説明

蓄熱放熱システム

【課題】要求されている温度及び流量の蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できる蓄熱放熱システムの提供。
【解決手段】循環路2には、熱供給装置4の排熱を搬送する冷却水A2にて循環路2を通流する蓄熱水A1を加熱する排熱熱交換器5、及び、その排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1を放熱させる放熱用熱交換器6が設けられ、蓄熱槽1から循環路2に取り出した蓄熱水A1を排熱熱交換器5をバイパスさせて放熱用熱交換器6に通流させる排熱熱交換器バイパス路13が設けられ、蓄熱水循環手段3が、蓄熱槽1から取り出した蓄熱水A1の全量を排熱熱交換器5に通流させる形態で蓄熱水A1を循環させる全通流状態と、蓄熱槽1から取り出した蓄熱水A1の一部を排熱熱交換器バイパス路13に通流させる形態で蓄熱水A1を循環させる一部通流状態とに切換自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、その蓄熱槽から取り出した蓄熱水を循環路にて循環させて前記蓄熱槽に戻す蓄熱水循環手段とが設けられ、前記循環路には、熱供給装置の排熱を搬送する排熱搬送流体にて前記循環路を通流する蓄熱水を加熱する排熱熱交換器、及び、その排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水を放熱させる放熱用熱交換器が設けられている蓄熱放熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような蓄熱放熱システムでは、排熱熱交換器にて蓄熱水と排熱搬送流体との熱交換により蓄熱水を加熱し、その加熱された蓄熱水を放熱用熱交換器にて放熱して給湯や暖房等に利用することにより、蓄熱槽に蓄熱された熱及び熱供給装置の排熱を用いながら給湯や暖房等を行うようにしている。
【0003】
従来の蓄熱放熱システムでは、循環路に、排熱搬送流体としての冷却水にて蓄熱水を過熱する排熱熱交換器、その排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水を加熱する加熱作動を実行可能な補助加熱手段、及び、補助加熱手段を通過した後の蓄熱水を熱消費端末との間で循環される熱媒に放熱させる放熱用熱交換器が設けられ、蓄熱水循環手段は、蓄熱槽の下部から取り出した蓄熱水の全量を排熱熱交換器に通流させる形態で蓄熱水を循環させるように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−264011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の蓄熱放熱システムでは、排熱熱交換器において蓄熱槽から取り出した蓄熱水の全量と排熱搬送流体とが熱交換されるので、蓄熱水の温度及び流量と排熱搬送流体の温度及び流量とが互いに影響を及ぼし合いながら熱交換される。例えば、排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水及び流量を熱供給装置での排熱回収に適した範囲内とする場合には、排熱搬送流体の温度及び流量の状況に応じて排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の温度又は流量を制限しなければならず、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を供給できない虞がある。ちなみに、放熱用熱交換器に蓄熱水を供給する場合、放熱用熱交換器にて要求されている流量よりも温度を優先するので、排熱搬送流体の温度及び流量の状況に応じて排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限することになり、放熱用熱交換器にて要求されている流量の蓄熱水を供給できない虞がある。
【0006】
放熱用熱交換器にて要求されている放熱量とは、放熱用熱交換器における放熱を適正に行う為のものであり、放熱用熱交換器に供給する蓄熱水の温度と蓄熱水の流量とが求められる。例えば、放熱用熱交換器での放熱対象を給湯用の給水とすると、給湯設定温度の湯水を十分な流量で給湯できるように、放熱用熱交換器に供給する蓄熱水の温度と蓄熱水の流量とが求められる。したがって、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を供給できなくなると、放熱用熱交換器での放熱を適正に行えない虞がある。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できる蓄熱放熱システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る蓄熱放熱システムの第1特徴構成は、蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、その蓄熱槽から取り出した蓄熱水を循環路にて循環させて前記蓄熱槽に戻す蓄熱水循環手段とが設けられ、前記循環路には、熱供給装置の排熱を搬送する排熱搬送流体にて前記循環路を通流する蓄熱水を加熱する排熱熱交換器、及び、その排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水を放熱させる放熱用熱交換器が設けられている蓄熱放熱システムであって、
前記蓄熱槽から前記循環路に取り出した蓄熱水を前記排熱熱交換器をバイパスさせて前記放熱用熱交換器に通流させる排熱熱交換器バイパス路が設けられ、前記蓄熱水循環手段が、前記蓄熱槽から取り出した蓄熱水の全量を前記排熱熱交換器に通流させる形態で蓄熱水を循環させる全通流状態と、前記蓄熱槽から取り出した蓄熱水の一部を前記排熱熱交換器バイパス路に通流させる形態で蓄熱水を循環させる一部通流状態とに切換自在に構成されている点にある。
【0009】
すなわち、蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換えた場合には、蓄熱槽から取り出した蓄熱水の全量を排熱熱交換器にて加熱して放熱用熱交換器に供給できる。この場合に、排熱搬送流体の温度及び流量の状況に応じて排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限することにより、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できなくなると、蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換えることができる。蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換えた場合には、蓄熱槽から取り出した蓄熱水を排熱熱交換器に通流させるだけでなく排熱熱交換器バイパス路にも通流させ、排熱熱交換器バイパス路に通流させる蓄熱水にて放熱用熱交換器にて要求されている流量の不足分を補うことができる。そして、放熱用熱交換器には、排熱熱交換器にて加熱された蓄熱水と排熱熱交換器バイパス路を通流した蓄熱水とが混合されて供給されるので、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できる。
