説明

苗移植機

【課題】苗供給部の複数の苗供給カップへ苗を入れる作業が従来より能率的に行うことができる苗移植機を提供すること。
【解決手段】走行部1aに設けた苗をそれぞれ収納し、所定の搬送経路に沿って搬送される底蓋が開放可能である複数の苗供給カップ40から順次苗植付体60に苗を落下させて圃場に苗植付体60により苗を植え付ける構成であって、苗供給カップ40を備えた苗供給装置4の上部で、突起部70aの間に供給された苗を搬送する苗搬送ベルト70を備えた苗入れ機構71を設けた苗移植機であり、苗供給装置4の上部に苗入れ機構71を設けたので、苗入れ機構71への苗供給が容易となり、苗入れ機構71の苗の供給作業性が従来より向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ苗などの苗を畑圃場に移植するための苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数個連結した苗供給カップを水平方向に周回させる苗供給部の所定の位置の下方に配置した苗植付部の苗植付体にネギ苗を落下させ、該苗植付体を上下方向に移動させる過程で畑圃場面に達した先端部を圃場に差し込むことでネギ苗を畑圃場に植え付ける構成を備えている苗移植機が知られている。例えば下記特許文献1記載の苗移植機は前輪と覆土輪が溝内に配置されていることから、後輪を挟んだ前後位置で溝内を沿うように機体を案内でき、機体の直進性が確保できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示された移植機の構成によれば、苗供給部の複数の苗供給カップに順次ネギ苗を人手により供給しているので、苗供給の作業能率に改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、苗供給部の複数の苗供給カップへ苗を入れる作業が従来より能率的に行うことができる苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本課題を解決するために、次のような解決手段を採用した。
【0007】
請求項1記載の発明は、前後輪(2,3)を有する走行部(1a)と苗の植付機構を有する植付部(1b)を備え、植付部(1b)には苗をそれぞれ収納し、底蓋が開放可能である複数の苗供給カップ(40)を所定の搬送経路に沿って搬送する苗供給装置(4)と、該苗供給装置(4)の下方に苗供給装置(4)により落下供給される苗を圃場に植え付けるための苗植付体(60)を有する苗植付装置(5)と、該苗植付装置(5)を所定の作動軌跡で上下動させるリンク機構(45)に設け、該リンク機構(45)を上下動させる植付伝動ケース(31,32)内の植付伝動機構を走行部(1a)に設けた苗移植機において、前記苗供給装置(4)の上部に苗を苗供給カップ(40)に順次供給できる苗入れ機構(71)を設けたことを特徴とする苗移植機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記苗入れ機構(71)は苗を鉛直方向より所定角度が斜め向きに配置する苗搬送ベルト(70)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記苗入れ機構(71)の搬送ベルト(70)は苗供給側のベルト搬送面をほぼ水平状態とし、苗カップ(40)への苗供給位置ではベルト搬送面をほぼ鉛直状態となるように苗搬送ベルト(70)の苗搬送方向に従って順次ベルト搬送面の傾斜角度を変更することを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、苗供給装置4の上部に苗入れ機構71を設けたので、苗入れ機構71への苗供給側が容易となり、苗入れ機構71の苗の供給作業性が従来より向上する。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の効果に加えて、苗入れ機構71の苗搬送ベルト70のベルト搬送面への苗供給が容易となり、苗入れ機構71の苗搬送ベルト70への苗の供給作業性が従来より向上する。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の効果に加えて、苗入れ機構71の苗搬送ベルト70のベルト搬送面が苗供給側のほぼ水平方向から苗カップ40への落下位置でほぼ鉛直方向に順次傾斜角度を大きくするので、苗搬送ベルト70への苗供給が容易となり、苗搬送ベルト70への苗の供給作業性が従来より向上する。また、苗カップ40へ落下位置で苗はほぼ鉛直方向になるので、適切に苗が供給される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】本発明の別実施例の苗供給装置部分の拡大平面図(図3(a))と側面図(図3(b))である。
【図4】図1の苗移植機の苗植付装置の苗植付体に付着した泥の剥離部材であるスクレーパの機能を説明する苗植付体の要部側面図(図4(a))とスクレーパを湾曲状にした側面図(図4(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
