説明

装置と人との共同作業システム

【課題】装置と人とが共通の領域で作業を行う際、取り扱うワークが変更された場合でも、装置と人の有する特性が最大に発揮され、効率的に処理できるようにした作業システムを提供する。
【解決手段】装置と人が車体に対して組付部品の組付作業を行い、この組付作業が、例えば部品取出し、搬送、位置決め、取付け/締付け等の作業に区分けされる場合、すべての作業を装置が行うパターン1や、一部の作業を人のみまたは人と装置とが共同して行い、残りの作業を装置が行うパターン2〜パターン4等を予め設定しておき、組付部品の種類等によってパターンを切換えて作業することにより、組付部品の種類等が変更された場合でも、装置の有する優れたパワーと、人の有する優れた判断力とが最大限に発揮されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置と人とが共同作業を行う際、作業効率の最適化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車部品の組立ライン等において、例えば重量物等を運搬するのに適した移動ロボットと、判断力等に優れた人の共同作業で組立等を行うようなラインシステムが知られており、この際、ロボットだけが作業を行う工程、人だけが作業を行う工程、ロボットと人とが共同して作業を行う工程を設け、例えば、加工前のワークをロボットが受取る際や、加工後のワークを払い出す際は、ロボットと人が共同して作業を行うとともに、この時のロボットのモータ等の出力を低く制限して安全確保を図り、安全柵内の加工設備でワークを加工する際は、ロボットだけで作業を行い、この時は出力制限を解除するような技術(例えば、特許文献1参照。)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−341086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記技術では、ロボットが単独で作業する領域、人が単独で作業する領域、ロボットと人が共同して作業する領域が予め決定されており、この定められた領域内で定められた手順で作業するようにされているが、例えば近年の自動車の組立ライン等においては、大量生産というよりむしろ多機種小量生産の傾向にあり、このような場合に、取り扱うワークの形状や重量や材料等も多機種のものとなるため、ロボットと人が予め定められた手順で作業する方式では、これに適切に対応することができないことがあり、無駄な時間が増えたり、人にかかる負担が大きくなる等の不都合が生じる場合があった。
【0005】
そこで本発明は、装置と人とが共通の領域で作業を行う際、取り扱うワークの態様等に応じて効率的に処理できるような作業システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、装置と人が共通の領域内で各種作業を行うような作業システムにおいて、すべての作業を装置が行うパターンと、少なくとも一部の作業を人が行い残りの作業を装置が行うパターンとを切換え可能にした。
【0007】
そして、例えば作業内容が、組付部品の取出し、搬送、位置決め、組付け/締付け、のような作業内容である場合、例えば、これらすべての作業を装置で行うパターン、または組付部品の取出し作業だけを人のみまたは人と装置とが共同して行い、それ以外の作業は装置で行うパターン、あるいは、組付部品の取出しと位置決め作業を人のみまたは人と装置とが共同して行い、それ以外の作業は装置で行うパターン等のように複数のパターンを区分けして定めておき、これらパターンを適時切換え可能にしておけば、取り扱う部品によって適切に対応することができ、人の高度な判断力等と、装置の優れたパワー等を最大限に活用して効率的に処理できる。
【発明の効果】
【0008】
装置と人が共通の領域内で作業するにあたり、予め作業分担を定めた各種パターンを設定しておき、このパターンを切換えることによって、ワークの種類等に応じて適切に作業分担することが可能となり、人と装置の特性を最大に活用しつつ効率的に処理できる。
【0009】
また、作業の1サイクルを、様々な理由による作業条件の変更に対応すべく、自動作業する装置のみで行うモードや、一部工程を人手で行う(他工程は自動作動する装置により行う)モードや、一部工程で装置をアシスト制御して、人が装置にベクトルを与えながら行う(他工程は自動作動する装置により行う)モード等の作業モードの切換えを行い、効率よく対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る装置と人の共通作業領域の一例を上から見た説明図、図2は各種作業分担パターンの一例を示す説明図である。
【0011】
本発明に係る装置と人との共同作業システムは、例えば自動車の組立ライン等において、装置と人とが共通の領域で作業を行う際、取り扱うワークの態様等に応じて効率的に処理できるようにされ、ワークの態様等に応じて装置と人の作業分担を予め数種類に分けてパターン化しておき、適宜、各パターンを切換えることによって最適な作業効率が得られるようにしている。
【0012】
ここで本実施例における装置と人との共同作業システムは、例えば図1に示すような自動車の組立ラインに適用され、この作業領域は、オーバーヘッドコンベア1等で搬送される車体2の下回りに、組付部品3を組み付ける作業領域であり、部品供給位置4にある組付部品3をオーバーヘッドコンベア1の下方の部品取付け位置5まで搬送した後、組付部品3を車体2下方の所定の位置に位置決めした状態で車体2に組み付けるような作業である。
ここで、装置6は、アーム8の先端にワーク把持部9を備えており、また、自走路10に沿って走行自在にされている。
【0013】
そして、このような組付作業の作業内容を区分けすると、まず、部品供給位置4の組付部品3の取出し、部品取付け位置5への搬送、所定位置への位置決め、組付け/締付け、原位置への戻り、に区分けすることができる。
【0014】
そこで本発明は、取り扱う組付部品3の種類によって、パワーに優れて疲れを知らない装置6の特性と、判断力等に優れた人7の特性が最大に発揮されるよう、例えば、図2に示すように、すべての作業を装置6が行うパターン1と、組付部品3の取出しだけを人7のみまたは人と装置とが共同で行って、残余の作業をすべて装置6が行うパターン2と、位置決めだけを人7のみまたは人と装置とが共同で行って、残余の作業をすべて装置6が行うパターン3と、組付部品3の取出しと位置決めを人7のみまたは人と装置とが共同で行って、残余の作業を装置6が行うパターン4に区分けして設定し、これらパターンを適宜切換えて行うようにしている。
【0015】
すなわち、パターン1は、組付部品3の取出しから、搬出、位置決め、取付け/締付け、戻り、の作業を装置6が単独でも容易に行えるような組付部品3を取り扱う際に選択され、パターン2は、例えば装置6自体が組付部品3を取出すのは困難であるが、人7がこれを補助すると楽に把持できるような場合に選択され、パターン3は、装置6が位置決めした状態で取付け/締付けを行うのが困難であるが、人7がこれを補助すると楽に作業が行えるような場合に選択され、パターン4は、パターン2とパターン4の事例が重なるような場合に選択される。
そして、パターン切換えの具体的な方法としては、例えば、取り扱う組付部品3の種類によって人7が装置6の制御スイッチ等を切換えるようにしている。
【0016】
そして、図1に示す例は、パターン3の場合の具体例を示すものであり、人7のみまたは人と装置とが共同して部品供給位置4の組付部品3を取り上げて、装置6のワーク把持部9に受渡し、受取った装置6は自走路10を自走して組付部品3を部品取付け位置5に搬送した後、これを人7のみまたは人と装置とが共同して所定位置に位置決めし、装置6が取付け/締付け作業を行うようなパターンであるが、取り扱う組付部品3の種類によってパターンを切換え、装置6と人7の作業分担を適切に切換えることにより、両者の特性を最大限に活かした作業システムにすることができる。
【0017】
次に、装置による全工程自動作業と一部工程が人手作業(他工程は自動作動する装置により行う)との作業モード切換えの具体例を説明する。
部品(アッセンブリ)を供給位置から装置の把持部に移載する工程を有する作業で、部品(アッセンブリ)が把持部で容易に把持できる機種の場合には、全ての工程を自動作動する装置が行う。例えば、部品(アッセンブリ)の把持部が干渉しそうな箇所に、他の部品が付けられていない場合や、把持部の作動域に干渉しそうな対象物が無く、装置の自動作動をティーチングし易い場合が考えられる。
【0018】
また、部品(アッセンブリ)が把持部で容易に把持できない機種の場合には、供給位置から装置の把持部に部品(アッセンブリ)を人手で移載する。例えば、部品(アッセンブリ)の把持部の作動領域内の干渉しそうな箇所に、他の部品が付けられている場合、特にハーネス、バンド、スプリング等の状態が固定していない場合や、把持部の作動域に干渉しそうな対象物があり、装置の自動作動をティーチングし難い場合が考えられる。
【0019】
また、ターゲットマーカーセット(人手)以外は、装置による全工程自動作業と、タンクの車体への装着作業をアシストモードで行う(他工程は自動作動する装置により行う)との作業モード切換えを例に挙げる。
【0020】
タンクを車体の定位置へ容易に位置決めできる機種の場合には、自動作動する装置が位置決めを行い、ターゲットマーカーセットに関しては、人手で行い、締付けに関しては自動で行う。
【0021】
また、タンクを車体の定位置へ容易に位置決めできない機種の場合には、装置によりタンクを車体のタンク装着位置の近接位置まで自動移動させ、位置決め装着工程に関しては、アシストモードで行う。例えば、タンク装着位置の車体の形状や、干渉しそうな他部品(ハーネス、ホース等)が影響してティーチングがやり難い場合には、ターゲットマーカーセットに関しては、人手で行い、締付けに関しては自動で行う。
【0022】
なお、以上の実施例では、作業の一例として車体の組付作業を例にとったが、組付作業以外の作業にも適用できることはいうまでもない。また、装置6も搬送装置に限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
装置と人の作業分担のパターンを切換えることで、装置の特性と人の特性を最大に活かした作業が行えるようになり、効率的な作業推進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る装置と人の共通作業領域の一例を上から見た説明図
【図2】作業分担パターンの一例を示す説明図
【符号の説明】
【0025】
3…組付部品、6…装置、7…人。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置と人が共通の領域内で各種作業を行う作業システムであって、すべての作業を装置が行うパターンと、少なくとも一部の作業を人のみまたは人と装置とが共同して行い残りの作業を装置が行うパターンとが切換え可能にされることを特徴とする装置と人との共同作業システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−51552(P2006−51552A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233105(P2004−233105)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】