説明

苗移植機

【課題】ロータリー式の植付装置を有する田植機において、不等速変換手段を機能させることに起因した軸のねじれ等の不具合を是正する。
【手段】植付装置8はロータリーケース36とこれに取り付けた一対の掻き取りユニット37を有する。ロータリーケース36には太陽ギア92、中間ギア93、遊星ギア94が内蔵されており、太陽ギア94は植付け中心軸91に固定されている。植付け中心軸91に植付け伝動軸87から第3ベベルギア98,99で動力伝達される。第3ベベルギア98,99を不等速ギアとなすことにより、植付け中心軸91に加減速が付与される。不等速変換手段を動力伝達経路の末端部に設けているため、ねじれ・撓みが動力伝達経路に蓄積することが抑制され、振動・ガタ・位相のずれ等の不具合を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、乗用型田植機のような苗移植機に関し、特に、植付装置に対する動力伝達手段に特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
乗用型苗移植機の代表として乗用型田植機(以下、単に「田植機」という)がある。この田植機は、一般に、エンジンが搭載された走行機体とその後ろに配置した植付け部とを有しており、植付け部は走行機体に昇降可能に連結されている。植付け部は、苗マットを載せる苗載せ台やその後ろに配置した植付装置を有している。植付装置は、1つのロータリーケースに2つの掻き取りユニットを設けたタイプが一般的であり、ロータリーケースが1回転すると2つの掻き取りユニットはそれぞれロータリーケースに対して1回転する。すなわち、掻き取りユニットはロータリーケースの軸心回りに公転しながら自転するのであり、掻き取りユニットが姿勢を変えながら上下動することにより、苗マットからの苗の掻き取りと圃場への植付けが行われる。
【0003】
そして、単位面積(一般に3.3m2 )当たりに苗を何株植えるかは必ずしも一定ではなく、地域やユーザーによって希望する株数が相違している。そこで、走行速度に対する植付装置の動作速度を異ならせて、苗の株と株との間隔(株間)を変えることで、単位面積当たりの植付け株数を変更可能と成している。従前は3.3m2 当たり60〜90株といった密植が多かったが、苗の植付け密度と収量とは必ずしも比例せず、植付け密度が低くても収量に違いはなかったり却って増収する事実が見られることから、近年は、例えば3.3m2 当たり37〜50株といった疎植が増加傾向にあると言える。
【0004】
さて、ロータリー式の植付装置は植付爪を有しており、植付爪は側面視で斜めにした姿勢で苗マットから苗を掻き取り、次いで、植付爪は鉛直に近い姿勢になって圃場に向かい、下降し切ってから上昇に転じる。すなわち、植付爪は上下に長い閉ループ軌跡を描きながら、苗の掻き取り、圃場(泥土)への苗の差し込み、圃場からの離脱、といった動きを行うのであり、植付爪は圃場から素早く逃げるように設計されてはいる。
【0005】
しかし、株間が変わると必然的に単位走行距離当たりの植付装置の動作サイクルが変化するため、例えば密植状態のときに下死点付近で植付爪先端の軌跡がほぼ鉛直方向になるように設定していると、疎植状態では植付爪が圃場から逃げる速度が遅くなるため、疎植状態では植付けられた苗を植付爪が前に押し倒す現象が生じやすい。逆に、疎植状態のときに下死点付近で鉛直姿勢になるように設定しておくと、密植状態では植付爪が圃場に入り込んだまま後ずさりするような現象が生じ、泥土がえぐられることで浮き苗が発生し易くなる問題がある。
【0006】
そこで、密植状態を基準にしつつ疎植状態において植付爪を圃場からより迅速に逃げ移動させるべく、疎植状態で、動力伝達経路に不等速ギアを配置することが行われている(例えば特許文献1,2。)。特許文献1では、走行機体に設けた走行ミッションケースの内部に株間変更装置を配置し、この株間変更装置に不等速ギアを組み込んでいる。他方、特許文献2では、不等速ギアは、植付け部のうち苗載せ台の横送り機構よりも下流側の部位に配置している。
【0007】
さて、ロータリー式の植付装置では、ロータリーケースに2つの植付爪が設けられており、ロータリーケースの1回転で2回の植付けが行われる。そこで、ロータリーケースが半回転するごとに苗載せ台を1ピッチ横送りすることで、苗が1株ずつ掻き取られる。また、植付け部には走行機体からPTO軸で動力が伝達されるが、特許文献1では不等速ギアを走行機体のミッションケースに内蔵しているためPTO軸が不等速回転することになり、従って、横送り軸も不等速回転する。他方、特許文献2は、横送り軸が不等速回転することの弊害を懸念して、横送り機構部より下流側に不等速ギアを配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4376154号公報
【特許文献2】特開2003−189712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さて、株間変更装置から植付爪に至る動力伝達経路はギアや回転軸等の伝達要素で構成されているが、回転軸等の伝達要素は完全な剛体ではなく、負荷(回転トルク)が掛かると僅かながら弾性変形し、負荷が解除されると弾性復元力で戻り変形する。つまり、動力伝達系にその回転によってねじれとねじれ解除とが交互に発生するのであり、これが振動として表れるのである。そして、回転軸等にねじれが生じると、植付爪の動作タイミングがずれてしまって、植付け不良が発生するおそれがある。
【0010】
