説明

茸類菌床と栽培方法

【課題】茸類栽培を品質的にもコスト的にも労力的にも効率よく行うための、菌床、種菌培養熟成方法および茸栽培方法を提供する。
【解決手段】樹木の粉砕片に添加物や水を配合したものを詰め込むと直径7〜12cm、長さ25〜60cmのほぼ円筒形になる袋2に密封し、全体を外から加熱殺菌した後、包んでいる袋2の円筒表面縦方向に、ほぼ等間隔に3〜5ヶの直径2〜3cmの穴5を開け、その穴の中に茸類の種菌6を植菌した菌床4とする。また、菌床4の乾燥防止も細長いノズルを軸心に深く挿し込み広い範囲に放射状に給水が可能で菌床の広い円筒面積から茸の発生が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は茸類栽培の菌床と茸類の種菌培養熟成方法、および茸栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、茸の栽培は原木栽培に変わり菌床栽培が普及してきた。
菌床栽培の方法としてはガラス瓶やプラスチック製のケース等各種容器の中で菌床を栽培棚の上で培養熟成させ、そのまま茸類を発生させるものや容器から菌床を取り出し茸類を発生させるものもあった。
又、菌床の乾燥を防ぐため菌床への給水方法としては菌床表面に散水する方法、貯水槽に菌床を浸す方法、あるいは特許出願文献1特願平7−299131に見られるように個々の菌床の横方向から注射器のようなもので注水する方法もあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
菌床栽培を品質的にもコスト的にも労力的にも効率よく行うためには、菌床の容器は何を使い、種菌が培養熟成、茸類を発生させるには菌床の形をどのようにするか、茸類を発生させるときに容器から出すべきかそのまま発生させるか、菌床に雑菌を入れないようにしながら種菌を植菌し培養熟成させ、乾燥を防ぐための給水を行い、茸類の発生を効率よく行えるには、まず菌床の形と菌の培養熟成方法がどうあるべきかが最大の課題であった。
【0004】
植菌された後、逐次培養熟成されてゆくがその周りがあまり広すぎると場所により培養熟成の時間差でき、早期大量生産収穫が期待できない。
かといって菌床の大きさが小さいと菌床の移動、乾燥防止のための給水等の作業が細かくなり手数がかかるため菌床の大きさも生産効率の大事なポイントになる。
菌床の容器としてガラスやプラスチック製固形容器は生産毎に毎回使用後破棄してしまうとコストがかかり、使用を繰り返すと回転させるための作業および管理の負荷もかかる。
菌床容器が低コストで労力も余りかからない方法が要望されていた。
【課題を解決する為の手段】
【0005】
請求項1記載のように、樹木の粉砕片に添加物や水を配合したものを詰め込むと直径7〜12cm、長さ25〜60cmのほぼ円筒形になる袋に入れ、全体を外から加熱殺菌した後、包んでいる袋の円筒表面縦方向に、ほぼ等間隔に複数個の直径2〜3cmの穴を開け、その穴の中に茸類の種菌を植菌した菌床とすれば菌床開口部は種菌で塞がれ、菌床に雑菌が入らず菌床内で種菌のみ培養熟成され、又軸方向に長い円筒形の長手方向に複数の種菌がほぼ等間隔で植菌されることになる為、菌床全体が短期間でほぼ均一に熟成されることとなる。
よって種菌が植菌された周りをあまり広くすることによる培養熟成の時間差を少なくできるし、菌床の固まり一つとしては円筒形軸方向に長くできるため大きさは種菌を1箇所に植菌した大きさの菌床の3〜5倍の大きさに大きくできる。よって、菌床作りの手間も効率よく、移動運搬の労力も少なくできる。
ガラスやプラスチックの固形容器は必要なく簡易な袋で菌床を包み、熟成後は破棄できるためコスト的にも作業管理的にも簡便である。
【0006】
また請求項2記載のように本発明の菌床を植菌された穴を上方に向け、穴の数だけ水平に平行に並べた後、その並べられた菌床の上に2段目の菌床を1段目の方向と約90度角度を変えて1段目と同様に穴を上方に向け、一段目の菌床の穴の上に乗るように穴の数だけ平行に並べる。3段目以降を積み上げるに当たっても同様にすぐ下の段の菌床と約90度角度をつけ、穴の上に多段に積まれた状態で運搬、培養熟成を行えば、植菌するために縦方向に並んであけられた複数の穴が上の菌床の袋の円筒面で適度にふさがれ雑菌が入らぬように塞がれ、それでいて培養熟成に必要な空気中の酸素は穴の適度な隙間、および種菌経由、菌床の中に入っていくようにすることができる。この複数井桁状に積まれた最上段の菌床の穴は板を置くか、最上段の菌床の穴が下を向くように積め適度に塞がれる事となる。
