藻場造成方法及び藻場造成用構造物
【課題】移植用海藻種苗や生長した海藻を藻食性魚類の食害から永続的に保護するとともに、その食害から保護された領域をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場としても選択的に提供し得る藻場造成技術を提供する。
【解決手段】造成用基盤1に保護網4などの多孔状の保護カバーで囲んでカバー内の海藻を藻食性魚類から永続的に保護する保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー4内をアワビ6やサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場として提供する。
【解決手段】造成用基盤1に保護網4などの多孔状の保護カバーで囲んでカバー内の海藻を藻食性魚類から永続的に保護する保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー4内をアワビ6やサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場として提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場造成用構造物において生育する海藻をアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の食害から保護するとともに、その藻食性魚類の食害から保護された海藻の保護空間をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場としても選択的に提供する藻場造成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
沿岸部の藻場が消滅する所謂磯焼けの要因としてアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類による海藻に対する食害が問題となっている。すなわち、この種の藻食性魚類による海藻の摂食量や摂食速度に基づく海藻に対するいわゆる摂食圧は、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に比べて非常に大きく、海藻に与えるダメージも大きいことから磯焼けの大きな要因と考えられる。そして、この磯焼けにより水産上きわめて有用なアワビやサザエ等の藻食性水産生物の生息域が縮小され、漁獲量も減少しているのが実状である。その対策として、造成用基盤に海藻の幼芽を基質に着生した状態で付設するとともに、前記幼芽を保護かごで囲むことにより、幼芽の生育を藻食性魚介類による食害から保護する藻場の造成技術が知られている(特許文献1参照)。ところで、この従来技術の場合には、海藻の幼芽が藻食性魚介類の食害を受けても生長を続けられる程度の大きさ(30〜40cm程度)に生長した時点で保護かごは撤去するという手法が採用されている。したがって、幼芽から所定の生長時点までは、前記保護かごによってアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物も含めて藻食性魚介類の侵入が阻止され、また所定の生長時点以後は、保護かごが撤去されることから、生長した造成用の海藻は、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類を含めて藻食性魚介類の食害の前に晒されることになった。すなわち、前記従来技術は、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対して選択的に対応するための機能は有していなかった。そして、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の海藻に対する食害は、前述のように磯焼けの要因にもなる程の大きなダメージを生じるため、藻場造成上の確実性にも大きな問題を残していた。
【特許文献1】特公平2−20211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、移植用海藻種苗や生長した海藻を藻食性魚類の食害から永続的に保護するとともに、その食害から保護された空間をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場としても選択的に提供し得る藻場造成技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、前記課題を解決するため、造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んでカバー内の海藻種苗や生長海藻を藻食性魚類の食害から永続的に保護する保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー内をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場として提供するという技術手段を採用した。すなわち、造成過程及び造成後を通じて移植用海藻種苗や自然着生した生長過程の海藻及びそれらの生長海藻を摂食ダメージの大きい藻食性魚類から隔離することにより藻場の永続性を保障するとともに、摂食ダメージの比較的軽いアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対しては、前記保護カバーにより保護された海藻を餌料として提供するという技術手段を採用した。なお、前記通用部は、造成用基盤と保護カバーとの間の間隙によって形成するようにしてもよい。さらに、造成用基盤に前記匍匐性水産生物の通過可能な通路を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)保護カバーにより囲まれた保護空間内の移植用海藻種苗や自然着生した生長過程の海藻及びそれらの生長海藻は、摂食圧の大きい藻食性魚類の食害から確実かつ永続的に保護される。
