苗移植機
【課題】本発明では、機体の前後長さを短くして小回りの利く苗移植機を提供することを課題とする。
【解決手段】走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上にエンジン9を搭載し、前記走行部ミッションケース7から前方へ苗植付装置5を駆動する植付部ミッションケース30を張り出し、該植付部ミッションケース30上で走行部1a上の前後略中央に位置して苗供給装置4を設け、該苗供給装置4の前側に苗を取出して苗植付装置5に供給する苗取装置43を設け、前記走行部ミッションケース7からエンジン9の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル6を設けてなる苗移植機とした。
【解決手段】走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上にエンジン9を搭載し、前記走行部ミッションケース7から前方へ苗植付装置5を駆動する植付部ミッションケース30を張り出し、該植付部ミッションケース30上で走行部1a上の前後略中央に位置して苗供給装置4を設け、該苗供給装置4の前側に苗を取出して苗植付装置5に供給する苗取装置43を設け、前記走行部ミッションケース7からエンジン9の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル6を設けてなる苗移植機とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜等の苗を圃場に植付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の従来例として、例えば、特開2008−154533号公報に記載の如く、走行車体上の苗載台から苗取装置で苗を取出して苗植付装置に供給し、該苗植付装置が上下方向に往復動して圃場に苗を植付ける苗移植機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の苗移植機は、前後の走行車輪を具備した走行車体の前側にエンジンを搭載し、後部に設けた苗載台上の苗を中央部に設ける苗取装置で取出して苗植付装置に供給して後輪近くで苗を圃場に植え付け、走行車体の後方へ伸ばすハンドルを作業者が持って操縦操作を行うようにしている。このために、この苗移植機は、エンジンの前端からハンドルの後端までが長く、小回りが出来ず、柵や塀に囲まれた狭い圃場では使い勝手が悪い。
【0005】
そこで、本発明では、機体の前後長さを短くして小回りの利く苗移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上にエンジン9を搭載し、前記走行部ミッションケース7から前方へ苗植付装置5を駆動する植付部ミッションケース30を張り出し、該植付部ミッションケース30上で走行部1a上の前後略中央に位置して苗供給装置4を設け、該苗供給装置4の前側に苗を取出して苗植付装置5に供給する苗取装置43を設け、前記走行部ミッションケース7からエンジン9の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル6を設けてなる苗移植機とした。
【0007】
この構成で、機体の後部を歩行する作業者が操縦ハンドル6を持って走行部1aを走行させながら、苗供給装置4上の苗を苗取装置43で取出して苗植付装置5に供給して圃場へ植え付ける。
【発明の効果】
【0008】
操縦ハンドル6を走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上に搭載するエンジン9の側部から後方に向けて立ち上げているために、走行部1a前端から操縦ハンドル6の後端までの前後長さが従来よりも短くなって小回りが可能となり、苗供給装置4が走行部1a上の前後略中央に位置しているので、植付作業が進行して苗供給装置4に積載する苗が減少して軽くなっても全体の重量バランスを崩すことなく安定した植え付け走行を持続できる。また、苗植付装置5が走行部1aの前側で植付動作をするために前進走行でも畦際まで接近して植え付けを行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】野菜移植機の全体側面図である。
【図2】野菜移植機の全体平面図である。
【図3】走行部ミッションケースと植付部ミッションケースの連結部分の斜視図である。
【図4】鎮圧輪の斜視図である。
【図5】苗取装置の側面図である。
【図6】苗取装置の平面図である。
【図7】苗載台の平面図である。
【図8】苗トレイ移動装置部の平面断面図である。
【図9】苗載台の作用説明側面断面図である。
【図10】苗載台の作用説明平面図である。
【図11】苗載台の作用説明正面断面図である。
【図12】規制手段の作用説明斜視図である。
【図13】横移動量の切換え機構部の伝動構造を示す側面断面図である。
【図14】横移動量の切換え機構部の伝動構造を示す平面断面展開図である。
【図15】横移動切換えレバー部の平面図である。
【図16】油圧回路図である。
【図17】苗植付装置5の側面図である。
【図18】苗植付装置5の平面図である。
【図19】鎮圧輪部分の側面図である。
【図20】乗用ステップを取り付けた側面図である。
【図21】搬送ベルトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の一実施例として苗移植機の一例である野菜移植機を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
この野菜移植機1は、走行車輪2,3で構成した走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で機体を走行させながら、苗供給装置4と苗植付装置5からなる植付部1bで苗トレイT内の野菜のソイルブロック苗Sを畝Uの上面に植付ける構成となっている。作業者は、畝U間を歩きながら機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操縦操作する。以下、各部の構成について説明する。
【0012】
走行部1aは、走行部ミッションケース7の上部にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上部をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の前面側に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレーム13の前面左右端部から前方に前輪支持アーム18を枢支するメインフレーム14が固着連結されている。走行部ミッションケース7の左右側面から突出する左右回動筒部15に左右走行伝動ケース16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケースの先端部に駆動走行車輪である左右後輪2が軸支されている。
【0013】
左右前輪支持アーム18の下端部に従動走行車輪である左右前輪3が軸支され、後輪支持部と前輪支持部を連結杆8で連結し、左右前輪支持アーム18と左右走行伝動ケース16が同じ長さのために、後述する機体制御機構で後輪2が昇降するに伴って前輪3も同時に昇降し、機体が平行に昇降する。
【0014】
走行部1aには機体に対し左右後輪2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20から前方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該昇降シリンダ21のピストンロッドの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。天秤杆22は、前後両端が油圧バルブユニット20とメイフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。
【0015】
天秤杆22の左右両端部と、左右回動筒部15に固着した左右スイングアーム25とが、左右連結ロッド26を介して連結されている。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該ローリングシリンダ27を伸縮作動させることにより長さを変えて片側の後輪2を上下するようになっている。
【0016】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の上下制御バルブ20aと左右傾斜制御バルブ20b(図16)で制御して作動させられる。
【0017】
ローリングシリンダ27を固定して昇降シリンダ21を伸縮作動させると、左右の後輪2が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、ローリングシリンダ27側の後輪2が他方の後輪2に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0018】
走行部ミッションケース7の左右側部から略垂直に操縦ハンドル6を立ち上げ、この操縦ハンドル6の上部を後方へ略水平に折り曲げて後端部を左右グリップ6に形成している。左右グリップ6aの下側には各々左右サイドクラッチレバー201が設けられている。また、操縦ハンドル6の水平折り曲げ部には操作パネル202が設けられ、該操作パネル202に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー203、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー204等が設けられている。
【0019】
前記連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケース30の上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケース31の先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。
【0020】
そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の各作動機構が連結されており、この第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32にて苗植付装置5への植付駆動伝動系D1が構成され、苗植付装置5の後記苗植付具42が走行部1aの前輪3上に配置している。
【0021】
植付部ミッションケース30の上部に取り付けた苗供給フレーム34に、後述する苗供給装置4が載置され、この苗供給装置4の上に育苗トレイが載せられる予備苗載台36が支柱33で取り付けられている。
【0022】
予備苗載台36は上下二段構成で、上側を下側よりも前に寄せ、それぞれの後端の枠は低く苗トレイTを後方へ引き出し易くし、さらに、下段の後端が苗供給装置4の後端よりも前側に位置し、苗トレイを引き出して苗供給装置4へ移し替え易くしている。
【0023】
また、苗供給フレーム34の後部でエンジン9上に空苗トレイ載台37を設け、苗供給の終わった苗トレイを載せ置くようにしている。この空苗トレイ載台37の位置は、作業者が予備苗載台36から苗供給装置4に苗を供給する位置の下側で置き易く、しかも、空苗トレイ載台37の後端が操縦ハンドル6の下まで伸びているので、空苗トレイ載台37から空トレイを取り出し易い。
【0024】
図3に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該植付部ミッションケース30の下端部から後方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部7a内の走行部側の軸に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト35・・・によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト35・・・を外し、PTO取出部7aから入力軸31aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外せることができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0025】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から前方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から前方下向きに設けられ、且つ、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平方向に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第一植付伝動ケース31の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0026】
苗供給装置4は、前述の如く走行部1aの略前後中央の真上に配置されており、複数個のソイルブロック苗Sを縦方向と横方向とに多数収容した苗トレイTを略水平に載置支持すると共に、縦及び横方向に間欠移動する苗トレイ移動装置40と、この苗トレイ移動装置40の前方側に配置されていて苗取出爪41によって前記苗トレイTから苗を一つずつ取出して苗植付具42へと搬送する苗取装置43とから構成されている。
【0027】
尚、苗トレイTは、薄肉に形成されて可撓性を有するプラスチック製で、縦方向及び横方向に所定のピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部Pを有し、ポット部Pの開口縁部が互に平面状に連結されて成型されている。そして、ポット部Pに充填した床土に播種し育苗することで、ソイルブロック苗Sが育成されている。
【0028】
