苗移植機
【課題】従来の苗移植機は、畝のない平地の圃場で移植作業を行う場合、植え終わり位置(圃場の端に達した位置)を検出する手段がなく、オペレータの勘(感)に頼るか、又は畦(圃場の端)を検出するために、別体の障害物センサを高いコストをかけて製作しなければならない課題があった。
【解決手段】この発明は、上記課題を解消するために、車体の苗植付装置より進行方向の前方位置に、植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、前記苗植付装置の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを検出して植付終了の情報を出力する前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体の進行方向前方側に、検出位置を変更して障害物センサ(3a)としての機能が発揮できる構成とした苗移植機である。
【解決手段】この発明は、上記課題を解消するために、車体の苗植付装置より進行方向の前方位置に、植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、前記苗植付装置の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを検出して植付終了の情報を出力する前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体の進行方向前方側に、検出位置を変更して障害物センサ(3a)としての機能が発揮できる構成とした苗移植機である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植付装置の植終り位置を検出する植終りセンサを、障害物センサとして利用する苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、この種の苗移植機は、例えば、特開2006−333771号公開特許公報に示されているように、本件の出願人によって出願した公知の技術がある。
該公報に記載されている苗移植機は、原動機、及びその動力を変速伝動する走行ミッション装置を機体前部の機体幅の略中央に配置し、かつ、作業者が投入した苗を所定位置まで移送する苗供給装置、及び移送された苗を受けて圃場に植え付ける苗植付装置からなる植付部を機体後部に配置し、この植付部を上記原動機及び走行ミッションより幅方向寸法を大きく多条植え用に構成したものであって、上記植付部の前側には、原動機、及び走行ミッションを挟んだ左右の機体側部にそれぞれ作業用座席を設け、これら作業用座席は、後方配置の上記苗供給装置に臨んで配置した構成であることが、明細書と添付図面に開示されている。
【特許文献1】特開2006−333771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、この種の苗移植機(特許文献1の図1、及び図2参照)は、作業者用座席に座って苗供給カップに苗を補給している作業者が、車体の進行方向に対して、後ろ向きに座っており、進行方向の前方の確認が困難な構成になっている。したがって、苗移植機は、車体に設けている苗植付装置が苗を植え付ける圃場の畝の存在を、予めセンサで検出しながら移植作業を続け、畝がなくなると、該センサの検出情報に基づいて、植付終了の警報を発したり、移植機の走行を自動停止する制御等の手段をとることが考えられる。
【0004】
しかしながら、苗移植機は、畝のない平地の圃場においても移植作業を行う場合が多く、植終り位置(圃場の端に達した位置)を検出する手段がなく、オペレータの勘(感)に頼るか、又は畦(圃場の端)を検出するために、別体の障害物センサを高いコストをかけて製作しなければならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。すなわち、苗を圃場に植え付ける苗植付装置(1)が車体(2)に設けられ、該車体(2)の前記苗植付装置(1)より進行方向の前方位置において、苗植付装置(1)による植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、該植終りセンサ(3)は、前記苗植付装置(1)の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを車体(2)の下方で検出すると植付終了の情報を出力する構成とし、前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体(2)の進行方向前方側に検出位置を変更して障害物センサ(3a)に切り替えできる構成とした苗移植機であって、畝のない平地の圃場で移植作業を行うときには、植終りセンサ(3)の位置を進行方向前方側に位置の変更をするだけの簡単な操作で植終り位置を検出する障害物センサとして使用できるものとしている。
【発明の効果】
【0006】
この発明は、苗移植機による苗の植付作業を畝のある圃場で行う場合には、畝がなくなると、その検出情報に基づいて植終りの警報を発したり、苗移植機の走行を停止制御する植終りセンサ(3)を、畝のない平地の圃場の移植作業にも活用して、植終り位置の検出ができる優れた特徴がある。
【0007】
そして、この発明は、平地の圃場では、植終りセンサ(3)の検出位置を車体(2)の前方側に変更して、障害物センサ(3a)として畦等を検出できる構成とするものであって、別体のセンサを必要とせず、経費がかからない利点と共に、安全に苗の移植作業ができる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、苗移植機は、図2、及び図3に示すように、車体2に左右一対の前輪5,5と後輪6,6とを設け、後部に操縦ハンドル7を設けており、前記車体2の後部に寄った位置に昇降駆動する上下動機構8と連結して昇降作動する開閉可能なくちばし状の苗植付装置1を備えた構成としている。
【0009】
なお、以下の各実施例の説明では、苗移植機の前進方向に向かって、前側と後側とをそれぞれ前・後といい、前進方向に向かって見た状態を基準にして左・右という。
図2はこの発明の実施例である苗移植機の側面図、図2は平面図である。
【0010】
そして、苗移植機は、上述した前・後輪で走行する構成であるが、車体2の前部に搭載されているエンジン10で前記後輪6,6を駆動して走行する構成としている。
そして、エンジン10の後側に装置したミッションケース11は、そのエンジン10から入力された回転動力によってケース内の伝動機構が伝動される構成となっている。そして、ミッションケース11は、図3に示すように、左右両側部に伝動チエンケース12,12の基部を回動自在になるように取り付け、この伝動チエンケース12,12の回動中心にミッションケース11から左右両外側に延出させた車輪駆動軸13の先端を挿入させて軸架し、伝動チエンケース12,12内の伝動チエンに走行動力を伝達する構成としている。そして、走行動力は、伝動チエンケース12,12内の伝動チエンを介して車体2の後方側に伝動され、その後端部、外側に軸架している車軸に達し、前記した左右一対の後輪6,6を駆動回転する構成としている。
【0011】
そして、上記左右の伝動チエンケース12,12は、詳細な図示は省略したが、基部のミッションケース11への取付部に、上方に伸びるアームを一体に取り付けていて、これがミッションケース11に固定された昇降用油圧シリンダ14のピストンロット先端に取り付けた連結体(図面省略)の左右両側と連結している。
【0012】
そして、昇降用油圧シリンダ14が作動して、そのピストンロットが機体後方に突出すると、左右の前記アームは、後方に回動し、これに伴い伝動チエンケース12,12を下方に押し下げて回動して車体2が上昇し、反対に、その昇降用油圧シリンダ14が縮小してピストンが前方に移動し、シリンダ内に引っ込むと、左右の前記アームは前方側に回動し、これに伴い伝動チエンケース12,12が上方に回動して車体2が下降する構成になっている。この昇降油圧シリンダ14は、機体に対する畝・溝の高さを検出するセンサ(図示省略)の検出に基づいて作動する構成としている。なお、車体2の上下調節は、植付深調節レバーや操縦ハンドル7に設けた操作スイッチによっても操作ができる構成としている。
【0013】
なお、車体2には、ローリング制御装置を装備して車体2の左右傾斜を傾斜センサで検出して左右水平に戻す制御をする構成となっているが、これに関する説明は省略する。
そして、前記昇降油圧シリンダ14のすぐ上側にステップ17を配置している。
【0014】
つぎに、苗植付装置1は、図2、及び図3に示すように、側面視では後輪6,6より後方の位置に配置され、平面視では、左右の前輪5,5と後輪6,6とが畝の両側にある溝を走行するのに対して、その間に形成されている畝(中央部)に苗を植え付けるように配置した構成としている。実施例の場合、一つの畝に2条の植え付けができるように、苗植付装置1を左右に併設した構成としている。そして、苗植付装置1は、図2で解るように、上側に漏斗状になって苗を受け入れる苗受け部1aがあり、その下側に連続して、下方に向かうくちばし状の苗植付体1bが構成され、苗受け部1aで受け取った野菜の苗を下側の苗植付体1bによって圃場の畝に植え付けができる構成としている。そして、苗植付装置1は、図面に示すように、上下動機構8、すなわち、平行リンク機構からなる昇降リンク8a,8bの先端側に連結され、伝動機構によって上下動する過程で植付軌跡Tを描きながら回動して畝の上に苗の植え付けができる構成としている。
【0015】
そして、苗植付装置1は、図示を省略しているが開閉機構を備えており、くちばし状の苗植付体1bを閉じた状態で、上側の苗受け部1aが上方から苗を受け入れ、内側に苗を収容したまま植付軌跡Tを描いて圃場の畝に達すると、苗植付体1bの下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出して植え付けができる構成となっている。
【0016】
そして、苗植付装置1は、図2に示す実施例の場合、苗植付体1bの下部外側にマルチフィルムを切断するマルチカッター15が設けられ、そのカッター15の内側に左右に貫通させた土抜き孔16を開口させた構成としている。
【0017】
したがって、実施例の苗植付体1bは、土壌の畝に上から挿入した状態で左右に開いて苗の植付穴を形成するとき、マルチカッター15に開口した横向きの土抜き孔16を土が通過して左右に移動できるから、植付穴が必要以上に大きくならない利点がある。
【0018】
つぎに、苗供給装置18は、図面に示すように、車体2の後部で前記苗植付装置1の上方位置において、平面視で車体2の左右方向に長い長円形状の周回経路で周回できる構成とし、苗を上方から受け入れて内側に収容する複数の連続した供給カップ19と、詳細な説明は省略するが、該供給カップ19を前記苗植付装置1の上方位置を通過するように周回移動させる移動機構と、苗植付装置1の上方位置で供給カップ19の底蓋を開放して内側に収容している野菜の苗を落下させて前記苗受け部1aに供給する解放機構とを備えた構成としている。
【0019】
この場合、苗供給装置18は、図面に示すように、それぞれ供給カップ19を無端チエンによって連続した状態に連結して設け、左右に軸架したスプロケット20,20に巻き掛け、下側の伝動装置21から取り出した回転動力で伝動する構成としている。そして、スプロケット20,20は、前記伝動装置21から上方に延長して設けた伝動支持台22に取り付けた支持枠23に軸受・支持された構成としている。
【0020】
そして、作業者用座席25は、図面に示すように、既に説明したエンジン10側の上方に装置し、苗載せトレー26上の苗を前記苗供給装置18の供給カップ19に順次補給する作業者が座れるように構成している。この場合、作業者用座席25は、車体2の前部に寄った位置にあって、作業者が車体2の前進方向に背中を向けて後ろ向きに座るように配置されている。
【0021】
そして、前記周回経路を回転する供給カップ19の前側(作業者用座席25側)には、巻込み防止カバー28を設け、周回する回転部材から作業者を安全に保護する構成としている。
【0022】