(2)したがって、藻場造成上の確実性が大幅に向上されるとともに、造成後には、前記保護カバーによって囲まれた保護空間内の海藻が核として機能し、藻場の永続性にもきわめて有効である。
(3)前記保護カバーにより囲まれた保護空間は、アワビやサザエ等の藻食性水産生物に対する餌料場として提供されることから、水産上きわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、海藻の種類には限定されることなく、種々の移植用海藻種苗を用いた藻場の造成に広く適用することができる。また、造成用基盤に設ける保護カバーによって囲まれた保護空間内に予め移植用海藻種苗を設置して藻場造成を図る形態でも、保護空間内に移植用海藻種苗を設置することなく自然着生により藻場造成を図る形態でも広く適用することが可能である。要は、造成用基盤に保護カバーにより囲まれた保護空間を設けることによって構成される、本発明に係る藻場造成用構造物を海底に沈設することにより、その保護カバーによって囲まれた保護空間内に海藻が生育して藻場の永続性に有効に機能するものであれば、適用が可能である。さらに、前記造成用基盤の形状や大きさに関しても特段の制約はなく、コンクリートや海底に沈設可能な適宜の合成材などにより形成することができる。藻場造成用構造物の設置量に関しては、当該海域におけるアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物による摂食ダメージを勘案して、藻場の造成上支障の生じない設置量とする必要がある。海藻を藻食性魚類の食害から保護するための保護カバーは、種々の網材から形成される保護網のほか、海水が流通可能な多孔状の部材から構成されるものであれば、特段の制約はなく広い適用が可能である。保護カバー内への通用部は、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容するものであれば、例えば造成用基盤と保護カバーとの間隙によって形成したものでもよいし、保護カバーに設けた開口部によって形成したものでもよい。さらに、造成用基盤自体に通路を形成し、その通路の大きさを藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入は許容する大きさに設定すれば、前記通用部として用いることも可能である。なお、その通用部の設置位置は、匍匐性水産生物が進入することから、海底に近い部位が好適である。また、その通用部からの藻食性魚類の侵入をより確実に排除するため、通用部の外側近傍に捨石を置くのも有効である。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明に関する第1実施例の設置状態を示した説明図である。なお、以下の各実施例においては移植用海藻種苗を設置する場合に関して説明するが、各実施例において移植用海藻種苗を設置するなく藻場造成用構造物を海底に沈設して藻場造成を図ることも可能である。図示のように、第1実施例では、比較的高さの低い大径の円柱状からなるコンクリート製の造成用基盤1を採用し、その造成用基盤1の上端面に設置した4本の柱状体2を介して移植用海藻種苗3を付設した場合を示した。この造成用基盤1に対しては、その造成用基盤1の外側面との間に、通用部として藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物が進入可能な間隙を設けた状態で、前記4本の柱状体2の全体を囲むように保護網4を設置している。すなわち、本実施例においては、造成用基盤1に対して移植用海藻種苗3を付設した柱状体2を囲むように保護網4を設置し、その造成用基盤1の上方に保護空間を設けることにより藻場造成用構造物を構成した場合を示したものである。因みに、保護網4の網目の大きさは、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定されることはいうまでもない。なお、図中5は海藻、6はアワビ、7は捨石である。
【0008】
しかして、前記造成用基盤1の柱状体2に付設された移植用海藻種苗3は、保護網4によってアイゴ、イスズミ、ブダイ等の摂食圧の大きい藻食性魚類の食害から的確に保護される。この場合、アワビ6等の藻食性の匍匐性水産生物は、図示のように保護網4と造成用基盤1の外側面との間隙から進入して移植用海藻種苗3を捕食することになるが、前述のように匍匐性水産生物の海藻に対する摂食圧は藻食性魚類に比べて非常に小さく、また移植用海藻種苗3は柱状体2により造成用基盤1の上面から離間した部位に付設されることから、移植用海藻種苗3に対する食害はそれほど大きくない。したがって、造成用基盤1の設置量の選定によって造成の確実性を充分確保することができる。そして、移植用海藻種苗3が生長して造成が完了した場合には、その移植用海藻種苗3やその後の着生海藻から生長した海藻5がやがて造成用基盤1上に落ち、図示のように保護網4と造成用基盤1の外側面との間隙などを通じて保護網4の外部へ流出してアワビやサザエ等の餌料となり得る。また、藻食性魚類の食害から保護された保護網4の内部の保護空間は、造成後も引続きアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料提供場として機能することになる。さらに、保護網4内の海藻は、藻場の永続性を助勢する核としても機能し得ることになる。
【0009】
