説明

茎葉処理機の茎葉細断器

【課題】本発明は、投入された茎葉を確実に細かく切断して圃場に排出すると共に、石などの混入による茎葉細断器の損傷を防止することを目的とする。
【解決手段】茎葉処理機1の機体後部に茎葉受けホッパー56を設け、その底部落下口57の下方に、機体2の前後方向に沿う回転軸50を左右一対架設し、各回転軸50、50に多数の切断円板51を取り付けて一方の回転軸50の切断円板51の刃先部が他方の回転軸50の切断円板51の間に位置させると共に、切断円板51、51同士を離して細片放出部52を形成し、そして両回転軸50、50を茎葉処理機1のエンジンに連結して回転軸50、50の一方を他方より高速に且つ互いに向かい合うように逆向きに回転させ、さらに前記切断円板51の下方に、水平面内で回転する回転刃53を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、馬鈴薯を地中に留めたままで茎葉を引き抜く茎葉処理機に関し、詳細には、引き抜いた茎葉を圃場に放出する前に細断するための茎葉細断器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茎葉処理機によって引き抜いた茎葉をそのまま圃場に放置すると、腐敗して病気の元となるおそれがある。また、芋の掘り取り作業など、引き抜き作業の後に行う作業の際に邪魔になることが多い。そのため、茎葉処理機では、引き抜いた茎葉を細かく切断してから圃場に放出している。
茎葉を細断することにより、圃場に排出する茎葉細片は乾燥しやすくなって腐ることが無く、また、掘り取り作業等の茎葉処理後の作業の際にも邪魔になることがない。
【0003】
このように、引き抜いた茎葉を細片に切断する茎葉細断器を備えた茎葉処理機については、本出願人による特許文献1に記載の茎葉処理機がある。
この茎葉細断器は、茎葉を引き抜いて搬送する茎葉搬送装置の後端下方に、進行方向に沿う左右一対の回転軸を設け、この回転軸に多数の円板状の刃を取り付けて形成されており、両回転軸は接近して配置され、切断円板を互い違いに配列して該切断円板の板面同士を近接する。両切断円板は内側に回転されると共に、一方を他方よりも高速に回転して、その速度差により茎葉を挟み切っていた。
【0004】
互い違いに配列して接近させた切断円板によって茎葉を挟み切る構成により、横向きに投入された茎葉を確実に切断するだけでなく、縦向きに投入された茎葉が切断円板の間からすり抜けるのを防止して、茎葉を確実に細断して圃場に排出することができる。
【0005】
しかし、引き抜いた茎葉の根に石がからみついていることがあり、この石が茎葉と共に茎葉細断器に投入されることがある。茎葉細断器に石が入り込むと、切断円板の板面が接近しているために、切断円板がねじれたり、折れ曲がったりして嵌り合ってしまったり、切断円板の回転軸が曲がってしまうなど、茎葉細断器が損傷してしまうおそれがあった。
【特許文献1】特開2005-143471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、石などが混入することにより切断円板や回転軸が破損してしまっていた点であり、投入された茎葉を確実に細かく切断して圃場に排出すると共に、石などの混入による茎葉細断器の損傷を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、作物の茎葉を引き抜き、それを機体後部に送って小片に細断後、地上に放出する茎葉処理機において、前記茎葉処理機の機体後部に茎葉受けホッパーを設け、その底部落下口の下方に、機体の前後方向に沿う回転軸を左右一対架設し、各回転軸に取付けた多数の切断円板を互い違いに配列して、一方の回転軸の切断円板の刃先部を他方の回転軸の切断円板の間に位置させると共に、切断円板同士を離して細片放出部を形成し、そして両回転軸を茎葉処理機のエンジンに連結して回転軸の一方を他方より高速に且つ互いに向かい合うように逆向きに回転させ、さらに前記切断円板の下方に、水平面内で回転する回転刃を設けた。
【0008】
請求項2記載のごとく、前記回転刃の前後左右に垂れ幕を取り付けて周囲を区画し、切断した茎葉細片の前後左右への跳ね飛ばしを防止した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のごとく、茎葉細断器は、左右一対の回転軸にそれぞれ切断円板を取り付け、一方の回転軸の切断円板を他方の回転軸の切断円板の間に位置させると共に隣り合う切断円板同士を離して細片放出部を形成し、さらに切断円板の下方に水平面内で回転する回転刃を設けて形成している。
したがって、石などの異物は、切断した細片と共に切断円板間を離して形成した細片放出部を通過させる一方、縦向きに投入されて裁断されずに通過した茎葉は切断円板の下方の回転刃により切断して圃場に放出できるため、引き抜いた茎葉を確実に細断して放出可能であると共に切断円板や回転軸が石などの異物により損傷するおそれがない。さらに、この回転刃によって、切断円板により細断された細片をさらに細かく切断すると共に細片を四方に拡散することができ、より乾燥しやすい状態で圃場に放出することができる。