そして、補助テーブル30は、図3に示すように、周回する供給カップ19で囲まれた内側に配置して、前記苗載せトレー26を載置する構成とするが、平面視でコ字型に形成したトレー支持杆31を、このテーブル30から後方の操縦ハンドル7側に向けて突出させ、その両端部をテーブル30に取り付けた構成としている。そして、このトレー支持杆31は、後側の横方向に配置したバー31aの部分を、平面視(図3参照)で下側を周回する供給カップ19より後方に配置し、苗植付装置1の上側(投影面内)を避けた構成としている。この構成によって、トレー支持杆31は、最初の植え始において、苗植付装置1の上方に位置する供給カップ19への苗供給に際して邪魔にならず、苗が自由に供給できる特徴がある。
【0023】
そして、上記トレー支持杆31は、図2に示すように、通常サイズの苗載せトレー26を載置した場合には、トレー26が内側に嵌まり込んだ状態になって補助テーブル30に支えられて動かないように保持できる構成となっている。そして、トレー支持杆31は、通常サイズより大型の苗載せトレー26を載置すると、トレー26がバー31a上に乗り、左右両側をサイドバー31b,31bで支え、前側が補助テーブル30の前壁で受け止められて保持されるから、車体2の走行に伴う振動や旋回時でも動かないように支持できる構成となっている。
【0024】
このように、補助テーブル30とトレー支持杆31とは、具体的な載置状態の図示は省略したが、通常サイズの苗載せトレー26でも、それより大型の苗載せトレー26でも、載置位置を保持できるものであって、車体2の走行や旋回等にも充分対応できる特徴がある。したがって、作業者は、作業者等座席25に座った状態で苗載せトレー26に充填されている野菜の苗を、手前の位置に周回してくる空の供給カップ19に順次補給することができる。
【0025】
つぎに、この出願に係る発明の主要部となる植終りセンサ3について実施例を説明する。
まず、植終りセンサ3は、図1、及び図2に示すように、既に説明した苗植付装置1の前方位置において、車体2前部に搭載したエンジン10の下方に設けるが、畝の上を転動するローラ33と、該ローラ33を軸架した支持アーム34と、該支持アーム34の回転角度を検出するポテンショメーター35とから構成している。そして、植終りセンサ3は、図1に示すように、上記ローラ33と支持アーム34とポテンショメーター35とが一体に組み立てられて、車体の支持部に回動自由に支持した構成としている。そして、植終りセンサ3は、左右両側の前輪5,5の中間位置(中心位置)で、前記苗植付装置1の前方位置に配置し、その苗植付装置1が苗を植える畝を検出することを目的とするものであって、畝の有無を検出情報として図外のコントローラに出力する構成としている。実施例の場合、コントローラは、植終りセンサ3から畝の検出ができない情報(畝が無い情報)が入力されると、植終りの警報を発する構成としているが、その他の構成例として、苗植付装置1のクラッチを自動切断する制御、或いは、苗移植機の走行を停止する構成にしても良い。
【0026】
そして、植終りセンサ3は、作業中には、常に車体2の左右中心位置で畝の上方位置にあることが必須の要件であるから、例えば、前輪5,5のトレッド調節をして車体2の一方に偏ると、図示は省略したが、車体2の左右中心位置に修正ができるように、横移動可能に構成している。
【0027】
以上のように構成した植終りセンサ3は、図1に示すように、支持アーム34の基部を回動支点にして前輪5より前側の位置に回動できる構成とし、検出位置を前に変更できる構成としている。このようにして、植終りセンサ3は、図1に仮想線で示す前側位置に検出位置を変更して走行し、物(畦等)を検出すると、検出情報を図外のコントローラに入力できる構成となる。そして、コントローラは、上記のように、植終りセンサ3の検出位置を前側に変更すると、障害物センサ3aとなり、障害物(例えば、圃場の端にある畦)の検出情報が入力され、それに基づいて苗移植機を自動停止する制御を行う構成としている。
【0028】
以上のように構成した苗移植機は、畝のある圃場における移植作業にあたっては、植終りセンサ3を図1の実線に示すように、前輪5,5の間で後方の位置(図2参照)にセットして苗植付作業を行うものである。すると、苗移植機は、圃場の終端位置に達して畝がなくなると、コントローラが植終りセンサ3からの検出情報に基づいて警報を発し安全に作業を終了することができる。
【0029】
つぎに、畝のない平地の圃場で移植作業をするときには、植終りセンサ3を図1の仮想線で示すように、前輪より前側に位置を変更して検出位置を前にして苗の移植作業を行うのである。すると、苗移植機は、植終りセンサ3が障害物センサ3aとなって、圃場に端に達すると、畦を検出してコントローラに入力して自動的に走行が停止制御されるものである。
【0030】
このように、この発明に係る実施例は、苗移植機による苗の植付作業を畝のある圃場で行う場合には、畝がなくなると植終りセンサ3からの検出情報に基づいてコントローラによる制御が行われ、植終りの警報を発したり、苗移植機の走行を停止制御し、更に、畝のない平地の圃場の移植作業にも活用して、植終り位置の検出ができるものとなった。
【0031】
以上のように、実施例は、平地の圃場では検出位置を車体2の前方側に変更した植終りセンサ3を、障害物センサ3aとして畦等を検出できるから、別体のセンサを必要とせず、経費がかからず、しかも、安全に苗の移植作業ができるものとなった。
【0032】
つぎに、植終りセンサ3の実施例を説明する。
まず、植終りセンサ3は、図4に示す実施例の場合、基部を車体2側の支持部37に枢着して吊下げ、その中間部の前後両側に中立用スプリング38,38を連結して、前後から張圧状態にして保持し、中立位置を保つことができる構成としている。35はポテンショメーターであって、植終りセンサ3の回動角度を検出して、図外のコントローラに入力し、警報等でオペレータに警報する構成としている。
【0033】
このように、実施例の植終りセンサ3は、前後両側から中立用スプリング38,38で支持しているから、前後どちら側から障害物による押圧作用を受けてもスプリング38,38に抗しながら後退することが可能であり、破損することなく、前後進に対応できる利点がある。