不等速ギアは回転軸の1回転中で角速度を加減速するものであり、回転を加減速することで回転軸に作用する負荷変動は大きくなるため、疎植状態で不等速ギアを機能させると動力伝達系のねじれは顕著に表れる。そして、例えば、負荷変動に起因した振動が動力伝達経路を構成する伝達要素の固有振動数と一致すると共振現象が発生し、植付爪のタイミングのずれが一層顕著に表れると共に、植付装置の耐久性も低下する。また、植付け速度が速くなるとトルク変動が大きくなり、軸のねじれや位相のずれも大きくなり、植付け不良が発生しやすくなる。更に、動力伝達経路が全体として大きく不等速回転すると部材同士の連結箇所にガタが発生しやすくなり、このガタが蓄積して植付けの位相のずれが生じることもあった。
【0011】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、不等速ギア等の不等速変換手段を設けるにおいて、動力伝達系のねじれや位相ずれ等の不具合を防止又は極力抑制することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決すべく、本願発明者たちは各請求項の構成を発明した。このうち請求項1の発明は、圃場を走行しつつ苗の掻取り及び植付け移植動作を繰り返す植付装置と、前記植付装置を駆動する動力源とを有しており、前記動力源から前記植付装置への動力伝達経路中に、前記植付装置の走行速度と移植動作速度との関係を変える株間変更装置と、前記動力伝達経路を構成する回転軸に不等速回転を付与する不等速変換手段とが設けられている構成であって、少なくとも前記動力伝達経路中の末端部に前記不等速変換手段を設けている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記動力源としてのエンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の後ろ又は前に配置した植付け部とを有しており、前記植付け部に前記植付装置が取り付けられている構成に請求項1を適用して具体化したもので、この発明では、前記株間変更装置を走行機体に配置している一方、前記不等速変換手段は前記走行機体と植付け部とに分けて設けており、前記植付け部の不等速変換手段を前記動力伝達経路の末端部に設けている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2を具体化したもので、前記植付け部には前後長手で中空の支持アームが配置されており、この支持アームの末端部に左右横長の植付け中心軸が配置され、前記植付け中心軸にロータリー式の前記植付装置が取付けられており、かつ、前記植付け中心軸には前後長手の植付け伝動軸からベベルギアの対によって動力伝達される構成において、前記ベベルギアの対を不等速ギアと成している。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれかにおいて、前記走行機体における不等速変換手段の不等速比率よりも動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段の不等速比率を小さく設定しており、かつ、走行機体における不等速変換手段は不等速回転状態と等速回転状態との切り替え手段を有する一方、動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段は常に不等速回転状態になっている。
【0016】
請求項5の発明は、請求項2〜4のうちのいずれかにおいて、前記走行機体における不等速変換手段は不等速回転と等速回転との切り替え手段を備えており、疎植状態で不等速回転するように切り替えられる一方、前記動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段は常に不等速回転するように設定されている。
【発明の効果】
【0017】
軸が負荷を掛けられた状態で不等速回転すると、等速回転に比べて軸には大きなトルク変動が生じ、このため捩れやすくなる。従って、不等速変換手段よりも下流側の軸類に捩れが発生しやすく、ねじれの程度は不等速の大きさに応じて大きくなると推測される。
【0018】
しかるに、本願発明では動力伝達経路の末端部に不等速変換手段を設けているため、不等速変換手段に起因してねじれが動力伝達経路に蓄積されることを防止又は著しく抑制できる。また、不等速変換手段が動力伝達経路の末端部に設けられていることにより、植付装置にタイミング良く加減速を付与できるため、植付装置の動作の位相がずれるといったことも防止できる。このような軸等のねじれ防止機能と植付装置のタイミング良い動作とにより、適切な植付けを実現できる。
【0019】
不等速変換手段は動力伝達経路の末端部のみに設けることも可能であるが、請求項2のように走行機体と植付け部とに分離して設けると、特定の部位に負荷が集中することを防止して耐久性をアップできる。この場合、走行機体に設けた不等速変換手段は、不等速変換手段を1つだけ設ける場合に比べて加減速の程度は小さいため、動力伝達経路に対する負担は小さくなっており、このため、走行機体に不等速変換手段を設けた場合であっても、動力伝達経路にねじりやガタが発生することを防止又は従来よりも抑制できる。
【0020】
不等速変換手段は平ギア方式やスプロケット方式など様々の構成を採用できるが、請求項3のようにベベルギアの対を不等速変換手段に構成すると、コンパクト化できるのみならず、従来から使用されているベベルギアの対をそのまま不等速変換手段に使用できて新たに部材を追加する必要がないためコスト面でも有利であり、実機への適応性が高い。
【0021】
