説明

衣類

【課題】履き口を有する衣類において、ずり下がり防止用のバンド部をなくし、かつ薄地とすることで、窮屈感をなくし心地よい着用感を得ることができると共に、ずり下がりも生じにくい衣類を提供する。
【解決手段】編み始めの止め編み部と、該止め編み部に連続し、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有したシングルウエルト身頃部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類に関するものであり、特に、履き口を有するボトム下着等の衣類において、ずり下がり防止用のバンド部をなくし、かつ薄地とすることで、窮屈感をなくすことができ、同時に衣類のずり下がりも生じにくいものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パンティストッキングやパンツ等の履き口を有する衣類においては、ずり下がりを防止するため、図5に示すようなウエストバンド(バンド部)1が設けられるものが多い。また、図6に示すように、前記ウエストバンド(バンド部)を設けず、パンティ部2 (本体部)をダブルウエルトとするものもある。
しかし、前記のように、バンド部1を設けた衣類は、その圧迫感により窮屈感を感じる場合が多く、また、バンド部を設けず本体部2をダブルウエルトとした場合でも、厚地となるため窮屈感が解消できないという問題がある。
一方、本出願人は、特開2004−124291号公報において、シングルニットからなるシングルウエルトの端末編組織を備えた衣類を提案している。
【0003】
前記端末編組織はシングルニットからなるため、端末の履き口部の窮屈感は解消されるが、履き口部に連続する本体部は、使用する編み糸や編組織を前記履き口部と相違させ、ずり下がりを防止するためにより高い締め付け力を付与する編成とするのが通常である。
しかし、本体部を前記構成とすると、本体部の高い締め付け力のために窮屈感を感じる場合があり、心地よい着用感を得る点ではさらに改良の余地が残されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−124291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、履き口を有する衣類において、ずり下がり防止用のバンド部をなくし、かつ薄地とすることで、窮屈感をなくし心地よい着用感を得ることができると共に、ずり下がりも生じにくい衣類を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、編み始めの止め編み部と、
該止め編み領域に連続し、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有したシングルウエルト身頃部を、
備えていることを特徴とする衣類を提供している。
【0007】
前記のように、編み始めの止め編み部に、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有するシングルウエルト身頃部を連続させることにより、バンド部を設けることなく、薄くソフトな肌触りとして窮屈感を低減させることができ、かつ、ずり下がりも生じにくいことが見出された。したがって、長時間着用していても疲労を感じさせず、心地よい着用感を得ることができる。
なお、本発明においては、前記止め編み部を除く本体部全体をシングルウエルト身頃部としてもよいし、前記止め編み部に連続する本体部の一部をシングルウエルト身頃部としてもよい。
【0008】
前記止め編み部に連続する前記シングルウエルト身頃部では、弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返して編成するコースと、非弾性糸を用いてニットのみで編成するコースを交互に設けていることが好ましい。
【0009】
前記のように、弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返して編成するコースを設けることにより、表目の張力が高くなりすぎないようしてカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力を保持することができる。
さらに、前記非弾性糸を用いてニットのみからなるプレーン編組織で編成するコースを設けることにより、表目の張力が高まっても、前記ニットのみからなるコースは伸縮力の弱い編み糸で編成されるため、外側へのカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力も保持することができる。
【0010】
前記弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返すコースを編成していくことにより、前記弾性糸を用いたコースのニットの位置およびミスまたはタックの位置がそれぞれウエール方向に揃うストライプ状であっても、ウエール方向にずらしたメッシュ状であってもどちらでもよいが、特に、前記ストライプ状とすることにより、上下縦方向の伸縮性を抑えてずり下がりを効果的に防止することができる。
【0011】
また、編み始めの止め編み部は、前記弾性糸に添え糸を添えた編み糸から編成するコースと、前記非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成するコースを交互に設けた複数のコースとし、前記非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成する2コース目以降の1コース以上をニットのみで編成し、他のコースは1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成することが好ましい。
