説明

苗移植機

【課題】
光センサ以外の苗移動検出手段で苗が供給位置へ移動するのを検出して、苗の供給異常による植付不良動作が続かないようにすることを課題とする。
【解決手段】
走行車体2の後部に昇降リンク装置3を介して上下動し、圃場に苗を植え付ける植付部4を設け、植付部4に苗を載置する複数条の苗載台80を設け、複数条の苗載台80の下部に苗を受ける苗受枠81をそれぞれ設け、複数条の苗載台80に載置した苗を送り出す苗送り装置95をそれぞれ設けた苗移植機において、苗送り装置95の始動を検出すると始動信号を発する始動検出体31と苗取出し口78に接近する苗の接触を検出すると接触信号を発する複数条の苗検出体30a〜30fを苗載台80に設け、始動検出体31の始動信号の発信から所定時間内に苗検出体30a〜30fの接触信号の発信がないと報知部材32を動作させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を圃場へ植え付ける苗移植機において、苗載台の苗を苗植付部に送る苗送り装置の苗送りが異常になったことを検出して報知する苗送り警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機は、苗載台に載せたマット状苗を苗送り装置で苗取出口に送り、苗取出口でマット状苗から一株分の苗を苗植付具が掻き取って圃場に植え付ける動作を行うが、この苗の植付動作を確実にするために、特開2006−197849号公報には、苗移動量センサで検出した苗の移動量に基づいて所望の苗送り量となるよう苗送り装置を駆動制御する制御装置を設けた技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術は、苗移動量センサが発光部と受光部からなる光センサであるために、この光センサが泥で汚れてセンサ機能が低下する問題がある。
そこで、本発明では、光センサ以外の苗移動検出手段で苗が供給位置へ移動するのを検出して、苗の供給異常による植付不良動作が続かないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して上下動し、圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)に苗を載置する複数条の苗載台(80)を設け、該複数条の苗載台(80)の下部に苗を受ける苗受枠(81)をそれぞれ設け、該複数条の苗載台(80)に載置した苗を送り出す苗送り装置(95)をそれぞれ設けた苗移植機において、前記苗送り装置(95)の始動を検出すると始動信号(SS)を発する始動検出体(31)と苗取出し口(78)に接近する苗の接触を検出すると接触信号(CS)を発する複数条の苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)を前記苗載台(80)に設け、該始動検出体(31)の始動信号(SS)の発信から所定時間内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)の接触信号(CS)の発信がないと報知部材(32)を動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記始動検出体(31)の始動信号(SS)の発信から複数条の苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)のそれぞれの接触信号(CS)の発信までの平均時間(AT)を算出する制御装置(138)を設け、該平均時間(AT)内または平均時間(AT)に設定時間を加えた限界時間(LT)内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)のいずれかの接触信号(CS)の発信がないと制御装置(138)が前記報知部材(32)に警報信号(AS)を発信する構成とした苗移植機とした。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記平均時間(AT)または限界時間(LT)内に接触信号(CS)を発信しなかった苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)を制御装置(138)で判別し、苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)にそれぞれ対応する報知信号(ASa,ASb,ASc,ASd,ASe,ASf)を報知部材(32)に発信する構成としたことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、始動検出体(31)から発信される始動信号(SS)の発信後の所定時間内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)から接触信号(CS)が発信されないと報知部材(32)を動作させる構成としたことにより、作業者は苗送り装置(79)が苗載台(80)に載置された苗を送り出していないことに速やかに気付くことができるので、苗送り装置(79)の故障や異常により停止していることに気付かないまま苗の植付作業を継続することが防止され、苗の植付作業能率が向上する。
【0009】
また、苗が植え付けられなかった条に作業者が手作業で苗を植える必要がなくなり、作業者の労力が軽減される。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、始動検出体(31)の始動信号(SS)の発信から苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)のそれぞれの接触信号(CS)の発信までの平均時間(AT)を制御装置(138)で算出し、この平均時間(AT)内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)からの接触信号(CS)の発信が無い場合は制御装置(138)が報知部材(32)を動作させる制御を行なうことにより、苗送り装置(79)の苗送り速度や苗の量、機体の走行速度等の作業条件に合わせて制御装置(138)が報知部材(32)に警報信号(AS)を発信するまでの時間が変化するので、苗送り装置(79)に異常がないにもかかわらず異常と判断することが防止され、報知部材(32)による報知動作の信頼性が向上する。