したがって、排熱搬送流体の温度及び流量の状況に応じて排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限しなければならない場合でも、放熱用熱交換器にて要求されている放熱量を有する蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できる蓄熱放熱システムを提供できるに至った。
【0010】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第2特徴構成は、前記排熱熱交換器バイパス路には、通流する蓄熱水を加熱する加熱作動を実行可能な補助加熱手段が設けられている点にある。
【0011】
すなわち、蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換えた場合に、補助加熱手段が加熱作動を実行することにより、排熱熱交換器にて加熱された蓄熱水と排熱熱交換器バイパス路を通流して補助加熱手段にて加熱された蓄熱水とを混合させて放熱用熱交換器に高い温度の蓄熱水を供給することができる。したがって、放熱用熱交換器に供給する蓄熱水の温度が高い温度を要求されている場合でも、蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換え且つ補助加熱手段が加熱作動を実行することにより、その要求されている高い温度の蓄熱水を供給できる。
【0012】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第3特徴構成は、前記蓄熱水循環手段が、前記蓄熱槽の上部から蓄熱水を取り出して前記蓄熱槽の下部に蓄熱水を戻すように構成され、前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態に切り換えて前記熱供給装置の排熱を前記蓄熱槽に蓄熱する蓄熱運転、及び、前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態又は前記一部通流状態に切り換え且つ前記補助加熱手段を加熱作動させるか否かを制御して前記放熱用熱交換器にて前記蓄熱水を放熱させる放熱運転を実行可能な運転制御手段が設けられている点にある。
【0013】
すなわち、運転制御手段が、蓄熱水循環手段を全通流状態又は一部通流状態に切り換え且つ補助加熱手段を加熱作動させるか否かを制御する放熱運転を行うことにより、放熱用熱交換器に対して要求されている温度及び流量の蓄熱水を供給することができ、放熱用熱交換器での放熱を適正に行うことができる。
運転制御手段が、蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換える蓄熱運転を行うことにより、蓄熱槽の上部から取り出した蓄熱水の全量を排熱熱交換器にて加熱し、加熱された高温の蓄熱水を蓄熱槽の下部に戻すことができる。したがって、蓄熱槽の下部に戻される高温の蓄熱水によって、蓄熱槽に貯留している蓄熱水を全体的に温度上昇させて蓄熱できる。このように、あらたな構成を追加するのではなく、単に、蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換えるだけの簡素な構成によって、熱供給装置の排熱を蓄熱槽に蓄熱できる。
したがって、放熱用熱交換器での放熱を適正に行うことができることに加えて、構成の簡素化を図りながら、熱供給装置の排熱を蓄熱槽に蓄熱できる。
【0014】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第4特徴構成は、前記排熱搬送流体としての冷却水を前記排熱熱交換器と前記熱供給装置との間で循環させる冷却水循環手段と、前記循環路にて前記排熱熱交換器に通流する蓄熱水の流量を調整自在な蓄熱水流量調整手段とが設けられ、前記運転制御手段が、前記冷却水循環手段にて前記排熱熱交換器から前記熱供給装置に戻す冷却水の温度が設定温度範囲内になるように、前記蓄熱水流量調整手段にて前記排熱熱交換器に通流する蓄熱水の流量を調整する蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている点にある。
【0015】
すなわち、排熱搬送流体が、エンジンや燃料電池等の熱供給装置における冷却水であるので、排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の温度及び流量が当該熱供給装置の冷却に適した範囲内とすることが求められる。排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の水量については、例えば、冷却水循環手段が排熱熱交換器と熱供給装置との間で循環する冷却水の水量を当該熱供給装置の冷却に適した一定量とする等により、排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の水量を当該熱供給装置の冷却に適した範囲内とできる。そこで、運転制御手段が、蓄熱運転や放熱運転を実行するときに、蓄熱水流量調整制御を行うことにより、蓄熱運転や放熱運転を行いながら、排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の温度を設定温度範囲内とすることにより、排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の温度についても当該熱供給装置の冷却に適した範囲内とできる。このように、排熱熱交換器から熱供給装置に戻す冷却水の温度及び流量の条件を当該熱供給装置の冷却に適したものとしながらも、蓄熱槽の蓄熱及び放熱用熱交換器での放熱を適正に行うことができる。
【0016】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第5特徴構成は、前記運転制御手段が、前記放熱運転において前記蓄熱水流量調整制御を行った場合に、前記放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できるときには、前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態に切り換え、且つ、前記放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できないときには、前記蓄熱水循環手段を前記一部通流状態に切り換えるように構成されている点にある。
【0017】
すなわち、運転制御手段が、放熱運転において蓄熱水流量調整制御を行うと、排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限することにより、要求されている流量の蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できなくなる場合がある。そこで、放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できるときには、運転制御手段が蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換えて、蓄熱槽から取り出した蓄熱水の全量を排熱熱交換器に通流させながら、放熱用熱交換器に対して蓄熱水を供給できる。放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できないときには、運転制御手段が蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換えて、排熱熱交換器バイパス路に通流させる蓄熱水にて要求されている流量の不足分を補いながら、放熱用熱交換器に対して蓄熱水を供給できる。
