。ハンドル80を回転させると螺子部80bが螺子穴25aから進退自在になるので、苗植付け体25の左右方向の位置を変えることが出来る。このとき苗供給カップ29の下面の蓋を開閉する移動機構30のターンテーブル81の供給カップ開閉部81aのターンテーブルフレーム82に対する前記苗供給カップ29の取付位置を苗植付け体25の左右方向への移動量と同じだけ、左右方向に移動させる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の苗植機は、野菜苗に限らず、その他の苗を植え付ける苗植機として利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例の苗植機の側面図である。
【図2】図1の苗植機の平面図である。
【図3】図1の苗植機の苗植付け体部分の側面図である。
【図4】図1の苗植機の苗植付け体部分の通常作動時の軌跡を説明する側面図(図4(a))と逆作動時の軌跡を説明する側面図(図4(b))である。
【図5】図4(a)の通常作動時の一対の昇降リンクの回転軸の取付構造図(図5(a))と、図4(b)の逆作動時の一対の昇降リンクの回転軸の取付構造図(図5(b))である。
【図6】図1の苗植機にメイン苗枠部分を取り付けた場合の要部側面図である。
【図7】図1の苗植機の苗植付け体の左右方向の配置位置を変更する機構を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 走行装置 2 操縦ハンドル
5 エンジン 6 前輪
7 後輪 8 ミッションケース
9 チェーン伝動ケース 9a 車輪駆動軸
9b 回動支点 10 車軸
11 アーム 12 昇降用油圧シリンダ
12a ピストンロッド 13 天秤杆
14 ロッド 15 ローリングシリンダ
16 前輪支持フレーム 17 車軸
18 植付伝動ケース 19 支持フレーム
20 支持軸 21 伝動軸
22 機体フレーム 24a,24b 前後鎮圧輪
25 苗植付け体 25a ピン
25b 長孔 25F 前側苗植付け体
25Fa アーム部 25R 後側苗植付け体
25Ra アーム部 26 苗植付け体上下動機構
27 苗植付け体開閉機構 28 苗植付装置
29 苗供給カップ 30 移動機構
31 開放機構 32 苗供給装置
33,34 苗植付け体支持軸 35 連結部材
36 苗ガイド連結部材 37 苗ガイド
38,39 連結部材 40,41 昇降リンク
40a,41a 回転軸 42 駆動軸
43 駆動アーム 44 連動アーム
45 作動アーム 46 連結ロッド
47 カム 50 植付出力軸
51 偏心カム 52 下側支点軸
52a ラック 54a,54b キー
55 スプロケット 56 植付左右移動モータ
57 ピニオン 59 前後進切換レバー
60 前後進センサ 61 制御部
63 アーム 63a 突起
64 畝案内ローラ 64a 回動軸
65 アーム 67 レバー
69 ボンネット 70 ステップ
72 リンク部材 73 サイドクラッチペダル
74 アーム 75 サイドクラッチレバー
77 メイン苗枠 78 回動軸
79 支持アーム 80 ハンドル
81 ターンテーブル 82 ターンテーブルフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体を前後進させる走行装置(1)と該走行装置(1)の前後進方向への駆動系に連動してループ状の軌跡を描きながら昇降して苗を圃場に植え付ける苗植付け体(25)とを備えた苗植機において、苗植付け体(25)の前記ループ軌跡における作動方向を走行装置(1)の前後進方向に対応させてそれぞれ正逆切替可能な構成を備えたことを特徴とする苗植機。
【請求項2】
走行装置(1)の前後進方向への駆動系に連動する苗植付け体(25)の上下動機構(26)と該苗植付け体(25)の上下動機構(26)の基部側に植付出力軸(50)の軸心に対して偏心した昇降支点(40a)を備えた偏心カム(51)を設け、前記昇降支点(40a)を植付出力軸(50)の軸心に対する偏心位相を変えて、苗植付け体(25)の前記ループ軌跡における作動方向を正逆方向に切替可能な切替手段(54a,54b、55)を設けたことを特徴とする請求項1記載の苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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