【0034】
つぎに、植終りセンサ3は、図5に示すように、外側の上部に安全ガード39を一体に設け、車体2に設けた調節装置40に前後位置調節が自由にできるように取り付けた構成としている。この場合、植終りセンサ3は、安全ガード39と一体構成にした点に特徴があり、調節装置40により前後調節可能にして警報を発するタイミングの調整ができる利点もある。
【0035】
つぎに、植終りセンサ3は、図6に示すように、中折れ式の支持アーム41の下部にローラ33を軸架して構成している。実施例の場合、植終りセンサ3の上記支持アーム41は、基部の枢着部位をリフトアップ時の支点P1とし、中間部に支点P2を設けて、検出作業時に過剰な押圧力を受けると逃げることができる退避用支点P2とした構成としている。
【0036】
そして、支持アーム41は、先端側41aを基部側41bに張圧スプリング42で張圧して弾性力によって直線状態が保てるように構成している。43はストッパー、44はリフトケーブルを示している。
【0037】
このように構成した植終りセンサ3は、通常作業時には、図6に示すように、支持杆41が、張圧スプリング42の張力によって直線状を保って畝の検出を行いながら移動し、畝の終端位置に達して畝のなくなったことを検出すると、通常通り、図外のコントローラに検出情報を入力する。そして、植終りセンサ3は、移動中に一方側から異常な押圧力を受けると、退避用支点P2を回動支点として張圧スプリング42に抗して退避し、破損を免れることができる。
【0038】
この実施例の場合、支持アーム41は、先端側41aにはリミットスイッチ45が設けられており、このスイッチ45がONの位置に達するまで退避するとコントローラに情報が入力され、通常の警報(畝がなくなったときの警報)とは違った報知の仕方でオペレータに通報するものとしている。
【0039】
つぎに、植終りセンサ3は、図7に示すように、芯材のワイヤー47に球体や角片から形成した複数個のセンサ構成部材48を挿し通して折り曲げ自在の関節式の支持アーム34を構成し、車体2の前部下側に取り付け、先端部にローラ33を支持した構成としている。
【0040】
このように構成した植終りセンサ3は、センサ機能としては従来どおりであるが、支持アーム34が柔軟で折り曲げ可能になっているから異常な外力を受けたときでも破損することなく退避できる特徴がある。
【0041】
つぎに、植終りセンサ3を、図8、乃至図10に示すように、無接触センサに構成した実施例を説明する。
現在、無接触センサは、電流(電波)、超音波等が利用され各種の検出センサとして使用されており、特徴としては、被検出物に直接接触しないで、反射波を利用して検出できる点に利点が多い。
【0042】
まず、植終りセンサ3は、図8に示すように、車体2の前部に超音波の発信器50aと受信器50bとからなる超音波センサ50を取り付け、畝の有無を検出できる構成としている。そして、超音波センサ50は、車体2の前部下面に取り付け圃場の畝の上方に位置し、発信器50aから下向きに発信した超音波が、畝に衝突したのち反射して帰り、受信器50bが受信する間の時間を計測して畝の有無を検出することができる構成となっている。
【0043】
そして、図9に実施例は、光電管センサ51であって、前輪5,5の中心部(車軸支持部)から下向きに支持アーム52,52を延長してリフト自由に構成し、一方に発信器51aと受信器51bとを取り付け、他方に、反射板53を設け、発信器51aから電流を発信して他方に到達すると反射板53に当たって反射され元の側にある受信器51bに受信される仕組みになっている。この場合、光電管センサ51は、畝がある圃場では、発信器51aから発信された電流が畝にあたって消滅し、反射波がなく、畝がなくなると、反射板43の作用で反射波が受信器53bに帰り受信されるから畝がなくなったものと判断できる。
【0044】
そして、これらの光電管センサ51は、苗移植機が圃場の端に達して旋回するときには、支持アーム52,52を自動リフトする構成にしているから、リフト移動に関連して清掃用ブラシ54で清掃できる構成となっている。
【0045】
以上のように、無接触センサは、畝に直接接触して検出する構成ではないから、藁屑や土等が付着して精度が低下する等の心配がなく、接触センサに比較して清掃等に手間がかからない利点がある。
【0046】
つぎに、図11に示す苗移植機は、畝溝に苗を移植するものである。植付土壌面となる畝の溝部を感知して機体を昇降させる昇降センサ3は、支持アーム34の中間部で後方側にのみ折曲げ自由に連結し、後方側にリフトスプリング55を、前方側にアーム固定ワイヤー56を連結した構成としている。この場合、昇降センサ3は、前記アーム固定ワイヤー56を引くことによって、図11に実線で示す検出位置が保持できるもので、このワイヤー56を緩めるとリフトスプリング55の作用で、図面の仮想線で示す上方に移動できる構成となっている。
【0047】
この実施例は、支持アーム34が中間部で中折れ式にして後方側にリフトできる構成であるから、機体旋回時の畝崩しや破損を未然に防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】発明の要部を示す作用側面図
【図2】苗移植機の側面図
【図3】苗移植機の平面図
【図4】実施例の植終りセンサの斜面図
【図5】安全ガード付き植終りセンサの側面図
【図6】中折れ式植終りセンサの側面図
【図7】関節式植終りセンサの側面と組立(分解)図
【図8】超音波センサの作用側面図
【図9】光電管センサの作用平面図
【図10】光電管センサと清掃ブラシと備えた車体の前部側面図
【図11】中折れ式昇降センサの作用側面図。
【符号の説明】
【0049】
1 苗植付装置 2 車体
3 植終りセンサ。 3a 障害物センサ
T 植付軌跡。