このようにして、運転制御手段が、蓄熱水循環手段を全通流状態と一部通流状態とに的確に切り換えながら放熱運転を実行できるので、放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を確実に供給できる。
【0018】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第6特徴構成は、前記運転制御手段が、前記放熱運転において前記蓄熱水循環手段を前記一部通流状態に切り換えた場合に、前記放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を供給できるときには前記補助加熱手段を加熱作動させず、且つ、前記放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を供給できないときには前記補助加熱手段を加熱作動させるように構成されている点にある。
【0019】
すなわち、運転制御手段が、放熱運転において蓄熱水循環手段を一部通流状態に切り換えた場合に、排熱熱交換器にて蓄熱水を加熱するだけで要求されている温度の蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できるときには補助加熱手段を加熱作動させず、排熱熱交換器にて蓄熱水を加熱するだけでは要求されている温度の蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できないときにだけ補助加熱手段を加熱作動させる。したがって、熱供給装置の排熱を有効に活用して蓄熱水を加熱しながら補助加熱手段にて補助的に蓄熱水を加熱して、省エネルギー化を図りながら、放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を確実に供給できる。
【0020】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第7特徴構成は、前記循環路において前記蓄熱槽の下部に蓄熱水を戻す戻し部分と前記蓄熱槽の上部から蓄熱水を取り出す取り出し部分とを接続する蓄熱槽バイパス路と、前記放熱用熱交換器を通過した後の蓄熱水の少なくとも一部を前記蓄熱槽バイパス路に通流させる通流作動を実行可能な蓄熱槽バイパス路通流手段とが設けられ、前記運転制御手段が、前記放熱運転において、前記蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させるか否かを制御するように構成されている点にある。
【0021】
すなわち、蓄熱槽から取り出した蓄熱水の温度が低い場合には、運転制御手段が蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させることにより、蓄熱槽から取り出した蓄熱水に蓄熱槽バイパス路からの蓄熱水を混合させて、排熱熱交換器に通流する蓄熱水の温度を上昇させることができる。したがって、蓄熱槽に蓄熱された熱の消費を抑えながら、放熱用熱交換器を通過した後の蓄熱水が有する熱を有効に活用して、放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を供給できる。
また、蓄熱槽から取り出した蓄熱水の温度が高い場合には、排熱搬送流体の温度及び流体の状況に応じて排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限して、蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換えていると、放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できない虞がある。そこで、このような場合でも、運転制御手段が蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させることにより、蓄熱槽から取り出した蓄熱水に蓄熱槽バイパス路からの蓄熱水を混合させて、排熱熱交換器に通流する蓄熱水の温度を低下させることができる。その蓄熱水の温度低下により、排熱熱交換器に通流させる蓄熱水の流量を制限してしまうのを抑制でき、蓄熱水循環手段を全通流状態に切り換えたまま、放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できることになる。
【0022】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第8特徴構成は、前記放熱用熱交換器として、給湯路に供給される給湯用の給水を蓄熱水の放熱対象とする給湯用熱交換器、浴槽との間で循環される浴槽水を蓄熱水の放熱対象とする追焚き用熱交換器、及び、暖房対象空間の室内空気を放熱対象とする暖房用放熱器の少なくとも一つが設けられている点にある。
【0023】
すなわち、給湯用熱交換器では、蓄熱水にて給湯用の給水を加熱することができ、その加熱された給水を給湯路にて給湯して給湯を行うことができる。追焚き用熱交換器では、蓄熱水にて浴槽水を加熱することができ、その加熱された浴槽水を浴槽に供給することにより追焚きを行うことができる。暖房用放熱器では、蓄熱水にて暖房対象空間の室内空気を加熱することができ、暖房対象空間の暖房を行うことができる。
このように、熱供給装置の排熱にて加熱した蓄熱水を用いて、熱供給装置の排熱を有効に活用しながら、給湯、追焚きや暖房を行うことができる。
【0024】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第9特徴構成は、前記給湯用熱交換器と前記追焚き用熱交換器とが、前記追焚き用熱交換器を通過した後の蓄熱水が前記給湯用熱交換器に通流するように直列状態で設けられ、前記給湯用熱交換器及び前記追焚き用熱交換器の何れか一方又は両方と前記暖房用放熱器とが並列状態で設けられている点にある。
【0025】
すなわち、追焚き用熱交換器を通過した後の蓄熱水が給湯用熱交換器に通流するので、給湯用熱交換器よりも追焚き用熱交換器に高温の蓄熱水を供給することができる。追焚き用熱交換器では、給湯用熱交換器よりも高温の蓄熱水が要求されているので、その要求に応えながら、追焚き用熱交換器及び給湯用熱交換器の夫々に蓄熱水を供給できる。
また、暖房用放熱器は、給湯用熱交換器及び追焚き用熱交換器とは並列状態で設けられているので、暖房用放熱器に供給する蓄熱水は、給湯用熱交換器及び追焚き用熱交換器の夫々における放熱とは無関係に暖房用放熱器に蓄熱水を供給できる。したがって、暖房用放熱器に対しては要求されている温度の蓄熱水を確実に供給することができ、暖房対象空間の暖房を的確に行うことができる。
【0026】
本発明に係る蓄熱放熱システムの第10特徴構成は、前記給湯用熱交換器と前記追焚き用熱交換器とが、並列状態で設けられている点にある。
【0027】