図2〜図7は前記実施例の設置の手順を示した作業説明図である。図2は前記造成用基盤1を示した斜視図であり、図示のように造成用基盤1としては、大径(直径Da)で比較的高さの低い円柱状からなるコンクリート製のものを用い、その上端面に4本の柱状体2を立設している。図3は付設前の前記移植用海藻種苗3を拡大して示した斜視図であり、図示のように取付バンド8に対して多数の移植用海藻種苗3を装着している。図4は移植用海藻種苗3を柱状体2に取付けた状態を拡大して示した斜視図であり、図示のように移植用海藻種苗3は、取付バンド8を柱状体2の上部に形成された凹溝部に係合させた状態で取付けられる。図5はその移植用海藻種苗3の取付後の状態を示した造成用基盤1の斜視図である。図6は前記保護網4を示した斜視図であり、図示のように保護網4は、適宜の網材によって一体的に形成された短筒部9と上蓋部10から構成されており、その網目の大きさは、前述のようにアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定されている。また、短筒部9の直径Dbの大きさは、前記造成用基盤1の直径Daより大きく設定され、それらの保護網4と造成用基盤1の外側面との間に、通用部としてアワビ6等の藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止する間隙が形成されるように構成されている。さらに、短筒部9の高さに関しては、造成用基盤1へ装着した状態において、上蓋部10の下方に移植用海藻種苗3が生長した場合に十分なスペースが得られるように設定されている。図7は保護網4を造成用基盤1へ装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。図示のように、保護網4は、造成用基盤1に対して、その下端部が造成用基盤1の下端部より上方に位置し、海底との間に藻食性の匍匐性水産生物が進入できる間隙を設けた状態に装着される。なお、保護網4の造成用基盤1に対する装着の仕方は、例えば保護網4の内側に図示しない適宜の連結部材を3箇所以上突出させておき、それらの連結部材を介して造成用基盤1に固着することにより、所定の通用部をあけて装着することができる。
【実施例2】
【0010】
図8及び図9は本発明に関する第2実施例を示したもので、図8は本実施例に係る保護網を示した斜視図、図9はその保護網を造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。本実施例は、図8に示したように保護網11の高さ方向の途中に段部12を形成するとともに、その保護網11を図9に示したように造成用基盤13の上面に所要数立設した支柱14を介して支持するように構成した点で特徴を有する。その余の構成においては、前記実施例の造成用基盤1や保護網4と基本的に異なるところはなく、前記造成用基盤13の外側面と前記保護網11との間に、通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止する間隙を形成する点でも共通しており、同様の作用効果を奏するものである。
【実施例3】
【0011】
図10〜図12は本発明に関する第3実施例を示したもので、図10は本実施例に係る造成用基盤を示した斜視図、図11は本実施例に係る保護網を示した斜視図、図12はその保護網を前記造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。本実施例は、図10に示したように造成用基盤15に通路16を形成した点で特徴を有する。そして、本実施例の場合には、図12に示したように造成用基盤15に対して図11に示した保護網17を被せた状態に装着して海底へ沈設するように構成されている。また、造成用基盤15の外側面と保護網17との間には、前記実施例と同様に、通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る間隙を形成している。したがって、その間隙を介して匍匐性水産生物だけが保護網17の内部へ進入し、前記通路16を経て容易に造成用基盤15の上方に到達することが可能である。以上のように、本実施例に場合には、造成用基盤15の外側面と保護網17との間隙により藻食性魚類の侵入を阻止し得るように構成しているので、通路16の大きさは、アワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物が進入し得る大きさ以上であれば足りる。
【0012】
因みに、前記通路16の大きさをアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定することにより前記通用部として用いることも可能である。この場合には、通路16自体によって藻食性魚類の侵入が阻止されることから、図12に示した保護網17の造成用基盤15に対する装着形態のままでも適用は可能であるが、保護網17の直径を縮小して、造成用基盤15に対して間隙を設けることなく、通路16の前記通用部としての機能を損わない位置に直接的に装着する形態も可能である。さらに、それらの通路16と保護網17とを重合させ、それらの組合わせによって前記通用部としての機能を持たせるように構成することも可能である。
【実施例4】
【0013】
図13〜図15は本発明に関する第4実施例を示したもので、図13は本実施例に係る造成用基盤を示した正面図、図14は本実施例に係る保護網組立体を中央部で破断して示した縦断面図、図15はその保護網組立体を前記造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。本実施例は、図13及び図14に示したように、造成用基盤18とは別個に、その造成用基盤18の外径Dcより若干大きい内径Ddを有する下部環状円板19と、該下部環状円板19との間に設置したスペーサ20によって前記通用部としての間隙21をあけた状態に設置される上部環状円板22とを備え、その上部環状円板22の上方に保護網23を装着してなる保護網組立体24を用いた点で特徴を有する。そして、本実施例の場合には、図15に示したように、造成用基盤18の上方から、その外側面に下部環状円板19が外嵌されるように保護網組立体24を被せ、必要に応じてそれらの造成用基盤18と保護網組立体24とを適宜手段により結合することにより設置状態が形成される。なお、上部環状円板22の内径は、図14に示したように下部環状円板19の内径Ddより大きく設定されており、保護網組立体24を造成用基盤18に被せた設置状態において、上部環状円板22の内側面と造成用基盤18の外側面との間に、前記間隙21を介して進入した匍匐性水産生物の内部へ通路が形成されるように構成している。そして、本実施例においても、下部環状円板19と上部環状円板22との間の前記間隙21は、前記通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定され、前記実施例と同様の機能を奏するように構成されている。すなわち、本実施例の場合には、下部環状円板19と上部環状円板22との間のほぼ全周に形成される間隙21が前記通用部として機能することになる。
【実施例5】
【0014】
図16は本発明の第5実施例に係る藻場造成用構造物を中央部で破断して示した縦断面図である。図示のように、本実施例においては、平板状に形成された下部円板25と、該下部円板25に対してスペーサ26を介して前記通用部としての間隙27をあけた状態に設置される上部環状円板28とを一体的に構成するとともに、その上部環状円板28の上面に前記移植用海藻種苗3を付設した所要本数の柱状体2を立設し、それらの下部円板25、上部環状円板28、移植用海藻種苗3を付設した柱状体2によって藻場造成用構造物を構成した点で特徴を有する。さらに、上部環状円板28には、中央開口部29が形成されており、また上部には移植用海藻種苗3を付設した柱状体2を被うように保護網30が設置されている。なお、本実施例における下部円板25と上部環状円板28との間の間隙27も、前記通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定され、前記実施例と同様の機能を奏するものである。しかして、藻食性の匍匐性水産生物は、下部円板25と上部環状円板28との間の間隙27から進入し、上部環状円板28に形成した中央開口部29を経て保護網30内へ入り込み、内部の海藻を捕食することになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に関する第1実施例の設置状態を示した説明図である。
【図2】同実施例に係る造成用基盤を示した斜視図である。
【図3】付設前の移植用海藻種苗を拡大して示した斜視図である。
【図4】移植用海藻種苗の柱状体への取付状態を拡大して示した斜視図である。
【図5】移植用海藻種苗の取付後の状態を示した造成用基盤の斜視図である。
【図6】前記実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図7】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図9】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る造成用基盤を示した斜視図である。
【図11】同実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図12】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。
【図13】本発明の第4実施例に係る造成用基盤を示した正面図である。
【図14】同本実施例に係る保護網組立体を中央部で破断して示した縦断面図である。
【図15】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。
【図16】本発明の第5実施例に係る藻場造成用構造物を中央部で破断して示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…造成用基盤、2…柱状体、3…移植用海藻種苗、4…保護網、5…海藻、6…アワビ、7…捨石、8…取付バンド、9…短筒部、10…上蓋部、11…保護網、12…段部、13…造成用基盤、14…支柱、15…造成用基盤、16…通路、17…保護網、18…造成用基盤、19…下部環状円板、20…スペーサ、21…間隙、22…上部環状円板、23…保護網、24…保護網組立体、25…下部円板、26…スペーサ、27…間隙、28…上部環状円板、29…中央開口部、30…保護網
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻場造成用構造物において生育する海藻をアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の食害から保護するとともに、その藻食性魚類の食害から保護された海藻の保護空間をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場としても選択的に提供する藻場造成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
