説明

苗移植機

【課題】
苗載台が左右の側端部に到達するタイミングを容易かつ的確に把握することができる苗移植機を提供する。
【解決手段】
苗移植機は、機体を走行支持する走行装置6,7と、機体の後部で苗を積載して左右方向に往復移動動作する苗載台80と、苗載台80の苗の有無を検知する苗検知体136と、苗載台80の苗を順次先送りする苗送り装置79と、苗載台80が左右端部まで移動すると苗送り装置79を駆動させる苗送り作動部材86と、苗載台80から苗を取って圃場に植付けする植付装置37と、作業者が機上で機器操作するための操縦部21と、操縦部21に配置されて走行装置6,7の前後進切替および作業切替のための植付操作部材24とを設けて構成され、上記苗送り作動部材86の作動を検知する作動検知体201と、作動検知体201からの検知信号に応じて制御装置Cにより報知動作する通知部材202とを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗マットを順送り可能に支持する苗載台の左右往復動作によって苗株植付けを行う苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、投入した苗マットを苗送り機構によって順送り可能に支持する苗載台を左右移動可能に構成し、先端の取出口に苗を臨ませて植付機構が苗株植付けを行う植付装置を機体後部に備えた苗移植機が知られている。苗載台は、植付機構が取出口から株分けする毎に横移動し、苗マット幅の左右側端部まで移動すると苗送り機構を作動させるための苗送り作動シャフトが回動するものである。
【0003】
植付けの過程で苗載台の苗が無くなった場合は、苗載台に備えた苗検出部により植付動作を停止するので、苗載台が左右の側端部に移動するまで機体を走行させた上で苗マットを補充投入することにより、新たな苗マットの側端位置から株分けして植付けを開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−201377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、苗載台が左右の側端部に移動するまで機体を走行させる際に、作業者は後方の苗載台を振り返って苗載台の横移動を見ながら位置合わせをする必要があり、手元と苗載台に交互に視線を配るために作業能率が低下する問題があった。
【0006】
本発明の目的は、苗載台が左右の側端部に到達するタイミングを容易かつ的確に把握することができる苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、圃場を走行可能に機体を支持する走行装置(6,7)と、機体の後部で苗を積載して左右方向に往復移動動作する苗載台(80)と、苗載台(80)の苗の有無を検知する苗検知体(136)と、苗載台(80)の苗を順次先送りする苗送り装置(79)と、苗載台(80)が左右端部まで移動すると苗送り装置(79)を駆動させる苗送り作動部材(86)と、苗載台(80)から苗を取って圃場に植付けする植付装置(37)と、作業者が機上で機器操作するための操縦部(21)と、操縦部(21)に配置されて走行装置(6,7)の前後進切替および作業切替のための植付操作部材(24)とを設けた苗移植機において、上記苗送り作動部材(86)の作動を検知する作動検知体(201)と、作動検知体(201)からの信号に応じて制御装置(C)により通知動作する通知部材(202)とを設けたことを特徴とする苗移植機とした。
【0008】
上記苗載台(80)が左右端部まで移動すると、苗送り作動部材(86)に設けた作動検知体(201)が制御装置(C)に信号を発信することにより、通知部材(202)を通知作動させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記苗載台(80)の左右移動を検知する近接検知体(203)を苗載台(80)の折り返し点の近くに設け、該近接検知体(203)と苗載台(80)の間隔に応じて前記通知部材(202)を異なる報知態様で作動させる制御構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
上記苗移植機は、苗載台(80)と近接検知体(203)の間隔に応じて通知部材(202)の通知様態を変化させるので、作業者に苗載台(80)の左右端部への接近を通知することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2の構成において、前記近接検知体(203)を左右方向に亘って複数配置し、該複数の近接検知体(203)がそれぞれ苗載台(80)を検知する度に前記通知部材(202)を短い間隔で作動させる制御構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
上記構成により、左右方向に亘って複数配置された近接検知体(203)に苗載台(80)の左右方向への移動が検知される度に、通知部材(202)が通知作動する間隔が短くなることにより、作業者に通知間隔の変化によって苗載台(80)の左右端部への接近を通知することができる。
また、通知間隔が変化することにより、作業者は苗載台(80)が正常に左右移動していることを認識することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の構成において、前記作動検知体(201)が苗載台(80)の左右端部までの移動を検出すると、通知部材(202)を所定時間連続して作動させる制御構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
上記構成により、苗載台(80)が左右端部まで移動したとき、通知部材(202)を所定時間連続作動させて、作業者に苗載台(80)が左右端部に到達したことを通知できる。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成において、前記制御装置(C)は、前記植付操作部材(24)が中立位置で且つ苗検知体(136)が苗を検知していない場合、通知部材(202)を作動させる制御構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