すなわち、給湯用熱交換器と追焚き用熱交換器とを直列状態で設けるものと比べて、給湯用熱交換器において蓄熱水から給湯用の給水に放熱するときには、蓄熱水を給湯用熱交換器に通流させるだけでよい。追焚き用熱交換器において蓄熱水から浴槽水に放熱するときにも、蓄熱水を追焚き用熱交換器に通流させるだけでよい。したがって、給湯用熱交換器及び追焚き用熱交換器において蓄熱水の放熱を行うときに、蓄熱水を循環させる際の圧力損失を極力小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る蓄熱放熱システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この蓄熱放熱システムは、図1〜図8に示すように、蓄熱水A1としての水を貯留する蓄熱槽1と、その蓄熱槽1から取り出した蓄熱水A1を循環路2にて循環させて蓄熱槽1に戻す蓄熱水循環手段3とを設けている。循環路2には、熱供給装置4の排熱を搬送する排熱搬送流体にて循環路2を通流する蓄熱水A1を加熱する排熱熱交換器5、及び、その排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1を放熱させる放熱用熱交換器6が設けられている。
図1〜図8では、流体が通流する部分を太線にて示している。そして、図1〜図8は、流体が通流する部分が異なるだけでその他の構成については同様の構成を示している。
【0029】
熱供給装置4は、例えば、都市ガスを燃料とするガスエンジンや燃料電池を備えた熱電併給装置であり、排熱搬送流体としての冷却水A2がガスエンジンや燃料電池での排熱を回収するように構成されている。排熱熱交換器5と熱供給装置4との間で冷却水A2を循環する冷却水循環路7が設けられ、この冷却水循環路7に冷却水循環手段としての冷却水循環ポンプ8が設けられている。
冷却水循環路7には、熱供給装置4から排熱熱交換器5に供給する冷却水A2の温度を検出する冷却水往き温度センサ9、熱供給装置4から排熱熱交換器6に供給する冷却水A2の流量を検出する冷却水流量センサ10、及び、排熱熱交換器6から熱供給装置4に戻す冷却水A2の温度を検出する冷却水戻り温度センサ11が設けられている。
【0030】
蓄熱槽1は、貯留する蓄熱水A1の上面よりも高い位置に大気に通じる開口を有する大気開放型に構成されている。図示は省略するが、蓄熱槽1に蓄熱水A1を補給するために補給路及び補給弁が設けられ、下限水位センサにて蓄熱水A1の水位が下限水位未満になったことを検出すると、補給弁を開弁して補給路にて蓄熱槽1に蓄熱水A1を補給する。そして、上限水位センサにて蓄熱水A1の水位が上限水位になったことを検出すると、補給弁を閉弁して補給路にて蓄熱槽1への蓄熱水A1の補給を停止する。
【0031】
循環路2は、蓄熱槽1の上部及び下部に接続されており、蓄熱水循環手段3は、蓄熱槽1の上部から蓄熱水A1を取り出して蓄熱槽1の下部に蓄熱水A1を戻すように構成されている。
蓄熱槽1から循環路2に取り出した蓄熱水A1を排熱熱交換器5をバイパスさせて放熱用熱交換器6に通流させる排熱熱交換器バイパス路13が設けられている。この排熱熱交換器バイパス路13には、蓄熱水A1を通流させるか否か及びその流量を調整可能なバイパス路調整弁18が設けられている。
【0032】
蓄熱水循環手段3は、蓄熱水循環ポンプ12及びバイパス路調整弁18を備えて構成されている。蓄熱水循環手段3は、蓄熱槽1から取り出した蓄熱水A1の全量を排熱熱交換器5に通流させる形態で蓄熱水A1を循環させる全通流状態(例えば図2の太線部)と、蓄熱槽1から取り出した蓄熱水A1の一部を排熱熱交換器バイパス路13に通流させる形態で蓄熱水A1を循環させる一部通流状態(例えば図3の太線部)とに切換自在に構成されている。つまり、蓄熱水循環手段3は、バイパス路調整弁18を閉弁した状態で蓄熱水循環ポンプ12を作動させることにより、全通流状態に切り換える。また、蓄熱水循環手段3は、バイパス路調整弁18を開弁した状態で蓄熱水循環ポンプ12を作動させることにより、一部通流状態に切り換える。
【0033】
排熱熱交換器バイパス路13には、通流する蓄熱水A1を加熱する加熱作動を実行可能な補助加熱手段14が設けられている。補助加熱手段14は、ガスバーナ15を燃焼させて蓄熱水A1を加熱するように構成されている。ガスバーナ15に都市ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給路16には、ガスバーナ15に燃料ガスを供給するか否か及びその燃料ガス供給量を調整自在な燃料ガス調整弁17が設けられている。補助加熱手段14は、燃料ガス調整弁17を開弁してガスバーナ15を燃焼させることにより加熱作動を実行可能に構成されている。
【0034】
循環路2には、蓄熱水A1の通流方向の上流側から、蓄熱槽1から取り出す蓄熱水A1の温度を検出する第1蓄熱水温度センサ25、排熱熱交換器バイパス路13との接続箇所に通流する蓄熱水A1の温度を検出する第2蓄熱水温度センサ26、蓄熱水循環ポンプ12、排熱熱交換器5に通流する蓄熱水A1の流量を調整自在な蓄熱水流量調整手段としての第1蓄熱水流量調整弁27、排熱熱交換器5、放熱用熱交換器6としての追焚き用熱交換器23、追焚き用熱交換器23を通過した後の蓄熱水A1の温度を検出する第3蓄熱水温度センサ28、放熱用熱交換器6としての給湯用熱交換器21、給湯用熱交換器21を通過する蓄熱水A1の流量を検出する蓄熱水流量センサ29、給湯用熱交換器21を通過する蓄熱水A1の流量を調整自在な第2蓄熱水流量調整弁30が設けられている。
【0035】
給湯用熱交換器21は、給水路19から供給されて給湯路20に供給する給湯用の給水A3を蓄熱水A1の放熱対象とするように構成されている。給水路19には、給湯用熱交換器21に供給する給水温度を検出する給水温度センサ31が設けられている。給湯路20には、給湯用の給水A3の通流方向において上流側から、給湯用熱交換器21を通過する給湯用の給水A3の流量を調整自在な給湯流量調整弁32、給湯用熱交換器21を通過した後の給湯用の給水A3の温度を検出する出口温度センサ33、給湯路20にて給湯する給湯量を検出する給湯量センサ34、及び、給湯路20にて給湯する給湯温度を検出する給湯温度センサ35が設けられている。
また、給水路19からの給湯用の給水A3を給湯用熱交換器21をバイパスして給湯路20に供給する給湯用バイパス路36が設けられ、その給湯用バイパス路36を通流する給水A3の流量を調整自在なバイパス流量調整弁37が設けられている。
このようにして、給湯用熱交換器21にて加熱された給湯用の給水A3と給湯用バイパス路26からの給湯用の給水A3とを混合させて給湯路20にて給湯するように構成されている。
【0036】
追焚き用熱交換器23は、追焚き用熱交換器23を通過した後の蓄熱水A1が給湯用熱交換器21に通流するように給湯用熱交換器21と直列状態で設けられている。追焚き用熱交換器23は、浴槽22との間で浴槽水A4を蓄熱水A1の放熱対象とするように構成されている。
浴槽22と追焚き用熱交換器23との間で浴槽水A4を循環する浴槽水循環路38が設けられている。この浴槽水循環路38には、浴槽22から追焚き用熱交換器23に供給する浴槽水A4の温度を検出する浴槽水温度センサ39、及び、浴槽水循環ポンプ40が設けられている。
【0037】
放熱用熱交換器6としては、給湯用熱交換器21及び追焚き用熱交換器23に加えて、暖房対象空間の室内空気を放熱対象とする暖房用放熱器24が設けられている。この暖房用放熱器24は、例えば床暖房パネルであり、浴室暖房装置等も適応可能である。
暖房用放熱器24は、給湯用熱交換器21及び追焚き用熱交換器23と並列状態で設けられている。つまり、循環路2において給湯用熱交換器21及び追焚き用熱交換器23が設けられた部分とは並列状態で暖房用通流路41が設けられ、この暖房用通流路41に暖房用放熱器24が設けられている。暖房用通流路41は、排熱熱交換器バイパス路13の途中部分から分岐して循環路2に合流するように設けられ、排熱熱交換器バイパス路13の一部を兼用している。