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗植付装置の植終り位置を検出する植終りセンサを、障害物センサとして利用する苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、この種の苗移植機は、例えば、特開2006−333771号公開特許公報に示されているように、本件の出願人によって出願した公知の技術がある。
該公報に記載されている苗移植機は、原動機、及びその動力を変速伝動する走行ミッション装置を機体前部の機体幅の略中央に配置し、かつ、作業者が投入した苗を所定位置まで移送する苗供給装置、及び移送された苗を受けて圃場に植え付ける苗植付装置からなる植付部を機体後部に配置し、この植付部を上記原動機及び走行ミッションより幅方向寸法を大きく多条植え用に構成したものであって、上記植付部の前側には、原動機、及び走行ミッションを挟んだ左右の機体側部にそれぞれ作業用座席を設け、これら作業用座席は、後方配置の上記苗供給装置に臨んで配置した構成であることが、明細書と添付図面に開示されている。
【特許文献1】特開2006−333771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、この種の苗移植機(特許文献1の図1、及び図2参照)は、作業者用座席に座って苗供給カップに苗を補給している作業者が、車体の進行方向に対して、後ろ向きに座っており、進行方向の前方の確認が困難な構成になっている。したがって、苗移植機は、車体に設けている苗植付装置が苗を植え付ける圃場の畝の存在を、予めセンサで検出しながら移植作業を続け、畝がなくなると、該センサの検出情報に基づいて、植付終了の警報を発したり、移植機の走行を自動停止する制御等の手段をとることが考えられる。
【0004】
しかしながら、苗移植機は、畝のない平地の圃場においても移植作業を行う場合が多く、植終り位置(圃場の端に達した位置)を検出する手段がなく、オペレータの勘(感)に頼るか、又は畦(圃場の端)を検出するために、別体の障害物センサを高いコストをかけて製作しなければならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。すなわち、苗を圃場に植え付ける苗植付装置(1)が車体(2)に設けられ、該車体(2)の前記苗植付装置(1)より進行方向の前方位置において、苗植付装置(1)による植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、該植終りセンサ(3)は、前記苗植付装置(1)の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを車体(2)の下方で検出すると植付終了の情報を出力する構成とし、前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体(2)の進行方向前方側に検出位置を変更して障害物センサ(3a)に切り替えできる構成とした苗移植機であって、畝のない平地の圃場で移植作業を行うときには、植終りセンサ(3)の位置を進行方向前方側に位置の変更をするだけの簡単な操作で植終り位置を検出する障害物センサとして使用できるものとしている。
【発明の効果】
【0006】
この発明は、苗移植機による苗の植付作業を畝のある圃場で行う場合には、畝がなくなると、その検出情報に基づいて植終りの警報を発したり、苗移植機の走行を停止制御する植終りセンサ(3)を、畝のない平地の圃場の移植作業にも活用して、植終り位置の検出ができる優れた特徴がある。
【0007】
そして、この発明は、平地の圃場では、植終りセンサ(3)の検出位置を車体(2)の前方側に変更して、障害物センサ(3a)として畦等を検出できる構成とするものであって、別体のセンサを必要とせず、経費がかからない利点と共に、安全に苗の移植作業ができる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
まず、苗移植機は、図2、及び図3に示すように、車体2に左右一対の前輪5,5と後輪6,6とを設け、後部に操縦ハンドル7を設けており、前記車体2の後部に寄った位置に昇降駆動する上下動機構8と連結して昇降作動する開閉可能なくちばし状の苗植付装置1を備えた構成としている。
【0009】
なお、以下の各実施例の説明では、苗移植機の前進方向に向かって、前側と後側とをそれぞれ前・後といい、前進方向に向かって見た状態を基準にして左・右という。
図2はこの発明の実施例である苗移植機の側面図、図2は平面図である。
【0010】
そして、苗移植機は、上述した前・後輪で走行する構成であるが、車体2の前部に搭載されているエンジン10で前記後輪6,6を駆動して走行する構成としている。
そして、エンジン10の後側に装置したミッションケース11は、そのエンジン10から入力された回転動力によってケース内の伝動機構が伝動される構成となっている。そして、ミッションケース11は、図3に示すように、左右両側部に伝動チエンケース12,12の基部を回動自在になるように取り付け、この伝動チエンケース12,12の回動中心にミッションケース11から左右両外側に延出させた車輪駆動軸13の先端を挿入させて軸架し、伝動チエンケース12,12内の伝動チエンに走行動力を伝達する構成としている。そして、走行動力は、伝動チエンケース12,12内の伝動チエンを介して車体2の後方側に伝動され、その後端部、外側に軸架している車軸に達し、前記した左右一対の後輪6,6を駆動回転する構成としている。
【0011】
そして、上記左右の伝動チエンケース12,12は、詳細な図示は省略したが、基部のミッションケース11への取付部に、上方に伸びるアームを一体に取り付けていて、これがミッションケース11に固定された昇降用油圧シリンダ14のピストンロット先端に取り付けた連結体(図面省略)の左右両側と連結している。
【0012】
そして、昇降用油圧シリンダ14が作動して、そのピストンロットが機体後方に突出すると、左右の前記アームは、後方に回動し、これに伴い伝動チエンケース12,12を下方に押し下げて回動して車体2が上昇し、反対に、その昇降用油圧シリンダ14が縮小してピストンが前方に移動し、シリンダ内に引っ込むと、左右の前記アームは前方側に回動し、これに伴い伝動チエンケース12,12が上方に回動して車体2が下降する構成になっている。この昇降油圧シリンダ14は、機体に対する畝・溝の高さを検出するセンサ(図示省略)の検出に基づいて作動する構成としている。なお、車体2の上下調節は、植付深調節レバーや操縦ハンドル7に設けた操作スイッチによっても操作ができる構成としている。
