説明

蓄電システムおよび、蓄電装置の容量状態判定方法

【課題】 蓄電装置の容量判定に用いられる電流積算量にバラツキが発生するのを抑制する。
【解決手段】 蓄電装置(10)は、充放電を行い、車両の走行に用いられるエネルギを出力する。補機(32)は、車両に搭載され、蓄電装置からの電力供給を受けて作動する。電流センサ(22)は、蓄電装置に流れる電流値を検出する。コントローラ(30)は、蓄電装置の電圧が第1電圧から第2電圧に変化するまでの間において、電流センサから取得した電流値を積算して、蓄電装置の容量判定に用いられる電流積算量を算出する。コントローラは、補機の作動レベルが低下した状態において、積算される電流値の取得の開始および、積算される電流値の取得の終了のうち、少なくとも一方を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の容量状態を判定する蓄電システムと、容量状態を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の劣化を診断する方法として、例えば、二次電池の電圧を診断開始電圧から診断終了電圧まで放電させ、放電中の電流値を積算している。電流積算量に基づいて、二次電池が劣化しているか否かを判別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−291803号公報
【特許文献2】特開2010−200574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の劣化を診断するとき、二次電池と接続された負荷が作動していると、負荷の消費電力の変動に応じて、二次電池の電圧が変動してしまう。二次電池の電圧が変化してしまうと、積算される電流値を取得するタイミングや、積算される電流値の取得を終了させるタイミングにバラツキが発生し、電流積算量にもバラツキが発生してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願第1の発明である蓄電システムは、蓄電装置と、補機と、電流センサと、コントローラとを有する。蓄電装置は、充放電を行い、車両の走行に用いられるエネルギを出力する。補機は、車両に搭載され、蓄電装置からの電力供給を受けて作動する。電流センサは、蓄電装置に流れる電流値を検出し、検出結果をコントローラに出力する。コントローラは、蓄電装置の電圧が第1電圧から第2電圧に変化するまでの間において、電流センサから取得した電流値を積算して、蓄電装置の容量判定に用いられる電流積算量を算出する。コントローラは、補機の作動レベルが低下した状態において、積算される電流値の取得の開始および、積算される電流値の取得の終了のうち、少なくとも一方を行う。
【0006】
本願第1の発明では、補機の作動レベルを低下させた状態において、積算される電流値を取得し始めたり、積算される電流値の取得を終了させたりしている。補機の作動レベルを上昇させたときには、補機の作動に伴って、補機の消費電力が変動することがある。この場合には、蓄電装置の電圧が変動してしまい、電流値を取得し始めるタイミングや、電流値の取得を終了させるタイミングにバラツキが発生し、電流積算量にもバラツキが発生してしまう。
【0007】
本願第1の発明では、補機の作動レベルを低下させることにより、補機の消費電力が変動するのを抑制することができる。これにより、蓄電装置の電圧変動を抑制でき、電流値を取得し始めるタイミングや、電流値の取得を終了させるタイミングにバラツキが発生するのを抑制できる。そして、電流積算量にもバラツキが発生するのを抑制することができ、電流積算量の算出精度を向上させて、蓄電装置の容量判定の精度を向上させることができる。
【0008】
蓄電装置の電圧を第1電圧から第2電圧に変化させる場合としては、2つの場合がある。第1として、第1電圧が第2電圧よりも高い状態において、蓄電装置を放電することにより、蓄電装置の電圧を第1電圧から第2電圧に変化(低下)させることができる。第2として、第1電圧が第2電圧よりも低い状態において、蓄電装置を充電することにより、蓄電装置の電圧を第1電圧から第2電圧に変化(上昇)させることができる。
【0009】
積算される電流値を取得し始める前に、補機の作動レベルを低下させておくことができる。そして、積算される電流値を取得し始めてから、積算される電流値の取得を終了するまで、補機の作動レベルを低下させた状態に維持することができる。
【0010】
作動レベルが低下した状態には、2つの状態が含まれる。第1としては、補機が作動している状態において、補機の作動レベルを低下させた状態である。第2としては、補機が作動する状態から、補機の作動が停止した状態に切り替えた状態である。
【0011】