【0010】
そして、平均時間(AT)に制御装置(138)に設定した設定時間を加えて限界時間(LT)を設定し、この限界時間(LT)内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)からの接触信号(CS)の発信が無い場合は制御装置(138)が報知部材(32)に警報信号(AS)を発信する制御を行なうことにより、低速で作業を行う際に苗送り装置(79)の苗の搬送速度を低下させても、苗が苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)に到達する前に制御装置(138)が報知部材(32)に警報信号(AS)を発信してしまうことを防止できるので、作業条件の変更に柔軟に対応することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、制御装置(138)がどの苗検出部材(30a,30b,30c,30d,30e,30f)の接触信号(CS)が遅れているかを判別して報知部材(32)に対応する報知信号(Sa,Sb,Sc,Sd,Se,Sf)を発信することにより、複数条設ける苗送り装置(79)のうち、どの条の苗送り装置(79)に異常があるかを作業者が早期に発見できるので、苗送り装置(79)の問題を迅速に回収することにより、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】苗移植機の側面図
【図2】苗移植機の平面図
【図3】苗載台の苗送り伝動構成を示す正面図
【図4】苗載台の苗移送量変更装置を示す断面側面図
【図5】苗載台の苗移動量センサを示す断面側面図
【図6】苗移植機の要部拡大平面図
【図7】(a)整地ロータを取り付けた苗移植機の側面図、(b)整地ロータを取り外した苗移植機の側面図
【図8】予備苗載台の取付部斜視図
【図9】予備苗載台の拡大側面図
【図10】苗送り異常検出の制御ブロック図
【図11】苗送り異常検出の別実施例の制御ブロック図
【図12】苗送り異常検出の制御フローチャート図
【図13】苗送り異常検出の別実施例の制御フローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施例を、以下に説明する。
図1及び図2は、6条植えで施肥装置付きの乗用型田植機1を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0014】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪6及び後輪7を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース8が配置され、そのミッションケース8の左右側方に左右一対の前輪ファイナルケース9が設けられ、該前輪ファイナルケース9の変向可能な左右一対の前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪6が取り付けられている。また、ミッションケース8の背面部にメインフレーム10の前端部が固着されており、そのメインフレーム10の後端左右中央部に前後水平に設けた左右一対の後輪ローリング軸を支点にして左右一対の後輪ギヤケース12がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース12から外向きに突出する後輪車軸に後輪7が取り付けられている。
【0015】
原動機となるエンジン13はメインフレーム10の上に搭載されており、該エンジン13の回転動力が、ベルト伝動装置14を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置15へ入力される。そして、該前後進無段変速装置15からの出力がミッションケース8に伝達される。
【0016】
ミッションケース8に伝達された回転動力は、該ミッションケース8内の伝動分岐部で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース9に伝達されて前輪6を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース12に伝達されて後輪7を駆動する。また、外部取出動力は、前後進無段変速装置15から伝動される取出伝動軸17を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース18に伝達され、それから植付伝動軸19によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0017】
エンジン13の上部はエンジンカバー20で覆われており、その上に座席21が設置されている。座席21の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー22があり、その上方に前輪6を操向操作するハンドル23が設けられている。ハンドル23の右側には、前記前後進無段変速装置15を操作する前後進変速レバー24が設けられている。前後進変速レバー24の操作位置を検出する前後進変速レバーセンサ24aを設け、この前後進変速レバーセンサ24aは、後述する苗植付装置37の作動速度を判断する植付速度センサとなる。また、前後進変速レバー24のグリップ部には、苗植付部4の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作スイッチ25が設けられている。
【0018】
エンジンカバー20及びフロントカバー22の下端左右両側は水平状のフロアステップ26になっている。また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台27が設けられている。
【0019】