暖房用通流路41には、蓄熱水A1の通流方向の上流側から、暖房用放熱器24に供給する蓄熱水A1の温度を検出する暖房往き温度センサ42、暖房用放熱器24に蓄熱水A1を供給するか否かを調整自在な熱動弁43、及び、蓄熱水A1の逆流を防止する暖房用逆止弁44が設けられている。
【0038】
循環路2において蓄熱槽1の下部に蓄熱水A1を戻す戻し部分2aと蓄熱槽1の上部から蓄熱水A1を取り出す取り出し部分2bとを接続する蓄熱槽バイパス路45が設けられている。蓄熱槽バイパス路45には、通流する蓄熱水A1の温度を検出するバイパス温度センサ46、及び、蓄熱槽バイパス路45に蓄熱水A1を通流させるか否かを調整自在な蓄熱槽バイパス路通流手段としての蓄熱水戻し調整弁47が設けられている。そして、蓄熱槽バイパス路通流手段は、蓄熱水戻し調整弁47を開弁させることにより、放熱用熱交換器6を通過した後の蓄熱水A1の少なくとも一部を蓄熱槽バイパス路45に通流させる通流作動を実行可能に構成されている。
【0039】
この蓄熱放熱システムの運転を制御する運転制御手段としての運転制御装置48が設けられている。運転制御装置48は、冷却水A2にて搬送される熱供給装置4の排熱を蓄熱槽1に蓄熱する蓄熱運転、及び、放熱用熱交換器6にて蓄熱水A1を放熱させる放熱運転を実行可能に構成されている。運転制御装置48は、放熱運転として、給湯用熱交換器21にて蓄熱水A1を放熱させる給湯運転、追焚き用熱交換器23にて蓄熱水A1を放熱させる追焚き運転、及び、暖房用放熱器24にて蓄熱水A1を放熱させる暖房運転の夫々を実行可能に構成されている。
以下、各運転における動作について説明する。
【0040】
(蓄熱運転)
この蓄熱運転は、熱供給装置4の排熱を蓄熱槽1に蓄熱すべきときに行えばよく、どのようなときに実行するかは適宜変更が可能である。
例えば、運転制御装置48は、過去の実績等に基づいて求めたその日一日に必要となる必要放熱量と現在の蓄熱量とを比較して、必要放熱量が現在の蓄熱量よりも多いときには、熱供給装置4の排熱を蓄熱槽1に蓄熱すべきときであるとして、蓄熱運転を実行する。現在の蓄熱量については、各蓄熱水温度センサ25,29,46の検出情報及び蓄熱水流量センサ29の検出情報等により前回蓄熱運転を終了してから放熱用熱交換器6にて放熱された放熱量、並びに、外気温度や経過時間等から想定される蓄熱槽2での放熱量に基づいて求めることができる。
また、この実施形態では、熱供給装置4を熱電併給装置としているので、暖房の需要が多い冬季等には、電力の需要があると常時蓄熱運転を実行するようにすることもできる。
【0041】
図1に示すように、運転制御装置48は、熱供給装置4を作動させ且つ冷却水循環ポンプ8を作動させて、排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるように構成されている。運転制御装置48は、第1蓄熱水流量調整弁27及び第2蓄熱水流量調整弁30を開弁させ且つバイパス路調整弁18を閉弁した状態で蓄熱水循環ポンプ8を作動させることにより、蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換えるように構成されている。運転制御装置48は、冷却水戻り温度センサ11の検出温度が設定温度範囲内になるように、第1蓄熱水流量調整弁27の開度を調整して排熱熱交換器5に通流する蓄熱水A1の流量を調整する蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。
このようにして、蓄熱槽1の上部から取り出された蓄熱水A1の全量が排熱熱交換器5にて加熱されて蓄熱槽1の下部に戻される。その加熱された蓄熱水A1によって、蓄熱槽1に貯留された蓄熱水A1を全体的に温度上昇させて蓄熱槽1に蓄熱する。
【0042】
運転制御装置48は、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が蓄熱完了設定温度になると、蓄熱運転を終了する。このときの蓄熱完了設定温度は、適宜変更が可能であるが、例えば、夏季等必要放熱量が小さいときには55℃と設定し、冬季等必要放熱量が大きいときには75℃と設定することができる。
そして、運転制御装置48は、一旦、熱供給装置4を作動させると、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が蓄熱完了設定温度以上になるまで熱供給装置4の作動を継続させるように構成されている。
【0043】
(給湯運転)
図2では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第1設定温度(例えば、60℃)よりも高いときに熱供給装置4を作動させずに給湯運転を行う場合を示している。
運転制御装置48が、蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換えるとともに、出口温度センサ33の検出温度が給湯設定温度+αになるように、蓄熱水流量センサ29の検出流量に基づいて第2蓄熱水流量調整弁30の開度を調整する給湯温度用蓄熱水流量制御を行うように構成されている。また、運転制御装置48は、給湯量センサ34の検出流量が要求されている給湯量となり且つ給湯温度センサ35の検出温度が給湯設定温度になるように、給湯流量調整弁32及びバイパス流量調整弁37の開度を調整する給湯制御を行うように構成されている。
【0044】
図3では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第1設定温度よりも高いときに熱供給装置4を作動させて給湯運転を行う場合を示している。
運転制御装置48が、冷却水循環ポンプ8を作動させて排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるとともに蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。また、図2で示した場合と同様に、運転制御装置48は、給湯温度用蓄熱水流量制御、及び、給湯制御を行うように構成されている。
そして、蓄熱水循環手段3については、蓄熱水流量センサ29の検出流量が給湯用熱交換器21にて要求されている流量を満たすときには、運転制御装置48が蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換え、蓄熱水流量センサ29の検出流量が給湯用熱交換器21にて要求されている流量に満たないときには、運転制御装置48がバイパス路調整弁18を開弁して蓄熱水循環手段3を一部通流状態に切り換えるように構成されている。図3では、蓄熱水循環手段3を一部通流状態に切り換えた場合を示している。
【0045】
図4では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第1設定温度よりも高い第2設定温度(例えば、75℃)以上のときに熱供給装置4を作動させて給湯運転を行う場合を示している。
運転制御装置48が、蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換え、冷却水循環ポンプ8を作動させて排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるとともに、蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。また、図2で示した場合と同様に、運転制御装置48は、給湯温度用蓄熱水流量制御、及び、給湯制御を行うように構成されている。
