説明

苗移植機

【課題】 本発明の課題は、タンクTを載置でき、植え付けた苗の潅水が十分に行え、水流を振動させて散水でき、苗供給装置に苗を補給でき、苗の植付と同時に潅水でき、作業者用座席にいる作業者が降車できるようにした苗移植機を提供することである。
【解決手段】 左右一対の前輪7と左右一対の後輪6を備えた走行車体と、圃場に苗を植付ける苗植付装置3と、該苗植付装置3に苗を供給する苗供給装置4を設け、走行車体の後端部にハンドル2を設け、苗供給装置4の近傍に作業者用座席を配置し、苗植付装置3は、くちばし状の苗植付け体と、該苗植付け体を上下動させる上下動機構と、苗植付け体を開閉する開閉機構を備えた苗移植機において、左右の後輪6の左右方向内側で機体側面視において後輪6の車軸10付近にタンク支持台76を設け、該タンク支持台76にタンクTを載置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に苗を植付ける苗植付け体を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、回転自在の左右一対の前輪と該前輪の後側で上下動可能な左右一対の駆動車輪とを備えた走行車体と、該走行車体の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドルと、圃場に苗を植付ける苗植付け体と、該苗植付け体に苗を供給する苗供給装置と、該苗供給装置に苗を補給する作業を行う作業者が座る作業者用座席とを備えた苗移植機がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−33009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される苗移植機は、作業者用座席が苗供給装置の後側近傍に配置されている。従って、機体が前進走行して苗植作業をするときには、作業者用座席に座る作業者は機体進行方向に対して前方を向いて苗供給装置への苗補給作業をすることになる。そのため、作業者は、機体が圃場のどこを走行しているか容易に把握でき、圃場端での走行停止など機体の操縦を適確に行なえ、安心して乗車できる。しかし、苗補給作業を行いながら機体後方の圃場に植付けられた苗の植付け状態を容易に確認することができないため、不適正な植付け状態になったときの対応を迅速に行うことができない。
【0005】
また、上記特許文献1に記載される苗移植機は、前輪及び駆動車輪より機体後方側に作業者用座席を配置して機体フレームの後部に支持させているので、作業走行中に、機体前部側が浮き上がりやすく、そのため、機体が後ろ下がり姿勢になって苗が後倒れになったり植付け深さが深くなりすぎたりし、また、直進しにくくなって、苗の植付位置が左右にずれてしまうことがある。
【0006】
本発明の課題は、タンクTを載置でき、植え付けた苗の潅水が十分に行え、水流を振動させて散水でき、苗供給装置に苗を補給でき、苗の植付と同時に潅水でき、作業者用座席にいる作業者が降車できるようにした苗移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、左右一対の前輪(7)と左右一対の後輪(6)を備えた走行車体と、圃場に苗を植付ける苗植付装置(3)と、該苗植付装置(3)に苗を供給する苗供給装置(4)を設け、走行車体の後端部にハンドル(2)を設け、苗供給装置(4)の近傍に作業者用座席(70)を配置し、苗植付装置(3)は、くちばし状の苗植付け体(25)と、該苗植付け体(25)を上下動させる上下動機構(26)と、苗植付け体(25)を開閉する開閉機構(27)を備えた苗移植機において、左右の後輪(6)の左右方向内側で機体側面視において後輪(6)の車軸(10)付近にタンク支持台(76)を設け、該タンク支持台(76)にタンク(T)を載置した苗移植機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、潅水用の水を蓄えるタンク(T)と該タンク(T)からの潅水ホース(21)を設けて苗植付け体(25)に潅水用の水を供給可能に構成し、苗植付け体(25)が開くよりも前に潅水用の水を出し始め、苗植付け体(25)が土中から抜けるまで潅水用の水を出し続ける構成とし、潅水ホース(21)の吐出口(21a)で且つ該吐出口(21a)の断面中心よりも下方側には、水流を振動させて散水する弾性を有する舌片(22)を設けた請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、潅水用の水を蓄えるタンク(T)と該タンク(T)からの潅水ホース(21)を設けて苗植付け体(25)に潅水用の水を供給可能に構成し、苗植付け体(25)が開くよりも前に潅水用の水を出し始め、苗植付け体(25)が土中から抜けるまで潅水用の水を出し続ける構成とし、潅水ホース(21)の吐出口(21a)付近には、潅水に泡を発生させるべく空気を混入するための穴(21a1)を設けると共に、吐出口(21a)には円錐状の抵抗体(24)を設けた請求項1記載の苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、機体側面視で作業者用座席(70)の下方位置から前輪(7)の上方位置にわたってステップ(71)を延設し、走行用の伝動ケース(9)の後部に後輪(6)を装着し、走行用の伝動ケース(9)の前部側の回動支点回りの回動で後輪(6)が上下する構成とし、左右の作業者用座席(70)は、前輪(7)の車軸(17)よりも後側に配置され、且つ後輪(6)の車軸(10)よりも前側に配置され、且つ機体側面視で一部が後輪(6)の上方にオーバーラップし、且つ機体側面視で走行用の伝動ケース(9)の回動軸心(X)の上方に配置され、苗供給装置(4)に向かって内側向き姿勢で着座できる構成とし、苗供給装置(4)は、複数の苗収容体(29)を長円形状のループ状の軌跡で周回動させ、苗収容体(29)の底蓋(48)を開いて苗植付け体(25)へ苗を供給する構成とし、前輪(7)の車軸(17)と後輪(6)の車軸(10)を連結する連結フレーム(73)を、前輪(7)の車軸(17)と後輪(6)の車軸(10)に対して回動自在に設け、該連結フレーム(73)により作業者用座席(70)を支持し、タンク支持台(76)を連結フレーム(73)に固着した支持部材に固定した請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によると、左右の後輪(6)の左右方向内側で機体側面視において後輪(6)の車軸(10)付近にタンク(T)を載置できる
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明による効果に加えて、舌片(22)で水流を振動させて散水できる。
【0012】
