装着型動作支援装置
【課題】簡素な構成でありながら、三節部位を自然な屈曲姿勢とすることができ、装着者の骨関節に負担をかけることがなく、小型で、装着性が良好で、信頼性を向上させることができるようにする。
【解決手段】単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、ベース部に固定された関節軸支持部と、関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、駆動アーム部に取り付けられるとともに、三節部位に装着される装着部とを備え、装着部は、三節部位の先端節に装着され、関節軸の位置は、駆動アーム部が目標到達位置にあるときに三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、装着部から関節部までの距離が、駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定される。
【解決手段】単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、ベース部に固定された関節軸支持部と、関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、駆動アーム部に取り付けられるとともに、三節部位に装着される装着部とを備え、装着部は、三節部位の先端節に装着され、関節軸の位置は、駆動アーム部が目標到達位置にあるときに三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、装着部から関節部までの距離が、駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の三節部位の動作回復及び動作支援のための装着型動作支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事故や疾病によって身体に障害を受けたり、病気や怪我(けが)などによって、上肢、下肢又は指の運動機能に障害がある者のために、四肢又は指の動作回復及び動作支援を目的とした装置が開発されている。これらの装置のうち、指の動作回復及び動作支援装置として、指の多関節をそれぞれ屈曲及び伸展させるために、指の背側に複雑な機構の駆動部を装着し、該駆動部によって装着者の指を動かす多関節アーム方式の装着型動作支援装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、指に複雑な機構の駆動部を装着するスペースがほとんどない場合に備えて、図2に示されるような単関節アーム方式の装着型動作支援装置も提案されている。
【0004】
図2は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図、図3は装着者の手の指の各部の名称と符号との関係を示す図である。なお、図2において、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0005】
図2において、11は装着者の手(図に示される例は左手)であり、12は中手(metacarpus)である。また13は親指、14は人差指、15は中指、16は薬指、17は小指である。図3には、各指の各部の名称と符号との関係が示されている。なお、いくつかの符号については、煩雑さを避けるために図中への付与が省略されている。また、14dは、人差指14の中手指節関節軸であり、人差指基節14aは、この中手指節関節軸14dを中心に中手12に対して屈曲する。
【0006】
そして、20は単関節アーム方式の装着型動作支援装置であり、該装着型動作支援装置20は、中手12の凸面、すなわち、手の甲(手背)に装着されたベース部22と、該ベース部22に接続されるとともに指に装着され、指を屈曲及び伸長させる指駆動部21とを有する。なお、図に示される例では、人差指14にのみ指駆動部21が装着されている。
【0007】
前記ベース部22は、手の平(手掌)に掛け回されたゴム紐(ひも)22aによって中手12に固定されている。
【0008】
また、前記指駆動部21は、前記ベース部22の一端に固定された接続ブラケット22bと、アーム回転軸27aを介して前記ブラケット22bに固定され回転可能に取り付けられた駆動プーリ27と、該駆動プーリ27に基端が固定された駆動アーム部24とを有する。該駆動アーム部24は、先端が人差指末節14cに届くような細長い部材であって、人差指14の側面に沿うように配設され、押し当てブロック25によって人差指14に固定されている。
【0009】
次に、前記指駆動部21の構成について詳細に説明する。
【0010】
図4は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態の指駆動部を示す三面図である。なお、図において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【0011】
図に示されるように、指駆動部21は、アーム回転軸27aが中手指節関節軸14dと同軸上に位置するように、装着者の人差指14に装着されている。また、押し当てブロック25は、駆動アーム部24が回転したときに、それに追従して人差指14を回転させるための部材であり、人差指中節14bと人差指末節14cとを繋(つな)ぐ関節である遠位指節間関節の位置に対応するように配設され、ゴム紐25bによって人差指14に固定される。
【0012】
なお、押し当てブロック25は、取付ねじ25aによって駆動アーム部24に固定される。該駆動アーム部24には、その長手方向に並んだ複数のねじ孔(こう)24aが穿(せん)設されており、装着者の人差指14の寸法に適合するように任意のねじ孔24aを選択して取付ねじ25aを螺(ら)合することによって、押し当てブロック25の位置が人差指14の遠位指節間関節の位置に対応するように調整することができる。
【0013】
また、駆動プーリ27には駆動ワイヤ23が掛け回されており、該駆動ワイヤ23の下側部分23a及び上側部分23bの一方を引っ張り、他方を緩めることによって駆動プーリ27を回転させる。そして、該駆動プーリ27がアーム回転軸27aを中心として回転すると、駆動プーリ27に基端が固定された駆動アーム部24もアーム回転軸27aを中心として回転し、これにより、押し当てブロック25に固定された人差指14が、駆動アーム部24に追従して、中手指節関節軸14dを中心として回転する。
【0014】
次に、前記指駆動部21の動作について説明する。
【0015】
図5は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【0016】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めると、駆動プーリ27が図における時計回り方向に回転し、駆動アーム部24は実線で示される位置から、点線で示される位置に向けて90度回転する。なお、駆動アーム部24が実線で示される位置にあるときは、図4に示されるように、人差指14が伸長しており、駆動アーム部24が点線で示される位置にあるときは、人差指14が屈曲している。そこで、駆動アーム部24の図における時計回り方向への回転を屈曲方向への回転と称し、反時計回り方向への回転を伸長方向への回転と称する。
【0017】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めることによって駆動アーム部24が屈曲方向へ回転すると、押し当てブロック25も人差指14を押しながら屈曲方向へ回転するので、人差指14が屈曲方向に変位する、すなわち、屈曲する。また、駆動ワイヤ23の上側部分23bを引っ張り、下側部分23aを緩めることによって駆動アーム部24が伸長方向へ回転すると、ゴム紐25bにより人差指14に固定されている押し当てブロック25も伸長方向へ回転するので、人差指14が伸長方向に変位する、すなわち、伸長する。
【0018】
ところで、図2〜5に示される例においては、人差指14のみを動かす場合についてのみを説明したが、従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20は、他の指も動かすことができる。
【0019】
図6は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置で他の指も動かすようにした状態を示す図、図7は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置のラウンドスライダを示す図である。なお、図7において、(a)は第1の状態を示し、(b)は第2の状態を示している。
【0020】
図6に示される例においては、人差指14、中指15、薬指16及び小指17の各々に、指駆動部21が装着されている。したがって、各指駆動部21の駆動アーム部24を回転させることによって、人差指14、中指15、薬指16及び小指17を各々屈曲させることができる。なお、小指17の場合、図2〜5に示される指駆動部21と同様のものを、駆動プーリ27等の配置を左右に入れ替えるだけで、装着することができるが、中指15及び薬指16の場合、中手12と干渉するので、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aを使用することができない。
【0021】
そこで、中指15及び薬指16の場合には、駆動アーム部24を回転可能に支持する部材として、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aに代えて、ラウンドスライダ31を使用する。
【0022】
該ラウンドスライダ31は、図7に示されるように、アウタスライダ31a、及び、該アウタスライダ31a内にスライド可能に挿入されたインナスライダ31bを備える。前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bは、ともに、長手方向の中心軸が円弧状に湾曲した形状を備え、それぞれの中心軸が描く円弧は互いに同一である。それゆえ、図7(b)に示されるように、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bの一方(図に示される例ではアウタスライダ31a)を固定し、それに対して他方(図に示される例ではインナスライダ31b)をスライドさせると、他方は前記円弧の中心点を中心に回転したのと同様の軌跡を描いて移動する。
【0023】
したがって、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bの一方をベース部22に固定し、他方を駆動アーム部24の基端に固定すると、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aを使用した場合と同様に、駆動アーム部24を回転させることができる。また、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bにおける前記円弧の内側の部分には、空間があるので、中手12と干渉することがない。
【0024】
このように、ラウンドスライダ31を使用することによって、駆動アーム部24の回転中心が中手指節関節軸14dと同軸上に位置するように、中指15及び薬指16にも指駆動部21を装着することができる。
【0025】
また、装着者の手に装着するための手袋状の装着部材を用意し、該装着部材における指の手背側に相当する部分に指を伸長させるために指先端を引っ張るアクチュエータを配設し、指の手掌側に相当する部分に指を屈曲させるためのアクチュエータを配設した装着型動作支援装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。このような装着型動作支援装置では、アクチュエータから指先までをワイヤで伝達することによって、中手や指の手掌側に機構部がほとんど装着されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2002−345861号公報
【特許文献2】特開2007−313093号公報
【特許文献3】特開2009−112578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、前記従来の装着型動作支援装置においては、指に装着される指駆動部21に駆動プーリ27、アーム回転軸27a等の関節を駆動する装置を設けているので、特に、多関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合、各指駆動部21に複数の関節を駆動する装置を設ける必要があり、指駆動部21が大型化してしまい、動作支援に支障を来すことがある。例えば、鋏(はさみ)、手提げ袋等を把持するような動作では、装着型動作支援装置の指に装着する部分が把持の対象物と干渉してしまい、把持が困難になる。
【0028】
