被計測物装着具及びこれを用いた歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法
【課題】 軸心がZ軸を成す回転テーブルと載置台が固定されたXYテーブルと一つのレーザセンサで計測する計測部とを備えた三次元計測装置により断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設した歯科用補綴物の係合部位以外の部分の三次元形状データを作製する際に用いる被計測物装着具とこれを用いたデータ作製方法を提供する。
【解決手段】 被計測物装着具2を、円柱状部2aの下面に載置部2bと、円柱状部2aの側面と上面との境界部に傾斜部2cと、円柱状部2aの上面にその上面に装着部2eを有する柱状部2dとで構成し、この被計測物装着具2の装着部2eに歯科用補綴物の模型3を係合し載置台1bに載置した後に、レーザセンサで受光量が急激に低下する箇所を特定して傾斜部2cの下端を検出することにより模型3の係合部位3aの上端を算出し、模型3の係合部位3a以外の三次元座標を作製する。
【解決手段】 被計測物装着具2を、円柱状部2aの下面に載置部2bと、円柱状部2aの側面と上面との境界部に傾斜部2cと、円柱状部2aの上面にその上面に装着部2eを有する柱状部2dとで構成し、この被計測物装着具2の装着部2eに歯科用補綴物の模型3を係合し載置台1bに載置した後に、レーザセンサで受光量が急激に低下する箇所を特定して傾斜部2cの下端を検出することにより模型3の係合部位3aの上端を算出し、模型3の係合部位3a以外の三次元座標を作製する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測装置により被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具、及びこの被計測物装着具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物となる歯科用補綴物の模型と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にインレー,クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物を作製する方法としては、金属材料をロストワックス鋳造法により鋳造して歯科用補綴物を作製する方法や、耐火模型上にセラミックス材料を築盛した後に真空電気炉により焼成して審美性に主眼を置いたセラミックインレー,オールセラミッククラウン等の歯科用補綴物を作製する方法等が従来より広く知られている。
【0003】
しかしながら、このような従来のロストワックス鋳造法や真空電気炉による焼成等の方法により歯科用補綴物を作製する作業は、殆どの工程が歯科技工士により手作業で行われるものであり、そしてこの手作業による工程も非常に細かく繁雑なものであるから、このような工程に膨大な時間と手間が掛かってしまうと共に、歯科技工士の熟練度により作製される歯科用補綴物の品質の善し悪しが左右されるという問題があった。
【0004】
そこで、歯科技工士による手作業に頼ることなく安定した品質の歯科用補綴物を短時間により多く作製する方法として、近年では三次元計測装置やコンピュータ等を用いてインレー,クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物の三次元形状データを作製し、この歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して歯科用補綴物を作製する歯科用CAD/CAMシステムが開発されてきた。
【0005】
このような歯科用CAD/CAMシステムにおける三次元計測装置としては、例えば被計測物の保持台、保持台の回転治具、保持台回転軸の変更治具、保持台位置の変更治具とレーザー計測部により構成される装置(例えば、特許文献1参照。)が存在する。
【0006】
しかしながら、このような装置は被計測物がインレーやクラウン等の1本の歯のみに適用される小型の歯科用補綴物の模型を計測して歯科用補綴物の三次元形状データを作製する場合には有効であるものの、被計測物の保持台のみが回転治具により回転する構造となっているので、ブリッジ等の複数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や複数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測することができないという問題があった。
【0007】
そこで、ブリッジ等の複数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や複数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測して三次元形状データを作製することができる三次元計測装置として、例えば本体基盤と、回転ステージと、回転ステージの回転とは独立して所定の水平方向X及びそれと直角な水平方向Yに移動可能であり、別部材との嵌合部が設けられたXYステージと、回転ステージ及びXYステージの駆動をそれぞれ独立して制御する駆動制御手段と、XYステージの嵌合部と嵌合する被嵌合部及び被測定物との嵌合部を設けた被測定物保持手段と、回転ステージの直径方向に移動可能なRステージと、Rステージの下面に、光軸が回転ステージの回転軸と平行になるように設けられた第1のレーザー変位計と、回転軸と平行な方向に移動可能なZステージと、Zステージの側面に、回転軸と直交するように設けられた第2のレーザー変位計とからなる装置(例えば、特許文献2参照。)や、Xθ、Yθ方向に回転するXθ、Yθステージと、これらのXθ、Yθステージをそれぞれ微駆動する第1の駆動手段と、前記Xθ、Yθステージの上でX、Y方向に移動するX、Yステージと、球面を有する被測定物を前記X、Yステージの上に固定する固定具と、前記X、Yステージをそれぞれ微駆動する第2の駆動手段と、被測定物の表面の三次元座標値を測定する光プローブと、前記第1の駆動手段と前記光プローブを制御すると共に信号を演算処理するコンピュータとを具備する装置(例えば、特許文献3参照。)等が開発された。
【0008】
しかしながら、このような装置はブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測して三次元形状データを作製することができるものの、装置自体が複雑でその制御が難しい上にその製造コストが高く、特に前者の装置は2つのレーザー変位計を備えているから、メンテナンスや製造コストの面で高くついてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、インレーやクラウン等の少数本の歯に適用される小型の歯科用補綴物の模型等の小さな被計測物から、ブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物まで計測することができる上に、更に被計測物の形状を計測するレーザセンサを1つとすることによりその製造コストやメンテナンスの費用を低く押えることができる三次元計測装置として、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在でこの回転テーブル上に配置されているXYテーブルとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサにより載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置が開発された。
【0010】
このような装置によりインレー,クラウンやブリッジ等の歯科用補綴物の模型を計測して三次元形状データを作製する方法としては、例えばワックスや合成樹脂等により形成された歯科用補綴物の模型をその支台歯等に係合する顎骨側が側方を向くようにして三次元計測装置の載置台上に設置して計測し三次元形状データを作製する方法(以下、「前者の三次元形状データの作製方法」と言う。)や、支台歯の模型や顎堤の模型に係合させた状態でワックスや合成樹脂等により形成された歯科用補綴物の模型を三次元計測装置の載置台上に設置して計測した後に、この歯科用補綴物の模型を取り外して支台歯の模型や顎堤の模型における歯科用補綴物の模型が当接していた部位を計測し、その後にそれぞれの計測値に基づいて歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製する方法(以下、「後者の三次元形状データの作製方法」と言う。)等が実施されている。
【0011】
しかしながら、比較的高い計測精度や加工精度を必要としないインレー,クラウンやブリッジ等の歯科用補綴物の模型を計測して歯科用補綴物の三次元形状データを作製し、この歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して歯科用補綴物を作製する場合には、前記のそれぞれの三次元形状データの作製方法で充分であるが、歯科用補綴物の中でも非常に高い計測精度や加工精度を要求される例えば1本のインプラントフィクスチャーのみに適用されるインプラント用の歯科用補綴物を作製する場合には、前記の何れの三次元形状データの作製方法でも、要求される寸法精度の歯科用補綴物を作製することが非常に困難であるという欠点があった。
【0012】
即ち、1本のインプラントフィクスチャーのみに適用されるインプラント用の歯科用補綴物としては、例えば人工歯と係合部位とが一体を成した形状に形成されており顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に直接又は既製のアバットメントを介して設置されて固定される歯科用補綴物や、歯科用補綴物が適用される患者の歯肉や隣在歯の形状等に合わせて歯肉に当接する部位や人工歯が固定される部位等の形状が設計されていると共に顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーに係合するため係合部位を有するアバットメント等が存在し、このようなインプラント用の歯科用補綴物の顎骨側に突設されている係合部位は、断面形状が回転体以外の形状(通常は、正六角形)を成す凸状及び/又は凹状の係合部が形成されているから、前者の三次元形状データの作製方法によりこのインプラント用の歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製しようとすると、計測部のレーザセンサのレーザ光が係合部の奥の方まで届かなっかったり、係合部の載置台側に位置する部位を計測する際に載置台やXYテーブルが障害となってしまったりして係合部位を正確に計測することができないという欠点があり、一方後者の三次元形状データの作製方法によりこのインプラント用の歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製しようとすると、インプラント用の歯科用補綴物の模型とこのインプラント用の歯科用補綴物の模型が係合されるインプラントフィクスチャー又はアパットメントの模型等を用意し、このインプラントフィクスチャー又はアパットメントにおけるインプラント用の歯科用補綴物の模型の係合部位が当接する部位を計測しなければならないので、インプラントフィクスチャー又はアパットメントの模型等を用意する手間が掛かるという欠点があるばかりでなく、インプラントフィクスチャー又はアパットメントにおけるインプラント用の歯科用補綴物の模型の係合部位が当接する部位を計測する際には、前者の三次元形状データの作製方法と同様に、計測部のレーザセンサのレーザ光が係合部の奥の方まで届かなっかったりするので、係合部位を正確に計測することができないという欠点があった。
【0013】
また、インプラント用の歯科用補綴物の係合部位は通常正六各形状のような角部を有する多角形状を成しているので、これを一般的な三次元計測装置のレーザセンサにより正確に計測することは非常に難しいという欠点があり、そして作製された歯科用補綴物の係合部位の三次元形状データが僅かでも実際の歯科用補綴物の模型の係合部位の形状と相違すると、この不正確な歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して作製された歯科用補綴物をインプラントフィクスチャーに固定する際に上手く係合できなかったり、インプラントフィクスチャーに固定された後に歯科用補綴物がガタついてしまったりする欠点もあった。
【0014】
更に、前者又は後者の三次元形状データの作製方法で正確な歯科用補綴物の模型の三次元形状データを得られたとしても、この歯科用補綴物の模型の三次元形状データに基づいて歯科用補綴物を作製する自動切削加工機は、一般的には回転切削工具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工するものであるので、係合部位が角部を有するような形状を成している場合には、作製された三次元形状データ通りの歯科用補綴物を正確に作製することができないという欠点もあった。
【0015】
【特許文献1】特開平5−332731号公報
【特許文献2】特開平7−181022号公報
【特許文献3】特開2002−257511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消し、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在でこの回転テーブル上に配置されているXYテーブルとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサにより載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置により、特に断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具、及びこの被計測物装着具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、前記三次元計測装置を用いて作製された歯科用補綴物の模型の三次元形状データに基づいて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工して歯科用補綴物を作製する際し、歯科用補綴物の顎骨側に突設及び/又は凹設される断面形状が回転体以外の形状を成す係合部を有する係合部位及びこの係合部位以外の部位をそれぞれ同時に切削加工するのではなく、この歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを用いて係合部位以外の部位のみを自動切削加工機により切削加工することにより、前記した如き三次元計測装置の計測精度の問題や自動切削加工機の加工精度の問題等を克服できることを究明した。
【0018】
しかしながら、三次元計測装置により載置台上の被計測物装着具に装着された状態の歯科用補綴物の模型を計測すると、自動切削加工機により歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工する際に必要な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データではなく、歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成していてその部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データが作製されてしまうので、このような各部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データに基づいて歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工しようとすると、切削加工に必要な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出するという非常に困難な操作を行わなければならないという問題が生じた。
【0019】
また、この歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する際に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位と係合部位との境界である係合部位の上端の位置を正確に認識できないことに起因してこの係合部位の上端の位置を僅かでも誤った状態でこの位置よりも上方に存在する部位の三次元形状データを抽出してしまうと、歯科用補綴物の模型と同形状の歯科用補綴物を作製することができないので、実際に作製された歯科用補綴物を装着する際に隣在歯に干渉してしまったり咬合面の位置が正しい位置に位置しなくなるばかりでなく、インプラントフィクスチャーに上手く係合させることができなくなり、特に作製された歯科用補綴物が前記した如きアバットメントである場合には、アバットメントが患者の歯肉の形状にフィットしなかったり、アバットメント自体が歯肉の上方より見えてしまったり歯肉内に埋没してしまうことによりその審美性が著しく損なわれてしまったりするという不具合が発生するという問題があった。
【0020】
このようなことから、本発明者らは歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成すと共にそれぞれの部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データより歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する方法として、歯科用補綴物の模型が設置された被計測物装着具における円柱状部とこの円柱状部の上面に鉛直に立設されその上面に歯科用補綴物の模型が設置される柱状部との境界を前記三次元形状データより認識し、被計測物装着具の前記境界の位置と歯科用補綴物の模型が載置された状態におけるこの歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置を算出し歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する方法を新たに想起したが、一般的な三次元計測装置のレーザーセンサの特質上、前記境界の如く略直角に折曲した部位においてはレーザ光の乱反射が生じるから、前記三次元形状データにおける前記境界の位置は不正確なものとなってしまうので、このような方法では被計測物装着具おける円柱状部と柱状部との境界を正確に認識することができなかった。
【0021】