図1と図2には本実施例のネギ苗(イ)などの移植用の苗移植機の全体構造図の側面図と平面図を示す。
【0015】
この苗移植機1は後輪2、2と前輪3を有する走行部1aによって畑圃場面に機体を進行させながら、苗供給装置4、苗植付装置5等からなる植付部1bでネギ苗(イ)を圃場に植付ける構成となっている。前輪3は畝溝内を走行し、左右一対の後輪2、2は畝Uの上面を走行する。
【0016】
作業者は、機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操向操作すると共に、植付作業時には機体側方を歩きながら苗供給装置4へ苗を補給する。以下、各部の構成について説明する。なお、苗移植機1の前進方向を前、後進方向を後といい、前進方向に向いて左側、右側をそれぞれ左、右という。
【0017】
まず、走行部1aについて説明する。
走行部ミッションケース7の前側にエンジン9が配置されており、エンジン9の左側面部には該エンジン9の動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上側をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレーム13の背面右端部に走行部1aと操縦ハンドル6をつなぐメインフレーム14の前端部が固着連結されている。メインフレーム14は、植付部1bの平面視右側を通って後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま植付部1bの後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル6が固着して取り付けられている。
【0018】
走行部ミッションケース7の左右側面から突出する回動筒部15、15に走行伝動ケース16、16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケース16、16の先端部に駆動走行車輪である後輪2、2が軸支されている。
また、エンジン9の下側のエンジン支持フレーム17には機体中央部にピボット軸17aが設けられ、該ピボット軸17aは機体に対する上下支持位置を変更可能な取付穴(図示せず)を有し、その上下支持位置を変えることで、前輪3の接地高さを調節できる。
走行部1aの走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット35には、その後方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該シリンダ21のピストンロッド21aの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、油圧バルブユニット35とメインフレーム14に取り付けた取付部材(図示せず)に支持されたガイド軸(図示せず)に沿って摺動するようになっている。
【0019】
天秤杆22の左右両端部と一対の回動筒部15(右側の回動筒部15は図示せず)に固着したスイングアーム25が連結ロッド26を介してそれぞれ連結している。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該シリンダ27を伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0020】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット35内の制御バルブ(図示せず)で制御して作動させられる。昇降シリンダ21を伸縮作動させると天秤杆22が前後する。スイングアーム25が昇降シリンダ21と連結されているので、天秤杆22の前後動作に連動して上下動して、これと一体の左右の後輪2、2が同方向に同量だけ、機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、左右一方(左側)の後輪2のみが機体に対して上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0021】
エンジン9の後部のミッションケース7内にはエンジン9の出力軸が入り込んでおり、エンジン9の出力軸からミッションケース7内の伝動機構にエンジン動力が伝達される構成となっている。ミッションケース7の左右両側部に走行伝動ケース16を回動支点16bを中心に回動自在に取り付け、この走行伝動ケース16の回動支点16bにミッションケース7から左右両外側方に延出させた回動筒部15の先端が入り込んで走行伝動ケース16内の伝動機構に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は走行伝動ケース16内の伝動機構を介して機体後方側に伸びてその後端側側方に突出する車軸18に伝動し、両側の後輪2が駆動回転する。
【0022】
次に植付部1bの構成を説明する。
