説明

血中遊離脂肪酸低下作用を有する医薬組成物

【課題】血中遊離脂肪酸と血中トリグリセライドとを低下させる医薬組成物を提供すること。
【解決手段】HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する血中遊離脂肪酸低下剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高脂血症、高血圧及び糖尿病は、それぞれ独立した動脈硬化の危険因子であるが、これらはインスリンの感受性が低下した状態、所謂「インスリン抵抗性」という共通の基盤を介して密接な関係がある。即ち、インスリン抵抗性が生じると、インスリンが過剰に分泌され、高インスリン血症を引き起こし、これによって高血圧、高脂血症、糖尿病が発症すると考えられている(例えば、非特許文献1参照)。近年、インスリン抵抗性は高血圧、糖尿病、血中脂質代謝異常、血液凝固系の亢進、内臓肥満等の動脈硬化を引き起こす病態の原因となっていると考えられていることから、このような症侯群はインスリン抵抗性症侯群と呼ばれている。
【0003】
一方で、肥満により肥大した脂肪細胞からは遊離脂肪酸(以下、FFAと称す)やTNF−αが分泌され、これらがインスリン抵抗性を生じさせると考えられている。なお、糖尿病では肥満を伴わなくてもインスリン作用不足のためにホルモン感受性リパーゼ活性が亢進し、脂肪細胞よりFFAが分泌されて高FFA血症になり、インスリン抵抗性を生じさせることも確認されている。最近では、FFA自体もインスリンの生合成を阻害することが判明しており、さらに、高トリグリセライド(以下、TGと称す)血症でもインスリン抵抗性が増大することが判っている(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
また、高FFA血症においては、FFAが直接血管内皮に作用して血管拡張障害を起こすとも言われており(例えば、非特許文献3参照)、高血圧の直接的な原因にもなっている。さらに、高TG血症では、TGが血液凝固因子を活性化し血栓ができやすくなり虚血性心疾患や脳梗塞の原因にもなることや、TG自体が血管に沈着する(例えば、非特許文献4参照)ことから動脈硬化関連疾患を加速することが知られている。
【0005】
このように血液中のFFAやTG濃度の増加はインスリン抵抗性症候群に起因する疾病等の発症・進展に深く関与するため、高FFA血症及び高TG血症の両方を予防又は治療することはインスリン抵抗性症候群の予防又は治療のみならず、その下流にある高脂血症、高血圧、糖尿病、ひいては動脈硬化関連疾患の予防又は治療にもなることから、臨床上極めて重要な意義を有するものと言える。
【0006】
なお、血中のTGとFFAの両方を低下させる薬剤として、フィブラート系薬剤のベザフィブラート(非特許文献5参照)、グリダゾン剤(例えば、非特許文献5参照)、ω−3脂肪酸のEPA(非特許文献6参照)、β3−アドレナリン受容体作動薬(非特許文献7参照)等がこれまでに知られているが、その効果は効果が不十分なため、より有効な薬剤の処方が望まれている。
【0007】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤(以下、スタチンと称する)については、血中TG低下作用は有するが、FFAの低下作用は十分でないことが知られている(例えば、非特許文献8参照)。
【0008】
ユビデカレノンは、代謝性強心剤として鬱血性心不全の治療薬として長年投与されてきており、近年では、加齢に伴いその血中濃度が低下することが知られるようになったことから(例えば、非特許文献9参照)、細胞活性を高める若返り健康補助食品又は化粧品としても使用されるようになっている。しかし、その血中のTG又はFFAの濃度を低下させる作用については知られていない。
【0009】
一方、スタチンは肝臓においてHMG−CoAからメバロン酸を合成する過程を阻害してコレステロールの合成を抑え血中コレステロールを低下させる薬物であるが、同時にユビデカレノンの合成も抑制することは良く知られている(例えば、非特許文献9参照)。
【0010】
さらに、ユビデカレノンの合成阻害が、スタチン投与に関連する骨格筋障害の原因であると言われており、そのような副作用を防ぐために、ユビデカレノンを含有させる抗コレステロール組成物が開示されている(特許文献1参照)。その後、スタチンにユビデカレノンを追加投与することにより血中CoQ10濃度が顕著に上昇することが実際に確かめられている(非特許文献10参照)。
【0011】
しかし、これまでにスタチンとユビデカレノンの併用によって血中のFFAが顕著に低下することは知られていない。また、インスリン抵抗性症候群の予防又は治療に本併用が有効であることは知られていないし、示唆されてもいない。
【特許文献1】特開平2−233611号公報
【非特許文献1】Medical Tribune,Vol.30,No.4&5,1997,p.23
【非特許文献2】臨床婦人科産科,Vol.56,No.2,2002,p.120−123
【非特許文献3】The Circulation Frontier,Vol.8,No.2,2004,p.25
【非特許文献4】http://www.kawagoe.saitama.med.or.jp/guide/090501.html
【非特許文献5】糖尿病,Vol.38,No.10,1995,p.764(Fig.2及びFig.3)
【非特許文献6】Clin Drug Invest,Vol.21,No.3,2001,p.178(Table 2)
【非特許文献7】Jpn J Pharmacol,Vol.74,No.1,1997,p.111(Table 1)
【非特許文献8】臨床薬理,Vol.25,No.1,1994,p.75
【非特許文献9】Animus,No.36,2004,p.37−40
【非特許文献10】動脈硬化,Vol.20,No.10,1992,p.843
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、インスリン抵抗性症候群の予防又は治療は、糖尿病、高脂血症、動脈硬化関連疾患、高血圧症などの予防又は治療にも結びつくため、優れた効果を有するインスリン抵抗性症候群の予防剤又は治療剤の開発が望まれている。