上記構成により、植付操作部材(24)が中立位置にあると共に、苗検知体(136)が苗を検知していない状態での通知動作が可能となるので、苗載台(80)の位置合わせを容易に行うことができる。
また、圃場に苗を植える作業中には、通知部材(202)の作動を停止させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、苗載台(80)が左右端部まで移動すると苗送り作動部材(86)に設けた作動検知体(201)が制御装置(C)に信号を発信して通知部材(202)を通知作動させることにより、苗載台(80)が左右端部まで移動したことを作業者が容易に判断することができるので、苗の補充作業を円滑に行うことができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、苗載台(80)と近接検知体(203)の間隔に応じて変化する通知、例えば、間隔をあけたブザー音やランプの点滅等を行なうことにより、作業者は苗載台(80)が左右端部に接近していることを容易に判断することができるので、苗載台(80)を左右端部で停止させることが容易となり、苗の補充作業をさらに円滑に行うことができる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の効果に加え、複数の移動検知体(203)が苗載台(80)を検知する度に通知部材(202)が通知作動する間隔を短くすることにより、作業者に通知間隔の変化によって苗載台(80)の左右端部への接近を通知することができるので、作業者は苗載台(80)が左右端部に到達するタイミングを図りやすくなり、左右端部で苗載台(80)を確実に停止させられるため、苗の補充作業がいっそう円滑に行なわれて作業能率が向上する。
また、通知部材(202)の通知間隔が変化することにより、作業者は苗載台(80)が正常に左右移動していることを認識することができるので、故障や操作ミス等により苗載台(80)が動いていない場合はすぐに気付くことができ、故障の対応や操作のやり直しが速やかに行なわれるため、作業能率が向上する。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項の効果に加え、苗載台(80)が左右端部まで移動すると通知部材(202)が所定時間連続作動、例えば、ブザーが鳴り続ける、或いはランプが連続して点灯することにより、作業者に苗載台(80)が左右端部に到達したことを確実に通知することができるので、他の作業を行っていても苗載台(80)が左右端部に到達した際に確実に左右移動を停止させられ、苗載台(80)の位置合わせが能率よく行なわれる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項の効果に加え、植付操作部材(24)が中立位置にあると共に、苗検知体(136)が苗を検知していない状態で通知動作が行なわれることにより、機体を走行させることなく苗載台(80)の位置合わせを容易に行うことができるので、苗載台(80)の位置合わせや植付開始位置が容易に調節可能となり、作業能率が向上する。
また、圃場に苗を植える作業中には、通知部材(202)の作動を停止させることにより、苗載台(80)が左右方向に移動するたびに通知部材(202)が作動することを防止できるので、無用な情報が作業者に伝わることが防止され、作業者にストレスが溜まりにくく、作業者の労力が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】苗載台の苗送り伝動構成を分かりやすく示す正面図
【図4】苗載台の苗移送量変更装置を分かりやすく示す断面側面図
【図5】苗載台の苗移動量センサを分かりやすく示す断面側面図
【図6】ブロック図
【図7】苗送り駆動軸の要部斜視図
【図8】報知制御のフローチャート
【図9】別の報知制御のフローチャート
【図10】検知体の配置例の説明図
【図11】転倒警報対応のフローチャート
【図12】アクセル連動プレート部の分解斜視図(a)と動作図(b)
【図13】植付部の要部平面図(a)とそのA矢視図(b)
【図14】ブロワの要部拡大図
【図15】肥料装填部の構成説明図
【図16】吸着口の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、限定されることのない一構成例に沿って以下に説明する。
図1及び図2は、6条植えの乗用型の田植機1を示すものであり、この乗用型の田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0020】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪6及び後輪7を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース8が配置され、そのミッションケース8の左右側方に左右一対の前輪ファイナルケース9が設けられ、該前輪ファイナルケース9の変向可能な左右一対の前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪6が取り付けられている。
【0021】
また、ミッションケース8の背面部にメインフレーム10の前端部が固着されており、そのメインフレーム10の後端左右中央部に前後水平に設けた左右一対の後輪ローリング軸を支点にして左右一対の後輪ギヤケース12がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース12から外向きに突出する後輪車軸に後輪7が取り付けられている。
【0022】