昇降リンク装置3は、1本の上リンク70と左右一対の下リンク71を備えている。これらの上リンク70及び下リンク71は、その基部側がメインフレーム10の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム72に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク73が連結されている。そして、縦リンク73の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸74が挿入連結され、連結軸74を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム10に固着した支持部材と上リンク70に一体形成したスイングアームの先端部との間に昇降油圧シリンダ76が設けられており、該昇降油圧シリンダ76を油圧で伸縮させることにより、上リンク70が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0020】
苗植付部4は6条植の構成であり、フレームを兼ねる伝動ケース77、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口78に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口78に供給すると苗送りベルト79により苗を下方に移送する苗載台80、苗取出口78に供給された苗を苗植付具37aで圃場に植付ける苗植付装置37等を備えている。
【0021】
苗載台80は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠となる横枠81に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台80は、上下に延びる複数の仕切り壁部80aを備えており、該仕切り壁部80aにより区分されて各条の苗載部80bが構成され、6条分の苗を搭載できる構成となっている。尚、前記横枠81に6条分の前記苗取出口78…が設けられ、この苗取出口78の近くに苗の接触で苗存在を検出する苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fがそれぞれ設けられている。
【0022】
伝動ケース77の左右両側から突出して該伝動ケース77内の動力でリードカム82aを横方向に左右往復移動させるリードカム軸82が設けられ、リードカム82aと苗載台80とが連結されていて、リードカム軸82が駆動回転することにより苗載台80が左右往復動するようにしている。リードカム軸82は、伝動ケース77の苗送り伝動部77aで支持されている。
【0023】
苗載台80の裏面側の上下には、左右方向に長い上側左右移動用案内部材120及び下側左右移動用案内部材121がそれぞれ固着して設けられている。上側左右移動用案内部材120は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ122が係合している。この支持ローラ122は、上側左右移動用案内部材120に沿う適宜位置の4か所に設けられ、伝動ケース77の上側に固着された苗載台支持フレーム123の上部に取り付けられている。下側左右移動用案内部材121は、横枠81に上側から載る。従って、苗載台80は、支持ローラ122と横枠81とにより左右方向に移動可能に支持されている。
【0024】
苗載台支持フレーム123には苗載台80が左右移動端に到達したことを検出する左右各々の移動端センサ131を設け、該移動端センサ131は苗載台80の左右方向端部の裏面側に突出する仕切り壁部80aが当たって検出する構成となっている。
【0025】
苗送りベルト79は、駆動ローラ84と従動ローラ85に巻き掛けられている。駆動ローラ84は左右方向の苗送り駆動軸86と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸86は、2条毎に設けられ、各々のラチェット機構87により、苗送りベルト79が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。従って、苗送りベルト79が、苗載台80の左右移動端に達すると該苗載台80上の苗を苗受枠81側へ移送する苗移送装置となる。
【0026】
苗送りベルト79の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース77の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム88が設けられている。尚、伝動ケース77の右側の駆動側アーム88は、リードカム軸82を介して回転駆動する。また、苗送り駆動軸86の上側には左右方向の中継軸89が2条毎に設けられ、それに従動側アーム90が取り付けられている。中継軸89と苗送り駆動軸86とは、各々第一アーム91並びに第二アーム92及びリンク93とからなるリンク機構94により伝動連結されている。
【0027】
苗載台80が左右どちらかへ移動しながら苗植付具37aで苗取出口78から一株ずつの苗を掻き取って圃場へ植付け、苗載台80が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム88が従動側アーム90にその下側から当たって、中継軸89を所定角度回転させる。その回転がリンク機構94及びラチェット機構87を介して苗送り駆動軸86に伝達される。これにより、苗送りベルト79が所定量だけ送り作動する。各苗送りベルト79の送り作動開始を検出する苗送り開始センサ31が第二アーム92の動きを検出している。なお、苗送り開始センサ31を新たに設けず、移動端センサ131を苗送り開始センサとして使用しても良い。
【0028】
また、苗載台80が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム88に対して左右に2個の従動側アーム90が同一の中継軸89上に設けられている。駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89に係止したスプリングの張力によって中継軸89及び従動側アーム90は駆動前の位置に戻る。