【0013】
しかし、本発明者は、現状では高脂血症、高血圧又は糖尿病等の予防又は治療に関心が集中しており、特に、高FFA血症についてはこれまでほとんど関心を持たれてこなかったこと、さらに、血中のFFAを低下させる作用を有する薬剤には、血中TGに対しては効果に乏しいか逆に上昇させること、又、血中のTGを低下させる作用を有する薬剤には血中FFAに対しては効果に乏しいか逆に上昇させることが多いこと等の現象に着目し、優れた血中FFA低下作用を有すると共に、血中TGをも低下させる薬剤を見出すべく鋭意研究を継続してきた。
【0014】
その結果、驚くべきことに、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとの併用により、それぞれ単剤の結果からでは予測できない、顕著な血中遊離脂肪酸の低下作用が発現することと良好な血中トリグリセライド低下作用も維持していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(1)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、血中遊離脂肪酸を低下させるための医薬組成物であり、好適には、
(2)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、血中遊離脂肪酸及び血中トリグリセライドを同時に低下させるための医薬組成物、
(3)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症を治療又は予防するための医薬組成物、
(4)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症及び高トリグリセライド血症を同時に治療又は予防するための医薬組成物、
(5)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症に起因する疾病を治療又は予防するための医薬組成物、
(6)高遊離脂肪酸血症に起因する疾病がインスリン抵抗性症候群である(5)に記載の医薬組成物、
(7)高遊離脂肪酸血症に起因する疾病が高血圧症、動脈硬化関連疾患又は糖尿病である(5)に記載の医薬組成物、
(8)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びその薬理上許容される塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項7から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(9)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチンナトリウムである、(1)乃至(7)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(10)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとが同一の医薬組成物中に含有する配合剤である(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の医薬組成物及び
(11)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤を含有する医薬組成物とユビデカレノンを含有する医薬組成物とからなるキットである(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の医薬組成物である。
【0016】
さらに、本発明は、
(12)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを同一の医薬組成物中に含有する(1)乃至(9)のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法、
(13)高遊離脂肪酸血症治療剤を製造するための、(1)乃至(11)のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用、
(14)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを同時に、順次又は別個に投与する高遊離脂肪酸血症の治療又は予防剤および
(15)哺乳動物に(1)乃至(11)のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、高遊離脂肪酸血症の治療方法又は予防方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する医薬組成物は、それぞれ単剤の結果からは予想できない顕著な血中FFA濃度低下作用を有し、同時に血中TG濃度低下作用を維持させるため、高FFA血症並びに高TG血症の予防又は治療、さらには、これらに起因するインスリン抵抗性症候群の予防又は治療に有用である。
【0018】
また、一般に懸念されているスタチン投与における副作用(血中CoQ10濃度の減少作用、さらにそれに起因すると考えられている骨格筋障害)が本発明にて予防できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(定義)
本発明における、「HMG−CoAリダクターゼ阻害剤」とは、コレステロール生合成系の律速酵素であるHMG(3−ヒドロキシ−3−メチルグリタリル)−CoA還元酵素を特異的かつ拮抗的に阻害する薬剤(一般名の語尾がスタチンであることからこの薬剤の総称としてスタチンと呼ばれている)であり、血中コレステロールを低下させることから、本来、高脂血症の治療剤として使用される。そのようなスタチンとしては、微生物由来の天然物質、それから誘導される半合成物質、及び全合成化合物のすべてが含まれ、例えば、プラバスタチンナトリウム、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、ピタバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムのようなスタチンであり得る。