【0007】
請求項3記載のように菌床袋に入った菌床を培養熟成室で1つの棚が平行な2〜3本の横木、または棒で作られた多段の棚に円筒形の菌床が棚の横木、または棒とほぼ90度の角度で横木、または棒の上に乗るように平行に並べて培養熟成させれば培養熟成後、袋を取り外し、菌床表面に茸を発生し易く、収穫し易くすることができる。
【0008】
菌床の乾燥を防ぐため、本発明請求項4記載のように、請求項1の菌床袋に入った菌床を請求項2または請求項3の培養熟成方法で熟成させた後、菌床表面に茸類を発生させるため、菌床を包んでいる袋を菌床から取り外すが菌床表面全体が空気中にさらされると逐次、水分が失われるため、円筒形菌床のほぼ軸心の片方から、細管の中心軸から放射方向細管面に複数の小穴を開けたノズルを円筒形菌床軸心に沿って挿し込み、ノズル経由菌床内で放射状に注水すれば円筒形軸心に沿った長手方向全体に水を均一に浸み込ませることができ乾燥を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0009】
本発明に係わる茸類菌床と培養熟成方法、および栽培方法の実施形体の一例として添付図面に基づき説明する。
本発明の請求項1の実施例として図1および図2を用いて説明する。
図1は菌床となる前の素材の外観を示し、図2は袋2に穴5を4ヶあけ、種菌6が植菌されて菌床4となった状態の外観の図を示す。
図2の樹木の粉砕片と添加物と水の配合素材1が袋2に詰められて直径約10cm、長さ約50cmのほぼ円筒の形になり、袋2の開口端は菌床4を詰め込んだ後、紐3で縛られ袋2は密封される。
この状態で加熱殺菌室に入れられ外側から加熱することにより樹木の粉砕片と添加物と水の配合素材1は殺菌される。
加熱殺菌室から出された後、図2に示すように袋の円筒表面縦方向にほぼ等間隔に4ヶの直径約2cmの穴5を開け、その穴の中に茸類の種菌を植菌すれば先に説明した図1の樹木の粉砕片と添加物と水の配合素材1であった物は図2の菌床4となる。
開口穴5は種菌で塞がれ、菌床に雑菌が入らず菌床内で種菌のみ培養熟成させ、又、軸方向に長い円筒形の長手方向に複数の種菌を植菌することにより菌床4全体が短時間でほぼ均一に熟成されることとなる。
【0010】
本発明請求項2の実施例として図2、および図3を用いて説明する。
本発明請求項1の菌床4を図2に示すように植菌された穴5を上方に向け、穴5の数と同じ数の菌床4を4ヶ水平に平行に並べた後、その並べられた菌床4の上に2段目の菌床4を1段目の方向と約90度角度を変えて1段目と同様に穴5を上方に向け、下の菌床の穴5の上に乗るように穴5の数4ヶ平行に並べる。3段目以降を積み上げるに当たっても同様にすぐ下の段の菌床4と約90度角度をつけ、穴5の上に多段に菌床台木7の上に積まれた図3で示す状態で運搬、培養熟成を行えば植菌するために縦方向に並んであけられた複数の穴が上の菌床の袋の円筒面と種菌6で適度にふさがれる為、雑菌が入り難くなっており、それでいて培養熟成に必要な空気中の酸素は種菌6および穴5経由、菌床の中に適度に入っていくようにすることができる。
各段穴の数だけ複数井桁状に積まれた最上段の菌床の穴を塞ぐために図3に示すように最上段の菌床4のみは穴5が下を向くように積めばすべての穴5は塞がれた形となる。
【0011】
本発明請求項3の実施例として図2、および図4を用いて説明する。
図2の本発明請求項1の菌床4を袋2に入ったまま培養熟成室で図4に示す1つの段が平行な2本の横木8で作られた2段の棚に円筒形の菌床4が横木8とほぼ90度の角度で横木8の上に乗るように平行に並べて培養熟成させれば培養熟成後、袋2を取り外し菌床表面に茸を発生し易く、収穫し易くすることができる。
横木8は棚柱組立9に固定され2段の棚を構成している。
【0012】
本発明請求項4の実施例として図5を用いて説明する。
