説明

補助手摺装置

【課題】人の立ち座り動作を的確にサポートしてその安全性及び容易性を確保し得るようにした補助手摺装置を提供する。
【解決手段】略平板状のベース材1と、該ベース材1の一方の側縁部1a寄りの所定高さ位置において固定配置された固定手摺材6と、略水平面内で回動可能とされ且つ格納時位置Aと使用時位置Bにおいて固定保持可能とされた可動手摺材7を備える。係る構成によれば、可動手摺材7を格納時位置Aに固定保持した状態では、上記固定手摺材6と可動手摺材7が歩行用手摺として機能し、歩行の安全性が確保される。また、可動手摺材7を該使用時位置Bで固定保持した状態では、使用者の側方に固定手摺材6が、前方に可動手摺材7が位置することから、これらを支えとすることで使用者の容易且つ安全な立ち座りが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、立ち座り動作を必要とする機器に付設することで、該機器の使用者の立ち座り動作を補助するための補助手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレ設備として、従来から種々の形態が提案されているが、その中でも、使用時における身体的負担を軽減する形態として、着座式トイレが広く普及しており、特に高齢者等の身体的機能が低下した者にとっては極めて好ましい形態といえる。
【0003】
しかし、この着座式トイレにあっても、使用者の身体的負担が皆無とされるものではなく、用便時における身体的負担が軽減されるものの、その使用に際しての便座への着座動作及び離座動作に伴う身体的負担は依然として残るものである。このため、トイレの安全且つ容易な使用を実現する上においては、人の立ち座りを補助するための手摺装置の設置が必要と考えられ、係る観点から、固定設置される固定トイレ及び非設置で持ち運び可能な簡易トイレのそれぞれについて多くの提案がなされている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1に示されるものは、着座式の固定トイレ用の手摺装置であり、特許文献2及び特許文献3に示されるものは、着座式の簡易トイレ用の手摺装置である。
【特許文献1】特開平11−324078号公報
【特許文献2】実開平5−23997号公報
【特許文献3】特開平11−169321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、簡易トイレに着目すれば、この簡易トイレの使用者は、高齢者とか病人のように、距離の離れた場所に設置された固定トイレまで移動してこれを使用することは困難であるが、短い距離なら自分で移動して用を足せるというような者であることが多く、簡易トイレをベッドの近傍に設置して使用するのが通例である。従って、このような使用者の身体的条件、設置条件等に照らせば、簡易トイレには手摺装置の付設が必須であるといえる。このような背景から、特許文献2及び特許文献3に示されるような、簡易トイレ用の手摺装置が提案されている。
【0006】
一方、便座に座った人が立ち上がる場合、あるいは便座の前側に立っている人が便座に座る場合には、前後方向への身体の移動を伴うため、体重を身体前方側で支えるとか、身体に前後方向の力を加えてこれを引き上げることができることが好ましい。
【0007】
しかるに、上掲の特許文献2とか特許文献3に示される従来の簡易トイレ用の手摺装置では、手摺が簡易トイレの側方に肘掛け材として設けられているのみで、その前方側、即ち、便座に座った使用者の前面側には設けられていないため、便座への立ち座り動作のサポート効果として多くは望めないものである。
【0008】
そこで本願発明は、人の立ち座り動作を必要とする機器に付設される補助手摺装置において、立ち座り動作を的確にサポートしてその安全性及び容易性を確保することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0010】
本願の第1の発明では、略平板状のベース材1と、該ベース材1の一方の側縁部1a寄りの所定高さ位置において該側縁部1aに沿って略水平に延出するように支持材2,3を介して固定配置された略平板状の固定手摺材6と、上記固定手摺材6の前端部6b寄り位置を回動支点9として略水平面内で回動可能とされ且つ少なくとも上記回動支点9から上記固定手摺材6の延設方向の前方側へ延出する格納時位置Aと該回動支点9から上記ベース材1の他方の側縁部1b側へ延出する使用時位置Bにおいてそれぞれ固定保持可能とされた略平板状の可動手摺材7を備えたことを特徴としている。
【0011】
係る構成によれば、上記ベース材1の一方の側縁部1aと他方の側縁部1bの間に、使用者の立ち座り動作を必要とする機器、例えば、着座式の簡易トイレXを設置した場合には、上記可動手摺材7を格納時位置Aに設定し且つ固定保持した状態では、上記固定手摺材6と可動手摺材7が上記簡易トイレXの側部において前後方向へ連続的に延設されることから、上記簡易トイレXを使用するために使用者が上記ベース材1の前縁部1d側から、あるいは他方の側縁部1b側から上記簡易トイレX側へ歩いて移動する場合、及び上記簡易トイレXを使用した後に使用者が上記簡易トイレX側から上記ベース材1の前縁部1d側へ、あるいは他方の側縁部1b側へ歩いて移動する場合において、該使用者はこれら固定手摺材6及び可動手摺材7を伝って歩くことで、上記簡易トイレXまで安全に移動することができ、その歩行動作における安全性が確保される。
【0012】
また、使用者が所定の着座位置まで進入したあと、上記可動手摺材7を格納時位置Aから使用時位置Bへ位置変更して該使用時位置Bで固定保持すると、使用者の側方には上記固定手摺材6が、前方には上記可動手摺材7が横設状態で、それぞれ位置しているので、使用者は、上記便座42への立ち座り時に上記可動手摺材7に手を掛けてこれを手前に引き寄せるように力を入れながら腰を落とす、あるいは腰を上げることで、腰等に余分な負担をかけることなく、上記便器42に着座し、あるいは該便器42から立ち上がることができる。
【0013】
また、上記ベース材1上に簡易トイレXを設置し、上記ベース材1側に設けられた上記固定手摺材6及び可動手摺材7を使用するものであることから、上記補助手摺装置Zの上記簡易トイレXへの取付けが簡単であり、特に簡易トイレXの設置場所を変える機会の多いような使用条件下においては好適である。
【0014】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る補助手摺装置において、上記可動手摺材7の上記回動支点9から先端7b側へ離間した位置に、該可動手摺材7を上記ベース材1側に支持させる補助支持材15を設けるとともに、該補助支持材15の下端にキャスタ16を備えたことを特徴としている。
【0015】
係る構成によれば、上記補助支持材15を設けることで、上記可動手摺材7が片持ち支持となるのが回避され、それだけ上記可動手摺材7の手摺としての剛性が向上し、使用時の安全性及び信頼性が向上する。また、上記補助支持材15の下端に上記キャスタ16が設けられていることで、上記可動手摺材7の回動操作を軽快且つ容易に行うことができ、延いては補助手摺装置Zの使用時における利便性が確保される。
【0016】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る補助手摺装置において、上記支持材2,3及び上記補助支持材15を、共に高さ調整可能に構成したことを特徴としている。
【0017】
係る構成によれば、上記補助手摺装置Zが適用される機器を使用する場合における人の体格等に上記固定手摺材6及び可動手摺材7の高さを合わせることができ、延いては上記補助手摺装置Zの適用範囲の拡大、及び的確な使用性が確保され、その商品価値がさらに高められる。
【0018】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る補助手摺装置において、上記可動手摺材7を、湾曲した平面形体をもち、表裏反転させて上記回動支点9に取付け得るように構成したことを特徴としている。
【0019】
係る構成によれば、上記可動手摺材7が湾曲した平面形体をもつものであっても、これを表裏反転させて使用することで、該補助手摺装置Zをその基本構成を変更することなく、上記固定手摺材6及び可動手摺材7が上記ベース材1に対してその左側に位置する左勝手の形態と、右側に位置する右勝手の形態とを任意に選択して使用することができ、部材の共用化に基づく低コスト化が促進されるとともに、使用上における利便性が向上することになる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本願発明に係る補助手摺装置Zを、立ち座り動作を必要とする機器に付設することで、該機器を使用する人の立ち座り動作を的確にサポートしてその安全性及び容易性を確保することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0022】
図1〜図3には、本願発明の実施形態に係る補助手摺装置Zを簡易トイレXに適用した状態を示している。
I: 補助手摺装置Zの構成
上記補助手摺装置Zは、図1に示すように、ベース材1に固定手摺材6と可動手摺材7を取付けて構成される。
【0023】
上記ベース材1は、矩形平板状の形体を有するもので、後述する簡易トイレXを載置し得るような幅寸法と該簡易トイレXに着座した使用者の膝先スペースを確保し得るような大きさ、及び所要の安定性を確保し得るような重量を備えている。
【0024】
上記ベース材1の左側縁部1a寄りには、その後縁部1c寄りに位置する第1支柱2と前縁部1d寄りに位置する第2支柱3が、それぞれ上記ベース材1に固定された固定ブラケット4,5を介して立設配置されている。そして、これら各支柱2,3の上端には、次述の固定手摺材6が取付けられている。
【0025】
また、上記各支柱2、3の高さ、即ち、上記固定手摺材6の高さは、上記各固定ブラケット4、5に設けた調整ボルト21、22によって増減調整を行なえるようになっている。なお、上記各支柱2、3は、特許請求の範囲中の「支持材」に該当する。
【0026】
上記固定手摺材6は、所定厚さの帯状の平板材で一体形成されており、その長辺側の二つの側面は、長手方向中心線に対して線対称の湾曲形状とされている。そして、この固定手摺材6は、その一端部6aが上記第1支柱2の上端に対して適宜の固定具8を介して固定され、また他端部6bは操作部10を備えた後述の連結具9を介して、次述の可動手摺材7の基端部7aとともに固定されている。
【0027】
上記可動手摺材7は、所定厚さの湾曲帯状の平板材で一体形成されており、その基端部7aは、上記連結具9を介して上記固定手摺材6の他端部6b側に回動自在に連結されている。従って、この実施形態においては、上記連結具9は上記可動手摺材7の回動支点として機能する。
【0028】
そして、この可動手摺材7は、上記連結具9の機能に基づいて、図1に実線図示するように上記固定手摺材6の長手方向(延設方向)に沿うように前方側へ延出する「格納時位置A」と、同図に鎖線図示するように上記固定手摺材6に略直交するように上記ベース材1の左側縁部1a側から右側縁部1b側へ向けて横設状態で延出する「使用時位置B」の二位置において固定保持可能とされている。
【0029】
さらに、上記可動手摺材7の上記基端部7a寄り位置には、その下端にキャスタ16を備えた補助支柱15(特許請求の範囲中の「補助支持材」に該当する)が取付けられている。この補助支柱15は、上記可動手摺材7側に位置する固定材15aと、上記キャスタ16が設けられ上記固定材15aに内挿された可動材15Bで構成され、該固定材15a側に設けた調整ボルト23の調整によってその長さ、即ち、上記可動手摺材7の支持高さを増減調整できるようになっている。
【0030】
また、上記補助支柱15は、上記第2支柱3の間隔を常時適正に保持すべく、連結材17を介して上記第2支柱3に連結されている。尚、この場合、上記補助支柱15は上記可動手摺材7と一体的に上記連結具9回りに回動することから、該連結材17を上記第2支柱3側に連結する可動ブラケット18は、該第2支柱3に対して相対回動可能に構成されている。
【0031】
一方、上記可動手摺材7には、付帯部材として、操作ノブ13が上記可動手摺材7の先端部7bに取付けられるとともに、トイレットペーパ20を保持するペーパホルダー14が上記可動手摺材7の長手方向の中間位置に取付けられている。
【0032】
尚、上記可動手摺材7は、上述のように、これを表裏反転させて上記連結具9に連結して使用することができるようになっていることから、これに対応すべく、上記可動手摺材7の上記連結具9の取付部分と上記補助支柱15の取付部分と上記操作ノブ13の取付部分及び上記ペーパホルダー14の取付部分は、それぞれ上記可動手摺材7の表裏両面の何れ側からも取付けられるように構成されている。
【0033】
また、図1及び図2には、上記固定手摺材6に対して上記可動手摺材7が右方向に延出する「右勝手」の使用形態を示しているが、上述のように上記可動手摺材7を表裏反転させて用いることができるように構成したことで、図3に示すように、上記固定手摺材6に対して上記可動手摺材7が左方向に延出する「左勝手」の使用形態とすることができるものであり、係る使用形態は使用者の要求によって容易に選択設定することができる。
【0034】
ここで、上記連結具9の構造について、図4及び図5を参照して簡単に説明する。
【0035】
図4において、上記固定手摺材6の他端部6bには、上記第2支柱3の上端に固定したロックプレート34と上記固定手摺材6の下面側に衝合した押えプレート36によって該固定手摺材6を挟着することで、上記第2支柱3が固定されている。尚、上記ロックプレート34には、図5に示すように周方向に等間隔で4個のロック孔34aが設けられている。
【0036】
一方、上記第2支柱3の内側にはガイド筒32が配置されている。このガイド筒32の上端側の内部には摺動子35が取付けられるとともに、該摺動子35にはガイドピン31及びスプリング30を介して上記操作部10が出没可能に取付けられている。さらに、上記操作部10の周方向の二位置には、それぞれロック部材33が取付けられている。このロック部材33は、上記可動手摺材7に対して上下方向にスライド可能とされている。また、上記各ロック部材33の下端部には、逃げ部33aと係止爪33bが形成されている。
【0037】
ここで、上記固定手摺材6に対して上記可動手摺材7を所定に回動位置で固定した状態では、図4及び図5のそれぞれ左半部に示すように、上記スプリング30の付勢力で上記操作部10が上方へ突出し、上記ロック部材33の係止爪33bが上記ロックプレート34の所要のロック孔34aに係入しており、これら両者の係合作用によって上記固定手摺材6に対して上記可動手摺材7が所定の回動位置で固定保持される。
【0038】
これに対して、上記操作部10を押込むと、図4及び図5のそれぞれ右半部に示すように、上記ロックプレート34が上記ロック部材33の逃げ部33aに嵌入し上記ロックプレート34と上記ロック部材33の係合状態が解除され、上記可動手摺材7は上記固定手摺材6に対して相対回動できる状態となる。そして、所要の回動位置で上記操作部10の押込み力を消滅させると、該操作部10は上記スプリング30の付勢力で上方へ突出し、再び固定保持状態とされる。
【0039】
なお、この実施形態の連結具9は、上記格納時位置Aと使用時位置Bの二位置を含む四位置で固定保持し得るようになっている。
II:簡易トイレXの構成
上記簡易トイレXは、前後左右の四つの脚45,46と左右一方の肘掛け48を備えた家具調の外観形体をもつ本体40内に、便器41と便座42を収納配置するとともに、該便座42の上側をクッション性の便蓋43で開閉可能に覆って構成される。また、上記各脚45,46の長さは、これらにそれぞれ設けられた調整ボルトによって個別に調整可能とされている。
【0040】
尚、この簡易トイレXは、使用に際して使用者の立ち座り動作を必要とする機器の一例として挙げたものであって、その構造に制約されるものではなく、また他の機器と置き換えることもできるものである。
III: 補助手摺装置Zの設置作業
ここでは、上記補助手摺装置Zを上記簡易トイレXの補助手摺として使用する場合を例にとって説明する。
【0041】
使用に際しては、先ず、上記補助手摺装置Zを左勝手で使用するのか、右勝手で使用するのか、その使用勝手を決定し、決定された使用勝手に対応するように、上記可動手摺材7の表裏を選択し、これを上記固定手摺材6の他端部6b側に上記連結具9によって取付ける。さらに、この可動手摺材7に対して上記補助支柱15を取付け、これを上記連結材17によって上記第2支柱3に連結する。また、上記可動手摺材7の表裏方向に対応させて上記操作ノブ13及び上記ペーパホルダー14を取付ける。
【0042】
上記補助手摺装置Zの使用勝手に対応した設定作業が完了すると、次に、該補助手摺装置Zを、上記簡易トイレXの設置予定位置に載置する。しかる後、上記簡易トイレXを、その左右の前脚45、45を上記補助手摺装置Zのベース材1の後縁部1c寄りに載置する。この場合、上記ベース材1の高寸法だけ、上記簡易トイレXの前部側と後部側との間に高低差が生じるため、この高低差を解消するように、上記前脚45と後脚46の高さ調整を行う。
【0043】
さらに、上記補助手摺装置Zに対する上記簡易トイレXの平面方向における位置調整を行う。この場合、必要に応じて、上記補助手摺装置Zと上記簡易トイレXを、適宜の固定具(図示省略)を用いて固定する。
【0044】
上記補助手摺装置Zの所定位置に上記簡易トイレXをセットした後、該簡易トイレXの便座42の高さと使用者の体格等を考慮して、上記補助手摺装置Zの上記固定手摺材6と上記可動手摺材7の高さを調整する。
【0045】
以上で、上記簡易トイレXと上記補助手摺装置Zの設置作業が完了する。なお、上記補助手摺装置Zを左勝手で使用する場合における設置完了状態を図2に、右勝手で使用する場合における設置完了状態を図3に、それぞれ示している。
IV:補助手摺装置Zの使用状態の説明
ここで、上記簡易トイレXを使用する場合における上記補助手摺装置Zの使用状態を説明する。
【0046】
(1)簡易トイレX側への使用者の移動及び便座への着座
使用者が上記簡易トイレXを使用するために、該簡易トイレX側へ歩いて移動し、その便座42に着座する場合には、先ず、上記可動手摺材7を格納時位置Aに設定し、これを固定保持する。
【0047】
この状態では、上記固定手摺材6と可動手摺材7が上記簡易トイレXの側部において前後方向へ連続的に延設されている。従って、使用者は、上記簡易トイレXの前方側(上記ベース材1の前縁部1d側)から、あるいは横側(上記ベース材1の他方の側縁部1b側)から歩いて該簡易トイレX側へ進入する場合、上記固定手摺材6及び可動手摺材7を伝って歩行することで、上記簡易トイレXまで安全に移動することができる。
【0048】
使用者が上記簡易トイレX側の所定位置まで進入した時点で、上記可動手摺材7を格納時位置Aから使用時位置Bへ位置変更し、該使用時位置Bで固定保持する。このとき、使用者は、上記簡易トイレXと上記可動手摺材7の間のスペース内に位置している。ここで使用者は、上記便器42に着座できるように(即ち、上記便器42が背面に、上記可動手摺材7が前面に、それぞれ位置するように)、体の向きを変える。
【0049】
この状態においては、使用者の側方には上記固定手摺材6が、前方には上記可動手摺材7が横設状態で、それぞれ位置している。従って、使用者が立ち姿勢から上記便座42に着座する場合には、上記固定手摺材6と上記可動手摺材7を支えとして腰を落とすことで、容易に且つ安全に着座することができる。
【0050】
この場合、特に、上記可動手摺材7が使用者の前方において横設状態で配置されていることから、使用者は、上記便座42への立ち座り時に上記可動手摺材7に手を掛けてこれを手前に引き寄せるように力を入れながら腰を落とすことで、腰等に余分な負担をかけることなく、体が後方へ移動し、ごく自然な動きで容易に上記便器42に着座することができ、着座動作時の安全性がさらに高められることになる。
【0051】
なお、上記便座42に着座しての用便時には、上記簡易トイレXに備えられた肘掛け48の他に、上記補助手摺装置Zの上記固定手摺材6とか上記可動手摺材7に腕を預けることもできる。特に、上記可動手摺材7に腕を預けた場合には、該可動手摺材7が使用者の前方側に在ることから、必然的に上体が前傾する姿勢となり、適度に腹部を圧迫することから排便が促進され、ここに上記可動手摺材7の有用性が認められる。
【0052】
(2)着座状態からの立ち上がり動作
上記簡易トイレXでの用便後、上記便座42から立ち上がって移動する場合は、先ず上体を前傾させて上記可動手摺材7に手を掛け、これを引き付けるようにしながら腰を浮かせると、腰等に余分な負担をかけることなく、体が前方へ移動し、ごく自然な動きで容易に立ち上がることができる。この際、同時に上記固定手摺材6に腕を預けて体重の移動をサポートさせることで、より一層容易に立ち上がることができる。
【0053】
立ち上がった後、上記可動手摺材7を使用時位置Bから格納時位置Aへ変更し、これを固定保持させる。この状態では、上記固定手摺材6と可動手摺材7が上記簡易トイレXの側部において前後方向へ連続的に延設されているので、使用者は、上記固定手摺材6及び可動手摺材7を伝って歩くことで、安全且つ容易に上記簡易トイレX及び上記補助手摺装置Zから離れることができる。以上で着座状態からの立ち上がり動作が官僚する。
【0054】
なお、使用者が上記補助手摺装置Zから離れた後、上記可動手摺材7はそのまま格納時位置Aに保持され、次回の簡易トイレXの使用に備える。
V:その他
(a) 上記実施形態においては、上記固定手摺材6を支持する支持材として上記各支柱2,3を採用しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態においては、例えば、上記支持材として壁面状の板材を用いるなど、適宜に変更設定できるものである。
【0055】
(b) 上記実施形態においては、上記簡易トイレXの前脚45を上記補助手摺装置Zの上記ベース材1上に乗せ掛けた状態でセットするようにしているが、係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記ベース材1の一部を切り欠き、この切り欠き部分に上記簡易トイレXの前部を対応させてセットすることも可能である。係る構成によれば、上記簡易トイレX側での高さ調整が不要になることから、例えば、脚をもたない通常タイプの簡易トイレに適用する場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本願発明の実施の形態に補助手摺装置とこれが適用される簡易トイレの組合せ前の状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した補助手摺装置を右勝手として簡易トイレに組み合わせた使用状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示した補助手摺装置を左勝手として簡易トイレに組み合わせた使用状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示した連結具の構造を示す拡大断面図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ・・ベース材
2 ・・第1支柱(支持材)
3 ・・第2支柱(支持材)
4 ・・固定ブラケット
5 ・・固定ブラケット
6 ・・固定手摺材
7 ・・可動手摺材
8 ・・固定具
9 ・・連結具
10 ・・操作部
13 ・・操作ノブ
14 ・・ペーパホルダー
15 ・・補助支柱(補助支持材)
16 ・・キャスタ
17 ・・連結材
18 ・・可動ブラケット
19 ・・固定ブラケット
20 ・・トイレットペーパ
21 ・・調整ボルト
22 ・・調整ボルト
23 ・・調整ボルト
X ・・簡易トイレ
Z ・・補助手摺装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板状のベース材(1)と、
該ベース材(1)の一方の側縁部(1a)寄りの所定高さ位置において該側縁部(1a)に沿って略水平に延出するように支持材(2),(3)を介して固定配置された略平板状の固定手摺材(6)と、
上記固定手摺材(6)の前端部(6b)寄り位置を回動支点(9)として略水平面内で回動可能とされ且つ少なくとも上記回動支点(9)から上記固定手摺材(6)の延設方向の前方側へ延出する格納時位置(A)と該回動支点(9)から上記ベース材(1)の他方の側縁部(1b)側へ延出する使用時位置(B)においてそれぞれ固定保持可能とされた略平板状の可動手摺材(7)と、
を備えたことを特徴とする補助手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記可動手摺材(7)の上記回動支点(9)から先端(7b)側へ離間した位置に、該可動手摺材(7)を上記ベース材(1)側に支持させる補助支持材(15)が設けられるとともに、
該補助支持材(15)の下端にはキャスタ(16)が備えられていることを特徴とする補助手摺装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記支持材(2),(3)及び上記補助支持材(15)が、共に高さ調整可能とされていることを特徴とする補助手摺装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、
上記可動手摺材(7)は、湾曲した平面形体をもち、表裏反転させて上記回動支点(9)に取付け得るように構成されていることを特徴とする補助手摺装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−5077(P2010−5077A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167111(P2008−167111)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(599117255)株式会社 シコク (28)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】