請求項3記載の発明によると、請求項1に記載の発明による効果に加えて、泡の洗浄効果で苗植付け体(25)内の汚れをおとすことができる。さらに、円錐状の抵抗体(24)により散水効果を得ることができる
【0013】
請求項4記載の発明によると、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明による効果に加えて、作業者用座席(70)にいる作業者が降車できる。また、作業者は、苗供給装置(4)に向かって内側向き姿勢で作業者用座席(70)に着座して苗供給装置(4)の前側部に苗を補給できる。また、連結フレーム(73)により作業者用座席(70)を支持することで、後輪(6)が上下しても作業者用座席(70)が前後に傾かないように姿勢が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例の苗移植機の側面図である。
【図2】図1の苗移植機の平面図である。
【図3】図1の苗移植機の苗供給部と作業者用座席を省略した状態の平面図である。
【図4】図1の苗移植機の油圧シリンダの油圧回路図である。
【図5】図1の苗移植機の苗植装置と苗供給装置を示す側面図である。
【図6】図1の苗移植機の伝動ケースを一部展開し断面開示した苗植装置の背面図である。
【図7】図1の苗移植機の苗収容体の連結構成を示す斜視図である。
【図8】図1の苗移植機の苗植付け体の斜視図である。
【図9】図8の苗植付け体への潅水用ホースの先端部の側面図である。
【図10】図8の苗植付け体への潅水用ホースの先端部の一部断面図である。
【図11】図1の苗移植機の苗植付け体の斜視図である。
【図12】図8の苗植付け体への潅水用ホースの先端部の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施例としての苗移植機を以下に説明する。図1は苗移植機の側面図であり、図2は機体上方部を示す平面図であり、図3は機体下方部を示す平面図である。なお、以下の説明では、苗移植機が前進する方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン5を配置した側を前とする。
【0016】
本例の苗移植機は、機体を前進走行可能とする走行車体1と、該走行車体1の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル2と、圃場に苗を植付ける苗植付装置3と、該苗植付装置3に苗を供給する苗供給装置4を備えた構成としている。
【0017】
走行車体1は、図示例では、エンジン5と、該エンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動車輪である後輪6,6と、該後輪6,6の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪7,7とを備えたものとしている。
【0018】
エンジン5の後部にはミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部には、前後に長い走行用の伝動ケース9,9の前部を回動自在に取り付けている。具体的には、走行用の伝動ケース9,9の前部の機体内側部に、該伝動ケース9,9と一体回転可能に設けたアクスルケース9a,9aを設け、このアクスルケース9a,9aをミッションケース8の左右両側部に回動自在に取付けて、走行用の伝動ケース9,9をミッションケース8の左右両側部に対して回動自在に取付けている。そして、この走行用の伝動ケース9,9の後部側方に突出させた車軸10、10に後輪6,6を装着している。伝動ケース9,9の前部の回動軸心X位置には、ミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース8内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が伝動ケース9,9内の伝動機構に伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9,9内の伝動機構を介して、伝動ケース9,9の後端側の車軸10,10に伝動し、後輪6,6が駆動回転するようになっている。なお、アクスルケース9a,9aは、畝幅に対応して左右に伸縮調節可能に設けている。また、アクスルケース9a,9aを支持するために、アクスルケース9a,9aと略平行する状態で支持フレーム9b、9bをミッションケース8に固着していて、その支持フレーム9b、9bの外端部に固着した支持プレート9c、9cでアクスルケース9a,9aの外側部を回動自在に支持している。
【0019】
また、走行用の伝動ケース9,9には、該伝動ケース9,9の前部側を回動支点として後輪6,6を上下させるよう上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、伝動ケース9,9のミッションケース8への取付部には、上方に延びるアーム11,11を一体的に取り付けていて、これがミッションケース8に固定された昇降用油圧シリンダ12のピストンロッド先端に取り付けた連結体13の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、ロッド14で連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に応じて伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0020】
昇降用油圧シリンダ12が作動して、そのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム11,11は後方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が下方に回動して機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ12のピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右の前記アーム11,11は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9,9が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダ12は畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動にともなって動作するセンサーSによって作動する。センサーSの動作は機体に対する畝上面高さを検出する動作となり、そのセンサーSの検出動作に基いて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう昇降用油圧シリンダ12が作動するよう構成している。また、操縦ハンドル2近傍に配置した操作具Lの人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう昇降用油圧シリンダ12が作動する構成ともしている。