積算される電流値を取得し始めた後から、積算される電流値の取得を終了する前までの間において、補機の作動レベルを上昇させることができる。補機の作動レベルを上昇させることにより、補機の消費電力を上昇させることができ、蓄電装置の電圧を、第2電圧に素早く近づけることができる。これにより、積算される電流値を取得する時間を短縮することができる。
【0012】
補機の作動レベルを上昇させることには、2つの場合が含まれる。第1としては、補機が作動している状態において、補機の作動レベルを上昇させる場合である。第2としては、補機の作動が停止した状態から、補機が作動する状態に切り替える場合である。
【0013】
補機としては、作動レベルの上昇に応じて、消費電力の変動量が増加しやすい補機を用いることができる。例えば、補機として、空調設備を用いることができる。空調設備は、温度の設定状態などに応じて、消費電力が変動しやすい。
【0014】
本願第2の発明は、車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置の容量状態を判定する判定方法である。まず、蓄電装置の電圧が第1電圧から第2電圧に変化するまでの間において、蓄電装置に流れる電流値を取得し、取得した電流値を積算して、容量状態の判定に用いられる電流積算量を算出する。ここで、補機の作動レベルが低下した状態において、積算される電流値の取得の開始および、積算される電流値の取得の終了のうち、少なくとも一方を行う。本願第2の発明においても、本願第1の発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1である電池システムの構成を示す図である。
【図2】実施例1において、組電池の劣化診断処理を説明するフローチャートである。
【図3】劣化していない組電池と、劣化した組電池の放電カーブを示す図である。
【図4】実施例1において、劣化診断処理を行う前の処理を説明するフローチャートである。
【図5】実施例2において、劣化診断処理を説明するフローチャートである。
【図6】実施例2において、組電池の放電カーブに対して、補機の作動レベルの状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1である電池システム(蓄電システム)について、図1を用いて説明する。図1は、電池システムの構成を示す図である。本実施例の電池システムは、車両に搭載されている。車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させる動力源として、後述する組電池に加えて、エンジン又は燃料電池を備えている。電気自動車は、車両を走行させる動力源として、後述する組電池だけを備えている。
【0018】
組電池10は、直列に接続された複数の単電池11を有する。単電池11としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。単電池11の数は、組電池10の要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。本実施例では、複数の単電池11が直列に接続されているが、組電池10は、並列に接続された複数の単電池11を含んでいてもよい。
【0019】
電圧センサ21は、組電池10の端子間電圧を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。本実施例では、組電池10の端子間電圧を検出しているが、各単電池11の端子間電圧を検出したり、少なくとも2つの単電池11を含む電池ブロックの端子間電圧を検出したりすることもできる。電流センサ22は、組電池10に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。
【0020】
コントローラ30は、メモリ30aを内蔵している。メモリ30aは、コントローラ30が所定の処理を行うための各種の情報を格納している。本実施例では、メモリ30aが、コントローラ30に内蔵されているが、コントローラ30の外部にメモリ30aを設けることもできる。
【0021】
組電池10の正極ラインPLには、システムメインリレーSMR−Bが設けられている。システムメインリレーSMR−Bは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。組電池10の負極ラインNLには、システムメインリレーSMR−Gが設けられている。システムメインリレーSMR−Gは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
【0022】
システムメインリレーSMR−Gに対しては、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rが並列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。電流制限抵抗Rは、組電池10を負荷(後述する昇圧回路23など)と接続するときに、突入電流が流れるのを抑制するために用いられる。