この場合には、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第2設定温度(例えば、75℃)以上であるので、蓄熱水流量調整制御を行っても、冷却水戻り温度センサ11の検出温度が設定温度範囲よりも高くなってしまう場合がある。そこで、運転制御装置48は、蓄熱水戻し調整弁47を開弁して蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させ、蓄熱槽1の上部から取り出した高温の蓄熱水A1に蓄熱槽バイパス路45からの低温の蓄熱水A1を混合させて排熱熱交換器5に通流する蓄熱水A1の温度を低下させるように構成されている。
【0046】
図5では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第1設定温度(例えば、60℃)以下のときに熱供給装置4を作動させて給湯運転を行う場合を示している。
運転制御装置48が、第1蓄熱水流量調整弁27、第2蓄熱水流量調整弁30、及び、バイパス路調整弁18の夫々を開弁して蓄熱水循環手段3を一部通流状態に切り換え、冷却水循環ポンプ8を作動させて排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるとともに、蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。そして、運転制御装置48は、燃料ガス調整弁18を開弁させて補助加熱手段14を加熱作動させるように構成されている。また、図2で示した場合と同様に、運転制御装置48は、給湯温度用蓄熱水流量制御、及び、給湯制御を行うように構成されている。
【0047】
熱供給装置4を作動させて給湯運転を行う場合に、図3〜図5の夫々に示した各状態の切り換えについて説明する。
まず、蓄熱槽1に第2設定温度以上の蓄熱水A1が蓄熱されている場合には、図4に示した状態により給湯運転を行う。この給湯運転を行うことにより第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が低下して、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第2設定温度未満になると、図4に示した状態から図3に示した状態に切り換えて給湯運転を行う。この給湯運転を行うことにより第1蓄熱水温度センサ25の検出温度がさらに低下して、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が第1設定温度未満になると、図3に示した状態から図5に示した状態に切り換えて給湯運転を行う。
このようにして、図3〜図5の夫々に示した各状態を切り換えていくのであるが、図3及び図4の夫々に示した状態のように、補助加熱手段14を加熱作動させずに熱供給装置4の排熱のみによって給湯運転を極力行いながら、図5に示した状態のように、熱供給装置4の排熱だけでは給湯負荷を賄えないときのみ補助加熱手段14を加熱作動させるようにしている。したがって、熱供給装置4の排熱を有効に活用して省エネルギー化を図りながら、給湯を行うことができる。また、蓄熱水A1の温度が第1設定温度(例えば、60℃)以上の場合、蓄熱水A1を補助加熱手段14に通流させないことにより、補助加熱手段14での放熱を防ぐことができる。
【0048】
(追焚き運転)
追焚き運転では、運転制御装置48が、浴槽水循環ポンプ40を作動させることにより、浴槽22から追焚き用熱交換器23に浴槽水A4を供給させて追焚き用熱交換器23にて浴槽水A4を加熱して、その加熱された浴槽水A4を浴槽22に戻すように構成されている。そして、追焚き運転は、追焚き用熱交換器23にて蓄熱水A1を放熱させる動作が給湯運転と異なるだけである。
つまり、図2〜図5に示した給湯運転の各状態において、給湯用の給水A3を給湯用熱交換器21に通流させるのに代えて、図6に示すように、浴槽水A4を追焚き用熱交換器23に通流させるようにしている。図6に示す状態は、図5に示す状態に対応するものであり、図示はしないが、追焚き運転においても、図2〜図4の各状態に対応する状態がある。
【0049】
この追焚き運転では、給湯運転における第1設定温度及び第2設定温度を追焚き設定温度に基づいて変更設定することができる。
運転制御装置48は、浴槽水温度センサ39の検出温度が追焚き用設定温度になるまで追焚き運転を継続し、浴槽水温度センサ39の検出温度が追焚き用設定温度以上になると追焚き運転を終了するように構成されている。
【0050】
この追焚き運転においても、上述の給湯運転と同様に、補助加熱手段14を加熱作動させずに熱供給装置4の排熱のみによって追焚き運転を極力行いながら、熱供給装置4の排熱だけでは給湯負荷を賄えないときのみ補助加熱手段14を加熱作動させるようにしているので、熱供給装置4の排熱を有効に活用して省エネルギー化を図りながら、浴槽水A4の追焚きを行うことができる。
【0051】
(給湯・追焚き同時運転)
運転制御装置48は、給湯運転と追焚き運転とを同時に行う給湯・追焚き同時運転を実行可能に構成されている。
この給湯・追焚き同時運転では、運転制御装置48が、上述の給湯運転と上述の追焚き運転とを同時に行う。例えば、図5に示す状態の給湯運転と図6に示す状態の追焚き運転とを同時に行うことになる。
【0052】
(暖房運転)
図7では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が暖房用蓄熱水設定温度(例えば、60℃)以上のときに熱供給装置4を作動させて暖房運転を行う場合を示している。
運転制御装置48が、第1蓄熱水流量調整弁27を開弁し且つ第2蓄熱水流量調整弁30及びバイパス路調整弁18の夫々を閉弁して蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換え、冷却水循環ポンプ8を作動させて排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるとともに、蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。このときには、第2蓄熱水流量調整弁30を閉弁しているので、排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1は、排熱熱交換器バイパス路13に通流したのち暖房用通流路41に通流して暖房用放熱器24に通流する。この場合には、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が暖房用蓄熱水設定温度(例えば、60℃)以上であるので、蓄熱水流量調整制御を行っても、冷却水戻り温度センサ11の検出温度が設定温度範囲よりも高くなってしまう場合がある。そこで、運転制御装置48は、蓄熱水戻し調整弁47を開弁して蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させ、蓄熱槽1の上部から取り出した高温の蓄熱水A1に蓄熱槽バイパス路45からの低温の蓄熱水A1を混合させて排熱熱交換器5に通流する蓄熱水A1の温度を低下させるように構成されている。
【0053】