【0021】
また、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、その左右水平制御用油圧シリンダ15と連結する左側のアーム11が回動して、左側の後輪6と右側の後輪6を互いに異なる高さにし、機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は、左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサの検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動するよう構成している。
【0022】
図4には本実施例の機体の昇降用油圧シリンダ12と機体のローリング用の水平制御用油圧シリンダ15の油圧回路を示す。
図4の油圧回路には切換バルブ68を設け、該切換バルブ68内の下げ回路に絞り69を設けておき、その圧損分で伝動ケース9を下降させる。こうして通常作業時は切換バルブを図4に示すようにして切換バルブ68を通る油圧流路を遮断して昇降用油圧シリンダ12を通常は単動シリンダとして使う。一方トレッド調節時には、切換バルブ68を動かして、水平制御用油圧シリンダ15の左室側に油を流し、昇降用油圧シリンダ12の下げ側に油を送る。そのとき油はタンクへ返るが絞りがあるのでその圧損分だけは圧力(伝動ケース9が下がる圧力)が掛かり、水平制御用油圧シリンダ15を複動シリンダーとして使うことができる。
【0023】
前記左右前輪7,7は、エンジン5下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた横フレーム16の左右両側部に、上下に長い縦フレーム16a,16aを取付け、その下端部側方に固着した車軸17,17に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪7,7は、機体の左右中央の前後方向の軸心Y周りにローリング動自在となっている。横フレーム16の左右両側部に対して縦フレーム16a,16aを上下調節可能に設けていて、前輪7,7の高さ調節をすることができるようになっている。
【0024】
前記操縦ハンドル2は、機体後部に設けていて、後輪6,6の車軸10,10より機体後方に位置している。具体的には、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム2bの後端部に取り付けている。機体フレーム2bは、機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム2bの後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2a,2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2a,2aは、作業者がそのグリップ部2a,2aを楽に手で握れるように適宜高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2a,2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0025】
なお、上記走行車体1は接地して駆動回転する走行駆動部を前後車輪を備えた四輪式の走行駆動部の構成としたものであるが、クローラー式の走行駆動部の構成とすることもできる。
【0026】
機体後端部に設けたハンドル2を作業者が降車状態で把持して機体前方を浮かせて機体を旋回させることができるが、本実施例の苗移植機は作業者が乗降するためのステップ71L,71Rの前端部にも、作業者が降車した状態で把持して機体を操向させるための前側ハンドル20を備える。また、該前側ハンドル20は平面視で前輪7の前方位置にある。
【0027】
上記したように前後にハンドル20,2を設けたので、圃場の端(畝端)で機体を操向させる際には、作業者用座席70にいる作業者が降車してすみやかに前側の一対のハンドル20,20を把持して操作できる。また、路上走行等の移動時や、歩行しながら作業する場合は後側のハンドル2を作業者が把持して前方へ向いたまま操作でき、操作性がよい。
【0028】
また前側のハンドル20の把持部は畝溝を走行する前輪7の前方位置にあるので、降車した作業者は畝溝位置で前側のハンドル20を把持でき、畝を崩さないようにハンドル操作ができる。なお、一対のハンドル20の各ハンドル20,20をそれぞれ別の2人で操作して苗移植機を持ち上げて旋回させることができる。
【0029】
また、前側のハンドル20の把持部の近傍にはサイドクラッチレバー19を配置したので、旋回時に前側のハンドル20側で旋回内側のサイドクラッチを切ることができる。
図5には苗植付装置3と苗供給装置4部分の側面図を示す。
【0030】
苗植付装置3は先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体25と、該苗植付け体25の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付け体25を上下動させる上下動機構26と、くちばし状の苗植付け体25の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能する閉状態と苗植付け体25の下端部が前後に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能する開状態とに苗植付け体25を開閉する開閉機構27とを備え、苗供給装置4は苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体29と、該苗収容体29を苗植付け体25の上方を通過するように周回移動させる移動機構30と、苗植付け体25の上方位置で苗収容体29の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体25に苗を供給する開放機構31を備えた苗供給装置4を備える。
【0031】
苗植付装置3は、苗植付け体25を左右に設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体25を左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植えの構成としている。
【0032】
