説明

蓄電デバイス

【課題】電気容量の大きな蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】黒鉛を含む正極材料、二酸化チタンを含む負極材料及び電解液を含む蓄電デバイスであって、前記二酸化チタンが、0.1μmより大きく5μm以下の範囲の厚さを有する薄片状二酸化チタンであることを特徴とする蓄電デバイスである。
【効果】本発明の蓄電デバイスは、電気容量が大きく、耐電圧性が優れ、しかも二酸化チタンを負極材料に用いているため、低コストである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気容量が大きな蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
正極、負極および非水電解液を主たる構成要素とする蓄電デバイスは、これまでに種々の構成が提案され、モバイル機器などの電源や回生用蓄電システム、パーソナルコンピューターのバックアップ電源などに実用化されてきている。中でも、正極材料に黒鉛を用い、負極材料に二酸化チタン等の金属酸化物を用いた蓄電デバイスは、電気容量が大きく、サイクル特性が優れたものである(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−124012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蓄電デバイスにおいて、高電圧で充電してもサイクル特性が低下し難い優れた耐電圧性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、前記蓄電デバイスにおいて、二酸化チタンに特定の厚さを有する薄片状二酸化チタンを用いることによって、耐電圧性を改良できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、黒鉛を含む正極材料、二酸化チタンを含む負極材料及び電解液を含む蓄電デバイスであって、前記二酸化チタンが、0.1μmより大きく5μm以下の範囲の厚さを有する薄片状二酸化チタンであることを特徴とする蓄電デバイスである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蓄電デバイスは、電気容量が大きく、耐電圧性が優れ、しかも二酸化チタンを負極材料に用いているため、低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、黒鉛を含む正極材料、二酸化チタンを含む負極材料及び電解液を含む蓄電デバイスであって、前記二酸化チタンが、0.1μmより大きく5μm以下の範囲の厚さを有する薄片状二酸化チタンであることを特徴とする。本発明では、わたり径が厚さより大きい異方性形状粒子を言い、一般的に、板状、シート状、フレーク状と呼ばれるものを包含する。薄片状二酸化チタンの好ましい厚さは、3μm以下である。平均わたり径は、特に制限は無いが、0.5〜30μmの範囲であるのが好ましく、5〜30μmであれば更に好ましい。また、平均わたり径/厚みの比は1.5〜300以下の範囲が好ましく、更に好ましい範囲は1.5〜100であり、1.5〜50の範囲がより一層好ましい。尚、薄片状粒子の厚みは、電子顕微鏡写真から測定した、100個以上の粒子についての個数平均厚みであり、平均わたり径は、同様に測定した100個以上の粒子についての(最長わたり径+最短わたり径)/2の値の個数平均値である。
【0009】
薄片状二酸化チタンは、ルチル型、ブルッカイト型、アナターゼ型、ブロンズ型、ホランダイト型、ラムズデライト型等の結晶性を有するもの、又は非晶質性のもの何れも用いることができるが、アナターゼ型及び/またはルチル型酸化チタンは、電気容量がより一層優れているため好ましい。特に、アナターゼ型であれば、比表面積が1〜100m/gの範囲にあるものが好ましく、1〜50m/gの範囲にあるものが更に好ましい。また、ルチル型であれば、10〜200m/gの範囲が好ましい比表面積であり、10〜100m/gが更に好ましい範囲である。更に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の異種金属をドープした薄片状二酸化チタンや、薄片状粒子の表面にシリカ、アルミナ等の無機化合物、界面活性剤、カップリング剤等の有機化合物で表面被覆したものも用いることができる。
【0010】
次に、本発明において正極材料に用いる黒鉛に特に制約はない。尚、本発明において黒鉛とはX線回折002面のピーク位置から求めたd(002)が0.335〜0.344nmの範囲にあるものをいう。中でも、比表面積が0.5〜300m/gの範囲の黒鉛を用いるのが好ましく、5〜100m/gの範囲のものが更に好ましい。
【0011】
上記正極および負極を浸漬する電解液としては、例えば、非水溶媒中に溶質を溶解させたものを用いることができる。電解液において作用する陰イオンとしては、4フッ化ホウ酸イオン(BF)、6フッ化リン酸イオン(PF)、過塩素酸イオン(ClO)、6フッ化ヒ素(AsF)、6フッ化アンチモン(SbF)、ペルフルオロメチルスルホニル(CFSO)、ペルフルオロメチルスルホナト(CFSO)からなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。
【0012】
また、陽イオンとしては、対称、非対称の四級アンモニウムイオン、エチルメチルイミダゾリウム、スピロ−(1,1’)ビピロリジニウム等のイミダゾリウム誘導体イオン、リチウムイオンからなる群から選ばれる。なかでも、リチウムイオンを含むものが好ましい。
【0013】
また、非水溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、メチルホルムアミド、メチルアセテート、ジエチルカーボネート、ジメチルエーテル(DME)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチルラクトン(GBL)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の炭酸エステル類、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)あるいは分子の一部にフッ素を含有するこれら非水溶媒からなる群から選ばれる少なくとも1種を選ぶことができる。