しかし、止め編み部およびシングルウエルト身頃部の編組織は前記構成に限られず、例えば、前記止め編み部において、弾性糸および非弾性糸に添える添え糸を必ずしも共通させなくてもよいし、また、シングルウエルト身頃部において添え糸を適宜使用することもできる。
【0012】
前記のように、編み始めの止め編み部において、前記弾性糸および前記非弾性糸に添え糸を添えた編み糸を用いて編成することにより、前記シングルウエルト身頃部よりも編み糸の繊度を増やし伸縮性を高めることができ、外側へ捲くれ上がるカールの発生を抑制できる。
また、非弾性糸に添え糸を添えた編み糸から編成する2コース目以降の1コース以上をニットのみからなるプレーン編組織で編成することで、編立やすく、強度を持たせることができる。
さらに、前記ニットのみからなるコース以外のコースを、1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成することにより、適度な伸縮性を保持させることができる。
【0013】
前記1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返すコースを編成していくことにより、前記コースのニットの位置およびミスの位置がそれぞれウエール方向に揃うストライプ状であっても、ウエール方向にずらしたメッシュ状であってもどちらでもよいが、特に、前記ストライプ状とすることにより、上下縦方向の伸縮性を抑えてずり下がりを効果的に防止することができる。
また、前記止め編み部のコース数としては、4コース程度とすることが好ましい。
【0014】
前記弾性糸として弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンを用いると共に、前記非弾性糸としてウーリーナイロンを用い、さらに前記添え糸として前記弾性糸の弾性芯糸より細い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンを用いていることが好ましい。
【0015】
特に、前記弾性糸として、30デシテックス〜80デシテックスのポリウレタン弾性芯糸にナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーンを用いると共に、前記非弾性糸として、30デシテックス〜80デシテックスのウーリーナイロンを用い、さらに前記添え糸として20デシテックス〜40デシテックスのポリウレタン弾性芯糸にナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーンを用いていることが好ましい。
【0016】
また、前記止め編み部の編み組織として、各コースを、1ウエールタック、2ウエールミスまたは1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返す編成としてもよい。
【0017】
一方、使用する編機の種類によっては、前記止め編み部および前記シングルウエルト身頃部の編み組織を以下のようにすることもできる。
即ち、編み始めの止め編み部の複数コースは全てのウエールをタックあるいはミスでニットさせずに編成し、かつ、該止め編み部では太い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンからなる第1種編み糸を用いて編成し、該第1種編み糸で止め編み部に外側へのカールを発生させない編成としている一方、前記止め編み部に連続するシングルウエルト身頃部では、前記第1種編み糸で編成したコースと、前記第1種編み糸より伸縮力がない編み糸を用いて編成したコースを組み合わせた編組織としている。
【0018】
前記のように、編み始めの止め編み部では、どのウエールもニットすることなく複数コースを1つの編み糸で連続して編成しているため、編み糸として太い弾性芯糸を備えた伸縮力の強い第1種編み糸を用いても厚くならずに薄さを保持でき、カール発生を抑制しながら、適度な締め付け力を付与することができる。
【0019】
一方、前記止め編み部に連続するシングルウエルト身頃部では、前記第1種編み糸で編成したコースを設けていることで、適度な締め付け力の付与が可能となり、さらに、第1種編み糸のみでなく、該第1種編み糸よりも伸縮力が弱い編み糸で編成したコースと併設することで、止め編み部よりは低い締め付け力として、身体への圧迫感を減少することができ、より着心地の良いものとしている。
【0020】
具体的には、前記止め編み部は、5〜9コースとし、各コースは1ウエールタック、2ウエールミスまたは1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返して編成している。
前記構成によれば、選針を2本もしくは3本置きとすることで適度な締め付け力を付与できる。
【0021】
前記シングルウエルト身頃部は、1ウエールタックと1〜3ウエールミスを繰り返すコースと、ニットのみからなるコースとからなり、該ニットのみからなるコースを2〜3コース連続した後に前記タックとミスとのコースを1コース介在させて編成し、前記タックとミスのコースは前記第1種編み糸を用い、ニットのみからなるコースは、前記第1種編み糸の弾性芯糸より細い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンあるいは/およびそれより伸縮力の低い編み糸からなる、第2種編み糸を用いて編成していることが望ましい。