四体の苗植付け体25…は、機体フレーム2bに下部を固定した取付部材32の上部に装着した伝動ケース28の左右両側部に設けた上下動機構26,26に二体づつ装着している。先端が下方に向いたくちばし状の苗植付け体25…の前側苗植付け体25F…の上部で後側にのびる左右のアーム部25Fa,25Fa…の後端部を後側の苗植付け体支持軸34に回動自在に取付け、後側苗植付け体25R…の上部で前側にのびる左右のアーム部25Ra,25Ra…の前端部を前側の苗植付け体支持軸33に回動自在に取付け、前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Fa…と後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Ra…のそれぞれ前後中間部では、一方側のアーム部に設けた横方向のピン25a、25a…を他方側のアーム部に設けた左右方向の長孔25b,25b…に係合させている。前後の苗植付け体支持軸33,34の左右両端部は、連結部材35,35で連結している。そして、前後の苗植付け体支持軸33,34の左右中間部はそれぞれ苗ガイド連結部材36,36を介して、苗を苗植付け体25内に案内する筒状の苗ガイド37に連結している。更に、左右の苗ガイド37,37には、その左右間側に連結部材38、38を着脱自在に、且つ一体的に装着していて、その連結部材38、38を介して、左右の苗ガイド37,37の左右間に配置した連結部材39,39と連結している。その連結部材39、39は、上下動機構26の上下の昇降リンク40a,40bの各先端部を上下に連結している。後側苗植付け体25R…のアーム部25Ra,25Raが前側の苗植付け体支持軸33回りに上方に回動すると、前記ピン25a、25aによる連結によって前側苗植付け体25F…のアーム部25Fa,25Faも連動して上方に回動し、そのため、前側苗植付け体25F…は、後側の苗植付け体支持軸34回りの回動により、前方に移動し、後側苗植付け体25R…は、前側の苗植付け体支持軸33回りの回動によって後方に移動し、その結果、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。また、逆の動作によって、前後に開いた苗植付け体25…の下部側は閉じる。
【0033】
前記苗ガイド37は、苗供給装置4から供給された苗を苗植付け体25内に案内する筒状体であり、上部には、苗供給装置4の苗落下部下方に向ってのびる上部ガイド37aを設けている。これにより、苗植付け体が苗供給装置4の苗落下部下方からずれて位置していても、苗供給装置4から落下供給される苗を適確に苗植付け体25内に供給することができる。
【0034】
苗植付け体25…の上下動機構26は、伝動ケース28の左右両側部に設けている。具体的には、機体フレーム2bには取付部材32が立設され、該取付部材32の上部に固着した伝動ケース28の左右側方に突出させた軸に前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体25…に連結した上側と下側の昇降リンク40a,40bと、伝動ケース28の側部から突出させた駆動回転する駆動軸41と、該駆動軸41の先端部に一端側を一体回転するように取付けた駆動アーム42と、該駆動アーム42の回転外周側端部と前記上側の昇降リンク40aとに回動自在に連結する連動アーム42aとで構成している。そして、上側と下側の昇降リンク40a,40bの各後端部を前記苗植付け体支持軸33,34の左右中間部付近に取付けた連結部材39に回動自在に取付け、上側と下側の昇降リンク40a,40bと伝動ケース28と連結部材39とでリンク機構を形成するように設けている。従って、駆動軸41の回転により駆動アーム42が駆動回転すると、前記昇降リンク40a,40bが伝動ケース28の左右側部に設けた二つの軸40aS,40bSを回動中心に上下動して、左右の苗植付け体25…が上下動する。この上下動の上昇位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体25の下端部が圃場面より下方に位置する。
【0035】
また、この苗移植機では、苗植付け体25…を昇降する上下動機構26を、第一軸40aS回りに昇降駆動される第一昇降リンク40aと、該第一昇降リンク40aの下側で第二軸40bS回りに昇降自在に設けた第二昇降リンク40bと、該第一昇降リンク40a及び第二昇降リンク40bの各先端部を連結する連結部材39とで構成し、該連結部材39と苗植付け体25…を連結して苗植付け体25…を昇降する構成とし、前記第一軸40aSを、伝動ケース28内の伝動機構を介して伝達された動力により回転駆動される回転軸40aRの先端部に偏芯状態で形成し、該回転軸40aRの回転によって回転軸40aRの軸芯を中心として偏芯量を半径として回転駆動される構成とし、前記第一昇降リンク40aの昇降駆動中に前記回転軸40aRが回転駆動することにより苗植付け体25をその昇降動中に前後に傾けるように構成している。そして、苗植付け体25…の昇降軌跡上部側での上昇時の姿勢を、直立姿勢に対して下部が上部より後側になる前倒姿勢となるように設定している。また、苗植付け体25…の下降時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より前側になった後倒姿勢となるように設定し、下降下端位置で後倒姿勢から前倒姿勢に姿勢変更するように設け、前記苗植付け体25…の上昇時の姿勢を直立姿勢に対して下部が上部より後側になった前倒姿勢となるように設定している。
【0036】
苗植付け体25…の開閉機構27は、後側苗植付け体25R…の上部で後側にのびる開閉用アーム部25Rb…の先端部を各苗植付け体25…において設け、一方、上側の昇降リンク40aの基部を枢着している軸に回動自在に取付けた作動アーム44を設け、この作動アーム44の先端部を長さ調節可能な連結ロッド45で連結し、そして、作動アーム44が、駆動軸41の駆動回転中に、該駆動軸41に一体回転するよう取付けたカム46の作用を受けて、設定したタイミングで苗植付け体25…に対して上昇動作するようにして構成している。これにより、駆動軸41が駆動回転して苗植付け体25…が上下動すると、作動アーム44も苗植付け体25…と共に上下回動し、そして、苗植付け体25…の下降下端位置に達すると、カム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25…に対して上昇動作し、これにより、後側苗植付け体25R…が前側の苗植付け体支持軸33回りに回動して後方に移動し、また、これに連動して前側苗植付け体25F…が後側の苗植付け体支持軸34回りに回動して前方に移動して、苗植付け体25…の下部側が前後に開いて下方に開放状態となる。そして、苗植付け体25…が上昇してカム46の作用位置の変化により作動アーム44が苗植付け体25…に対して元の位置に下降動作して、前後に開いた苗植付け体25…の下部側が閉じる。