原動機となるエンジン13はメインフレーム10の上に搭載されており、該エンジン13の回転動力が、ベルト伝動装置14を介して正逆転切替可能な伝動装置となる油圧式の前後進無段変速装置15へ入力される。そして、該前後進無段変速装置15からの出力がミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された回転動力は、該ミッションケース8内の伝動分岐部で走行用伝動経路と植付用伝動経路とに分岐して伝動され、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0023】
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース9に伝達されて前輪6を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース12に伝達されて後輪7を駆動する。また、外部取出動力は、取出伝動軸17を介して走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース18に伝達され、それから植付伝動軸19によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0024】
エンジン13の上部はエンジンカバー20で覆われており、その上に座席21が設置されている。座席21の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー22があり、その上方に前輪6を操向操作するハンドル23が設けられている。ハンドル23の右側には、前記前後進無段変速装置15を操作する前後進変速レバー24が設けられている。前後進変速レバー24の操作位置を検出する前後進変速レバーセンサ24aを設け、この前後進変速レバーセンサ24aは、後述する苗植付装置37の作動速度を判断する植付速度センサとなる。
【0025】
また、前後進変速レバー24のグリップ部には、苗植付部4の昇降操作及び作動の入切操作がおこなえる植付昇降操作スイッチが設けられている。エンジンカバー20及びフロントカバー22の下端左右両側は水平状のフロアステップ26になっている。また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台27が設けられている。
【0026】
昇降リンク装置3は、1本の上リンク70と左右一対の下リンク71を備えている。これらの上リンク70及び下リンク71は、その基部側がメインフレーム10の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム72に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク73が連結されている。
そして、縦リンク73の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸74が挿入連結され、連結軸74を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
メインフレーム10に固着した支持部材と上リンク70に一体形成したスイングアームの先端部との間に昇降油圧シリンダ76が設けられており、該昇降油圧シリンダ76を油圧で伸縮させることにより、上リンク70が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0027】
(苗植付部)
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース77、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口78に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口78に供給すると苗送りベルト79により苗を下方に移送する苗載台80、苗取出口78に供給された苗を苗植付具37aで圃場に植付ける苗植付装置37等を備えている。
【0028】
苗載台80は、苗載面の裏側でその裏面側下部に左右方向に設けた苗受枠となる横枠81に沿って左右動自在に支持されている。また、この苗載台80は、上下に延びる複数の仕切り壁部80aを備えており、該仕切り壁部80aにより区分されて各条の苗載部80bが構成され、6条分の苗を搭載できる構成となっている。尚、前記横枠81に6条分の前記苗取出口78が設けられている。
【0029】
伝動ケース77の左右両側から突出して該伝動ケース77内の動力でリードカム82aを横方向に左右往復移動させるリードカム軸82が設けられ、リードカム82aと苗載台80とが連結されていて、リードカム軸82が駆動回転することにより苗載台80が左右往復動するようにしている。リードカム軸82は、その一端部左端部が伝動ケース77で支持されている。
【0030】
苗載台80の裏面側の上下には、左右方向に長い上側左右移動用案内部材120及び下側左右移動用案内部材121がそれぞれ固着して設けられている。上側左右移動用案内部材120は、側面視で下側が切り欠かれた断面形状に形成されており、下側から支持される回転自在の支持ローラ122が係合している。この支持ローラ122は、上側左右移動用案内部材120に沿う適宜位置4か所に複数個4個設けられ、伝動ケース77の上側に固着された苗載台支持フレーム123の上部に取り付けられている。下側左右移動用案内部材121は、横枠81に上側から載る。従って、苗載台80は、支持ローラ122と横枠81とにより左右方向に移動可能に支持されている。
【0031】
(移動端センサ)
苗載台支持フレーム123には苗載台80が左右移動端に到達したことを検出する左右各々の移動端センサ131を設け、該移動端センサ131は苗載台80の左右方向端部の裏面側に突出する仕切り壁部80aが当たって検出する構成となっている。
【0032】
苗送りベルト79は、駆動ローラ84と従動ローラ85に巻き掛けられている。駆動ローラ84は左右方向の苗送り駆動軸86と一体回転するように設けられている。苗送り駆動軸86は、各2条毎に設けられ、各々のラチェット機構87により、苗送りベルト79が苗送りする方向にだけ回転を伝達するようになっている。従って、苗送りベルト79が、苗載台80の左右移動端で該苗載台80上の苗を苗受枠81側へ移送する苗移送装置となる。
【0033】
(苗送り)
苗送りベルト79の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、伝動ケース77の左右両側からそれぞれ突出して回転駆動する駆動側アーム88が設けられている。尚、伝動ケース77の右側の駆動側アーム88は、リードカム軸82を介して回転駆動する。また、苗送り駆動軸86の上側には左右方向の中継軸89が各2条毎に設けられ、それに従動側アーム90が取り付けられている。中継軸89と苗送り駆動軸86とは、各々第一アーム91並びに第二アーム92及びリンク93とからなるリンク機構94により伝動連結されている。
【0034】
苗載台80が左右移動行程の端部に到達すると、駆動側アーム88が従動側アーム90にその下側から当たって、中継軸89を所定角度回転させる。その回転がリンク機構94及びラチェット機構87を介して苗送り駆動軸86に伝達される。これにより、苗送りベルト79が所定量だけ作動する。
なお、苗載台80が左右移動両端部でそれぞれ苗送り動力を伝達できるように、1個の駆動側アーム88に対して左右に2個の従動側アーム90が同一の中継軸89上に設けられている。駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89に係止したスプリングの張力によって中継軸89及び従動側アーム90は駆動前の位置に戻る。
【0035】
なお、リンク機構94及びラチェット機構87は、右側2条分のものは苗載台80の右端部、中央2条分のものは右から3条目の苗載部80bの右端部、左側2条分のものは苗載台80の右端部に配置されている。中央2条分のリンク機構94及びラチェット機構87は、左右一方側左側に偏位する伝動ケース77の苗送り伝動部77aに対して左右他方側右側に偏位して配置されるので、苗載台80と伝動ケース77を前後に近づけながら、伝動ケース77に干渉しないようにできる。ラチェット機構87には、各々2条分の苗送りベルト79の駆動を入切する苗送りクラッチを備えている。
【0036】
従って、該苗送りクラッチを操作する苗送りクラッチワイヤ132が、ラチェット機構87から苗載台80の裏面側で該苗載台80に沿って設けられている。尚、苗送りクラッチワイヤ132の他端は、各2条毎の植付を入切する畦クラッチレバー133に連結されている。この畦クラッチレバー133は、走行車体2の後部に計3本設けられ、各々の畦クラッチレバーセンサ133aにより操作位置を検出できる構成となっている。
【0037】
また、苗植付部4の苗載台80の前側には、横枠81を上下動させて苗植付装置37が苗取出口78で取り出す一株あたりの苗の量を変更する苗取り量変更レバー134を設けている。この苗取り量変更レバー134の操作位置を、苗取り量変更レバーセンサ134aが検出する構成となっている。
【0038】
駆動側アーム88は、伝動ケース77の苗送り伝動部77aの左右両側の適宜位置に左右各々2個ずつ設けられている。右外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、右の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。右内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、中央の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、右の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。
【0039】
左内側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、中央の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たると共に、苗載台80が左右移動右端に移動したとき、左の中継軸89の右側の従動側アーム90に当たる。左外側の駆動側アーム88は、苗載台80が左右移動左端に移動したとき、左の中継軸89の左側の従動側アーム90に当たる。従って、計6個の従動側アーム90に対して、駆動側アーム88の個数を4個として数を削減させている。
【0040】
尚、左右各々の中継軸89における左右各々の従動側アーム90は、該中継軸89の左右中央部に配置しているが、左右中央の中継軸89における左右の従動側アーム90は、該中継軸89の左右両端部に配置している。これにより、左右移動で振り分けて伝動ケース77の左右両側内側の駆動側アーム88から左右中央の中継軸89へ動力を伝達することができると共に、左右内側の駆動側アーム88を左右の中継軸89へ動力を伝達するアームとして兼用できる。また、各中継軸89の左右の従動側アーム90を、各中継軸89において略左右対称な位置に配置でき、各2条毎で略左右中央に配置される後述する苗移送量変更モータ135による苗送り量の変更設定を高精度で行える。
【0041】
(苗減少センサ)
苗載台80の各条の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗減少センサ136を設けている。この苗減少センサ136は、苗の有無を検出することにより、苗載台80上の適宜の位置で苗が減少したことを検出する。また、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの苗送りベルト79近くの適宜位置には、各々苗移動量センサ137を設けている。
【0042】
該苗移動量センサ137は、スプリング138で苗側上側に回動する側に付勢されたセンサ取付アーム139の先端に設けられ、外周面が苗の底面に接触して回転するローラ式であり、その回転角度を検出する回転角度検出型のセンサポテンショメータを備え、苗送りベルト79の苗の移送方向への苗載台80上の苗の移動量を検出する。尚、後述する苗移送量変更モータ135による苗送りベルト79の苗の最大移送量よりも、苗移動量センサ137の外周長が大きくなるよう構成されている。
【0043】