苗取装置43は、図5と図6に示す如く、前記苗取出爪41を具備すると共に、この苗取出爪41を駆動させる爪駆動機構44を有する。苗取出爪41は左右一対の先端が尖った丸棒材で構成されており、先端側ほど相互に近接するように設けられている。爪駆動機構44は、苗取出爪41を苗トレイTと苗植付具42との間で苗取出爪41を姿勢変更しながら往復駆動させるもので、一対の苗取出爪41が取付けられる爪支持体45と、一対の苗取出爪41の進退を案内する爪案内体46と、前記爪支持体45及び爪案内体46をそれぞれ長手方向往復動自在に支持する支持具47とを具備している。
【0029】
この爪駆動機構44は、メインフレーム14と植付部ミッションケース30との間に両端が固定された連結フレーム48に下端が溶接固定された板材からなる支持体49に取付けられた伝動ケース50に取付支持されている。この伝動ケース50は、左右両側に突出する入力軸51と右側に突出する出力軸52とを備えており、入力軸51の右側先端に設けた受動スプロケット53と前記植付部ミッションケース30の右側に突出する駆動軸54の先端に設けた駆動スプロケット55との間に駆動チェーン56を設けて、エンジン9からの動力が伝達される。この入力軸51の右側先端に設けた受動スプロケット53と植付部ミッションケース30の駆動軸54の駆動スプロケット55と両スプロケット53・,55の間に設けた駆動チェーン56にて、苗取装置43への苗取出し駆動伝動系D2が構成されている。そして、前記出力軸52は、歯車伝動機構を介して入力軸51に連動連結されており、この出力軸52によって苗トレイ移動装置40が駆動される。
【0030】
前記入力軸51の伝動ケース50の左側に突出した先端にはクランク57が設けられ、このクランク57にクランクピン58が側方に突設され、また、入力軸51には、クランク57と同軸心で駆動カム59が設けられている。伝動ケース50の左側下部には、揺動アーム60の下部が揺動軸61を介して左右軸廻りに回動自在に枢結されており、この揺動アーム60の中途部には上下方向(アーム長手方向)に延びる溝カム62が形成され、この溝カム62には、クランク57のクランクピン58に外嵌されたローラ63が挿通係合されている。
【0031】
揺動アーム60の上部には支持具47がピン64を介して枢結され、この支持具47は、パイプ製の爪支持体45を軸方向移動自在に挿通案内する筒部47aを備えており、前記爪支持体45が円弧状に移動している苗トレイTの葉部が分離したポット部Pに向かって出退可能とされている。また、この爪支持体45の先端部に、ポット部P内の苗Sのブロック土に斜め上方向から突き刺される前記一対の苗取出爪41が取付けられている。
【0032】
また、伝動ケース50の上面には板状の支持部材65がボルトにより取付固定され、支持具47にはブラケット66を介して遊転自在にローラ67が取付けられ、このローラ67は、支持部材65にピン68を介して揺動自在に取付けられた案内板69に形成されたカム溝70に係合されている。前記案内板69は下方への突出腕の先端に転動ローラ71を有し、この転動ローラ71は駆動カム59上に当接されていて、駆動カム59の図5で反時計方向の回転により案内板69がピン68を中心として揺動するようにしている。
【0033】
また、案内板69は、支持部材65との間に介装されたスプリング72によって、転動ローラ71が駆動カム59に押し付けられる方向に付勢されている。
爪支持体45の基端部に設けた基体73と、爪支持体45を内嵌保持する支持具47の筒部47aとの間には、爪支持体45を後退させる方向に付勢するコイルスプリング74が介装されており、爪支持体45の前端部には爪取付具75が嵌合固定されている。この爪取付具75に一対の苗取出爪41の基部がそれぞれ軸76を介して枢支されており、一対の苗取出爪41は爪取付具75に対して先端が遠近移動するように揺動可能になっている。
【0034】
支持具47の下端部には、押出リンク77がピン78を介して回動自在に枢結されている。この押出リンク77の先端部には長溝79が形成され、爪取付具75の突出腕に設けたピン80と係合されている。押出リンク77には、クランク57のクランクピン58と当接可能な略円弧状のカム板81が設けられている。前記爪支持体45と基体73及び爪取付具75には、前記爪案内体46が長手方向摺動自在に挿入され、該爪案内体46は丸棒等で形成されていて、その前端に苗取出爪41を挿通案内する案内孔を備えた案内部82が設けられ、後端に側面視L字状の作動部材83が装着され、中途部に止め具84が固着され、この止め具84と基体73との間にコイルスプリング85が圧縮状に嵌装されている。
【0035】
前記支持具47には作動片86が枢支され、スプリングによって図5で時計方向に付勢されており、この作動片86は1本の足と両腕とを有する略T字形状であり、一方の腕にはロック部86aが、他方の腕には解除部86bが、足には押動部86cが形成されている。前記爪案内体46に固着の作動部材83は爪案内体46と平行な部分を有し、この平行部分は支持具47によって回り止め状態で摺動が案内されており、その摺動面に突出した前記作動片86のロック部86aと係合して、爪案内体46の突出方向の移動が規制されている。
【0036】
前記爪支持体45の後端の基体73にはロックアーム87が枢支されており、このロックアーム87はスプリングによって図5で時計方向に付勢されており、先端部に支持具47の係合部88と係合可能な鉤部89が形成されている。前記構成において、図5に示す状態から、入力軸51が反時計方向に回転すると、クランク57が同方向に回転してクランクピン58に嵌合されたローラ63がカム板81を押動して押出リンク77が苗トレイT側へと揺動され、これによって、図5に示すように、支持具47に対して爪取付具75及び爪支持体45が苗トレイT側へ向けて押動され、コイルスプリング74,85を圧縮する。これにより、苗取出爪41は突出して苗Sのブロック土を突き刺し、かつ爪支持体45が後退するための復元力が保有されることになる。
【0037】
尚、苗取出爪41が突出して苗Sのブロック土を突き刺す際にあっては、苗取出爪41が案内部82の案内孔に規制されて、左右の苗取出爪41の先端間距離が狭められながら該苗取出爪41がブロック土に突き刺されるように構成されている。また、爪支持体45は突出した状態でロックアーム87の鉤部89が支持具47の係合部88と係合することによりその状態が保持され、揺動アーム60及び案内板69は揺動しない。
【0038】
この状態から、さらに入力軸51が反時計方向に回転すると、ローラ63が揺動アーム60の溝カム62内を摺動することで揺動アーム60が揺動軸61廻りに苗トレイTから離反する方向に揺動して、爪支持体45、爪案内体46及び支持具47と共に苗取出爪41が苗トレイTに対して後退し、苗Sのブロック土がポット部Pから取り出される。
【0039】
その後、さらに入力軸51が反時計方向に回転すると、爪支持体45,爪案内体46及び支持具47と共に苗取出爪41が苗トレイTから離反する方向に移動すると共に、ローラ67がカム溝70の前上がり状部分を摺動して、苗取出爪41等が略下向き姿勢に変更し、苗Sを下向き姿勢にすると共に、苗Sを苗植付具42の前部上方に位置させる。
【0040】
そして、苗取出爪41が略下向き姿勢にされた状態に移動してきたときに作動片86の押動部86cが支持部材65に位置調節自在に設けたロック解除部材と当接する。作動片86が回動されると、まず作動片86のロック部86aによる作動部材83に対するロックが解除され、スプリング85の付勢力により爪案内体46が突出して、苗取出爪41に保持されている苗Sを苗取出爪41から押し出し離脱させ、苗植付具42に上方から落下投入する。
【0041】
その後にさらに作動片86が回動すると、解除部86bによりロックアーム87を押し上げて鉤部89と係合部88との係合が解除され、コイルスプリング74の付勢力により爪案内体46を伴って爪支持体45が後退する。その後は、入力軸51の、図5の反時計方向の回転によって、図5に示す状態に移動し、前記作動を繰り返す。
【0042】
苗トレイ移動装置40は、苗トレイTを載置する苗載台90を備えており、この苗載台90は、左右方向に配置された上下一対の案内レール91a,91bに水平状態で左右方向移動自在に支持されている。
【0043】
この上案内レール91aは、メインフレーム14の後端に固着された横フレーム92と左右上連結体93にて連結支持されており、下案内レール91bは、第二植付伝動ケース32と支持体49と各々左右連結体94にて連結支持されている。そして、上下一対の案内レール91a,91bは、その左右端を左右縱フレーム95にて連結しており、平面視で矩形状の強度の強いフレーム構成になっている。
【0044】
また、苗載台90は苗トレイTの底部を横一列のポット部Pに亘って支持する載置板96を有し(従って、この載置板96の上面が苗トレイTを載置支持する載置面96aとされている)、この載置板96は左右方向に対向配置された一対の側板97間に配置されていて、載置板96の左右端部が左右側板97の対向面(左右方向内面)に固定されている。
【0045】
苗載台90は、水平状態であるために、操縦ハンドル6側の作業者が苗の状態を確認し易く、長い苗でも倒れ難い。
左右側板97間下部には、縦移動駆動軸98が左右方向に配置されて設けられており、左右側板97間上部には、縦移動従動軸99が左右方向に配置されて設けられており、駆動軸98には左右一対の駆動スプロケット100が固定され、従動軸99には左右一対の従動スプロケット101が固定されている。また、駆動スプロケット100と従動スプロケット101との間には、これらに亘ってエンドレスチェーン102が掛装され、このチェーン102には、苗トレイTの縦方向(上下方向)のポット部P間の間隙に係合する搬送ピン103が左右方向内方突出状に取付けられている。
【0046】
従って、駆動軸98が、図9に矢示Aで示す方向に回動駆動することによって苗トレイTが搬送ピン103によって押動されて縦移動可能とされている。尚、左右の側板97は前記縦移動駆動軸98や従動軸99以外に他の連結部材によって連結されている。
【0047】
この苗トレイ移動装置40には、苗トレイTの縦横の寸法が同じで且つポット部Pの開口の大きさは異なるがポット部Pの開口間の間隔が略同じ(即ち、縦横の配列方向のポット部Pの中心間のピッチ及びポット部Pの数の異なる)2種類の苗トレイTが装着されるようになっており、従って、前記搬送ピン103は、ポット部P間の各々に係合するように設けられるのではなく、2種類の苗トレイTの縦方向のポット部P間の間隙が縦方向に関して一致する位置に設けられる。
【0048】
苗載台90の載置板96の上端部には、樹脂材にてスノコ状に形成した平板よりなる延長苗載部300が回動自在に設けられている。即ち、載置板96の上端部に設けた回動支点軸301に延長苗載部300の基部が回動自在に装着されており、載置板96の苗トレイTを載置する載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1と載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2とに姿勢変更自在に設けられている。そして、この延長苗載部300に一体に設けたアーム302と後述の(苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする)植付昇降レバー203とを操作ワイヤ303にて連結し、機体旋回の為に植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると、操作ワイヤ303を介して延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更するように連係している。
【0049】
図1に示す304は苗載台90の載置板96の上端部の左右両側に各々設けた左右トレイ受け具であって、載置板96の上端部の左右両側位置で各々上方に延びて内側に折れ曲がった形状をしており、この内側に折れ曲がった部分で苗トレイTの左右両側の苗が無い側部上面を支持できる構成となっている。即ち、延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更した時に、左右トレイ受け具304が苗トレイTの左右両側部を支えて、苗トレイTが前方に倒れたり折れ曲がったりして苗が損傷することを防止する。
【0050】
305は延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を規制する調節ボルトであって、該調節ボルト305の先端が延長苗載部300に一体に設けたアーム302と接当することによって、延長苗載部300の前方傾斜状態Z2の角度を規制する。即ち、調節ボルト305をアーム302側に突出させるほど、延長苗載部300の前方傾斜状態Z2に姿勢変更した時に調節ボルト305の先端がアーム302に接当するのが早くなり、前方傾斜状態の角度が小さくなる。柔らかい素材で形成された苗トレイTの場合は、延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を大きくすると、苗トレイTが前方に折れ曲がってしまい苗を傷めるので、調節ボルト305を調節して、延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を小さくする。
【0051】
上記のように機体の旋回時に植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると、操作ワイヤ303を介して延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更するから、操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って機体後部を押し下げて機体の旋回操作をする作業者の方に向かって延びている延長苗載部300が前方に向けて自動的に姿勢変更する為、作業者は延長苗載部300が邪魔にならず作業性良く旋回作業が行える。
【0052】