【0037】
本実施例では苗を畝に植え付ける際に、苗植付け体25の開くタイミングで、苗植付け体25の最下端において、その両端部の幅が30〜40mmになるまで一気に開き、苗植付け体25がそこから50〜60mm上方に移動する間、その開き状態30〜40mmを確保する。このような構成にすることで上昇する苗植付体25の下端部が閉じることにより植え付けられた苗の葉を挟むようなことを防止する効果がある。
【0038】
伝動ケース28を機体フレーム2bに取付ける取付部材32と、ミッションケース8と走行用の伝動ケース9,9の間に設けたアクスルケース9a,9aを支持する支持フレーム9b、9bとの間とを、支持フレーム32a,32aで連結し、伝動ケース28と苗植付装置3と苗供給装置4との支持強度を向上させている。
【0039】
苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着している。前後方向視で門型状になった伝動ケース28の内側に、苗植付け体25…の内側に供給する灌水用の水を供給するプランジャポンプ91,91を装着し、伝動ケース28の左右内側に突出させた前記回転軸40aR,40aRにプランジャポンプ91,91のピストンロッド91a,91aを装着し、プランジャポンプ91,91のケーシング部分91b,91bは、前記伝動ケース28を上部に装着した取付部材32に設けたプランジャポンプ取付け部に取付けている。
【0040】
図7の斜視図に示すように、苗供給装置4は、上下に開口する筒状体47…と該筒状体47…の下側の開口部47a…を開閉する底蓋48…とを有し互いにループ状に連結する複数の苗収容体29…と、該苗収容体29…を前記苗植付け体25…の上方近傍を通過する状態で機体平面視前後に長い長円形状のループ状の軌跡で周回動させる移動機構30と、前記苗収容体29…の底蓋48…を苗植付け体25…の上方位置で開放する開放機構31を設けた構成である。
【0041】
苗供給装置4は、前記苗収容体29…の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗収容体29,29を連結する連結体49を複数設け、該連結体49…の係合部を苗収容体29…の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体29…が回動自在に連結する状態として複数の苗収容体29…を互いに連結した構成としている。即ち、苗収容体29…と連結体49…とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、この苗移植機は、苗収容体29…は、直線的に移動する部分でも円弧状に移動する部分でも隣接する苗収容体29…との間隔が変わらないので、苗収容体29から苗植付け体25に苗を供給する個所で苗収容体29が苗植付け体25に対して位置ズレが生じにくくなり苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。苗収容体29…の個数と周回動する範囲を設定したうえで、苗収容体29の上側開口部43b…を可能な限り広く形成できて、機体のコンパクト化を図りつつ苗収容体29…への苗供給作業をできるだけ容易に行えるものとなる。
【0042】
苗供給装置4の移動機構30は、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lともに、それぞれ無端チェーンのように互いに連結する苗収容体29…;29…を左右に設けたスプロケット50,50;50,50の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右のスプロケット50,50;50,50を伝動ケース28内から取り出した動力で駆動回転することにより、右側及び左側の苗供給装置4R,4Lの各苗収容体29…;29…を周回動させる構成としている。スプロケット50,50;50,50を駆動回転可能に取付ける回動軸51,51;51,51は、伝動ケース28の上部で支持した支持フレーム52に回動可能に取付け、伝動ケース28の上部から上方に突出させた左右の回転軸53a,53bからスプロケットとチェンを介して各回動軸51,51;51,51に伝動する構成としている。
【0043】
苗収容体29…が周回する前後の軸51,51;51,51は、左右の後輪6,6より機体内側で、且つ、苗収容体29…が周回する前側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より前側で、苗収容体29…が周回する後側の軸51,51を後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。また、苗植付け体25は、後輪6,6の車軸10,10位置より後側に配置している。
【0044】
図6に示すように、伝動ケース28内の伝動機構は、ミッションケース8から動力が取出されて伝動回転する伝動軸28aの後端と連結する入力軸18に取付けた第一ベベルギヤ54から左右方向にのびる伝動軸55に回転自在に取付けた第二ベベルギヤ56に伝動し、そして、第二ベベルギヤの一端に設けたクラッチ爪と係脱可能なクラッチ爪を有する定位置停止クラッチである植付クラッチCを介して伝動軸55に伝動する。この植付クラッチCは、苗供給装置4の下方に設けたレバーを作業者用座席70L,70Rに座る作業者が操作することで操作され、このクラッチCの入り切りで苗植装置3の駆動が入り切りされる。伝動軸55の左右両端部には、第一スプロケット57・57が一体回転するように取り付けられ、この第一スプロケット57・57から、伝動ケース28の左右両端部から下方にのびるケース内下方に設けた第二スプロケット58・58にチェン59・59を介して伝動する。また、伝動軸55の左右両端部は、第一スプロケット57・57から更にのびて伝動ケース28の左右両外側に突出する。その突出部が駆動軸41・41となっている。第二スプロケット58・58と一体回転する回転軸40aRも伝動ケース28の左右両外側に突出し、更にその先端に偏芯状態で第一昇降リンク40aの枢支軸となる第一軸40aSが形成されて回転軸40aRと一体的に回転する。また、伝動軸55の中途部に第三ベベルギヤ60を一体回転するように取付け、それに噛み合う第四ベベルギヤ61を介して、伝動ケース28の上部から上方に突出させた一方側の回転軸53aを駆動回転する。他方側の回転軸53bは、この回転軸53bに設けたギヤ62が一方側の回転軸53aに設けたギヤ63と噛合って逆回転伝動される。この左右の回転軸53a,53bから、伝動ケース28に取り付けた支持部材54aによって支持した横方向にのびる支持フレーム54bの左右両側部に回転自在に支持した左右の後側回動軸51,51に、それぞれスプロケット65a,65a;65b,65bとチェン65c,65cを介して伝動し、更に、ここから左右の前側回動軸51,51に、それぞれスプロケット66a,66a;66b,66bとチェン66c,66cを介して伝動する構成としている。
【0045】
苗供給装置4の開放機構31は、苗収容体29…の周回軌跡下方で底蓋48…が下方に回動しないように底蓋48…を下方から支持する支持体67(図5)を設け、この支持体67を苗植付け体25…の上方位置には設けないようにすることで、苗植付け体25…の上方位置を苗収容体29が通過するとき、底蓋48が支持体67による支持状態が解かれて下方回動し苗収容体29を苗を下方に落下可能に開放する構成としている。苗収容体29の底蓋48が開くタイミングは、苗植付け体25…が苗収容体29の直下まで上昇したときとなるように調整しておく。また、上記構成に代えて、苗植付け体25が苗収容体29の直下まで上昇したときに、苗植付け体に設けた開放作動部材が、苗植付け体25の上方に位置する苗収容体29の底蓋48が開くのを規制する規制手段を規制解除動作させる構成も採用できる。
【0046】
本例の苗供給装置4は、機体右側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する右側苗供給装置4Rと、機体左側の二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給する左側苗供給装置4Lは、共に、二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。このように二つの苗植付け体25,25に対して苗収容体29…が一回りで周回移動して苗を供給する構成とした場合は、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…と他方側の苗植付け体29…に落下供給する苗収容体29…とが交互になるように連結し、且つ、一方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が一方側の苗植付け体25の上方を通過するとき、他方側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が他方側の苗植付け体25の上方を通過するように設定し、また、少なくとも、苗収容体29…の周回移動方向下手側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29…が、苗収容体29…の周回移動方向上手側の苗植付け体25の上方を通過するときは、その苗収容体29…については開放動作されないようにする開放規制手段を設ける。このように設けた上で、更に、苗植付け体25,25の上下動が一周期動作する間に苗収容体29…が2個分周回移動するように構成すると、苗収容体29…が二つの苗植付け体25,254の上方を直列的に通過しながら二つの苗植付け体25,25に対して苗供給漏れが生じることなく同時に苗を供給でき、且つ、二つの苗植付け体25,25の上方を通過した後に苗が供給されなかった苗収容体29…が生じないよう余すことなく二つの苗植付け体25,25に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ、二つの苗植付け体25,25に対して確実に苗を供給できる。なお、前記開放規制手段は、例えば、苗収容体29の周回移動方向下手側の苗植付け体25に落下供給する苗収容体29の蓋48に突起を設け、この突起が、苗収容体29の周回移動方向上手側の苗植付け体25の上方を通過するときに、下方から支持する構成とすることで可能となる。
【0047】
この苗移植機は、苗植付け体25…が植付けた苗に対して覆土鎮圧するための覆土鎮圧輪80…を各苗植付け体25…の苗植付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。また、苗植付け体25…が苗を植付ける前の圃場面を鎮圧して整地する鎮圧ローラ81…を各苗植付け体25…の苗植付け個所の各前方近傍位置に設けている。これらの覆土鎮圧輪80…と鎮圧ローラ81…は、機体フレーム2bに支持した支持軸82に支持させて、支持構造の簡略化が図られている。
【0048】
また、機体前方にも前方鎮圧輪83を設けている。前方鎮圧輪83の後方位置に昇降センサSを配置する。これは前方鎮圧輪83で土が硬く安定させた圃場に昇降センサSが当たることにより、苗移植機の上下位置を安定させることができ、そのために苗の植付も安定化できる。
【0049】
また、本例の苗移植機は、苗供給装置4に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるよう、作業者が座る作業者用座席70L,70Rを設けている。具体的には、左側苗供給装置4Lの前側部の左外側近傍に左側の作業者用座席70Lを配置し、右側苗供給装置4Rの前側部の右外側近傍に右側の作業者用座席70Rを配置している。これらの座席70L,70Rの背凭れは、それぞれ機体の左右方向外側に位置するよう設けていて、その座席70L,70Rに座る作業者は、苗供給装置4L,4Rの前側部に向って機体内側向き姿勢で着座して、苗供給装置4L,4Rの前側部に対して苗補給作業を行う。また、本例の苗移植機は、畝溝を走行する後輪6,6の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら苗供給装置4の後側部に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成しており、この作業空間Wに立つ作業者から苗供給装置4L,4Rの後側部に対して苗補給作業を行うことができる。
【0050】
また、左右の作業者用座席70L,70Rは、前輪7,7の車軸17,17位置より後側で且つ後輪6,6の車軸10,10位置より前側に位置させて配置している。更に、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で後輪6,6の上方に座席の一部がオーバーラップするように配置している。また、作業者用座席70L,70Rは、機体側面視で走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xの上方に配置しており、前輪7,7は、走行用の伝動ケース9,9の回動軸心Xより前側に配置した構成としている。
【0051】
作業者用座席70L,70Rの支持構成は、後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である伝動ケース9,9の内側に突出させた後輪6,6の車軸10,10に取付けた座席支持部材72,72;73,73で支持し、該座席支持部材72,72;73,73に、後輪6,6の車軸10,10が上下しても作業者用座席70L,70Rが前後に傾かないようにする姿勢維持機構を設けている。