また、1つの装着型動作支援装置を複数の装着者に対応させる場合、装着者毎に各指の基節、中節及び末節の長さが相違するので、各指駆動部21の複数の関節の位置を調整可能とする必要があり、構造が複雑化し、かつ、大型化してしまう。
【0029】
これに対し、単関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合には、各指駆動部21に単一の関節を駆動する装置を設けるだけで済むので、調整機構を採用しても、構造を簡素化し、かつ、小型化することができる。図2及び4に示される例について説明したように、装着者の指の寸法に適合するように任意のねじ孔24aを選択して取付ねじ25aを螺合することによって、押し当てブロック25の位置が指の遠位指節間関節の位置に対応するように調整することができる。
【0030】
しかし、単関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合には、指の屈曲時の動作が物を把持するためには不自然になってしまう。
【0031】
図8は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を使用して指を屈曲させた状態を示す側面図である。
【0032】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めることによって駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させると、押し当てブロック25も人差指14を押しながら屈曲方向へ回転するので、人差指14が屈曲する。すると、図8に示されるように、中手指節関節のみ曲がってしまうため、人差指14の屈曲時の状態が物を把持するためには、不自然な状態になってしまう。
【0033】
また、特許文献3に記載されているような装着型動作支援装置の場合には、指を屈曲させる際の軸として装着者の骨関節を利用しているので、指の屈伸動作を行うと、装着者の骨関節に負荷がかかってしまう。そのため、装着者が骨関節にも障害がある者であったり、廃用症候群により弱ってしまった者であるような場合には、骨関節を痛める可能性がある。特に、装着者が手指節関節の感覚がない者であると、骨関節の過負荷を感じることができないため、知らないうちに重症化してしまう可能性がある。
【0034】
本発明は、前記従来の装着型動作支援装置の問題点を解決して、装着者の三節部位における先端節に単関節駆動部の駆動アーム部の装着部を装着し、駆動アーム部が目標到達位置にあるときには三節部位における2つの関節が屈曲するとともに、装着部から単関節駆動部の関節軸までの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるようにして、簡素な構成でありながら、三節部位を自然な屈曲姿勢とすることができ、装着者の骨関節に負担をかけることがなく、小型で、装着性が良好で、信頼性の高い装着型動作支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
そのために、本発明の装着型動作支援装置においては、ベース部と、単関節駆動部とを有し、前記ベース部及び単関節駆動部を装着者に装着し、該装着者の三節部位の動作を支援する装着型動作支援装置であって、前記単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、前記ベース部に固定された関節軸支持部と、前記関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、該駆動アーム部に取り付けられるとともに、前記三節部位に装着される装着部とを備え、該装着部は、前記三節部位の先端節に装着され、前記関節軸の位置は、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときに前記三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定される。
【0036】
本発明の他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸の位置は、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときと、前記目標到達位置及び動作開始位置の中間に設定された動作中間位置とで等しくなるように設定される。
【0037】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸支持部は、前記関節軸の位置を2次元方向に変位させることができる関節軸位置調整機構を備える。
【0038】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、該制御部は、前記装着者のIDと前記関節軸の位置とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のIDが入力されると、前記関節軸の位置が入力されたIDに対応する位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる。
【0039】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、該制御部は、前記装着者のIDと前記三節部位の各節の長さとを対応付けたデータ、及び、目的動作と前記三節部位の2つの関節の角度とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のID及び目的動作が入力されると、前記三節部位の各節の長さ及び前記三節部位の2つの関節の角度に基づいて前記関節軸の位置を計算し、前記関節軸の位置が計算された位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる。
【0040】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記三節部位は手の指であり、前記動作開始位置は手の指が伸長した状態に対応する位置であり、前記目標到達位置は手の指が屈曲した状態に対応する位置である。
【0041】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記2つの関節は、中手指節関節及び近位指節間関節である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、装着型動作支援装置は、装着者の三節部位における先端節に単関節駆動部の駆動アーム部の装着部を装着し、駆動アーム部が目標到達位置にあるときには三節部位における2つの関節が屈曲するとともに、装着部から単関節駆動部の関節軸までの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるようにする。これにより、簡素な構成でありながら、三節部位を自然な屈曲姿勢とすることができる。また、装着者の骨関節に負担をかけることがない。さらに、小型化することができ、装着性を良好とし、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す側面図である。
【図2】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図である。
【図3】装着者の手の指の各部の名称と符号との関係を示す図である。
【図4】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態の指駆動部を示す三面図である。
【図5】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【図6】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置で他の指も動かすようにした状態を示す図である。
【図7】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置のラウンドスライダを示す図である。
【図8】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を使用して指を屈曲させた状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における人差指の動作開始位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における人差指の動作開始位置、屈曲軌跡中間角度位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【図12】屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第1の参考図である。
【図13】屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第2の参考図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における人差指の動作を座標面上で示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースのデータ構成を示す図である。
【図20】本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第1のデータ構成を示す図である。
【図21】本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第2のデータ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図1は本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す側面図である。
【0046】
図において、20は本実施の形態における装着型動作支援装置であり、いわゆる単関節アーム方式の装置であって、人体の三節部位の動作回復及び動作支援のための装置である。前記装着型動作支援装置20は、人体の三節部位であれば、いかなる部分の動作回復及び動作支援のために使用することもでき、例えば、上肢及び下肢の動作回復及び動作支援のために使用することもでき、また、足の指の動作回復及び動作支援にも使用することができるが、ここでは、説明の都合上、手の指の代表例である人差指14の動作回復及び動作支援に使用した場合についてのみ説明することとする。
【0047】
なお、本実施の形態における装着型動作支援装置20の基本的な構造は、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20の構造と同様であるので、その説明を援用する。また、本実施の形態における装着型動作支援装置20の各部についても、従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20と同一のものについては同一の符号を付与し、説明を省略する。なお、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aに代えて、ラウンドスライダ31を使用することもできる。さらに、装着型動作支援装置20を装着した装着者の手及び指についても、同様に、「背景技術」の項における説明を援用する。
【0048】
本実施の形態においては、図に示されるように、単関節駆動部としての指駆動部21は、単関節駆動部の関節軸としてのアーム回転軸27aが中手指節関節軸14dと同軸上に位置しないように、装着者の三節部位としての人差指14に装着されている。なお、具体的には、ベース部22に固定された関節軸支持部としての接続ブラケット22bに支持されているアーム回転軸27aの位置が、側面から観て、2次元方向、つまり、X−Y方向に、それぞれ、L2x、L2yだけ中手指節関節軸14dの位置からずれている。
【0049】
そして、前記指駆動部21は、人差指14における2つの関節が屈曲している姿勢で、人差指14における先端節(具体的には、人差指中節14bと人差指末節14cとを繋ぐ関節である遠位指節間関節の位置)に装着部としての押し当てブロック25を装着するとともに、該押し当てブロック25からアーム回転軸27aまでの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるように設定される。
【0050】
なお、その他の点については、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20であるので、説明を省略する。
【0051】
ここで、動作開始位置及び目標到達位置における人差指14の各部の座標面上での位置を説明する。
【0052】
図9は本発明の第1の実施の形態における人差指の動作開始位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【0053】