ここで前記苗トレイTの横移動機構を図8で説明すると、苗載台90の左右両側方に配置されて左右縱フレーム95に取付支持された左右軸受部材104間に、左右側板97を貫通すると共に同ピッチで切られた左右ネジの谷部を結合した特殊ネジ(ナピヤネジ)が形成された横移動軸105が左右軸廻り回転自在に支持され、この横移動軸105には、その軸上の特殊ネジに係合するスライダ106が外嵌されている。このスライダ106は、苗載台90の載置板96の背面に設けられた左右一対の係合片107に係合されている。
【0053】
前記横移動軸105には、出力軸52から伝動ケース108内の巻掛け伝動機構108aを経て動力が伝達されて、該横移動軸105が間欠的に回転駆動され、横移動軸105を間欠的に回転駆動すると、スライダ106が間欠的に左右方向に移動すると共に横移動軸105に形成されたネジの端部で折り返して、苗載台90が左右方向に往復移動されるようになっている。この伝動ケース108内の巻掛け伝動機構108aにて苗載台駆動系D3が構成されている。
【0054】
そして、横移動軸105は、苗取出爪41によって苗Sをポット部Pから取出す際にあっては停止されており、苗Sをポット部Pから取出した後に回転して、ポット部Pの横配列方向(左右方向)に1ピッチだけ苗載台90を移動させるように間欠回転するように構成されている。尚、選択的に使用される2種類の苗トレイTのポット部Pの横方向のピッチに対応した横移動量を選択できるように、伝動ケース50内で横移動量が切換え可能とされている。
【0055】
次に、苗トレイTの縦移動機構は、横移動軸105の左右両側には縦移動カム109が固定され、苗載台90には左右側板97間に縦移動作動軸110が回転自在に支持され、この縦移動作動軸110には、苗載台90が最左端又は最右端にまで移動したときに縦移動カム109に係合するホロワ111が左右一対備えられている。また、縦移動作動軸110はリンク112等を介して縦移動駆動軸98の左端側に設けられた縦移動手段113に連動連結されている。
【0056】
そして、苗載台90が左右の端部まで移動したときに、ホロワ111が縦移動カム109によって押されて縦移動作動軸110が回動し、リンク112を介して縦移動手段113が作動されて縦移動駆動軸98が、苗トレイTをポット部Pの縦配列方向(左右方向に直交する配列方向)にポット部Pの1ピッチだけ移送するように回動される。
【0057】
これによって、横一列のポット部Pからのソイルブロック苗Sの取出しを終えた時点で、苗トレイTがポット部Pの縦方向の間隔に相当する分縦移動されるようになっている。苗トレイTの苗Sが取り出された後の部分は、駆動スプロケット100に沿って載置板96の下面側へと折り返されるようになっており、図9に示すように、苗載台90の下部には、板材を縦移動駆動軸98の軸心を中心とする円弧状に形成されていて、苗トレイTを駆動スプロケット100に沿うように案内する案内部材114が、左右両端側及び中央部に取付固定されている。
【0058】
図2に示す310は横移動軸105を駆動回転して苗載台90を左右移動させる電動モータで、操作パネル202に設ける苗供給スイッチ311を押すと、作動して横移動軸105を駆動回転して苗載台90を左右一側端(例えば、機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の位置)に向けて、案内レール91aに設けた苗載台移動端検出センサ312により苗載台90が左右一側端にまで移動したことを検出するまで移動させる。
【0059】
従って、苗載台90に苗トレイTを載せて苗移植作業を開始する際に、該苗供給スイッチ311を押すと、苗載台90は左右一側端(例えば、機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の位置)まで移動して停止するので、苗移植作業開始時に必ず苗トレイTの端の苗から苗取装置43が苗を取出すことができ、苗を無駄にすることなく、且つ、作業性良く苗移植作業が行える。尚、縦移動従動軸99を駆動する電動モータ313を設けており、苗供給スイッチ311を押すと電動モータ313が作動して、苗載台90に載せた苗トレイTを苗取装置43が苗を取出す位置まで下方に送るように構成している。
【0060】
また、機体旋回時に(植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると)電動モータ310を作動させて、苗載台90を機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の端位置まで移動させ、旋回が終了すると(植付昇降レバー203にて植付クラッチの入操作又は機体の下降操作をすると)電動モータ310が作動した分だけ逆作動して苗載台90を元の位置に戻すように構成すると、機体の旋回時に操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って機体後部を押し下げて機体の旋回操作をする作業者の方に向かって延びている延長苗載部300が操縦ハンドル6と左右方向で機体の反対側に移動するので、操縦ハンドル6前方に苗載台90がなくなり、作業者は延長苗載部300が邪魔にならず作業性良く旋回作業が行える。
【0061】
左右両側の案内部材114には、それぞれ苗トレイTのポット部Pの底部が載置板96から離反する方向に移動する(浮き上がる)のを防止すべく苗トレイT上面の左右側縁側を押さえる押さえ部材115が設けられている。この押さえ部材115は弾性変形自在な鋼棒材を折曲して形成されており、基部側115aが案内部材114に取付固定され、中途部が苗トレイTの上面に接当してこれを弾圧し(単に接当するだけでもよい)、先端側は苗トレイTから離反するように構成されている。
【0062】
左右各押さえ部材115の、苗トレイT縦移動方向後方側には、苗トレイTの載置面96aから離反する方向の移動を規制する規制手段116が配置されている。この規制手段116は、弾性変形自在な鋼棒材を折曲して形成され、中途部が苗トレイTの上面左右側縁側に接当する押さえ部116aとされ、一端側が押さえ部116aを苗トレイT側に弾圧させるように側板97に取り付けられる取付部116bとされ、他端側がアーチ状に形成されたつまみ部116cとされている。
【0063】
前記取付部116bは、ボルト93によって側板97に回動自在に取り付けられており、押さえ部116aが苗トレイTの載置面96aから離反する方向の移動を規制する規制姿勢(図9乃至図12に実線で示す)から、つまみ部116cを把持して押さえ部116aを引き上げると共に取付部116b廻りに規制手段116を左右方向外方に回動させることで、苗トレイTが載置板96上に垂直方向から載置可能とされる退避姿勢(図12に仮想線で示す)へと、規制手段116が姿勢変更自在とされている。
【0064】
前記苗載台90の載置板96には、右側(左側でもよい)の規制手段116の近傍に位置して苗トレイTの通過を検出する検出手段117が設けられている。この検出手段117は、苗トレイTの右端側のポット部Pの底部に接当する接当部材118と、この接当部材118をポット部P側へと付勢する付勢部材119と、マイクロスイッチ等の接触センサ120とから構成されている。
【0065】
接当部材118は、苗トレイ縦移動方向後方側が載置板96の下面側に固定された支持部材121に支軸122を介して左右軸廻りに回動自在に支持されていて、載置板96に形成した開口部123を介して載置板96の載置面96a側に出退自在に突出可能とされている。また、接当部材118には載置板96の下面に接当して、接当部材118の突出方向(開口部123から苗トレイT側に突出する方向)の回動を規制するストッパ124が固定されて設けられている。
【0066】
付勢部材119は、バネ板等から形成されており、苗トレイ縦移動方向後方側が支持部材121に固定され、苗トレイ縦移動方向前方側が接当部材118の下面に接当しており、その弾性力によって接当部材118を突出方向に付勢している。接触センサ120は支持部材121に取付固定されており、その接触子120aが付勢部材119の中途部に接触している。
【0067】
従って、接当部材118は、図9に仮想線で示すように苗トレイTが検出手段117上を通過している間は、ポット部Pによって押圧されて載置板96の下面側へと退避して、付勢手段119を介して接触センサ120の接触子120aを押圧し、苗トレイTの存在を検出する。そして、図9に実線で示すように、苗トレイTが検出手段117上を通過すると、最後部のポット部Pが接当部材118から離反し、付勢部材119によって接当部材118が載置面96a側に突出すると共に、接触センサ120の接触子120aの押圧が解除されて、苗トレイTが検出手段117から離反したこと、すなわち苗トレイTの通過を検出する。
【0068】
尚、検出手段117が苗トレイTの通過を検出すると、その検出信号によって、ブザー、ランプ等からなる報知手段が作動され、苗トレイTを補給しなければならないことを作業者に報せる。また、図9では、ポット部Pの縦配列方向の後から2つ目のポット部Pが、苗取出爪41による苗取出し位置にきたときに、検出手段117が苗トレイTの通過を検出し、苗トレイTを補給するようになっているが、これよりもポット部Pの縦配列方向後方側で苗トレイTの通過を検出するようにしてもよい。
【0069】
作業者は苗トレイTが検出手段117を通過したことが報知手段の作動にて分かると、左右の規制手段116を退避姿勢に姿勢変更させて、苗トレイTを載置板96上に載置補給した後、左右の規制手段116を規制姿勢にもどす。前記のように、検出手段117は規制手段116の近傍に設けられているので、苗トレイTの浮き上がりによる検出手段117の誤作動が防止できる。従って、検出手段117を設ける場所は、規制手段117によって苗トレイTの浮き上がりを規制できる範囲内であれば、どこでもよい。
【0070】
尚、規制手段116は、苗トレイTの上面左右側縁側を押圧しなくても、接当させるだけで苗トレイTの浮き上がりを規制するようにしてもよく、また、接当部材118を苗トレイTの上壁(ポット部Pの開口縁を連結する部分)下面に接当させるようにしてもよい。また、検出手段117としては、マイクロスイッチ又はリミットスイッチ等の接触センサの接触子を直接苗トレイT又は接当部材118に接当させるようにしてもよい。
【0071】
ここで、入力軸51からの動力伝達機構及び苗トレイTの横移動機構の横移動量の切換え機構について説明する。図13乃至図15に示すように、入力軸51には欠歯歯車125がスプライン嵌合され、また、伝動ケース50内には、入力軸51及び出力軸52と平行に配置されて軸心廻りに回転自在に支持された中間軸126が設けられ、この中間軸126には、前記欠歯歯車125に噛合する伝動歯車127がスプライン嵌合されていて、入力軸51から中間軸126に間欠的に動力が伝達され、該中間軸126が間欠回転する。
【0072】
また、中間軸126には、軸心方向に間隔をおいて配置された第1横移動駆動歯車128と第2横移動駆動歯車129とが中間軸の軸心廻りに相対回転自在に外嵌され、一方、出力軸52には、第1横移動駆動歯車128に噛合する第1横移動従動歯車130と、第2横移動駆動歯車129に噛合する第2横移動従動歯車131とが一体回転自在に外嵌されている。
【0073】
また、中間軸126には、これら第1横移動駆動歯車128と第2横移動駆動歯車129との間にスプライン嵌合されていて、中間軸126と一体回転自在で且つ軸心方向移動自在とされたシフタ132が設けられている。このシフタ132には、第1横移動駆動歯車128に形成された第1噛合歯133に噛合する第1係合歯134が設けられると共に、第2横移動駆動歯車129に形成された第2噛合歯135に噛合する第2係合歯136が設けられている。
【0074】
従って、シフタ132を軸心方向に移動させて第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させると、第1横移動駆動歯車128、シフタ132、第1横移動従動歯車130を介して動力が伝達され、また、第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させると、第2横移動駆動歯車129、シフタ132、第2横移動従動歯車131を介して動力が伝達されて、出力軸52が間欠回転され、前述したように、この出力軸52から横移動軸105に動力が伝達されて、該横移動軸105が間欠的に回転される。
【0075】
そして、第1横移動駆動歯車128と第1横移動従動歯車130との回転比は、第2横移動駆動歯車129と第2横移動従動歯車131との回転比よりも大きくて、ポット部Pのピッチの異なる2種類の苗トレイTに対応して、該苗トレイTの横移動量が2段階に切換えられるようになっている。前記伝動ケース50の上面には、横送切換レバー137が配置されると共に、伝動ケース50には、該ケース50の上壁に形成された挿通孔138に上下軸廻りに回動自在に挿通された回動軸139が設けられ、この回動軸139の下端部には、シフタ132の周溝132aに挿入されるシフトピン140が固着されており、回動軸139の軸心廻りの回動動作によってシフトピン140が回動軸139の軸心廻りに揺動してシフタ132を中間軸126の軸心方向に移動させことができるようになっている。
【0076】
回動軸139の上部は挿通孔138から突出され、その突出部分の下部側に連動プレート141の一端側が一体回動するように嵌合され、この連動プレート141の他端側には係合ピン142が固定されている。回動軸139の突出部分の中間部には、カラー143が相対回動自在に外嵌され、回動軸139の突出部分の上部はネジ軸部144とされ、そのネジ軸部144に当板145及びワッシャ146が外嵌されると共に、ナット147が螺合されている。
【0077】
カラー143には前記横移動切換えレバー137が相対回動自在に外嵌され、この横移動切換えレバー137には、バネ受け部148が一体形成されている。また、カラー143の、横移動切換えレバー137と、連動プレート141及び当板145との間には、それぞれ捩りコイルバネ149が外嵌されており、これら捩りコイルバネ149は互いに逆方向に捩じられていると共に該捩りコイルバネ149の一端部は係合ピン142に、他端部は横移動切換えレバー137のバネ受け部148に掛止されている。
【0078】