【0029】
なお、リンク機構94及びラチェット機構87は、右側2条分のものは苗載台80の右端部、中央2条分のものは右から3条目の苗載部80bの右端部、左側2条分のものは苗載台80の右端部に配置されている。中央2条分のリンク機構94及びラチェット機構87は、左右一方側左側に偏位する伝動ケース77の苗送り伝動部77aに対して左右他方側右側に偏位して配置されるので、苗載台80と伝動ケース77を前後に近づけながら、伝動ケース77に干渉しないようにできる。ラチェット機構87には、各々2条分の苗送りベルト79の駆動を入切する苗送りクラッチを備えている。従って、該苗送りクラッチを操作する苗送りクラッチワイヤ132が、ラチェット機構87から苗載台80の裏面側で該苗載台80に沿って設けられている。尚、苗送りクラッチワイヤ132の他端は、2条毎の植付を入切する畦クラッチレバー133に連結されている。この畦クラッチレバー133は、走行車体2の後部に計3本設けられ、各々の畦クラッチレバーセンサ133aにより操作位置を検出できる構成となっている。
【0030】
また、苗植付部4の苗載台80の前側には、横枠81を上下動させて苗植付装置37が苗取出口78から取り出す一株あたりの苗の量を変更する苗取り量変更レバー134を設けている。この苗取り量変更レバー134の操作位置を、苗取り量変更レバーセンサ134aが検出する構成となっている。
【0031】
駆動側アーム88は、伝動ケース77の苗送り伝動部77aの左右両側の適宜位置に左右各々2個ずつ設けられている。右外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、右の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。右内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、中央の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、右の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。左内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、中央の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、左の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。左外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、左の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。従って、計6個の従動側アーム90に対して、駆動側アーム88の個数を4個として数を削減させている。
【0032】
なお、左右各々の中継軸89における左右各々の従動側アーム90は、該中継軸89の左右中央部に配置しているが、左右中央の中継軸89における左右の従動側アーム90は、該中継軸89の左右両端部に配置している。これにより、左右移動で振り分けて伝動ケース77の左右両側内側の駆動側アーム88から左右中央の中継軸89へ動力を伝達することができると共に、左右内側の駆動側アーム88を左右の中継軸89へ動力を伝達するアームとして兼用できる。また、各中継軸89の左右の従動側アーム90を、各中継軸89において略左右対称な位置に配置でき、2条毎で略左右中央に配置される後述する苗移動量変更モータ135による苗送り量の変更設定を高精度で行える。
【0033】
苗載台80の各条の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗減少センサ136を設けている。この苗減少センサ136は、苗の有無を検出することにより、苗載台80上の適宜の位置で苗が減少したことを検出する。
【0034】
また、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗移動量センサ137を設けている。この苗移動量センサ137は、スプリング125で苗側上側に回動する側に付勢されたセンサ取付アーム126の先端に設けられ、外周面が苗の底面に接触して回転するローラ式であり、その回転角度を検出する回転角度検出型のセンサポテンショメータを備え、苗送りベルト79の苗の移送方向への苗載台80上の苗の移動量を検出する。尚、後述する苗移動量変更モータ135による苗送りベルト79の苗の最大移送量よりも、苗移動量センサ137の外周長が大きくなるよう構成されている。
【0035】
該苗移動量センサ137は、回転角度を0度以上360度未満の角度値として検出し、苗送り作動の前後の角度値から苗の移動量を検出するセンサであるが、苗送り作動の前後で0度の角度値をまたいで検出した場合でも検出できるように、制御装置138により、360度と苗送り作動前の角度値の差及び苗送り作動後の角度値と0度の差の両方の差を加算して演算するようにしている演算式:苗の移動量={360度―苗送り作動前の角度値}+{苗送り作動後の角度値―0度}。これにより、角度値を検出するだけの簡単なセンサポテンショメータで、苗の移動量を検出できる。
【0036】
また、苗移動量センサ137を苗送りクラッチに近い位置の条に設け、苗移動量センサ137の防護フレームを兼ねる後述する苗移送量変更モータ135のモータ支持フレーム139を、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの裏面側のみに設け、モータ支持フレーム139の内側に、苗送りクラッチワイヤ132を通して、モータ支持フレーム139が苗送りクラッチワイヤ132の防護フレームも兼ねた構成としている。
【0037】