該苗移動量センサ137は、回転角度を0度以上360度未満の角度値として検出し、苗送り作動の前後の角度値から苗の移動量を検出するセンサであるが、苗送り作動の前後で0度の角度値をまたいで検出した場合でも検出できるように、制御部Cにより、360度と苗送り作動前の角度値の差及び苗送り作動後の角度値と0度の差の両方の差を加算して演算するようにしている(演算式:苗の移動量={360度―苗送り作動前の角度値}+{苗送り作動後の角度値―0度})。これにより、角度値を検出するだけの簡単なセンサポテンショメータで、苗の移動量を検出できる。
【0044】
また、苗移動量センサ137を苗送りクラッチに近い位置の条に設け、苗移動量センサ137の防護フレームを兼ねる後述する苗移送量変更モータ135のモータ支持フレーム135fを、右から1条目、4条目及び6条目の苗載部80bの裏面側のみに設け、モータ支持フレーム135fの内側に、苗送りクラッチワイヤ132を通して、モータ支持フレーム135fが苗送りクラッチワイヤ132の防護フレームも兼ねた構成としている。
【0045】
苗移動量センサ137は、苗載部80bの左右中央に位置している。前記苗減少センサ136は、苗移動量センサ137を設けていない苗載部80bでは該苗載部80bの左右中央に位置しているが、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bでは該苗載部80bの左右方向一側端に位置している。これにより、苗移動量センサ137を苗減少センサ136に優先して苗載部80bの左右中央に位置させて、苗の移動量を高精度で検出できるようにしている。各条の苗減少センサ136は、苗移動量センサ137より若干苗載台80に沿う上側位置に配置されている。
【0046】
また、苗移動量センサ137を設けた苗載部80bの苗送りベルト79より上側位置には、苗載部80b上の苗の量を判別する各々の苗量センサ140を設けている。この苗量センサ140は、横枠81から苗載台80に沿って苗1枚分上側の位置横枠81から58cmの位置に設けられ、その位置での苗の有無を検出することにより、苗載台80上の苗の量の大小を判別する。該苗量センサ140は、苗載部80bの左右中央に位置している。
【0047】
各2条毎の苗載部80bにおける左右中央の仕切り壁部80aの裏側には、2条毎に苗送りベルト79による苗の移送量を変更するための苗移送量変更モータ135を設けている。この苗移送量変更モータ135が、苗移送装置による苗の移送量を変更する苗移送量変更装置となる。
苗移送量変更モータ135は、各2条毎の左右中央に配置されているので、苗送り量の変更を各2条毎に適正に精度良く行える。苗移送量変更モータ135のピニオン135aに噛み合って回動する扇形ギヤ141を設け、該扇形ギヤ141から連結ロッド142を介して中継軸89と一体回転する苗送り規制アームに連結している。
【0048】
なお、苗送り規制アームに設けた長孔143に、連結ロッド142を連結している。従って、苗移送量変更モータ135を駆動して扇形ギヤ141を回動させ、苗送り規制アームを長孔143を介して強制的に上側へ回動させると、苗送り作動で長孔143により中継軸89を回動させることができる。そして、駆動側アーム88が従動側アーム90から離れると、中継軸89及び従動側アーム90は、スプリングの張力で、規制部材となる長孔143の端部に連結ロッド142の端部が当たる位置まで戻る構成となっている。前記苗送り規制アームは、右側2条分は右側の従動側アーム90、左側2条分は左側の従動側アーム90と兼用し、中央2条分は専用の中央苗送り規制アーム144で構成している。
従って、左右の苗送り規制アームは各々外側の従動側アーム90となるため、連結ロッド142の着脱等のメンテナンスが行い易い。
【0049】
苗載台80の苗載面80cの上側には、マット苗の床部の上面に当たって該マット苗を苗載面80c側へ押圧する苗押え具130が設けられている。この苗押え具130により、マット苗を苗送りベルト79側に適度に押圧し、苗送りベルト79で確実に精度良くマット苗を移送できるようにしている。
【0050】
苗植付部4の下部には、中央2条分の苗植付位置を整地するセンターフロート100、及び左右それぞれ外側2条分の苗植付位置を整地するサイドフロート101が設けられている。これらのフロートであるセンターフロート100及びサイドフロート101を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、センターフロート100及びサイドフロート101が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置37により苗が植付けられる。
【0051】
各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート100の前部の上下動が上下動検出機構により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ76を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0052】
施肥装置5は、肥料貯留タンク粉粒体貯留タンク110に貯留されている肥料粉粒体を各条の肥料繰出部粉粒体繰出部63によって一定量づつ繰り出し、その肥料を肥料移送ホース(粉粒体移送ホース)111でセンターフロート100及びサイドフロート101に取り付けた施肥ガイド112まで導き、施肥ガイド112の前側に設けた作溝体113によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ114で駆動のブロア115で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ116を経由して肥料移送ホース111内に吹き込み、肥料移送ホース111内の肥料を苗植付部4側の肥料吐出口施肥ガイド112へ強制的に移送するようになっている。
施肥溝内に供給された肥料は、施肥ガイド112及び作溝体113の後方でセンターフロート100及びサイドフロート101に取り付けた覆土板117により覆土される。
【0053】