【0010】
請求項2記載のごとく、回転刃の前後左右には垂れ幕が取り付けられ、細片の四方への跳ね飛ばしを防止している。
したがって、回転刃により跳ね飛ばされる細片は茎葉細断器の下方向に向かって拡散され、茎葉を引き抜いた後の畝上に該細片を敷き詰めるように放出させることができる。そして、該畝上で乾燥させることで風雨などによる畝の崩れを抑えることができ、さらに、畝崩れを防ぐことにより馬鈴薯の露出を防いで、日光の照射による品質の劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る茎葉細断器について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明に係る茎葉細断器を備えた茎葉処理機の側面図であり、図2は、この茎葉処理機の平面図である。
【0012】
茎葉処理機1は、機体2の左右に三角クローラからなる走行機構3を設けて、二条の畝を跨いで走行する。機体2の平面視右側には座席10及び操縦桿11を設け、左側にはエンジンを収納したエンジンケース12とエンジンからの動力を走行機構3などへ伝達するミッションケース13とを設けて乗用型に構成する。
【0013】
ミッションケース13から座席10の側へ水平駆動軸20を延出し、この水平駆動軸20を介して茎葉搬送装置4を揺動自在に取り付ける。茎葉搬送装置4は、茎葉を引き抜いて搬送する搬送部40と、畝に植生する茎葉を掻き込んで搬送部40に渡す茎葉掻き込み機構42と、搬送部40から投下する茎葉の姿勢を制御する茎葉送り込み機構43とにより構成される。
【0014】
搬送部40は、一対の挟持ベルト41、41により形成され、機体2の前部に設けられる。この挟持ベルト41、41の前部に茎葉掻き込み機構42を取り付けると共に、後部に茎葉送り込み機構43を取り付ける。そして、この搬送部40を、その前部を低く後部を高く傾斜すると共に、その間隔を前部は作物の条間と等しくし、後部は条間より狭く接近して茎葉搬送装置4を形成する。
茎葉送り込み機構43は、搬送部40による茎葉の搬送速度よりも速い速度で周回する送込み爪43aを有し、この送込み爪43aによって茎葉を後ろ側へ引き倒し、横向きに倒れた姿勢で茎葉を排出する。
【0015】
この茎葉搬送装置4の後端下方に茎葉細断器5を取り付ける。図3に茎葉細断器の側面図を示し、図4に茎葉細断器の正面断面図を示す。
茎葉細断器5は、機体2の前後方向に沿う一対の回転軸50、50と、回転軸50に取り付けられる切断円板51と、鉛直方向を回転軸とする回転刃53と、これらをその内部に収容するケース54のとにより構成される。
【0016】
ケース54は、上面と下面とが開放され、上部には茎葉受けホッパー56を設ける。この茎葉受けホッパー56の底部落下口57の下方に機体2の前後方向に沿う左右一対の回転軸50、50を設けて、両回転軸50、50のそれぞれに多数の切断円板51を取り付ける。両回転軸50、50は接近させて配置し、一方の切断円板51の刃先部を他方の切断円板51の間に位置させて互い違いに配列する。
隣り合う切断円板51同士は所定の間隔をあけて配置し、切断円板51、51の間に細片放出部52を形成する。
【0017】
もともと圃場からは大きな石等の異物は取り除かれている。また、細片放出部52における切断円板51同士の板面間隔をあけすぎると茎葉を十分に細かく切断できなくなってしまうため、細片放出部52の間隔は10mm乃至50mm程度に形成する。
例えば、複数の切断円板51を50mm程度の間隔をあけて回転軸50に取り付けておき、互い違いに配列された切断円板51、51の細片放出部52の間隔を約25mmとすると石等の混入による損傷を防止すると共に良好な茎葉の細断効果が得られる。
【0018】
細片放出部52の下方には、鉛直方向の回転軸をもつ回転刃53を設ける。回転刃53は伝動部6を介して駆動される。
【0019】
伝動部6は、回転軸50、50の一方からの動力をケース54の下方に伝動する縦伝動軸(図示せず)及び横伝動軸61と、回転刃53を駆動する鉛直駆動軸62により形成される。
縦伝動軸はケース54の背面に取り付けた伝動ケース60に収納され、回転軸50からの動力を下方に伝達する。そして、横伝動軸61により細片放出部52の下方に直立させた鉛直駆動軸62に動力を伝達する。この鉛直駆動軸62に回転刃53を取り付けて細片放出部52の直下で回転する。
【0020】
図例では、回転刃53はプロペラ状のロータリーナイフにより形成されている。
圃場において石が混入する頻度はあまり高くはなく、回転刃53の損傷のおそれは低い。石の混入頻度が高いような場合には、ハンマーナイフにより回転刃53を形成すると良い。
【0021】
また、ケース54の下縁には、回転刃53の回転面を遮る垂れ幕55を設ける。本実施形態においては、この垂れ幕55はケース54の前後左右側面の下縁にゴム板を取り付けて形成している。また、後部の垂れ幕55には、図4に示すように、横伝動軸61が通過する軸通過部55aを形成する。