【0014】
本発明の蓄電デバイスは、前記の正極、負極、電解液及びセパレーターを含み、具体的には、電気化学的キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、レドックスキャパシタ、電気二重層キャパシタ、リチウム電池等が挙げられる。正極や負極は、正極材料、負極材料に、それぞれカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどの導電材とフッ素樹脂、水溶性ゴム系樹脂などのバインダを加え、適宜成形または塗布して得られる。セパレーターには、多孔性ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが用いられる。
【実施例】
【0015】
以下に本発明の実施例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
【0016】
実施例1
(正極の製造)
X線回折で求めたd(002)が0.3355nmである黒鉛、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン樹脂を、重量比70:20:10で混練した。得られた混練物を、集電体として用いるアルミ箔に塗布した後、120℃で10分間乾燥後、直径16mmの円形に切り出し、17MPaでプレスして正極を得た。この正極の活物質重量は、10mgであった。
【0017】
(負極の製造)
厚みが0.3μmで、わたり平均幅が10μmの薄片状二酸化チタン(試料a:比表面積8m/g、アナターゼ型)、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン樹脂を、重量比70:20:10で混練した。得られた混練物を、集電体として用いる銅箔に塗布した後、120℃で10分間乾燥後、直径16mmの円形に切り出し、17MPaでプレスして負極を得た。この負極の活物質重量は、10mgであった。
【0018】
(蓄電デバイスの製造)
前記正極、負極を150℃で4時間真空乾燥した後、露点−70℃以下のグローブボックス中で、密閉可能なコイン型の試験用セルに組み込んだ。試験用セルには材質がステンレス製(SUS316)で外径20mm、高さ3.2mmのものを用いた。正極は評価用セルの下部缶に置き、その上にセパレーターとしてガラス繊維性濾紙を置き、その上から非水電解液として1モル/リットルとなる濃度でLiPFを溶解したエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶液(体積比で3:7に混合)を滴下した。その上に負極及び厚み調整用の0.5mm厚スペーサーとスプリング(ともにSUS316製)を乗せ、プロピレン製ガスケットのついた上部缶を被せて外周縁部をかしめて密封し、本発明の蓄電デバイス(試料A)を得た。
【0019】
比較例1
実施例1において、試料aに代えて、厚みが0.08μmで、わたり平均幅が17.5μmの市販の薄片状型酸化チタンTF−4(石原産業製:比表面積16m/g、アナターゼ型)を用いた他は、実施例1と同様にして、比較対象の蓄電デバイス(試料B)を得た。
【0020】
サイクル特性の測定
実施例1及び比較例1で得られた蓄電デバイス(試料A、B)について、サイクル特性の評価を行った。各試料について、充放電電流を0.3mAに設定して、定電流で3.3V及び3.5Vで充電後、同様にして1.0Vまで放電し、この充放電サイクルをそれぞれ30サイクル繰り返した。2サイクル目と30サイクル目の充放容量を測定し、これをそれぞれの電気容量として、(30サイクル目の電気容量/2サイクル目の電気容量)×100をサイクル特性とした。結果を表1に示す。また、それぞれの容量維持率の推移を図1〜4に示す。本発明が、高電圧で充電してもサイクル特性がほとんど低下せず、耐電圧性が高いことが判る。
【0021】
【表1】

【0022】
本発明の蓄電デバイスは、電気自動車等の移動体用の電源、電気事業用の電力貯蔵システム等に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で得られた蓄電デバイス(試料A)の充電圧が1.0〜3.3Vにおけるサイクル特性を示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた蓄電デバイス(試料A)の充電圧が1.0〜3.5Vにおけるサイクル特性を示すグラフである。
【図3】比較例1で得られた蓄電デバイス(試料B)の充電圧が1.0〜3.3Vにおけるサイクル特性を示すグラフである。
【図4】比較例1で得られた蓄電デバイス(試料B)の充電圧が1.0〜3.5Vにおけるサイクル特性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒鉛を含む正極材料、二酸化チタンを含む負極材料及び電解液を含む蓄電デバイスであって、前記二酸化チタンが、0.1μmより大きく5μm以下の範囲の厚さを有する薄片状二酸化チタンであることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項2】
前記薄片状二酸化チタンの平均わたり径が0.5〜30μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記薄片状二酸化チタンの平均わたり径/厚みの比が1.5〜300以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記薄片状二酸化チタンの結晶形がアナターゼ及び/またはルチル型であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
非水溶媒とリチウム塩を含む電解液を用いることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−34412(P2010−34412A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196693(P2008−196693)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】