【0013】
なお、車体2には、ローリング制御装置を装備して車体2の左右傾斜を傾斜センサで検出して左右水平に戻す制御をする構成となっているが、これに関する説明は省略する。
そして、前記昇降油圧シリンダ14のすぐ上側にステップ17を配置している。
【0014】
つぎに、苗植付装置1は、図2、及び図3に示すように、側面視では後輪6,6より後方の位置に配置され、平面視では、左右の前輪5,5と後輪6,6とが畝の両側にある溝を走行するのに対して、その間に形成されている畝(中央部)に苗を植え付けるように配置した構成としている。実施例の場合、一つの畝に2条の植え付けができるように、苗植付装置1を左右に併設した構成としている。そして、苗植付装置1は、図2で解るように、上側に漏斗状になって苗を受け入れる苗受け部1aがあり、その下側に連続して、下方に向かうくちばし状の苗植付体1bが構成され、苗受け部1aで受け取った野菜の苗を下側の苗植付体1bによって圃場の畝に植え付けができる構成としている。そして、苗植付装置1は、図面に示すように、上下動機構8、すなわち、平行リンク機構からなる昇降リンク8a,8bの先端側に連結され、伝動機構によって上下動する過程で植付軌跡Tを描きながら回動して畝の上に苗の植え付けができる構成としている。
【0015】
そして、苗植付装置1は、図示を省略しているが開閉機構を備えており、くちばし状の苗植付体1bを閉じた状態で、上側の苗受け部1aが上方から苗を受け入れ、内側に苗を収容したまま植付軌跡Tを描いて圃場の畝に達すると、苗植付体1bの下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出して植え付けができる構成となっている。
【0016】
そして、苗植付装置1は、図2に示す実施例の場合、苗植付体1bの下部外側にマルチフィルムを切断するマルチカッター15が設けられ、そのカッター15の内側に左右に貫通させた土抜き孔16を開口させた構成としている。
【0017】
したがって、実施例の苗植付体1bは、土壌の畝に上から挿入した状態で左右に開いて苗の植付穴を形成するとき、マルチカッター15に開口した横向きの土抜き孔16を土が通過して左右に移動できるから、植付穴が必要以上に大きくならない利点がある。
【0018】
つぎに、苗供給装置18は、図面に示すように、車体2の後部で前記苗植付装置1の上方位置において、平面視で車体2の左右方向に長い長円形状の周回経路で周回できる構成とし、苗を上方から受け入れて内側に収容する複数の連続した供給カップ19と、詳細な説明は省略するが、該供給カップ19を前記苗植付装置1の上方位置を通過するように周回移動させる移動機構と、苗植付装置1の上方位置で供給カップ19の底蓋を開放して内側に収容している野菜の苗を落下させて前記苗受け部1aに供給する解放機構とを備えた構成としている。
【0019】
この場合、苗供給装置18は、図面に示すように、それぞれ供給カップ19を無端チエンによって連続した状態に連結して設け、左右に軸架したスプロケット20,20に巻き掛け、下側の伝動装置21から取り出した回転動力で伝動する構成としている。そして、スプロケット20,20は、前記伝動装置21から上方に延長して設けた伝動支持台22に取り付けた支持枠23に軸受・支持された構成としている。
【0020】
そして、作業者用座席25は、図面に示すように、既に説明したエンジン10側の上方に装置し、苗載せトレー26上の苗を前記苗供給装置18の供給カップ19に順次補給する作業者が座れるように構成している。この場合、作業者用座席25は、車体2の前部に寄った位置にあって、作業者が車体2の前進方向に背中を向けて後ろ向きに座るように配置されている。
【0021】
そして、前記周回経路を回転する供給カップ19の前側(作業者用座席25側)には、巻込み防止カバー28を設け、周回する回転部材から作業者を安全に保護する構成としている。
【0022】
そして、補助テーブル30は、図3に示すように、周回する供給カップ19で囲まれた内側に配置して、前記苗載せトレー26を載置する構成とするが、平面視でコ字型に形成したトレー支持杆31を、このテーブル30から後方の操縦ハンドル7側に向けて突出させ、その両端部をテーブル30に取り付けた構成としている。そして、このトレー支持杆31は、後側の横方向に配置したバー31aの部分を、平面視(図3参照)で下側を周回する供給カップ19より後方に配置し、苗植付装置1の上側(投影面内)を避けた構成としている。この構成によって、トレー支持杆31は、最初の植え始において、苗植付装置1の上方に位置する供給カップ19への苗供給に際して邪魔にならず、苗が自由に供給できる特徴がある。
【0023】
そして、上記トレー支持杆31は、図2に示すように、通常サイズの苗載せトレー26を載置した場合には、トレー26が内側に嵌まり込んだ状態になって補助テーブル30に支えられて動かないように保持できる構成となっている。そして、トレー支持杆31は、通常サイズより大型の苗載せトレー26を載置すると、トレー26がバー31a上に乗り、左右両側をサイドバー31b,31bで支え、前側が補助テーブル30の前壁で受け止められて保持されるから、車体2の走行に伴う振動や旋回時でも動かないように支持できる構成となっている。
【0024】
このように、補助テーブル30とトレー支持杆31とは、具体的な載置状態の図示は省略したが、通常サイズの苗載せトレー26でも、それより大型の苗載せトレー26でも、載置位置を保持できるものであって、車体2の走行や旋回等にも充分対応できる特徴がある。したがって、作業者は、作業者等座席25に座った状態で苗載せトレー26に充填されている野菜の苗を、手前の位置に周回してくる空の供給カップ19に順次補給することができる。
【0025】