培養熟成後、袋が取り外された本発明請求項1の菌床4の乾燥を防ぐため、円筒形菌床4のほぼ円筒軸心の片方から、細管の中心軸放射方向細管面に小径穴11を複数個開けたノズル10を円筒形菌床4軸心に沿って挿し込み、菌床4内でノズル10経由放射状に注水すれば円筒形軸心に沿った長手方向全体に水を均一に浸み込ませることができる。ノズル10は円筒形菌床4長手方向全体に水が届くに十分な長さがあり、注水開閉ノブ12を具備したニップル13と一体になっており、ニップル13はホース14につながれている。
【発明の効果】
【0013】
菌床を円筒形にして、円筒長手方向に間隔をおき植菌することにより各植菌箇所からの培養熟成してゆく範囲を均一化し、菌が回る時間を短くでき、乾燥を防ぐための注水作業も一度に大量の菌床に均一に注水することができる形をしていて、それでいて菌床の固まりひとつの大きさは種菌を1箇所に植菌した大きさの菌床の3〜5倍の大きさに大きくでき、菌床製作、菌床移動運搬、培養熟成、栽培の作業効率のよい生産活動ができる。
ガラスやプラスチックの固形容器は必要なく簡易な袋で菌床を包み、熟成後、袋は簡単に破棄でき、コスト的にも作業管理的にも簡便である。
菌床の運搬時、培養熟成時も雑菌が入り難く、熟成が十分で茸菌の雑菌に対する抵抗力が付いた後は円筒形菌床表面の広い面積に茸を発生させることができる栽培法で、すこぶる生産効率をアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願請求項1の発明の菌床になる前の素材の外観を示す図である。
【図2】本願請求項1の発明の菌床の外観を示す図である。
【図3】本願請求項2の発明の菌床培養熟成法の菌床の運搬時、および培養熟成時の菌床の積まれた状態で途中の段を省略した図である。
【図4】本願請求項3の発明の菌床の培養熟成時、横木の棚に菌床が並べられた状態を示す図である。
【図5】本願請求項4の発明の菌床へ給水する方法を示す図である。
【符号の説明】
1. 樹木の粉砕片と添加物と水の配合素材
2. 袋
3. 紐
4. 菌床
5. 穴
6. 種菌
7. 菌床台木
8. 横木
9. 棚柱組立
10.ノズル
11.小径穴
12.注水開閉ノブ
13.ニップル
14.ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の粉砕片に添加物や水を配合したものを詰め込むと直径7〜12cm、長さ25〜60cmのほぼ円筒形になる袋全体を外から加熱殺菌した後、包んでいる袋の円筒表面縦方向に、ほぼ等間隔に複数個の直径2〜3cmの穴を開け、その穴の中に茸類の種菌を植菌した菌床。
【請求項2】
請求項1の菌床を植菌された穴を上方に向け、穴の数だけ水平に平行に並べた後、その並べられた菌床の上に2段目の菌床を1段目の方向と約90度角度を変えて1段目と同様に穴を上方に向け、一段目の菌床の穴の上に乗るように穴の数だけ平行に並べる。3段目以降も同様にすぐ下の段と約90度角度をつけ、穴の上に多段に積まれた状態で運搬、培養熟成を行う茸類培養熟成法。
【請求項3】
請求項1の菌床を培養熟成室で1つの棚が平行な2〜3本の横木、または棒で作られた多段の棚に菌床が棚の横木、または棒とほぼ90度の角度で横木、または棒の上に乗るように平行に並べて培養熟成させる茸類培養熟成法。
【請求項4】
請求項1の菌床袋に入った菌床を請求項2または請求項3の培養熟成方法で熟成させた後、菌床を包んでいる袋を菌床から取り外した後、乾燥防止のため円筒形菌床のほぼ円筒軸心の片方から細管の中心軸から放射方向細管面に複数の小穴を開けたノズルを円筒形菌床軸心に沿って挿し込み、ノズル経由菌床に放射状に注水し円筒形菌床周りに茸類を発生させる茸類栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254066(P2012−254066A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141171(P2011−141171)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(511155899)株式会社ハルカインターナショナル (1)
【出願人】(511155903)
【Fターム(参考)】