請求項2のように不等速変換手段を複数に分割して走行機体と植付け部とに配置する場合(換言すると、動力伝達経路の途中と末端部とに不等速変換手段を設けた場合)、全ての不等速変換手段に不等速回転と等速回転との切り替え手段を設けることも可能であるが、ある程度の不等速回転(加減速)は常に機能していても特段の問題はない(或いは好ましい)場合があり、また、動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段については、切り替え手段を設けるスペースがとりにくい場合がある。
【0022】
この点、請求項4の構成を採用すると、走行機体の不等速変換手段に切り替え手段を設けているため、密植状態と疎植状態とで的確に切り替えできるものでありながら、末端部の不等速変換手段が過度に複雑化して大型化したりコストが過度にアップしたりすることを防止できる。従って、現実適応性が高い。
【0023】
請求項2のように不等速変換手段を走行機体と末端部とに分離して配置した場合、走行機体での加減速割合と末端部での加減速割合とは任意に設定できるが、末端部の加減速割合が走行機体での加減速割合より大きいと、末端部の不等速変換手段に過大な負荷が掛かるおそれがある。この点、請求項5のように末端部での加減速の割合を小さくすると、末端部の不等速変換手段に過大な負荷が掛かることを防止できる。また、請求項4のように末端部の不等速変換手段が常に作動している場合は、密植時に加減速(不等速回転)の悪影響が生じることを防止できるため、請求項5の発明は特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る田植機の平面図である。
【図2】田植機の側面図である。
【図3】田植機の骨組みを示す斜視図である。
【図4】(A)は動力伝達経路の全体を示す斜視図、(B)は植付装置の斜視図である。
【図5】(A)は動力伝達経路の側面図、(B)は植付装置の箇所の側面図、(C)は植付爪の軌跡を示す図である。
【図6】(A)は動力伝達経路を示す平面図、(B)は株間変更装置の外観斜視図、(C)及び(D)は植付け部に設けたセンターケースの外観斜視図である。
【図7】(A)は株間変更装置及びセンターケースにおけるギア群の外観斜視図、(B)はセンターケースにおけるギア群の斜視図、(C)はセンターケースにおけるギア群の背面図である。
【図8】伝動系統図である。
【図9】(A)は植付装置への動力伝達経路を示す平面図、(B)は動力伝達経路の末端植付け部の分離平面図、(C)はベベルギアの概略図である。
【図10】(A)及び(B)はベベルギアの噛み合い状態を示す平面図、(C)(D)はベベルギアの斜視図、(E)はベベルギアの対を並べた対比図である。
【図11】第2実施形態を示す図で、(A)は側断面図、(B)は模式図である。
【図12】第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本願発明を実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は乗用型田植機(以下、単に「田植機」という)に適用している。以下の説明では方向を特定するため前後・左右の文言を使用しているが、この前後・左右の文言は、田植機の前進方向を前として定義している。正面視方向は前進方向と対向した方向になる。
【0026】
(1).田植機の概要
まず、図1〜図5に基づいて田植機の概要を説明する。図1〜図3に示すように、田植機は走行機体1とその後ろに配置された植付け部2とを有している。走行機体1は前後の車輪3,4や操縦座席5、操縦ハンドル6を有しており、一方、植付け部2は苗マットが載る苗載せ台7や植付装置8を有している。本実施形態の田植機は8条植えタイプであり、このため、苗載せ台7には8つの苗マット載置エリアが形成されていると共に、植付け部2の後部には8個の植付装置8が横一列に配置されている。
【0027】
図3に示すように、走行機体1は多数のフレーム材から成る骨組み9を有しており、骨組み9の前部でエンジン10が支持されている。エンジン10の後ろには走行ミッションケース11が配置されている。図4(A)に明示するように、ミッションケース11の左側面には静油圧式無段変速機(HST)12が装着されており、エンジン10の動力はベルト13によって静油圧式無段変速機(HST)12に伝達される。エンジン10はボンネット14で覆われている。また、走行機体1のうちボンネット14を除いた部分は車体カバー15で覆われている。
【0028】
ミッションケース11の左右側面にはフロントアクスル装置17(図3参照)が取付けられており、フロントアクスル装置17に前輪3が取り付けられている。ミッションケース11の後ろにはリアアクスルケース18が配置されており、リアアクスルケース18から横向きに突出させた後ろ車軸に後輪4が取付けられている。ミッションケース11とリアアクスルケース18とは前後長手のジョイント材19で連結されている。リアアクスルケース18には左右2本のリア支柱20が取付けられており、リア支柱20の上端は、骨組み9の後端部を構成する左右横長のリアフレーム9a(図3参照)に固定されている。
【0029】
左右のリア支柱20には上下のリンク体(トップリンク及びロアリンク)から成るリンク装置21が回動自在に連結されており、リンク装置21の後端に植付け部2が取付けられている。リンク装置21は、ジョイント材19に連結された油圧シリンダ(昇降シリンダ)22(図3参照)によって回動させることができる。従って、油圧シリンダ22を伸縮させることにより、植付け部2が昇降する。
【0030】