連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケース30の上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に第一植付伝動ケース31の先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の作動機構が連結されている。苗植付装置5の苗植付体60は、走行部1aよりも後側に位置している。また、植付部ミッションケース30に基部を固着した上部フレーム34に苗載台55が取り付けられ、苗供給装置4は苗載台55の後方に配置され、また苗供給装置4と苗載台55は苗植付体60の上方に位置するように配置されている。
【0023】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から後方上向きに設けられ、かつ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から後方下向きに設けられ、かつ第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平後方に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第二植付伝動ケース32の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0024】
また、平面視において、植付部ミッションケース30は、連結フレーム13の右端部に固着されており、昇降シリンダ21と天秤杆22と右側の連結ロッド26の間に形成される機体制御機構の右側空間部を通って上方に延びている。そして、第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の左側、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31のさらに左側に配置されている。ローリングシリンダ27が設けられていない分だけ左側空間部よりも右側空間部の方が広いので、植付部ミッションケース30を右側に配置するのが好ましい。
また、植付部ミッションケース30、第一植付伝動ケース31及び第二植付伝動ケース32を左右に振り分けて配置することにより、左右の重量バランスが良好となる。
【0025】
次に苗供給装置4と苗植付装置5の説明をする。
苗植付装置5は先端が下方に向かうくちばし状の苗植付体60と、該苗植付体60の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付体60を上下動させるリンク機構45と、くちばし状の苗植付体60の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能とする閉状態と苗植付体60の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能とする開状態とに苗植付体60を開閉する開閉機構(図示せず)を備えている。
【0026】
なお、植付部ミッションケース30内に内装した伝動機構には、リンク機構45及び苗植付体60をその昇降動最上位の位置で、又はその近傍位置で設定時間停止させる間欠駆動機構とリンク機構45及び苗植付体60の昇降動を停止させるクラッチ機構とを備えている。間欠駆動機構によって停止する時間は、該間欠駆動機構が備える変速機構によって調節され、この調節によって苗植付体60による苗植付株間が変更調節されるようになっている。
【0027】
そして、リンク機構45は苗植付体60の前側に設けた左右方向の軸19の左右中間部に回動自在に連結する昇降アーム46を備える。詳細は省略するが、昇降アーム46が揺動しながら昇降動し、その結果、苗植付体60の下端部が側面視で上下に長い略三日月形状の軌跡X(図1)でそれぞれ昇降動する。
【0028】
苗供給装置4はスプロケット42、42の一方の回転軸42aと第二植付伝動ケース32と自在継ぎ手43a及び伝動軸43bを介して連結することでエンジン9からの動力を伝動して左右のスプロケット42、42を回転駆動させて苗供給カップ40を周回移動させる移動機構61(図1)を備えている。またスプロケット42、42は図示しないラチェットアームなどの回動規制部材により、植付部ミッションケース30内の駆動機構から前記伝動軸43bを介して間欠的に駆動制御され、順次苗供給カップ40をスプロケット42、42により回動する。
【0029】
このように、苗植付装置5に苗を供給する苗供給装置4は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗供給カップ40、…と、該苗供給カップ40、…を苗植付体60の上方を通過するように周回移動させる移動機構61と、苗植付体60の上方位置で苗供給カップ40の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付体60に苗を供給する開閉機構などを備えている。
苗植付装置5は苗植付体60を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付体60を左右に設定間隔で二体並べて配備した二条植えの構成としている。
【0030】