【0023】
組電池10を負荷と接続するとき、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Bをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、電流制限抵抗Rに電流が流れることになる。次に、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、組電池10および負荷の接続が完了する。組電池10および負荷の接続を遮断するとき、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替える。
【0024】
昇圧回路23は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して、組電池10と接続されており、組電池10の出力電圧を昇圧する。昇圧回路23は、昇圧後の電力をインバータ24に出力する。また、昇圧回路23は、インバータ24の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力することができる。本実施例では、昇圧回路23を用いているが、昇圧回路23を省略することもできる。
【0025】
インバータ24は、昇圧回路23から出力された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ・ジェネレータ25に出力する。モータ・ジェネレータ25としては、例えば、三相交流モータを用いることができる。モータ・ジェネレータ25は、インバータ24から出力された交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギを生成する。モータ・ジェネレータ25によって生成された運動エネルギは、車輪に伝達される。
【0026】
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータ・ジェネレータ25は、車両の制動時に発生する運動エネルギを電気エネルギ(交流電力)に変換する。インバータ24は、モータ・ジェネレータ25が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を昇圧回路23に出力する。昇圧回路23は、インバータ24の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を組電池10に出力する。これにより、組電池10は、回生電力を蓄えることができる。
【0027】
正極ラインPLおよび負極ラインNLには、DC/DCコンバータ31が接続されている。DC/DCコンバータ31は、組電池10の出力電圧を降圧し、降圧後の電力を補機32に出力する。DC/DCコンバータ31は、コントローラ30からの制御信号を受けて動作する。補機32は、組電池10からの電力を受けて作動することができる電子機器である。補機32としては、例えば、コントローラ30、システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pを駆動する回路、空調設備、ランプ、音響設備、ディスプレイがある。
【0028】
次に、組電池10の劣化を診断する処理について説明する。図2は、劣化診断処理を説明するフローチャートである。図2に示す処理は、コントローラ30によって実行される。劣化診断処理は、コントローラ30が劣化診断処理の要求を受けたときに開始される。
【0029】
ステップS101において、コントローラ30は、組電池10を放電させる。例えば、組電池10の電力を補機32に供給することにより、組電池10を放電させることができる。また、組電池10の正極ラインPLおよび負極ラインNLに負荷を接続して、組電池10を放電させることができる。
【0030】
ステップS102において、コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて、組電池10の電圧Vcを取得する。そして、コントローラ30は、検出電圧Vcが診断開始電圧(第1電圧に相当する)Vsよりも低いか否かを判別する。ここで、劣化診断処理を開始するときには、組電池10の電圧Vcを、診断開始電圧Vs以上としておく必要がある。例えば、組電池10が満充電状態となるまで、組電池10を充電しておくことができる。
【0031】