つぎに、この出願に係る発明の主要部となる植終りセンサ3について実施例を説明する。
まず、植終りセンサ3は、図1、及び図2に示すように、既に説明した苗植付装置1の前方位置において、車体2前部に搭載したエンジン10の下方に設けるが、畝の上を転動するローラ33と、該ローラ33を軸架した支持アーム34と、該支持アーム34の回転角度を検出するポテンショメーター35とから構成している。そして、植終りセンサ3は、図1に示すように、上記ローラ33と支持アーム34とポテンショメーター35とが一体に組み立てられて、車体の支持部に回動自由に支持した構成としている。そして、植終りセンサ3は、左右両側の前輪5,5の中間位置(中心位置)で、前記苗植付装置1の前方位置に配置し、その苗植付装置1が苗を植える畝を検出することを目的とするものであって、畝の有無を検出情報として図外のコントローラに出力する構成としている。実施例の場合、コントローラは、植終りセンサ3から畝の検出ができない情報(畝が無い情報)が入力されると、植終りの警報を発する構成としているが、その他の構成例として、苗植付装置1のクラッチを自動切断する制御、或いは、苗移植機の走行を停止する構成にしても良い。
【0026】
そして、植終りセンサ3は、作業中には、常に車体2の左右中心位置で畝の上方位置にあることが必須の要件であるから、例えば、前輪5,5のトレッド調節をして車体2の一方に偏ると、図示は省略したが、車体2の左右中心位置に修正ができるように、横移動可能に構成している。
【0027】
以上のように構成した植終りセンサ3は、図1に示すように、支持アーム34の基部を回動支点にして前輪5より前側の位置に回動できる構成とし、検出位置を前に変更できる構成としている。このようにして、植終りセンサ3は、図1に仮想線で示す前側位置に検出位置を変更して走行し、物(畦等)を検出すると、検出情報を図外のコントローラに入力できる構成となる。そして、コントローラは、上記のように、植終りセンサ3の検出位置を前側に変更すると、障害物センサ3aとなり、障害物(例えば、圃場の端にある畦)の検出情報が入力され、それに基づいて苗移植機を自動停止する制御を行う構成としている。
【0028】
以上のように構成した苗移植機は、畝のある圃場における移植作業にあたっては、植終りセンサ3を図1の実線に示すように、前輪5,5の間で後方の位置(図2参照)にセットして苗植付作業を行うものである。すると、苗移植機は、圃場の終端位置に達して畝がなくなると、コントローラが植終りセンサ3からの検出情報に基づいて警報を発し安全に作業を終了することができる。
【0029】
つぎに、畝のない平地の圃場で移植作業をするときには、植終りセンサ3を図1の仮想線で示すように、前輪より前側に位置を変更して検出位置を前にして苗の移植作業を行うのである。すると、苗移植機は、植終りセンサ3が障害物センサ3aとなって、圃場に端に達すると、畦を検出してコントローラに入力して自動的に走行が停止制御されるものである。
【0030】
このように、この発明に係る実施例は、苗移植機による苗の植付作業を畝のある圃場で行う場合には、畝がなくなると植終りセンサ3からの検出情報に基づいてコントローラによる制御が行われ、植終りの警報を発したり、苗移植機の走行を停止制御し、更に、畝のない平地の圃場の移植作業にも活用して、植終り位置の検出ができるものとなった。
【0031】
以上のように、実施例は、平地の圃場では検出位置を車体2の前方側に変更した植終りセンサ3を、障害物センサ3aとして畦等を検出できるから、別体のセンサを必要とせず、経費がかからず、しかも、安全に苗の移植作業ができるものとなった。
【0032】
つぎに、植終りセンサ3の実施例を説明する。
まず、植終りセンサ3は、図4に示す実施例の場合、基部を車体2側の支持部37に枢着して吊下げ、その中間部の前後両側に中立用スプリング38,38を連結して、前後から張圧状態にして保持し、中立位置を保つことができる構成としている。35はポテンショメーターであって、植終りセンサ3の回動角度を検出して、図外のコントローラに入力し、警報等でオペレータに警報する構成としている。
【0033】
このように、実施例の植終りセンサ3は、前後両側から中立用スプリング38,38で支持しているから、前後どちら側から障害物による押圧作用を受けてもスプリング38,38に抗しながら後退することが可能であり、破損することなく、前後進に対応できる利点がある。
【0034】
つぎに、植終りセンサ3は、図5に示すように、外側の上部に安全ガード39を一体に設け、車体2に設けた調節装置40に前後位置調節が自由にできるように取り付けた構成としている。この場合、植終りセンサ3は、安全ガード39と一体構成にした点に特徴があり、調節装置40により前後調節可能にして警報を発するタイミングの調整ができる利点もある。
【0035】
つぎに、植終りセンサ3は、図6に示すように、中折れ式の支持アーム41の下部にローラ33を軸架して構成している。実施例の場合、植終りセンサ3の上記支持アーム41は、基部の枢着部位をリフトアップ時の支点P1とし、中間部に支点P2を設けて、検出作業時に過剰な押圧力を受けると逃げることができる退避用支点P2とした構成としている。
【0036】
そして、支持アーム41は、先端側41aを基部側41bに張圧スプリング42で張圧して弾性力によって直線状態が保てるように構成している。43はストッパー、44はリフトケーブルを示している。
【0037】
このように構成した植終りセンサ3は、通常作業時には、図6に示すように、支持杆41が、張圧スプリング42の張力によって直線状を保って畝の検出を行いながら移動し、畝の終端位置に達して畝のなくなったことを検出すると、通常通り、図外のコントローラに検出情報を入力する。そして、植終りセンサ3は、移動中に一方側から異常な押圧力を受けると、退避用支点P2を回動支点として張圧スプリング42に抗して退避し、破損を免れることができる。
【0038】
この実施例の場合、支持アーム41は、先端側41aにはリミットスイッチ45が設けられており、このスイッチ45がONの位置に達するまで退避するとコントローラに情報が入力され、通常の警報(畝がなくなったときの警報)とは違った報知の仕方でオペレータに通報するものとしている。