沿岸部の藻場が消滅する所謂磯焼けの要因としてアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類による海藻に対する食害が問題となっている。すなわち、この種の藻食性魚類による海藻の摂食量や摂食速度に基づく海藻に対するいわゆる摂食圧は、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に比べて非常に大きく、海藻に与えるダメージも大きいことから磯焼けの大きな要因と考えられる。そして、この磯焼けにより水産上きわめて有用なアワビやサザエ等の藻食性水産生物の生息域が縮小され、漁獲量も減少しているのが実状である。その対策として、造成用基盤に海藻の幼芽を基質に着生した状態で付設するとともに、前記幼芽を保護かごで囲むことにより、幼芽の生育を藻食性魚介類による食害から保護する藻場の造成技術が知られている(特許文献1参照)。ところで、この従来技術の場合には、海藻の幼芽が藻食性魚介類の食害を受けても生長を続けられる程度の大きさ(30〜40cm程度)に生長した時点で保護かごは撤去するという手法が採用されている。したがって、幼芽から所定の生長時点までは、前記保護かごによってアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物も含めて藻食性魚介類の侵入が阻止され、また所定の生長時点以後は、保護かごが撤去されることから、生長した造成用の海藻は、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類を含めて藻食性魚介類の食害の前に晒されることになった。すなわち、前記従来技術は、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対して選択的に対応するための機能は有していなかった。そして、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の海藻に対する食害は、前述のように磯焼けの要因にもなる程の大きなダメージを生じるため、藻場造成上の確実性にも大きな問題を残していた。
【特許文献1】特公平2−20211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、移植用海藻種苗や生長した海藻を藻食性魚類の食害から永続的に保護するとともに、その食害から保護された空間をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場としても選択的に提供し得る藻場造成技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、前記課題を解決するため、造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んでカバー内の海藻種苗や生長海藻を藻食性魚類の食害から永続的に保護する保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー内をアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料場として提供するという技術手段を採用した。すなわち、造成過程及び造成後を通じて移植用海藻種苗や自然着生した生長過程の海藻及びそれらの生長海藻を摂食ダメージの大きい藻食性魚類から隔離することにより藻場の永続性を保障するとともに、摂食ダメージの比較的軽いアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対しては、前記保護カバーにより保護された海藻を餌料として提供するという技術手段を採用した。なお、前記通用部は、造成用基盤と保護カバーとの間の間隙によって形成するようにしてもよい。さらに、造成用基盤に前記匍匐性水産生物の通過可能な通路を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)保護カバーにより囲まれた保護空間内の移植用海藻種苗や自然着生した生長過程の海藻及びそれらの生長海藻は、摂食圧の大きい藻食性魚類の食害から確実かつ永続的に保護される。
(2)したがって、藻場造成上の確実性が大幅に向上されるとともに、造成後には、前記保護カバーによって囲まれた保護空間内の海藻が核として機能し、藻場の永続性にもきわめて有効である。
(3)前記保護カバーにより囲まれた保護空間は、アワビやサザエ等の藻食性水産生物に対する餌料場として提供されることから、水産上きわめて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、海藻の種類には限定されることなく、種々の移植用海藻種苗を用いた藻場の造成に広く適用することができる。また、造成用基盤に設ける保護カバーによって囲まれた保護空間内に予め移植用海藻種苗を設置して藻場造成を図る形態でも、保護空間内に移植用海藻種苗を設置することなく自然着生により藻場造成を図る形態でも広く適用することが可能である。要は、造成用基盤に保護カバーにより囲まれた保護空間を設けることによって構成される、本発明に係る藻場造成用構造物を海底に沈設することにより、その保護カバーによって囲まれた保護空間内に海藻が生育して藻場の永続性に有効に機能するものであれば、適用が可能である。さらに、前記造成用基盤の形状や大きさに関しても特段の制約はなく、コンクリートや海底に沈設可能な適宜の合成材などにより形成することができる。藻場造成用構造物の設置量に関しては、当該海域におけるアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物による摂食ダメージを勘案して、藻場の造成上支障の生じない設置量とする必要がある。海藻を藻食性魚類の食害から保護するための保護カバーは、種々の網材から形成される保護網のほか、海水が流通可能な多孔状の部材から構成されるものであれば、特段の制約はなく広い適用が可能である。保護カバー内への通用部は、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容するものであれば、例えば造成用基盤と保護カバーとの間隙によって形成したものでもよいし、保護カバーに設けた開口部によって形成したものでもよい。