苗移動量センサ137は、苗載部80bの左右中央に位置している。前記苗減少センサ136は、苗移動量センサ137を設けていない苗載部80bでは該苗載部80bの左右中央に位置しているが、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bでは該苗載部80bの左右方向一側端に位置している。これにより、苗移動量センサ137を苗減少センサ136に優先して苗載部80bの左右中央に位置させて、苗の移動量を高精度で検出できるようにしている。各条の苗減少センサ136は、苗移動量センサ137より若干苗載台80に沿う上側位置に配置されている。
【0038】
また、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bの苗送りベルト79より上側位置には、苗載部80b上の苗の量を判別する各々の苗量センサ140を設けている。この苗量センサ140は、横枠81から苗載台80に沿って苗1枚分上側の位置横枠81から58cmの位置に設けられ、その位置での苗の有無を検出することにより、苗載台80上の苗の量の大小を判別する。該苗量センサ140は、苗載部80bの左右中央に位置している。
【0039】
2条毎の苗載部80bにおける左右中央の仕切り壁部80aの裏側には、2条毎に苗送りベルト79による苗の移送量を変更するための苗移送量変更モータ135を設けている。この苗移送量変更モータ135が、苗移送装置による苗の移送量を変更する苗移送量変更装置となる。苗移送量変更モータ135は、2条毎の左右中央に配置されているので、苗送り量の変更を各2条毎に適正に精度良く行える。苗移送量変更モータ135のピニオンギヤ135aに噛み合って回動する扇形ギヤ141を設け、該扇形ギヤ141から連結ロッド142を介して中継軸89と一体回転する苗送り規制アームに連結している。尚、苗送り規制アームに設けた長孔143に、連結ロッド142を連結している。
【0040】
従って、苗移送量変更モータ135を駆動して扇形ギヤ141を回動させ、苗送り規制アームを長孔143を介して強制的に上側へ回動させると、苗送り作動で長孔143により中継軸89を回動させることができる。そして、駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89及び従動側アーム90は、スプリングの張力で、規制部材となる長孔143の端部に連結ロッド142の端部が当たる位置まで戻る構成となっている。
【0041】
前記苗送り規制アームは、右側2条分は右側の従動側アーム90、左側2条分は左側の従動側アーム90と兼用し、中央2条分は専用の中央苗送り規制アーム144で構成している。従って、左右の苗送り規制アームは各々外側の従動側アーム90となるため、連結ロッド142の着脱等のメンテナンスが行い易い。
【0042】
苗載台80の苗載面80cの上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面80c側へ押圧する苗押え具130が設けられている。この苗押え具130により、マット苗を苗送りベルト79側に適度に押圧し、苗送りベルト79で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。
【0043】
苗植付部4の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート100、及び左右それぞれ外側2条分の苗植付位置を整地する左右一対のサイドフロート101,101が設けられている。該センターフロート100と左右サイドフロート101,101を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート100及び左右のサイドフロート101,101が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置37により苗が植付けられる。各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート100の前部の上下動が上下動検出機構により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ76を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0044】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)110に貯留されている肥料(粉粒体)を各条の肥料繰出部(粉粒体繰出部)63によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)111でセンターフロート100及び左右のサイドフロート101,101に取り付けた施肥ガイド112まで導き、施肥ガイド112の前側に設けた作溝体113によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ114で駆動のブロア115で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ116を経由して肥料移送ホース111内に吹き込み、肥料移送ホース111内の肥料を苗植付部4側の肥料吐出口施肥ガイド112へ強制的に移送するようになっている。施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド112及び作溝体113の後方でセンターフロート100及び左右のサイドフロート101,101に取り付けた覆土板117により覆土される。
【0045】
各条の施肥ガイド112及び作溝体113は、対応する苗植付装置37との位置関係距離を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置(機体側面視で同じ位置)に配置される。同様に、各条の覆土板117も対応する施肥ガイド112、作溝体113及び苗植付装置37との位置関係距離を均一にすることが望ましい。何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0046】