従って、横移動切換えレバー137を回動軸139の軸心廻りに回動操作すると捩りコイルバネ149を介して連動プレート141が同行回動し、回動軸139が回動され、シフタ132が中間軸126の軸心方向に移動されることとなり、横移動切換えレバー137を図15に実線で示す位置から仮想線で示す位置に、又は仮想線で示す位置から実線で示す位置に回動操作することで、苗トレイTの横移動量の切換えがなされるように構成されている。
【0079】
また、この苗トレイTの横移動量の切換え時において、第1係合歯134が第1噛合歯133に、又は第2係合歯136が第2噛合歯135に噛み合わないと、一方のバネ149がねじられて、回動軸139及び連動レバー125等が回動しなくても横移動切換えレバー137の回動操作が許容されるようになっており、この状態において、第1又は第2噛合歯133,135が第1又は第2係合歯134,136に噛み合う位置になると、前記ねじられた一方のバネ149の付勢力によって、回動軸139及び連動レバー125等が回動し、苗トレイTの横移動量の切換えが完了する。
【0080】
従って、苗トレイTの横移動量の切換え時にあっては、横移動切換えレバー137を操作するのに、第1又は第2係合歯134,136と第1又は第2噛合歯133,135とが噛み合うように各部のタイミングを合わせる必要がなく、横移動切換えレバー137を操作するだけで、バネチャージ機能により、切換えタイミングの合った位置で自動的に切換わるように構成され、苗トレイTの横移動量の切換えの容易化が図れている。
【0081】
伝動ケース50の上部には、ネジ孔150が形成されると共に、該ネジ孔150に螺合されるノブボルト151を備えており、横送切換レバー137には、第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させた状態と、第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させた状態とにおいて、前記ネジ孔150に一致する一対の挿通孔152が貫通形成されており、第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させた状態又は第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させた状態で、ネジ孔150にノブボルト151を螺合させることによって、横送切換レバー137を固定できるようになっている。
【0082】
前記載置板96に代えて、図21に示す如き、苗トレイTのポット部Pに底部から係合する搬送突起194a,194bを適宜間隔で設けた搬送ベルト193にすることも出来る。この搬送突起194a,194bの左右中間側搬送突起194aは平面視で十字型に、左右側部側搬送突起194bはT字型にし、側面視で上端を円弧上に丸めている。
【0083】
搬送突起194a,194bは、前記苗トレイTの縦横の寸法が同じで且つポット部Pの開口の大きさは異なるがポット部Pの開口間の間隔が略同じ2種類の苗トレイTを係合する位置に設ける。
【0084】
苗植付装置5は、図17と図18に示す如く、下端が尖ったカップ状の苗植付具42を備えている。この苗植付具42は、前側部材42aと後側部材42bとからなっており、苗植付具42の後方に位置する前側部材回動軸161Aに回動自在に支持された左右前側部材取付アーム162Aに前側部材42aが一体に取り付けられ、苗植付具42の前方に位置する後側部材回動軸161Bに回動自在に支持された左右後側部材取付アーム162Bに後側部材42bが一体に取り付けられている。よって、回動軸161A,161Bを支点にして両部材42a,42bが回動すると、苗植付具42の下部が開閉する。
【0085】
前側部材取付アーム162Aと後側部材取付アーム162Bに形成された長穴に遊嵌する連動ピン163によって、前側部材42aと後側部材42bは互いに連動して回動する。前側部材取付アーム162Aの脚部162aAと後側部材取付アーム162Bの脚部162aBとの間に、前側部材42a及び後側部材42bを閉じる側に付勢するスプリング164が張設されている。この苗植付具42は、下記の作動機構によって所定の動作を行う。
【0086】
第二植付伝動ケース32から上方に突出する支持部33aに後リンク支持アーム167Aが回動自在に取り付けられ、その支持アーム167Aに基部が枢着された後リンク168Aの後端に前側部材回動軸161Aが連結されている。後リンク168Aの中間部には、第二植付伝動ケース32の後端部に設けた後リンク駆動アーム169Aが連結されている。また、植付部ミッションケース30に前リンク支持アーム167Bが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された前リンク168Bの後端に後側部材回動軸161Bが連結されている。前リンク168Bの中間部には、第一植付伝動ケース31の後端部に設けた前リンク駆動アーム169Bが連結されている。両駆動アーム169A,169Bが駆動回転すると、後リンク168A及び前リンク168Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、苗植付具42が一定姿勢のまま上下動する。
【0087】
後リンク168Aの基部には開閉アーム171が回動自在に取り付けられ、その開閉アーム171の先端部と前側部材取付アーム162Aとが開閉ロッド172で連結されている。また、後リンク168Aの中間部には後リンク駆動アーム169Aと一体に回転する開閉カム173が取り付けられている。この開閉カムのカムフォロアとしてのローラ174が開閉アーム171に設けられている。
【0088】
苗植付具42が下死点付近にある位置から上昇する行程で、開閉カム173がローラ174に係合するようになっている。開閉カム173がローラ174に係合すると、開閉ロッド172が引かれ、前側部材42aと後側部材42bが互いに連動して回動し、苗植付具42が開く。開閉カム173がローラ174に係合しない時は、スプリング164の張力によって苗植付具42が閉じている。
【0089】
苗植付具42が上死点にある時に、苗供給装置4により苗が落下供給される。供給された苗は、前側部材回動軸161Aと後側部材回動軸161Bに取り付けられている筒状の苗案内176を通って苗植付具内に導かれる。苗を保持した苗植付具42が下降し、下死点では苗植付具42の下部が畝の表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具42が開き、保持していた苗を上記苗移植用穴の中に開放する。そのまま苗植付具42が上昇し、上死点付近まで上昇すると苗植付具42が閉じる。
【0090】
尚、苗植付具42の苗植付性能を維持する為に、苗植付具42が圃場に苗を植付けて上昇する過程で苗植付具42の外周面及び内周面にゴム材等よりなるスクレーパを摺接させて、苗植付具42に付着した泥土を落とす構成が知られている。この苗植付具42の内周面に摺接するスクレーパは、苗植付具42が開いて上昇している過程で苗植付具42内にスクレーパが入り苗植付具42の上昇により苗植付具42の内周面の泥土を落とす構成であるが、苗植付具42内にスクレーパが入った直後に苗植付具42を少し閉じる構成にするとスクレーパの苗植付具42内周面に摺接する抵抗が大きくなって良く泥土を落とすことができる。
【0091】
前記実施例は、苗取出爪41を一個設けているが左右一対設ける構成にしても良い。この構成では苗植付具42の上に設ける苗案内176の内部を左右に仕切り板で仕切り、それぞれの底部にタイミングをずらして開閉する落下蓋を設け、左右の苗取出爪41で掻き取った苗を苗植付具42で交互に植え付けるのである。この構成で植付速度を高速化出来る。
【0092】
苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪180が配置されている。この左右鎮圧輪180は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0093】
メインフレーム14の前端に枢支した鎮圧アーム153の後端に鎮圧輪180を枢支し、該鎮圧アーム153の先端に前鎮圧輪182を枢支している。鎮圧輪180の枢支部に立設する第一ウエイトアーム181に第一ウエイト160を取り付け、前鎮圧輪182の枢支部から前方へ突設する第二ウエイトアーム154に第二ウエイト155を取り付け位置調整可能に設ける。第一ウエイト160は取り換えることで鎮圧輪180の鎮圧荷重を変更し、第二ウエイト155の取付位置を変更することで前鎮圧輪182の鎮圧荷重を変更出来るのである。
【0094】
鎮圧アーム153の前後中間位置にセンサアーム156を枢支し、その後端に植付深さ調節レバー197に連結する昇降アーム157と油圧バルブユニット20の上下制御バルブ20aに連結するセンサロッド159を連結し、植付深さ調節レバー197で鎮圧輪180と前鎮圧輪182の上下位置を調整する。
【0095】
植付深さ調節レバー197を係合案内183の調節係合部に対して位置調節して係合係止して固定状態にすることにより、昇降アーム157の上下高さ位置を調節できるので、畝に対する機体高さを制御する基準位置を自由に設定できるので、苗の植付深さが調節できる。
【0096】
鎮圧輪180が上下回動すると、その回動をセンサアーム156とセンサロッド159で上下制御バルブ20aに伝え、センサ192の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さの変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗の成育が良い。
【0097】
前鎮圧輪182は、苗植付具42による苗植付前の畝面を整地し、鎮圧輪180は、植え付けた苗の側面土を鎮圧して苗を安定させ、植付深さの検出センサとしても機能する。
尚、油圧バルブユニット20内の左右傾斜制御バルブ20bは左右傾斜検出用の振り子(図示省略)の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ27が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。
【0098】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部に左右グリップ6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者が左右グリップ6aを握って操縦する。
【0099】
左右グリップ6aの下側には各々左右サイドクラッチレバー201が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル202が設けられ、該操作パネル202に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー203、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー204等が設けられている。
【0100】
図20に、乗用ステップ189を設けた実施例を示している。走行部ミッションケース7の左右側部にステップアーム184を軸185で枢支し、その先端にステップブラケット187とステップ輪186を枢支し、ステップブラケット187の円弧孔とステップアーム184をチョウボルト191で取り付け角度を変更可能に取り付けている。なお、ステップアーム184を二本の平行リンクで構成して乗用ステップ189の上面が水平を保って上下するようにしても良い。乗用ステップ189の支持脚192は乗用ステップ189の上下方向の長穴に二本のボルト190で固定して高さ調整可能にしている。
【0101】
作業者が乗用ステップ189に立ち乗りして操縦ハンドル6のグリップ6aを持って操縦操作をするのであるが、乗用ステップ189は機体と別に上下するために機体の走行バランスを悪くすることが無い。
【0102】
なお、ステップブラケット187とスイングアーム25を長穴で遊びを持たせロッドで連結し、機体が最大に上昇すると乗用ステップ189も上昇するようにすれば、旋回が容易になる。
【0103】
また、乗用ステップ189とステップ輪186を重いものにすることで、旋回時のバランスウエイトとして作用するようにしても良い。
上記の野菜移植機1にて野菜の苗を圃場に移植する作業について、説明する。先ず、苗載台90に野菜苗が育苗された苗トレイTを装填し、予備苗載台36に予備の苗トレイTを載せる。そして、作業者は機体の後部で操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って右後輪2の後方の畝溝を歩きながら、メインクラッチレバー204を入操作して左右前輪3と左右後輪2を畝溝に沿わせて機体を進行させ、植付昇降レバー203を操作して植付クラッチを入操作し且つ機体制御機構を制御状態にして、移植作業を行なう。この時、左右往復移動する苗載台90の苗トレイTから苗取出爪41が苗を一つずつ取出して苗植付具42へ落下投入する。そして、苗植付具42が畝に苗を植付けた後に、左右一対の鎮圧輪180がその苗の左右側部を軽く鎮圧する。
【0104】
特に、本発明の構成では、機体の後部にエンジン9を搭載しそのエンジン9の左右側部から操縦ハンドル6を立設しているので、機体の前後長さが従来よりも短くなって小回りが良く、小型の機体構成であるから、その収納保管場所も狭くて良く優れている。
【0105】
また、植付作業の進行に伴って重量が変化する苗供給装置4が前輪3と後輪2からなる走行部1aの前後中間に位置しているために走行安定性が良い。
尚、上記実施例においては、畝に移植する作業例を示したが、平らな圃場に苗を移植する場合も同様である。また、野菜苗としては、キャベツや白菜等の葉菜類の苗・大根やさつま芋等の根菜類の苗・南瓜や西瓜等の果菜類の苗が挙げられるが、他に、い草や花等の如何なる苗でも良い。
【符号の説明】
【0106】
1a 走行部
4 苗供給装置
6 操縦ハンドル
7 走行部ミッションケース
9 エンジン
30 植付部ミッションケース
43 苗取装置
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜等の苗を圃場に植付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の従来例として、例えば、特開2008−154533号公報に記載の如く、走行車体上の苗載台から苗取装置で苗を取出して苗植付装置に供給し、該苗植付装置が上下方向に往復動して圃場に苗を植付ける苗移植機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の苗移植機は、前後の走行車輪を具備した走行車体の前側にエンジンを搭載し、後部に設けた苗載台上の苗を中央部に設ける苗取装置で取出して苗植付装置に供給して後輪近くで苗を圃場に植え付け、走行車体の後方へ伸ばすハンドルを作業者が持って操縦操作を行うようにしている。このために、この苗移植機は、エンジンの前端からハンドルの後端までが長く、小回りが出来ず、柵や塀に囲まれた狭い圃場では使い勝手が悪い。
【0005】
そこで、本発明では、機体の前後長さを短くして小回りの利く苗移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上にエンジン9を搭載し、前記走行部ミッションケース7から前方へ苗植付装置5を駆動する植付部ミッションケース30を張り出し、該植付部ミッションケース30上で走行部1a上の前後略中央に位置して苗供給装置4を設け、該苗供給装置4の前側に苗を取出して苗植付装置5に供給する苗取装置43を設け、前記走行部ミッションケース7からエンジン9の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル6を設けてなる苗移植機とした。
【0007】
この構成で、機体の後部を歩行する作業者が操縦ハンドル6を持って走行部1aを走行させながら、苗供給装置4上の苗を苗取装置43で取出して苗植付装置5に供給して圃場へ植え付ける。
【発明の効果】
【0008】
操縦ハンドル6を走行部1aの後部に配置する走行部ミッションケース7上に搭載するエンジン9の側部から後方に向けて立ち上げているために、走行部1a前端から操縦ハンドル6の後端までの前後長さが従来よりも短くなって小回りが可能となり、苗供給装置4が走行部1a上の前後略中央に位置しているので、植付作業が進行して苗供給装置4に積載する苗が減少して軽くなっても全体の重量バランスを崩すことなく安定した植え付け走行を持続できる。また、苗植付装置5が走行部1aの前側で植付動作をするために前進走行でも畦際まで接近して植え付けを行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】野菜移植機の全体側面図である。
【図2】野菜移植機の全体平面図である。
【図3】走行部ミッションケースと植付部ミッションケースの連結部分の斜視図である。
【図4】鎮圧輪の斜視図である。
【図5】苗取装置の側面図である。
【図6】苗取装置の平面図である。
【図7】苗載台の平面図である。
【図8】苗トレイ移動装置部の平面断面図である。
【図9】苗載台の作用説明側面断面図である。
【図10】苗載台の作用説明平面図である。
【図11】苗載台の作用説明正面断面図である。
【図12】規制手段の作用説明斜視図である。
【図13】横移動量の切換え機構部の伝動構造を示す側面断面図である。
【図14】横移動量の切換え機構部の伝動構造を示す平面断面展開図である。
【図15】横移動切換えレバー部の平面図である。
【図16】油圧回路図である。
【図17】苗植付装置5の側面図である。
【図18】苗植付装置5の平面図である。
【図19】鎮圧輪部分の側面図である。
【図20】乗用ステップを取り付けた側面図である。
【図21】搬送ベルトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の一実施例として苗移植機の一例である野菜移植機を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
この野菜移植機1は、走行車輪2,3で構成した走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で機体を走行させながら、苗供給装置4と苗植付装置5からなる植付部1bで苗トレイT内の野菜のソイルブロック苗Sを畝Uの上面に植付ける構成となっている。作業者は、畝U間を歩きながら機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操縦操作する。以下、各部の構成について説明する。
【0012】
走行部1aは、走行部ミッションケース7の上部にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上部をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の前面側に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレーム13の前面左右端部から前方に前輪支持アーム18を枢支するメインフレーム14が固着連結されている。走行部ミッションケース7の左右側面から突出する左右回動筒部15に左右走行伝動ケース16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケースの先端部に駆動走行車輪である左右後輪2が軸支されている。
【0013】
左右前輪支持アーム18の下端部に従動走行車輪である左右前輪3が軸支され、後輪支持部と前輪支持部を連結杆8で連結し、左右前輪支持アーム18と左右走行伝動ケース16が同じ長さのために、後述する機体制御機構で後輪2が昇降するに伴って前輪3も同時に昇降し、機体が平行に昇降する。
【0014】
走行部1aには機体に対し左右後輪2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20から前方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該昇降シリンダ21のピストンロッドの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。天秤杆22は、前後両端が油圧バルブユニット20とメイフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。
【0015】
天秤杆22の左右両端部と、左右回動筒部15に固着した左右スイングアーム25とが、左右連結ロッド26を介して連結されている。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該ローリングシリンダ27を伸縮作動させることにより長さを変えて片側の後輪2を上下するようになっている。
【0016】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の上下制御バルブ20aと左右傾斜制御バルブ20b(図16)で制御して作動させられる。
【0017】
ローリングシリンダ27を固定して昇降シリンダ21を伸縮作動させると、左右の後輪2が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、ローリングシリンダ27側の後輪2が他方の後輪2に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0018】
走行部ミッションケース7の左右側部から略垂直に操縦ハンドル6を立ち上げ、この操縦ハンドル6の上部を後方へ略水平に折り曲げて後端部を左右グリップ6に形成している。左右グリップ6aの下側には各々左右サイドクラッチレバー201が設けられている。また、操縦ハンドル6の水平折り曲げ部には操作パネル202が設けられ、該操作パネル202に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー203、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー204等が設けられている。
【0019】
前記連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケース30の上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケース31の先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。
【0020】
そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の各作動機構が連結されており、この第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32にて苗植付装置5への植付駆動伝動系D1が構成され、苗植付装置5の後記苗植付具42が走行部1aの前輪3上に配置している。
【0021】
植付部ミッションケース30の上部に取り付けた苗供給フレーム34に、後述する苗供給装置4が載置され、この苗供給装置4の上に育苗トレイが載せられる予備苗載台36が支柱33で取り付けられている。
【0022】
予備苗載台36は上下二段構成で、上側を下側よりも前に寄せ、それぞれの後端の枠は低く苗トレイTを後方へ引き出し易くし、さらに、下段の後端が苗供給装置4の後端よりも前側に位置し、苗トレイを引き出して苗供給装置4へ移し替え易くしている。
【0023】
また、苗供給フレーム34の後部でエンジン9上に空苗トレイ載台37を設け、苗供給の終わった苗トレイを載せ置くようにしている。この空苗トレイ載台37の位置は、作業者が予備苗載台36から苗供給装置4に苗を供給する位置の下側で置き易く、しかも、空苗トレイ載台37の後端が操縦ハンドル6の下まで伸びているので、空苗トレイ載台37から空トレイを取り出し易い。
【0024】
図3に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該植付部ミッションケース30の下端部から後方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部7a内の走行部側の軸に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト35・・・によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト35・・・を外し、PTO取出部7aから入力軸31aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外せることができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0025】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から前方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から前方下向きに設けられ、且つ、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平方向に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第一植付伝動ケース31の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0026】
苗供給装置4は、前述の如く走行部1aの略前後中央の真上に配置されており、複数個のソイルブロック苗Sを縦方向と横方向とに多数収容した苗トレイTを略水平に載置支持すると共に、縦及び横方向に間欠移動する苗トレイ移動装置40と、この苗トレイ移動装置40の前方側に配置されていて苗取出爪41によって前記苗トレイTから苗を一つずつ取出して苗植付具42へと搬送する苗取装置43とから構成されている。
【0027】
尚、苗トレイTは、薄肉に形成されて可撓性を有するプラスチック製で、縦方向及び横方向に所定のピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部Pを有し、ポット部Pの開口縁部が互に平面状に連結されて成型されている。そして、ポット部Pに充填した床土に播種し育苗することで、ソイルブロック苗Sが育成されている。
【0028】
苗取装置43は、図5と図6に示す如く、前記苗取出爪41を具備すると共に、この苗取出爪41を駆動させる爪駆動機構44を有する。苗取出爪41は左右一対の先端が尖った丸棒材で構成されており、先端側ほど相互に近接するように設けられている。爪駆動機構44は、苗取出爪41を苗トレイTと苗植付具42との間で苗取出爪41を姿勢変更しながら往復駆動させるもので、一対の苗取出爪41が取付けられる爪支持体45と、一対の苗取出爪41の進退を案内する爪案内体46と、前記爪支持体45及び爪案内体46をそれぞれ長手方向往復動自在に支持する支持具47とを具備している。
【0029】
この爪駆動機構44は、メインフレーム14と植付部ミッションケース30との間に両端が固定された連結フレーム48に下端が溶接固定された板材からなる支持体49に取付けられた伝動ケース50に取付支持されている。この伝動ケース50は、左右両側に突出する入力軸51と右側に突出する出力軸52とを備えており、入力軸51の右側先端に設けた受動スプロケット53と前記植付部ミッションケース30の右側に突出する駆動軸54の先端に設けた駆動スプロケット55との間に駆動チェーン56を設けて、エンジン9からの動力が伝達される。この入力軸51の右側先端に設けた受動スプロケット53と植付部ミッションケース30の駆動軸54の駆動スプロケット55と両スプロケット53・,55の間に設けた駆動チェーン56にて、苗取装置43への苗取出し駆動伝動系D2が構成されている。そして、前記出力軸52は、歯車伝動機構を介して入力軸51に連動連結されており、この出力軸52によって苗トレイ移動装置40が駆動される。
【0030】