図4から容易に理解できるように、ミッションケース11で変速された走行動力は後輪ドライブ軸23でリアアクスルケース18の内部に伝達される。後輪ドライブ軸23の回転はリアアクスルケース18に設けたギア群を介して後輪4に伝達される。本実施形態の田植機は植付け部2に整地ロータ24を設けており、整地ロータ24にはリアアクスルケース18から後ろ向き突出したロータ駆動軸で25から動力伝達される。なお、図では整地ロータ24は一部しか表示していない。
【0031】
本実施形態ではリアアクスルケース18の右側部に株間変更装置26を取付けており、ミッションケース11から株間変更装置26に植付け用動力伝達軸27で動力伝達される。植付け用動力伝達軸27の回転は株間変更装置26に内蔵したギア群によって変速され、PTO軸29によって植付け部2に伝達される。
【0032】
植付け部2は左右横長のメインフレーム28を有しており、メインフレーム28の略左右中間部にセンターケース30が固定されており、PTO軸29の動力はセンターケース30に内蔵されたギア群に伝達される。メインフレーム28の後面には後ろ向きに延びる4本の支持アーム31が固定されており、支持アーム31の後端部に左右一対ずつの植付装置8が回転自在に取付けられている。
【0033】
支持アーム31の基端部(前端寄り部位)には左右横長の植付け駆動軸32が貫通しており、この植付け駆動軸32の回転によって植付装置8が駆動される(詳細は後述する。)。また、植付け駆動軸32には、センターケース30に内蔵したギア群を介してPTO軸29から動力が伝達される。センターケース30には左右横長の横送り軸33も取付けられており、横送り軸33の回転によって苗載せ台7が1ピッチずつ横移動する。
【0034】
植付け部2は苗マットが載るベルト34の群を有しており、ベルト34は上下一対の縦送り支軸35に巻き掛けられている。苗載せ台7が左右のいずれか一方に移動し切ると縦送り支軸35は回転し、苗マットが1ピッチだけ下降動する。
【0035】
図4(B)に示すように、各植付装置8は1つのロータリーケース36とその両端部に回転自在に設けた掻き取りユニット37とを有しており、ロータリーケース36が1/2回転するごとに掻き取りユニット37による苗の掻き取りと植付けが行われる。また、PTO軸29が1回転するとロータリーケース36は1/2回転するように設定されている。そして、PTO軸29の回転数は田植機の走行速度に比例しているが、株間変更装置26によって走行速度とPTO軸29の回転数との関係を変えることにより、苗の植付け間隔(株間)を変更することができる。
【0036】
(2).株間変更装置の構造
以下、株間変更装置26から植付装置8に至る動力伝達経路の詳細を説明する。まず、株防変更装置26の詳細を、主として図6〜8に基づいて説明する。株間変更装置26は図4(A)に示す前後2つ割り方式の株間ケース40を有しており、その内部に、図7(A)(C)に示すようなギア群が配置されている。
【0037】
株間ケース40の内部には、入力軸41と出力軸42とが配置されており、入力軸41に自在継手を介して植付け用動力伝達軸27の後端が接続されている。入力軸41には同径の第1ギア43と第2ギア44とが固定されている。両ギア43,44は同径ではあるが、歯数は第1ギア43よりも第2ギア44が僅かに少なくなっている。
【0038】
入力軸41と出力軸42とは同心に配置されている。入力軸41には筒型の中間軸45が相対回転可能に嵌まっており、中間軸45は出力軸42と一緒に回転する。中間軸45には第3ギア46と第4ギア47とがスプライン嵌合等によってスライド可能で相対回転不能に嵌まっている。更に、中間軸45には第1不等速ギア48が相対回転自在でスライド可能に嵌まっている。
【0039】
出力軸42にはカム式のメインクラッチ(植付けクラッチ)49を設けている。メインクラッチ49は固定パーツ49aとスライドパーツ49bとから成っており、スライドパーツ49bはクラッチばね49c(図7(C)参照)で固定パーツ49aに向けて付勢されている。スライドパーツ49bがクラッチばね49cに抗して固定パーツ49aから離反すると入力軸41から出力軸42への動力伝達は遮断される。路上走行時や旋回時のように植付け部2を上昇させている状態ではメインクラッチ49が切れる。メインクラッチ49の切り操作はメインクラッチ操作軸50(図7(A)(C)参照)を下降させることで行われる。
【0040】
株間ケース40の内部には、側面視で入力軸41及び出力軸42と平行に延びるアイドル軸51が回転自在に軸支されており、このアイドル軸51に、第1ギア43又は第2ギア44に噛み合い得る第5ギア52がスプライン嵌合等によってスライド可能・相対回転不能に嵌まっている。第5ギア52は第1ギア43又は第2ギア44の2倍程度の歯数であり、第1ギア43に噛合した第1ポジションと、第2ギア43に噛合した第2ポジションとを選択できる。
【0041】
なお、第5ギア52を第1ギア43又は第2ギア44に選択的に噛み合わせることに代えて、第1ギア43に噛合する減速用の第5ギア52の他に、図8に一点鎖線で示すように、第2ギア44に噛合する減速用ギア53を設けて、両減速用ギア52,53のいずれかに動力を伝達する構成を採用することも可能である。
【0042】
第1ギア43と第2ギア44と第5ギア52の歯数の関係は、例えば、第1ギア43に対する第5ギア52の歯数を比率の2.0倍に設定し、第2ギア44に対する第5ギア52の歯数の比率を約2.3倍に設定することができる。
【0043】