診断開始電圧Vsの値は、適宜設定することができる。本実施例では、後述するように、組電池10を放電したときの電流積算量を取得するため、電流積算量を取得しやすいように、診断開始電圧Vsは、組電池10のSOCが高い状態にあるときの電圧値に設定しておくことが好ましい。診断開始電圧Vsに関する情報は、メモリ30aに記憶させておくことができる。組電池10の放電によって、検出電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも低くなったときには、ステップS103の処理に進む。
【0032】
ステップS103において、コントローラ30は、電流センサ22の出力に基づいて、組電池10に流れる電流値Iを取得する。組電池10を放電し続けている間、コントローラ30は、電流値Iを取得し続ける。取得した電流値Iは、メモリ30aに記憶することができる。
【0033】
ステップS104において、コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて、組電池10の電圧Vcを取得する。組電池10は放電し続けているため、検出電圧Vcは、低下する。コントローラ30は、検出電圧Vcが診断終了電圧(第2電圧に相当する)Veよりも低いか否かを判別する。
【0034】
診断終了電圧Veは、診断開始電圧Vsよりも低い電圧値であり、適宜設定することができる。診断終了電圧Veを低くしすぎると、組電池10を過放電させてしまうことになる。また、診断終了電圧Veを高くしすぎると、後述する電流積算量を取得し難くなってしまう。これらの点を考慮して、診断終了電圧Veを設定することができる。診断終了電圧Veに関する情報は、メモリ30aに記憶させておくことができる。
【0035】
検出電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低いときには、ステップS105の処理に進み、検出電圧Vcが診断終了電圧Veよりも高いときには、ステップS103の処理に戻る。すなわち、検出電圧Vcが、診断開始電圧Vsから診断終了電圧Veに変化(低下)するまで、電流値Iが取得される。
【0036】
ステップS105において、コントローラ30は、組電池10の放電を停止させる。具体的には、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替えることができる。
【0037】
ステップS106において、コントローラ30は、ステップS103で取得した電流値Iを積算して、電流積算量ΣIを算出する。ステップS107において、コントローラ30は、ステップS106で算出した電流積算量ΣIを、基準となる電流積算量ΣIと比較することにより、組電池10が劣化しているか否かを判別する。
【0038】
基準となる電流積算量ΣIは、組電池10の劣化を判断するときに基準となる電流積算量ΣIである。基準となる電流積算量ΣIとしては、例えば、初期状態の組電池10を放電させたときに取得された電流積算量ΣIを用いることができる。初期状態とは、組電池10を製造した直後の状態をいう。基準となる電流積算量ΣIを算出するときにも、組電池10の電圧Vcを、診断開始電圧Vsから診断終了電圧Veまで変化させながら、電流値Iを取得する。
【0039】
図3は、組電池10を放電させたときの電圧の変動(放電カーブ)を示す図である。図3の縦軸は、組電池10の電圧、言い換えれば、電圧センサ21によって検出された電圧を示す。図3の横軸は、組電池10の放電容量[Ah]を示す。図3の実線は、組電池10が劣化していないときの放電カーブを示し、図3の点線は、組電池10が劣化したときの放電カーブを示す。点線に示す放電カーブは、組電池10の劣化状態に応じて変化する。
【0040】
図3に示すように、組電池10が劣化すると、組電池10の容量は低下してしまう。言い換えれば、組電池10が劣化すると、電流積算量ΣIは低下してしまう。このため、ステップS106で算出された電流積算量ΣIが、基準となる電流積算量ΣIに対して低下するほど、組電池10が劣化していることになる。したがって、ステップS106で算出された電流積算量ΣIと、基準となる電流積算量ΣIとの差に基づいて、組電池10の劣化状態を判定することができる。
【0041】
診断開始電圧Vsを、組電池10が満充電状態(SOC=100%)であるときの電圧とし、診断終了電圧Veを、組電池10の放電終止電圧とすれば、電流積算量ΣIから組電池10の満充電容量を算出することができる。一方、診断開始電圧Vsを、組電池10が満充電状態であるときの電圧よりも低くし、診断終了電圧Veを、組電池10の放電終止電圧よりも高くしたときには、電流積算量ΣIおよび満充電容量の関係を予め求めておくことにより、電流積算量ΣIから満充電容量を推定することができる。組電池10が劣化したときには、組電池10の満充電容量が低下するため、満充電容量に基づいて、組電池10の劣化状態を特定することができる。
【0042】
図2に示す処理では、組電池10を継続的に放電することによって、電流積算量ΣIを算出しているが、これに限るものではない。具体的には、組電池10を継続的に充電することによって、電流積算量ΣIを算出することができる。