そこで、本発明者らは更に研究を重ねた結果、歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成すと共にそれぞれの部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データよりこの係合部位の上端の位置を特定するのではなく、歯科用補綴物の模型が設置される被計測物装着具として円柱状部の側面とこの円柱状部の上面との境界部で該円柱状部の中心軸との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部が形成されたものを用い、被計測物装着具の円柱部の側面からこの傾斜部までレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で照射してそのレーザ光の受光量を計測し、その受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、正確に被計測物装着具の傾斜部の下端の位置を検出することができると共に、この検出された被計測物装着具の傾斜部の下端の位置に基づいて正確な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を作製することができることを究明して本発明を完成したのである。
【0022】
即ち本発明の一つは、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置ににより、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に該歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具であって、
円柱状部と、該円柱状部の下面側に設けられ前記XYテーブル上の載置台上に該XYテーブルの上面に対して該円柱状部の中心軸が鉛直に載置せしめられるように形成された載置部と、該円柱状部の側面と該円柱状部の上面との境界部で該円柱状部の中心軸との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部と、該円柱状部の上面側に鉛直に立設され断面形状が前記歯科用補綴物の模型の係合部位の断面形状と同一の形状で該係合部位内に該円柱状部の中心軸の延長線が位置するように形成された柱状部と、該柱状部の上面に形成され該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部に係合する形状を成す装着部とから構成されていることを特徴とする被計測物装着具である。
【0023】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の一つの態様は、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型を準備する模型準備ステップと、
本発明に係る被計測物装着具を準備し、該被計測物装着具の装着部に該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を該載置台上に載置する装着具載置ステップと、
前記回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、前記計測部のレーザセンサからのレーザ光を該被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサからのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具の円柱状部の側面から該被計測物装着具の傾斜部を経て柱状部の頂部に至る前の高さの位置へ移行するように該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に移動させた後に、該レーザセンサを回転移動させることによって該被計測物装着具の円柱状部と柱状部と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
該被計測物装着具の円柱状部の側面から傾斜部へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具に該歯科用補綴物の模型が設置された状態における該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置の該Z軸上の座標を算出し、前記計測された三次元座標から算出された該座標より上方に位置する該歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法である。
【0024】
また、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の他の態様は、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具を準備し、該被計測物装着具の装着部に該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を該載置台上に載置する装着具載置ステップと、
前記計測部のレーザセンサからのレーザ光を該被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサからのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具の円柱状部の側面から該被計測物装着具の傾斜部へ移行するように該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具に該歯科用補綴物の模型が設置された状態における該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置の該Z軸上の座標を算出し、算出された該座標の位置まで該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、
前記回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、該レーザセンサを回転移動させることによって該歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法である。
【0025】
更に、これらの歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法において、装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致するようにXYテーブルをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行えば、予め被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致していない場合には、簡単に両軸を一致させることができて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る被計測物装着具及びこれを用いた歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法は、前記した構成より成るものであるから、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている歯科用補綴物の三次元形状データを作製するのに好適であるばかりでなく、前記した既存の三次元計測装置の載置台上に載置された歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を計測する構成となっているから、既存の三次元計測装置に大幅な改造や加工を施すことなく歯科用補綴物の模型に対応した被計測物装着具を準備するだけで実施することができるので、断面形状が回転体以外の形状を成す係合部を有する係合部位が顎骨側に突設及び/又は凹設されている歯科用補綴物だけでなく、インレーやクラウン等の少数本の歯に適用される小型の歯科用補綴物の模型等の小さな被計測物から、ブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物まで、新規な三次元計測装置を導入することなく様々な被計測物を計測して三次元形状データを作製することができるのである。
【0027】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データの作製する方法が、回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、計測部のレーザセンサからのレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態でこのレーザセンサからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具の円柱状部の側面から被計測物装着具の傾斜部を経て柱状部の頂部に至る前の高さの位置へ移行するようにレーザセンサを計測部によりZ軸方向に移動させた後に、このレーザセンサを回転移動させることによって被計測物装着具の円柱状部と柱状部と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、被計測物装着具の円柱状部の側面から傾斜部へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具の傾斜部の下端の位置のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具に歯科用補綴物の模型が設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置のZ軸上の座標を算出し、計測された三次元座標から算出された座標より上方に位置する歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップとを含む態様の方法であれば、被計測物装着具と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を一気に計測した後に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する構成になっているから、被計測物装着具の柱状部のZ軸方向の長さが比較的短い場合には、歯科用補綴物の三次元形状データを短時間で製作することができるので好ましい。
【0028】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データの作製する方法が、計測部のレーザセンサからのレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態でこのレーザセンサからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具の円柱状部の側面から被計測物装着具の傾斜部へ移行するようにこのレーザセンサを計測部によりZ軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具の傾斜部の下端の位置のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具に歯科用補綴物の模型が設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置のZ軸上の座標を算出し、算出された座標の位置までレーザセンサを計測部によりZ軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、このレーザセンサを回転移動させることによって歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップとを含む態様の方法であれば、被計測物装着具のレーザ光の受光量のみを計測して歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置、即ち計測初期位置まで一気に移動した後に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを計測する構成になっているから、被計測物装着具の柱状部のZ軸方向の長さが比較的長い場合には、歯科用補綴物の三次元形状データを短時間で製作することができるので好ましい。
【0029】
更に、これらの歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法において、装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致するようにXYテーブルをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行えば、予め被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致していない場合には、両軸を一致させることによってその後に行われるそれぞれのステップにおける計測部のレーザセンサによる三次元座標の計測を円滑に行うことができると共に、Z軸を基準とした歯科用補綴物の模型の三次元座標を得ることができるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面により本発明に係る歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法について詳細に説明する。
図1は本発明に用いる三次元計測装置の1例を模式的に示す斜視説明図、図2は図1に示す三次元計測装置の載置台より取り外された被計測物装着具の上部の形状を示す斜視拡大説明図、図3は被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致した状態を模式的に示す断面説明図、図4は被計測物装着具に歯科用補綴物の模型であるアバットメントが設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との位置関係を模式的に示す正面説明図、図5は計測部により移動されるレーザセンサの動きの1例を模式的に示す正面説明図、図6は本発明に用いる歯科用補綴物の模型であるアバットメントの1例を示す正面説明図、図7は図6の底面説明図、図8は本発明に用いる歯科用補綴物の模型である人工歯付の歯科用補綴物の1例を示す正面説明図、図9は図8の底面説明図、図10は歯科用補綴物の模型を形成する際に用いられる係合部位と同一の形状を有する治具の一例を示す斜視説明図、図11は本発明により作製された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて切削加工される歯科用補綴物切削用ブロックの1例を示す斜視説明図である。
【0031】
図面中、1は本発明に係る後述する被計測物装着具2が載置されると共に本発明方法において用いられる三次元計測装置であって、図1に示す如く回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル1aとその上部に被計測物装着具2を設置できる載置台1bを固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で回転テーブル1a上に配置されているXYテーブル1cとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサ1daにより載置台1b上の被計測物装着具2に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部1dとを備えている。
【0032】
この三次元計測装置1は、計測部1dにより載置台1bの上部に設置された被計測物装着具2に装着された被計測物の形状の三次元座標を計測し、歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製するために用いられる。
【0033】
この三次元計測装置1を用いて被計測物の形状の三次元座標を計測するには、この三次元計測装置1の載置台1bの上部に設置された被計測物装着具2に装着された被計測物を、XYテーブル1cによりX軸方向及びY軸方向に移動させたり、回転テーブル1aにより回転テーブル1aの回転軸の軸心であるZ軸廻りに回転させたりすると共に、更には被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部1dの一つのレーザセンサ1da自体をもZ軸上の所望の点を中心としてこのZ軸を含む同一平面上を回転移動させたり、Z軸方向に移動させたりしながら、計測部1dの一つのレーザセンサ1daにより被計測物の表面にレーザ光を照射すると共に、この被計測物の表面から反射してくるレーザ光を受光し、計測部1dによりこのレーザ光を受光した際のレーザセンサ1daの位置,レーザ光の受光角度,レーザ光の受光量や照射から受光までの時間等に基づいて被計測物の表面の各点の三次元座標を計測し、これらの複数の計測点に基に被計測物の形状の三次元座標を得るのである。
【0034】
2は三次元計測装置1のXYテーブル1c上の載置台1bの上部に載置される被計測物装着具であり、円柱状部2aと、円柱状部2aの下面側に設けられXYテーブル1c上の載置台1b上にXYテーブル1cの上面に対して円柱状部2aの中心軸Tが鉛直に載置せしめられるように形成された載置部2bと、円柱状部2aの側面と円柱状部2aの上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部2cと、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設され断面形状が歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状で係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成された柱状部2dと、柱状部2dの上面に形成され被計測物となる歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaに係合する形状を成す装着部2eとから構成されている。
【0035】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの下面側には、XYテーブル1c上の載置台1b上にXYテーブル1cの上面に対して円柱状部2aの中心軸Tが鉛直に載置せしめられるように形成された載置部2bが設けられており、この載置部2bとしては、例えば図2に示す如く円柱状部2aの底面側に下方へ突出した複数の係合凸条を成すように形成されていると共に、図示しないが三次元計測装置1の載置台1bの上部に前記複数の係合凸条が係合できるように複数の係合溝が形成されていれば、被計測物装着具2を三次元計測装置1の載置台1bに載置した状態でXYテーブル1cや回転テーブル1aを動かした際に、載置台1bに対して被計測物装着具2がズレてしまったり回転してしまったりすることなく、被計測物装着具2が安定した状態で載置されるので好ましい。
【0036】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの側面と上面との境界部には、図2に示す如く円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部2cが形成されており、この傾斜部2cは歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の三次元形状データを作製するに際して必要となる歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を導き出すために利用されるものである。
【0037】
より具体的には、図5に示す如く三次元計測装置1の計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から少なくともこの傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させながら、反射してくるレーザ光の受光量を計測し、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、そして図4に示す如く被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出するのである。
【0038】
即ち、三次元計測装置1の計測部1dのレーザセンサ1daから照射されるレーザ光は、被計測物の表面に対する入射角度が直角である場合に最もその受光量が多くなり、そしてこの入射角度が0度又は180度に近くなればなる程、レーザ光が乱反射を起こして減衰しその受光量が小さくなるという特性を有しており、このような特性を利用して被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1を検出するのである。
【0039】
この被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1を検出方法についてより詳細に説明すると、例えば被計測物装着具2の表面がレーザ光の反射効率を高めるためにクロアルマイト処理を施されていると共に被計測物装着具2の傾斜部2cが円柱状部2aの側面と上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が45度の円錐形の一部を成す傾斜部である場合には、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させると、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面では、その受光量は概ね0.4を維持するが、レーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cの下端へ移行した瞬間にその受光量が概ね0.2へと急激に低下するので、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できるのである。
【0040】
そして、この傾斜部2cを成す円錐形の一部と円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が、20〜70度の範囲内でなければならない理由は、この角度が70度を超えるとレーザ光の入射角度が鈍角になり過ぎるために反射してくるレーザ光が弱く検出範囲外となってしまう恐れがあり、一方この角度が20度未満であると円柱状部2aの側面とで成す角度が小さいため円柱状部2aの側面におけるレーザ光の受光量と傾斜部2cにおけるレーザ光の受光量との差が極僅かとなりレーザ光の受光量の低下する箇所の判別が困難になってしまうからである。
【0041】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの上面側には、鉛直に立設され断面形状が歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状で係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成された柱状部2dが設けられている。
【0042】
この柱状部2dの断面形状は、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状に形成されている。これは、歯科用補綴物切削用ブロックBに予め形成されている係合部位Kの断面形状と合致した形状に柱状部2dの断面形状が合致せしめられていると、作製した歯科用補綴物の模型3が歯科用補綴物切削用ブロックBを切削加工した歯科用補綴物と全く同一形状のものとなるので、切削加工する歯科用補綴物の形状を正しく認識できるからであり、その結果この柱状部2dの上面に形成された装着部2eに歯科用補綴物の模型3を設置した状態ではこの柱状部2dの側面と係合部位3aの側面とはZ軸方向と平行を成すから、歯科用補綴物の模型3の表面に計測し易いように好ましく採用されるクロアルマイト処理等の塗装処理を施す場合には、通常は歯科用補綴物の模型3を計測する直前において歯科用補綴物の模型3を被計測物装着具2に設置した状態で塗装処理を施すので、この塗装が係合部位3aと柱状部2dの上面との間や装着部2e等に溜まってしまったり固化してしまったりすることにより、歯科用補綴物の模型3が外れなくなってしまったり正確な計測ができなかったりすることを防止できるのである。
【0043】
そして柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから、一般的に三次元計測装置1は計測を行う前の段階においてZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっているので、被計測物装着具2を載置台1b上に載置するだけで、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致した状態となり、計測部1dのレーザセンサ1daによる三次元座標の計測を円滑に行うことができるばかりでなく、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら歯科用補綴物の模型3の三次元座標を計測すれば、簡単にZ軸を基準とした歯科用補綴物の模型3の三次元座標を得ることができるのである。
【0044】
この際、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されてない場合や、経年変化等によりXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度が低下して正確に初期位置に原点復帰できない場合等の様々な要因によって、計測を行う前の段階において三次元計測装置1のZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっていない場合には、被計測物装着具2を載置台1b上に載置した後に、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致するようにXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させれば、簡単に両軸を一致させることができる。
【0045】
また柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とを一致させることができるので、計測部1dによりレーザセンサ1daをZ軸方向に移動させるだけでレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から上方の位置へ簡単に移行させることができると共に、このZ軸を基準として被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出したり、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出したりすることができるのである。
【0046】
この被計測物装着具2の柱状部2dの上面には、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaに係合する形状を成す装着部2eが形成されており、この装着部2eとしては、例えば図6及び図7に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが断面形状が正六角形の形状を成す凹状の係合穴である場合には、図2に示す如くこの装着部2eは断面形状が正六角形の形状を成す凸状の柱状体に形成されており、また例えば図8及び図9に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが顎骨側に突設された円柱状とこの円柱状の周面に等間隔に複数個設けられた半円状の凸部とで形成された形状を成している場合には、図示しないが装着部2eは断面形状はこのような係合部3aaに係合するような形状を成した係合穴の如く凹状に形成されている。
【0047】
3は断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部3aaを有する係合部位3aが顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型であり、歯科技工士等によってワックス,合成樹脂や石膏等の材料で形成されるものである。
【0048】
この歯科用補綴物の模型3の顎骨側に突設されている係合部位3aに形成された係合部3aaは、少なくとも断面形状が回転体以外の形状、即ち断面形状が正円以外の形状を成す凸状及び/又は凹状のものであれば制限はないが、この係合部3aaの断面形状が、係合部3aaを中心として360度/n(但し、nは2以上の正の整数)の回転毎に全く同じ外形が繰り返して表われ且つn回の回転で形成される図形が円形ではない形状、例えば図6及び図7に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが断面形状が正六角形の形状を成す凹状の係合穴ような形状や、図8及び図9に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが顎骨側に突設された円柱状とこの円柱状の周面に等間隔に複数個設けられた半円状の凸部とで形成された形状等の回転対称な形状をなしていれば、歯科用補綴物の模型3を被計測物装着具2に装着するに際し、複数通りの装着方向が存在するので装着作業が容易になって好ましいばかりでなく、作製される歯科用補綴物の係合部位がその中心軸廻りに著しく大きな力が作用する部分が存在しない形状となるので優れた歯科用補綴物を作製できるので好ましい。
【0049】
この歯科用補綴物の模型3の例としては、図6及び図7に示す如き歯肉や隣在歯の形状等に合わせて歯肉に当接する部位や人工歯が固定される部位等の形状が設計されていると共に顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーに係合するため係合部位を有するアバットメントや、図8及び図9に示す如き人工歯と係合部位とが一体を成した形状に形成されており顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に直接又は既製のアバットメントを介して設置されて固定される歯科用補綴物等の模型が存在する。
【0050】
この歯科用補綴物の模型3を形成する方法としては、予め作製された隣在歯,欠損歯,支台歯等が存在する石膏模型に直接ワックス等を築盛して歯科用補綴物の模型3を形成したり、被計測物装着具2の柱状部3dの装着部2eに直接ワックス等を築盛して歯科用補綴物の模型3を形成したりしてもよいが、図10に示す如き形成しようとする歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと同一の形状の係合部位を有し、その上方に係合部位以外の部位を形成できるような形状を成す治具を用意し、この治具に直接ワックス等を築盛することにより歯科用補綴物の模型3を形成すれば、簡単に歯科用補綴物の係合部位の形状を正確に再現することができるので好ましいばかりでなく、係合部位の形状を完全に把握した状態で歯科用補綴物の模型3を形成することができるので、最終的に作製される歯科用補綴物の使用感や審美性等を向上させることができて好ましい。
【0051】
次に、このような構成の三次元計測装置1及び本発明に係る被計測物装着具2を用いて図11に示すような歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物である歯科用補綴物の模型3と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の一態様についてそれぞれのステップを順に追いながら説明する。
【0052】
先ず、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部3aaを有する係合部位3aが顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型3を準備する模型準備ステップを行う。この模型準備ステップは、計測に先立って歯科技工士等によりワックス,合成樹脂や石膏等の材料を用いて予め形成された歯科用補綴物の模型3を準備することによって行われる。
【0053】
次に、本発明に係る被計測物装着具2を準備し、この被計測物装着具2の装着部2eに前記模型準備ステップにより準備された歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaを係合させる模型設置ステップを行う。
【0054】
次いで、前記模型設置ステップにより設置された歯科用補綴物の模型3付の被計測物装着具2を載置台1b上に載置する装着具載置ステップを行う。
【0055】
この際、被計測物装着具2の柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから、一般的に三次元計測装置1は計測を行う前の段階においてZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっているので、被計測物装着具2を載置台1b上に載置するだけで、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致した状態となり、計測部1dのレーザセンサ1daによる三次元座標の計測を円滑に行うことができるばかりでなく、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら歯科用補綴物の模型3の三次元座標を計測すれば、簡単にZ軸を基準とした歯科用補綴物の模型3の三次元座標を得ることができるのである。
【0056】
ここで、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されてない場合や、経年変化等によりXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度が低下して正確に初期位置に原点復帰できない場合等の様々な要因によって、計測を行う前の段階において三次元計測装置1のZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっていない場合には、前記装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致するようにXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行う。
【0057】
この両軸一致ステップを行うには、例えばZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態である初期位置に原点復帰させるようにX軸方向及びY軸方向の移動量を入力すればよいが、この両軸一致ステップが、被計測物装着具2の円柱状部2aの外周に位置する偶数の複数の点の二次元のXY座標を三次元計測装置1の計測部1dにより計測する装着具座標計測ステップと、計測されたそれぞれの点のX軸座標の数値の合計値及びY軸座標の数値の合計値を算出し、それぞれの合計値を計測した点の数で除してZ軸を原点とした被計測物装着具2の中心軸TのXY座標を得た後に、被計測物装着具2の中心軸Tの二次元のXY座標と原点との座標の差を算出し、被計測物装着具2の中心軸Tの補正値を得る補正値算出ステップと、この補正値に基づいてXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させることにより、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TをZ軸に一致せしめる位置補正ステップとから成るものであれば、経年変化等により三次元計測装置1のXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度等が低下し、これらの駆動手段にZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態である初期位置に原点復帰するように入力しても、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とを容易に一致させることが困難な場合には、正確に両軸を自動的に一致させることができて好ましいばかりか、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されていない場合であっても、XYテーブル1cのそれぞれの駆動手段に被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致する初期位置へ移動するように別途入力することなく両軸を自動的に一致させることができて好ましい。
【0058】
そして、このような両軸一致ステップにおいて、更に装着具座標計測ステップと補正値算出ステップと位置補正ステップとを、補正値算出ステップにより算出される補正値がXYテーブル1cが移動可能な最小単位以下になるまで繰り返せば、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とをより正確に一致させることができて好ましい。
【0059】
次いで、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から被計測物装着具2の傾斜部2cを経て柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置へ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させた後に、レーザセンサ1daを回転移動させることによって被計測物装着具2の円柱状部2aと柱状部2dと歯科用補綴物の模型3とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップを行う。
【0060】
この際、図5に示す如くレーザセンサ1daはレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態で柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置までZ軸方向に移動した後に、柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置より円弧を描くようにZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動して、被計測物装着具2の円柱状部2aから歯科用補綴物の模型3へ亘る部位のレーザ光の受光量を漸次計測すると共に被計測物装着具2の円柱状部2aより上方の部位と歯科用補綴物の模型3とが一体を成した形状の三次元座標を計測するのである。
【0061】
最後に、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cへ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、計測された三次元座標から算出された座標より上方に位置する歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップを行う。
【0062】
この際、例えば被計測物装着具2の表面がクロアルマイト処理を施されていると共に被計測物装着具2の傾斜部2cが円柱状部2aの側面との上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が45度の円錐形の一部を成す傾斜部である場合には、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面では、その受光量は概ね0.4維持するが、レーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cの下端へ移行した瞬間にその受光量が概ね0.2へと急激に低下するので、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できるのである。
【0063】
また、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出する際に用いられる、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lとは、図4に示す如く被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態で両位置のZ軸方向、即ち被計測物装着具2の円柱部2aの中心軸T方向の距離を予め計測し、この計測された値を距離Lとして三次元計測装置1の計測部1d等に記憶されたものである。
【0064】
このように検出された被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標から、予め記憶された前記距離Lに基づいて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出する構成と成っているから、正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を得ることができると共に、模型付装着具計測ステップにより計測された被計測物装着具2の円柱状部2aより上方の部位と歯科用補綴物の模型3とが一体を成した形状の三次元座標から、この正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標から上方に位置する三次元座標を抽出するだけで、正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データを作製することができるのである。
【0065】
次に、三次元計測装置1及び本発明に係る被計測物装着具2を用いて歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物である歯科用補綴物の模型3と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の他に態様についてそれぞれのステップを順に追いながら説明するが、この態様における模型準備ステップから装着具載置ステップまでの構成、及び装着具載置ステップを行った後に両軸一致ステップを更に行う態様である場合における両軸一致ステップの構成は前記態様と略同様な構成と成っているので、これらのステップについての説明は割愛する。
【0066】
先ず、模型準備ステップから装着具載置ステップを順に行った後に、更に両軸一致ステップを行う態様である場合には両軸一致ステップを行った後に、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から被計測物装着具2の傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、算出された座標の位置L2までレーザセンサ1daを計測部1dにより前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップを行う。尚、この計測初期位置移動ステップを行うに際し、回転テーブル1aをZ軸を軸心とする回転を停止させた状態で行ってもよいが、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながらこの計測初期位置移動ステップを行えば、レーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の周囲に全体的に亘るので、そのレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定する際の精度が向上して好ましい。
【0067】
この際、図5に示す如くレーザセンサ1daはレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でZ軸方向に移動して、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できた時点、即ちレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定できた時点でレーザ光による計測を一旦中止して、この検出された被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標から、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、この歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2、即ち歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状を直ぐに計測できる初期の位置まで一気にZ軸方向に一気に移動するのである。
【0068】
最後に、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、レーザセンサ1daを回転移動させることによって歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップを行う。
【0069】
この際、レーザセンサ1daは計測初期位置移動ステップにより歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標のみを計測できる初期位置まで移動させられているので、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、この初期位置よりレーザセンサ1daを回転移動させることによって、簡単に正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データを作製することができるのである。
【0070】
次いで、このような本発明方法により作製された歯科用補綴物の三次元形状データを用いて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により切削加工する方法について説明する。
【0071】
初めに準備として、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBを予め用意する。この歯科用補綴物切削用ブロックBとしては、例えば図11に示す如く係合部位Kが予め形成されている形状を成しており、その材質としてはチタン合金や焼成前後のセラミックやコンポジットレジン等の材料が好ましく使用される。
【0072】
このような準備が完了した後に、先ず歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機内に設置する操作を行う。この際、歯科用補綴物切削用ブロックBが予め設定された設置方向に向くように、歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機内に設置する。
【0073】
次に、本発明方法により作製された歯科用補綴物の三次元形状データを自動切削加工機に入力し、この入力された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機内に設置された歯科用補綴物切削用ブロックBを切削加工する操作を行う。
【0074】
この際、自動切削加工機に入力される歯科用補綴物の三次元形状データは、本発明方法により作製された正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データ、即ち歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2より上方に位置する部位の形状の三次元形状データであるから、この入力された三次元形状データの歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2に基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBの係合部位Kの上端より切削加工を開始すれば、歯科用補綴物の模型3の形状と正確に一致し、且つ特に係合部位3aの上方近傍の形状が正確に一致した歯科用補綴物を得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に用いる三次元計測装置の1例を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】図1に示す三次元計測装置の載置台より取り外された被計測物装着具の上部の形状を示す斜視拡大説明図である。
【図3】被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致した状態を模式的に示す断面説明図である。
【図4】被計測物装着具に歯科用補綴物の模型であるアバットメントが設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との位置関係を模式的に示す正面説明図である。
【図5】計測部により移動されるレーザセンサの動きの1例を模式的に示す正面説明図である。
【図6】本発明に用いる歯科用補綴物の模型であるアバットメントの1例を示す正面説明図である。
【図7】図6の底面説明図である。
【図8】本発明に用いる歯科用補綴物の模型である人工歯付の歯科用補綴物の1例を示す正面説明図である。
【図9】図8の底面説明図である。
【図10】歯科用補綴物の模型を形成する際に用いられる係合部位と同一の形状を有する治具の一例を示す斜視説明図である。
【図11】本発明により作製された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて切削加工される歯科用補綴物切削用ブロックの1例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 三次元計測装置
1a 回転テーブル
1b 載置台
1c XYテーブル
1d 計測部
1da レーザセンサ
2 被計測物装着具
2a 円柱状部
2b 載置部
2c 傾斜部
2d 柱状部
2e 装着部
3 歯科用補綴物の模型
3a 係合部位
3aa 係合部
B 歯科用補綴物切削用ブロック
K 係合部位
Z Z軸
T 中心軸
L1 被計測物装着具の傾斜部の下端の位置
L2 歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置
L L1とL2とのZ軸上の間の予め記憶された距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測装置により被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具、及びこの被計測物装着具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物となる歯科用補綴物の模型と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にインレー,クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物を作製する方法としては、金属材料をロストワックス鋳造法により鋳造して歯科用補綴物を作製する方法や、耐火模型上にセラミックス材料を築盛した後に真空電気炉により焼成して審美性に主眼を置いたセラミックインレー,オールセラミッククラウン等の歯科用補綴物を作製する方法等が従来より広く知られている。
【0003】
しかしながら、このような従来のロストワックス鋳造法や真空電気炉による焼成等の方法により歯科用補綴物を作製する作業は、殆どの工程が歯科技工士により手作業で行われるものであり、そしてこの手作業による工程も非常に細かく繁雑なものであるから、このような工程に膨大な時間と手間が掛かってしまうと共に、歯科技工士の熟練度により作製される歯科用補綴物の品質の善し悪しが左右されるという問題があった。
【0004】
そこで、歯科技工士による手作業に頼ることなく安定した品質の歯科用補綴物を短時間により多く作製する方法として、近年では三次元計測装置やコンピュータ等を用いてインレー,クラウン,ブリッジ等の歯科用補綴物の三次元形状データを作製し、この歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して歯科用補綴物を作製する歯科用CAD/CAMシステムが開発されてきた。
【0005】
このような歯科用CAD/CAMシステムにおける三次元計測装置としては、例えば被計測物の保持台、保持台の回転治具、保持台回転軸の変更治具、保持台位置の変更治具とレーザー計測部により構成される装置(例えば、特許文献1参照。)が存在する。
【0006】
しかしながら、このような装置は被計測物がインレーやクラウン等の1本の歯のみに適用される小型の歯科用補綴物の模型を計測して歯科用補綴物の三次元形状データを作製する場合には有効であるものの、被計測物の保持台のみが回転治具により回転する構造となっているので、ブリッジ等の複数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や複数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測することができないという問題があった。
【0007】
そこで、ブリッジ等の複数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や複数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測して三次元形状データを作製することができる三次元計測装置として、例えば本体基盤と、回転ステージと、回転ステージの回転とは独立して所定の水平方向X及びそれと直角な水平方向Yに移動可能であり、別部材との嵌合部が設けられたXYステージと、回転ステージ及びXYステージの駆動をそれぞれ独立して制御する駆動制御手段と、XYステージの嵌合部と嵌合する被嵌合部及び被測定物との嵌合部を設けた被測定物保持手段と、回転ステージの直径方向に移動可能なRステージと、Rステージの下面に、光軸が回転ステージの回転軸と平行になるように設けられた第1のレーザー変位計と、回転軸と平行な方向に移動可能なZステージと、Zステージの側面に、回転軸と直交するように設けられた第2のレーザー変位計とからなる装置(例えば、特許文献2参照。)や、Xθ、Yθ方向に回転するXθ、Yθステージと、これらのXθ、Yθステージをそれぞれ微駆動する第1の駆動手段と、前記Xθ、Yθステージの上でX、Y方向に移動するX、Yステージと、球面を有する被測定物を前記X、Yステージの上に固定する固定具と、前記X、Yステージをそれぞれ微駆動する第2の駆動手段と、被測定物の表面の三次元座標値を測定する光プローブと、前記第1の駆動手段と前記光プローブを制御すると共に信号を演算処理するコンピュータとを具備する装置(例えば、特許文献3参照。)等が開発された。
【0008】
しかしながら、このような装置はブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物を計測して三次元形状データを作製することができるものの、装置自体が複雑でその制御が難しい上にその製造コストが高く、特に前者の装置は2つのレーザー変位計を備えているから、メンテナンスや製造コストの面で高くついてしまうという問題があった。
【0009】
そこで、インレーやクラウン等の少数本の歯に適用される小型の歯科用補綴物の模型等の小さな被計測物から、ブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物まで計測することができる上に、更に被計測物の形状を計測するレーザセンサを1つとすることによりその製造コストやメンテナンスの費用を低く押えることができる三次元計測装置として、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在でこの回転テーブル上に配置されているXYテーブルとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサにより載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置が開発された。
【0010】
このような装置によりインレー,クラウンやブリッジ等の歯科用補綴物の模型を計測して三次元形状データを作製する方法としては、例えばワックスや合成樹脂等により形成された歯科用補綴物の模型をその支台歯等に係合する顎骨側が側方を向くようにして三次元計測装置の載置台上に設置して計測し三次元形状データを作製する方法(以下、「前者の三次元形状データの作製方法」と言う。)や、支台歯の模型や顎堤の模型に係合させた状態でワックスや合成樹脂等により形成された歯科用補綴物の模型を三次元計測装置の載置台上に設置して計測した後に、この歯科用補綴物の模型を取り外して支台歯の模型や顎堤の模型における歯科用補綴物の模型が当接していた部位を計測し、その後にそれぞれの計測値に基づいて歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製する方法(以下、「後者の三次元形状データの作製方法」と言う。)等が実施されている。
【0011】
しかしながら、比較的高い計測精度や加工精度を必要としないインレー,クラウンやブリッジ等の歯科用補綴物の模型を計測して歯科用補綴物の三次元形状データを作製し、この歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して歯科用補綴物を作製する場合には、前記のそれぞれの三次元形状データの作製方法で充分であるが、歯科用補綴物の中でも非常に高い計測精度や加工精度を要求される例えば1本のインプラントフィクスチャーのみに適用されるインプラント用の歯科用補綴物を作製する場合には、前記の何れの三次元形状データの作製方法でも、要求される寸法精度の歯科用補綴物を作製することが非常に困難であるという欠点があった。
【0012】
即ち、1本のインプラントフィクスチャーのみに適用されるインプラント用の歯科用補綴物としては、例えば人工歯と係合部位とが一体を成した形状に形成されており顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に直接又は既製のアバットメントを介して設置されて固定される歯科用補綴物や、歯科用補綴物が適用される患者の歯肉や隣在歯の形状等に合わせて歯肉に当接する部位や人工歯が固定される部位等の形状が設計されていると共に顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーに係合するため係合部位を有するアバットメント等が存在し、このようなインプラント用の歯科用補綴物の顎骨側に突設されている係合部位は、断面形状が回転体以外の形状(通常は、正六角形)を成す凸状及び/又は凹状の係合部が形成されているから、前者の三次元形状データの作製方法によりこのインプラント用の歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製しようとすると、計測部のレーザセンサのレーザ光が係合部の奥の方まで届かなっかったり、係合部の載置台側に位置する部位を計測する際に載置台やXYテーブルが障害となってしまったりして係合部位を正確に計測することができないという欠点があり、一方後者の三次元形状データの作製方法によりこのインプラント用の歯科用補綴物の模型の三次元形状データを作製しようとすると、インプラント用の歯科用補綴物の模型とこのインプラント用の歯科用補綴物の模型が係合されるインプラントフィクスチャー又はアパットメントの模型等を用意し、このインプラントフィクスチャー又はアパットメントにおけるインプラント用の歯科用補綴物の模型の係合部位が当接する部位を計測しなければならないので、インプラントフィクスチャー又はアパットメントの模型等を用意する手間が掛かるという欠点があるばかりでなく、インプラントフィクスチャー又はアパットメントにおけるインプラント用の歯科用補綴物の模型の係合部位が当接する部位を計測する際には、前者の三次元形状データの作製方法と同様に、計測部のレーザセンサのレーザ光が係合部の奥の方まで届かなっかったりするので、係合部位を正確に計測することができないという欠点があった。
【0013】
また、インプラント用の歯科用補綴物の係合部位は通常正六各形状のような角部を有する多角形状を成しているので、これを一般的な三次元計測装置のレーザセンサにより正確に計測することは非常に難しいという欠点があり、そして作製された歯科用補綴物の係合部位の三次元形状データが僅かでも実際の歯科用補綴物の模型の係合部位の形状と相違すると、この不正確な歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機により歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工して作製された歯科用補綴物をインプラントフィクスチャーに固定する際に上手く係合できなかったり、インプラントフィクスチャーに固定された後に歯科用補綴物がガタついてしまったりする欠点もあった。
【0014】
更に、前者又は後者の三次元形状データの作製方法で正確な歯科用補綴物の模型の三次元形状データを得られたとしても、この歯科用補綴物の模型の三次元形状データに基づいて歯科用補綴物を作製する自動切削加工機は、一般的には回転切削工具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工するものであるので、係合部位が角部を有するような形状を成している場合には、作製された三次元形状データ通りの歯科用補綴物を正確に作製することができないという欠点もあった。
【0015】
【特許文献1】特開平5−332731号公報
【特許文献2】特開平7−181022号公報
【特許文献3】特開2002−257511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記従来技術の欠点を解消し、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在でこの回転テーブル上に配置されているXYテーブルとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサにより載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置により、特に断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具、及びこの被計測物装着具を用いて歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、前記三次元計測装置を用いて作製された歯科用補綴物の模型の三次元形状データに基づいて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工して歯科用補綴物を作製する際し、歯科用補綴物の顎骨側に突設及び/又は凹設される断面形状が回転体以外の形状を成す係合部を有する係合部位及びこの係合部位以外の部位をそれぞれ同時に切削加工するのではなく、この歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを用いて係合部位以外の部位のみを自動切削加工機により切削加工することにより、前記した如き三次元計測装置の計測精度の問題や自動切削加工機の加工精度の問題等を克服できることを究明した。
【0018】
しかしながら、三次元計測装置により載置台上の被計測物装着具に装着された状態の歯科用補綴物の模型を計測すると、自動切削加工機により歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工する際に必要な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データではなく、歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成していてその部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データが作製されてしまうので、このような各部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データに基づいて歯科用補綴物切削用ブロックを切削加工しようとすると、切削加工に必要な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出するという非常に困難な操作を行わなければならないという問題が生じた。
【0019】
また、この歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する際に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位と係合部位との境界である係合部位の上端の位置を正確に認識できないことに起因してこの係合部位の上端の位置を僅かでも誤った状態でこの位置よりも上方に存在する部位の三次元形状データを抽出してしまうと、歯科用補綴物の模型と同形状の歯科用補綴物を作製することができないので、実際に作製された歯科用補綴物を装着する際に隣在歯に干渉してしまったり咬合面の位置が正しい位置に位置しなくなるばかりでなく、インプラントフィクスチャーに上手く係合させることができなくなり、特に作製された歯科用補綴物が前記した如きアバットメントである場合には、アバットメントが患者の歯肉の形状にフィットしなかったり、アバットメント自体が歯肉の上方より見えてしまったり歯肉内に埋没してしまうことによりその審美性が著しく損なわれてしまったりするという不具合が発生するという問題があった。
【0020】
このようなことから、本発明者らは歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成すと共にそれぞれの部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データより歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する方法として、歯科用補綴物の模型が設置された被計測物装着具における円柱状部とこの円柱状部の上面に鉛直に立設されその上面に歯科用補綴物の模型が設置される柱状部との境界を前記三次元形状データより認識し、被計測物装着具の前記境界の位置と歯科用補綴物の模型が載置された状態におけるこの歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置を算出し歯科用補綴物の模型の係合部位以外の部位のみの三次元形状データを抽出する方法を新たに想起したが、一般的な三次元計測装置のレーザーセンサの特質上、前記境界の如く略直角に折曲した部位においてはレーザ光の乱反射が生じるから、前記三次元形状データにおける前記境界の位置は不正確なものとなってしまうので、このような方法では被計測物装着具おける円柱状部と柱状部との境界を正確に認識することができなかった。
【0021】
そこで、本発明者らは更に研究を重ねた結果、歯科用補綴物の模型と被計測物装着具とが一体を成すと共にそれぞれの部位の境界を識別することができない状態の三次元形状データよりこの係合部位の上端の位置を特定するのではなく、歯科用補綴物の模型が設置される被計測物装着具として円柱状部の側面とこの円柱状部の上面との境界部で該円柱状部の中心軸との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部が形成されたものを用い、被計測物装着具の円柱部の側面からこの傾斜部までレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で照射してそのレーザ光の受光量を計測し、その受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、正確に被計測物装着具の傾斜部の下端の位置を検出することができると共に、この検出された被計測物装着具の傾斜部の下端の位置に基づいて正確な歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を作製することができることを究明して本発明を完成したのである。
【0022】
即ち本発明の一つは、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置ににより、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型の形状の三次元座標を計測する際に該歯科用補綴物の模型を設置するために用いられる被計測物装着具であって、
円柱状部と、該円柱状部の下面側に設けられ前記XYテーブル上の載置台上に該XYテーブルの上面に対して該円柱状部の中心軸が鉛直に載置せしめられるように形成された載置部と、該円柱状部の側面と該円柱状部の上面との境界部で該円柱状部の中心軸との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部と、該円柱状部の上面側に鉛直に立設され断面形状が前記歯科用補綴物の模型の係合部位の断面形状と同一の形状で該係合部位内に該円柱状部の中心軸の延長線が位置するように形成された柱状部と、該柱状部の上面に形成され該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部に係合する形状を成す装着部とから構成されていることを特徴とする被計測物装着具である。
【0023】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の一つの態様は、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型を準備する模型準備ステップと、
本発明に係る被計測物装着具を準備し、該被計測物装着具の装着部に該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を該載置台上に載置する装着具載置ステップと、
前記回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、前記計測部のレーザセンサからのレーザ光を該被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサからのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具の円柱状部の側面から該被計測物装着具の傾斜部を経て柱状部の頂部に至る前の高さの位置へ移行するように該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に移動させた後に、該レーザセンサを回転移動させることによって該被計測物装着具の円柱状部と柱状部と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
該被計測物装着具の円柱状部の側面から傾斜部へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具に該歯科用補綴物の模型が設置された状態における該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置の該Z軸上の座標を算出し、前記計測された三次元座標から算出された該座標より上方に位置する該歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法である。
【0024】
また、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の他の態様は、回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブルとその上部に被計測物装着具を設置できる載置台を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル上に配置されているXYテーブルと前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサにより該載置台上の被計測物装着具に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部とを備えた三次元計測装置を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具を準備し、該被計測物装着具の装着部に該歯科用補綴物の模型の係合部位の係合部を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を該載置台上に載置する装着具載置ステップと、
前記計測部のレーザセンサからのレーザ光を該被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサからのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具の円柱状部の側面から該被計測物装着具の傾斜部へ移行するように該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具に該歯科用補綴物の模型が設置された状態における該被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、該歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置の該Z軸上の座標を算出し、算出された該座標の位置まで該レーザセンサを該計測部により前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、
前記回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、該レーザセンサを回転移動させることによって該歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型の係合部位と略同形状の係合部位が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法である。
【0025】
更に、これらの歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法において、装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致するようにXYテーブルをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行えば、予め被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致していない場合には、簡単に両軸を一致させることができて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る被計測物装着具及びこれを用いた歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法は、前記した構成より成るものであるから、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部を有する係合部位が顎骨側に突設されている歯科用補綴物の三次元形状データを作製するのに好適であるばかりでなく、前記した既存の三次元計測装置の載置台上に載置された歯科用補綴物の模型付の被計測物装着具を計測する構成となっているから、既存の三次元計測装置に大幅な改造や加工を施すことなく歯科用補綴物の模型に対応した被計測物装着具を準備するだけで実施することができるので、断面形状が回転体以外の形状を成す係合部を有する係合部位が顎骨側に突設及び/又は凹設されている歯科用補綴物だけでなく、インレーやクラウン等の少数本の歯に適用される小型の歯科用補綴物の模型等の小さな被計測物から、ブリッジ等の多数本の歯に適用される大型の歯科用補綴物の模型や多数本の残存歯の石膏模型等の大きな被計測物まで、新規な三次元計測装置を導入することなく様々な被計測物を計測して三次元形状データを作製することができるのである。
【0027】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データの作製する方法が、回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、計測部のレーザセンサからのレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態でこのレーザセンサからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具の円柱状部の側面から被計測物装着具の傾斜部を経て柱状部の頂部に至る前の高さの位置へ移行するようにレーザセンサを計測部によりZ軸方向に移動させた後に、このレーザセンサを回転移動させることによって被計測物装着具の円柱状部と柱状部と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、被計測物装着具の円柱状部の側面から傾斜部へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具の傾斜部の下端の位置のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具に歯科用補綴物の模型が設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置のZ軸上の座標を算出し、計測された三次元座標から算出された座標より上方に位置する歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップとを含む態様の方法であれば、被計測物装着具と歯科用補綴物の模型とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を一気に計測した後に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを抽出する構成になっているから、被計測物装着具の柱状部のZ軸方向の長さが比較的短い場合には、歯科用補綴物の三次元形状データを短時間で製作することができるので好ましい。
【0028】
そして、本発明に係る被計測物装着具を用いて歯科用補綴物の三次元形状データの作製する方法が、計測部のレーザセンサからのレーザ光を被計測物装着具の円柱状部の上面と平行に照射されるように維持した状態でこのレーザセンサからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具の円柱状部の側面から被計測物装着具の傾斜部へ移行するようにこのレーザセンサを計測部によりZ軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具の傾斜部の下端の位置のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具に歯科用補綴物の模型が設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置とのZ軸上の間の予め記憶された距離に基づいて、歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置のZ軸上の座標を算出し、算出された座標の位置までレーザセンサを計測部によりZ軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、回転テーブルをZ軸を軸心として回転させながら、このレーザセンサを回転移動させることによって歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップとを含む態様の方法であれば、被計測物装着具のレーザ光の受光量のみを計測して歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置、即ち計測初期位置まで一気に移動した後に、歯科用補綴物の模型の係合部位以外の形状の三次元座標のみを計測する構成になっているから、被計測物装着具の柱状部のZ軸方向の長さが比較的長い場合には、歯科用補綴物の三次元形状データを短時間で製作することができるので好ましい。
【0029】
更に、これらの歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法において、装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致するようにXYテーブルをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行えば、予め被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致していない場合には、両軸を一致させることによってその後に行われるそれぞれのステップにおける計測部のレーザセンサによる三次元座標の計測を円滑に行うことができると共に、Z軸を基準とした歯科用補綴物の模型の三次元座標を得ることができるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面により本発明に係る歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法について詳細に説明する。
図1は本発明に用いる三次元計測装置の1例を模式的に示す斜視説明図、図2は図1に示す三次元計測装置の載置台より取り外された被計測物装着具の上部の形状を示す斜視拡大説明図、図3は被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致した状態を模式的に示す断面説明図、図4は被計測物装着具に歯科用補綴物の模型であるアバットメントが設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との位置関係を模式的に示す正面説明図、図5は計測部により移動されるレーザセンサの動きの1例を模式的に示す正面説明図、図6は本発明に用いる歯科用補綴物の模型であるアバットメントの1例を示す正面説明図、図7は図6の底面説明図、図8は本発明に用いる歯科用補綴物の模型である人工歯付の歯科用補綴物の1例を示す正面説明図、図9は図8の底面説明図、図10は歯科用補綴物の模型を形成する際に用いられる係合部位と同一の形状を有する治具の一例を示す斜視説明図、図11は本発明により作製された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて切削加工される歯科用補綴物切削用ブロックの1例を示す斜視説明図である。
【0031】
図面中、1は本発明に係る後述する被計測物装着具2が載置されると共に本発明方法において用いられる三次元計測装置であって、図1に示す如く回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル1aとその上部に被計測物装着具2を設置できる載置台1bを固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で回転テーブル1a上に配置されているXYテーブル1cとZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動すると共にZ軸方向に移動する一つのレーザセンサ1daにより載置台1b上の被計測物装着具2に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部1dとを備えている。
【0032】
この三次元計測装置1は、計測部1dにより載置台1bの上部に設置された被計測物装着具2に装着された被計測物の形状の三次元座標を計測し、歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製するために用いられる。
【0033】
この三次元計測装置1を用いて被計測物の形状の三次元座標を計測するには、この三次元計測装置1の載置台1bの上部に設置された被計測物装着具2に装着された被計測物を、XYテーブル1cによりX軸方向及びY軸方向に移動させたり、回転テーブル1aにより回転テーブル1aの回転軸の軸心であるZ軸廻りに回転させたりすると共に、更には被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部1dの一つのレーザセンサ1da自体をもZ軸上の所望の点を中心としてこのZ軸を含む同一平面上を回転移動させたり、Z軸方向に移動させたりしながら、計測部1dの一つのレーザセンサ1daにより被計測物の表面にレーザ光を照射すると共に、この被計測物の表面から反射してくるレーザ光を受光し、計測部1dによりこのレーザ光を受光した際のレーザセンサ1daの位置,レーザ光の受光角度,レーザ光の受光量や照射から受光までの時間等に基づいて被計測物の表面の各点の三次元座標を計測し、これらの複数の計測点に基に被計測物の形状の三次元座標を得るのである。
【0034】
2は三次元計測装置1のXYテーブル1c上の載置台1bの上部に載置される被計測物装着具であり、円柱状部2aと、円柱状部2aの下面側に設けられXYテーブル1c上の載置台1b上にXYテーブル1cの上面に対して円柱状部2aの中心軸Tが鉛直に載置せしめられるように形成された載置部2bと、円柱状部2aの側面と円柱状部2aの上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部2cと、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設され断面形状が歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状で係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成された柱状部2dと、柱状部2dの上面に形成され被計測物となる歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaに係合する形状を成す装着部2eとから構成されている。
【0035】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの下面側には、XYテーブル1c上の載置台1b上にXYテーブル1cの上面に対して円柱状部2aの中心軸Tが鉛直に載置せしめられるように形成された載置部2bが設けられており、この載置部2bとしては、例えば図2に示す如く円柱状部2aの底面側に下方へ突出した複数の係合凸条を成すように形成されていると共に、図示しないが三次元計測装置1の載置台1bの上部に前記複数の係合凸条が係合できるように複数の係合溝が形成されていれば、被計測物装着具2を三次元計測装置1の載置台1bに載置した状態でXYテーブル1cや回転テーブル1aを動かした際に、載置台1bに対して被計測物装着具2がズレてしまったり回転してしまったりすることなく、被計測物装着具2が安定した状態で載置されるので好ましい。
【0036】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの側面と上面との境界部には、図2に示す如く円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部2cが形成されており、この傾斜部2cは歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の三次元形状データを作製するに際して必要となる歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を導き出すために利用されるものである。
【0037】
より具体的には、図5に示す如く三次元計測装置1の計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から少なくともこの傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させながら、反射してくるレーザ光の受光量を計測し、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、そして図4に示す如く被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出するのである。
【0038】
即ち、三次元計測装置1の計測部1dのレーザセンサ1daから照射されるレーザ光は、被計測物の表面に対する入射角度が直角である場合に最もその受光量が多くなり、そしてこの入射角度が0度又は180度に近くなればなる程、レーザ光が乱反射を起こして減衰しその受光量が小さくなるという特性を有しており、このような特性を利用して被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1を検出するのである。
【0039】
この被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1を検出方法についてより詳細に説明すると、例えば被計測物装着具2の表面がレーザ光の反射効率を高めるためにクロアルマイト処理を施されていると共に被計測物装着具2の傾斜部2cが円柱状部2aの側面と上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が45度の円錐形の一部を成す傾斜部である場合には、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させると、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面では、その受光量は概ね0.4を維持するが、レーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cの下端へ移行した瞬間にその受光量が概ね0.2へと急激に低下するので、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できるのである。
【0040】
そして、この傾斜部2cを成す円錐形の一部と円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が、20〜70度の範囲内でなければならない理由は、この角度が70度を超えるとレーザ光の入射角度が鈍角になり過ぎるために反射してくるレーザ光が弱く検出範囲外となってしまう恐れがあり、一方この角度が20度未満であると円柱状部2aの側面とで成す角度が小さいため円柱状部2aの側面におけるレーザ光の受光量と傾斜部2cにおけるレーザ光の受光量との差が極僅かとなりレーザ光の受光量の低下する箇所の判別が困難になってしまうからである。
【0041】
この被計測物装着具2の円柱状部2aの上面側には、鉛直に立設され断面形状が歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状で係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成された柱状部2dが設けられている。
【0042】
この柱状部2dの断面形状は、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの断面形状と同一の形状に形成されている。これは、歯科用補綴物切削用ブロックBに予め形成されている係合部位Kの断面形状と合致した形状に柱状部2dの断面形状が合致せしめられていると、作製した歯科用補綴物の模型3が歯科用補綴物切削用ブロックBを切削加工した歯科用補綴物と全く同一形状のものとなるので、切削加工する歯科用補綴物の形状を正しく認識できるからであり、その結果この柱状部2dの上面に形成された装着部2eに歯科用補綴物の模型3を設置した状態ではこの柱状部2dの側面と係合部位3aの側面とはZ軸方向と平行を成すから、歯科用補綴物の模型3の表面に計測し易いように好ましく採用されるクロアルマイト処理等の塗装処理を施す場合には、通常は歯科用補綴物の模型3を計測する直前において歯科用補綴物の模型3を被計測物装着具2に設置した状態で塗装処理を施すので、この塗装が係合部位3aと柱状部2dの上面との間や装着部2e等に溜まってしまったり固化してしまったりすることにより、歯科用補綴物の模型3が外れなくなってしまったり正確な計測ができなかったりすることを防止できるのである。
【0043】
そして柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから、一般的に三次元計測装置1は計測を行う前の段階においてZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっているので、被計測物装着具2を載置台1b上に載置するだけで、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致した状態となり、計測部1dのレーザセンサ1daによる三次元座標の計測を円滑に行うことができるばかりでなく、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら歯科用補綴物の模型3の三次元座標を計測すれば、簡単にZ軸を基準とした歯科用補綴物の模型3の三次元座標を得ることができるのである。
【0044】
この際、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されてない場合や、経年変化等によりXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度が低下して正確に初期位置に原点復帰できない場合等の様々な要因によって、計測を行う前の段階において三次元計測装置1のZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっていない場合には、被計測物装着具2を載置台1b上に載置した後に、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致するようにXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させれば、簡単に両軸を一致させることができる。
【0045】
また柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とを一致させることができるので、計測部1dによりレーザセンサ1daをZ軸方向に移動させるだけでレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から上方の位置へ簡単に移行させることができると共に、このZ軸を基準として被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出したり、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出したりすることができるのである。
【0046】
この被計測物装着具2の柱状部2dの上面には、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaに係合する形状を成す装着部2eが形成されており、この装着部2eとしては、例えば図6及び図7に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが断面形状が正六角形の形状を成す凹状の係合穴である場合には、図2に示す如くこの装着部2eは断面形状が正六角形の形状を成す凸状の柱状体に形成されており、また例えば図8及び図9に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが顎骨側に突設された円柱状とこの円柱状の周面に等間隔に複数個設けられた半円状の凸部とで形成された形状を成している場合には、図示しないが装着部2eは断面形状はこのような係合部3aaに係合するような形状を成した係合穴の如く凹状に形成されている。
【0047】
3は断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部3aaを有する係合部位3aが顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型であり、歯科技工士等によってワックス,合成樹脂や石膏等の材料で形成されるものである。
【0048】
この歯科用補綴物の模型3の顎骨側に突設されている係合部位3aに形成された係合部3aaは、少なくとも断面形状が回転体以外の形状、即ち断面形状が正円以外の形状を成す凸状及び/又は凹状のものであれば制限はないが、この係合部3aaの断面形状が、係合部3aaを中心として360度/n(但し、nは2以上の正の整数)の回転毎に全く同じ外形が繰り返して表われ且つn回の回転で形成される図形が円形ではない形状、例えば図6及び図7に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが断面形状が正六角形の形状を成す凹状の係合穴ような形状や、図8及び図9に示す如く装着される歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaが顎骨側に突設された円柱状とこの円柱状の周面に等間隔に複数個設けられた半円状の凸部とで形成された形状等の回転対称な形状をなしていれば、歯科用補綴物の模型3を被計測物装着具2に装着するに際し、複数通りの装着方向が存在するので装着作業が容易になって好ましいばかりでなく、作製される歯科用補綴物の係合部位がその中心軸廻りに著しく大きな力が作用する部分が存在しない形状となるので優れた歯科用補綴物を作製できるので好ましい。
【0049】
この歯科用補綴物の模型3の例としては、図6及び図7に示す如き歯肉や隣在歯の形状等に合わせて歯肉に当接する部位や人工歯が固定される部位等の形状が設計されていると共に顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーに係合するため係合部位を有するアバットメントや、図8及び図9に示す如き人工歯と係合部位とが一体を成した形状に形成されており顎骨に埋入されたインプラントフィクスチャーの口腔内側部分に直接又は既製のアバットメントを介して設置されて固定される歯科用補綴物等の模型が存在する。
【0050】
この歯科用補綴物の模型3を形成する方法としては、予め作製された隣在歯,欠損歯,支台歯等が存在する石膏模型に直接ワックス等を築盛して歯科用補綴物の模型3を形成したり、被計測物装着具2の柱状部3dの装着部2eに直接ワックス等を築盛して歯科用補綴物の模型3を形成したりしてもよいが、図10に示す如き形成しようとする歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと同一の形状の係合部位を有し、その上方に係合部位以外の部位を形成できるような形状を成す治具を用意し、この治具に直接ワックス等を築盛することにより歯科用補綴物の模型3を形成すれば、簡単に歯科用補綴物の係合部位の形状を正確に再現することができるので好ましいばかりでなく、係合部位の形状を完全に把握した状態で歯科用補綴物の模型3を形成することができるので、最終的に作製される歯科用補綴物の使用感や審美性等を向上させることができて好ましい。
【0051】
次に、このような構成の三次元計測装置1及び本発明に係る被計測物装着具2を用いて図11に示すような歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物である歯科用補綴物の模型3と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の一態様についてそれぞれのステップを順に追いながら説明する。
【0052】
先ず、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部3aaを有する係合部位3aが顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型3を準備する模型準備ステップを行う。この模型準備ステップは、計測に先立って歯科技工士等によりワックス,合成樹脂や石膏等の材料を用いて予め形成された歯科用補綴物の模型3を準備することによって行われる。
【0053】
次に、本発明に係る被計測物装着具2を準備し、この被計測物装着具2の装着部2eに前記模型準備ステップにより準備された歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの係合部3aaを係合させる模型設置ステップを行う。
【0054】
次いで、前記模型設置ステップにより設置された歯科用補綴物の模型3付の被計測物装着具2を載置台1b上に載置する装着具載置ステップを行う。
【0055】
この際、被計測物装着具2の柱状部2dは、円柱状部2aの上面側に鉛直に立設されていると共に設置させる歯科用補綴物の模型3の係合部位3a内に円柱状部2aの中心軸Tの延長線が位置するように形成されているから、一般的に三次元計測装置1は計測を行う前の段階においてZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっているので、被計測物装着具2を載置台1b上に載置するだけで、図3に示す如く被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致した状態となり、計測部1dのレーザセンサ1daによる三次元座標の計測を円滑に行うことができるばかりでなく、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら歯科用補綴物の模型3の三次元座標を計測すれば、簡単にZ軸を基準とした歯科用補綴物の模型3の三次元座標を得ることができるのである。
【0056】
ここで、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されてない場合や、経年変化等によりXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度が低下して正確に初期位置に原点復帰できない場合等の様々な要因によって、計測を行う前の段階において三次元計測装置1のZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態となっていない場合には、前記装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致するようにXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行う。
【0057】
この両軸一致ステップを行うには、例えばZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態である初期位置に原点復帰させるようにX軸方向及びY軸方向の移動量を入力すればよいが、この両軸一致ステップが、被計測物装着具2の円柱状部2aの外周に位置する偶数の複数の点の二次元のXY座標を三次元計測装置1の計測部1dにより計測する装着具座標計測ステップと、計測されたそれぞれの点のX軸座標の数値の合計値及びY軸座標の数値の合計値を算出し、それぞれの合計値を計測した点の数で除してZ軸を原点とした被計測物装着具2の中心軸TのXY座標を得た後に、被計測物装着具2の中心軸Tの二次元のXY座標と原点との座標の差を算出し、被計測物装着具2の中心軸Tの補正値を得る補正値算出ステップと、この補正値に基づいてXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させることにより、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TをZ軸に一致せしめる位置補正ステップとから成るものであれば、経年変化等により三次元計測装置1のXYテーブル1cをX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる駆動手段の移動精度等が低下し、これらの駆動手段にZ軸を成す回転テーブル1aの回転軸の軸心とXYテーブル1c上の載置台1bの中心線とが一致した状態である初期位置に原点復帰するように入力しても、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とを容易に一致させることが困難な場合には、正確に両軸を自動的に一致させることができて好ましいばかりか、XYテーブル1cが正確な初期位置に原点復帰されていない場合であっても、XYテーブル1cのそれぞれの駆動手段に被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とが一致する初期位置へ移動するように別途入力することなく両軸を自動的に一致させることができて好ましい。
【0058】
そして、このような両軸一致ステップにおいて、更に装着具座標計測ステップと補正値算出ステップと位置補正ステップとを、補正値算出ステップにより算出される補正値がXYテーブル1cが移動可能な最小単位以下になるまで繰り返せば、被計測物装着具2の円柱状部2aの中心軸TとZ軸とをより正確に一致させることができて好ましい。
【0059】
次いで、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から被計測物装着具2の傾斜部2cを経て柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置へ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させた後に、レーザセンサ1daを回転移動させることによって被計測物装着具2の円柱状部2aと柱状部2dと歯科用補綴物の模型3とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップを行う。
【0060】
この際、図5に示す如くレーザセンサ1daはレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態で柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置までZ軸方向に移動した後に、柱状部2dの頂部に至る前の高さの位置より円弧を描くようにZ軸上の所望の点を中心としてZ軸を含む同一平面上を回転移動して、被計測物装着具2の円柱状部2aから歯科用補綴物の模型3へ亘る部位のレーザ光の受光量を漸次計測すると共に被計測物装着具2の円柱状部2aより上方の部位と歯科用補綴物の模型3とが一体を成した形状の三次元座標を計測するのである。
【0061】
最後に、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cへ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、計測された三次元座標から算出された座標より上方に位置する歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップを行う。
【0062】
この際、例えば被計測物装着具2の表面がクロアルマイト処理を施されていると共に被計測物装着具2の傾斜部2cが円柱状部2aの側面との上面との境界部で円柱状部2aの中心軸Tとの成す角度が45度の円錐形の一部を成す傾斜部である場合には、被計測物装着具2の円柱状部2aの側面では、その受光量は概ね0.4維持するが、レーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から傾斜部2cの下端へ移行した瞬間にその受光量が概ね0.2へと急激に低下するので、この受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できるのである。
【0063】
また、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出する際に用いられる、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lとは、図4に示す如く被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態で両位置のZ軸方向、即ち被計測物装着具2の円柱部2aの中心軸T方向の距離を予め計測し、この計測された値を距離Lとして三次元計測装置1の計測部1d等に記憶されたものである。
【0064】
このように検出された被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標から、予め記憶された前記距離Lに基づいて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出する構成と成っているから、正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を得ることができると共に、模型付装着具計測ステップにより計測された被計測物装着具2の円柱状部2aより上方の部位と歯科用補綴物の模型3とが一体を成した形状の三次元座標から、この正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標から上方に位置する三次元座標を抽出するだけで、正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データを作製することができるのである。
【0065】
次に、三次元計測装置1及び本発明に係る被計測物装着具2を用いて歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により被計測物である歯科用補綴物の模型3と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法の他に態様についてそれぞれのステップを順に追いながら説明するが、この態様における模型準備ステップから装着具載置ステップまでの構成、及び装着具載置ステップを行った後に両軸一致ステップを更に行う態様である場合における両軸一致ステップの構成は前記態様と略同様な構成と成っているので、これらのステップについての説明は割愛する。
【0066】
先ず、模型準備ステップから装着具載置ステップを順に行った後に、更に両軸一致ステップを行う態様である場合には両軸一致ステップを行った後に、計測部1dのレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でレーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の円柱状部2aの側面から被計測物装着具2の傾斜部2cへ移行するようにレーザセンサ1daを計測部1dによりZ軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出し、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、算出された座標の位置L2までレーザセンサ1daを計測部1dにより前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップを行う。尚、この計測初期位置移動ステップを行うに際し、回転テーブル1aをZ軸を軸心とする回転を停止させた状態で行ってもよいが、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながらこの計測初期位置移動ステップを行えば、レーザセンサ1daからのレーザ光が照射される部位が被計測物装着具2の周囲に全体的に亘るので、そのレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定する際の精度が向上して好ましい。
【0067】
この際、図5に示す如くレーザセンサ1daはレーザセンサ1daからのレーザ光を被計測物装着具2の円柱状部2aの上面と平行に照射されるように維持した状態でZ軸方向に移動して、被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標を検出できた時点、即ちレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定できた時点でレーザ光による計測を一旦中止して、この検出された被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1のZ軸上の座標から、被計測物装着具2に歯科用補綴物の模型3が設置された状態における被計測物装着具2の傾斜部2cの下端の位置L1と歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2とのZ軸上の間の予め記憶された距離Lに基づいて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2のZ軸上の座標を算出し、この歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2、即ち歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状を直ぐに計測できる初期の位置まで一気にZ軸方向に一気に移動するのである。
【0068】
最後に、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、レーザセンサ1daを回転移動させることによって歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップを行う。
【0069】
この際、レーザセンサ1daは計測初期位置移動ステップにより歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元座標のみを計測できる初期位置まで移動させられているので、回転テーブル1aをZ軸を軸心として回転させながら、この初期位置よりレーザセンサ1daを回転移動させることによって、簡単に正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データを作製することができるのである。
【0070】
次いで、このような本発明方法により作製された歯科用補綴物の三次元形状データを用いて歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機により切削加工する方法について説明する。
【0071】
初めに準備として、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBを予め用意する。この歯科用補綴物切削用ブロックBとしては、例えば図11に示す如く係合部位Kが予め形成されている形状を成しており、その材質としてはチタン合金や焼成前後のセラミックやコンポジットレジン等の材料が好ましく使用される。
【0072】
このような準備が完了した後に、先ず歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機内に設置する操作を行う。この際、歯科用補綴物切削用ブロックBが予め設定された設置方向に向くように、歯科用補綴物切削用ブロックBを自動切削加工機内に設置する。
【0073】
次に、本発明方法により作製された歯科用補綴物の三次元形状データを自動切削加工機に入力し、この入力された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて自動切削加工機内に設置された歯科用補綴物切削用ブロックBを切削加工する操作を行う。
【0074】
この際、自動切削加工機に入力される歯科用補綴物の三次元形状データは、本発明方法により作製された正確な歯科用補綴物の模型3の係合部位3a以外の形状の三次元形状データ、即ち歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2より上方に位置する部位の形状の三次元形状データであるから、この入力された三次元形状データの歯科用補綴物の模型3の係合部位3aの上端の位置L2に基づいて、歯科用補綴物の模型3の係合部位3aと略同形状の係合部位Kが予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロックBの係合部位Kの上端より切削加工を開始すれば、歯科用補綴物の模型3の形状と正確に一致し、且つ特に係合部位3aの上方近傍の形状が正確に一致した歯科用補綴物を得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に用いる三次元計測装置の1例を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】図1に示す三次元計測装置の載置台より取り外された被計測物装着具の上部の形状を示す斜視拡大説明図である。
【図3】被計測物装着具の円柱状部の中心軸とZ軸とが一致した状態を模式的に示す断面説明図である。
【図4】被計測物装着具に歯科用補綴物の模型であるアバットメントが設置された状態における被計測物装着具の傾斜部の下端の位置と歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置との位置関係を模式的に示す正面説明図である。
【図5】計測部により移動されるレーザセンサの動きの1例を模式的に示す正面説明図である。
【図6】本発明に用いる歯科用補綴物の模型であるアバットメントの1例を示す正面説明図である。
【図7】図6の底面説明図である。
【図8】本発明に用いる歯科用補綴物の模型である人工歯付の歯科用補綴物の1例を示す正面説明図である。
【図9】図8の底面説明図である。
【図10】歯科用補綴物の模型を形成する際に用いられる係合部位と同一の形状を有する治具の一例を示す斜視説明図である。
【図11】本発明により作製された歯科用補綴物の三次元形状データに基づいて切削加工される歯科用補綴物切削用ブロックの1例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 三次元計測装置
1a 回転テーブル
1b 載置台
1c XYテーブル
1d 計測部
1da レーザセンサ
2 被計測物装着具
2a 円柱状部
2b 載置部
2c 傾斜部
2d 柱状部
2e 装着部
3 歯科用補綴物の模型
3a 係合部位
3aa 係合部
B 歯科用補綴物切削用ブロック
K 係合部位
Z Z軸
T 中心軸
L1 被計測物装着具の傾斜部の下端の位置
L2 歯科用補綴物の模型の係合部位の上端の位置
L L1とL2とのZ軸上の間の予め記憶された距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)により、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)の形状の三次元座標を計測する際に該歯科用補綴物の模型(3)を設置するために用いられる被計測物装着具(2)であって、
円柱状部(2a)と、該円柱状部(2a)の下面側に設けられ前記XYテーブル(1c)上の載置台(1b)上に該XYテーブル(1c)の上面に対して該円柱状部(2a)の中心軸(T)が鉛直に載置せしめられるように形成された載置部(2b)と、該円柱状部(2a)の側面と該円柱状部(2a)の上面との境界部で該円柱状部(2a)の中心軸(T)との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部(2c)と、該円柱状部(2a)の上面側に鉛直に立設され断面形状が前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の断面形状と同一の形状で該係合部位(3a)内に該円柱状部(2a)の中心軸(T)の延長線が位置するように形成された柱状部(2d)と、該柱状部(2d)の上面に形成され該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)に係合する形状を成す装着部(2e)とから構成されていることを特徴とする被計測物装着具(2)。
【請求項2】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具(2)を準備し、該被計測物装着具(2)の装着部(2e)に該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型(3)付の被計測物装着具(2)を該載置台(1b)上に載置する装着具載置ステップと、
前記回転テーブル(1a)をZ軸を軸心として回転させながら、前記計測部(1d)のレーザセンサ(1da)からのレーザ光を該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサ(1da)からのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)を経て柱状部(2d)の頂部に至る前の高さの位置へ移行するように該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に移動させた後に、該レーザセンサ(1da)を回転移動させることによって該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)と柱状部(2d)と歯科用補綴物の模型(3)とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から傾斜部(2c)へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具(2)に該歯科用補綴物の模型(3)が設置された状態における該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)と該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)とのZ軸上の間の予め記憶された距離(L)に基づいて、該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)の該Z軸上の座標を算出し、前記計測された三次元座標から算出された該座標より上方に位置する該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)と略同形状の係合部位(K)が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロック(B)を自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【請求項3】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具(2)を準備し、該被計測物装着具(2)の装着部(2e)に該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型(3)付の被計測物装着具(2)を該載置台(1b)上に載置する装着具載置ステップと、
前記計測部(1d)のレーザセンサ(1da)からのレーザ光を該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサ(1da)からのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)へ移行するように該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具(2)に該歯科用補綴物の模型(3)が設置された状態における該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)と該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)とのZ軸上の間の予め記憶された距離(L)に基づいて、該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)の該Z軸上の座標を算出し、算出された該座標の位置(L2)まで該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、
前記回転テーブル(1a)をZ軸を軸心として回転させながら、該レーザセンサ(1da)を回転移動させることによって該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)と略同形状の係合部位(K)が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロック(B)を自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【請求項4】
装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の中心軸(T)とZ軸とが一致するようにXYテーブル(1c)をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行う請求項2又は3に記載の歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【請求項1】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)により、断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)の形状の三次元座標を計測する際に該歯科用補綴物の模型(3)を設置するために用いられる被計測物装着具(2)であって、
円柱状部(2a)と、該円柱状部(2a)の下面側に設けられ前記XYテーブル(1c)上の載置台(1b)上に該XYテーブル(1c)の上面に対して該円柱状部(2a)の中心軸(T)が鉛直に載置せしめられるように形成された載置部(2b)と、該円柱状部(2a)の側面と該円柱状部(2a)の上面との境界部で該円柱状部(2a)の中心軸(T)との成す角度が20〜70度の円錐形の一部を成す傾斜部(2c)と、該円柱状部(2a)の上面側に鉛直に立設され断面形状が前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の断面形状と同一の形状で該係合部位(3a)内に該円柱状部(2a)の中心軸(T)の延長線が位置するように形成された柱状部(2d)と、該柱状部(2d)の上面に形成され該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)に係合する形状を成す装着部(2e)とから構成されていることを特徴とする被計測物装着具(2)。
【請求項2】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具(2)を準備し、該被計測物装着具(2)の装着部(2e)に該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型(3)付の被計測物装着具(2)を該載置台(1b)上に載置する装着具載置ステップと、
前記回転テーブル(1a)をZ軸を軸心として回転させながら、前記計測部(1d)のレーザセンサ(1da)からのレーザ光を該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサ(1da)からのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)を経て柱状部(2d)の頂部に至る前の高さの位置へ移行するように該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に移動させた後に、該レーザセンサ(1da)を回転移動させることによって該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)と柱状部(2d)と歯科用補綴物の模型(3)とからのレーザ光の受光量及びそれらの形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から傾斜部(2c)へ移行する際におけるレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具(2)に該歯科用補綴物の模型(3)が設置された状態における該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)と該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)とのZ軸上の間の予め記憶された距離(L)に基づいて、該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)の該Z軸上の座標を算出し、前記計測された三次元座標から算出された該座標より上方に位置する該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)以外の形状の三次元座標のみを抽出する三次元座標抽出ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)と略同形状の係合部位(K)が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロック(B)を自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【請求項3】
回転軸の軸心がZ軸を成す回転テーブル(1a)とその上部に被計測物装着具(2)を設置できる載置台(1b)を固定されておりX軸方向及びY軸方向に移動自在で該回転テーブル(1a)上に配置されているXYテーブル(1c)と前記Z軸上の所望の点を中心として該Z軸を含む同一平面上を回転移動すると共に該Z軸方向に移動する一つのレーザセンサ(1da)により該載置台(1b)上の被計測物装着具(2)に装着される被計測物の形状の三次元座標を計測する計測部(1d)とを備えた三次元計測装置(1)を用いて、歯科用補綴物切削用ブロックを自動切削加工機により被計測物と同形状に切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製する方法であって、
断面形状が回転体以外の形状を成す凸状及び/又は凹状の係合部(3aa)を有する係合部位(3a)が顎骨側に突設されている被計測物となる歯科用補綴物の模型(3)を準備する模型準備ステップと、
請求項1に記載の被計測物装着具(2)を準備し、該被計測物装着具(2)の装着部(2e)に該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の係合部(3aa)を係合させる模型設置ステップと、
該歯科用補綴物の模型(3)付の被計測物装着具(2)を該載置台(1b)上に載置する装着具載置ステップと、
前記計測部(1d)のレーザセンサ(1da)からのレーザ光を該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の上面と平行に照射されるように維持した状態で該レーザセンサ(1da)からのレーザ光が照射される部位が該被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の側面から該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)へ移行するように該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に移動させることによってレーザ光の受光量が急激に低下する箇所を特定することによって、該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)の該Z軸上の座標を検出し、該被計測物装着具(2)に該歯科用補綴物の模型(3)が設置された状態における該被計測物装着具(2)の傾斜部(2c)の下端の位置(L1)と該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)とのZ軸上の間の予め記憶された距離(L)に基づいて、該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)の上端の位置(L2)の該Z軸上の座標を算出し、算出された該座標の位置(L2)まで該レーザセンサ(1da)を該計測部(1d)により前記Z軸方向に一気に移動させる計測初期位置移動ステップと、
前記回転テーブル(1a)をZ軸を軸心として回転させながら、該レーザセンサ(1da)を回転移動させることによって該歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)以外の形状の三次元座標を計測する模型付装着具計測ステップと、
を順に行うことより前記歯科用補綴物の模型(3)の係合部位(3a)と略同形状の係合部位(K)が予め形成されている歯科用補綴物切削用ブロック(B)を自動切削加工機により切削加工するための歯科用補綴物の三次元形状データを作製することを特徴とする歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【請求項4】
装着具載置ステップを行った後に、被計測物装着具(2)の円柱状部(2a)の中心軸(T)とZ軸とが一致するようにXYテーブル(1c)をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる両軸一致ステップを更に行う請求項2又は3に記載の歯科用補綴物の三次元形状データの作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−126004(P2006−126004A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314485(P2004−314485)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
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