アイドル軸51には、第3ギア46に対して噛み合い・離反する第ギア54と、第4ギア47に噛み合い・離反する第7ギア55、及び、第1不等速ギア48と常に噛み合っている第2不等速ギア56が固定されている。第3ギア46に対する第6ギア54の比率よりも、第4ギア47に対する第7ギア55の歯数の比率が小さくなるように設定している。従って、中間軸45(及び出力軸42)の回転数は、第3ギア46と第6ギア54とが噛み合っている状態よりも、第4ギア47と第7ギア55とが噛み合っている状態の方が低くなっている。具体的な歯数の比率としては、例えば、第3ギア46に対する第6ギア54の歯数の比率を約1:1.94、第4ギア46に対する第7ギア55の歯数の比率を約1:1.41と成すことができる。
【0044】
第1不等速ギア48と第2不等速ギア56とは略楕円のような非円形のプロフィールであり、歯数は同じに設定されている。従って、両不等速ギア48,56を介してアイドル軸51の回転が中間軸45及び出力軸42が伝えられている状態では、アイドル軸51と出力軸42との回転数は同じで、かつ、出力軸42はその1回転中で角速度を周期的に変化させた状態で回転する。両不等速ギア48,56は非円形であって噛み合い姿勢が一定に決まっているという特殊性から、常に噛み合い状態に保持されている。
【0045】
ロータリーケース36に、例えば37株/m2 の疎植時に植付け爪96が下死点付近のとき動きが高速化するようような加減速を付与しているが、本実施形態では、株間変更装置26に設けた不等速ギア48,56により、株間ケース40にやや大きめの加減速が付与されている。
【0046】
第4ギア47と第1不等速ギア48とには、噛み合い・離間自在な中間クラッチ57を設けている。第4ギア47は、図8の状態からいったん第7ギア55と噛合した状態を経て更に右向きにスライドすると、中間クラッチ57が噛み合う。中間クラッチ57が噛み合った状態では、アイドル軸51の動力は不等速ギア56,48を介して出力軸42に伝えられる。中間クラッチ57が噛み合っている状態では第3ギア46と第4ギア47は空転している。従って、中間クラッチ57は中間軸45と第1不等速ギア48との連結を継断する働きをしている。
【0047】
第5ギア52がスライドすることで2段階の切り換えが行われ、中間軸45がスライドすることで3段階の切り換えが行われる。従って、全体として6段階の組み合わせが存在する。例えば、3.3m2当たりの株数として、37株、43株、50株、60株、70株、85株といった株数に変更できるのであり、疎植・密植の全エリアを殆ど網羅している。
【0048】
株間ケース40の上部には、入力軸41及び出力軸42と平行に延びる施肥用回転軸58が回転自在に配置されており、この施肥用回転軸58に、第1ギア43と噛合する第8ギア59が相対回転自在に嵌まっている。施肥用回転軸58からはベベルギア61の対を介して施肥駆動軸62に動力伝達される。
【0049】
図7(A)に示すように、株間変更装置26は第1操作軸63と第2操作軸64との2本の操作軸を有する。これら操作軸63,64は前後長手の姿勢になっており、株間ケース40の手前に露出している。図6(A)から理解できるように、第1操作軸63は第1レバー65で前後スライド操作することができ、第2操作軸64は第1レバー66で前後スライド操作することができる。第1操作軸63は第5ギア52をスライド操作するためのものであり、第5ギア52をスライドさせるシフターを有している。第2操作軸64は中間軸45をスライド操作するためのものであり、中間軸45に係合するシフターを備えている。
【0050】
(3).センターケースの内部構造
次に、図6〜図8に基づいてセンターケース30の内部構造(すなわち植付け部変速装置)を説明する。センターケース30は左右2つ割り方式のシェル体から成っており、前後長手の入力軸69が回転自在に保持されている。入力軸69の前端とPTO軸29の後端とは自在継手を介して接続されている。
【0051】
センターケース30の内部には左右長手の中間軸70が配置されており、入力軸69の回転は第1ベベルギア71の対によって中間軸70に伝達される。センターケース30の内部には横送り駆動軸72が左右横長の姿勢で配置されており、横送り駆動軸72に横送り軸33が連結されている。
【0052】
横送り駆動軸72には3枚の掻き取り量調節従動ギア73が固定されている一方、中間軸70には、掻き取り量調節従動ギア73に対応して3枚の掻き取り量調節主動ギア74が遊嵌している。3枚の掻き取り量調節主動ギア73のうちいずれか1つのみに、スライドキー76(図8参照)によって中間軸70から選択的に動力伝達される。スライドキー76は、図6(A)(B)に示すスライドレバー77によってスライド操作される。
【0053】
掻き取り量調節ギア73,74の対はそれぞれ歯数の比率が相違しており、掻き取り量調節ギア73,74の組み合わせを変えると、PTO軸29に対する横送り駆動軸72の回転比率が変わる。その結果、苗載せ台7の横送りピッチが変化して苗の掻き取り量が変化する。
【0054】
センターケース30は後ろ下向きに延びる張り出し30aを有しており、この張り出し30aに左右横長の植付け出力軸78が回転自在に保持されており、植付け出力軸78には、中間軸70に固定した第1中継ギア79、横送り駆動軸72に相対回転自在に嵌まった第2中継ギア80、センターケース30にアイドル軸81を介して回転自在に保持された第3中継ギア82、第4中継ギア84を介して動力伝達される。第4中継ギア84は、植付け出力軸78にスリーブ83を介して取付けられている。
【0055】
第1ベベルギア71の対を構成する2つのギアの歯数の比率は1:1の関係にあり、また、第1中継ギア79,第2中継ギア80,第4中継ギア84の歯数は1:1:1の関係にある。従って、PTO軸29と植付け出力軸78との回転数は1:1の関係になっている。なお、第3中継ギア82は単なるアイドルギアなので、その歯数は第4中継ギア84の回転数に影響しない。