【0022】
前記のように、シングルウエルト身頃部は、伸縮力の弱い編み糸で編成したニットのみからなるコースを2〜3コース連続して設けることにより、止め編み部よりも締め付け力を低減でき、圧迫感を減少させて着心地を高めることができる。また、シングルカバリングヤーンからなる第2種編み糸を用いて編成すると、肌触りを良くすることもできる。
この際、ニットのみからなるプレーン編組織によって表目の張力が高まっても、該ニットのみからなるコースは伸縮力が弱い編み糸で編成するため、外側へのカール発生を効果的に抑制することができると共に適度な締め付け力も保持できる。
【0023】
前記止め編み部およびシングルウエルト身頃部に用いる伸縮力の強い第1種編み糸のシングルカバリングヤーンとして、70デシテックス〜200デシテックスのポリウレタン弾性芯糸にナイロン糸を巻き付けた糸を用いていることが好ましい。
ポリウレタン弾性芯糸の太さが70デシテックス未満であると、締め付け力が弱すぎてウエルト部分のカールしようとする力に負けてしまう場合がある。また、200デシテックスを越えると、止め編み部とシングルウエルト身頃部とのバランスがとれず、締め付け力が強すぎ、着用感を損ねる場合がある。特に好ましくは、ポリウレタン弾性芯糸の太さが100デシテックス〜160デシテックスである。
【0024】
前記シングルウエルト身頃部のニットのみからなるプレーン編み組織で用いる第2種編み糸として、下記の(1)〜(3)の編み糸を1種あるいは複数種類を用いている。
(1)10デシテックス〜40デシテックスのポリウレタン弾性芯糸にナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーン
(2)ウーリーナイロン
(3)その他の複合糸
外観や機能の点から、(1)の編み糸のみ用いる場合、(1)の編み糸に代えて、(2)のウーリーナイロンや(3)を用いる場合がある。
【0025】
前記(1)の第2種編み糸のシングルカバリングヤーンにおいて、ポリウレタン弾性芯糸の太さが10デシテックス未満であると、ニットのみからなるプレーン編み組織を形成しても締め付け力が弱すぎて心地よい着用感が得られなくなる場合がある一方、ポリウレタン弾性芯糸の太さが40デシテックスを越えるともはやパワーの弱い編み糸ではなくなり、締め付け力が強すぎて着用感が悪くなったり、表目の張力が大幅に増大して外側へのカールが発生してしまったりする場合がある。特に好ましくは、ポリウレタン弾性芯糸の太さが15デシテックス〜25デシテックスである。
前記(2)のウーリーナイロンを用いると伸びの調整ができると共に、外観と肌触りを向上させることができる。他の糸とのバランス上で10〜80デシテックスの太さのものを用いるのが好適である。
前記(3)の複合糸として、キュプラと66ナイロンとの混紡糸を用いると、キュプラを混紡することで吸・放湿性を高めることができる。該混紡糸の混合割合はキュプラの吸・放湿性を損なわない40〜90デシテックスが好適に用いられる。
【0026】
また、前記止め編み部の編み組織として、前記したような、弾性糸に添え糸を添えた編み糸から編成するコースと、非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成するコースを交互に設けた複数のコースとし、前記非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成する2コース目以降の1コース以上をニットのみで編成し、他のコースは1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成してもよい。
【0027】
本発明は、前記のように、編み始めの止め編み部と、該止め編み部に連続するシングルウエルト身頃部を備えた衣類を提供しており、特に、パンティストッキング、タイツ、ショーツ、パンツ、ガードル、ストッキング、スパッツ、ソックス等が好適である。
【発明の効果】
【0028】
前述したように、本発明によれば、編み始めの止め編み部に、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有するシングルウエルト身頃部を連続させることにより、バンド部を設けることなく、薄くソフトな肌触りとして窮屈感を低減させることができ、かつ、ずり下がりも発生しにくくすることができる。よって、長時間着用していても疲労を感じさせることのない心地よい着用感を得ることができる。
【0029】
また、前記のように、編み始めの止め編み部において、前記弾性糸および前記非弾性糸に添え糸を添えた編み糸を用いて編成することにより、シングルウエルト身頃部よりも編み糸の繊度を増やし伸縮性を高めることができ、外側へ捲くれ上がるカールの発生を抑制できる。
さらに、非弾性糸に添え糸を添えた編み糸から編成する2コース目以降の1コース以上をニットのみからなるプレーン編組織で編成することで、編立やすく、強度を持たせることができる。さらに、前記ニットのみからなるコース以外のコースを、1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成することにより、適度な伸縮性を保持させることができる。
【0030】
また、前記のように、止め編み部に連続するシングルウエルト身頃部では、前記止め編み部のような編み糸を用いていないため、前記止め編み部より締め付け力を低減でき、圧迫感を減少させて着用感を高めることができる。さらに、弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返して編成するコースと、非弾性糸を用いてニットのみで編成するコースを交互に設ける構成とし、弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返して編成するコースを設けることにより、表目の張力が高くなりすぎないようしてカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力を保持することができ、ずり下がりを防止することができる。
さらに、前記非弾性糸を用いてニットのみからなるプレーン編組織で編成するコースを設けることにより、表目の張力が高まっても、前記ニットのみからなるコースは伸縮力の弱い編み糸で編成されるため、外側へのカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力も保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態において、シングルシリンダの4インチの4口丸編機で編成したパンティストッキング10を示す。図中、上端が編み始め端となり、上端から止め編み部11を設け、さらにその下側にシングルウエルト身頃部12を連続させている。なお、本実施形態においては、パンティ部をシングルウエルト身頃部12とし、該シングルウエルト身頃部12に通常のレッグ部13を連続させている。
【0032】
図2および図3は、止め編み部11およびシングルウエルト身頃部12の編組織を示し、第1列目の針20−1から第N列目の針20−nの下に示す。(○)は針20に給糸してニットしている場合、(×)は針20に給糸せずに飛ばしてミスしている場合、(◎)は添え糸を添えた編み糸を給糸してニットしている場合を示す。
【0033】
編み始めの止め編み部11においては、弾性糸として78デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーン21を用い、非弾性糸として56デシテックスのウーリーナイロン22、添え糸として33デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーンを用いている。
シングルカバリングヤーン21に添え糸のシングルカバリングヤーンを添えた編み糸21aを給糸口から連続供給して止め編み部11の第1コースC1と第3コースC3の2コースを編成している。また、ウーリーナイロン22に添え糸のシングルカバリングヤーンを添えた編み糸22aを他の給糸口から連続供給して止め編み部11の第2コースC2と第4コースC4の2コースを編成している。本実施形態では、C1、C3、C4の3コースは、1ウエールニット→1ウエールミス→1ウエールニット→1ウエールミスを繰り返し、C2の1コースだけすべてのウエールでニットしている。
【0034】
詳細には、第1コースC1は、図2および図3に示すように、第1列目の針20−1にニット◎、第2列目の針20−2はミス×、第3列目の針20−3にニット◎、第4列目の針20−4はミス×というように、1ウエールニット、1ウエールミスをシングルカバリングヤーン21に添え糸のシングルカバリングヤーンを添えた編み糸21aで繰り返している。第3コースC3もC1と同様に1ウエール1ニット、1ウエール1ミスを前記編み糸21aで繰り返している。
一方、第2コースC2は、ウーリーナイロン22に添え糸のシングルカバリングヤーンを添えた編み糸22aを用いてすべての針20−1〜20−nにニット◎とし、第4コースC4は、前記編み糸22aを用いて1ウエールニット、1ウエールミスを繰り返している。
図2、図3に示すように、C1、C3、C4の3コースは1ニット、1ミスを繰り返すことにより、ニット、ミスの組織がストライプ状となっている。
【0035】
止め編み部11に連続するシングルウエルト身頃部12のコースC5、C7、C9、C11、C13、C15では、前記78デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーン21を給糸口から供給して1ウエールニット→1ウエールミス→1ウエールニット→1ウエールミスを繰り返している。
また、シングルウエルト身頃部12の他のコースC6、C8、C10、C12、C14、C16では、前記56デシテックスのウーリーナイロン22を他の給糸口から供給してすべてのウエールでニットしている。
【0036】
詳細には、図2、図3に示すように、第5コースC5では第1列目の針20−1にニット○、第2列目の針20−2はミス×、第3列目の針20−3にニット○、第4列目の針20−4はミス×というように、1ウエールニット、1ウエールミスをシングルカバリングヤーン21で繰り返している。
次に、第6コースC6では、ウーリーナイロン22を用いてすべての針20−1〜20−nにニット○としている。
この後、1ウエールニットと1ウエールミスの第7コースC7、ニットのみからなる第8コースC8というように、シングルカバリングヤーン21によるコースとウーリーナイロン22によるコースを交互に繰り返している。
【0037】
前記のように、本発明によれば、編み始めの止め編み部11に、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有するシングルウエルト身頃部12を連続させることにより、バンド部を設けることなく、薄くソフトな肌触りとして窮屈感を低減させることができ、かつ、ずり下がりも発生しにくくすることができ、長時間着用していても疲労を感じさせることのない心地よい着用感を得ることができる。
【0038】
また、前記のように、編み始めの止め編み部11において、弾性糸(シングルカバリングヤーン21)および非弾性糸(ウーリーナイロン22)に添え糸(シングルカバリングヤーン)を添えた編み糸を用いて編成することにより、編み糸の繊度を増やし伸縮性を高めることができ、カールの発生を抑制できる。
また、非弾性糸(ウーリーナイロン22)に添え糸(シングルカバリングヤーン)を添えた編み糸22aから編成する第2コースC2の1コースをニットのみからなるプレーン編組織で編成することで、編立やすく、強度を持たせることができる。さらに、前記ニットのみからなる1コース以外のコースを、1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成することにより、適度な伸縮性を保持させることができる。
【0039】
また、前記のように、止め編み部11に連続するシングルウエルト身頃部12では、止め編み部11のような編み糸を用いていないため、止め編み部11より締め付け力を低減でき、圧迫感を減少させて着用感を高めることができる。
また、弾性糸(シングルカバリングヤーン21)を用いて1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成するコースを設けることにより、表目の張力が高くなりすぎないようしてカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力を保持することができ、ずり下がりを防止することができる。
さらに、非弾性糸(ウーリーナイロン22)を用いてニットのみからなるプレーン編組織で編成するコースを設けることにより、表目の張力が高まっても、前記ニットのみからなるコースは伸縮力の弱い編み糸で編成されるため、外側へのカールの発生を抑制しながら、適度な締め付け力も保持することができる。
【0040】
図4は第2実施形態を示す。
第1実施形態との相違点は、止め編み部11およびシングルウエルト身頃部12の編組織を変えた点である。
編み始めの止め編み部11は、133デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻きつけたシングルカバリングヤーン25からなる第1種編み糸を用いている。該シングルカバリングヤーン25を給糸口から連続供給して第1コースC1から第8コースC8までの8コースを編成している。
止め編み部11の各コースは、1ウエールタック→3ウエールミス→1ウエールタック→3ウエールミスを繰り返している。
【0041】
詳細には、第1コースC1は図6に示すように、第1列目の針20−1にタック△、第2、第3、第4列目の針20−2、20−3、20−4はミス×、第5列目の針20−5にタック△、第6、第7、第8列目の針20−6、20−7、20−8はミス×というように1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返し、第2コースC2〜第8コースC8もC3と同様に1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返している。
【0042】
止め編み部11に連続するシングルウエルト身頃部12のコースC9、C13では、133デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻きつけたシングルカバリングヤーン25からなる伸縮力の強い第1種編み糸を1つの給糸口から供給して1ウエールタック→3ウエールミス→1ウエールタック→3ウエールミスを繰り返している。
【0043】
シングルウエルト身頃部12の他のコースC10、C11、C12、C14、C15、C16では20デシテックスのポリウレタン弾性芯糸に33デシテックスのナイロン糸を巻き付けたシングルカバリングヤーン26からなる伸縮力の弱い第2種編み糸を他の給糸口から供給して全ての針でニットするコースを編成している。
【0044】
詳細には、図4に示すように、第9コースC9では第1列目の針20−1はタック△、第2、第3、第4列目の針20−2、20−3、20−4はミス×、第5列目の針20−5はタック△、第6、第7、第8列目の針20−6、20−7、20−8はミス×というように、1ウエールタック、3ウエールミスをシングルカバリングヤーン25で繰り返している。
次に、第10コースC10、第11コースC11および第12コースC12ではすべての針20−1〜20−nにニット○とし、前記伸縮力の弱いシングルカバリングヤーン26で編成している。この連続した3コースの後に、C9と同一の1ウエールタックと3ウエールミスを繰り返す第13コースC13を介在させている。この後さらに、ニットのみからなる3コース、1ウエールタックと3ウエールミスを繰り返す1コースというパターンを繰り返している。
【0045】
第2実施形態においても、編み始めの止め編み部11に、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有するシングルウエルト身頃部12を連続させることにより、バンド部を設けることなく、薄くソフトな肌触りとして窮屈感を低減させることができ、かつ、ずり下がりも発生しにくくすることができ、長時間着用していても疲労を感じさせることのない心地よい着用感を得ることができる。
【0046】
また、前記のように、止め編み部11において、1つのコースで1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返して編成し、太いポリウレタン弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンからなる伸縮力の強い第1種編み糸25で編成することにより、外側へのカール発生を抑制することができ、また、適度な締め付け力を付与することもできる。
【0047】
さらに、前記のように、シングルウエルト身頃部12では、伸縮力の弱い第2種編み糸26でニットのみからなるコースC10、C11、C12の3コース連続して設けた後に、伸縮力の強い第1種編み糸25で編成した1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返すコースC13を1コース設け、続いて、前記第2種編み糸26でニットのみからなるコースを3コースC14、C15、C16連続させ、以下、これを繰り返すことで、止め編み部12よりは低い締め付け力として身体への圧迫感を減少して着用感を向上させることができると共に、外側へのカール発生を効果的に抑制することができる。かつ、シングルウエルト身頃部12も止め編み部11と同様にシングルカバリングヤーンからなる第1種編み糸25、第2種編み糸26のみで編成しているため肌触りも良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態におけるパンティストッキングの概略図である。
【図2】止め編み部およびシングルウエルト身頃部の編組織の説明図である。
【図3】止め編み部およびシングルウエルト身頃部の編組織を示す図面である。
【図4】第2実施形態における止め編み部およびシングルウエルト身頃部の編組織の説明図である。
【図5】従来例を示す図であり、(A)は概略正面図、(B)はA−A断面図である。
【図6】従来例を示す図であり、(A)は概略正面図、(B)はB−B断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 パンティストッキング
11 止め編み部
12 シングルウエルト身頃部
13 レッグ部
20−1〜20−n 針
21、25、26 シングルカバリングヤーン
22 ウーリーナイロン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み始めの止め編み部と、
該止め編み部に連続し、シングルニットからなるシングルウエルトの編組織を有したシングルウエルト身頃部を、
備えていることを特徴とする衣類。
【請求項2】
前記止め編み部に連続する前記シングルウエルト身頃部では、弾性糸を用いて1ウエールニットと1ウエールミスまたは1ウエールニットと1ウエールタックを繰り返して編成するコースと、非弾性糸を用いてニットのみで編成するコースを交互に設けている請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記止め編み部は、弾性糸に添え糸を添えた編み糸から編成するコースと、非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成するコースを交互に設けた複数のコースとし、前記非弾性糸に前記添え糸を添えた編み糸から編成する2コース目以降の1コース以上をニットのみで編成し、他のコースは1ウエールニットと1ウエールミスを繰り返して編成する請求項1または請求項2に記載の衣類。
【請求項4】
前記弾性糸として弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンを用いると共に、前記非弾性糸としてウーリーナイロンを用い、さらに、前記添え糸として前記弾性糸の弾性芯糸より細い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンを用いている請求項2または請求項3に記載の衣類。
【請求項5】
前記止め編み部の複数のコースは全てのウエールをタックあるいはミスでニットさせずに編成し、かつ、該止め編み部では太い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンからなる第1種編み糸を用いて編成し、該第1種編み糸で止め編み部に外側へのカールを発生させない編成としている一方、
前記止め編み部に連続するシングルウエルト身頃部では、前記第1種編み糸で編成したコースと、前記第1種編み糸より伸縮力がない編み糸を用いて編成したコースを組み合わせた編組織としている請求項1に記載の衣類。
【請求項6】
前記止め編み部は5〜9コースとし、各コースは1ウエールタック、2ウエールミスまたは1ウエールタック、3ウエールミスを繰り返して編成する一方、
前記シングルウエルト身頃部は、1ウエールタックと1〜3ウエールミスを繰り返すコースと、ニットのみからなるコースとからなり、該ニットのみからなるコースを2〜3コース連続した後に前記タックとミスとのコースを1コース介在させて編成し、前記ニットのみからなるコースは、前記第1種編み糸の弾性芯糸より細い弾性芯糸を備えたシングルカバリングヤーンあるいは/およびそれより伸縮力の低い編み糸からなる、第2種編み糸を用いて編成している請求項5に記載の衣類。
【請求項7】
パンティストッキング、タイツ、ショーツ、パンツ、ガードル、ストッキング、スパッツ、ソックスである請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−38264(P2008−38264A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210407(P2006−210407)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】