運転制御装置48は、熱動弁43を開弁して暖房用放熱器24に蓄熱水A1を通流させる通流状態を設定開弁時間(例えば、3分)継続した後、熱動弁43を閉弁して暖房用放熱器24に対する蓄熱水A1の通流を停止させる通流停止状態を設定閉弁時間(例えば、17分)の間継続させる動作を設定周期(例えば、20分)で繰り返し行うように構成されている。そして、運転制御装置48は、通流停止状態を設定閉弁時間(例えば、17分)の間継続させているときに、図1に示すように、第2蓄熱水流量調整弁30を開弁させて排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1を蓄熱槽1の下部に戻すことにより蓄熱槽1への蓄熱を行うように構成されている。このようにして、熱供給装置4の排熱を有効に活用して、暖房運転を行いながら蓄熱運転を間欠的に行うことができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0054】
このように、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が暖房用蓄熱水設定温度(例えば、60℃)以上のときには、補助加熱手段14を加熱作動させずに熱供給装置4の排熱のみによって暖房運転を行うことができ、熱供給装置4の排熱を有効に活用して省エネルギー化を図りながら、暖房対象空間の暖房を行うことができる。
【0055】
また、図7には示していないが、暖房用放熱器24近傍に、蓄熱槽1の上部から取り出した高温の蓄熱水A1を他の経路を介さずに直接通流させる熱交換器を別途設けることにより、当該熱交換器と暖房用放熱器24内とを通流する蓄熱水A1から放熱する構成を加えてもよい。このような構成を加えることで、当該熱交換器と暖房用放熱器24内とに通流させる蓄熱水A1の流量や通流させるか否かを制御する等により、暖房運転をさらに一層制御し易くすることができる。
【0056】
図8では、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が暖房用蓄熱水設定温度(例えば、60℃)未満のときに熱供給装置4を作動させて暖房運転を行う場合を示している。
図7にて説明したのと同様に、運転制御装置48が、第1蓄熱水流量調整弁27を開弁し且つ第2蓄熱水流量調整弁30及びバイパス路調整弁18の夫々を閉弁して蓄熱水循環手段3を全通流状態に切り換え、冷却水循環ポンプ8を作動させて排熱熱交換器5に冷却水A2を通流させるとともに、蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている。この場合には、第1蓄熱水温度センサ25の検出温度が暖房用蓄熱水設定温度(例えば、60℃)未満であるので、暖房往き温度センサ42の検出温度が暖房設定温度(例えば、60℃)に満たない場合がある。そこで、運転制御装置48は、蓄熱水戻し調整弁47を開弁して蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させ、蓄熱槽1の上部から取り出した低温の蓄熱水A1に蓄熱槽バイパス路45からの高温の蓄熱水A1を混合させて排熱熱交換器5に通流する蓄熱水A1の温度を上昇させるように構成されている。また、運転制御装置48は、この通流作動を行っても暖房往き温度センサ42の検出温度が暖房設定温度(例えば、60℃)に満たないときには、バイパス路調整弁18を開弁して蓄熱水循環手段3を一部通流状態に切り換えるとともに、燃料ガス調整弁18を開弁させて補助加熱手段14を加熱作動させるように構成されている。
【0057】
この場合も、図7にて説明したのと同様に、運転制御装置48は、通流状態を設定開弁時間(例えば、3分)継続した後、通流停止状態を設定閉弁時間(例えば、17分)の間継続させる動作を設定周期(例えば、20分)で繰り返し行うように構成されている。そして、運転制御装置48は、通流停止状態を設定閉弁時間(例えば、17分)の間継続させているときに、図1に示すように、第2蓄熱水流量調整弁30を開弁させて排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1を蓄熱槽1の下部に戻すことにより蓄熱槽1への蓄熱を行うように構成されている。
【0058】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、排熱熱交換器バイパス路13に補助加熱手段14を設けているが、この補助加熱手段14を設けなくてもよい。
【0059】
(2)上記実施形態では、第1蓄熱水温度センサ25を循環路2に設けているが、例えば、蓄熱槽1の上部に直接設置することも可能である。
【0060】
(3)上記実施形態では、図2〜図5の夫々に例示した動作の何れかにて給湯運転を行うようにしているが、どのような動作にて給湯運転を行うかは適宜変更が可能である。また、追焚き運転及び暖房運転の夫々についても、どのような動作にて行うかは適宜変更が可能である。
【0061】
(4)上記実施形態では、給湯運転と追焚き運転については同時運転を実行可能であり、暖房運転については単独でしか運転できないようにしているが、暖房運転についても給湯運転及び追焚き運転の何れか一方又は両方と同時運転を実行可能とすることもできる。
例えば、図7において、第2蓄熱水流量調整弁30を開弁させることにより、排熱熱交換器5を通過した後の蓄熱水A1の一部を暖房用通流路41に通流させるとともに、残りの蓄熱水A1を追焚き用熱交換器23に通流させる。
【0062】
(5)上記実施形態では、放熱用熱交換器6として、給湯用熱交換器21、追焚き用熱交換器23、及び、暖房用放熱器24の3つを設けているが、放熱用熱交換器6の数については適宜変更が可能である。
【0063】
(6)上記実施形態では、給湯用熱交換器21と追焚き用熱交換器23とを直列状態で設けた例を示したが、給湯用熱交換器21と追焚き用熱交換器23とを並列状態で設けることも可能である。
例えば、図9に示すように、循環路2において給湯用熱交換器21が設けられた部分とは並列状態で追焚き用通流路49が設けられ、この追焚き用通流路49に追焚き用熱交換器23が設けられている。このようにして、給湯用熱交換器21と追焚き用熱交換器23と暖房用放熱器24との夫々を並列状態で設けることができる。追焚き用通流路49は、排熱熱交換器バイパス路13において暖房用通流路41の分岐箇所よりも下流側から分岐して循環路2に合流するように設けられ、排熱熱交換器バイパス路13の一部を兼用している。また、追焚き用通流路49には、追焚き用熱交換器23を通過する蓄熱水A1の流量を調整自在な追焚き用流量調整弁50が設けられている。図9では蓄熱運転の状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、蓄熱槽から取り出した蓄熱水を循環路にて循環させて蓄熱槽に戻す蓄熱水循環手段を設け、循環路には、熱供給装置の排熱を搬送する排熱搬送流体にて循環路を通流する蓄熱水を加熱する排熱熱交換器、及び、その排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水を放熱させる放熱用熱交換器を設け、要求されている温度及び流量の蓄熱水を放熱用熱交換器に供給できる各種の蓄熱放熱システムに適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】蓄熱運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図2】給湯運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図3】給湯運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図4】給湯運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図5】給湯運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図6】追焚き運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図7】暖房運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図8】暖房運転における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【図9】別実施形態における蓄熱放熱システムの状態を示す図