【0020】
以下に、スタチンの代表的なものの平面構造式を示す。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】


【0023】
これらのスタチンのうち、プラバスタチンナトリウム、シンバスタチン及びアトルバスタチンカルシウム水和物が好適であり、プラバスタチンナトリウムが更に好適である。
【0024】
本発明における、「ユビデカレノン」とは、コエンザイムQ10、CoQ10、ユビキノン、ビタミンQ、コエンザイムQ(50)、ユビキノン50等と呼ばれる脂溶性ビタミン様物質であり、体内でも合成される。ミトコンドリア内でのATP産生に関わる回路における補酵素としての機能が知られている。コエンザイムQ10の「10」という数字は、構造中のイソプレンという化学構造の繰り返し単位の数を表している。また、ユビキノンの「ユビ」とは、ラテン語由来の「where」であり、従って「ユビキノン」とは、どこにでも存在するキノンとなる。実際、その名の通り、ユビキノンは体内のあらゆる組織に分布している。
【0025】
本発明における、血中遊離脂肪酸等の「低下」とは、臨床上意義のある程度に下げることを言う。
【0026】
本発明における「動脈硬化関連疾患」とは、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血、大動脈瘤、大動脈解離、間歇性跛行、末梢血行障害等であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
また、「動脈硬化関連疾患」の初期においては際立った自覚症状はなく、自己判断は容易ではないが、自覚症状としては、例えば、頭痛、偏頭痛、めまい、しびれ又はしびれ感、四肢の冷感、肩こり等がある。従って、これら自覚症状に対して、本発明のスタチンとユビデカレノンとを含有する医薬組成物を使用することで、上記疾患を初期段階で治療することができる。
【0028】
本発明の医薬組成物を投与する際は、それぞれの成分を同時に、順次又は別個に投与することが出来る。
【0029】
本発明における、「同時に」投与するとは、全く同時に投与することの他、薬理学上許される程度に相前後した時間に投与することも含むものである。その投与形態は、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、単一の組成物であることが好ましい。
【0030】
本発明における、「順次又は別個に」投与するとは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、例えば、1の成分を投与し、次いで、決められた時間後に、他の成分を投与する方法がある。
【0031】
また、投与する成分が3種以上ある場合には、「同時に、順次又は別個に投与する」とは、それらのすべてを同時に投与する方法、各々時間をおいて別々に投与する方法、2種以上を同時に投与し、時間をおいて残りの成分を投与する方法等を含む。
【0032】
本発明における、「治療する」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善させること或いは症状を抑制させることを意味する。
【0033】
(入手又は製造方法等)
本発明の組成物に含まれるスタチン、例えば、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びその薬理学的に許容される塩は、特開昭57−2240号(USP4346227)、特開昭57−163374号(USP4231938)、特開昭56−122375号(USP4444784)、特表昭60−500015号(USP4739073)、特開平3−58967号(USP5273995)、特開平1−279866号(USP5854259及びUSP5856336)又は特開平5−178841号(USP5260440)等に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
【0034】
また、ユビデカレノンは第14改正日本薬局方に収載されている。
【0035】
スタチンの1回投与量は、スタチンの種類、適応症、使用目的や年齢により異なるが、通常、0.05mg/kg乃至5.0mg/kgであり、好適には、0.1mg/kg乃至3.0mg/kgである。これを1日に1回乃至3回、症状に応じて、同時に、順次又は別個に投与することができる。
【0036】
ユビデカレノンの1回投与量は、適応症、使用目的や年齢により異なるが、通常、0.05mg/kg乃至30mg/kgであり、好適には、0.1mg/kg乃至15mg/kgである。これを1日に1回乃至3回、症状に応じて、同時に、順次又は別個に投与することができる。
【0037】
本発明の医薬組成物の有効成分であるスタチンとユビデカレノンとの投与量の比率は、スタチンの種類、適応症、使用目的や年齢により異なるが、例えば、スタチンとユビデカレノンとの投与量比率は、重量比で、1:2乃至1:100の範囲内であり得、好適には、1:2乃至1:30の範囲内である。
【0038】
本発明の医薬組成物が固形製剤の場合において、スタチンの含有量は、通常、0.05mg乃至200mgであり、好適には、0.5mg乃至100mgである。
また、ユビデカレノンの含有量は、通常0.1mg乃至200mgであり、好適には、1mg乃至70mgである。
【0039】
本発明の、スタチンとユビデカレノンとを含有する組成物は、スタチン及びユビデカレノンとを必須の成分として含有し、所望により、製剤化のための添加物を含有していてもよく、更に、スタチンとユビデカレノンとの併用作用に悪影響を与えない範囲で他の成分を含有していてもよい。好適には、スタチン及ユビデカレノンのみを有効成分として含有し、更に製剤化のための添加物を含有する医薬組成物である。
【0040】
本発明の医薬組成物の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等であり、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0041】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。
【0042】
例えば、錠剤の場合、乳糖、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等をコーテイング剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として使用することができる。
【0043】
細粒剤及びカプセル剤の場合、乳糖又は精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、使用することができる。
【0044】
上記各剤形において、必要に応じ、クロスポビドン等の崩壊剤;ポリソルベート等の界面活性剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等の安定剤;pH調節剤;香料;等を添加することもできる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例等を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)錠剤
(1)1回投与量中の構成成分
(表1) 1錠中重量(mg)
構成成分 (1a) (1b) (1c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
プラバスタチンナトリウム
又はアトルバスタチンカルシウム水和物 10 − −
シンバスタチン − 5 −
ピタバスタチンカルシウム − − 1
ユビデカレノン 20 20 20
酸化マグネシウム 90 70 50
ヒドロキシプロピルセルロース 60 60 60
クロスカルメロースナトリウム 20 20 20
ステアリン酸マグネシウム 15 15 15
乳糖 適量 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0047】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造した。
【0048】
(実施例2)細粒剤
(1)1回投与量中の構成成分
(表2) 2包中重量(mg)
構成成分 (2a) (2b) (2c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
プラバスタチンナトリウム
又はアトルバスタチンカルシウム水和物 15 − −
シンバスタチン − 10 −
ピタバスタチンカルシウム − − 2
ユビデカレノン 30 30 30
酸化マグネシウム 100 80 60
白糖 950 950 950
トウモロコシデンプン 920 920 920
ポリソルベート80 70 70 70
ステアリン酸マグネシウム 20 20 20
乳糖 適量 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0049】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した。
【0050】
(実施例3)カプセル剤
(1)1回投与量中の構成成分
(表3) 2カプセル中重量(mg)
構成成分 (3a) (3b) (3c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
プラバスタチンナトリウム
又はアトルバスタチンカルシウム水和物 10 − −
シンバスタチン − 5 −
ピタバスタチンカルシウム − − 1
ユビデカレノン 20 20 20
酸化マグネシウム 90 70 50
トウモロコシデンプン 440 440 450
ポリソルベート80 60 60 60
ステアリン酸マグネシウム 15 15 15
乳糖 適量 適量 適量
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0051】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カプセルに充填して硬カプセル剤を製造した。
【0052】
(試験例)
血液中のFFA量、TG量、総CoQ10量及びCPK値の評価試験
(1)被験物質
プラバスタチンナトリウムは三共(株)製造のものを、ユビデカレノンは日清ファルマ(株)製造のものを使用した。
【0053】
(2)動物
試験動物としては、Covance Research Products Inc.からビーグル犬雄を5箇月齢で購入し、約1箇月間の検疫および馴化飼育後に使用した。
【0054】
(3)投与剤形、製剤の調整方法および製剤の保存方法
試験動物毎の体重をもとに算出した必要量の被験物質を、TORPAC社のゼラチンカプセル(1/2オンス)に充填した。充填後、カプセルは動物毎に区分されたケースに入れ、投与時まで冷蔵保存した。
【0055】
(4)投与経路および投与期間
被験物質を充填したカプセルは、1日1回9:00〜12:30の間に、試験動物に強制経口投与した。なお、試験動物は投与前2乃至3時間絶食させた。
【0056】
投与期間は7日間とした。
【0057】
(5)被験試料の調製
カプセル投与前14日および7日(投与開始前第2週および第1週)、投与開始後4日、8日に、橈側皮静脈から約10mL採血した。なお、採血前約18時間、試験動物は絶食させた。
【0058】
得られた血液を試験管にとり、室温で30分から1時間放置後、遠心分離(約1600×g、10分間)して得られた血清を用いた。
【0059】
(6)試験方法
血清のFFA量は酵素法、TG量は全酵素法、総CoQ10量はHPLC法、CPK値はUV−rate法を用いて求めた。
【0060】
(7)試験結果
プラバスタチンナトリウム(Prv)及びユビデカレノン(Ubi)それぞれの各投与量における単剤および配合剤における各検査値の結果は、投与前14日及び7日の検査値の平均を100として換算して求めた。
【0061】
得られた結果を以下に示す。なお、各値とも1群5匹の平均値である。
【0062】
(表4)
血清FFA変動率(%)
被験物質(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日
――――――――――――――――――――――――――――――――
Prv(2) 99.5 105.9
Ubi(10) 116.4 107.7
Prv(2)+Ubi(10)の合剤 75.9 68.1
――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0063】
プラバスタチンナトリウム及びユビデカレノンの併用において、それぞれ単剤の結果からは予想できない優れた血中FFA低下作用が認められた。
【0064】
(表5)
血清TG変動率(%)
被験物質(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日
――――――――――――――――――――――――――――――――
Prv(2) 56.3 57.1
Ubi(10) 84.2 77.6
Prv(2)+Ubi(10)の合剤 79.2 75.8
――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0065】
プラバスタチンナトリウムとユビデカレノンの併用において、血中TG低下作用を維持していることが認められた。
【0066】
(表6)
血清総CoQ10変動率(%)
被験物質(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日
――――――――――――――――――――――――――――――――
Prv(2) 94.2 91.6
Ubi(10) 145.0 173.6
Prv(2)+Ubi(10)の合剤 286.2 194.7
――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0067】
プラバスタチンナトリウムとユビデカレノンの併用において、それぞれ単剤の結果からは予想できない顕著な血清総CoQ10量の上昇が認められた。
【0068】
(表7)
血清CPK変動率(%)
被験物質(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Prv(2) 93.3 81.9
Ubi(10) 101.8 93.5
Prv(2)+Ubi(10)の合剤 92.2 78.2
―――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0069】
プラバスタチンナトリウムとユビデカレノンの併用において、血清CPK値の優れた低下作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する医薬組成物は、それぞれ単剤の結果からは予想できない顕著な血中FFA濃度低下作用を有し、同時に血中TG濃度低下作用を維持させるため、高FFA血症並びに高TG血症の予防又は治療、さらには、これらに起因するインスリン抵抗性症候群の予防又は治療に有用である。
【0071】
また、一般に懸念されているスタチン投与における副作用(血中CoQ10濃度の減少作用、さらにそれに起因すると考えられている骨格筋障害)が本発明にて予防できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、血中遊離脂肪酸を低下させるための医薬組成物。
【請求項2】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、血中遊離脂肪酸及び血中トリグリセライドを同時に低下させるための医薬組成物。
【請求項3】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項4】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症及び高トリグリセライド血症を同時に治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項5】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを含有する、高遊離脂肪酸血症に起因する疾病を治療又は予防するための医薬組成物。
【請求項6】
高遊離脂肪酸血症に起因する疾病がインスリン抵抗性症候群である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
高遊離脂肪酸血症に起因する疾病が高血圧症、動脈硬化関連疾患又は糖尿病である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びその薬理上許容される塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項7から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤が、プラバスタチンナトリウムである、請求項1乃至請求項7から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとが同一の医薬組成物中に含有する配合剤である請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤を含有する医薬組成物とユビデカレノンを含有する医薬組成物とからなるキットである請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを同一の医薬組成物中に含有する請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項13】
高遊離脂肪酸血症治療剤を製造するための、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
HMG−CoAリダクターゼ阻害剤とユビデカレノンとを同時に、順次又は別個に投与する高遊離脂肪酸血症の治療又は予防剤。
【請求項15】
哺乳動物に請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、高遊離脂肪酸血症の治療方法又は予防方法。

【公開番号】特開2006−176498(P2006−176498A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335154(P2005−335154)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】