説明

衛生洗浄装置

【課題】断熱効率の高い温水タンクを備えた衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器上に設置可能な本体と、本体に進退可能に設置され、人体の局部に向けて洗浄水を噴出する洗浄ノズル220と、本体に内蔵され、洗浄ノズル220に供給する洗浄水を加熱および貯湯する温水タンク500とを含み、温水タンク500の外側面と外天面は、略全面に断熱材560が貼着され、底面は、断熱材560を底面と本体の底板260に狭持されて設置された構成とすることにより、温水タンク500の外面の略全面が断熱材560で覆われており、高い断熱効果を得ることができる。特に側面および上面に比較して温度変化が大きい底面については、断熱材560を底板との間で狭持することにより温度変化に影響されずに設置状態を維持することができ、長期に亘り安定した断熱効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置の温水タンクの断熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置は、温水タンクの外側面に複数のリブで区画したセル壁を成形し、セル壁の頂部に断熱材を設置することでセル壁内に空気を封入し、セル壁内の空気層と断熱材で温水タンクからの放熱を抑制する作用を果たしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の衛生洗浄装置の温水タンクを示すものである。図6に示すように、温水タンク1は外側面2に縦方向と横方向に複数のリブにより区画された区画壁3を備え、区画壁3の頂部に断熱材4を設置して封止する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−204635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、温水タンクの放熱を抑制する断熱手段は、温水タンクの側面のみに設けられた構成であり、上面および底面に対する断熱手段は備えておらず断熱効果としては不十分である。
【0006】
また、断熱材で封止されるセル壁内の空気層は、一般的な断熱材内部に形成された空気層に対して相当に大きい容量であり、断熱効果としては通常の断熱材を直接貼着した場合に比較して低いものである。
【0007】
上記のように従来の温水タンクの断熱手段は断熱効果という観点からは未だ改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、温水タンクの全ての外側面からの放熱を抑制することにより、断熱効率の高い温水タンクを備えた省エネルギ性の高い衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、便器上に設置可能な本体と、本体に進退可能に設置され、人体の局部に向けて洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、本体に内蔵され、洗浄ノズルに供給する洗浄水を加熱および貯湯する温水タンクとを含み、温水タンクの外側面と外天面は、略全面に断熱材が貼着され、温水タンクの底面は、温水タンクの底面は、断熱材を底面と本体の底板により狭持されて設置された構成である。
【0010】
これにより、温水タンクの外面の略全面が断熱材で覆われており、高い断熱効果を得ることができる。また、温水タンクの底面は冷水が供給される毎に温度が低下するため、側面および上面に比較して温度変化が大きく貼着強度が早期に低下する傾向があるが、断熱材を底板との間で狭持することにより温度変化に影響されずに設置状態を維持することができ、長期に亘り安定した断熱効果を得ることができ、高い省エネルギ性を長期に亘り安定して提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生洗浄装置は、高い省エネルギ性を長期に亘り安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の本体の上ケースを外した状態の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における温水タンクの外観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態1における温水タンクの取り付け途中を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態1における温水タンクの取り付け状態を示す断面図
【図6】従来の衛生洗浄装置の温水タンクの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、便器上に設置可能な本体と、前記本体に進退可能に設置され、人体の局部に向けて洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、前記本体に内蔵され、前記洗浄ノズルに供給する洗浄水を加熱および貯湯する温水タンクとを含み、前記温水タンクの外側面と外天面は、略全面に断熱材が貼着され、前記温水タンクの底面は、前記断熱材を前記底面と前記本体の底板により狭持されて設置された構成の衛生洗浄装置である。
【0014】
これにより、温水タンクの外面の略全面が断熱材で覆われており、高い断熱効果を得ることができる。また、温水タンクの底面は冷水が供給される毎に温度が低下するため、側面および上面に比較して温度変化が大きく貼着強度が早期に低下する傾向があるが、断熱材を底板との間で狭持することにより温度変化に影響されずに設置状態を維持することができ、長期に亘り安定した断熱効果を得ることができる。
【0015】
第2の発明は、特に第1の発明において、前記温水タンクは、給水口に連接する整流手段を備え、前記給水口から給水された洗浄水が前記底面に沿って拡散されることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、温水タンクに貯溜された洗浄水の大きい温度変化を底部に集中させることができるので、外側面と外天面に貼着した断熱材の貼着強度を長期間に亘り安定して維持することができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態における便座装置を便器上に設置した状態の外観の斜視図を示し、図2は衛生洗浄装置の本体のカバーを取り外した状態の平面図を示すものである。
【0019】
<1>便座装置の構成
図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便座300、便蓋400により構成され、便器110の上面に設置される。
【0020】
なお、本実施の形態においては衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右側、後方に向かって左側を左側として各構成要素の配置を説明する。
【0021】
本体200には、便座300および便蓋400が回動機構を介して開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋400を開放した状態においては、便蓋400は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立し、便蓋400を閉蓋した状態では便座300の上面と本体200の一部を隠蔽する。便座300は図1に示すように便器110の上面に載置された状態から、便蓋400と同様に本体の前面部に起立する。
【0022】
本体200の前面部には着座センサ201が設置してある。この着座センサ201は非接触式着座センサであり反射型の赤外線センサである。すなわち、発光部から赤外線を発光し人体によって反射された赤外線を受光部が受光検出することにより、便座300上に使用者が着座していることを検知する。
【0023】
また、本体200の右側部には前方に突出するように袖部210が設けてあり、袖部210の上面には操作部211が設けてあり便座装置の各機能を操作する複数の操作スイッチ212と表示灯213が設置されている。
【0024】
図2に示すように、本体200の内部には、中央部に洗浄ノズル220が設置されており、本体200の左側には脱臭装置230と制御部240等が設置してある。また、本体200の右側には、洗浄水供給機構250と温水タンク500が設置してある。洗浄ノズル220と洗浄水供給機構250と温水タンク500とで人体局部を洗浄する洗浄手段を構成している。
【0025】
温水タンク500は洗浄ノズル220に接続されており、水道配管から洗浄水供給機構250を介して供給される洗浄水を温水タンク500で加熱し、温水を洗浄ノズル220に供給し、洗浄ノズル220から使用者の局部に向けて温水を噴出し、使用者の局部を洗浄するものである。
【0026】
洗浄ノズル220は、お尻を洗浄するお尻洗浄ノズル部と女性の局部を洗浄するビデ洗浄ノズル部を有し、洗浄ノズル220を本体200内に収容した収納位置と本体200から突出して洗浄動作を行う洗浄位置との間を進退移動する駆動手段(図示せず)と、温水タンク500からの洗浄水をお尻洗浄ノズル部とビデ洗浄ノズル部に切換えて供給する切換弁(図示せず)等が一体に組み込まれている。
【0027】
脱臭装置230は、便器110内の臭気を吸引するために、本体200の底面に吸気口が設けてある。
【0028】
制御部240は、操作部211に配置され操作スイッチ212の操作信号と、着座センサ201から送信される信号に基づいて衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0029】
<2>温水タンクの構成
図3は温水タンクの外観を示す斜視図であり、図4は温水タンクを本体に取り付ける途中の状態を示す斜視図であり、図5は温水タンクを取り付けた状態の断面図を示すものである。
【0030】
図3に示すように温水タンク500のタンク本体510はABS樹脂にガラス繊維を添加して強度を増した樹脂材料で成型した上部材511と下部材512を溶着して一体に形成したものである。
【0031】
タンク本体510の側面の前方下部には洗浄水が流入する給水口513を備え、上部後方には洗浄水を送水する送水口514を備えている。またタンク本体510の上面にはタンク内の圧力が負圧になった場合外部から空気を導入するバキュームブレーカ520が設
置してある。
【0032】
温水タンク500の下部の底面515に近い位置には洗浄水を加熱する加熱手段としてU字形状のシーズヒータ530が設置してあり、シーズヒータ530の近くには湯温を検知する温度検知手段としてサーミスタ(図示せず)が設置してある。
【0033】
また、タンク本体510の底面515の一番低い位置にはタンク内の水を全て排出することができる排水バルブ540が設置してあり、排水バルブ540はタンク本体510前部より斜め下方に向けて設置してある。排水バルブ540は寒冷地における凍結防止や長期間使用しない場合の汚損水の排出時に使用される。
【0034】
図4に示すように、タンク本体510の給水口513の内方には流入した洗浄水の流れを均一にする整流手段550が設置してある。整流手段550はタンク本体510の底面515に形成した整流リブ516と整流部材551を組み合わせることにより流路の断面積と流れの方向を変える構成となっている。
【0035】
上記構成の整流手段550を備えることにより、給水口513から流入した洗浄水は均一な流れとなり、底面515に沿ってシーズヒータ530の下方に送出される。
【0036】
図5で示すようにタンク本体510の下部材512の後部内面には横方向に複数の内部補強リブ517が設けてある。また、下部材512の底面515の外側にも複数の外部補強リブ518が設けてあり、これらの内部補強リブ517と、外部補強リブ518によりタンク本体510の耐圧強度を増している。
【0037】
タンク本体510にリブを設けることによりタンク本体510の表面積が増加し貯留する洗浄水の熱が放熱しやすくなることが懸念されるが、上記構成では、後部に配設する内部補強リブ517はタンク本体510の内面に設置するため放熱に対してほとんど影響がなく、また底面515の外側に配設した外部補強リブ518は放熱に多少影響があるが、温水タンク500の底部に貯溜される洗浄水は上部に貯溜される洗浄水より比較的低温である時間が長いため影響を最小限に抑えることができる。
【0038】
タンク本体510の上部材511と下部材512を接合する接合面はタンク本体510の後方上部と前方下部との略対角線状になっている。また接合部である上部材511の開口縁と下部材512の開口縁の外周には外方に張り出した補強縁補強縁が全周に亘り設けてあり、タンク本体510側面の耐圧強度の補強に寄与しており、特に接合面を対角線上にすることにより補強縁の長さを最大にすることができ補強に大きく寄与している。
【0039】
タンク本体510の外面には全ての面に断熱材560が施されている。断熱材560は発泡ウレタンの表面にアルミシートを貼着した2層のシート状で厚さが約3mmであり、発泡ウレタン側をタンク本体510の外面に密接させて設置する。
【0040】
図4に示すように、タンク本体510の上面と、前面と、背面と、両側面は温水タンク500の単体の状態で断熱材560を取り付ける。これらの部位に使用する断熱材560は発泡ウレタンの表面に粘着剤を塗布したものを使用し、粘着剤を介してタンク本体510の表面に粘着固定する。
【0041】
一方、底面515に設置する断熱材560は、底面515に外部補強リブ518が配置されているため粘着剤を使用して取り付けることが難しく、また、温水タンク500の底面は流入した温度の低い洗浄水と加熱された高温の温水が交互に供給されるため、温度差が大きく粘着剤の強度が短期間に低下する傾向があり、粘着剤による粘着固定は適してい
ない。
【0042】
本実施の形態においては、図4に示すようにタンク本体510の底面515と略同形の断熱材560を本体200の底板260の所定位置に仮置きし、その上方から底面515以外の面に予め断熱材560を粘着固定した温水タンク500を設置して、温水タンク500を底板260にねじ(図示せず)を介して固定することにより、断熱材560を温水タンク500と本体200の底板260で狭持して固定する構成となっている。
【0043】
図5は、温水タンク500を底板260に取り付けた状態の断面図を示すものであり、温水タンク500の底面515の下側に配置された断熱材560は本体200の底板260の上面とタンク本体510の底面515の形成された外部補強リブ518とで狭持されている。
【0044】
上記のように、本実施の形態における衛生洗浄装置は、温水タンクの全ての外面が断熱材で覆われており、高い断熱効果を得ることができる。特に、温水タンクの底面に配置する断熱材を温水タンクの底面と本体の底板との間で狭持することにより、温度変化に影響されずに設置状態を安定して維持することができ、長期に亘り安定した断熱効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態の温水タンクは給水口に近接して整流手段を設けたことにより、給水口から給水される低温の洗浄水を底面に沿って拡散させることにより、温水タンク内の大きい温度変化を底部に集中させることができるので、底面以外の前面と背面と両側面および天面の温度変化を抑制することにより、それらの面に貼着した断熱材の貼着強度を長期間に亘り安定して維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、温水タンクに設置する断熱材の設置強度を長期間に亘り維持することが可能となるので、温度変化の大きい他の熱機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0047】
100 衛生洗浄装置
200 本体
220 洗浄ノズル
260 底板
500 温水タンク
513 給水口
515 底面
550 整流手段
560 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器上に設置可能な本体と、
前記本体に進退可能に設置され、人体の局部に向けて洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、
前記本体に内蔵され、前記洗浄ノズルに供給する洗浄水を加熱および貯湯する温水タンクと、を含み、
前記温水タンクの外側面と外天面は、略全面に断熱材が貼着され、
前記温水タンクの底面は、断熱材を前記底面と前記本体の底板により狭持されて設置された構成の、
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記温水タンクは、給水口に連接する整流手段を備え、
前記給水口から給水された洗浄水が前記底面に沿って拡散されることを特徴とする、
請求項1に記載の衛生洗浄装置。

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate