説明

蛇腹式建造物

【課題】本発明は、構造が単純で、トンネル支柱が移動し易く、これに連動した被覆材の開閉が軽便である建造物であって、ビニールハウス、ガレージ、倉庫、作業場としても使える蛇腹式建造物を提供するものである。
【解決手段】トンネル状の両端部支柱と中間支柱群を立設し、該支柱群の外側を覆う被覆資材を備え、前記中間支柱群をトンネル軸方向に移動可能にし、かつ、被覆資材を該支柱群に連結して前記中間支柱群の移動と共に展開し又は畳めるように配設した蛇腹式建造物であって、前記両端部支柱が各両足元を角パイプで、また、中央頂部を底面に溝状の開口部を有する丸パイプで架設して固設し、前記各中間支柱の頂部から上向きに接合した略球状体を、前記丸パイプ内に遊嵌させ、前記丸パイプから、前記各中間支柱が吊るされて摺動可能にすると共に、前記各中間支柱の脚部両足元を、前記角パイプに遊嵌して摺動可能に構成したことを特徴とする蛇腹式建造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単に組み立てることができる簡易な建造物であって、農圃において簡易ハウスとして、また、空き地において倉庫、作業場、又はガレージとして用いることができ、屋根と側壁を軽便に展開又は畳めるように構成した蛇腹式建造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、手軽で安価なパイプハウスやトンネルなどを利用した栽培が広く普及して、多くの野菜が周年栽培されるようになってきている。トンネルの施工は、簡単な構造であるが、手間の掛かる工法である。しかも、トンネルは、栽培環境の管理、例えば、トンネル内の雰囲気温度、日照などを調節するために、被覆資材を着脱を何度も行う点で、大変手間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は、これらの問題を解決するために、野菜の栽培環境、即ち保温、遮光、防虫等に関して好適に調節できるように、被覆資材を張設したトンネルを畝に沿って覆うように展開し、又は畳めるようにした蛇腹式トンネルを提供した〔参考文献1〕。また、出願人は背の高い野菜についても適用することができる蛇腹式トンネル(特願2011−001868)を出願している。また、ガレージに適用できる蛇腹式ガレージ(特願2011−144999)、倉庫や作業場に適用できる蛇腹式倉庫兼作業場(特願2011−145000)も出願している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−136293公報(〔0008〕、〔図1〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の先行技術は、特に、背丈の高い野菜や支柱を要する野菜などに用いるトンネルの場合に、背丈の高いトンネル支柱を用いたトンネルが要求されるが、背丈の高いトンネル全体を前記トンネル支柱の二つの脚部を使って摺動して開閉することは容易でなく、また同様に、このトンネルの被覆材を開閉するために、背丈の高いトンネルを畝方向に摺動する際には、安定が悪く、かつ摺動に対する摩擦抵抗が大きくて不便な点があった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、構造が単純で、しかも、トンネル支柱が移動し易く、これに連動した被覆材の開閉が軽便である建造物であって、農圃において、トンネル(簡易ビニールハウス)として使え、また、簡易ガレージ、大型の倉庫、作業場としても使える蛇腹式建造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る蛇腹式建造物は、トンネル状の両端部支柱と中間支柱群を立設し、該支柱群の外側を覆う被覆資材を備え、前記中間支柱群をトンネル軸方向に移動可能にし、かつ、被覆資材を該支柱群に連結して前記中間支柱群の移動と共に展開し又は畳めるように配設した蛇腹式建造物であって、前記両端部支柱が各両足元を角パイプで、また、中央頂部を底面に溝状の開口部を有する丸パイプで架設して固設し、前記各中間支柱の頂部から上向きに接合した略球状体を、前記丸パイプ内に遊嵌させ、前記丸パイプから、前記各中間支柱が吊るされて摺動可能にすると共に、前記各中間支柱の脚部両足元を、前記角パイプに遊嵌して摺動可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る蛇腹式建造物は、請求項1に記載の蛇腹式建造物において、蛇腹式建造物の任意の相隣合う中間支柱間で被覆資材を分割した個所を少なくとも一つ以上設けると共に、該分割個所の該支柱同士を結合又は分離可能にしたことを特徴とする。
【0009】
これらの構成を採用することにより、蛇腹式建造物は、農圃において使用して、野菜の栽培において保温、遮光、防虫が必要な場合には、蛇腹式建造物の中間支柱群を展開すれば、被覆資材も展開されて畝上にトンネル(ビニールハウス)を形成することが容易にできる。また、一方、畝に対して保温状態を和らげたり、日照を施すとか、昆虫による花粉媒介とかで、トンネルの覆いを必要としない際には、支柱群を詰めて移動すれば、被覆資材を畳めるので、トンネルを撤去したのと同じ効果を簡易な操作で行うことができる。
【0010】
また、蛇腹式建造物は、簡易ガレージとしても使用できる。車を所定の位置に駐車して、蛇腹式建造物の支柱群を展開すれば、被覆資材も展開されて屋根付きのガレージを形成することができる。一方、自動車に乗降する場合には、支柱群の間隔を詰めて移動すれば、被覆資材を畳めるので、ガレージの屋根や壁を撤去したのと同じ状態になり、車のドアの開閉、人の乗降及び荷物の積み降ろしの妨げとならない状態を手軽な操作で行うことができる。
【0011】
さらに、蛇腹式建造物は、簡易倉庫や作業場としても使用できる。その場合、蛇腹式建造物の中間支柱群を展開すれば、被覆資材も展開されて密閉式の倉庫や作業場を容易に形成することができる。一方、中間支柱群の間隔を詰めて移動すれば、被覆資材を畳めるので、蛇腹式建造物の側壁や屋根を開放して、オープンスペースとすることができる。前述したように、蛇腹式建造物をクローズドスペース又はオープンスペースにする作業が容易であって、倉庫又は作業場に適した作業環境を、任意に選択して構築することができる。また、蛇腹式建造物を倉庫として使用する場合には、蛇腹式建造物の側部(長辺部)から、作業場への出入りや荷物の搬入又は搬出が容易となる。よって、重たい荷物を搬入又は搬出する場合には、トラックなどの車を倉庫の中の側部のすぐ横に横付けられるので、楽に荷物などの搬出入の作業ができる。また、蛇腹式建造物を作業場として使用する場合にも、中間支柱群を間隔を詰めて移動し、被覆資材を畳んで使用すれば、作業場がオープンスペースの状態となるので、換気が必要な作業、例えば、塗装作業や溶接作業を行うのに都合がよく、また、作業終了時に支柱群と被覆材を展開して覆いをすれば、そのまま倉庫の状態となり、片付けが楽で、しかも、作業に使った物が雨に濡れないようにすることができる。
【0012】
また、蛇腹式建造物は、両端部支柱の頂部を、底部に溝状の開口部を有する丸パイプで連結しており、その丸パイプ内に球状体の突起が収まり、該丸パイプから突起に固設した中間支柱が吊るされている。また、両端部支柱の両足元部を、断面が正方形又は矩形の角パイプで連結してレールのようになっており、各中間支柱の足元が、該角パイプを包むように配置されている。ここで、各中間支柱の足元のサイズを、角パイプの外周から若干大きくしており、通常は接触していないが、中間支柱が斜めに歪んだ場合は、接触して角パイプがガイドの役割を果たす。また、強風等によって、中間支柱に荷重が掛かり頂部の丸パイプが撓んで、中間支柱が沈んだ場合には、各中間支柱の足元が、角パイプに接触して中間支柱の足元で加重を支える役割を果たす。従って、本願発明では、各支柱は頂部だけで吊るされており、しかも、球状体が丸パイプ(レール)内を滑っていくので、中間支柱の移動時において、中間支柱と丸パイプ(レール)との間に発生する摩擦による抵抗を、従来のものに比して著しく軽減することができる。よって、小さな力で各中間支柱を移動させることができる。また、足元に角パイプのレールがあるので、各中間支柱は、前後左右に傾斜した状態にならない。また、突風などで中間支柱に思わぬ荷重がかかっても、足元の角パイプのレールで荷重を支えることができるので、頂部の丸パイプが破損したりすることがない。
【0013】
請求項3に係る蛇腹式建造物は、請求項1又は2に記載の蛇腹式建造物において、前記両端部支柱および前記各中間支柱の両足に、支柱の高さを変える高さ調整機構を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成を採用することにより、蛇腹式建造物の両端部支柱および中間支柱群の高さを調整できる。通常は、手の届く高さにしておけば、中間支柱の移動が楽であり、突発的に背の高い物、例えばトラクターなどが蛇腹式建造物の中に入って作業する場合には、支柱の高さをあげることによって、蛇腹式建造物内に進入可能となる。
【0015】
請求項4に係る蛇腹式建造物は、請求項1又は2又は3に記載の蛇腹式建造物において、妻部に備えた妻部用被覆資材がその中央部で縦方向に分割又は結合可能にしたことを特徴とする。
【0016】
この構成を採用することにより、妻部から蛇腹式建造物に雨風が入ることを防ぎ、また、通常の人や機械や車の出入りは、蛇腹式建造物の妻部からできる。特に、倉庫として使用する場合には、密閉でき不審者の侵入を防止し、保安状態を良好にすることができる。
【0017】
請求項5に係る蛇腹式建造物は、請求項1から4のいずれかの蛇腹式建造物において、前記被覆資材が、柔軟性を有するシート状であり、かつ、プラスチック製フィルム、寒冷紗、不織布、ブルーシート、熱線遮断シート及び紫外線遮断シートから少なくとも1つを選択してなることを特徴とする。
【0018】
この構成を採用することにより、蛇腹式建造物の屋根や壁を形成する被覆資材には、柔軟性を有するシート状であって、蛇腹式建造物の目的及び用途に応じて、プラスチック製フィルム、寒冷紗、不織布、ブルーシート、熱線遮断シート、紫外線遮断シート等を或いはそれらを使い分けることができる。ビニールハウスとして農業に用いて、保温のために使用するのであれば、プラスチックフィルムや不織布が、遮光であれば、着色プラスチックフィルムや不織布が、通気性のある遮光材として寒冷紗が、防虫であれば、これらのいずれの被覆資材も使える。また、倉庫に用いる場合には、ブルーシートは、価格も安く入手も容易である。また、熱線遮断シートを使用すれば、、夏場でも作業場内の温度が高温になることを防ぐことができ、また、紫外線防止シートを用いれば、倉庫内に保管している物、例えば、プラスチック製品の劣化を抑えることができる。このように、目的に応じて、これらの被覆資材を適宜選択して用いることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る請求項1から5に記載の蛇腹式建造物によれば、建造物を展開する又は畳む作業が、頂部に設けられた丸パイプと、丸パイプから吊り下げる構造持つ中間支柱との組み合わせによって、中間支柱が、頂部と両足元との三点支持になって、中間支柱の立設状態が安定すると共に、滑らか且つ軽便に中間支柱の移動作業をすることができる。
【0020】
また、本発明の蛇腹式建造物は、従来の、ビニールハウス、ガレージ、倉庫又は作業場に比べて簡易な構造であるから設備費を安くすることができる。また、解体と組み立て容易であり、蛇腹式建造物を必要に合わせて、ビニールハウス、ガレージ、倉庫又は作業場等、様々な使用ができ汎用性があるので、建造物の稼働率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、模式的全体斜視図である。
【図2】本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、(a)は支柱脚部と支柱中央頂部の可動部の模式的斜視図、(b)は頂部レール及び、中間部支柱の頂部の断面図である。
【図3】本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、支柱と被覆資材を分割している場合の模式的全体斜視図である。
【図4】本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、(a)は分割部の支柱と被覆資材を展開している場合の模式的側面図、(b)は分割部の支柱と被覆資材を分割している場合の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係わる蛇腹式建造物を実施するための形態について図1、2、3、4を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、模式的全体斜視図であり、図2の(a)は支柱脚部と支柱中央頂部の可動部の模式的斜視図、(b)は頂部レール及び、中間部支柱の頂部の断面図であり、図3は本発明の実施するための形態に係る蛇腹式建造物であって、支柱と被覆資材を分割している場合の模式的全体斜視図で、図4の(a)は分割部の支柱と被覆資材を展開している場合の模式的側面図、(b)は分割部の支柱と被覆資材を分割している場合の模式的側面図である。
【0023】
図1に示すように、蛇腹式建造物1は、農圃等にアーチ型の端部支柱2−1、中間部支柱2−2、中間部支柱(分割部)2−2−1各支柱をトンネル状に立設し、該中間部支柱2−2、2−2−1の外側を被覆資材4a、4bにより覆われて構成される。そして、固定された両端部支柱2−1を除き中間部の各支柱2−2、2−2−1をトンネルの軸方向に移動可能にし、かつ、被覆資材4aを該支柱2−2、2−2−1に連結して該支柱2−2、2−2−1とともに展開し又は畳めるように配設している。分割箇所では、任意の分割箇所で中間部支柱(分割部)2−2−1を配設しており、図3で示すように、中間部支柱(分割部)2−2−1同士が、支柱分割部連結部材5によって、結合及び分割が自在にできるようになっている。これは一例であって、任意の箇所で、適宜、分割個所を選択できる。また、妻部には、二分割している妻部用の被覆資材4bを端部支柱2−1に連結している。これらの構成により蛇腹式建造物1は、構造が簡易で設備が安く、しかも簡単に組立、解体ができるのである。なお、中間部支柱2−2、2−2−1は、パイプ又は棒状であり、断面形状は丸型又は角型である。
【0024】
両端部支柱2−1間には、該端部支柱2−1の中央頂部2−1−aに丸パイプ3aが、また、両脚部2−2−bに角パイプ3bが架設されて堅固に固設されており、端部支柱固定具6によって安定して自立している。丸パイプ3aは、底面が軸方向に筋状の開口部を有している。図2(a)、(b)に示すように、各中間部支柱2−2、2−2−1に設けられた球状の突起物2−2−aが、該開口部を通ってその丸パイプ3a内に収まって遊嵌している。つまり、中間部支柱2−2、2−2−1は、丸パイプ3aから吊るされた状態となっている。したがって、丸パイプ3a内に、中間部支柱2−2、2−2−1の球状体が遊嵌して吊るされているので、該中間部支柱2−2、2−2−1は、移動時の摩擦抵抗が少なくなり、小さな力で難なく動かすことができ、軽便に蛇腹の開閉作業をすることができる。また、角パイプ3bは、図2(a)に示すように、断面形状が、矩形又は正方形をしている。そして、各中間部支柱2−2、2−2−1の脚部2−2−bは、C型鋼又は溝型鋼で出来ており、角パイプ3bの外側に遊嵌してある。C型鋼又は溝型鋼は、一辺当たり、角パイプ3bより約5〜15mm程大きくしてあり、通常、中間部支柱2−2、2−2−1は、丸パイプ3aから吊られており、角パイプ3bから浮いた状態を保っている。しかし、各中間部支柱2−2、2−2−1を移動させる場合には、各中間支柱2−2、2−2−1の脚部であるC型鋼又は溝型鋼2−2−bが、角パイプ3bに接触して、前後左右に、支柱が傾斜しないようにガイドの役割を果たしている。従って、三点支持で中間部支柱が軸方向に倒れないで安定した状態を維持して立設できる。また、中間部支柱2−2、2−2−1に突風等による思わぬ荷重がかかった場合には、中間部支柱脚部2−2−bが角パイプ3bに接触して、支柱2−2、2−2−1にかかる荷重を、頂部2−2−a、両脚部2−2−bの3点で支持して、丸パイプ3a等が破損することを防ぐことができる。なお、支柱2−1、2−2、2−2−1は、金属性又はプラスチック製のパイプ又は棒体で製作するのが、丈夫で軽く好適である。
【0025】
また、端部支柱2−1の脚部2−1−b及び中間部支柱2−2、中間支柱(分割部)2−2−1の脚部であるC型鋼又は溝型鋼2−2−bには、高さ調整機構8が設けられている。したがって、通常は、支柱2−1、2−2、2−2−1の高さを人の手が届く高さにして、蛇腹の開閉作業が楽になるようにしておき、臨時にトラクターなどの機械が蛇腹式建造物1に入って作業する場合にのみ、支柱2−1、2−2、2−2−1の高さを高く調節して機械が入れるようにすることができる。なお、高さ調整機構8は、例えば、端部支柱2−1や中間部支柱2−2、2−2−1の足元を嵌め込む当該支柱より若干径の大きい短いパイプに、高さ2〜3段の穴を開け、支柱2−1、2−2、2−2−1の固定孔とを、貫通するように、金属の棒を差し込んでその高さを調整することができる。
【0026】
被覆資材4は、柔軟性を有する薄厚状のシートであって、中間部支柱2−2、2−2−1と一緒に移動できるようにするために、支柱を内骨として連結する必要があり、支柱2−1、2−2、2−2−1の複数箇所に、支柱2−1、2−2、2−2−1に挿通したリング状の被覆資材連結部4cを予め被覆資材4に形成して置くか、又は、支柱2−1、2−2、2−2−1の骨材に対して被覆資材4と同じ共布地で挟んで接着して被覆資材連結部4cとすることで連結可能である。
【0027】
また、妻部には、被覆資材連結部4cを用いて、端部支柱2−1に妻部用被覆資材4bを連結している。妻部用被覆資材4bは、中央部付近で縦に二分割しており、トラクターや車等を蛇腹式建造物1に搬入出するときには、二分割された妻部用被覆資材4bをファスナーやマジックテープ(登録商標)等の留め具をはずして両側の妻部用被覆資材4bを捲って中に入れる。他方、妻部用被覆資材4bをファスナーやマジックテープ(登録商標)等の留め具で連結すれば、ビニールハウスとして蛇腹式建造物1を使用する場合に、中に寒気が入ってくることを防ぐことができ、また、ガレージ、倉庫又は作業場として蛇腹式建造物1を使用する場合には、雨、埃又は泥が入って、車、荷物又は作業場が汚れることを防ぐことができる。
【0028】
また、蛇腹式建造物1の屋根や壁を形成する被覆資材4aには、蛇腹式建造物1の目的及び用途に応じて、プラスチック製フィルム、寒冷紗、不織布、ブルーシート、熱線遮断シート及び紫外線遮断等を使い分ける。例えば、蛇腹式建造物1をビニールハウスとして使用する場合に、保温のためであれば、プラスチックフィルムや不織布が、遮光であれば、着色プラスチックフィルムや不織布が、通気性のある遮光材として寒冷紗が、防虫であれば、いずれの被覆資材も使えるように、これらの被覆資材を適宜選択して用いることができる。また、蛇腹式建造物1をガレージ、倉庫又は作業場して使用する場合には、、ブルーシートは、安価で入手し易いので、頻繁に蛇腹式建造物1を移設する場合に用いれば、移設時に被覆資材4aが傷んでも設備費を安く抑えることができる。熱線遮断シートを使用するれば、夏場でも蛇腹式建造物1内の気温が高温になることを防ぐことができるので、作業場として使用する場合快適な作業環境が得られる。また紫外線遮断シートを用いれば、蛇腹式建造物1内に保管している自動車や物、例えば、プラスチック製品の劣化を抑えることができる。
【0029】
次に、図3、4を用いて使用方法を説明する。まず、蛇腹式建造物1をビニールハウスとして使用する場合について説明する。蛇腹式建造物1は、幅2.0〜2.5m、長さ約20m、高さ2.0〜2.5mであり、これを1ユニットとして使用する。農圃の状況によっては、2ユニットをトンネル軸方向に接続させて、長さを約40mとして使用することもできる。これによって、機械仕事、例えば、トラクターでの作業が、連続して行うことができるので作業効率がよくなる。ここで、機械作業をするトラクターが蛇腹式建造物1内に入る場合には、前述のように、支柱2−1、2−2、2−2−1の足元2−1−b、2−2−bに備えられた高さ調整機構8によって支柱2−1、2−2、2−2−1の高さを高くして機械を入れる。
【0030】
蛇腹式建造物1は、長大な数本の畝20を内部に納め、軸方向に分割して、覆うように配設するようにしたものである。隣合う中間部支柱(分割部)2−2−1同士の間は、連結部材5を用いて、結合又は分割可能に構成している。これにより、野菜等を栽培している畝を、保温、遮光、防虫等の目的のために、部分的にトンネルで覆ったり、外したりすることを手間が要らずに素早くおこなうことができる。特に、長大な畝の場合には、複数個所で分割しているので、蛇腹式建造物1の覆い、外しの作業がやり易い。
【0031】
次に、蛇腹式建造物1を簡易ガレージとして使用する場合について説明する。通常は、蛇腹式建造物1の妻部側から自動車が出入りする。また、自動車を格納する場合には、中間部支柱2−2、2−2−1及び被覆資材4aを展開して、中間支柱(分割部)2−2−1同士を結合させて固定する。これによって、自動車が完全に覆われているので、日光、雨、ほこり、鳥の糞、黄砂、鉄粉等によって、車が汚れたり、傷ついたりせず、塗装の劣化を防止することができる。自動車への人の乗降時に、屋根や壁である支柱2−2、2−2−1や被覆資材4aが邪魔にならないように中間部支柱2−2、2−2−1及び被覆資材4を分割して畳んでもよい。なお、幅の広い蛇腹式建造物1を使用する場合には、もちろん、乗降時に、支柱2−2、2−2−1被覆資材4aを分割して畳む必要はなく展開した状態で使用できる。また、自動車の出入庫時には、妻部用被覆資材4bを妻部用被覆資材固定具7で端部支柱2−1に束ねて留めることで自動車の出入庫の邪魔にならないようにする。なお、端部支柱2−1の頂部付近をファスナー等で端部支柱2−1から一部を分離して、妻部用被覆資材4aの側部を端部支柱2−1に、妻部用被覆資材固定具7で固定してもよい。
【0032】
さらに、蛇腹式建造物1を倉庫として使用する場合について説明する。蛇腹式建造物1の中間部支柱2−2、2−2−1に連結している被覆資材4aを中間部支柱(分割部)2−2−1同士間で分割させることによって、蛇腹式建造物1の側部から、人の出入りや荷物の搬出入をし易くできる。したがって、長さが長い蛇腹式建造物1を使用する場合や、重量のある荷物を搬出入する場合に、妻部の出入り口まで行く必要がなく、任意の場所で側部を開放できるので、トラックや車を倉庫に横付けすることによって、荷物を手で運ぶ距離を短くすることができ作業の効率化が図れる。また、人力で運ぶことができない程の重量のある荷物を蛇腹式建造物1に搬出入する場合にも、中間部支柱(分割部)2−2−1を分割して畳むことによって、屋根を開き、そこから、クレーン車やキャブバッククレーン車(ユニック車)を使用して荷物を吊上げ、搬出入が可能となる。
【0033】
また、蛇腹式建造物1を作業場として使用する場合にについて説明する。中間部支柱(分割部)2−2−1を分割させて支柱2−2、2−2−1を畳んで使用すれば、作業場の屋根と側壁が存在しない状態となるので、換気が必要な作業、例えば、塗装や溶接作業を行うのに都合がよい。また、作業終了時の作業場における片付けが、分割して畳んでいた中間部支柱2−2、2−2−1及び被覆資材4を展開して繋げるだけで倉庫の状態となり、大変楽で、しかも、簡単に、作業で使った物が保管でき、また、雨に濡れないようにすることができる。また、中間部支柱2−2、2−2−1及び被覆資材4aを展開すれば、作業場内に風が入らないので、軽量な物も風であおられたり、埃が入ることがなく、特に冬期において作業者は寒い思いをせずに作業できる。また、中間部支柱2−2、2−2−1を畳んだ状態にすれば、清掃した場合においても、換気ができて、蛇腹式建造物1内の乾きも早く大変便利である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
簡易なビニールハウス、ガレージ、倉庫、作業場として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:蛇腹式建造物
2−1:端部支柱(固定)
2−2:中間部支柱 2−2−1:中間部支柱(分割部)
2−1−a:端部支柱頂部 2−1−b:端部支柱脚部
2−2−a:中間部支柱頂部 2−2−b:中間部支柱脚部
3a:丸パイプ 3b:角パイプ
4a:被覆資材 4b:妻部用被覆資材 4c:被覆資材連結部
5:支柱分割部連結部材 6:端部支柱固定具
7:妻部用被覆資材固定具 8:高さ調整機構
20:畝 21:作物用の支柱 22:作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル状の両端部支柱と中間支柱群を立設し、該支柱群の外側を覆う被覆資材を備え、前記中間支柱群をトンネル軸方向に移動可能にし、かつ、被覆資材を該支柱群に連結して前記中間支柱群の移動と共に展開し又は畳めるように配設した蛇腹式建造物であって、前記両端部支柱が各両足元を角パイプで、また、中央頂部を底面に溝状の開口部を有する丸パイプで架設して固設し、前記各中間支柱の頂部から上向きに接合した略球状体を、前記丸パイプ内に遊嵌させて、前記丸パイプから、前記各中間支柱が吊るされて摺動可能にすると共に、前記各中間支柱の脚部両足元を、前記角パイプに遊嵌して摺動可能に構成したことを特徴とする蛇腹式建造物。
【請求項2】
蛇腹式建造物の任意の相隣合う中間支柱間で被覆資材を分割した個所を少なくとも一つ以上設けると共に、該分割個所の該支柱同士を結合又は分離可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の蛇腹式建造物。
【請求項3】
前記両端部支柱および前記各中間支柱の両足に、支柱の高さを変える高さ調整機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛇腹式建造物。
【請求項4】
妻部に備えた妻部用被覆資材がその中央部で縦方向に分割又は結合可能にしたことを特徴とする請求項1又は2又は3のいずれかに記載の蛇腹式建造物。
【請求項5】
前記被覆資材が、柔軟性を有するシート状であり、かつ、プラスチック製フィルム、寒冷紗、不織布、ブルーシート、熱線遮断シート及び紫外線遮断シートから少なくとも1つを選択してなることを特徴とする請求項1から4に記載の蛇腹式建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111015(P2013−111015A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260176(P2011−260176)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(510158200)株式会社 ダイツウ (17)
【Fターム(参考)】