【0052】
なお、連結フレーム73,73の前端部側を装着している前記支持筒74,74を前輪7,7の車軸17,17に取付けることもできる。また、連結フレーム73,73の後端部を後輪6,6の車軸10,10を支持する支持部材である走行用の伝動ケース9,9の内側に突出させた軸に回動自在に前記筒部75,75を回動自在に取付けこともできる。更に、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部は、連結フレーム73,73を、前輪の車軸17,17又は縦フレーム16a,16aに対して摺動不能且つ回動自在に連結し、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部は、連結フレーム73,73を、後輪の車軸10,10又は伝動ケース9,9に対して摺動自在且つ回動自在に連結する構成することもできる。このように構成すると、走行用の伝動ケース9,9が下方回動して後輪6,6の車軸10,10が下降すると、後輪6,6が機体に対して相対的に前方移動するが、作業者用座席70L,70Rは機体に対して相対的に前後方向には移動しない。従って、機体を旋回させるために、後輪6,6をまず下降して機体を上昇させ、そして、操縦ハンドル2を押し下げて二輪接地状態にして機体を旋回させるとき、前後方向において作業者用座席70L,70Rが後輪6,6の車軸10,10に向って接近することになるので、作業者用座席70L,70Rの重量による操縦ハンドル2の押し下げ負荷が軽減される。また、連結フレーム73,73の前輪7,7側の連結部と、連結フレーム73,73の後輪6,6側の連結部の両方ともに、連結フレーム73,73を摺動自在且つ回動自在に連結する構成とすることもできる。
【0053】
更に、この苗移植機は、左右の作業者用座席70L,70Rの各機体左右方向内側下方にステップ71L,71Rを設けている。このステップ71L,71Rは、機体側面視で作業者用座席70L,70Rの下方位置から前輪7,7の上方位置にわたって延設している。後輪6,6は大径車輪で、前輪7,7は小径車輪であり、機体側面視で、この小径車輪の前輪7,7の上方にステップ71L,71Rの前側部分が位置するように設けている。ステップ71L,71Rは、後側をアクスルケース9a,9aの上部に取付け、前側を、バンパーフレーム90に内端部を固着したステップ支持フレーム92,92と、該ステップ支持フレーム92,92の外端部と固着し前記支持プレート9c,9cと一体のステップ支持プレート93,93との上に固定して取付けている。
【0054】
作業者用座席70L,70Rの後側近傍で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置に、苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナD、Dを設置可能に設けている。本例では、プラスチック等で成形された箱状のコンテナDの両側部に形成された取っ手孔(図示せず)の一方側に係合してコンテナDを支持するコンテナ係合部材94,94を設けて、これにより、コンテナD,Dを設置可能に設けていて、コンテナ支持部の構造が簡単なものとなり、且つ、コンテナを設置していないときにコンテナ支持部が大きな空間を占めず、機体のコンパクト化と軽量化、低コスト化が図れる。図示例の具体構成は、コンテナ係合部材94,94の上端部がクランク状に屈曲していて、その上端部をコンテナDの取っ手孔に外側から挿入してクランク状の屈曲部で取っ手孔が引っかるようにすることで、コンテナDをコンテナ係合部材94に支持させることができる。また、コンテナ係合部材94は、座席支持フレーム72,72の上部に固着していて、作業者用座席70L,70Rの後側に起立するように設けている。路上走行時に作業者が作業者用座席70L,70Rに着座したときに手摺を兼ねる。
【0055】
本例の苗移植機は、苗植付け体25に灌水用の水を供給可能に構成して、苗の植付と同時に灌水が行なえるようになっている。そして、灌水用の水を蓄えるタンクT、Tは、後輪6,6の機体左右方向内側で機体側面視において後輪6,6の車軸10,10付近に設けたタンク支持台76,76上に載置可能に設けている。このタンク支持台76,76は、前記連結フレーム73,73に固着した支持部材上に固定されている。
【0056】
タンクTからの潅水は、苗植付け体25が開く直前より前から水を出し、それから50〜60mmまで苗植付け体25が上昇する間の50〜60mmでは苗植付け体25が土中から抜けても水を出し続けることとで植え付けた苗の潅水が十分に行える。なお、苗植付け体25には水タンクTから潅水用の潅水ホース21(図8参照)が設けられている
なお、左右一対の後輪6,6の内側に一対の水タンクT,Tをステップ71L,71Rの後方にステップ71L,71Rと高さを合わせて横積みに配置して、その水タンクTを作業者の前後移動用のステップとすることができる。
【0057】
また、図8に苗植付け体25の斜視図を示すように、苗植付け体25内の灌水ホース21の吐出口21aに、舌片22を設けておき、該舌片22で水流を振動させて、苗植付け体25内の前後のくちばしに散水する。また、機体前方側に吐出口21aがある場合、機体後方側へ多く散水するために図9に示すように舌片22は灌水吐出口21aの断面中心線よりも機体下方側に配置することが望ましい。
【0058】
また舌片22は自重で垂れ下がる程度の弾性を有するゴム等の軟質材料で作製するが、振動の大きな機体の場合はポリ塩化ビニルなどの弾性を有する硬質材料で作製しても良い。
【0059】
また、苗植付け体25内の洗浄力を良くするために、図10に示すように灌水吐出口21aにゴムキャップ23を取り付け、さらに吐出口21aに対し、ゴムキャップ23をスライドさせることで、ゴムキャップ23の出口の口径を変化させて潅水の吐出圧を変えることができる。
【0060】
また、図11に示すように灌水吐出口21a付近に微小な穴21a1を開けて水に空気を混ぜて、灌水吐出口21aから出る潅水中に泡を発生させ、前記泡の洗浄効果で苗植付け体25内の汚れをおとすことができる。さらに、図12に示すように灌水吐出口21aに円錐状の抵抗体24を取り付けると散水効果を得ることができる。
【0061】
また、作業者用座席70L,70Rの後側で機体側面視で後輪6,6の車軸10,10の上方位置で且つ機体側面視でタンク支持台76,76上に載置したタンクT,Tの上方位置に苗供給装置4に補給する苗を収容可能なコンテナDを設置可能に設けている。
【0062】
以上のとおり、上記の苗移植機は、左右一対の前輪と左右一対の後輪が畝を跨いだ状態で前進走行しながら、苗植付け体25,25,25,25が圃場に苗を植付ける。苗供給装置4L,4Rは苗植付け体25,25,25,25に苗を供給する。作業者は、作業者用座席70L,70Rに着座して苗供給装置4L,4Rに苗を補給する作業を行なうことができる。