【0056】
植付け出力軸78とその隣りに位置した植付け駆動軸32とは、カップリング(スリーブ)86で接続されている。また、左右に隣り合った植付け駆動軸32の間には中継軸78′が配置されており、駆動軸32と中継軸78′もカップリング86で接続されている。従って、各植付け駆動軸32は一体に回転する。植付け駆動軸32は各植付装置8の箇所ごとに分断されており、隣り合った植付け駆動軸32はカップリング86で接続されている。なお、植付け出力軸78と各植付け駆動軸32と中継軸78′とを1本の棒材から成る単一構造体とすることも可能である。
【0057】
なお、図6(A)の下端部に符号86′で示すように、カップリング86をある程度の質量がある構成として、カップリング86にダンパー機能(フライホイール機能)を保持せしめることとも可能である。
【0058】
(4).第1実施形態に係る植付装置の構造・動力伝達構造
次に、植付装置8の構造やこれに対する動力伝達構造を、主として図8〜図10に基づいて説明する(図6(A)も参照))。支持アーム31は中空構造になっており、図8に示すように、その内部に前後長手の植付け伝動軸87が回転自在に保持されている。
【0059】
植付け伝動軸87には、植付け駆動軸32から第2ベベルギア88a,88bの対で動力伝達されている。第2ベベルギア88a,88bのうち植付け伝動軸87と同心に回転するベベルギア88bは、植付け伝動軸87に嵌まったトルクリミッタ89に取付けられている。トルクリミッタ89はばね90を有しており、植付け伝動軸87に所定以上の負荷がかかると噛み合いが外れて、動力伝達が遮断される。
【0060】
支持アーム31の後端部(先端部)には、左右一対の軸受け104を介して左右横長の植付け中心軸91が回転自在に保持されている。植付け中心軸91は支持アーム31の左右外側に突出しており、その突出端部にロータリーケース36に内蔵された太陽ギア92が固定されている。詳細は省略するが、ロータリーケース36は支持アーム31の後端部に回転自在に保持されている。
【0061】
ロータリーケース36は細長い形状で左右2つのシェル体を重ね合わせた中空構造になっており、その長手中間部には既述の太陽ギア92が配置され、太陽ギア92のの外側に中間ギア93が配置され、その外側に遊星ギア94が配置されている。各ギア92,93,94は非円形で偏心している。そして、遊星ギア94に固定されたユニット軸95に掻き取りユニット37が固定されている。
【0062】
図5に明示するように、掻き取りユニット37は植付爪96と突き出しロッド97とを備えており、図5(C)に示すように、植付爪96で苗マットから苗を1株だけ切り取って圃場に移行させ、下死点近傍で突き出しロッド97が植付爪96に対して相対的に前進することで苗は圃場に植付けられる。
【0063】
図9に示すように、植付け中心軸91には、第3不等速ベベルギア98,99の対により、植付け伝動軸87から動力が伝達される。すなわち、植付け伝動軸87にはカップリング100を介して第3主動不等速ベベルギア98が固定されている一方、植付け中心軸91には第3従動不等速ベベルギア99が嵌まっており、これら不等速ベベルギア98,99の対により、植付け伝動軸87から植付け中心軸91に常に不等速回転が伝達される。
【0064】
第3不等速主動ベベルギア98は段違い状のボス体を98aを有しており、カップリング100はボス体98aの小径部に嵌まっている。ボス体を98aにはベアリング101が嵌まっている。なお、カップリング100は植付け伝動軸87及びボス体98aにキー係合又はピン止めで相対回転不能に保持されている。第3不等速従動ベベルギア99は植付け中心軸91に相対回転可能に嵌まっており、かつ、第3不等速従動ベベルギア99は可動クラッチ102と噛み合うカム部103を有している。可動クラッチ102には操作リング105が一体に溶接されている。
【0065】
可動クラッチ102は植付け中心軸91にスライド可能で相対回転不能に保持されている。そして、可動クラッチ102は通常はばね106で第3不等速従動ベベルギア99に噛み合う状態に押されており、図示しない回転式の操作ロッドを操作すると、可動クラッチ102が植付け中心軸91の軸心に沿って第3不等速従動ベベルギア99から離反し、すると、植付け中心軸91への動力が遮断される。
【0066】
例えば畦際での植付け作業において、4対の植付装置8のうち一部は作動させたくない場合があるが、このような場合に可動クラッチ102を操作して、一部の植付装置8の機能を停止させることができる。つまり、植付け条数を減らす条止め機能が発揮される。
【0067】
(5).不等速変換手段
本実施形態では、第3不等速ベベルギア98,99を不等速変換機能を保持させている。この点を主として図10と図9(C)とに基づいて説明する。図10(E)に示すように、第3不等速主動ベベルギア98に多数の歯107を形成するにおいて、各歯107の先端から軸心O1までの距離が少しずつ大きく広がって再び狭まるように設定している。すなわち、各歯107は、軸心O1から先端までの距離が最も狭いピッチ円錐角最小部108と、軸心O1から先端までの距離が最も広いピッチ円錐角最大部109とを有しており、両者の間では間隔は徐々に変化している。
【0068】
換言すると、図9(C)に示すように、各歯107のピッチ円109は楕円に近い形状でかつ真円に対して偏心している(符号109′で真円の場合のピッチ円を表示している。)。逆の視点で述べると、通常のベベルギアは、仮想台錘の外周面はどの部位においても軸心に対して同じ角度で傾斜しているが、本実施形態の主動ベベルギア98では、仮想台錘の外周面は、周方向に移行するに従って傾斜角度θ1(図1(A)参照)が徐々に変化している。
【0069】
第3不等速従動ベベルギア99は第3不等速主動ベベルギア98の歯数の2倍の歯112を有している。そして、図10(A)(B)から明瞭に把握できるように、各歯112の軸方向の位置が少しずつずれている。換言すると、ベベルギアを構成する円錐の角度θ2が、円周方向に移行するに従って少しずつ変化している。
【0070】
第3不等速従動ベベルギア99は第3不等速主動ベベルギア98の歯数の2倍の歯数なので、第3不等速従動ベベルギア99は、2つずつのピッチ円角最小部113及びピッチ円角最大部114を有している。従って、図9(C)に示すように、第3不等速従動ベベルギア99のピッチ円115は略楕円形状になっており、軸心O2を挟んで対称の形状になっている(図9(C)では、真円の場合のピッチ円を符号115′で表示している。)。
【0071】
(6).第1実施形態のまとめ
図5(C)では、3.3m2当たりの植付け付け株数と植付爪96の移動軌跡との関係を示している。この図から理解できるように、密植状態では植付爪96は下死点から真上に上昇しても、疎植状態になると植付爪96の逃げが悪くなって苗を押し倒す現象が生じることが理解できる。
【0072】
そして、本実施形態では、株間変更装置26に不等速ギア48,56を設けたことと、支持アーム31の第3不等速ベベルギア98,99を不等速ギアと成したこととにより、ロータリーケース36は植付爪96が下死点付近に位置したときに回転速度が速くなるように加速されている。このため、植付爪96は下死点から素早く逃げることになり、その結果、植付爪96で苗を押し倒す現象を防止できる。
【0073】
そして、本実施形態では、不等速変換手段である不等速ギアを株間変更装置26と支持アーム31の後端とに分離して配置したため、株間変更装置26から第3不等速ベベルギア98,98まで間の部分は従来に比べて不等速回転の割合が少なくなっており、その結果、動力伝達経路を構成する部材(PTO軸29や植付け駆動軸32,78、植付け伝動軸87等)に発生する撓みを著しく抑制して、植付装置8の円滑な動きを確保できる。また、動力伝達経路に発生するガタも抑制できるため、掻き取りユニット37の動作位相がずれて苗の植付け位置がずれるといった不具合も防止できる。
【0074】
そして、動力伝達経路の末端部に位置した第3ベベルギア98,99の対を不等速変換手段となしているため、加減速をロータリーケース36に対してダイレクトに伝えることができて、植付装置8のタイミングのずれを的確に防止できる。また、動力伝達経路の末端部に不等速変換手段を設けたことにより、動力伝達経路に撓み・ねじれが蓄積することを防止又は著しく抑制できるのであり、この面からも、苗の植付けを正確に行うことができる。
【0075】
さて、植付装置8は細長いロータリーケース36の両端に掻き取りユニット37が揺動自在に取り付いた形態であるため、掻き取りユニット37が重りの役割を果たして大きな慣性力が生じる。しかも、苗マットの掻き取り時には大きな負荷が発生し、その後は負の負荷が生じている。すなわち、掻き取りユニット37の揺動により、植付装置8の回転に対して、過負荷−無負荷−負の負荷といったサイクルで大きなトルク変動が生じる。このトルク変動は、密植状態で等速回転していても共振回転数を超えると顕著に表れる(密植状態では、疎植状態に比べて植付装置8が高速回転するからである。)。
【0076】
更に述べると、植付装置8が等速回転しても、1つの掻き取りユニット37が圃場から逃げるときは他の掻き取りユニット37は苗の掻き取りに移行しており、従って、2つの掻き取りユニット37は互いの負荷変動を打ち消すように作用していると言えるが、苗の掻き取りには大きなトルクが必要であるため、2つの掻き取りユニット37の動きのみではトルク変動を平準化する機能が弱いのである。このため、植付装置8が滑らかに回転せず、「しゃくり」と呼ばれる現象も発生しやすくなる。
【0077】
そして、本実施形態のように密植状態でも第3不等速ベベルギア98,99によって植付装置8に若干の不等速回転を付与すると、掻き取りユニット37による苗の掻き取りが慣性力を利用しつつ加速をつけた状態で行われ、しかも、苗の掻き取りが行われた後は植付装置8は減速するため植付装置8に大きな慣性力が作用することを防止できるのであり、このため、植付装置8に作用する負荷変動(或いはトルク変動)を平準化してスムースを回転を確保することができる。
【0078】
(7).第2実施形態
次に、図11に示す第2実施形態を説明する。この実施形態は、植付け駆動軸32の回転をチェンで植付け中心軸91に伝達するタイプに適用している。そして、この実施形態では、支持アーム31の後端2に左右横長のアイドル軸142を回転自在に配置しており、このアイドル軸142に嵌まった従動スプロケット143に、植付け駆動軸32に設けた主動スプロケット44からチエン145で動力伝達し、更に、アイドル軸142から植付け中心軸91に、主動等速ギア146及び従動不等速ギア147の対と、主動不等速ギア148及び従動不等速ギア149の対とで選択的に動力伝達している。
【0079】
従動等速ギア147及び従動不等速ギア149は植付け中心軸91に固定されている。他方、アイドル軸142には、外周にスプライン歯を形成したスプライン筒150がスライド自在で回転自在に嵌まっている。スプライン筒150は従動スプロケット143と常に噛合していると共に、主動等速ギア146と主動不等速ギア148とに選択的に噛合する(従って、主動等速ギア146と主動不等速ギア148との内周面にはスプライン溝を形成している。)。