苗植付装置5の移動機構61の作動と同期して苗供給カップ40、…の取付間隔分づつ間欠的に回転し、各苗供給カップ40、…の底部の開閉自在なシャッタ(図示せず)が特定位置で開放することで苗植付装置5の先端が尖ったカップ状の苗植付体60へ供給された苗を圃場の溝等に植え付けることができる。なお、カップ状の苗植付体60が図1の一点鎖線Xに示す軌跡で動き、その上死点近傍で苗供給カップ40から苗を受け取りながら、その下死点近傍で開き、中の苗が溝に植え付けられる。
【0031】
苗植付装置5の前側には育苗トレイ(図示せず)を載せられる苗載台55が設けられている。苗載台55は、上部フレーム34から前方に突設した図示しない取付棒を介して取り付けられ、育苗トレイを水平に支持するように設けられている。
人手により、苗載台55に載置されている育苗トレイのポット苗を各苗供給カップ40、…に補給する。移動機構61により苗の入った苗供給カップ40が苗供給位置まで回転移動すると、シャッタ(図示せず)が開き苗が苗植付装置5の苗植付体60の中に落下する。
【0032】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部にグリップ6a、6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者がグリップ6a、6aを握って操縦する。操縦ハンドル6は機体の左右中心から右側にずらせて設けられているので、畝の右側の溝を歩行しながらハンドル操作や苗補給作業を行いやすく、また、機体の左側を歩行しながら苗補給作業を行う時に邪魔にならない。
【0033】
グリップ6a、6aの下側にはサイドクラッチレバー100、100が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル101が設けられ、該操作パネル101に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー102、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー103等が設けられている。なお、前輪3が駆動輪で、前後輪3、2が共に上下するタイプの苗移植機では、ハンドル6を持ち上げて後輪2を圃場から浮かせて前輪3で機体を旋回させる。
【0034】
本実施例によれば、前輪3の左右方向を変向する前輪変向装置50を設けており、前輪変向装置50の変向操作具51を前輪3及び苗植付体60に対して左右一側方に設けている。
【0035】
図2に示すように、変向操作具51のロッド53の中間部には取付部材52が連結しており、ロッド53の先端部はロッド56及びロッド54の一端部と連結している。ロッド56の他端部は機体側に固着しており、ロッド54の他端部はロッド57の一端部に連結している。更にロッド57の他端部とL字型のロッド58の上端部が連結しているためロッド54、56、57、58は平面視で長方形状を形成している。
【0036】
そして、ロッド58の下部が前輪3の上部にあるピポット軸17aと連結しているため、ロッド58はピポット軸17a回りに変向できる。ロッド58が変向するとロッド57も左右方向(矢印E方向又はF方向)に動く。したがって、ロッド54、56、57、58は平面視平行四辺形の形状を保ちながら左右方向(矢印E方向又はF方向)に動き、前輪3が左右に変向する。
【0037】
このような構成により、変向操作具51を左右方向(矢印A方向又はB方向)に動かすと、変向操作具51に連結している取付部材52は支点52aを中心に矢印J方向に回動する。そして、取付部材52が回動する動きに連動して、取付部材52に連結しているロッド53が前後方向(矢印C方向又はD方向)に動き、更にロッド57が左右方向(矢印E方向又はF方向)に動く。
【0038】
すなわち変向操作具51を矢印A方向(右方向)に動かすとロッド53は矢印C方向に動くので、ロッド54も矢印C方向に動く。そして、ロッド53の動きに連動する取付部材52の回動に連動してロッド57は矢印E方向に動いて前輪3は左側に変向する。一方、変向操作具51を矢印B方向(左方向)に動かすとロッド53は矢印D方向に動くので、ロッド54も矢印D方向に動く。そして、取付部材52の回動に連動してロッド57は矢印F方向に動いて前輪3は右側に変向する。
【0039】
本構成を採用することにより、苗移植機の操向制御ができ、前輪3が通過して鎮圧された畝溝Uに苗植付体60が苗を植え付けるので、苗の植付け姿勢が安定し、植付精度が向上する。また、苗植付体60は千鳥状に複数条植する構成としたので、スペースが狭い畝溝でも、効率良く複数条植が行え、狭いスペースに多数の苗株を移植することができる。また、前輪変向装置50で前輪3の向きを変向することにより、機体を所望の進行方向へ導くことができ機体の直進性を確保できる。更に、作業者は、苗を植え付ける畝溝に対して左右一側方の畝上面を歩行しながら、変向操作具51を容易に操作することができるので、作業者の負担は少ない。また、千鳥状に複数条植する場合でも、前輪変向装置50で前輪3の向きを変向することにより、機体の直進性を確保して、2条の植付位置が畝溝の左右の端に精度良く植付できる。
【0040】
本実施例は一連の苗供給カップ40の上部に苗搬送ベルト70を有する苗入れ機構71を設けたことに特徴がある。前記苗搬送ベルト70を設けたことにより苗供給カップ40に苗を容易に効率よく入れることができる。
【0041】