各条の施肥ガイド112及び作溝体113は、対応する苗植付装置37との位置関係距離を均一にして各条の肥効を均一化することが望ましいので、それぞれ前後方向において同じ位置機体側面視で同じ位置に配置される。同様に、各条の覆土板117も対応する施肥ガイド112、作溝体113及び苗植付装置37との位置関係を距離を均一にすることが望ましい。
【0054】
何故ならば、覆土板を前寄りに位置させて施肥ガイドに近づけ過ぎると、覆土板で押し寄せられる泥が施肥ガイド内に供給されて該施肥ガイドに泥が詰まるおそれがあり、覆土板を後寄りに位置させて施肥ガイドから離し過ぎると、覆土板で覆土するまでに圃場内の水等により施肥溝の底から肥料が若干浮き上がって、その結果覆土量が少なくなり、適切な肥効が得られなくなるおそれがあるからである。
【0055】
この乗用型の田植機1において、苗移動量センサ137は、移動端センサ131の検出に基づき、苗送りベルト79が前回の苗送り作動を完了させたタイミングから当回の苗送り作動が完了するまでの間、苗の移動量を検出し、検出した移動量を制御部Cに入力する。該制御部Cは、入力された実移動量と苗取り量変更レバーセンサ134aから演算した設定移動量を比較し、実移動量が設定移動量より大きいときには次回の苗送り量が小さくなるように、逆に実移動量が設定移動量より小さいときには次回の苗送り量が大きくなるように、苗移送量変更モータ135へ出力し該苗移送量変更モータ135を作動させる。
【0056】
また、フロントカバー22に設けた苗送り量調節ダイヤル145により、該苗送り量調節ダイヤル145からの信号が制御部Cに入力され、前記設定移動量を補正して変更できる構成となっている。畦クラッチレバーセンサ133a及び苗減少センサ136からの信号が制御部Cに入力され、苗送りクラッチの伝動を切っているとき、または各2条毎において何れか一方の苗減少センサ136により苗が減少したことを検出したとき、制御部Cは、苗移送量変更モータ135へ出力して苗取り量変更レバーセンサ134aの検出に基づく基準位置に苗移送量変更モータ135を戻す。
【0057】
そして、苗量センサ140からの信号が制御部Cに入力され、制御部Cは、苗の量が多いとき苗量センサ140の位置に苗があるときは設定移動量を小さく補正する。また、前後進変速レバーセンサ24aからの信号が制御部Cに入力され、制御部Cは、作業速度が速いときには設定移動量を大きく補正する。
【0058】
対応する2条の苗減少センサ136のうちの何れかの苗減少センサ136により苗が減少したことが入力されると、制御部Cは、苗減少の警報を発すると共に、苗移動量センサ137の検出に拘らず、苗移送量変更モータ135へ出力して苗取り量変更レバーセンサ134aの検出に基づく基準位置に苗移送量変更モータ135を戻す。
【0059】
尚、制御部Cは、全ての苗量センサ140がOFFからONになる回数を累計してカウントし、このカウント値を2倍して苗載台80に補給された概ねの苗の枚数を計数する構成としてもよい。これにより、作業者が苗の使用枚数を把握できたり、その使用枚数に応じて適正な苗枚数で植付作業が行えるように前記設定移動量を補正して苗送り量を変更したりすることができる。
【0060】
また、ハンドル23操作等に基づく機体旋回中でも苗移動量センサ137で苗の移動量を検出するようにしているので、更なる苗送り量の適正化が図れる。
尚、苗量センサ140の検出により苗の量が多いとき、センターフロート100の迎い角を前下がり側に補正する等して、苗植付部4の昇降制御の制御感度を敏感側に補正するようにしてもよい。また、苗量センサ140の検出により苗の量が多いとき、苗取り量変更レバー134を自動的に作動させる等して、苗取り量が多くなるように補正してもよい。
【0061】
また、植付昇降操作スイッチにより苗植付部4を非作動状態にしたとき、前後進変速レバーセンサ24aにより前後進変速レバー24を中立位置に操作して走行を停止させたことを検出したとき、あるいは苗移動量センサ137で検出した苗の移動量が極端に大きいときは、苗移動量センサ137による苗の移動量の検出を行わない構成としてもよい。これにより、苗載台80への苗補給時に誤検出するようなことを防止できる。
【0062】
尚、苗移動量センサ137のセンサ取付アーム139の回動角度を検出し、この回動角度によって設定移動量を補正する構成とすれば、苗の重量ひいては苗の水分状況に応じて、実際の苗の移動量が適正となるように制御することができる。
また、苗移動量センサ137、苗量センサ140及び苗移送量変更モータ135等を各条毎に設け、苗の移動量を各条毎に制御してもよい。
【0063】
(苗補充)
次に、苗補充のための報知システムについて説明する。
苗送り装置の苗送り作動部材である苗送りベルト79の苗送り駆動軸86は、図7の要部斜視図に示すように、その苗送り動作を検出するために感知スイッチ等による作動検知体201を設け、この作動検知体201の検出信号と対応する苗送り駆動軸86の送り動作をブザーやランプによる通知部材202によって作業者に知らせる構成とする。
【0064】
この報知装置は、図8の報知制御のフローチャートに示すように、副変速レバーについてシフト位置が中立位置であることの当否を判定するステップ1(以下において、「S1」の如く略記する。)により「該当」判定であって、かつ、苗検知センサが苗検出なし(S2)の場合に限り、感知スイッチ201の検知に応じて通知部材202が報知動作する(S3〜S5)構成とする。
該報知部材202は、音を発するスピーカーやブザー、光を発するランプやライト等、作業者が視覚的、聴覚的に情報を認識できる部材で構成する。
【0065】
上記作動検知体201と報知部材202を設けたことにより、苗載台80が左右端部まで横移動すると苗送り作動部材86に設けた作動検知体201が制御装置Cに信号を発信し、この信号を受けると通知部材202を作動する構成としたことにより、苗載台80が左右端部まで移動したことを作業者が容易に判断することができるので、苗の補充作業を円滑に行えるため、作業能率が向上する。
【0066】
また、植付操作部材である前後進変速レバー24が中立位置にあり、且つ苗検知体である苗減少センサ136が苗を検知していない場合にのみ前記報知部材202は作動検知体201からの信号を受け付ける制御構成としたことにより、苗の補給時にその場から走行移動を要することなく苗載台80を左右方向に摺動させることができるので、作業能率が向上する。
【0067】
一方、苗の植付作業中は、苗載台80が左右に摺動し、左右端部に移動した際に苗送り作動部材86が作動しても通知部材202が作動しない構成としたことにより、無用な情報が作業者に伝わることを防止できるので、作業者にストレスが溜まりにくく、作業者の労力が軽減される。
【0068】
次に、別構成の報知装置について説明すると、図9のフローチャートに示すように、前記苗載台80の通過を検知する近接センサ等で構成する複数の近接検知体203…を左右折り返し点の近傍の異なる位置に設ける。そして、植付操作部材24である副変速レバーが中立位置にあり、且つ、苗減少センサ136が苗を検出していない、即ち苗がセットされていない場合において、通知部材202により、第1の検知体203aの検知信号に対応して通知部材202を通知動作させ(S11〜S13)、次いで、第2の検知体203bの検知信号に対応する、第1の検知体203aの検知信号に対応して報知部材202が通知動作した時とは異なる態様で通知動作させる(S14〜S16)。
【0069】
上記のように構成することにより、第1の検知体203aと第2の203b、及びその他の近接検知体203がそれぞれ異なる通知動作を行なうことにより、作業者は通知動作の違いから苗載台80の現在位置を認識できるので、苗載台80が左右端に到達するタイミングの予測が可能となる。
例えば、通知部材202の通知動作をパルス状の断続動作とし、苗載台80の折り返し点から遠い方を低速パルス、近い方を高速パルスとすることにより、側端位置に近づくに従ってブザー音の間隔が短く、または、ランプの点滅間隔が短くなる構成とすると、通知動作の態様が左右端までの距離と対応して接近動作の認識が容易となる。
【0070】
また、故障や操作ミスにより、通知部材202が通知動作をしなくなると、作業者はすぐに苗載台80が左右移動していないことに気付くことができるので、故障の対応や操作のやり直しが速やかに行なわれることにより、作業能率が向上する。
【0071】
このように、苗載せフレーム81に苗載台80の接近を検知する近接検知体203…を複数設け、該近接検知体203…が信号を発信するたびに通知部材202の作動間隔を短くすることにより、作業者は苗載台80が左右端部に接近していることをいっそう判断しやすくなるので、苗載台80を左右端部で停止させることが容易となり、苗の補充作業を円滑に行えるため作業能率が向上する。
【0072】
また、図10の検知体の配置例の説明図に示すように、苗載台80に複数の突起221a,221b,221cを設け、該突起221a,221b,221c接近動作を検出するセンサ222を苗受枠81側に設けて通知部材202が報知動作するように通知装置を構成し、複数の突起221a〜221cの間隔を苗載台80の折り返し位置に近い側ほど近接して配置することにより、前記同様の通知動作が可能となるので、作業者は苗載台80がどの辺りを移動しているか、及び苗載台80が左右端部まで移動したことを通知部材202によって視覚的または聴覚的、あるいはそれらの複合によって容易に認識することができるので、苗載台80の左右位置合わせが確実に行なわれ、作業能率が向上すると共に、苗の植付位置を揃えやすく、苗の植付精度が向上する。
【0073】
さらに、図9や図10で示す構成例のように、複数の近接検知体203…が苗載台80の移動を検知する度に、あるいは、複数の突起221a〜221cをセンサ222が検知する度に通知部材202の作動間隔が短くなる構成において、作動検知体201が苗載台80の左右端部への移動を検出すると、数秒間、あるいは作動検知体201の検知状態が解除されるまで連続して通知部材202を作動させる構成としてもよい。
【0074】
上記構成により、苗載台80が左右端部まで移動したことを作動検知体201が検知すると、通知部材202が連続した音の発生や点灯を行なうので、作業者はいっそう確実に苗載台80の左右端部への移動を検知することができ、作業能率が向上する。
【0075】
(転倒警報)
次に、機体の転倒警報について説明する。
エンジン13始動の際に、走行車体2に設ける傾斜センサ(図示省略)により、機体が転倒し得る傾斜角度が検出された場合は、図11の転倒警報対応のフローチャートに示すように、該傾斜センサの情報と、操縦座席に設けた作業者の着座の有無を検出する座席センサ(図示省略)の「入」及び「切」情報を合わせることにより(S21〜S23)、「座席センサ「入」」と「傾斜角度危険域」の同時検出の場合に限り、エンジンスタート時に作動する燃料カットソレノイド(図示省略)を作動させ(S24)、エンジンを停止維持する(S25)ことにより、田植機の安全性、特に傾斜地や圃場の出入口での安全性を向上させることができる。
【0076】
一方、座席センサが「切」状態の場合や、座席センサ「入」であるものの傾斜センサが「安全域」の場合は、エンジン始動(S26)によって機体の稼動を可能とすることにより、作業者が田植機から下車し、車外からの機体の操作を妨げない制御構成とし、作業条件の変化への柔軟な対応性や、作業能率を向上させる。
【0077】
(後進対応)
次に、機体後進速度の調整部について説明すると、図12の分解斜視図(a)に示すように、HSTレバーのアクセル連動プレート231について、動作図(b)に示すように、後進時のアクセル連動ピン部にローラ232を設け、カム挿入ピン233にヘアピン234を挿入してローラ232の位置を調節可能に構成することにより、ローラ232の位置に応じて後進速度が標準と超低速に切替えられる。
上記構成により、前進時の速度に影響されることなく、後進時の安全性を確保することができるので、機体の前後進を容易に切替操作することが可能となり、作業の安全性が向上すると共に、作業能率が向上する。
【0078】
(畦際対応)