さらに、造成用基盤自体に通路を形成し、その通路の大きさを藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入は許容する大きさに設定すれば、前記通用部として用いることも可能である。なお、その通用部の設置位置は、匍匐性水産生物が進入することから、海底に近い部位が好適である。また、その通用部からの藻食性魚類の侵入をより確実に排除するため、通用部の外側近傍に捨石を置くのも有効である。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明に関する第1実施例の設置状態を示した説明図である。なお、以下の各実施例においては移植用海藻種苗を設置する場合に関して説明するが、各実施例において移植用海藻種苗を設置するなく藻場造成用構造物を海底に沈設して藻場造成を図ることも可能である。図示のように、第1実施例では、比較的高さの低い大径の円柱状からなるコンクリート製の造成用基盤1を採用し、その造成用基盤1の上端面に設置した4本の柱状体2を介して移植用海藻種苗3を付設した場合を示した。この造成用基盤1に対しては、その造成用基盤1の外側面との間に、通用部として藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物が進入可能な間隙を設けた状態で、前記4本の柱状体2の全体を囲むように保護網4を設置している。すなわち、本実施例においては、造成用基盤1に対して移植用海藻種苗3を付設した柱状体2を囲むように保護網4を設置し、その造成用基盤1の上方に保護空間を設けることにより藻場造成用構造物を構成した場合を示したものである。因みに、保護網4の網目の大きさは、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定されることはいうまでもない。なお、図中5は海藻、6はアワビ、7は捨石である。
【0008】
しかして、前記造成用基盤1の柱状体2に付設された移植用海藻種苗3は、保護網4によってアイゴ、イスズミ、ブダイ等の摂食圧の大きい藻食性魚類の食害から的確に保護される。この場合、アワビ6等の藻食性の匍匐性水産生物は、図示のように保護網4と造成用基盤1の外側面との間隙から進入して移植用海藻種苗3を捕食することになるが、前述のように匍匐性水産生物の海藻に対する摂食圧は藻食性魚類に比べて非常に小さく、また移植用海藻種苗3は柱状体2により造成用基盤1の上面から離間した部位に付設されることから、移植用海藻種苗3に対する食害はそれほど大きくない。したがって、造成用基盤1の設置量の選定によって造成の確実性を充分確保することができる。そして、移植用海藻種苗3が生長して造成が完了した場合には、その移植用海藻種苗3やその後の着生海藻から生長した海藻5がやがて造成用基盤1上に落ち、図示のように保護網4と造成用基盤1の外側面との間隙などを通じて保護網4の外部へ流出してアワビやサザエ等の餌料となり得る。また、藻食性魚類の食害から保護された保護網4の内部の保護空間は、造成後も引続きアワビやサザエ等の藻食性の匍匐性水産生物に対する餌料提供場として機能することになる。さらに、保護網4内の海藻は、藻場の永続性を助勢する核としても機能し得ることになる。
【0009】
図2〜図7は前記実施例の設置の手順を示した作業説明図である。図2は前記造成用基盤1を示した斜視図であり、図示のように造成用基盤1としては、大径(直径Da)で比較的高さの低い円柱状からなるコンクリート製のものを用い、その上端面に4本の柱状体2を立設している。図3は付設前の前記移植用海藻種苗3を拡大して示した斜視図であり、図示のように取付バンド8に対して多数の移植用海藻種苗3を装着している。図4は移植用海藻種苗3を柱状体2に取付けた状態を拡大して示した斜視図であり、図示のように移植用海藻種苗3は、取付バンド8を柱状体2の上部に形成された凹溝部に係合させた状態で取付けられる。図5はその移植用海藻種苗3の取付後の状態を示した造成用基盤1の斜視図である。図6は前記保護網4を示した斜視図であり、図示のように保護網4は、適宜の網材によって一体的に形成された短筒部9と上蓋部10から構成されており、その網目の大きさは、前述のようにアイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定されている。また、短筒部9の直径Dbの大きさは、前記造成用基盤1の直径Daより大きく設定され、それらの保護網4と造成用基盤1の外側面との間に、通用部としてアワビ6等の藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止する間隙が形成されるように構成されている。さらに、短筒部9の高さに関しては、造成用基盤1へ装着した状態において、上蓋部10の下方に移植用海藻種苗3が生長した場合に十分なスペースが得られるように設定されている。図7は保護網4を造成用基盤1へ装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。図示のように、保護網4は、造成用基盤1に対して、その下端部が造成用基盤1の下端部より上方に位置し、海底との間に藻食性の匍匐性水産生物が進入できる間隙を設けた状態に装着される。なお、保護網4の造成用基盤1に対する装着の仕方は、例えば保護網4の内側に図示しない適宜の連結部材を3箇所以上突出させておき、それらの連結部材を介して造成用基盤1に固着することにより、所定の通用部をあけて装着することができる。
【実施例2】
【0010】
図8及び図9は本発明に関する第2実施例を示したもので、図8は本実施例に係る保護網を示した斜視図、図9はその保護網を造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。本実施例は、図8に示したように保護網11の高さ方向の途中に段部12を形成するとともに、その保護網11を図9に示したように造成用基盤13の上面に所要数立設した支柱14を介して支持するように構成した点で特徴を有する。その余の構成においては、前記実施例の造成用基盤1や保護網4と基本的に異なるところはなく、前記造成用基盤13の外側面と前記保護網11との間に、通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止する間隙を形成する点でも共通しており、同様の作用効果を奏するものである。
【実施例3】
【0011】
図10〜図12は本発明に関する第3実施例を示したもので、図10は本実施例に係る造成用基盤を示した斜視図、図11は本実施例に係る保護網を示した斜視図、図12はその保護網を前記造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。本実施例は、図10に示したように造成用基盤15に通路16を形成した点で特徴を有する。そして、本実施例の場合には、図12に示したように造成用基盤15に対して図11に示した保護網17を被せた状態に装着して海底へ沈設するように構成されている。また、造成用基盤15の外側面と保護網17との間には、前記実施例と同様に、通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る間隙を形成している。したがって、その間隙を介して匍匐性水産生物だけが保護網17の内部へ進入し、前記通路16を経て容易に造成用基盤15の上方に到達することが可能である。以上のように、本実施例に場合には、造成用基盤15の外側面と保護網17との間隙により藻食性魚類の侵入を阻止し得るように構成しているので、通路16の大きさは、アワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物が進入し得る大きさ以上であれば足りる。
【0012】
因みに、前記通路16の大きさをアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定することにより前記通用部として用いることも可能である。この場合には、通路16自体によって藻食性魚類の侵入が阻止されることから、図12に示した保護網17の造成用基盤15に対する装着形態のままでも適用は可能であるが、保護網17の直径を縮小して、造成用基盤15に対して間隙を設けることなく、通路16の前記通用部としての機能を損わない位置に直接的に装着する形態も可能である。さらに、それらの通路16と保護網17とを重合させ、それらの組合わせによって前記通用部としての機能を持たせるように構成することも可能である。
【実施例4】
【0013】
図13〜図15は本発明に関する第4実施例を示したもので、図13は本実施例に係る造成用基盤を示した正面図、図14は本実施例に係る保護網組立体を中央部で破断して示した縦断面図、図15はその保護網組立体を前記造成用基盤に装着することにより構成される、本実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。本実施例は、図13及び図14に示したように、造成用基盤18とは別個に、その造成用基盤18の外径Dcより若干大きい内径Ddを有する下部環状円板19と、該下部環状円板19との間に設置したスペーサ20によって前記通用部としての間隙21をあけた状態に設置される上部環状円板22とを備え、その上部環状円板22の上方に保護網23を装着してなる保護網組立体24を用いた点で特徴を有する。そして、本実施例の場合には、図15に示したように、造成用基盤18の上方から、その外側面に下部環状円板19が外嵌されるように保護網組立体24を被せ、必要に応じてそれらの造成用基盤18と保護網組立体24とを適宜手段により結合することにより設置状態が形成される。なお、上部環状円板22の内径は、図14に示したように下部環状円板19の内径Ddより大きく設定されており、保護網組立体24を造成用基盤18に被せた設置状態において、上部環状円板22の内側面と造成用基盤18の外側面との間に、前記間隙21を介して進入した匍匐性水産生物の内部へ通路が形成されるように構成している。そして、本実施例においても、下部環状円板19と上部環状円板22との間の前記間隙21は、前記通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定され、前記実施例と同様の機能を奏するように構成されている。すなわち、本実施例の場合には、下部環状円板19と上部環状円板22との間のほぼ全周に形成される間隙21が前記通用部として機能することになる。
【実施例5】
【0014】
図16は本発明の第5実施例に係る藻場造成用構造物を中央部で破断して示した縦断面図である。図示のように、本実施例においては、平板状に形成された下部円板25と、該下部円板25に対してスペーサ26を介して前記通用部としての間隙27をあけた状態に設置される上部環状円板28とを一体的に構成するとともに、その上部環状円板28の上面に前記移植用海藻種苗3を付設した所要本数の柱状体2を立設し、それらの下部円板25、上部環状円板28、移植用海藻種苗3を付設した柱状体2によって藻場造成用構造物を構成した点で特徴を有する。さらに、上部環状円板28には、中央開口部29が形成されており、また上部には移植用海藻種苗3を付設した柱状体2を被うように保護網30が設置されている。なお、本実施例における下部円板25と上部環状円板28との間の間隙27も、前記通用部としてアワビやサザエなどの藻食性の匍匐性水産生物の進入を許容し、アイゴ、イスズミ、ブダイ等の藻食性魚類の侵入を阻止し得る大きさに設定され、前記実施例と同様の機能を奏するものである。しかして、藻食性の匍匐性水産生物は、下部円板25と上部環状円板28との間の間隙27から進入し、上部環状円板28に形成した中央開口部29を経て保護網30内へ入り込み、内部の海藻を捕食することになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に関する第1実施例の設置状態を示した説明図である。