前記入力軸51の伝動ケース50の左側に突出した先端にはクランク57が設けられ、このクランク57にクランクピン58が側方に突設され、また、入力軸51には、クランク57と同軸心で駆動カム59が設けられている。伝動ケース50の左側下部には、揺動アーム60の下部が揺動軸61を介して左右軸廻りに回動自在に枢結されており、この揺動アーム60の中途部には上下方向(アーム長手方向)に延びる溝カム62が形成され、この溝カム62には、クランク57のクランクピン58に外嵌されたローラ63が挿通係合されている。
【0031】
揺動アーム60の上部には支持具47がピン64を介して枢結され、この支持具47は、パイプ製の爪支持体45を軸方向移動自在に挿通案内する筒部47aを備えており、前記爪支持体45が円弧状に移動している苗トレイTの葉部が分離したポット部Pに向かって出退可能とされている。また、この爪支持体45の先端部に、ポット部P内の苗Sのブロック土に斜め上方向から突き刺される前記一対の苗取出爪41が取付けられている。
【0032】
また、伝動ケース50の上面には板状の支持部材65がボルトにより取付固定され、支持具47にはブラケット66を介して遊転自在にローラ67が取付けられ、このローラ67は、支持部材65にピン68を介して揺動自在に取付けられた案内板69に形成されたカム溝70に係合されている。前記案内板69は下方への突出腕の先端に転動ローラ71を有し、この転動ローラ71は駆動カム59上に当接されていて、駆動カム59の図5で反時計方向の回転により案内板69がピン68を中心として揺動するようにしている。
【0033】
また、案内板69は、支持部材65との間に介装されたスプリング72によって、転動ローラ71が駆動カム59に押し付けられる方向に付勢されている。
爪支持体45の基端部に設けた基体73と、爪支持体45を内嵌保持する支持具47の筒部47aとの間には、爪支持体45を後退させる方向に付勢するコイルスプリング74が介装されており、爪支持体45の前端部には爪取付具75が嵌合固定されている。この爪取付具75に一対の苗取出爪41の基部がそれぞれ軸76を介して枢支されており、一対の苗取出爪41は爪取付具75に対して先端が遠近移動するように揺動可能になっている。
【0034】
支持具47の下端部には、押出リンク77がピン78を介して回動自在に枢結されている。この押出リンク77の先端部には長溝79が形成され、爪取付具75の突出腕に設けたピン80と係合されている。押出リンク77には、クランク57のクランクピン58と当接可能な略円弧状のカム板81が設けられている。前記爪支持体45と基体73及び爪取付具75には、前記爪案内体46が長手方向摺動自在に挿入され、該爪案内体46は丸棒等で形成されていて、その前端に苗取出爪41を挿通案内する案内孔を備えた案内部82が設けられ、後端に側面視L字状の作動部材83が装着され、中途部に止め具84が固着され、この止め具84と基体73との間にコイルスプリング85が圧縮状に嵌装されている。
【0035】
前記支持具47には作動片86が枢支され、スプリングによって図5で時計方向に付勢されており、この作動片86は1本の足と両腕とを有する略T字形状であり、一方の腕にはロック部86aが、他方の腕には解除部86bが、足には押動部86cが形成されている。前記爪案内体46に固着の作動部材83は爪案内体46と平行な部分を有し、この平行部分は支持具47によって回り止め状態で摺動が案内されており、その摺動面に突出した前記作動片86のロック部86aと係合して、爪案内体46の突出方向の移動が規制されている。
【0036】
前記爪支持体45の後端の基体73にはロックアーム87が枢支されており、このロックアーム87はスプリングによって図5で時計方向に付勢されており、先端部に支持具47の係合部88と係合可能な鉤部89が形成されている。前記構成において、図5に示す状態から、入力軸51が反時計方向に回転すると、クランク57が同方向に回転してクランクピン58に嵌合されたローラ63がカム板81を押動して押出リンク77が苗トレイT側へと揺動され、これによって、図5に示すように、支持具47に対して爪取付具75及び爪支持体45が苗トレイT側へ向けて押動され、コイルスプリング74,85を圧縮する。これにより、苗取出爪41は突出して苗Sのブロック土を突き刺し、かつ爪支持体45が後退するための復元力が保有されることになる。
【0037】
尚、苗取出爪41が突出して苗Sのブロック土を突き刺す際にあっては、苗取出爪41が案内部82の案内孔に規制されて、左右の苗取出爪41の先端間距離が狭められながら該苗取出爪41がブロック土に突き刺されるように構成されている。また、爪支持体45は突出した状態でロックアーム87の鉤部89が支持具47の係合部88と係合することによりその状態が保持され、揺動アーム60及び案内板69は揺動しない。
【0038】
この状態から、さらに入力軸51が反時計方向に回転すると、ローラ63が揺動アーム60の溝カム62内を摺動することで揺動アーム60が揺動軸61廻りに苗トレイTから離反する方向に揺動して、爪支持体45、爪案内体46及び支持具47と共に苗取出爪41が苗トレイTに対して後退し、苗Sのブロック土がポット部Pから取り出される。
【0039】
その後、さらに入力軸51が反時計方向に回転すると、爪支持体45,爪案内体46及び支持具47と共に苗取出爪41が苗トレイTから離反する方向に移動すると共に、ローラ67がカム溝70の前上がり状部分を摺動して、苗取出爪41等が略下向き姿勢に変更し、苗Sを下向き姿勢にすると共に、苗Sを苗植付具42の前部上方に位置させる。
【0040】
そして、苗取出爪41が略下向き姿勢にされた状態に移動してきたときに作動片86の押動部86cが支持部材65に位置調節自在に設けたロック解除部材と当接する。作動片86が回動されると、まず作動片86のロック部86aによる作動部材83に対するロックが解除され、スプリング85の付勢力により爪案内体46が突出して、苗取出爪41に保持されている苗Sを苗取出爪41から押し出し離脱させ、苗植付具42に上方から落下投入する。
【0041】
その後にさらに作動片86が回動すると、解除部86bによりロックアーム87を押し上げて鉤部89と係合部88との係合が解除され、コイルスプリング74の付勢力により爪案内体46を伴って爪支持体45が後退する。その後は、入力軸51の、図5の反時計方向の回転によって、図5に示す状態に移動し、前記作動を繰り返す。
【0042】
苗トレイ移動装置40は、苗トレイTを載置する苗載台90を備えており、この苗載台90は、左右方向に配置された上下一対の案内レール91a,91bに水平状態で左右方向移動自在に支持されている。
【0043】
この上案内レール91aは、メインフレーム14の後端に固着された横フレーム92と左右上連結体93にて連結支持されており、下案内レール91bは、第二植付伝動ケース32と支持体49と各々左右連結体94にて連結支持されている。そして、上下一対の案内レール91a,91bは、その左右端を左右縱フレーム95にて連結しており、平面視で矩形状の強度の強いフレーム構成になっている。
【0044】
また、苗載台90は苗トレイTの底部を横一列のポット部Pに亘って支持する載置板96を有し(従って、この載置板96の上面が苗トレイTを載置支持する載置面96aとされている)、この載置板96は左右方向に対向配置された一対の側板97間に配置されていて、載置板96の左右端部が左右側板97の対向面(左右方向内面)に固定されている。
【0045】
苗載台90は、水平状態であるために、操縦ハンドル6側の作業者が苗の状態を確認し易く、長い苗でも倒れ難い。
左右側板97間下部には、縦移動駆動軸98が左右方向に配置されて設けられており、左右側板97間上部には、縦移動従動軸99が左右方向に配置されて設けられており、駆動軸98には左右一対の駆動スプロケット100が固定され、従動軸99には左右一対の従動スプロケット101が固定されている。また、駆動スプロケット100と従動スプロケット101との間には、これらに亘ってエンドレスチェーン102が掛装され、このチェーン102には、苗トレイTの縦方向(上下方向)のポット部P間の間隙に係合する搬送ピン103が左右方向内方突出状に取付けられている。
【0046】
従って、駆動軸98が、図9に矢示Aで示す方向に回動駆動することによって苗トレイTが搬送ピン103によって押動されて縦移動可能とされている。尚、左右の側板97は前記縦移動駆動軸98や従動軸99以外に他の連結部材によって連結されている。
【0047】
この苗トレイ移動装置40には、苗トレイTの縦横の寸法が同じで且つポット部Pの開口の大きさは異なるがポット部Pの開口間の間隔が略同じ(即ち、縦横の配列方向のポット部Pの中心間のピッチ及びポット部Pの数の異なる)2種類の苗トレイTが装着されるようになっており、従って、前記搬送ピン103は、ポット部P間の各々に係合するように設けられるのではなく、2種類の苗トレイTの縦方向のポット部P間の間隙が縦方向に関して一致する位置に設けられる。
【0048】
苗載台90の載置板96の上端部には、樹脂材にてスノコ状に形成した平板よりなる延長苗載部300が回動自在に設けられている。即ち、載置板96の上端部に設けた回動支点軸301に延長苗載部300の基部が回動自在に装着されており、載置板96の苗トレイTを載置する載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1と載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2とに姿勢変更自在に設けられている。そして、この延長苗載部300に一体に設けたアーム302と後述の(苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする)植付昇降レバー203とを操作ワイヤ303にて連結し、機体旋回の為に植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると、操作ワイヤ303を介して延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更するように連係している。
【0049】
図1に示す304は苗載台90の載置板96の上端部の左右両側に各々設けた左右トレイ受け具であって、載置板96の上端部の左右両側位置で各々上方に延びて内側に折れ曲がった形状をしており、この内側に折れ曲がった部分で苗トレイTの左右両側の苗が無い側部上面を支持できる構成となっている。即ち、延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更した時に、左右トレイ受け具304が苗トレイTの左右両側部を支えて、苗トレイTが前方に倒れたり折れ曲がったりして苗が損傷することを防止する。
【0050】
305は延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を規制する調節ボルトであって、該調節ボルト305の先端が延長苗載部300に一体に設けたアーム302と接当することによって、延長苗載部300の前方傾斜状態Z2の角度を規制する。即ち、調節ボルト305をアーム302側に突出させるほど、延長苗載部300の前方傾斜状態Z2に姿勢変更した時に調節ボルト305の先端がアーム302に接当するのが早くなり、前方傾斜状態の角度が小さくなる。柔らかい素材で形成された苗トレイTの場合は、延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を大きくすると、苗トレイTが前方に折れ曲がってしまい苗を傷めるので、調節ボルト305を調節して、延長苗載部300の前方傾斜状態の角度を小さくする。
【0051】
上記のように機体の旋回時に植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると、操作ワイヤ303を介して延長苗載部300を載置板96の載置面96aの延長線上に位置する傾斜状態Z1から載置面96aの延長線から前方に折れ曲がった前方傾斜状態Z2に姿勢変更するから、操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って機体後部を押し下げて機体の旋回操作をする作業者の方に向かって延びている延長苗載部300が前方に向けて自動的に姿勢変更する為、作業者は延長苗載部300が邪魔にならず作業性良く旋回作業が行える。
【0052】
ここで前記苗トレイTの横移動機構を図8で説明すると、苗載台90の左右両側方に配置されて左右縱フレーム95に取付支持された左右軸受部材104間に、左右側板97を貫通すると共に同ピッチで切られた左右ネジの谷部を結合した特殊ネジ(ナピヤネジ)が形成された横移動軸105が左右軸廻り回転自在に支持され、この横移動軸105には、その軸上の特殊ネジに係合するスライダ106が外嵌されている。このスライダ106は、苗載台90の載置板96の背面に設けられた左右一対の係合片107に係合されている。
【0053】
前記横移動軸105には、出力軸52から伝動ケース108内の巻掛け伝動機構108aを経て動力が伝達されて、該横移動軸105が間欠的に回転駆動され、横移動軸105を間欠的に回転駆動すると、スライダ106が間欠的に左右方向に移動すると共に横移動軸105に形成されたネジの端部で折り返して、苗載台90が左右方向に往復移動されるようになっている。この伝動ケース108内の巻掛け伝動機構108aにて苗載台駆動系D3が構成されている。
【0054】
そして、横移動軸105は、苗取出爪41によって苗Sをポット部Pから取出す際にあっては停止されており、苗Sをポット部Pから取出した後に回転して、ポット部Pの横配列方向(左右方向)に1ピッチだけ苗載台90を移動させるように間欠回転するように構成されている。尚、選択的に使用される2種類の苗トレイTのポット部Pの横方向のピッチに対応した横移動量を選択できるように、伝動ケース50内で横移動量が切換え可能とされている。
【0055】
次に、苗トレイTの縦移動機構は、横移動軸105の左右両側には縦移動カム109が固定され、苗載台90には左右側板97間に縦移動作動軸110が回転自在に支持され、この縦移動作動軸110には、苗載台90が最左端又は最右端にまで移動したときに縦移動カム109に係合するホロワ111が左右一対備えられている。また、縦移動作動軸110はリンク112等を介して縦移動駆動軸98の左端側に設けられた縦移動手段113に連動連結されている。