この垂れ幕55によって水平回転場53で切断されると共に跳ね飛ばされる茎葉細片の四方への吹き出しを防止して、一定の範囲内にのみ茎葉を排出する。
【0022】
以下、茎葉細断器による茎葉の切断作用について、図3及び図4を参照して説明する。
【0023】
左右1対の搬送部40、40からなる茎葉搬送装置4によって引き抜かれた茎葉Sは、機体の後部上方に搬送される。図3に示すように、搬送部40の後端部には茎葉送り込み機構43が設けられ、ほとんどの茎葉Sは倒れた姿勢で茎葉細断器5に投下される。投下された茎葉Sは茎葉受けホッパー56を介して底部落下口57に落ちこむ。
【0024】
左右の切断円板51、51の全周には、図4に示す向きに鋸刃51aを形成し、それぞれ時計回り又は反時計回りに互いに逆向きに回転させる。そして、左側の切断円板51を右側の切断円板51よりも高速に回転させることで左右の切断円板51、51をそれぞれ切り刃及び受け刃として構成し、これにより茎葉Sを細断する。このとき、細断された茎葉細片は図示左下方へ向かって放出される。
【0025】
図3に示すように、細片放出部52は切断円板51、51を所定の間隔をあけて重ね合わせて形成しているため、茎葉Sの根などに付着していた石等の異物は切断円板51、51の間をすり抜ける。
一方、縦向きに投入された茎葉Sまでもが細片放出部52をすり抜けてしまうことがある。しかし、このような茎葉Sは細片放出部52の下方に設けた回転刃53により細断されるため、引き抜いた茎葉Sを確実に細かく切断することができる。
【0026】
そして、細片放出部52又は回転刃53によって細断した茎葉細片を回転刃53によって拡散する。
細片放出部52で細断された茎葉細片は、図4においては左側方に偏って放出されるため、従来は条間を埋めるように積もっていたが、回転刃53により、この茎葉細片を四方へ拡散することができるため、茎葉細片が条間に偏って積もらずに乾燥しやすい。
【0027】
さらに、ケース54の下縁に形成した垂れ幕55により回転刃53の側方を仕切って、これに回転刃53によって跳ね飛ばされた茎葉細片を当て、茎葉細片の拡散を一定の範囲内に限定することで、放出された茎葉細片によって茎葉の引き抜き処理をした後の畝を覆うことができる。
茎葉Sを引き抜いた後の畝を茎葉細片で覆うことにより、引き抜き作業以前は植生していた茎葉Sによって保護されていた畝が風雨等により崩れて土中の馬鈴薯が露出することを防ぐことができる。
【0028】
本実施形態において、垂れ幕55は、ケース54の前後左右の各側面の下縁にゴム板を取り付けて形成していたが、ケース54の各側面を下方に長く延出して垂れ幕55を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る茎葉処理機の平面図である。
【図2】本発明に係る茎葉処理機の側面図である。
【図3】茎葉細断器の側面断面図である。
【図4】茎葉細断器の正面断面図である
【符号の説明】
【0030】
1 茎葉処理機
2 機体
3 走行機構
4 茎葉搬送装置
5 茎葉細断器
50 回転軸
51 切断円板
52 細片放出部
53 回転刃
54 ケース
55 垂れ幕
55a 軸通過部
56 茎葉受けホッパー
57 底部落下口
6 伝動部
60 伝動ケース
61 横伝動軸
62 鉛直駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物の茎葉を引き抜き、それを機体後部に送って小片に細断後、地上に放出する茎葉処理機において、
前記茎葉処理機の機体後部に茎葉受けホッパーを設け、その底部落下口の下方に、機体の前後方向に沿う回転軸を左右一対架設し、各回転軸に取付けた多数の切断円板を互い違いに配列して、一方の回転軸の切断円板の刃先部を他方の回転軸の切断円板の間に位置させると共に、切断円板同士を離して細片放出部を形成し、
そして両回転軸を茎葉処理機のエンジンに連結して回転軸の一方を他方より高速に且つ互いに向かい合うように逆向きに回転させ、
さらに前記切断円板の下方に、水平面内で回転する回転刃を設けてなる茎葉処理機の茎葉細断器。
【請求項2】
前記回転刃の前後左右に垂れ幕を取り付けて周囲を区画し、切断した茎葉細片の前後左右への跳ね飛ばしを防止したことを特徴とする請求項1記載の茎葉処理機の茎葉細断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−274906(P2007−274906A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101450(P2006−101450)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000113816)マメトラ農機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】