【0039】
つぎに、植終りセンサ3は、図7に示すように、芯材のワイヤー47に球体や角片から形成した複数個のセンサ構成部材48を挿し通して折り曲げ自在の関節式の支持アーム34を構成し、車体2の前部下側に取り付け、先端部にローラ33を支持した構成としている。
【0040】
このように構成した植終りセンサ3は、センサ機能としては従来どおりであるが、支持アーム34が柔軟で折り曲げ可能になっているから異常な外力を受けたときでも破損することなく退避できる特徴がある。
【0041】
つぎに、植終りセンサ3を、図8、乃至図10に示すように、無接触センサに構成した実施例を説明する。
現在、無接触センサは、電流(電波)、超音波等が利用され各種の検出センサとして使用されており、特徴としては、被検出物に直接接触しないで、反射波を利用して検出できる点に利点が多い。
【0042】
まず、植終りセンサ3は、図8に示すように、車体2の前部に超音波の発信器50aと受信器50bとからなる超音波センサ50を取り付け、畝の有無を検出できる構成としている。そして、超音波センサ50は、車体2の前部下面に取り付け圃場の畝の上方に位置し、発信器50aから下向きに発信した超音波が、畝に衝突したのち反射して帰り、受信器50bが受信する間の時間を計測して畝の有無を検出することができる構成となっている。
【0043】
そして、図9に実施例は、光電管センサ51であって、前輪5,5の中心部(車軸支持部)から下向きに支持アーム52,52を延長してリフト自由に構成し、一方に発信器51aと受信器51bとを取り付け、他方に、反射板53を設け、発信器51aから電流を発信して他方に到達すると反射板53に当たって反射され元の側にある受信器51bに受信される仕組みになっている。この場合、光電管センサ51は、畝がある圃場では、発信器51aから発信された電流が畝にあたって消滅し、反射波がなく、畝がなくなると、反射板43の作用で反射波が受信器53bに帰り受信されるから畝がなくなったものと判断できる。
【0044】
そして、これらの光電管センサ51は、苗移植機が圃場の端に達して旋回するときには、支持アーム52,52を自動リフトする構成にしているから、リフト移動に関連して清掃用ブラシ54で清掃できる構成となっている。
【0045】
以上のように、無接触センサは、畝に直接接触して検出する構成ではないから、藁屑や土等が付着して精度が低下する等の心配がなく、接触センサに比較して清掃等に手間がかからない利点がある。
【0046】
つぎに、図11に示す苗移植機は、畝溝に苗を移植するものである。植付土壌面となる畝の溝部を感知して機体を昇降させる昇降センサ3は、支持アーム34の中間部で後方側にのみ折曲げ自由に連結し、後方側にリフトスプリング55を、前方側にアーム固定ワイヤー56を連結した構成としている。この場合、昇降センサ3は、前記アーム固定ワイヤー56を引くことによって、図11に実線で示す検出位置が保持できるもので、このワイヤー56を緩めるとリフトスプリング55の作用で、図面の仮想線で示す上方に移動できる構成となっている。
【0047】
この実施例は、支持アーム34が中間部で中折れ式にして後方側にリフトできる構成であるから、機体旋回時の畝崩しや破損を未然に防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】発明の要部を示す作用側面図
【図2】苗移植機の側面図
【図3】苗移植機の平面図
【図4】実施例の植終りセンサの斜面図
【図5】安全ガード付き植終りセンサの側面図
【図6】中折れ式植終りセンサの側面図
【図7】関節式植終りセンサの側面と組立(分解)図
【図8】超音波センサの作用側面図
【図9】光電管センサの作用平面図
【図10】光電管センサと清掃ブラシと備えた車体の前部側面図
【図11】中折れ式昇降センサの作用側面図。
【符号の説明】
【0049】
1 苗植付装置 2 車体
3 植終りセンサ。 3a 障害物センサ
T 植付軌跡。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を圃場に植え付ける苗植付装置(1)が車体(2)に設けられ、該車体(2)の前記苗植付装置(1)より進行方向の前方位置において、苗植付装置(1)による植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、該植終りセンサ(3)は、前記苗植付装置(1)の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを車体(2)の下方で検出すると植付終了の情報を出力する構成とし、前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体(2)の進行方向前方側に検出位置を変更して障害物センサ(3a)に切り替えできる構成とした苗移植機。
【請求項1】
苗を圃場に植え付ける苗植付装置(1)が車体(2)に設けられ、該車体(2)の前記苗植付装置(1)より進行方向の前方位置において、苗植付装置(1)による植付作業の終わり位置を検出する植終りセンサ(3)が装備され、該植終りセンサ(3)は、前記苗植付装置(1)の通過する前方位置の圃場面に、苗を植え付ける畝が無くなったことを車体(2)の下方で検出すると植付終了の情報を出力する構成とし、前記植終りセンサ(3)は、前記検出位置より車体(2)の進行方向前方側に検出位置を変更して障害物センサ(3a)に切り替えできる構成とした苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−237104(P2008−237104A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81908(P2007−81908)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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