【0043】
例えば、外部電源の電力を組電池10に供給することにより、組電池10を継続的に充電することができる。外部電源は、車両の外部において、車両とは別に設けられた電源である。外部電源としては、例えば、商用電源を用いることができる。
【0044】
図1に示す電池システムにおいては、充電器を追加することができる。具体的には、組電池10の正極ラインPLおよび負極ラインNLに対して、充電器を接続することができる。外部電源が交流電力を供給するとき、充電器は、外部電源からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力を組電池10に供給することができる。
【0045】
組電池10を継続的に充電するときでも、電流値Iを取得し始めるときの電圧(開始電圧)と、電流値Iの取得を終了させるときの電圧(終了電圧)とを設定しておく。そして、組電池10の電圧が開始電圧から終了電圧まで変化(上昇)するまでの電流積算量ΣIを算出すればよい。開始電圧および終了電圧は、適宜設定することができる。例えば、開始電圧を、本実施例で説明した診断終了電圧Veとし、終了電圧を、本実施例で説明した診断開始電圧Vsとすることができる。組電池10の充電を開始するときには、組電池10の電圧Vcを、開始電圧よりも低くしておく必要がある。
【0046】
組電池10の劣化診断処理では、組電池10の電圧Vcを診断開始電圧Vsから診断終了電圧Veまで正確に変化させる必要がある。電流積算量ΣIを用いて組電池10の劣化を診断する場合において、電流値Iを取得し始めるときのタイミングや、電流値Iの取得を終了させるときのタイミングがずれてしまうと、劣化診断の精度に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0047】
そこで、本実施例では、組電池10の劣化診断処理を行うときに、図4に示す処理を行っている。図4に示す処理は、コントローラ30によって実行される。
【0048】
ステップS201において、コントローラ30は、組電池10の劣化診断処理の要求があるか否かを判別する。例えば、ユーザが特定のスイッチを操作することにより、組電池10の劣化診断処理を要求することができる。劣化診断処理の要求に関する情報は、コントローラ30に入力される。劣化診断処理の要求があるときには、ステップS202の処理に進む。一方、劣化診断処理の要求がないときには、図4に示す処理を終了する。
【0049】
ステップS202において、コントローラ30は、補機32の作動レベルを低下させる。補機32の作動レベルが高いほど、補機32の消費電力が上昇したり、消費電力が変動しやすくなったりする。補機32の作動レベルを低下させることにより、補機32の消費電力を低下させたり、消費電力の変動を抑制したりすることができる。
【0050】
補機32の作動レベルを低下させる場合には、補機32の作動レベルを現在の作動レベルよりも低下させる場合や、補機32の作動レベルを予め定めた作動レベル(閾値)よりも低下させる場合が含まれる。補機32の作動レベルを予め定めた作動レベルよりも低下させる場合において、現在の作動レベルが予め定めた作動レベルよりも低いときには、補機32の作動レベルは、低下しないことになる。
【0051】
補機32の作動レベルを低下させることには、補機32が作動している状態から、補機32の作動が停止する状態に切り替えることも含まれる。図2のステップS101の処理において、補機32を作動させて組電池10の放電を行うとき、作動レベルを低下させる補機32は、組電池10を放電させる補機32とは異なる補機32である。
【0052】
補機32の作動状態によっては、補機32の消費電力が変動しやすいことがある。例えば、補機32としての空調設備は、設定温度に応じて、空調設備の作動状態が変化し、空調設備の消費電力も変動しやすくなる。電力が変動しやすい状態では、組電池10の電圧Vcが変動しやすくなる。作動レベルを低下させる補機32としては、消費電力が変化しやすい補機32を対象とすることができる。
【0053】
組電池10の電圧Vcが変動しやすいと、電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも低下したタイミングを特定し難くなり、電流値Iを取得し始めるタイミングにバラツキが発生してしまう。また、組電池10の電圧Vcが変動しやすいと、電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低下したタイミングを特定し難くなり、電流値Iの取得を終了させるタイミングにバラツキが発生してしまう。
【0054】
電流値Iを取得し始めるときのタイミングや、電流値Iの取得を終了させるタイミングにバラツキが発生すると、電流積算量ΣIにもバラツキが発生してしまい、劣化診断の精度が低下してしまうおそれがある。