図6には、走行車体2の前左右側部に設けるサイドマーカ33とスターマーカ34を示し、スターマーカ34を側方へ張り出すとサイドマーカ33に当たって共に側方へ張り出されるようにして、サイドマーカ33の張り出しを忘れないようにしている。サイドマーカ33は、すでに植えた稲株上をなぞって走行方向を平行にするために設け、スターマーカ34は圃場面に溝を描いて、走行車体2の走行方向のガイドとするために設ける。
【0047】
図7(a)は、上リンク70と下リンク71にロータ支持フレーム65を設け、このロータ支持フレーム65から吊り下げた支持杆64にロータフレーム69を取り付けている。ロータフレーム69にはセンターフロート100の前側に位置してセンターロータ66を設け、左右のサイドフロート101,101の前側に位置して左右のサイドロータ67,67を設けている。センターロータ66と左右のサイドロータ67,67は、ロータ駆動軸68で駆動する。
【0048】
該センターロータ66と左右のサイドロータ67,67を設けたことにより、苗植付装置37やセンターフロート100及び左右のサイドフロート101,101よりも前側で圃場の凹凸を平らに均すことができるので、圃場の凹部に苗が植え付けられて植付深度が浅くなり、水流や風で苗が流されてしまうことが防止され、欠株が生じたり稲が偏って植生することがなく、苗が順調に生育する。
【0049】
また、圃場の凸部に苗が植え付けられて植付深度が深くなり、苗の茎葉部が土中に隠れてしまうことを防止できるので、十分な日光を受けられずに苗が枯れたり生育不良を起こすことが防止される。
【0050】
そして、図7(b)は、センターロータ66と左右のサイドロータ67,67を取り外した状態で、ロータ支持フレーム65に泥除けカバー96を取り付け、該泥除けカバー96を苗植付装置37の前側に配置する構成としたものである。
【0051】
該泥除けカバー96により、苗植付装置37及び機体後方に泥水が流れることを防止できるので、苗植付装置37が苗の植付時に泥を巻き込み、苗植付具37aに泥が詰まって苗の掻き取り姿勢を乱してしまうことや、詰まった泥が苗植付具37aを破損させてしまうことが防止され、作業能率が向上するとともに、苗植付具37aの耐久性が向上する。
【0052】
さらに、センターロータ66及び左右のサイドロータ67,67と泥除けカバー96を同一のロータ支持フレーム65に取り付けることができるので、ロータ付き仕様、ロータ無し仕様のいずれも共通の構造とすることができ、コストダウンが図られる。
【0053】
また、作業者は整地作業の必要に応じてセンターロータ66及び左右のサイドロータ67,67と泥除けカバー96とを任意に取り替えることができるので、作業条件の変化に柔軟に対応できる。
【0054】
なお、センターロータ66及び左右のサイドロータ67,67を用いないのは、圃場に凹凸が少なく、センターロータ66及び左右のサイドロータ67,67を用いて圃場面や水を掻き混ぜると泥水を発生させてしまう場合であり、特に圃場の土質が柔らかい場合である。このとき泥除けカバー96を用いることにより、前輪6及び後輪7の接地によって生じる泥水が苗植付装置37に向かって流れることを防止できるので、苗植付具37aに泥が詰まって苗の掻き取り姿勢を乱してしまうことや、詰まった泥が苗植付具37aを破損させてしまうことが防止され、作業能率が向上するとともに、苗植付具37aの耐久性が向上する。
【0055】
図8及び図9に示すように、前後方向に複数の空間部を形成している予備苗載台27の空間部内であり、且つ苗載台支持枠28にロール状に何重にも巻いた長マット苗を予備苗載台27に載置する際長マット苗が転がることを防止する長マット苗ストッパ29…を上下方向に回動自在に取り付ける。
【0056】
該長マット苗ストッパ29…を前記予備苗載台27の空間部から上方に後上り傾斜姿勢となるまで回動させることにより、予備苗載台27上を長マット苗が転がり、予備苗載台27から落下することを防止できるので、落下時に長マット苗が崩れてしまうことが防止されるとともに、落下した長マット苗を拾う必要がなく、作業能率が向上する。
【0057】
そして、一般的な長方形のマット苗を用いる場合は、前記長マット苗ストッパ29…を予備苗載台27の空間部に向かって回動させると、マット苗が呼び苗載台27上に略平行姿勢で載せることができる。
【0058】
図10のブロック図で示すように、この乗用型の田植機1において、苗移動量センサ137は、移動端センサ131の検出に基づき、苗送りベルト79が前回の苗送り作動を完了させたタイミングから当回の苗送り作動が完了するまでの間、苗の実移動量を検出し、検出した実移動量を制御装置138に入力する。
【0059】
該制御装置138は、入力された実移動量と苗取り量変更レバーセンサ134aから演算した設定移動量を比較し、実移動量が設定移動量より大きいときには次回の苗送り量が小さくなるように、逆に実移動量が設定移動量より小さいときには次回の苗送り量が大きくなるように、苗移送量変更モータ135へ出力し該苗移送量変更モータ135を作動させる。
【0060】
また、フロントカバー22に設けた苗送り量調節ダイヤル145により、該苗送り量調節ダイヤル145からの信号が制御装置138に入力され、前記設定移動量を補正して変更できる構成としている。
【0061】
前記畦クラッチレバーセンサ133a及び苗減少センサ136からの信号が制御装置138に入力され、苗送りクラッチの伝動を切っているとき、または2条毎において何れか一方の苗減少センサ136により苗が減少したことを検出したとき、制御装置138は、苗移送量変更モータ135へ出力して苗取り量変更レバーセンサ134aの検出に基づく基準位置に苗移送量変更モータ135を戻す。そして、苗量センサ140からの信号が制御装置138に入力され、制御装置138は、苗の量が多いとき苗量センサ140の位置に苗があるときは設定移動量を小さく補正する。
【0062】
また、前後進変速レバーセンサ24aからの信号が制御装置138に入力され、制御装置138は、作業速度が速いときには設定移動量を大きく補正する。
対応する2条の苗減少センサ136のうちの何れかの苗減少センサ136により苗が減少したことが入力されると、制御装置138は、苗減少の警報を発すると共に、苗移動量センサ137の検出に拘らず、苗移送量変更モータ135へ出力して苗取り量変更レバーセンサ134aの検出に基づく基準位置に苗移送量変更モータ135を戻す。
【0063】
なお、制御装置138は、全ての苗量センサ140がOFFからONになる回数を累計してカウントし、このカウント値を2倍して苗載台80に補給された概ねの苗の枚数を計数する構成としてもよい。該構成により、作業者が苗の使用枚数を把握することができると共に、その使用枚数に応じて適正な苗枚数で植付作業が行えるように設定移動量を補正して苗送り量を変更したりすることができ、作業能率が向上するとともに、作業者の労力が軽減される。
【0064】
また、前記ハンドル23操作等に基づく機体旋回中でも苗移動量センサ137で苗の移動量を検出するようにしているので、更なる苗送り量の適正化が図られ、苗の植付精度が向上する。
【0065】
なお、該苗量センサ140の検出により苗の量が多いとき、センターフロート100の迎え角を前下がり側に補正する等して、苗植付部4の昇降制御の制御感度を敏感側に補正するようにしてもよい。また、苗量センサ140の検出により苗の量が多いとき、苗取り量変更レバー134を自動的に作動させる等して、苗取り量が多くなるように補正してもよい。
【0066】
また、植付昇降操作スイッチ25により苗植付部4の昇降を非作動状態にしたとき、前後進変速レバーセンサ24aにより前後進変速レバー24を中立位置に操作して走行を停止させたことを検出したとき、あるいは苗移動量センサ137で検出した苗の移動量が極端に大きいときは、苗移動量センサ137による苗の移動量の検出を行わない構成としてもよい。これにより、苗載台80への苗補給時に誤検出するようなことを防止できる。
【0067】
なお、苗移動量センサ137のセンサ取付アーム126の回動角度を検出し、この回動角度によって設定移動量を補正する構成とすれば、苗の重量ひいては苗の水分状況に応じて、実際の苗の移動量が適正となるように制御することができる。
【0068】
また、苗移動量センサ137、苗量センサ140及び苗移送量変更モータ135等を各条に設け、苗の移動量を条毎に制御してもよい。
前記前後進変速レバーセンサ24aと畦クラッチレバーセンサ133aと苗取り量変更レバーセンサ134aと苗減少センサ136と苗移動量センサ137と苗量センサ140からの検出信号は制御装置138に入り、該制御装置138から苗移動量変更モータ135へ制御信号が送られ、それぞれが信号に応じて作動する構成である。
【0069】
そして、植付昇降操作スイッチ25からの信号が発信されて制御装置138に入ると、該制御装置138からは昇降油圧シリンダ76に昇降作動信号が送られるが、長期間起動していないエンジン13を起動した直後などバッテリが弱っている場合には、起動時に植付昇降操作スイッチ25から発せられる僅かな電気を制御装置が信号であると誤認することが有るので、エンジン13起動時から電圧が安定するまでの所定時間は、植付昇降操作スイッチ25からの昇降信号を無視するように制御を行っている。
【0070】
そして、苗送りベルト79が始動すると始動信号SSを発する苗送り開始センサ31と、前記各苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fから発信される接触信号CSとがそれぞれ制御装置138に入力され、制御装置138から苗送り不良の警報信号ASが報知手段である警報器32に出力され、苗送りベルト79に異常があると該警報器32が作業者に報知する構成とする。
【0071】
該警報器32の報知方法は、操縦部の表示パネル146に設ける警告ランプ(図示省略)を点灯させる方式や、警報信号ASを受信すると音声を発する音声出力装置を用いる方法などがある。
【0072】
なお、図11のブロック図に示すように、警報器32は苗載台80の条数と同じ数、本件であれば6個設け、制御装置138を該複数の警報器32a,32b,32c,32d,32e,32fに警報信号ASa,ASb.ASc,ASd,ASe,ASfをそれぞれ発信可能に構成し、接触信号CSを発信した苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fに対応する警報信号ASa,ASb.ASc,ASd,ASe,ASfを発信する構成としてもよい。
【0073】
図12は、苗載台80の苗送りベルト79が正常に苗を送っているかを検出する制御のフローチャートである。
ステップS1で苗送り開始センサ31が苗送りベルト79の駆動を検出して始動信号SSを発信すると、制御装置138がステップS2で時間カウントを開始し、ステップS3で各苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fが苗を検出して接触信号CSを発信するまでの時間、即ち苗到達タイムを算出して記憶する。
【0074】
そして、ステップS4で全ての苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fが苗到達タイムを算出すべき充分な時間カウントが終了すれば、ステップS5で全条の苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fが苗到達タイムの算出を終了しているかを判定し、終了していなければ(NO)、ステップS9でその未終了条の苗送りベルト79に送り異常が発生していると判断して制御装置138が警報信号ASを発信し、警報器32を動作させて作業者に報知する。
【0075】
全終了であれば(YES)、ステップS6で各苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fの到達タイムの標準到達タイム、即ち平均タイムATを算出し、ステップS7で各苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fの苗到達タイムを平均タイムATと比較しその差を算出し、ステップS8でその苗到達タイムが平均タイムAT以降も出力していない条が有るかを判定し、無ければ(NO)としてリターンし、有れば(YES)としてステップS9で該当する条の苗送りベルト79に送り異常が発生していると判断して制御装置138が警報信号ASを発信し、警報器32を動作させて作業者に報知する。
【0076】
上記により、作業者は警報器32の警報により、苗送りベルト79が苗載台80に載置された苗を送り出していないことに速やかに気付くことができるので、苗送りベルト79の故障や異常により停止していることに気付かないまま苗の植付作業を継続することが防止され、苗の植付作業能率が向上する。
【0077】
また、苗が植え付けられなかった条に作業者が手作業で苗を植える必要がなくなり、作業者の労力が軽減される。
なお、制御装置138が算出した平均タイムATに所定時間を加えて限界タイムLTを設定可能とし、苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fからの接触信号が発信されず制御装置138が警報信号ASを警報器32に発信するまでの時間を変更可能に構成してもよい。
【0078】
この場合、制御装置138が平均タイムATに加える時間は、0.1秒単位で設定できるものとする。
上記により、苗送りベルト79の苗送り速度や苗の量、機体の走行速度等の作業条件に合わせて制御装置138が警報器32に警報信号ASを発信するまでの時間が変化するので、作業条件を変更した際に苗送りベルト79に異常がないにもかかわらず異常と誤判断することが防止され、警報器32による報知動作の信頼性が向上する。
【0079】
そして、平均タイムATに制御装置138が設定した設定時間を加えて限界タイムLTを設定し、この限界タイムLT内に苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fからの接触信号CSの発信が無い場合は制御装置138が警報器32に警報信号ASを発信する制御を行なうことにより、低速で作業を行う際に苗送り装置79の苗の搬送速度を低下させても、苗が苗検出部材30a,30b,30c,30d,30e,30fに到達する前に制御装置138)が警報器32に警報信号ASを発信してしまうことを防止できるので、作業条件の変更に柔軟に対応することができる。
【0080】
上記に加えて、図13のフローチャートで示すように、条ごとに警報器32a,32b,32c,32d,32e,32fを設け、制御装置138がどの苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fの接触信号CSが発信されていないかを判別して警報器32a,32b,32c,32d,32e,32fに対応する報知信号Sa,Sb,Sc,Sd,Se,Sfを発信することにより、複数条設ける苗送りベルト79のうち、どの条の苗送りベルト79に異常があるかを作業者が早期に発見できるので、苗送りベルト79の問題を迅速に回収することにより、作業能率が向上する。
【0081】
なお、苗検出センサ30a,30b,30c,30d,30e,30fで苗マットの重量を検出して平均重量よりも異常に軽いか重い苗マットは発育不良或いは異常発育として報知するようにすることも出来る。
【符号の説明】
【0082】
2 走行車体
3 昇降リンク機構
4 植付部
30a 苗検出センサ(苗検出体)
30b 苗検出センサ(苗検出体)
30c 苗検出センサ(苗検出体)
30d 苗検出センサ(苗検出体)
30e 苗検出センサ(苗検出体)
30f 苗検出センサ(苗検出体)
31 苗送り開始センサ(始動検出体)
32 警報器(報知部材)
78 苗取出口
79 苗送りベルト(苗送り装置)
80 苗載台
138 制御装置
AS 警報信号
CS 接触信号
SS 始動信号
AT 平均タイム(平均時間)
LT 限界タイム(限界時間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後部に昇降リンク装置(3)を介して上下動し、圃場に苗を植え付ける植付部(4)を設け、該植付部(4)に苗を載置する複数条の苗載台(80)を設け、該複数条の苗載台(80)の下部に苗を受ける苗受枠(81)をそれぞれ設け、該複数条の苗載台(80)に載置した苗を送り出す苗送り装置(95)をそれぞれ設けた苗移植機において、
前記苗送り装置(95)の始動を検出すると始動信号(SS)を発する始動検出体(31)と苗取出し口(78)に接近する苗の接触を検出すると接触信号(CS)を発する複数条の苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)を前記苗載台(80)に設け、該始動検出体(31)の始動信号(SS)の発信から所定時間内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)の接触信号(CS)の発信がないと報知部材(32)を動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記始動検出体(31)の始動信号(SS)の発信から複数条の苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)のそれぞれの接触信号(CS)の発信までの平均時間(AT)を算出する制御装置(138)を設け、該平均時間(AT)内または平均時間(AT)に設定時間を加えた限界時間(LT)内に苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)のいずれかの接触信号(CS)の発信がないと制御装置(138)が前記報知部材(32)に警報信号(AS)を発信する構成とした苗移植機。
【請求項3】
前記平均時間(AT)または限界時間(LT)内に接触信号(CS)を発信しなかった苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)を制御装置(138)で判別し、苗検出体(30a,30b,30c,30d,30e,30f)にそれぞれ対応する報知信号(ASa,ASb,ASc,ASd,ASe,ASf)を報知部材(32)に発信する構成としたことを特徴とする請求項1或いは請求項2に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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