【0063】
左右の苗植付け体25にそれぞれ苗供給装置4を設け、2人作業で植え付けるので高能率に苗の植え付け作業ができる。
また、左右に配列される苗ガイド37ひいては苗植付け体25の間隔を苗供給装置4の苗収容体29の配列ピッチの倍数と異ならせて、左右の苗植付け体25への苗の供給タイミングをずらすと、千鳥植えができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、圃場に苗を植え付ける苗植付け体を備えた苗移植機に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 走行車体 2 操縦ハンドル
2a グリップ部 2b 機体フレーム
3 苗植付装置 4 苗供給装置
5 エンジン 6 後輪
7 前輪 8 ミッションケース
9 伝動ケース 9a アクスルケース
9b 支持フレーム 9c 支持プレート
10 車軸 11 アーム
12 昇降用油圧シリンダ 12a 植付部フレーム
13 連結体 14 ロッド
15 左右水平制御用油圧シリンダ 16 横フレーム
16a 縦フレーム 17 車軸
18 入力軸 19 サイドクラッチレバー
20 前側ハンドル 21 潅水ホース
21a 吐出口 22 舌片
23 ゴムキャップ 24 抵抗体
25 苗植付け体 25b 長孔
25Fa アーム部 25Ra アーム部
26 上下動機構 27 開閉機構
28 伝動ケース 29 苗収容体
30 移動機構 32 取付部材
33 苗植付け体支持軸 34 苗植付け体支持軸
35 連結部材 36 苗ガイド連結部材
37 苗ガイド 38 連結部材
39 連結部材 40a,40b 昇降リンク
40aR 回転軸 40aS,40bS 軸
41 駆動軸 42 駆動アーム
42a 連動アーム 43b 上側開口部
44 作動アーム 45 連結ロッド
46 カム 47 筒状体
48 底蓋 49 連結体
50 スプロケット 51 回動軸
52 支持フレーム 53a,53b 回転軸
54 第一ベベルギヤ 54a 支持部材
54b 支持フレーム 55 伝動軸
56 第二ベベルギヤ 57 第一スプロケット
58 第二スプロケット 59 チェン
60 第三ベベルギヤ 61 第四ベベルギヤ
62 ギヤ 63 ギヤ
65a65b スプロケット 65c チェン
66a,66b スプロケット 66c チェン
67 支持体 68 切換バルブ
69 絞り 70 作業者用座席
71 ステップ 72,73 座席支持部材
74 支持筒 75 筒部
76 タンク支持台 80 覆土鎮圧輪
81 鎮圧ローラ 82 支持軸
83 前方鎮圧輪 90 バンパーフレーム
91 プランジャポンプ 91a ピストンロッド
91b ケーシング部分 92 ステップ支持フレーム
93 ステップ支持プレート 94 コンテナ係合部材
C 植付クラッチ D コンテナ
L 操作具 S センサー
T タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(7)と左右一対の後輪(6)を備えた走行車体と、圃場に苗を植付ける苗植付装置(3)と、該苗植付装置(3)に苗を供給する苗供給装置(4)を設け、走行車体の後端部にハンドル(2)を設け、苗供給装置(4)の近傍に作業者用座席(70)を配置し、苗植付装置(3)は、くちばし状の苗植付け体(25)と、該苗植付け体(25)を上下動させる上下動機構(26)と、苗植付け体(25)を開閉する開閉機構(27)を備えた苗移植機において、左右の後輪(6)の左右方向内側で機体側面視において後輪(6)の車軸(10)付近にタンク支持台(76)を設け、該タンク支持台(76)にタンク(T)を載置した苗移植機。
【請求項2】
潅水用の水を蓄えるタンク(T)と該タンク(T)からの潅水ホース(21)を設けて苗植付け体(25)に潅水用の水を供給可能に構成し、苗植付け体(25)が開くよりも前に潅水用の水を出し始め、苗植付け体(25)が土中から抜けるまで潅水用の水を出し続ける構成とし、潅水ホース(21)の吐出口(21a)で且つ該吐出口(21a)の断面中心よりも下方側には、水流を振動させて散水する弾性を有する舌片(22)を設けた請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
潅水用の水を蓄えるタンク(T)と該タンク(T)からの潅水ホース(21)を設けて苗植付け体(25)に潅水用の水を供給可能に構成し、苗植付け体(25)が開くよりも前に潅水用の水を出し始め、苗植付け体(25)が土中から抜けるまで潅水用の水を出し続ける構成とし、潅水ホース(21)の吐出口(21a)付近には、潅水に泡を発生させるべく空気を混入するための穴(21a1)を設けると共に、吐出口(21a)には円錐状の抵抗体(24)を設けた請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
機体側面視で作業者用座席(70)の下方位置から前輪(7)の上方位置にわたってステップ(71)を延設し、走行用の伝動ケース(9)の後部に後輪(6)を装着し、走行用の伝動ケース(9)の前部側の回動支点回りの回動で後輪(6)が上下する構成とし、左右の作業者用座席(70)は、前輪(7)の車軸(17)よりも後側に配置され、且つ後輪(6)の車軸(10)よりも前側に配置され、且つ機体側面視で一部が後輪(6)の上方にオーバーラップし、且つ機体側面視で走行用の伝動ケース(9)の回動軸心(X)の上方に配置され、苗供給装置(4)に向かって内側向き姿勢で着座できる構成とし、苗供給装置(4)は、複数の苗収容体(29)を長円形状のループ状の軌跡で周回動させ、苗収容体(29)の底蓋(48)を開いて苗植付け体(25)へ苗を供給する構成とし、前輪(7)の車軸(17)と後輪(6)の車軸(10)を連結する連結フレーム(73)を、前輪(7)の車軸(17)と後輪(6)の車軸(10)に対して回動自在に設け、該連結フレーム(73)により作業者用座席(70)を支持し、タンク支持台(76)を連結フレーム(73)に固着した支持部材に固定した請求項1から請求項3の何れか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−160814(P2011−160814A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120530(P2011−120530)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2010−237546(P2010−237546)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】