【0080】
スプライン筒150はレバー151によってスライド操作できる。そして、既述のとおり、スプライン筒150が主動等速ギア146と主動不等速ギア148とに選択的に噛合することにより、アイドル軸142の回転が従動等速ギア147と従動不等速ギア149とに選択的に動力伝達され、これにより、植付け中心軸91は等速回転と不等速回転とに切り替えられる。切り替え手段を設けずに、植付け中心軸91を常に不等速回転させることも可能である。
【0081】
(8).第3実施形態
図12に示す第3実施形態は、第2実施形態と同様に植付け駆動軸32の回転をチエン145で植付け中心軸91に伝達するタイプに適用している。この実施形態では、植付け駆動軸32に設けた主動スプロッケト143と植付け中心軸91に設けた従動スプロット144とを偏心した不等速スプロケットとすることにより、植付け中心軸91に不等速回転を付与している。図では両スプロケット143,144を真円に描いているが、実際にはいびつな楕円形状になっている。両スプロケット143,144のうち一方だけを偏心させて片方は偏心しない構成とすることも可能である。チエン145にはアイドルローラ145′を当てている。
【0082】
第2実施形態及び第3実施形態とも、チエン145に代えて、ベルト(タイミングベルトが好ましい)等の他の無端帯を使用することも可能である。
【0083】
(8).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、不等速変換手段を動力伝達経路の末端部のみに設けることも可能である。逆に、動力伝達経路の3カ所以上に不等速ギア等の不等速変換手段を設けることも可能である。更に、植付け部のみに複数の不等速変換手段を設けてもよい。また、本願発明は田植機以外の各種の苗移植機に適用できる。株間変更装置はミッションケースに内蔵することも可能である。末端部の不等速変換手段に切り替え手段を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本願発明は田植機に具体化できて有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 走行機体
2 植付け部
3,4 車輪
7 苗載せ台
8 植付装置
10 エンジン
11 ミッションケース
26 株間変更装置
27 植付け用動力伝達軸
29 動力伝達経路を構成するPTO軸
30 センターケース
31 支持アーム
32 植付け駆動軸
36 ロータリーケース
37 掻き取りユニット
87 植付け伝動軸
91 植付け中心軸
96 植付爪
98,99 末端部の不等速変換手段を構成する第3ベベルギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行しつつ苗の掻取り及び植付け移植動作を繰り返す植付装置と、前記植付装置を駆動する動力源とを有しており、前記動力源から前記植付装置への動力伝達経路中に、前記植付装置の走行速度と移植動作速度との関係を変える株間変更装置と、前記動力伝達経路を構成する回転軸に不等速回転を付与する不等速変換手段とが設けられている構成であって、少なくとも前記動力伝達経路中の末端部に前記不等速変換手段を設けている、
苗移植機。
【請求項2】
前記動力源としてのエンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の後ろ又は前に配置した植付け部とを有しており、前記植付け部に前記植付装置が取り付けられている構成であって、
前記株間変更装置を走行機体に配置している一方、前記不等速変換手段は前記走行機体と植付け部とに分けて設けており、前記植付け部の不等速変換手段を前記動力伝達経路の末端部に設けている、
請求項1に記載した苗移植機。
【請求項3】
前記植付け部には前後長手で中空の支持アームが配置されており、この支持アームの末端部に左右横長の植付け中心軸が配置され、前記植付け中心軸にロータリー式の前記植付装置が取付けられており、かつ、前記植付け中心軸には前後長手の植付け伝動軸からベベルギアの対によって動力伝達される構成であって、
前記ベベルギアの対を不等速ギアと成している、
請求項1又は2に記載した苗移植機。
【請求項4】
前記走行機体における不等速変換手段の不等速比率よりも動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段の不等速比率を小さく設定しており、かつ、走行機体における不等速変換手段は不等速回転状態と等速回転状態との切り替え手段を有する一方、動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段は常に不等速回転状態になっている、
請求項2又は3に記載した苗移植機。
【請求項5】
前記走行機体における不等速変換手段は不等速回転と等速回転との切り替え手段を備えており、疎植状態で不等速回転するように切り替えられる一方、前記動力伝達経路の末端部に設けた不等速変換手段は常に不等速回転するように設定されている、
請求項2〜4のうちのいずれかに記載した苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−196153(P2012−196153A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61337(P2011−61337)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】