【0056】
そして、苗載台90が左右の端部まで移動したときに、ホロワ111が縦移動カム109によって押されて縦移動作動軸110が回動し、リンク112を介して縦移動手段113が作動されて縦移動駆動軸98が、苗トレイTをポット部Pの縦配列方向(左右方向に直交する配列方向)にポット部Pの1ピッチだけ移送するように回動される。
【0057】
これによって、横一列のポット部Pからのソイルブロック苗Sの取出しを終えた時点で、苗トレイTがポット部Pの縦方向の間隔に相当する分縦移動されるようになっている。苗トレイTの苗Sが取り出された後の部分は、駆動スプロケット100に沿って載置板96の下面側へと折り返されるようになっており、図9に示すように、苗載台90の下部には、板材を縦移動駆動軸98の軸心を中心とする円弧状に形成されていて、苗トレイTを駆動スプロケット100に沿うように案内する案内部材114が、左右両端側及び中央部に取付固定されている。
【0058】
図2に示す310は横移動軸105を駆動回転して苗載台90を左右移動させる電動モータで、操作パネル202に設ける苗供給スイッチ311を押すと、作動して横移動軸105を駆動回転して苗載台90を左右一側端(例えば、機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の位置)に向けて、案内レール91aに設けた苗載台移動端検出センサ312により苗載台90が左右一側端にまで移動したことを検出するまで移動させる。
【0059】
従って、苗載台90に苗トレイTを載せて苗移植作業を開始する際に、該苗供給スイッチ311を押すと、苗載台90は左右一側端(例えば、機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の位置)まで移動して停止するので、苗移植作業開始時に必ず苗トレイTの端の苗から苗取装置43が苗を取出すことができ、苗を無駄にすることなく、且つ、作業性良く苗移植作業が行える。尚、縦移動従動軸99を駆動する電動モータ313を設けており、苗供給スイッチ311を押すと電動モータ313が作動して、苗載台90に載せた苗トレイTを苗取装置43が苗を取出す位置まで下方に送るように構成している。
【0060】
また、機体旋回時に(植付昇降レバー203にて植付クラッチの切操作又は機体の上昇操作をすると)電動モータ310を作動させて、苗載台90を機体左右中心とオフセットした操縦ハンドル6と機体左右方向で反対側の端位置まで移動させ、旋回が終了すると(植付昇降レバー203にて植付クラッチの入操作又は機体の下降操作をすると)電動モータ310が作動した分だけ逆作動して苗載台90を元の位置に戻すように構成すると、機体の旋回時に操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って機体後部を押し下げて機体の旋回操作をする作業者の方に向かって延びている延長苗載部300が操縦ハンドル6と左右方向で機体の反対側に移動するので、操縦ハンドル6前方に苗載台90がなくなり、作業者は延長苗載部300が邪魔にならず作業性良く旋回作業が行える。
【0061】
左右両側の案内部材114には、それぞれ苗トレイTのポット部Pの底部が載置板96から離反する方向に移動する(浮き上がる)のを防止すべく苗トレイT上面の左右側縁側を押さえる押さえ部材115が設けられている。この押さえ部材115は弾性変形自在な鋼棒材を折曲して形成されており、基部側115aが案内部材114に取付固定され、中途部が苗トレイTの上面に接当してこれを弾圧し(単に接当するだけでもよい)、先端側は苗トレイTから離反するように構成されている。
【0062】
左右各押さえ部材115の、苗トレイT縦移動方向後方側には、苗トレイTの載置面96aから離反する方向の移動を規制する規制手段116が配置されている。この規制手段116は、弾性変形自在な鋼棒材を折曲して形成され、中途部が苗トレイTの上面左右側縁側に接当する押さえ部116aとされ、一端側が押さえ部116aを苗トレイT側に弾圧させるように側板97に取り付けられる取付部116bとされ、他端側がアーチ状に形成されたつまみ部116cとされている。
【0063】
前記取付部116bは、ボルト93によって側板97に回動自在に取り付けられており、押さえ部116aが苗トレイTの載置面96aから離反する方向の移動を規制する規制姿勢(図9乃至図12に実線で示す)から、つまみ部116cを把持して押さえ部116aを引き上げると共に取付部116b廻りに規制手段116を左右方向外方に回動させることで、苗トレイTが載置板96上に垂直方向から載置可能とされる退避姿勢(図12に仮想線で示す)へと、規制手段116が姿勢変更自在とされている。
【0064】
前記苗載台90の載置板96には、右側(左側でもよい)の規制手段116の近傍に位置して苗トレイTの通過を検出する検出手段117が設けられている。この検出手段117は、苗トレイTの右端側のポット部Pの底部に接当する接当部材118と、この接当部材118をポット部P側へと付勢する付勢部材119と、マイクロスイッチ等の接触センサ120とから構成されている。
【0065】
接当部材118は、苗トレイ縦移動方向後方側が載置板96の下面側に固定された支持部材121に支軸122を介して左右軸廻りに回動自在に支持されていて、載置板96に形成した開口部123を介して載置板96の載置面96a側に出退自在に突出可能とされている。また、接当部材118には載置板96の下面に接当して、接当部材118の突出方向(開口部123から苗トレイT側に突出する方向)の回動を規制するストッパ124が固定されて設けられている。
【0066】
付勢部材119は、バネ板等から形成されており、苗トレイ縦移動方向後方側が支持部材121に固定され、苗トレイ縦移動方向前方側が接当部材118の下面に接当しており、その弾性力によって接当部材118を突出方向に付勢している。接触センサ120は支持部材121に取付固定されており、その接触子120aが付勢部材119の中途部に接触している。
【0067】
従って、接当部材118は、図9に仮想線で示すように苗トレイTが検出手段117上を通過している間は、ポット部Pによって押圧されて載置板96の下面側へと退避して、付勢手段119を介して接触センサ120の接触子120aを押圧し、苗トレイTの存在を検出する。そして、図9に実線で示すように、苗トレイTが検出手段117上を通過すると、最後部のポット部Pが接当部材118から離反し、付勢部材119によって接当部材118が載置面96a側に突出すると共に、接触センサ120の接触子120aの押圧が解除されて、苗トレイTが検出手段117から離反したこと、すなわち苗トレイTの通過を検出する。
【0068】
尚、検出手段117が苗トレイTの通過を検出すると、その検出信号によって、ブザー、ランプ等からなる報知手段が作動され、苗トレイTを補給しなければならないことを作業者に報せる。また、図9では、ポット部Pの縦配列方向の後から2つ目のポット部Pが、苗取出爪41による苗取出し位置にきたときに、検出手段117が苗トレイTの通過を検出し、苗トレイTを補給するようになっているが、これよりもポット部Pの縦配列方向後方側で苗トレイTの通過を検出するようにしてもよい。
【0069】
作業者は苗トレイTが検出手段117を通過したことが報知手段の作動にて分かると、左右の規制手段116を退避姿勢に姿勢変更させて、苗トレイTを載置板96上に載置補給した後、左右の規制手段116を規制姿勢にもどす。前記のように、検出手段117は規制手段116の近傍に設けられているので、苗トレイTの浮き上がりによる検出手段117の誤作動が防止できる。従って、検出手段117を設ける場所は、規制手段117によって苗トレイTの浮き上がりを規制できる範囲内であれば、どこでもよい。
【0070】
尚、規制手段116は、苗トレイTの上面左右側縁側を押圧しなくても、接当させるだけで苗トレイTの浮き上がりを規制するようにしてもよく、また、接当部材118を苗トレイTの上壁(ポット部Pの開口縁を連結する部分)下面に接当させるようにしてもよい。また、検出手段117としては、マイクロスイッチ又はリミットスイッチ等の接触センサの接触子を直接苗トレイT又は接当部材118に接当させるようにしてもよい。
【0071】
ここで、入力軸51からの動力伝達機構及び苗トレイTの横移動機構の横移動量の切換え機構について説明する。図13乃至図15に示すように、入力軸51には欠歯歯車125がスプライン嵌合され、また、伝動ケース50内には、入力軸51及び出力軸52と平行に配置されて軸心廻りに回転自在に支持された中間軸126が設けられ、この中間軸126には、前記欠歯歯車125に噛合する伝動歯車127がスプライン嵌合されていて、入力軸51から中間軸126に間欠的に動力が伝達され、該中間軸126が間欠回転する。
【0072】
また、中間軸126には、軸心方向に間隔をおいて配置された第1横移動駆動歯車128と第2横移動駆動歯車129とが中間軸の軸心廻りに相対回転自在に外嵌され、一方、出力軸52には、第1横移動駆動歯車128に噛合する第1横移動従動歯車130と、第2横移動駆動歯車129に噛合する第2横移動従動歯車131とが一体回転自在に外嵌されている。
【0073】
また、中間軸126には、これら第1横移動駆動歯車128と第2横移動駆動歯車129との間にスプライン嵌合されていて、中間軸126と一体回転自在で且つ軸心方向移動自在とされたシフタ132が設けられている。このシフタ132には、第1横移動駆動歯車128に形成された第1噛合歯133に噛合する第1係合歯134が設けられると共に、第2横移動駆動歯車129に形成された第2噛合歯135に噛合する第2係合歯136が設けられている。
【0074】
従って、シフタ132を軸心方向に移動させて第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させると、第1横移動駆動歯車128、シフタ132、第1横移動従動歯車130を介して動力が伝達され、また、第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させると、第2横移動駆動歯車129、シフタ132、第2横移動従動歯車131を介して動力が伝達されて、出力軸52が間欠回転され、前述したように、この出力軸52から横移動軸105に動力が伝達されて、該横移動軸105が間欠的に回転される。
【0075】
そして、第1横移動駆動歯車128と第1横移動従動歯車130との回転比は、第2横移動駆動歯車129と第2横移動従動歯車131との回転比よりも大きくて、ポット部Pのピッチの異なる2種類の苗トレイTに対応して、該苗トレイTの横移動量が2段階に切換えられるようになっている。前記伝動ケース50の上面には、横送切換レバー137が配置されると共に、伝動ケース50には、該ケース50の上壁に形成された挿通孔138に上下軸廻りに回動自在に挿通された回動軸139が設けられ、この回動軸139の下端部には、シフタ132の周溝132aに挿入されるシフトピン140が固着されており、回動軸139の軸心廻りの回動動作によってシフトピン140が回動軸139の軸心廻りに揺動してシフタ132を中間軸126の軸心方向に移動させことができるようになっている。
【0076】
回動軸139の上部は挿通孔138から突出され、その突出部分の下部側に連動プレート141の一端側が一体回動するように嵌合され、この連動プレート141の他端側には係合ピン142が固定されている。回動軸139の突出部分の中間部には、カラー143が相対回動自在に外嵌され、回動軸139の突出部分の上部はネジ軸部144とされ、そのネジ軸部144に当板145及びワッシャ146が外嵌されると共に、ナット147が螺合されている。
【0077】
カラー143には前記横移動切換えレバー137が相対回動自在に外嵌され、この横移動切換えレバー137には、バネ受け部148が一体形成されている。また、カラー143の、横移動切換えレバー137と、連動プレート141及び当板145との間には、それぞれ捩りコイルバネ149が外嵌されており、これら捩りコイルバネ149は互いに逆方向に捩じられていると共に該捩りコイルバネ149の一端部は係合ピン142に、他端部は横移動切換えレバー137のバネ受け部148に掛止されている。
【0078】
従って、横移動切換えレバー137を回動軸139の軸心廻りに回動操作すると捩りコイルバネ149を介して連動プレート141が同行回動し、回動軸139が回動され、シフタ132が中間軸126の軸心方向に移動されることとなり、横移動切換えレバー137を図15に実線で示す位置から仮想線で示す位置に、又は仮想線で示す位置から実線で示す位置に回動操作することで、苗トレイTの横移動量の切換えがなされるように構成されている。
【0079】
また、この苗トレイTの横移動量の切換え時において、第1係合歯134が第1噛合歯133に、又は第2係合歯136が第2噛合歯135に噛み合わないと、一方のバネ149がねじられて、回動軸139及び連動レバー125等が回動しなくても横移動切換えレバー137の回動操作が許容されるようになっており、この状態において、第1又は第2噛合歯133,135が第1又は第2係合歯134,136に噛み合う位置になると、前記ねじられた一方のバネ149の付勢力によって、回動軸139及び連動レバー125等が回動し、苗トレイTの横移動量の切換えが完了する。
【0080】
従って、苗トレイTの横移動量の切換え時にあっては、横移動切換えレバー137を操作するのに、第1又は第2係合歯134,136と第1又は第2噛合歯133,135とが噛み合うように各部のタイミングを合わせる必要がなく、横移動切換えレバー137を操作するだけで、バネチャージ機能により、切換えタイミングの合った位置で自動的に切換わるように構成され、苗トレイTの横移動量の切換えの容易化が図れている。
【0081】
伝動ケース50の上部には、ネジ孔150が形成されると共に、該ネジ孔150に螺合されるノブボルト151を備えており、横送切換レバー137には、第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させた状態と、第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させた状態とにおいて、前記ネジ孔150に一致する一対の挿通孔152が貫通形成されており、第1係合歯134を第1噛合歯133に噛合させた状態又は第2係合歯136を第2噛合歯135に噛合させた状態で、ネジ孔150にノブボルト151を螺合させることによって、横送切換レバー137を固定できるようになっている。
【0082】
前記載置板96に代えて、図21に示す如き、苗トレイTのポット部Pに底部から係合する搬送突起194a,194bを適宜間隔で設けた搬送ベルト193にすることも出来る。この搬送突起194a,194bの左右中間側搬送突起194aは平面視で十字型に、左右側部側搬送突起194bはT字型にし、側面視で上端を円弧上に丸めている。
【0083】
搬送突起194a,194bは、前記苗トレイTの縦横の寸法が同じで且つポット部Pの開口の大きさは異なるがポット部Pの開口間の間隔が略同じ2種類の苗トレイTを係合する位置に設ける。
【0084】
苗植付装置5は、図17と図18に示す如く、下端が尖ったカップ状の苗植付具42を備えている。この苗植付具42は、前側部材42aと後側部材42bとからなっており、苗植付具42の後方に位置する前側部材回動軸161Aに回動自在に支持された左右前側部材取付アーム162Aに前側部材42aが一体に取り付けられ、苗植付具42の前方に位置する後側部材回動軸161Bに回動自在に支持された左右後側部材取付アーム162Bに後側部材42bが一体に取り付けられている。よって、回動軸161A,161Bを支点にして両部材42a,42bが回動すると、苗植付具42の下部が開閉する。
【0085】
前側部材取付アーム162Aと後側部材取付アーム162Bに形成された長穴に遊嵌する連動ピン163によって、前側部材42aと後側部材42bは互いに連動して回動する。前側部材取付アーム162Aの脚部162aAと後側部材取付アーム162Bの脚部162aBとの間に、前側部材42a及び後側部材42bを閉じる側に付勢するスプリング164が張設されている。この苗植付具42は、下記の作動機構によって所定の動作を行う。
【0086】
第二植付伝動ケース32から上方に突出する支持部33aに後リンク支持アーム167Aが回動自在に取り付けられ、その支持アーム167Aに基部が枢着された後リンク168Aの後端に前側部材回動軸161Aが連結されている。後リンク168Aの中間部には、第二植付伝動ケース32の後端部に設けた後リンク駆動アーム169Aが連結されている。また、植付部ミッションケース30に前リンク支持アーム167Bが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された前リンク168Bの後端に後側部材回動軸161Bが連結されている。前リンク168Bの中間部には、第一植付伝動ケース31の後端部に設けた前リンク駆動アーム169Bが連結されている。両駆動アーム169A,169Bが駆動回転すると、後リンク168A及び前リンク168Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、苗植付具42が一定姿勢のまま上下動する。
【0087】
後リンク168Aの基部には開閉アーム171が回動自在に取り付けられ、その開閉アーム171の先端部と前側部材取付アーム162Aとが開閉ロッド172で連結されている。また、後リンク168Aの中間部には後リンク駆動アーム169Aと一体に回転する開閉カム173が取り付けられている。この開閉カムのカムフォロアとしてのローラ174が開閉アーム171に設けられている。
【0088】
苗植付具42が下死点付近にある位置から上昇する行程で、開閉カム173がローラ174に係合するようになっている。開閉カム173がローラ174に係合すると、開閉ロッド172が引かれ、前側部材42aと後側部材42bが互いに連動して回動し、苗植付具42が開く。開閉カム173がローラ174に係合しない時は、スプリング164の張力によって苗植付具42が閉じている。
【0089】
苗植付具42が上死点にある時に、苗供給装置4により苗が落下供給される。供給された苗は、前側部材回動軸161Aと後側部材回動軸161Bに取り付けられている筒状の苗案内176を通って苗植付具内に導かれる。苗を保持した苗植付具42が下降し、下死点では苗植付具42の下部が畝の表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具42が開き、保持していた苗を上記苗移植用穴の中に開放する。そのまま苗植付具42が上昇し、上死点付近まで上昇すると苗植付具42が閉じる。
【0090】
尚、苗植付具42の苗植付性能を維持する為に、苗植付具42が圃場に苗を植付けて上昇する過程で苗植付具42の外周面及び内周面にゴム材等よりなるスクレーパを摺接させて、苗植付具42に付着した泥土を落とす構成が知られている。この苗植付具42の内周面に摺接するスクレーパは、苗植付具42が開いて上昇している過程で苗植付具42内にスクレーパが入り苗植付具42の上昇により苗植付具42の内周面の泥土を落とす構成であるが、苗植付具42内にスクレーパが入った直後に苗植付具42を少し閉じる構成にするとスクレーパの苗植付具42内周面に摺接する抵抗が大きくなって良く泥土を落とすことができる。
【0091】
前記実施例は、苗取出爪41を一個設けているが左右一対設ける構成にしても良い。この構成では苗植付具42の上に設ける苗案内176の内部を左右に仕切り板で仕切り、それぞれの底部にタイミングをずらして開閉する落下蓋を設け、左右の苗取出爪41で掻き取った苗を苗植付具42で交互に植え付けるのである。この構成で植付速度を高速化出来る。
【0092】
苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪180が配置されている。この左右鎮圧輪180は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0093】
メインフレーム14の前端に枢支した鎮圧アーム153の後端に鎮圧輪180を枢支し、該鎮圧アーム153の先端に前鎮圧輪182を枢支している。鎮圧輪180の枢支部に立設する第一ウエイトアーム181に第一ウエイト160を取り付け、前鎮圧輪182の枢支部から前方へ突設する第二ウエイトアーム154に第二ウエイト155を取り付け位置調整可能に設ける。第一ウエイト160は取り換えることで鎮圧輪180の鎮圧荷重を変更し、第二ウエイト155の取付位置を変更することで前鎮圧輪182の鎮圧荷重を変更出来るのである。
【0094】
鎮圧アーム153の前後中間位置にセンサアーム156を枢支し、その後端に植付深さ調節レバー197に連結する昇降アーム157と油圧バルブユニット20の上下制御バルブ20aに連結するセンサロッド159を連結し、植付深さ調節レバー197で鎮圧輪180と前鎮圧輪182の上下位置を調整する。
【0095】
植付深さ調節レバー197を係合案内183の調節係合部に対して位置調節して係合係止して固定状態にすることにより、昇降アーム157の上下高さ位置を調節できるので、畝に対する機体高さを制御する基準位置を自由に設定できるので、苗の植付深さが調節できる。
【0096】
鎮圧輪180が上下回動すると、その回動をセンサアーム156とセンサロッド159で上下制御バルブ20aに伝え、センサ192の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さの変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗の成育が良い。
【0097】
前鎮圧輪182は、苗植付具42による苗植付前の畝面を整地し、鎮圧輪180は、植え付けた苗の側面土を鎮圧して苗を安定させ、植付深さの検出センサとしても機能する。
尚、油圧バルブユニット20内の左右傾斜制御バルブ20bは左右傾斜検出用の振り子(図示省略)の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ27が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。
【0098】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部に左右グリップ6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者が左右グリップ6aを握って操縦する。
【0099】
左右グリップ6aの下側には各々左右サイドクラッチレバー201が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル202が設けられ、該操作パネル202に、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー203、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー204等が設けられている。
【0100】
図20に、乗用ステップ189を設けた実施例を示している。走行部ミッションケース7の左右側部にステップアーム184を軸185で枢支し、その先端にステップブラケット187とステップ輪186を枢支し、ステップブラケット187の円弧孔とステップアーム184をチョウボルト191で取り付け角度を変更可能に取り付けている。なお、ステップアーム184を二本の平行リンクで構成して乗用ステップ189の上面が水平を保って上下するようにしても良い。乗用ステップ189の支持脚192は乗用ステップ189の上下方向の長穴に二本のボルト190で固定して高さ調整可能にしている。
【0101】
作業者が乗用ステップ189に立ち乗りして操縦ハンドル6のグリップ6aを持って操縦操作をするのであるが、乗用ステップ189は機体と別に上下するために機体の走行バランスを悪くすることが無い。
【0102】
なお、ステップブラケット187とスイングアーム25を長穴で遊びを持たせロッドで連結し、機体が最大に上昇すると乗用ステップ189も上昇するようにすれば、旋回が容易になる。
【0103】
また、乗用ステップ189とステップ輪186を重いものにすることで、旋回時のバランスウエイトとして作用するようにしても良い。
上記の野菜移植機1にて野菜の苗を圃場に移植する作業について、説明する。先ず、苗載台90に野菜苗が育苗された苗トレイTを装填し、予備苗載台36に予備の苗トレイTを載せる。そして、作業者は機体の後部で操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って右後輪2の後方の畝溝を歩きながら、メインクラッチレバー204を入操作して左右前輪3と左右後輪2を畝溝に沿わせて機体を進行させ、植付昇降レバー203を操作して植付クラッチを入操作し且つ機体制御機構を制御状態にして、移植作業を行なう。この時、左右往復移動する苗載台90の苗トレイTから苗取出爪41が苗を一つずつ取出して苗植付具42へ落下投入する。そして、苗植付具42が畝に苗を植付けた後に、左右一対の鎮圧輪180がその苗の左右側部を軽く鎮圧する。
【0104】
特に、本発明の構成では、機体の後部にエンジン9を搭載しそのエンジン9の左右側部から操縦ハンドル6を立設しているので、機体の前後長さが従来よりも短くなって小回りが良く、小型の機体構成であるから、その収納保管場所も狭くて良く優れている。
【0105】
また、植付作業の進行に伴って重量が変化する苗供給装置4が前輪3と後輪2からなる走行部1aの前後中間に位置しているために走行安定性が良い。
尚、上記実施例においては、畝に移植する作業例を示したが、平らな圃場に苗を移植する場合も同様である。また、野菜苗としては、キャベツや白菜等の葉菜類の苗・大根やさつま芋等の根菜類の苗・南瓜や西瓜等の果菜類の苗が挙げられるが、他に、い草や花等の如何なる苗でも良い。
【符号の説明】
【0106】
1a 走行部
4 苗供給装置
6 操縦ハンドル
7 走行部ミッションケース
9 エンジン
30 植付部ミッションケース
43 苗取装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部(1a)の後部に配置する走行部ミッションケース(7)上にエンジン(9)を搭載し、前記走行部ミッションケース(7)から前方へ苗植付装置(5)を駆動する植付部ミッションケース(30)を張り出し、該植付部ミッションケース(30)上で走行部(1a)上の前後略中央に位置して苗供給装置(4)を設け、該苗供給装置(4)の前側に苗を取出して苗植付装置(5)に供給する苗取装置(43)を設け、前記走行部ミッションケース(7)からエンジン(9)の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル(6)を設けてなる苗移植機。
【請求項1】
走行部(1a)の後部に配置する走行部ミッションケース(7)上にエンジン(9)を搭載し、前記走行部ミッションケース(7)から前方へ苗植付装置(5)を駆動する植付部ミッションケース(30)を張り出し、該植付部ミッションケース(30)上で走行部(1a)上の前後略中央に位置して苗供給装置(4)を設け、該苗供給装置(4)の前側に苗を取出して苗植付装置(5)に供給する苗取装置(43)を設け、前記走行部ミッションケース(7)からエンジン(9)の側部を後上方に向けて立ち上げて操縦ハンドル(6)を設けてなる苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−7(P2011−7A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143434(P2009−143434)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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