【符号の説明】
【0066】
1 蓄熱槽
2 循環路
3 蓄熱水循環手段
4 熱供給装置
5 排熱熱交換器
6 放熱用熱交換器
13 排熱熱交換器バイパス路
14 補助加熱手段
20 給湯路
21 給湯用熱交換器
22 浴槽
23 追焚き用熱交換器
24 暖房用放熱器
27 蓄熱水流量調整手段(第1蓄熱水流量調整弁)
45 蓄熱槽バイパス路
47 蓄熱槽バイパス路通流手段(蓄熱水戻し調整弁)
A1 蓄熱水
A2 排熱搬送流体としての冷却水
A3 給湯用の給水
A4 浴槽水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、その蓄熱槽から取り出した蓄熱水を循環路にて循環させて前記蓄熱槽に戻す蓄熱水循環手段とが設けられ、
前記循環路には、熱供給装置の排熱を搬送する排熱搬送流体にて前記循環路を通流する蓄熱水を加熱する排熱熱交換器、及び、その排熱熱交換器を通過した後の蓄熱水を放熱させる放熱用熱交換器が設けられている蓄熱放熱システムであって、
前記蓄熱槽から前記循環路に取り出した蓄熱水を前記排熱熱交換器をバイパスさせて前記放熱用熱交換器に通流させる排熱熱交換器バイパス路が設けられ、
前記蓄熱水循環手段が、前記蓄熱槽から取り出した蓄熱水の全量を前記排熱熱交換器に通流させる形態で蓄熱水を循環させる全通流状態と、前記蓄熱槽から取り出した蓄熱水の一部を前記排熱熱交換器バイパス路に通流させる形態で蓄熱水を循環させる一部通流状態とに切換自在に構成されている蓄熱放熱システム。
【請求項2】
前記排熱熱交換器バイパス路には、通流する蓄熱水を加熱する加熱作動を実行可能な補助加熱手段が設けられている請求項1に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項3】
前記蓄熱水循環手段が、前記蓄熱槽の上部から蓄熱水を取り出して前記蓄熱槽の下部に蓄熱水を戻すように構成され、
前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態に切り換えて前記熱供給装置の排熱を前記蓄熱槽に蓄熱する蓄熱運転、及び、前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態又は前記一部通流状態に切り換え且つ前記補助加熱手段を加熱作動させるか否かを制御して前記放熱用熱交換器にて前記蓄熱水を放熱させる放熱運転を実行可能な運転制御手段が設けられている請求項2に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項4】
前記排熱搬送流体としての冷却水を前記排熱熱交換器と前記熱供給装置との間で循環させる冷却水循環手段と、
前記循環路にて前記排熱熱交換器に通流する蓄熱水の流量を調整自在な蓄熱水流量調整手段とが設けられ、
前記運転制御手段が、前記冷却水循環手段にて前記排熱熱交換器から前記熱供給装置に戻す冷却水の温度が設定温度範囲内になるように、前記蓄熱水流量調整手段にて前記排熱熱交換器に通流する蓄熱水の流量を調整する蓄熱水流量調整制御を行うように構成されている請求項3に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項5】
前記運転制御手段が、前記放熱運転において前記蓄熱水流量調整制御を行った場合に、前記放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できるときには、前記蓄熱水循環手段を前記全通流状態に切り換え、且つ、前記放熱用熱交換器に対して要求されている流量の蓄熱水を供給できないときには、前記蓄熱水循環手段を前記一部通流状態に切り換えるように構成されている請求項4に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項6】
前記運転制御手段が、前記放熱運転において前記蓄熱水循環手段を前記一部通流状態に切り換えた場合に、前記放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を供給できるときには前記補助加熱手段を加熱作動させず、且つ、前記放熱用熱交換器に対して要求されている温度の蓄熱水を供給できないときには前記補助加熱手段を加熱作動させるように構成されている請求項3〜5の何れか1項に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項7】
前記循環路において前記蓄熱槽の下部に蓄熱水を戻す戻し部分と前記蓄熱槽の上部から蓄熱水を取り出す取り出し部分とを接続する蓄熱槽バイパス路と、
前記放熱用熱交換器を通過した後の蓄熱水の少なくとも一部を前記蓄熱槽バイパス路に通流させる通流作動を実行可能な蓄熱槽バイパス路通流手段とが設けられ、
前記運転制御手段が、前記放熱運転において、前記蓄熱槽バイパス路通流手段を通流作動させるか否かを制御するように構成されている請求項3〜6の何れか1項に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項8】
前記放熱用熱交換器として、給湯路に供給される給湯用の給水を蓄熱水の放熱対象とする給湯用熱交換器、浴槽との間で循環される浴槽水を蓄熱水の放熱対象とする追焚き用熱交換器、及び、暖房対象空間の室内空気を放熱対象とする暖房用放熱器の少なくとも一つが設けられている請求項1〜7の何れか1項に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項9】
前記給湯用熱交換器と前記追焚き用熱交換器とが、前記追焚き用熱交換器を通過した後の蓄熱水が前記給湯用熱交換器に通流するように直列状態で設けられ、
前記給湯用熱交換器及び前記追焚き用熱交換器の何れか一方又は両方と前記暖房用放熱器とが並列状態で設けられている請求項8に記載の蓄熱放熱システム。
【請求項10】
前記給湯用熱交換器と前記追焚き用熱交換器とが、並列状態で設けられている請求項8に記載の蓄熱放熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−224158(P2008−224158A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65444(P2007−65444)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】