次に、図13の植付部の要部平面図(a)とそのA矢視図(b)で示すように、畦際作業対応構成について説明すると、左右サイドフレームの後部穴部に植込機のゲートを兼ねたパイプ状のアーム241を設け、該アーム241の後部に設けた支点242により、苗押さえセット時に棒状マーカ243を押すことによって、苗を植え付けながら圃場面に走行の目印となるラインを線引き可能に構成する。
【0079】
上記構成により、苗を植え付けた後に、苗に干渉することなく走行の目印となるラインを引くことができるので、作業者はこのラインに走行車体2の前部に設けるセンターマーカ205を合わせることにより、畦際での植付作業時にも機体の直進性を確保することができる。
通常圃場にラインを引くラインマーカ(図示省略)は、畦際で作業するときに展開すると圃場外の地面や、圃場端にある壁に接触して破損するおそれがあるので、畦際では展開しにくく、作業者は直進の目安無しで機体を前進させなければならなかったため、植付軌跡が若干蛇行するなどして、苗同士の左右間隔が広くなったり狭くなったりしてしまう問題があった。
苗同士の間隔が狭いと、苗が成長して密生状態になった際、風の流れが悪くなり、害虫や疫病が発生しやすくなるという問題がある。
苗同士の間隔が広ければ上記の問題は解消し得るが、広過ぎると苗の植付数が減ってしまい、収穫量が減少する問題がある。
【0080】
また、前記支点部には、支点越え可能に設けたスプリング244を設けることにより、棒状マーカ243を収納状態または使用状態のいずれかの状態で保持することができる。
これにより、使用状態時は、スプリング効果によって棒状マーカ243を圃場面に向かって押圧するため、棒状マーカ243の圃場追従性を向上することができるので、ラインが圃場にはっきりと形成されるため、水流でラインが消されることが防止され、機体直進性が向上し、苗の植付精度が向上する。
【0081】
(エンジン冷却)
次に、ブロアの風を利用してエンジンを冷却する構成例について説明すると、施肥機5に連通するブロワ115の要部拡大図を図14に示すように、その排風口にシャッタ252を追加し、本機停止時にクラッチペダルまたはブレーキペダルと連動してシャッタ252を動作させることにより、エンジン13側へホースで空気を送ってブロア115の風をエンジン冷却に利用することができるので、エンジン13が過剰に過熱してオーバーヒートしてしまうことが防止され、長時間の作業でも滞りなく行なわれるため、作業能率が向上する。
【0082】
(肥料装填部)
肥料装填部は、構成説明図を図15に示すように、施肥部のコンプレッサ261と接続して弾性材による吸着部262とビニール管によるホース263を組合せて密封管を構成し、肥料装填時に吸着部262を肥料袋Bに密着して使用する。吸着部262は、図16の分解斜視図に示すように、板ゴム入の袋口265形成したビニール袋264による蓋266を設け、肥料装填時以外は袋口265を開いて吸着口262aに嵌め付けて雨天時に雨水が入らないように閉止する。
上記構成により、軽量で自由に動かせて空気が漏れない密封ノズルを安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 田植機
2 走行車体
4 苗植付部
6 前輪(走行装置)
7 後輪(走行装置)
21 座席(操縦部)
24 前後進変速レバー(植付操作部材)
37 植付装置
79 苗送りベルト(苗送り装置)
80 苗載台
81 フレーム
86 苗送り駆動軸(苗送り作動部材)
136 苗減少センサ(苗検知体)
201 感知スイッチ(作動検知体)
202 通知部材
C 制御装置(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能に機体を支持する走行装置(6,7)と、機体の後部で苗を積載して左右方向に往復移動動作する苗載台(80)と、苗載台(80)の苗の有無を検知する苗検知体(136)と、苗載台(80)の苗を順次先送りする苗送り装置(79)と、苗載台(80)が左右端部まで移動すると苗送り装置(79)を駆動させる苗送り作動部材(86)と、苗載台(80)から苗を取って圃場に植付けする植付装置(37)と、作業者が機上で機器操作するための操縦部(21)と、操縦部(21)に配置されて走行装置(6,7)の前後進切替および作業切替のための植付操作部材(24)とを設けた苗移植機において、
上記苗送り作動部材(86)の作動を検知する作動検知体(201)と、作動検知体(201)からの信号に応じて制御装置(C)により通知動作する通知部材(202)とを設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗載台(80)の左右移動を検知する近接検知体(203)を苗載台(80)の折り返し点の近くに設け、該近接検知体(203)と苗載台(80)の間隔に応じて前記通知部材(202)を異なる通知態様で作動させる制御構成としたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記近接検知体(203)を左右方向に亘って複数配置し、該複数の近接検知体(203)がそれぞれ苗載台(80)を検知する度に前記通知部材(202)を短い間隔で作動させる制御構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記作動検知体(201)が苗載台(80)の左右端部までの移動を検出すると、通知部材(202)を所定時間連続して作動させる制御構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
前記制御装置(C)は、前記植付操作部材(24)が中立位置で且つ苗検知体(136)が苗を検知していない場合、通知部材(202)を作動させる制御構成としたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−19722(P2012−19722A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159335(P2010−159335)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】