【0055】
本実施例では、劣化診断処理を開始させる前に、補機32の作動レベルを低下させているため、補機32の作動に伴う電力変動を抑制することができる。電力変動を抑制すれば、組電池10の電圧Vcが変動するのを抑制でき、電流値Iを取得し始めるときのタイミングや、電流値Iの取得を終了させるタイミングにバラツキが発生するのを抑制できる。
【0056】
補機32の作動レベルを低下させた状態において、コントローラ30は、ステップS203において、劣化診断処理を行う。劣化診断処理は、図2で説明したフローチャートに従って行われる。
【0057】
図4に示す処理では、劣化診断処理を行う前に、補機32の作動レベルを低下させているが、これに限るものではない。すなわち、劣化診断処理を行っている間において、補機32の作動に伴う電力変動を抑制すればよい。
【0058】
例えば、劣化診断処理を行う前に、補機32を作動させているとき、劣化診断処理を行っている間は、補機32の作動レベルを低下させ、劣化診断処理を終了したときには、補機32の作動レベルを元のレベルに戻すことができる。この場合においても、補機32の作動レベルを低下させることには、補機32の作動を停止させることが含まれる。
【0059】
また、劣化診断処理を行う前に、補機32を作動させているとき、劣化診断処理を行うときに、補機32の作動レベルを低下させることを、ユーザなどに通知することができる。そして、ユーザなどが補機32の作動レベルを低下させたときに、劣化診断処理を開始させることができる。
【0060】
ここで、ユーザなどへの通知方法としては、音や表示を用いることができる。すなわち、補機32の作動レベルの低下を促す情報を、スピーカから音で出力したり、ディスプレイに表示したりすることができる。コントローラ30は、補機32の作動レベルが低下したことを確認した後に、劣化診断処理を開始することができる。
【0061】
また、劣化診断処理を行っている間に、補機32の作動レベルを上昇させないようにすることができる。具体的には、コントローラ30は、補機32の作動レベルを上昇させる指示を受けても、劣化診断処理を行っている間は、指示に応じた制御を行わないことができる。補機32の作動レベルを上昇させる指示は、ユーザなどが特定のスイッチなどを操作することによって行うことができる。
【0062】
指示に応じた制御を行わないときには、劣化診断処理を行っているために、補機32の作動レベルを上昇させることができないことを、ユーザなどに通知することができる。ユーザなどへの通知方法は、上述した方法と同様である。劣化診断処理が終了した後であれば、コントローラ30は、指示に応じた制御を行うことができる。ここで、作動レベルを上昇させることには、補機32の作動が停止している状態から、補機32が作動する状態に切り替えることが含まれる。
【0063】
本実施例では、劣化診断処理を行っている間において、補機32の作動レベルを低下させ続けているが、これに限るものではない。すなわち、電流積算量ΣIのバラツキを抑制できればよいため、電流値Iを取得し始めるときと、電流値Iの取得を終了するときの少なくとも一方において、補機32の作動レベルを低下させることができる。
【0064】
具体的には、電流値Iを取得し始めるとき、言い換えれば、組電池10の電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも低いか否かを判別するときにおいて、補機32の作動レベルを低下させることができる。また、電流値Iの取得を終了するとき、言い換えれば、組電池10の電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低いか否かを判別するときにおいて、補機32の作動レベルを低下させることができる。
【0065】
電流値Iを取得し始めるときと、電流値Iの取得を終了するときの両者において、補機32の作動レベルを低下させれば、電流積算量ΣIの算出精度を向上させることができる。一方、電流値Iを取得し始めるときと、電流値Iの取得を終了するときのいずれか一方だけにおいて、補機32の作動レベルを低下させても、補機32の作動レベルを低下させない場合に比べれば、電流積算量ΣIの算出精度を向上させることができる。電流積算量ΣIの算出精度を向上させることにより、劣化診断の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0066】
本発明の実施例2である電池システムについて説明する。実施例1で説明した部材と同一の部材については、同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例では、実施例1と異なる点について、主に説明する。
【0067】
図5は、本実施例における劣化診断処理を説明するフローチャートであり、実施例1の図2に対応する図である。図5において、図2で説明した処理と同じ処理については、同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。以下、図2に示す処理と異なる点について、主に説明する。
【0068】
ステップS108において、コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて取得した電圧Vcが下記式(1)の条件を満たすか否かを判別する。
【0069】
Vc<Vs−ΔV ・・・(1)
【0070】
ΔVは、適宜設定される値である。ΔVに関する情報は、メモリ30aに記憶しておくことができる。検出電圧Vcが式(1)の条件を満たすときには、ステップS109の処理に進む。検出電圧Vcが式(1)の条件を満たしていないときには、ステップS103の処理に戻る。
【0071】
ステップS109において、コントローラ30は、電圧センサ21の出力に基づいて取得した電圧Vcが下記式(2)の条件を満たすか否かを判別する。
【0072】
Vc>Ve+ΔV ・・・(2)
【0073】
ΔVは、適宜設定される値である。式(2)で用いられるΔVは、式(1)で用いられるΔVと同じ値であってもよいし、異なっていてもよい。式(2)で用いられるΔVに関する情報は、メモリ30aに記憶しておくことができる。検出電圧Vcが式(2)の条件を満たすときには、ステップS110の処理に進む。検出電圧Vcが式(2)の条件を満たしていないときには、ステップS104の処理に進む。
【0074】
ステップS110において、コントローラ30は、補機32の作動レベルを上昇させる。実施例1では、劣化診断処理を行う前に、補機32の作動レベルを低下させている。この状態において、ステップS110の処理では、補機32の作動レベルを上昇させている。補機32の作動レベルを上昇させることにより、補機32の消費電力を増加させることができ、組電池10の電圧Vcが低下する速度を上昇させることができる。言い換えれば、組電池10の電圧Vcを、診断終了電圧Veに素早く近づけることができる。
【0075】
ここで、補機32の作動レベルを上昇させることには、補機32の作動を停止した状態から、補機32が作動する状態に切り替えることが含まれる。実施例1において、劣化診断処理を行う前に、補機32の作動を停止しているときには、ステップS110の処理において、補機32を作動させることができる。ステップS110の処理を行った後は、ステップS103の処理に戻る。
【0076】
図6は、組電池10の放電カーブにおいて、補機32の作動レベルの状態を示す図である。検出電圧Vcが、「診断開始電圧Vs−ΔV」よりも低くなるまでは、補機32の作動レベルを低下させている。また、検出電圧Vcが、「診断終了電圧Ve+ΔV」よりも低くなるまでは、補機32の作動レベルを低下させている。一方、検出電圧Vcが、「診断開始電圧Vs−ΔV」および「診断終了電圧Ve+ΔV」の間で変化しているときには、補機32の作動レベルを上昇させている。
【0077】
本実施例によれば、検出電圧Vcが診断開始電圧Vsおよび診断終了電圧Veの近傍であるときには、補機32の作動レベルを低下させた状態とすることができ、補機32の作動に伴う電力変動を抑制することができる。これにより、実施例1と同様に、電流積算量ΣIのバラツキを抑制し、劣化診断の精度を向上させることができる。
【0078】
また、検出電圧Vcが診断終了電圧Vsおよび診断終了電圧Veから離れたときには、補機32の作動レベルを上昇させることにより、検出電圧Vcを診断終了電圧Veに素早く近づけることができる。これにより、劣化診断処理の時間を短縮することができる。
【0079】
本実施例では、式(1)および式(2)の条件を満たすときに、補機32の作動レベルを上昇させているが、これに限るものではない。式(1)および式(2)の条件のうち、一方の条件だけを採用することもできる。
【0080】
具体的には、検出電圧Vcが診断開始電圧Vsよりも低くなったときには、補機32の作動レベルを上昇させ、検出電圧Vcが式(2)の条件を満たさなくなるまで、補機32の作動レベルを上昇させたままとすることができる。一方、検出電圧Vcが式(1)の条件を満たしたときに、補機32の作動レベルを上昇させ、検出電圧Vcが診断終了電圧Veよりも低くなるまで、補機32の作動レベルを上昇させたままとすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10:組電池(蓄電装置) 11:単電池
21:電圧センサ 22:電流センサ
23:昇圧回路 24:インバータ
25:モータ・ジェネレータ 30:コントローラ
30a:メモリ 31:DC/DCコンバータ
32:補機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電を行い、車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置と、
前記車両に搭載され、前記蓄電装置からの電力供給を受けて作動する補機と、
前記蓄電装置に流れる電流値を検出する電流センサと、
前記蓄電装置の電圧が第1電圧から第2電圧に変化するまでの間において、前記電流センサから取得した電流値を積算して、前記蓄電装置の容量判定に用いられる電流積算量を算出するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記補機の作動レベルが低下した状態において、積算される電流値の取得の開始および、積算される電流値の取得の終了のうち、少なくとも一方を行うことを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記コントローラは、積算される電流値を取得し始める前に、前記補機の作動レベルを低下させることを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記コントローラは、積算される電流値を取得し始めてから、積算される電流値の取得を終了するまで、前記補機の作動レベルを低下させた状態に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記作動レベルが低下した状態は、前記補機が作動する状態から前記補機の作動が停止した状態に切り替えられた状態を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電システム。
【請求項5】
積算される電流値を取得し始めた後から、積算される電流値の取得を終了する前までの間において、前記コントローラは、前記補機の作動レベルを上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記補機の作動が停止した状態から前記補機が作動する状態に切り替えることにより、前記補機の作動レベルを上昇させることを特徴とする請求項5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記補機は、作動レベルの上昇に応じて、消費電力の変動量が増加しやすい補機であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記補機は、空調設備であることを特徴とする請求項7に記載の蓄電システム。
【請求項9】
車両の走行に用いられるエネルギを出力する蓄電装置の容量状態を判定する判定方法であって、
前記蓄電装置の電圧が第1電圧から第2電圧に変化するまでの間において、前記蓄電装置に流れる電流値を取得し、
取得した電流値を積算して、前記容量状態の判定に用いられる電流積算量を算出し、
前記車両に搭載され、前記蓄電装置からの電力供給を受けて作動する補機の作動レベルが低下した状態において、積算される電流値の取得の開始および、積算される電流値の取得の終了のうち、少なくとも一方を行うことを特徴とする判定方法。
【請求項10】
積算される電流値を取得し始める前に、前記補機の作動レベルを低下させることを特徴とする請求項9に記載の判定方法。
【請求項11】
積算される電流値を取得し始めてから、積算される電流値の取得を終了するまで、前記補機の作動レベルを低下させた状態に維持することを特徴とする請求項9又は10に記載の判定方法。
【請求項12】
前記作動レベルが低下した状態は、前記補機が作動する状態から前記補機の作動が停止した状態に切り替えられた状態を含むことを特徴とする請求項9から11のいずれか1つに記載の判定方法。
【請求項13】
積算される電流値を取得し始めた後から、積算される電流値の取得を終了する前までの間において、前記補機の作動レベルを上昇させることを特徴とする請求項9又は10に記載の判定方法。
【請求項14】
前記補機の作動が停止した状態から前記補機が作動する状態に切り替えることにより、前記補機の作動レベルを上昇させることを特徴とする請求項13に記載の判定方法。
【請求項15】
前記補機は、作動レベルの上昇に応じて、消費電力の変動量が増加しやすい補機であることを特徴とする請求項9から14のいずれか1つに記載の判定方法。
【請求項16】
前記補機は、空調設備であることを特徴とする請求項15に記載の判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92429(P2013−92429A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234011(P2011−234011)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】