【図2】同実施例に係る造成用基盤を示した斜視図である。
【図3】付設前の移植用海藻種苗を拡大して示した斜視図である。
【図4】移植用海藻種苗の柱状体への取付状態を拡大して示した斜視図である。
【図5】移植用海藻種苗の取付後の状態を示した造成用基盤の斜視図である。
【図6】前記実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図7】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図9】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。
【図10】本発明の第3実施例に係る造成用基盤を示した斜視図である。
【図11】同実施例に係る保護網を示した斜視図である。
【図12】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した斜視図である。
【図13】本発明の第4実施例に係る造成用基盤を示した正面図である。
【図14】同本実施例に係る保護網組立体を中央部で破断して示した縦断面図である。
【図15】同実施例に係る藻場造成用構造物を示した正面図である。
【図16】本発明の第5実施例に係る藻場造成用構造物を中央部で破断して示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…造成用基盤、2…柱状体、3…移植用海藻種苗、4…保護網、5…海藻、6…アワビ、7…捨石、8…取付バンド、9…短筒部、10…上蓋部、11…保護網、12…段部、13…造成用基盤、14…支柱、15…造成用基盤、16…通路、17…保護網、18…造成用基盤、19…下部環状円板、20…スペーサ、21…間隙、22…上部環状円板、23…保護網、24…保護網組立体、25…下部円板、26…スペーサ、27…間隙、28…上部環状円板、29…中央開口部、30…保護網
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んで藻食性魚類から保護する海藻の保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー内を藻食性の匍匐性水産生物の餌料場として提供することを特徴とする藻場造成方法。
【請求項2】
前記保護カバー内に移植用海藻種苗を設置することを特徴とする請求項1記載の藻場造成方法。
【請求項3】
造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んで藻食性魚類から保護した海藻の保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物の前記保護カバー内への進入を許容する通用部を設けたことを特徴とする藻場造成用構造物。
【請求項4】
前記保護カバー内に移植用海藻種苗を設置したことを特徴とする請求項3に記載の藻場造成用構造物。
【請求項5】
前記通用部を造成用基盤と保護カバーとの間の間隙によって形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の藻場造成用構造物。
【請求項6】
前記造成用基盤に前記匍匐性水産生物の通過可能な通路を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の藻場造成用構造物。
【請求項1】
造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んで藻食性魚類から保護する海藻の保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物のカバー内への進入を許容する通用部を設けて、前記保護カバー内を藻食性の匍匐性水産生物の餌料場として提供することを特徴とする藻場造成方法。
【請求項2】
前記保護カバー内に移植用海藻種苗を設置することを特徴とする請求項1記載の藻場造成方法。
【請求項3】
造成用基盤に保護網などの多孔状の保護カバーで囲んで藻食性魚類から保護した海藻の保護空間を設けるとともに、藻食性魚類の侵入を阻止する一方、アワビやサザエ等の匍匐性水産生物の前記保護カバー内への進入を許容する通用部を設けたことを特徴とする藻場造成用構造物。
【請求項4】
前記保護カバー内に移植用海藻種苗を設置したことを特徴とする請求項3に記載の藻場造成用構造物。
【請求項5】
前記通用部を造成用基盤と保護カバーとの間の間隙によって形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の藻場造成用構造物。
【請求項6】
前記造成用基盤に前記匍匐性水産生物の通過可能な通路を形成したことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の藻場造成用構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−54635(P2008−54635A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238393(P2006−238393)
【出願日】平成18年9月2日(2006.9.2)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月2日(2006.9.2)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】
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