図において、太線は、動作開始位置及び目標到達位置における人差指14の人差指基節14a及び人差指中節14bの位置を2次元平面であるX−Y座標面上に示したものである。なお、動作開始位置は、装着型動作支援装置20による人差指14の屈曲動作を開始する時点の位置であって人差指14が伸長している状態に相当し、目標到達位置は装着型動作支援装置20による人差指14の屈曲動作を終了させる目標となる位置であって人差指14が目標通りに屈曲している状態に相当する。
【0054】
ここで、人差指基節14a及び人差指中節14bの長さを、それぞれ、L2a及びL2bとする。そして、目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとする。なお、中手指節関節は中手12と指の基節(人差指基節14a)とを繋ぐ関節であり、近位指節間関節は指の基節と中節(人差指中節14b)とを繋ぐ関節である。
【0055】
また、動作開始位置及び目標到達位置における遠位指節間関節位置を、それぞれ、51a及び51bとし、近位指節間関節位置を、それぞれ、52a及び52bとする。そして、アーム回転軸27aから動作開始位置及び目標到達位置における遠位指節間関節位置までの距離を、それぞれ、Lm1及びLm2とする。なお、遠位指節間関節に押し当てブロック25が装着され、アーム回転軸27aから押し当てブロック25までの距離は変化しないと考えられるから、Lm1=Lm2とする。
【0056】
すると、アーム回転軸27aの位置座標は(L2x、L2y)であり、動作開始位置での遠位指節間関節の位置座標は(L2a+L2b、0)であるから、Lm1は次の式(1)で表される。
【0057】
【数1】
【0058】
また、目標到達位置での近位指節間関節の位置座標は[(L2a ×cos( -θ2a) 、
L2a ×sin( -θ2a)]であり、遠位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a)+L2b ×cos( -θ2a -θ2b) 、L2a ×sin( -θ2a)+L2b ×sin( -θ2a -θ2b)]であるから、Lm2は次の式(2)で表される。
【0059】
【数2】
【0060】
そして、Lm1=Lm2であるから、次の式(3)が成立する。
【0061】
【数3】
【0062】
最後に、該式(3)から、条件式として、次の式(4)を得ることができる。
【0063】
L2y2-(L2asin( θ2a)+L2bsin( θ2a+ θ2b)-L2y)2
=(L2acos( θ2a)+L2bcos( θ2a+ θ2b)-L2x)2-(L2a+L2b+L2x)2 ・・・式(4)
したがって、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが条件式としての前記式(4)を満たすように設定される。
【0064】
次に、前記構成の装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0065】
図10は本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。なお、図において、(a)は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の動作を示す参考図、(b)は本実施の形態における装着型動作支援装置の動作を示す図である。
【0066】
図10(a)に示されるように、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20では、駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させて人差指14を屈曲させると、点線で示されるように、中手指節関節のみが屈曲してしまう。そのため、人差指14の屈曲した状態は、物を把持するのに適さない、不自然な状態になってしまう。
【0067】
これに対し、本実施の形態における装着型動作支援装置20では、図10(b)に示されるように、駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させて人差指14を屈曲させると、点線で示されるように、中手指節関節だけでなく、近位指節間関節も屈曲する。そして、目標到達位置では、中手指節関節角度及び近位指節間関節角度が、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとなる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、アーム回転軸27aの位置が、X−Y方向に、それぞれ、L2x、L2yだけ中手指節関節軸14dの位置からずれるように、指駆動部21を設定する。したがって、単関節アーム方式であっても、中手指節関節だけでなく、近位指節間関節も屈曲させることができる。つまり、三節部位における2つの関節を屈曲させることができる。そのため、物を把持するような動作を自然に行わせることができる。
【0069】
また、指駆動部21は、駆動プーリ27及びアーム回転軸27a以外には、関節を駆動する装置がないので、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0070】
さらに、装着者の骨関節に負担をかけることもないので、安全性及び信頼性が高い。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0072】
図11は本発明の第2の実施の形態における人差指の動作開始位置、屈曲軌跡中間角度位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【0073】
本実施の形態においては、動作開始位置及び目標到達位置に加え、動作開始位置と目標到達位置との間に設定された屈曲軌跡中間角度位置を考慮して、アーム回転軸27aの位置座標を設定する。目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとすると、屈曲軌跡中間角度位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a/2及び−θ2b/2とする。
【0074】
そして、屈曲軌跡中間角度位置における遠位指節間関節位置及び近位指節間関節位置を、それぞれ、51c及び52cとすると、屈曲軌跡中間角度位置における近位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a/2) 、L2a ×sin( -θ2a/2)]であり、遠位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a/2)+L2b ×cos( -θ2a/2 -θ2b/2) 、L2a ×sin( -θ2a/2)+
L2b ×sin( -θ2a/2 -θ2b/2)]である。
【0075】
ここで、アーム回転軸27aから屈曲軌跡中間角度位置における遠位指節間関節位置までの距離をLm3とすると、Lm3は次の式(5)で表される。
【0076】
【数4】
【0077】
そして、Lm1=Lm3であるから、次の式(6)が成立する。
【0078】
【数5】
【0079】
最後に、該式(6)から、条件式として、次の式(7)を得ることができる。
【0080】
L2y2-(L2asin( θ2a/2)+L2bsin( θ2a/2+ θ2b/2)-L2y)2
=(L2acos( θ2a/2)+L2bcos( θ2a/2+ θ2b/2)-L2x)2-(L2a+L2b+L2x)2 ・・・式(7)
そして、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが条件式としての前記式(4)及び(7)を満たすように設定される。
【0081】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0082】
図12は屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第1の参考図、図13は屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第2の参考図、図14は本発明の第2の実施の形態における人差指の動作を座標面上で示す図である。
【0083】
前記第1の実施の形態のように、屈曲軌跡中間角度位置を考慮せずに、動作開始位置及び目標到達位置だけを考慮して、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)を設定した場合、すなわち、L2x及びL2yが前記式(4)のみを満たすように設定された場合、動作開始位置から目標到達位置までの間で、人差指14の動作が図12又は13に示されるようになる可能性がある。
【0084】
例えば、図12に示されるように、動作開始の直後から近位指節間関節が大きく屈曲したり、また、図13に示されるように、動作を開始してしばらくの間は近位指節間関節がほとんど屈曲せず、目標到達位置に近付いてから近位指節間関節が急に屈曲する可能性がある。つまり、動作開始位置から目標到達位置までの間での人差指14の動作が不自然になるように、アーム回転軸27aの位置が設定される可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施の形態における装着型動作支援装置20では、動作中間位置として、目標到達位置における各関節角度の半分の角度となるような屈曲軌跡中間角度位置を設定し、該屈曲軌跡中間角度位置を人差指14が通過するように、アーム回転軸27aの位置が設定されている。つまり、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが、前記式(4)のみならず、前記式(7)をも満たすように設定されている。したがって、図14に示されるように、人差指14の動作は、動作開始位置から目標到達位置までの間で、近位指節間関節が徐々に屈曲するような自然なものとなる。
【0086】
このように、本実施の形態においては、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが前記式(4)及び(7)を満たすように設定される。したがって、三節部位における2つの関節を屈曲させることができるだけでなく、各関節の屈曲動作が自然なものとなり、各関節に負荷がかかることが防止される。
【0087】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0088】
図15は本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図、図16は本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。なお、図15及び16において、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0089】
本実施の形態における装着型動作支援装置20は、図15に示されるように、アーム回転軸27aの位置を調整するための関節軸位置調整機構41を有する。該関節軸位置調整機構41を作動させることによって、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させ、位置座標(L2x、L2y)を容易に調整することができる。
【0090】
図16に示されるように、前記関節軸位置調整機構41は、ベース部22に固定された関節軸支持部としての接続ベース部42と、該接続ベース部42にY方向(垂直方向)にスライド可能に取り付けられた垂直スライドベース部43と、該垂直スライドベース部43にX方向(水平方向)にスライド可能に取り付けられた水平スライドベース部44とを備える。なお、該水平スライドベース部44のスライド方向の一端(図16における右端)には、アーム回転軸27aの基端が固定されている。そして、前記接続ベース部42には、垂直スライドベース部43をスライド可能に保持する垂直スライド42aが形成され、前記垂直スライドベース部43には、水平スライドベース部44をスライド可能に保持する水平スライド43aが形成されている。
【0091】
また、前記接続ベース部42には、Y方向に延在する第1スクリュロッド部46の上端を回転可能、かつ、軸方向に移動不能に保持する第1ブラケット部46aが固定されている。なお、前記第1スクリュロッド部46の下端にはねじが形成され、垂直スライドベース部43に形成された第1スクリュナット孔46bに螺入されている。したがって、第1スクリュロッド部46を回転させることによって、垂直スライドベース部43を接続ベース部42に対してY方向に変位させることができる。
【0092】
さらに、前記垂直スライドベース部43には、X方向に延在する第2スクリュロッド部47の一端(図16における左端)を回転可能、かつ、軸方向に移動不能に保持する第2ブラケット部47aが固定されている。なお、前記第2スクリュロッド部47の他端(図16における右端)にはねじが形成され、水平スライドベース部44に形成された第2スクリュナット孔47bに螺入されている。したがって、第2スクリュロッド部47を回転させることによって、水平スライドベース部44を垂直スライドベース部43に対してX方向に変位させることができる。
【0093】
このように、前記関節軸位置調整機構41は、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47を回転させることによって、水平スライドベース部44に固定されているアーム回転軸27aを、接続ベース部42が固定されているベース部22に対して、X−Y方向に変位させることができる。
【0094】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0095】
装着者が他の装着者に交替した場合、人差指14のサイズが変化するので、人差指基節14aの長さL2a及び人差指中節14bの長さL2bの値が変化する。したがって、L2a及びL2bを変数として含む前記式(4)及び(7)を満たすように設定されるアーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)も変化する。
【0096】
そこで、装着者が他の装着者に交替した場合には、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算し、それに対応するように、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47を回転させて、アーム回転軸27aの位置を調整する。
【0097】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎に指のサイズが相違していても、関節軸位置調整機構41を作動させてアーム回転軸27aの位置を調整することによって、容易に適合させることができる。
【0098】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0099】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0100】
図17は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図、図18は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置の構成を示すブロック図、図19は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースのデータ構成を示す図である。
【0101】
本実施の形態における関節軸位置調整機構41は、図17に示されるように、第1スクリュロッド部46を回転させるアクチュエータとしての第1回転アクチュエータ48と、第2スクリュロッド部47を回転させるアクチュエータとしての第2回転アクチュエータ49とを有する。また、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49には、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47の回転量を測定するためのアブソリュートエンコーダとしての第1アブソリュートエンコーダ48a及び第2アブソリュートエンコーダ49aが取り付けられている。したがって、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させることによって、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させることができる。
【0102】
なお、アブソリュートエンコーダは、絶対位置を検出する機能を備えたエンコーダである。つまり、信号としてモータの回転量に応じたパルス列だけでなく、絶対位置信号も検出する点が、インクリメンタルエンコーダとの違いである。ロボット、工作機械等のNC制御を使うFA機器は、原点を基準とした位置データに基づいて作動する。そのため、インクリメンタルエンコーダを使用した場合、原点を検出するためにリミットスイッチ等の機械的な基準点(原点)を設け、電源を入れたときに機械を作動させて原点を探すようになっている。これに対し、アブソリュートエンコーダを使うと、原点に対する位置を常に把握することができるので、例えば、電源を切った状態において、何らかの理由でモータが回転しても、電源を入れると現在位置を検出することができる。したがって、原点復帰動作が不要となる。
【0103】
また、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、図18に示されるような制御装置を有する。該制御装置は、制御部35と、入出力装置36と、上位インターフェイス37とを備える。そして、前記第1回転アクチュエータ48、第2回転アクチュエータ49、第1アブソリュートエンコーダ48a及び第2アブソリュートエンコーダ49aは、制御部35に接続され、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49の動作は制御部35によって制御される。なお、該制御部35は、図19に示されるように、装着者のID毎に対応するL2x及びL2yの値を記録したデータを格納するデータベースを備える。
【0104】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0105】
装着者が装着型動作支援装置20を装着する前に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から前記装着者のIDを入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された装着者のIDに対応するL2x及びL2yの値を取得する。そして、制御部35は、第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させて、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)の値がデータベースから取得したL2x及びL2yの値に一致するように、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させる。
【0106】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎に指のサイズが相違していても、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算することなく、アーム回転軸27aの位置を自動的に調整することができる。したがって、容易に、かつ、短時間でアーム回転軸27aの位置を装着者に適合させることができる。
【0107】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0108】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0109】
図20は本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第1のデータ構成を示す図、図21は本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第2のデータ構成を示す図である。
【0110】
本実施の形態における装着型動作支援装置20は、前記第4の実施の形態と同様の制御装置を有する。なお、本実施の形態における制御装置の制御部35は、図20に示されるように、装着者のID毎に対応するL2a及びL2bの値を記録したデータと、図21に示されるように、目的動作毎に対応する目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度、すなわち、−θ2a及び−θ2bの値を記録したデータとを格納するデータベースを備える。
【0111】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0112】
装着者が装着型動作支援装置20を装着する前に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から前記装着者のIDを入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された装着者のIDに対応するL2a及びL2bの値を取得する。
【0113】
そして、装着者が装着型動作支援装置20を装着した後に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から目的動作(例えば、コップをつかむ)を入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された目的動作に対応する−θ2a及び−θ2bの値を取得する。
【0114】
続いて、制御部35は、前記式(4)及び(7)にデータベースから取得したL2a、L2b、−θ2a及び−θ2bの値を代入し、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算し、第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させて、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)の値が計算したL2x及びL2yの値に一致するように、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させる。
【0115】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎の指のサイズに適切に対応することができるとともに、目的動作に応じて指の中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を変化させることができるので、細かい動作を行うことができる。
【0116】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0117】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、装着型動作支援装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
14 人差指
20 装着型動作支援装置
21 指駆動部
22 ベース部
22b 接続ブラケット
24 駆動アーム部
25 押し当てブロック
27a アーム回転軸
35 制御部
41 関節軸位置調整機構
42 接続ベース部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の三節部位の動作回復及び動作支援のための装着型動作支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事故や疾病によって身体に障害を受けたり、病気や怪我(けが)などによって、上肢、下肢又は指の運動機能に障害がある者のために、四肢又は指の動作回復及び動作支援を目的とした装置が開発されている。これらの装置のうち、指の動作回復及び動作支援装置として、指の多関節をそれぞれ屈曲及び伸展させるために、指の背側に複雑な機構の駆動部を装着し、該駆動部によって装着者の指を動かす多関節アーム方式の装着型動作支援装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
また、指に複雑な機構の駆動部を装着するスペースがほとんどない場合に備えて、図2に示されるような単関節アーム方式の装着型動作支援装置も提案されている。
【0004】
図2は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図、図3は装着者の手の指の各部の名称と符号との関係を示す図である。なお、図2において、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0005】
図2において、11は装着者の手(図に示される例は左手)であり、12は中手(metacarpus)である。また13は親指、14は人差指、15は中指、16は薬指、17は小指である。図3には、各指の各部の名称と符号との関係が示されている。なお、いくつかの符号については、煩雑さを避けるために図中への付与が省略されている。また、14dは、人差指14の中手指節関節軸であり、人差指基節14aは、この中手指節関節軸14dを中心に中手12に対して屈曲する。
【0006】
そして、20は単関節アーム方式の装着型動作支援装置であり、該装着型動作支援装置20は、中手12の凸面、すなわち、手の甲(手背)に装着されたベース部22と、該ベース部22に接続されるとともに指に装着され、指を屈曲及び伸長させる指駆動部21とを有する。なお、図に示される例では、人差指14にのみ指駆動部21が装着されている。
【0007】
前記ベース部22は、手の平(手掌)に掛け回されたゴム紐(ひも)22aによって中手12に固定されている。
【0008】
また、前記指駆動部21は、前記ベース部22の一端に固定された接続ブラケット22bと、アーム回転軸27aを介して前記ブラケット22bに固定され回転可能に取り付けられた駆動プーリ27と、該駆動プーリ27に基端が固定された駆動アーム部24とを有する。該駆動アーム部24は、先端が人差指末節14cに届くような細長い部材であって、人差指14の側面に沿うように配設され、押し当てブロック25によって人差指14に固定されている。
【0009】
次に、前記指駆動部21の構成について詳細に説明する。
【0010】
図4は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態の指駆動部を示す三面図である。なお、図において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【0011】
図に示されるように、指駆動部21は、アーム回転軸27aが中手指節関節軸14dと同軸上に位置するように、装着者の人差指14に装着されている。また、押し当てブロック25は、駆動アーム部24が回転したときに、それに追従して人差指14を回転させるための部材であり、人差指中節14bと人差指末節14cとを繋(つな)ぐ関節である遠位指節間関節の位置に対応するように配設され、ゴム紐25bによって人差指14に固定される。
【0012】
なお、押し当てブロック25は、取付ねじ25aによって駆動アーム部24に固定される。該駆動アーム部24には、その長手方向に並んだ複数のねじ孔(こう)24aが穿(せん)設されており、装着者の人差指14の寸法に適合するように任意のねじ孔24aを選択して取付ねじ25aを螺(ら)合することによって、押し当てブロック25の位置が人差指14の遠位指節間関節の位置に対応するように調整することができる。
【0013】
また、駆動プーリ27には駆動ワイヤ23が掛け回されており、該駆動ワイヤ23の下側部分23a及び上側部分23bの一方を引っ張り、他方を緩めることによって駆動プーリ27を回転させる。そして、該駆動プーリ27がアーム回転軸27aを中心として回転すると、駆動プーリ27に基端が固定された駆動アーム部24もアーム回転軸27aを中心として回転し、これにより、押し当てブロック25に固定された人差指14が、駆動アーム部24に追従して、中手指節関節軸14dを中心として回転する。
【0014】
次に、前記指駆動部21の動作について説明する。
【0015】
図5は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【0016】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めると、駆動プーリ27が図における時計回り方向に回転し、駆動アーム部24は実線で示される位置から、点線で示される位置に向けて90度回転する。なお、駆動アーム部24が実線で示される位置にあるときは、図4に示されるように、人差指14が伸長しており、駆動アーム部24が点線で示される位置にあるときは、人差指14が屈曲している。そこで、駆動アーム部24の図における時計回り方向への回転を屈曲方向への回転と称し、反時計回り方向への回転を伸長方向への回転と称する。
【0017】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めることによって駆動アーム部24が屈曲方向へ回転すると、押し当てブロック25も人差指14を押しながら屈曲方向へ回転するので、人差指14が屈曲方向に変位する、すなわち、屈曲する。また、駆動ワイヤ23の上側部分23bを引っ張り、下側部分23aを緩めることによって駆動アーム部24が伸長方向へ回転すると、ゴム紐25bにより人差指14に固定されている押し当てブロック25も伸長方向へ回転するので、人差指14が伸長方向に変位する、すなわち、伸長する。
【0018】
ところで、図2〜5に示される例においては、人差指14のみを動かす場合についてのみを説明したが、従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20は、他の指も動かすことができる。
【0019】
図6は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置で他の指も動かすようにした状態を示す図、図7は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置のラウンドスライダを示す図である。なお、図7において、(a)は第1の状態を示し、(b)は第2の状態を示している。
【0020】
図6に示される例においては、人差指14、中指15、薬指16及び小指17の各々に、指駆動部21が装着されている。したがって、各指駆動部21の駆動アーム部24を回転させることによって、人差指14、中指15、薬指16及び小指17を各々屈曲させることができる。なお、小指17の場合、図2〜5に示される指駆動部21と同様のものを、駆動プーリ27等の配置を左右に入れ替えるだけで、装着することができるが、中指15及び薬指16の場合、中手12と干渉するので、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aを使用することができない。
【0021】
そこで、中指15及び薬指16の場合には、駆動アーム部24を回転可能に支持する部材として、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aに代えて、ラウンドスライダ31を使用する。
【0022】
該ラウンドスライダ31は、図7に示されるように、アウタスライダ31a、及び、該アウタスライダ31a内にスライド可能に挿入されたインナスライダ31bを備える。前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bは、ともに、長手方向の中心軸が円弧状に湾曲した形状を備え、それぞれの中心軸が描く円弧は互いに同一である。それゆえ、図7(b)に示されるように、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bの一方(図に示される例ではアウタスライダ31a)を固定し、それに対して他方(図に示される例ではインナスライダ31b)をスライドさせると、他方は前記円弧の中心点を中心に回転したのと同様の軌跡を描いて移動する。
【0023】
したがって、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bの一方をベース部22に固定し、他方を駆動アーム部24の基端に固定すると、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aを使用した場合と同様に、駆動アーム部24を回転させることができる。また、前記アウタスライダ31a及びインナスライダ31bにおける前記円弧の内側の部分には、空間があるので、中手12と干渉することがない。
【0024】
このように、ラウンドスライダ31を使用することによって、駆動アーム部24の回転中心が中手指節関節軸14dと同軸上に位置するように、中指15及び薬指16にも指駆動部21を装着することができる。
【0025】
また、装着者の手に装着するための手袋状の装着部材を用意し、該装着部材における指の手背側に相当する部分に指を伸長させるために指先端を引っ張るアクチュエータを配設し、指の手掌側に相当する部分に指を屈曲させるためのアクチュエータを配設した装着型動作支援装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。このような装着型動作支援装置では、アクチュエータから指先までをワイヤで伝達することによって、中手や指の手掌側に機構部がほとんど装着されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2002−345861号公報
【特許文献2】特開2007−313093号公報
【特許文献3】特開2009−112578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、前記従来の装着型動作支援装置においては、指に装着される指駆動部21に駆動プーリ27、アーム回転軸27a等の関節を駆動する装置を設けているので、特に、多関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合、各指駆動部21に複数の関節を駆動する装置を設ける必要があり、指駆動部21が大型化してしまい、動作支援に支障を来すことがある。例えば、鋏(はさみ)、手提げ袋等を把持するような動作では、装着型動作支援装置の指に装着する部分が把持の対象物と干渉してしまい、把持が困難になる。
【0028】
また、1つの装着型動作支援装置を複数の装着者に対応させる場合、装着者毎に各指の基節、中節及び末節の長さが相違するので、各指駆動部21の複数の関節の位置を調整可能とする必要があり、構造が複雑化し、かつ、大型化してしまう。
【0029】
これに対し、単関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合には、各指駆動部21に単一の関節を駆動する装置を設けるだけで済むので、調整機構を採用しても、構造を簡素化し、かつ、小型化することができる。図2及び4に示される例について説明したように、装着者の指の寸法に適合するように任意のねじ孔24aを選択して取付ねじ25aを螺合することによって、押し当てブロック25の位置が指の遠位指節間関節の位置に対応するように調整することができる。
【0030】
しかし、単関節アーム方式の装着型動作支援装置の場合には、指の屈曲時の動作が物を把持するためには不自然になってしまう。
【0031】
図8は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を使用して指を屈曲させた状態を示す側面図である。
【0032】
駆動ワイヤ23の下側部分23aを引っ張り、上側部分23bを緩めることによって駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させると、押し当てブロック25も人差指14を押しながら屈曲方向へ回転するので、人差指14が屈曲する。すると、図8に示されるように、中手指節関節のみ曲がってしまうため、人差指14の屈曲時の状態が物を把持するためには、不自然な状態になってしまう。
【0033】
また、特許文献3に記載されているような装着型動作支援装置の場合には、指を屈曲させる際の軸として装着者の骨関節を利用しているので、指の屈伸動作を行うと、装着者の骨関節に負荷がかかってしまう。そのため、装着者が骨関節にも障害がある者であったり、廃用症候群により弱ってしまった者であるような場合には、骨関節を痛める可能性がある。特に、装着者が手指節関節の感覚がない者であると、骨関節の過負荷を感じることができないため、知らないうちに重症化してしまう可能性がある。
【0034】
本発明は、前記従来の装着型動作支援装置の問題点を解決して、装着者の三節部位における先端節に単関節駆動部の駆動アーム部の装着部を装着し、駆動アーム部が目標到達位置にあるときには三節部位における2つの関節が屈曲するとともに、装着部から単関節駆動部の関節軸までの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるようにして、簡素な構成でありながら、三節部位を自然な屈曲姿勢とすることができ、装着者の骨関節に負担をかけることがなく、小型で、装着性が良好で、信頼性の高い装着型動作支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
そのために、本発明の装着型動作支援装置においては、ベース部と、単関節駆動部とを有し、前記ベース部及び単関節駆動部を装着者に装着し、該装着者の三節部位の動作を支援する装着型動作支援装置であって、前記単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、前記ベース部に固定された関節軸支持部と、前記関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、該駆動アーム部に取り付けられるとともに、前記三節部位に装着される装着部とを備え、該装着部は、前記三節部位の先端節に装着され、前記関節軸の位置は、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときに前記三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定される。
【0036】
本発明の他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸の位置は、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときと、前記目標到達位置及び動作開始位置の中間に設定された動作中間位置とで等しくなるように設定される。
【0037】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸支持部は、前記関節軸の位置を2次元方向に変位させることができる関節軸位置調整機構を備える。
【0038】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、該制御部は、前記装着者のIDと前記関節軸の位置とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のIDが入力されると、前記関節軸の位置が入力されたIDに対応する位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる。
【0039】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、該制御部は、前記装着者のIDと前記三節部位の各節の長さとを対応付けたデータ、及び、目的動作と前記三節部位の2つの関節の角度とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のID及び目的動作が入力されると、前記三節部位の各節の長さ及び前記三節部位の2つの関節の角度に基づいて前記関節軸の位置を計算し、前記関節軸の位置が計算された位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる。
【0040】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記三節部位は手の指であり、前記動作開始位置は手の指が伸長した状態に対応する位置であり、前記目標到達位置は手の指が屈曲した状態に対応する位置である。
【0041】
本発明の更に他の装着型動作支援装置においては、さらに、前記2つの関節は、中手指節関節及び近位指節間関節である。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、装着型動作支援装置は、装着者の三節部位における先端節に単関節駆動部の駆動アーム部の装着部を装着し、駆動アーム部が目標到達位置にあるときには三節部位における2つの関節が屈曲するとともに、装着部から単関節駆動部の関節軸までの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるようにする。これにより、簡素な構成でありながら、三節部位を自然な屈曲姿勢とすることができる。また、装着者の骨関節に負担をかけることがない。さらに、小型化することができ、装着性を良好とし、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す側面図である。
【図2】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図である。
【図3】装着者の手の指の各部の名称と符号との関係を示す図である。
【図4】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態の指駆動部を示す三面図である。
【図5】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【図6】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置で他の指も動かすようにした状態を示す図である。
【図7】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置のラウンドスライダを示す図である。
【図8】従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置を使用して指を屈曲させた状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における人差指の動作開始位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における人差指の動作開始位置、屈曲軌跡中間角度位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【図12】屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第1の参考図である。
【図13】屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第2の参考図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における人差指の動作を座標面上で示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースのデータ構成を示す図である。
【図20】本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第1のデータ構成を示す図である。
【図21】本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第2のデータ構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図1は本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す側面図である。
【0046】
図において、20は本実施の形態における装着型動作支援装置であり、いわゆる単関節アーム方式の装置であって、人体の三節部位の動作回復及び動作支援のための装置である。前記装着型動作支援装置20は、人体の三節部位であれば、いかなる部分の動作回復及び動作支援のために使用することもでき、例えば、上肢及び下肢の動作回復及び動作支援のために使用することもでき、また、足の指の動作回復及び動作支援にも使用することができるが、ここでは、説明の都合上、手の指の代表例である人差指14の動作回復及び動作支援に使用した場合についてのみ説明することとする。
【0047】
なお、本実施の形態における装着型動作支援装置20の基本的な構造は、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20の構造と同様であるので、その説明を援用する。また、本実施の形態における装着型動作支援装置20の各部についても、従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20と同一のものについては同一の符号を付与し、説明を省略する。なお、駆動プーリ27及びアーム回転軸27aに代えて、ラウンドスライダ31を使用することもできる。さらに、装着型動作支援装置20を装着した装着者の手及び指についても、同様に、「背景技術」の項における説明を援用する。
【0048】
本実施の形態においては、図に示されるように、単関節駆動部としての指駆動部21は、単関節駆動部の関節軸としてのアーム回転軸27aが中手指節関節軸14dと同軸上に位置しないように、装着者の三節部位としての人差指14に装着されている。なお、具体的には、ベース部22に固定された関節軸支持部としての接続ブラケット22bに支持されているアーム回転軸27aの位置が、側面から観て、2次元方向、つまり、X−Y方向に、それぞれ、L2x、L2yだけ中手指節関節軸14dの位置からずれている。
【0049】
そして、前記指駆動部21は、人差指14における2つの関節が屈曲している姿勢で、人差指14における先端節(具体的には、人差指中節14bと人差指末節14cとを繋ぐ関節である遠位指節間関節の位置)に装着部としての押し当てブロック25を装着するとともに、該押し当てブロック25からアーム回転軸27aまでの距離が動作開始位置及び目標到達位置で等しくなるように設定される。
【0050】
なお、その他の点については、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20であるので、説明を省略する。
【0051】
ここで、動作開始位置及び目標到達位置における人差指14の各部の座標面上での位置を説明する。
【0052】
図9は本発明の第1の実施の形態における人差指の動作開始位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【0053】
図において、太線は、動作開始位置及び目標到達位置における人差指14の人差指基節14a及び人差指中節14bの位置を2次元平面であるX−Y座標面上に示したものである。なお、動作開始位置は、装着型動作支援装置20による人差指14の屈曲動作を開始する時点の位置であって人差指14が伸長している状態に相当し、目標到達位置は装着型動作支援装置20による人差指14の屈曲動作を終了させる目標となる位置であって人差指14が目標通りに屈曲している状態に相当する。
【0054】
ここで、人差指基節14a及び人差指中節14bの長さを、それぞれ、L2a及びL2bとする。そして、目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとする。なお、中手指節関節は中手12と指の基節(人差指基節14a)とを繋ぐ関節であり、近位指節間関節は指の基節と中節(人差指中節14b)とを繋ぐ関節である。
【0055】
また、動作開始位置及び目標到達位置における遠位指節間関節位置を、それぞれ、51a及び51bとし、近位指節間関節位置を、それぞれ、52a及び52bとする。そして、アーム回転軸27aから動作開始位置及び目標到達位置における遠位指節間関節位置までの距離を、それぞれ、Lm1及びLm2とする。なお、遠位指節間関節に押し当てブロック25が装着され、アーム回転軸27aから押し当てブロック25までの距離は変化しないと考えられるから、Lm1=Lm2とする。
【0056】
すると、アーム回転軸27aの位置座標は(L2x、L2y)であり、動作開始位置での遠位指節間関節の位置座標は(L2a+L2b、0)であるから、Lm1は次の式(1)で表される。
【0057】
【数1】
【0058】
また、目標到達位置での近位指節間関節の位置座標は[(L2a ×cos( -θ2a) 、
L2a ×sin( -θ2a)]であり、遠位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a)+L2b ×cos( -θ2a -θ2b) 、L2a ×sin( -θ2a)+L2b ×sin( -θ2a -θ2b)]であるから、Lm2は次の式(2)で表される。
【0059】
【数2】
【0060】
そして、Lm1=Lm2であるから、次の式(3)が成立する。
【0061】
【数3】
【0062】
最後に、該式(3)から、条件式として、次の式(4)を得ることができる。
【0063】
L2y2-(L2asin( θ2a)+L2bsin( θ2a+ θ2b)-L2y)2
=(L2acos( θ2a)+L2bcos( θ2a+ θ2b)-L2x)2-(L2a+L2b+L2x)2 ・・・式(4)
したがって、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが条件式としての前記式(4)を満たすように設定される。
【0064】
次に、前記構成の装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0065】
図10は本発明の第1の実施の形態における装着型動作支援装置の指駆動部の動作を示す側面図である。なお、図において、(a)は従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置の動作を示す参考図、(b)は本実施の形態における装着型動作支援装置の動作を示す図である。
【0066】
図10(a)に示されるように、「背景技術」の項において説明した従来の単関節アーム方式の装着型動作支援装置20では、駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させて人差指14を屈曲させると、点線で示されるように、中手指節関節のみが屈曲してしまう。そのため、人差指14の屈曲した状態は、物を把持するのに適さない、不自然な状態になってしまう。
【0067】
これに対し、本実施の形態における装着型動作支援装置20では、図10(b)に示されるように、駆動アーム部24を屈曲方向へ回転させて人差指14を屈曲させると、点線で示されるように、中手指節関節だけでなく、近位指節間関節も屈曲する。そして、目標到達位置では、中手指節関節角度及び近位指節間関節角度が、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとなる。
【0068】
このように、本実施の形態においては、アーム回転軸27aの位置が、X−Y方向に、それぞれ、L2x、L2yだけ中手指節関節軸14dの位置からずれるように、指駆動部21を設定する。したがって、単関節アーム方式であっても、中手指節関節だけでなく、近位指節間関節も屈曲させることができる。つまり、三節部位における2つの関節を屈曲させることができる。そのため、物を把持するような動作を自然に行わせることができる。
【0069】
また、指駆動部21は、駆動プーリ27及びアーム回転軸27a以外には、関節を駆動する装置がないので、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0070】
さらに、装着者の骨関節に負担をかけることもないので、安全性及び信頼性が高い。
【0071】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0072】
図11は本発明の第2の実施の形態における人差指の動作開始位置、屈曲軌跡中間角度位置及び目標到達位置を座標面上で示す図である。
【0073】
本実施の形態においては、動作開始位置及び目標到達位置に加え、動作開始位置と目標到達位置との間に設定された屈曲軌跡中間角度位置を考慮して、アーム回転軸27aの位置座標を設定する。目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a及び−θ2bとすると、屈曲軌跡中間角度位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を、それぞれ、−θ2a/2及び−θ2b/2とする。
【0074】
そして、屈曲軌跡中間角度位置における遠位指節間関節位置及び近位指節間関節位置を、それぞれ、51c及び52cとすると、屈曲軌跡中間角度位置における近位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a/2) 、L2a ×sin( -θ2a/2)]であり、遠位指節間関節の位置座標は[L2a×cos( -θ2a/2)+L2b ×cos( -θ2a/2 -θ2b/2) 、L2a ×sin( -θ2a/2)+
L2b ×sin( -θ2a/2 -θ2b/2)]である。
【0075】
ここで、アーム回転軸27aから屈曲軌跡中間角度位置における遠位指節間関節位置までの距離をLm3とすると、Lm3は次の式(5)で表される。
【0076】
【数4】
【0077】
そして、Lm1=Lm3であるから、次の式(6)が成立する。
【0078】
【数5】
【0079】
最後に、該式(6)から、条件式として、次の式(7)を得ることができる。
【0080】
L2y2-(L2asin( θ2a/2)+L2bsin( θ2a/2+ θ2b/2)-L2y)2
=(L2acos( θ2a/2)+L2bcos( θ2a/2+ θ2b/2)-L2x)2-(L2a+L2b+L2x)2 ・・・式(7)
そして、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが条件式としての前記式(4)及び(7)を満たすように設定される。
【0081】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0082】
図12は屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第1の参考図、図13は屈曲軌跡中間角度位置を考慮しない場合の人差指の動作を座標面上で示す第2の参考図、図14は本発明の第2の実施の形態における人差指の動作を座標面上で示す図である。
【0083】
前記第1の実施の形態のように、屈曲軌跡中間角度位置を考慮せずに、動作開始位置及び目標到達位置だけを考慮して、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)を設定した場合、すなわち、L2x及びL2yが前記式(4)のみを満たすように設定された場合、動作開始位置から目標到達位置までの間で、人差指14の動作が図12又は13に示されるようになる可能性がある。
【0084】
例えば、図12に示されるように、動作開始の直後から近位指節間関節が大きく屈曲したり、また、図13に示されるように、動作を開始してしばらくの間は近位指節間関節がほとんど屈曲せず、目標到達位置に近付いてから近位指節間関節が急に屈曲する可能性がある。つまり、動作開始位置から目標到達位置までの間での人差指14の動作が不自然になるように、アーム回転軸27aの位置が設定される可能性がある。
【0085】
これに対し、本実施の形態における装着型動作支援装置20では、動作中間位置として、目標到達位置における各関節角度の半分の角度となるような屈曲軌跡中間角度位置を設定し、該屈曲軌跡中間角度位置を人差指14が通過するように、アーム回転軸27aの位置が設定されている。つまり、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが、前記式(4)のみならず、前記式(7)をも満たすように設定されている。したがって、図14に示されるように、人差指14の動作は、動作開始位置から目標到達位置までの間で、近位指節間関節が徐々に屈曲するような自然なものとなる。
【0086】
このように、本実施の形態においては、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)は、L2x及びL2yが前記式(4)及び(7)を満たすように設定される。したがって、三節部位における2つの関節を屈曲させることができるだけでなく、各関節の屈曲動作が自然なものとなり、各関節に負荷がかかることが防止される。
【0087】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0088】
図15は本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置を装着者の手に装着した状態を示す図、図16は本発明の第3の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図である。なお、図15及び16において、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【0089】
本実施の形態における装着型動作支援装置20は、図15に示されるように、アーム回転軸27aの位置を調整するための関節軸位置調整機構41を有する。該関節軸位置調整機構41を作動させることによって、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させ、位置座標(L2x、L2y)を容易に調整することができる。
【0090】
図16に示されるように、前記関節軸位置調整機構41は、ベース部22に固定された関節軸支持部としての接続ベース部42と、該接続ベース部42にY方向(垂直方向)にスライド可能に取り付けられた垂直スライドベース部43と、該垂直スライドベース部43にX方向(水平方向)にスライド可能に取り付けられた水平スライドベース部44とを備える。なお、該水平スライドベース部44のスライド方向の一端(図16における右端)には、アーム回転軸27aの基端が固定されている。そして、前記接続ベース部42には、垂直スライドベース部43をスライド可能に保持する垂直スライド42aが形成され、前記垂直スライドベース部43には、水平スライドベース部44をスライド可能に保持する水平スライド43aが形成されている。
【0091】
また、前記接続ベース部42には、Y方向に延在する第1スクリュロッド部46の上端を回転可能、かつ、軸方向に移動不能に保持する第1ブラケット部46aが固定されている。なお、前記第1スクリュロッド部46の下端にはねじが形成され、垂直スライドベース部43に形成された第1スクリュナット孔46bに螺入されている。したがって、第1スクリュロッド部46を回転させることによって、垂直スライドベース部43を接続ベース部42に対してY方向に変位させることができる。
【0092】
さらに、前記垂直スライドベース部43には、X方向に延在する第2スクリュロッド部47の一端(図16における左端)を回転可能、かつ、軸方向に移動不能に保持する第2ブラケット部47aが固定されている。なお、前記第2スクリュロッド部47の他端(図16における右端)にはねじが形成され、水平スライドベース部44に形成された第2スクリュナット孔47bに螺入されている。したがって、第2スクリュロッド部47を回転させることによって、水平スライドベース部44を垂直スライドベース部43に対してX方向に変位させることができる。
【0093】
このように、前記関節軸位置調整機構41は、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47を回転させることによって、水平スライドベース部44に固定されているアーム回転軸27aを、接続ベース部42が固定されているベース部22に対して、X−Y方向に変位させることができる。
【0094】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0095】
装着者が他の装着者に交替した場合、人差指14のサイズが変化するので、人差指基節14aの長さL2a及び人差指中節14bの長さL2bの値が変化する。したがって、L2a及びL2bを変数として含む前記式(4)及び(7)を満たすように設定されるアーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)も変化する。
【0096】
そこで、装着者が他の装着者に交替した場合には、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算し、それに対応するように、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47を回転させて、アーム回転軸27aの位置を調整する。
【0097】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎に指のサイズが相違していても、関節軸位置調整機構41を作動させてアーム回転軸27aの位置を調整することによって、容易に適合させることができる。
【0098】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0099】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第3の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0100】
図17は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の関節軸位置調整機構を示す図、図18は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置の構成を示すブロック図、図19は本発明の第4の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースのデータ構成を示す図である。
【0101】
本実施の形態における関節軸位置調整機構41は、図17に示されるように、第1スクリュロッド部46を回転させるアクチュエータとしての第1回転アクチュエータ48と、第2スクリュロッド部47を回転させるアクチュエータとしての第2回転アクチュエータ49とを有する。また、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49には、第1スクリュロッド部46及び第2スクリュロッド部47の回転量を測定するためのアブソリュートエンコーダとしての第1アブソリュートエンコーダ48a及び第2アブソリュートエンコーダ49aが取り付けられている。したがって、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させることによって、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させることができる。
【0102】
なお、アブソリュートエンコーダは、絶対位置を検出する機能を備えたエンコーダである。つまり、信号としてモータの回転量に応じたパルス列だけでなく、絶対位置信号も検出する点が、インクリメンタルエンコーダとの違いである。ロボット、工作機械等のNC制御を使うFA機器は、原点を基準とした位置データに基づいて作動する。そのため、インクリメンタルエンコーダを使用した場合、原点を検出するためにリミットスイッチ等の機械的な基準点(原点)を設け、電源を入れたときに機械を作動させて原点を探すようになっている。これに対し、アブソリュートエンコーダを使うと、原点に対する位置を常に把握することができるので、例えば、電源を切った状態において、何らかの理由でモータが回転しても、電源を入れると現在位置を検出することができる。したがって、原点復帰動作が不要となる。
【0103】
また、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、図18に示されるような制御装置を有する。該制御装置は、制御部35と、入出力装置36と、上位インターフェイス37とを備える。そして、前記第1回転アクチュエータ48、第2回転アクチュエータ49、第1アブソリュートエンコーダ48a及び第2アブソリュートエンコーダ49aは、制御部35に接続され、前記第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49の動作は制御部35によって制御される。なお、該制御部35は、図19に示されるように、装着者のID毎に対応するL2x及びL2yの値を記録したデータを格納するデータベースを備える。
【0104】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0105】
装着者が装着型動作支援装置20を装着する前に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から前記装着者のIDを入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された装着者のIDに対応するL2x及びL2yの値を取得する。そして、制御部35は、第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させて、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)の値がデータベースから取得したL2x及びL2yの値に一致するように、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させる。
【0106】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎に指のサイズが相違していても、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算することなく、アーム回転軸27aの位置を自動的に調整することができる。したがって、容易に、かつ、短時間でアーム回転軸27aの位置を装着者に適合させることができる。
【0107】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0108】
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1〜第4の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0109】
図20は本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第1のデータ構成を示す図、図21は本発明の第5の実施の形態における装着型動作支援装置の制御装置が有するデータベースの第2のデータ構成を示す図である。
【0110】
本実施の形態における装着型動作支援装置20は、前記第4の実施の形態と同様の制御装置を有する。なお、本実施の形態における制御装置の制御部35は、図20に示されるように、装着者のID毎に対応するL2a及びL2bの値を記録したデータと、図21に示されるように、目的動作毎に対応する目標到達位置における中手指節関節角度及び近位指節間関節角度、すなわち、−θ2a及び−θ2bの値を記録したデータとを格納するデータベースを備える。
【0111】
次に、本実施の形態における装着型動作支援装置20の動作について説明する。
【0112】
装着者が装着型動作支援装置20を装着する前に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から前記装着者のIDを入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された装着者のIDに対応するL2a及びL2bの値を取得する。
【0113】
そして、装着者が装着型動作支援装置20を装着した後に、前記入出力装置36又は上位インターフェイス37から目的動作(例えば、コップをつかむ)を入力する。すると、制御部35は、前記データベースにアクセスし、入力された目的動作に対応する−θ2a及び−θ2bの値を取得する。
【0114】
続いて、制御部35は、前記式(4)及び(7)にデータベースから取得したL2a、L2b、−θ2a及び−θ2bの値を代入し、前記式(4)及び(7)を満たすL2x及びL2yの値を計算し、第1回転アクチュエータ48及び第2回転アクチュエータ49を作動させて、アーム回転軸27aの位置座標(L2x、L2y)の値が計算したL2x及びL2yの値に一致するように、アーム回転軸27aをX−Y方向に変位させる。
【0115】
このように、本実施の形態においては、1つの装着型動作支援装置20を複数の装着者に対応させる場合に装着者毎の指のサイズに適切に対応することができるとともに、目的動作に応じて指の中手指節関節角度及び近位指節間関節角度を変化させることができるので、細かい動作を行うことができる。
【0116】
また、関節軸位置調整機構41は指駆動部21の基端に配設されているので、本実施の形態における装着型動作支援装置20は、指の背側に複雑な機構部を実装している多関節アーム方式の装着型動作支援装置とは異なり、スリムで小型である。したがって、装着性が良好となり、他の指や把持の対象物と干渉することがない。
【0117】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、装着型動作支援装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0119】
14 人差指
20 装着型動作支援装置
21 指駆動部
22 ベース部
22b 接続ブラケット
24 駆動アーム部
25 押し当てブロック
27a アーム回転軸
35 制御部
41 関節軸位置調整機構
42 接続ベース部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベース部と、単関節駆動部とを有し、前記ベース部及び単関節駆動部を装着者に装着し、該装着者の三節部位の動作を支援する装着型動作支援装置であって、
(b)前記単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、前記ベース部に固定された関節軸支持部と、前記関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、該駆動アーム部に取り付けられるとともに、前記三節部位に装着される装着部とを備え、
(c)該装着部は、前記三節部位の先端節に装着され、
(d)前記関節軸の位置は、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときに前記三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定されることを特徴とする装着型動作支援装置。
【請求項2】
前記関節軸の位置は、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときと、前記目標到達位置及び動作開始位置の中間に設定された動作中間位置とで等しくなるように設定される請求項1に記載の装着型動作支援装置。
【請求項3】
前記関節軸支持部は、前記関節軸の位置を2次元方向に変位させることができる関節軸位置調整機構を備える請求項1又は2に記載の装着型動作支援装置。
【請求項4】
前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、
該制御部は、前記装着者のIDと前記関節軸の位置とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のIDが入力されると、前記関節軸の位置が入力されたIDに対応する位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる請求項3に記載の装着型動作支援装置。
【請求項5】
前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、
該制御部は、前記装着者のIDと前記三節部位の各節の長さとを対応付けたデータ、及び、目的動作と前記三節部位の2つの関節の角度とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のID及び目的動作が入力されると、前記三節部位の各節の長さ及び前記三節部位の2つの関節の角度に基づいて前記関節軸の位置を計算し、前記関節軸の位置が計算された位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる請求項3に記載の装着型動作支援装置。
【請求項6】
前記三節部位は手の指であり、前記動作開始位置は手の指が伸長した状態に対応する位置であり、前記目標到達位置は手の指が屈曲した状態に対応する位置である請求項1〜5のいずれか1項に記載の装着型動作支援装置。
【請求項7】
前記2つの関節は、中手指節関節及び近位指節間関節である請求項6に記載の装着型動作支援装置。
【請求項1】
(a)ベース部と、単関節駆動部とを有し、前記ベース部及び単関節駆動部を装着者に装着し、該装着者の三節部位の動作を支援する装着型動作支援装置であって、
(b)前記単関節駆動部は、単一の関節軸を支持し、前記ベース部に固定された関節軸支持部と、前記関節軸を中心に回転可能な駆動アーム部と、該駆動アーム部に取り付けられるとともに、前記三節部位に装着される装着部とを備え、
(c)該装着部は、前記三節部位の先端節に装着され、
(d)前記関節軸の位置は、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときに前記三節部位の2つの関節が屈曲し、かつ、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときとで等しくなるように設定されることを特徴とする装着型動作支援装置。
【請求項2】
前記関節軸の位置は、前記装着部から関節部までの距離が、前記駆動アーム部が目標到達位置にあるときと、動作開始位置にあるときと、前記目標到達位置及び動作開始位置の中間に設定された動作中間位置とで等しくなるように設定される請求項1に記載の装着型動作支援装置。
【請求項3】
前記関節軸支持部は、前記関節軸の位置を2次元方向に変位させることができる関節軸位置調整機構を備える請求項1又は2に記載の装着型動作支援装置。
【請求項4】
前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、
該制御部は、前記装着者のIDと前記関節軸の位置とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のIDが入力されると、前記関節軸の位置が入力されたIDに対応する位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる請求項3に記載の装着型動作支援装置。
【請求項5】
前記関節軸位置調整機構の動作を制御する制御部を更に有し、
該制御部は、前記装着者のIDと前記三節部位の各節の長さとを対応付けたデータ、及び、目的動作と前記三節部位の2つの関節の角度とを対応付けたデータを含むデータベースを備え、前記装着者のID及び目的動作が入力されると、前記三節部位の各節の長さ及び前記三節部位の2つの関節の角度に基づいて前記関節軸の位置を計算し、前記関節軸の位置が計算された位置となるように前記関節軸位置調整機構を作動させる請求項3に記載の装着型動作支援装置。
【請求項6】
前記三節部位は手の指であり、前記動作開始位置は手の指が伸長した状態に対応する位置であり、前記目標到達位置は手の指が屈曲した状態に対応する位置である請求項1〜5のいずれか1項に記載の装着型動作支援装置。
【請求項7】
前記2つの関節は、中手指節関節及び近位指節間関節である請求項6に記載の装着型動作支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−115248(P2011−115248A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273038(P2009−273038)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]