図1と図2に示すように、苗入れ機構71の平面視で三角形状の無端ベルト状の苗搬送ベルト70は、苗供給カップ40を介してネギ苗(イ)を苗植付体60へ落下供給搬送するための構成である。
【0042】
苗搬送ベルト70は一連の苗供給カップ40が形成する周回軌道の中で苗供給カップ40の直線的な軌道の上方部位を通り、ネギ苗(イ)を受けた苗供給カップ40の底蓋(図示せず)が開放されて苗植付体60へ苗が落下する位置の手前で苗供給カップ40にネギ苗(イ)を供給することができるように、1つの駆動ローラ73と2つの従動ローラ74,75で周回作動される。前記駆動ローラ73は図示しないが苗供給カップ40の周回移動用の移動機構61から動力伝達される。
【0043】
苗供給カップ40の直線的な軌道の上方から外れた位置にある駆動ローラ73は前記スプロケット42の駆動軸に固定支持され、底蓋が開放される苗供給カップ40に近い位置にある第2の従動ローラ75は後述する供給プレート79に回転自在に支持され、もう一方の第1の従動ローラ74は所定の範囲内で移動可能にプレート79に支持されるので、第1の従動ローラ74は苗搬送ベルト70のテンションの調整に使用できる。
【0044】
また苗搬送ベルト70を挟んで第2の従動ローラ75の反対側に回転ローラ77を設けた。この回転ローラ77は苗搬送ベルト70に接当して回転する。
【0045】
また苗搬送ベルト70の搬送方向の回転ローラ77より手前には鉛直方向に幅広形状となるように後述する供給プレート79に取り付けられたガイド部材78を設ける。該ガイド部材78は供給プレート79の苗搬送ベルト70の軌道より外側に張り出している側面に沿って、平面視で苗搬送ベルト70の搬送方向上流側が広がるように湾曲し、苗を受け入れ易い形状としているので苗搬送ベルト70に沿って移動するネギ苗(イ)が苗搬送ベルト70の搬送面から離れることを防ぎ、しかも苗搬送ベルト70の搬送方向下流側では苗搬送ベルト70との間に狭いネギ苗(イ)が通るだけの間隔を設けているので、確実に苗植付体60上方に向けて搬送される。
【0046】
苗供給装置4の前方には座席20があり、該座席20に着座した作業者が苗載台55から取り出した苗を苗入れ機構71の供給プレート79上に供給できる。
【0047】
そして、苗搬送ベルト70は図1と図1の丸枠A内のベルト70の一部断面図に示すように、苗搬送ベルト70の表面には1本のネギ苗(イ)が入る大きさに仕切る突部70aをベルト幅方向に複数並列状に設けている。従って1本のネギ苗(イ)を2つの突部70aの間に作業者が設置するだけでネギ苗(イ)は確実に苗搬送ベルト70で搬送できる。
【0048】
また、苗搬送ベルト70と苗植付部5の間は苗供給装置4の支持フレーム80に支持された水平面を有する供給プレート79を配置している。該プレート79の一部を苗搬送ベルト70の軌道より外側に広い面積を有するように張り出しているので、張り出したプレート79上に複数のネギ苗(イ)を載置でき、ネギ苗(イ)をさばきやすくし、また移動する苗搬送ベルト70の表面の2つの突部70aの間にネギ苗(イ)を順次配置する作業を確実に作業者が実行できる。
【0049】
また図1に示すように、苗搬送ベルト70は、少なくとも苗供給カップ40が移動する周回軌道の中で苗植付部5の上部に位置する苗供給カップ40の直線的な軌道の上方では所定の角度で後傾した状態で移動する構成としているので、該ベルト70へ苗の供給が容易となり、座席20に着座した作業者が該ベルト70へ苗を容易に供給できる。
【0050】
また、苗搬送ベルト70の横幅は、ネギ苗(イ)の半分以上の高さを有する構成とする。こうしてネギ苗(イ)は安定して苗搬送ベルトにより搬送される。
【0051】
図3(a)と図3(b)には別実施例の苗供給装置4部分の拡大平面図と側面図を示す。苗搬送ベルト70は苗搬送ベルト70上に複数の突起70aを形成して、2つの突起70aの間にネギ苗(イ)を配置する構成であり、一連の苗供給カップ40が形成する周回軌道の中で苗植付体60の上部に位置する苗供給カップ40の直線的な軌道上にネギ苗(イ)を搬送することができるように配置するが、作業者が苗を供給する苗搬送ベルト70の上流側の部分をほぼ水平方向に向くようにしてネギ苗(イ)を苗搬送ベルト70上に供給し易くし、苗供給カップ40にネギ苗(イ)を供給する位置にある苗搬送ベルト70部分では所定角度(α度)だけ立ち上がるように苗搬送ベルト70を配置する。従って、苗搬送ベルト70は全体にねじれた形状からなる。
【0052】
このような構成からなる苗搬送ベルト70を用いると、作業者は苗搬送ベルト70のほぼ水平状態の平面上にネギ苗(イ)を供給し易くなり、また苗供給カップ40に供給するベルト位置ではほぼ鉛直方向に立つのでネギ苗(イ)を苗供給カップ40に供給しやすくなり、苗の供給、搬送作業が能率的に行える。
【0053】
次に苗植付装置5の苗植付体60に付着した泥の剥離部材であるスクレーパ77について苗植付体60の要部側面図である図4(a)により説明する。
苗植付体60は先端が下方に向かうくちばし状の左右の苗植付片60a(一方のみ図示)を備えており、詳細な説明は省くが、苗植付体60の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場中に突入させる位置との間を昇降するように苗植付装置5を上下動させる上下動機構と、くちばし状の左右の苗植付片60aの下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能にする閉状態と、左右の苗植付片60aの下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付体60が開閉する開閉機構を備えている。
【0054】
また、詳細な説明は省略するが苗植付体60の前記上下動機構と開閉機構は第2植付伝動ケース32(図1)からの駆動で駆動され、前記上下動機構により苗植付体苗植付体60の下端の左右くちばし体(苗植付片)60aが図4に示す軌跡Yを有する運動をする。
【0055】
本実施例の苗移植機では、苗植付体60の前方にスクレーパ77を配置することで、苗植付作業工程の中で左右の苗植付片60aの内側に付着した泥を取り除く構成を備えており、スクレーパ77は前記上下動機構の駆動に連動するように第2植付伝動ケース32の回転軸75上に設けられたカム76の回動に伴って軌跡Yのように動く。すなわち、前記カム76の側面に接触しているスクレーパ77の支持アーム77aの端部のローラ77bがカム76の回転により、矢印Aのように動く。
【0056】
詳細な説明は省略するがスクレーパ77の軌跡Yの動きと左右の苗植付片60aの開閉動作が連動してスクレーパ77が左右の苗植付片60aの内側に付着した泥をはぎ取ることができる。
【0057】
またスクレーパ77は軌跡Yに示すように下側から上に向けて苗植付片60aの内側に入ることができ、また苗植付体60の下方へ抜けるので、スクレーパ77が苗払いを兼ねる機能がある。なおスクレーパ77の形状を図4(b)に示すように湾曲形状とするとスムーズに苗植付片60aの内側に入ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の苗移植機は、ネギ苗(イ)などの野菜苗に限らず、その他の苗を植え付ける苗移植機としても利用可能性がある。
【符号の説明】
【0059】
1 苗移植機 1a 走行部
1b 植付部 2 後輪
3 前輪 3a 取付部材
3b スプリング 4 苗供給装置
5 苗植付装置 6 操縦ハンドル
6a グリップ 7 走行部ミッションケース
7a PTO取出部 8 ガイド輪
9 エンジン 10 油圧ポンプ
11 燃料タンク 12 ボンネット
13 連結フレーム 14 メインフレーム
15 回動筒部 16 走行伝動(チェーン)ケース
16b 回動支点 17 エンジン支持フレーム
17a ピボット軸 17b 車軸受け部
17c 支持部材 17d スプリング反力受け部材
17e ガイド輪軸 17f 支持軸
18 車軸 19 軸
20 座席 21 昇降シリンダ
21a ピストン 22 天秤杆
25 スイングアーム
26 連結ロッド 27 ローリングシリンダ
28 接地体 29 感知リンク機構
30 植付部ミッションケース
30a 入力軸
31 第一植付伝動ケース
32 第二植付伝動ケース
34 上部フレーム 35 油圧バルブユニット
38 ボルト 40 苗供給カップ
41 ターンテーブル 42 スプロケット
42a 回転軸 43a 自在継ぎ手
43b 伝動軸 45 リンク機構
46 昇降アーム 50 前輪変向装置
51 変向操作具 52 取付部材
52a 支点 53、54、56、57 ロッド
55 苗載台 60 苗植付体
60a 苗植付片 61 移動機構
73 駆動ローラ 74 従動ローラ
75 第2植付伝動ケースの回転軸
76 カム 77 スクレーパ
79 供給プレート
80 支持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後輪(2,3)を有する走行部(1a)と苗の植付機構を有する植付部(1b)を備え、植付部(1b)には苗をそれぞれ収納し、底蓋が開放可能である複数の苗供給カップ(40)を所定の搬送経路に沿って搬送する苗供給装置(4)と、該苗供給装置(4)の下方に苗供給装置(4)により落下供給される苗を圃場に植え付けるための苗植付体(60)を有する苗植付装置(5)と、該苗植付装置(5)を所定の作動軌跡で上下動させるリンク機構(45)に設け、該リンク機構(45)を上下動させる植付伝動ケース(31,32)内の植付伝動機構を走行部(1a)に設けた苗移植機において、
前記苗供給装置(4)の上部に苗を苗供給カップ(40)に順次供給できる苗入れ機構(71)を設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗入れ機構(71)は苗を鉛直方向より所定角度斜め向きに配置する苗搬送ベルト(70)を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記苗入れ機構(71)の搬送ベルト(70)は苗供給側のベルト搬送面をほぼ水平状態とし、苗カップ(40)への苗供給位置ではベルト搬送面をほぼ鉛直状態となるように苗搬送ベルト(70)の苗搬送方向に従って順次ベルト搬送面の傾斜角度を変更することを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate