説明

製紙用薬剤およびその使用方法

【課題】近年における紙・板紙のリサイクルの比率が増加し古紙が製紙原料へ多量に混入してきている。またこれに伴いアニオントラッシュやピッチ・スティッキーの存在量も増加し、製紙用水の悪化も進んでいる。そのためワイヤー上の歩留率および紙質低下の方向に作用することは避けられない。このような状況下では既存のジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドの共通重合物によるカチオン当量と分子量の調節だけでは対応が難しくなってきている。従ってこれに替わる新しい組成の歩留向上剤、紙力増強剤あるいはピッチ障害を防止する成紙上の欠点発生防止剤を提供する。
【解決手段】下記式のカチオン性単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各構成単位を有する水溶性高分子からなる製紙用薬剤によって達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用薬剤およびその使用方法に関し、詳しくは特定の二種類のカチオン性単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各構成単位を有する水溶性高分子からなる製紙用薬剤に関する。また前記水溶性高分子を濾水性向上剤あるいは歩留向上剤、層間強度向上剤あるいは紙力増強剤あるいは製紙における欠点発生防止剤として用いた応用例、さらに濾水性向上剤あるいは歩留向上剤と他の薬剤とを併用した製紙方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙工程におけるワイヤー上の紙料および灰分の歩留まりを向上させることは、排水負荷の軽減、流失原料の削減による製造コストの低減、紙の二面性改善などの紙品質の向上、生産性の向上などから重要な意味を有している。そのため従来より歩留向上剤の開発研究も継続的に行われてきているが、その間、多様な水溶性高分子を応用した例が提案され、またジュアル処方として水溶性高分子との組み合わせとなる無機粒子や有機マイクロパーティクルも提案されている。
【0003】
一方、新聞印刷用紙の製造における近年の技術動向の一つとして、環境に対する意識の向上やコストダウンなどを背景とした、新聞印刷用紙への古紙配合率の増加を挙げることができる。この結果、製紙用水中には種々の溶存物質あるいは微細な粒子状物質が存在するようになる。これらの物質は、パルプ製造時に由来するものと、古紙製造時に由来するものとがある。すなわちパルプ製造時に由来するものとしては、リグニンスルホネート、リグニン分解生成物、木材抽出物、セルロース誘導体(例えば、ヘミセルロース)などである。また古紙製造時に由来するものとしては、サイジング剤、分散剤、染料、蛍光漂白剤、コーティングバインダー、湿潤剤、珪酸ナトリウムなどである。さらに導入する工業用水などにもフミン酸やカルシウム成分なども混入する。
【0004】
このうちアニオントラッシュと呼ばれる溶存性あるいは親水性のアニオン性成分、すなわちホワイト顔料、分散剤、改質でんぷん、カルボキシメチルセルロース、リグニンスルホネート、リグニン分解生成物、ヘミセルロースなどは、一般的な低分子量カチオン性水溶性高分子物質により処理することによって歩留率や濾水性はかなりの程度改善される。しかし水に溶解しない疎水的な成分は、人工的なものはスティッキー、木材など天然に由来するものはピッチと呼ばれ区別している。すなわちは木材抽出物、サイジング剤、あるいはコーティングバインダーなどは、微細なコロイド粒子として製紙原料中に分散している場合は、悪影響は少ない。しかしこれらのコロイドは表面電荷が低く、アニオン性に弱く解離している場合、あるいは解離もしていない場合もあり、基本的に不安定な物質である。したがって温度、シェア、pH、あるいはピッチ障害を抑制するために添加される有機や無機のカチオン性物質などによってコロイドが破壊され粗大化する。その結果、表面が粘着性を帯びているため電荷を調節しただけでは、それらが紙中に抄きこまれた場合、またワイヤー、フェルト、ローラーあるいはドライヤーの各表面に再付着し、一定以上の大きさに成長すると製造中の成紙に付着し、欠点などの障害を引き起こす。またこれら疎水的な成分は、カチオン性水溶性高分子物質により処理し、粒子系を粗大化させてしまうこともある。そうすると上記の障害はより顕著に発生し、カチオン性水溶性高分子物質などの処理剤が逆効果になる場合もあるので注意を要する。
【0005】
例えば特許文献1は、天然ピッチトラブル抑制のためジメチルジアリルアンモニウム塩化物/アクリル酸/(場合によっては、アクリル酸アルキルエステル類)共重合物を抄紙系のウェットエンドに添加する方法が開示されている。また、パルプ製造の漂白工程アルカリ抽出において、原料木材に由来するパルプ中のピッチを除去する方法として、水溶性の不飽和カルボン酸と疎水性単量体との共重合体を、漂白後のパルプスラリ−が次ぎのアルカリ抽出塔に入る前に添加することを開示している(特許文献2)。
【0006】
新聞用紙原料は、機械パルプや古紙を使用するため上記のようなピッチあるいはステイッキーの存在が多いため、新聞用紙は、10年ほど前までは酸性抄紙が常識的であった。ところが、この数年新聞古紙のリサイクル率がさらに上昇するにつれ、古紙中に広告用のチラシの比率が増加してきた。このチラシ中には填量料として炭酸カルシウムが大量に含有している。従来、新聞用紙を酸性で抄紙していた場合は、前記炭酸カルシウムを酸により中和した後、抄紙する工程を採用していた。しかし、炭酸カルシウムが多量なため、酸の使用量が非常に多く製造コストにも影響が出始めている。また、中和することにより、製紙原料スラリ−中に溶解塩類が多量に共存するようになり、紙の品質あるいは製紙工程においての影響が懸念される。このような状況に対応するため中性新聞印刷用紙の抄紙法として極限粘度法による重量平均分子量が1,500万以上のエマルション型のカチオン性ポリアクリルアミド系物質を紙料に添加した後、アニオン性水溶性高分子、コロイダルシリカおよびベントナイトから選択される一種以上を添加する方法が提案されている(特許文献3)。
【0007】
一方、紙力増強剤は通常、アニオン性と両性が使用されている。このうち、両性の紙力増強剤は、従来アクリルアミドとN、N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリレ−トあるいはN,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミドなどと(メタ)アクリル酸による共重合体が一般的に使用されてきた。また、これに架橋剤としてN、N−メチレンビスアクリルアミドなどが共重合され、さらに最近では、N,N−ジメチルアクリルアミドが共重合され特異な溶液物性を示す高分子からなる紙力増強剤が開発されている。紙力増強効果は、セルロ−ス分子中の水酸基と紙力増強剤中の水素結合力を有する側鎖との水素結合力に起因するものである。またこれに紙力増強剤として使用される高分子の分子量も効果に影響してくる。すなわち一定の分子量以上、即ち、数10万以上の分子量がないと紙力増強剤としての効果は顕著ではない。従来使用されてきたウェットエンドに添加される紙力増強剤の分子量は、数十万〜100万程度であり、これに前記の架橋性単量体が共重合されたタイプは、200万〜500万に及ぶ。また製紙プロセスの現状を見てみると、デンプン系紙力増強剤はコストその他のメリットから多くの製紙現場で使用され、これを前記のような分散重合タイプからなるアクリル系紙力増強剤に完全に置き換えることは、必ずしも得策ではないと考えられる。デンプン系紙力増強剤の定着効果を高めるため高分子量の分散型アクリル系紙力増強剤を併用する方法が提案されている(特許文献4)。またジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチルによる四級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド四級塩、イタコン酸かアクリル酸のどちらか一種およびアクリルアミドを共重合した両性高分子が濾水性あるいは歩留向上剤として使用されている例がある(特許文献5)。さらにジメチルアミノエチルアクリレート四級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド四級塩、イタコン酸、アクリル酸およびアクリルアミドを共重合した両性高分子の例があるが(特許文献6)、製紙用薬剤へ応用の記載はない。
【0008】
上記のように近年においては資源の節約、リサイクル意識の高まりにより紙・板紙のリサイクルの比率が増加し、古紙が製紙原料へ多量に混入してきている。
新聞用紙においては、従来の単なる古紙新聞紙が混入するだけでなく、チラシ類が選別されることなく混入する。チラシ類は、塗工紙である場合がほぼ全てであり、それに伴い炭酸カルシウム、顔料、糊料、ラテクッス類などが一緒に入り、更に古紙配合率増加に伴う用水悪化などは、ワイヤー上の歩留率および紙質低下の方向に作用することは避けられない。そのため既存のジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドの共通重合物によるカチオン当量と分子量の調節だけでは対応が難しくなってきている。従ってこれに替わる新しい組成の歩留向上剤、紙力増強剤あるいはピッチ障害を防止する成紙上の欠点発生防止剤など製紙用薬剤の開発が求められていた。
【0009】
【特許文献1】特開平4−241184号公報
【特許文献2】特開平11−256490号公報
【特許文献3】特開2006−214028号公報
【特許文献4】特開2007−217828号公報
【特許文献5】特開H8−225621号公報
【特許文献6】特開H8−164305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、古紙配合率が増加しても歩留が低下せず、紙質向上が期待できる新しい組成の製紙用薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、以下に述べるような発明に到達した。すなわち請求項1の発明は、下記一般式(1)で表される単量体、一般式(2)で表される単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各構成単位を有する製紙用薬剤である。
【化1】


一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、
は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【0012】
請求項2の発明は、前記水溶性高分子が、前記一般式(1)で表される単量体が2〜40モル%、前記一般式(2)で表される単量体が2〜50モル%、イタコン酸1〜30モル%、(メタ)アクリル酸1〜30モル%、(メタ)アクリルアミド0〜94モル%の各構成単位からなる濾水性向上剤あるいは歩留向上剤である。
【0013】
請求項3の発明は、前記一般式(1)で表される単量体2〜10モル%、前記一般式(2)で表される単量体2〜10モル%、イタコン酸1〜20モル%、(メタ)アクリル酸1〜20モル%、(メタ)アクリルアミド40〜94モル%の各構成単位からなる層間強度向上剤あるいは紙力増強剤である。
【0014】
請求項4の発明は、前記一般式(1)で表される単量体2〜30モル%、前記一般式(2)で表される単量体2〜50モル%、イタコン酸1〜10モル%、(メタ)アクリル酸1〜10モル%、(メタ)アクリルアミド0〜94モル%の各構成単位からなる製紙における欠点発生防止剤である。
【0015】
請求項5の発明は、下記一般式(1)で表される単量体、下記一般式(2)で表される単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各単量体を重合した水溶性高分子からなる製紙用薬剤と、下記一般式(3)で表わされる単量体から選択される一種以上と(メタ)アクリルアミドとの共重合体、コロイダルシリカおよびベントナイトから選択される一種以上とを併用し、抄紙前の製紙原料中に添加し抄紙することを特徴とする製紙方法。


【化1】


一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】


一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、
は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0016】
請求項6の発明は、前記製紙原料が中性新聞用紙のものであることを特徴とする請求項5に記載の製紙方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製紙用薬剤は、(メタ)アクリル系四級アンモニウム塩、ベンジル基を有する(メタ)アクリル系四級アンモニウム塩、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各構成単位を有する水溶性高分子からなる。その結果、通常の四級アンモニウム塩基と疎水基を有する四級アンモニウム塩基、通常のアニオン性単量体と二個のアニオン性基を有する単量体の各構成単位が分子中に存在するため、古紙配合率の上昇している今日の製紙原料事情にも対応し、優れた歩留性能、紙力増強性能、製紙における欠点発生防止性能などを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の製紙用薬剤は、下記一般式(1)で表される単量体、一般式(2)で表される単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各構成単位を有する水溶性高分子からなる。初めに重合構成に必要な単量体に関して説明する。
【0019】
下記一般式(1)で表される単量体は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルやジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの塩化ベンジルによる四級化物である。すなわち具体的な例を列記すれば(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルベンジルジエチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルベンジルジエチルアンモニウム塩化物などである。
【化1】

一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【0020】
下記一般式(2)で表される単量体は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノエチルやジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの塩化ベンジルによる四級化物である。すなわち具体的な例を列記すれば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウム塩化物などである。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、
は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【0021】
水溶性高分子を構成するその他の単量体は、イタコン酸、アクリル酸およびメタアクリル酸のうち一種、アクリルアミドおよびメタアクリルアミドのうち一種である。
【0022】
水溶性高分子を構成する各単量体の共重合比は、使用する製紙薬剤の用途によって適宜決めていく必要がある。すなわち濾水性向上剤あるいは歩留向上剤の場合は、比較的中カチオン量域から低カチオン量域が好ましく、上記一般式(1)で表される単量体が2〜20モル%、上記一般式(2)で表される単量体が2〜40モル%、イタコン酸1〜15モル%、(メタ)アクリル酸1〜15モル%、(メタ)アクリルアミド10〜94モル%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは上記一般式(1)で表される単量体が2〜10モル%、上記一般式(2)で表される単量体が5〜30モル%、イタコン酸1〜5モル%、(メタ)アクリル酸1〜10モル%、(メタ)アクリルアミド45〜91モル%の範囲である。これら濾水性向上剤あるいは歩留向上剤の分子量は、重量平均分子量で500万〜3000万であり、好ましくは700万〜3000万である。
【0023】
また層間強度向上剤あるいは紙力増強剤の場合は、比較的低カチオン量域が好ましく、上記一般式(1)で表される単量体2〜10モル%、上記一般式(2)で表される単量体2〜10モル%、イタコン酸1〜20モル%、(メタ)アクリル酸1〜20モル%、(メタ)アクリルアミド40〜94モル%であることが好ましい。またさらに好ましくは上記一般式(1)で表される単量体が2〜5モル%、上記一般式(2)で表される単量体が2〜8モル%、イタコン酸1〜5モル%、(メタ)アクリル酸1〜8モル%、(メタ)アクリルアミド74〜94モル%である。これら層間強度向上剤あるいは紙力増強剤の分子量は、重量平均分子量で150万〜1000万であり、好ましくは150万〜700万である。
【0024】
更に製紙における欠点発生防止剤の場合は、欠点発生の原因となるアニオントラッシュやピッチ類の性質によってイオン性は、高い領域から低い領域まで様々であり、その結果、上記一般式(1)で表される単量体2〜20モル%、上記一般式(2)で表される単量体2〜50モル%、イタコン酸1〜10モル%、(メタ)アクリル酸1〜10モル%、(メタ)アクリルアミド10〜94モル%である。また更に好ましくは、上記一般式(1)で表される単量体2〜15モル%、上記一般式(2)で表される単量体2〜50モル%、イタコン酸1〜8モル%、(メタ)アクリル酸1〜8モル%、(メタ)アクリルアミド19〜94モル%である。これら製紙における欠点発生防止剤の分子量は、重量平均分子量で10万〜1000万であり、好ましくは20万〜500万である。
【0025】
製品形態としては、粉末、油中水型エマルジョン重合物、塩水中分散重合物などのような製品でも使用可能であるが、濾水性向上剤あるいは歩留向上剤の場合は、溶解性や乾燥工程の必要がない油中水型エマルジョン重合物および塩水中分散重合物が最も使用に適している。一方、層間強度向上剤あるいは紙力増強剤の場合は、添加量が比較的高いので水溶液品が適しているが、塩水中分散重合物も好ましく使用可能である。また製紙における欠点発生防止剤の場合は、
油中水型エマルジョン重合物、塩水中分散重合物および水溶液品が使用できる。
【0026】
塩水溶液中における分散重合物は、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び(メタ)アクリルアミドからなる単量体混合物を、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性高分子からなる分散剤共存下で分散重合法により製造することができる。塩水溶液中で該塩水溶液に可溶なイオン性あるいは非イオン性水溶性高分子からなる分散剤共存下で、攪拌しながら製造された粒系100mμ以下の高分子微粒子の分散液を製造する。イオン性高分子からなる分散剤は、例えばアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物の重合体、非イオン性単量体と前記アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物との共重合体などを使用する。非イオン性高分子からなる分散剤は、例えばN−ビニルピロリドンの重合体などが使用できる。分子量は重量平均分子量で1万〜200万程度のものを使用する。
【0027】
塩水溶液を構成する無機塩類は、多価アニオン塩類が、より好ましく、硫酸塩又は燐酸塩が適当であり、具体的には、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等を例示することができ、これらの塩を濃度15%以上の水溶液として用いることが好ましい。このなかに前記単量体類を溶解させ、さらにイオン性高分子からなる分散剤を共存させ、pHを2〜5に調製した後、窒素置換後、重合開始剤によって重合を開始させる。
【0028】
重合濃度としては、単量体濃度として15重量%〜35重量%であるが、好ましくは20重量%〜30重量%である。単量体供給方法としては、重合開始持、一括でも良いし、適宜分割して供給しても良い。
【0029】
油中水型エマルジョン重合法は、単量体あるいは共重合可能な二種以上の単量体からなる単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型分散液を形成させた後、重合することにより合成する方法である。
【0030】
分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型分散液全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜40質量%の範囲である。
【0031】
油中水型分散液を形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB3〜13のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、油溶性界面活性剤のソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。またノニオン性水溶性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系などである。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレートなどである。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0032】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面化成剤を添加して油の膜で被われた分散粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を必要に応じて行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面化成剤の例としては、カチオン性界面化成剤やHLB9〜15のノニオン性界面化成剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0033】
本発明の水溶性高分子を層間強度向上剤あるいは紙力増強剤として使用することができる。今日のように資源の節約、リサイクル意識の高まりにより紙・板紙のリサイクルの比率が増加し、古紙が製紙原料へ多量に混入してきている状況下においても、従来の単なる古紙新聞紙が混入するだけでなく、チラシ類が選別されることなく混入する。チラシ類は、塗工紙である場合がほぼ全てであり、それに伴い炭酸カルシウム、顔料、糊料、ラテクッス類などが一緒に入り、更に古紙配合率増加に伴う用水悪化などは、ワイヤー上の歩留率および紙質低下の方向に作用することは避けられない。このような製紙状況においても優れた紙力増強効果や層間強度向上を発揮することが可能である。製紙原料の乾燥固形分に対する添加量は、0.1〜0.5質量%程度添加するのが目安となる。製紙原料の種類としては、層間強度向上の場合はライナ−、中芯原紙、白ボールなど板紙の他、洋紙にも適用できる。抄紙pHは、酸性からアルカリ性の3〜10でも単量体組成、あるいは分子量を調節することで対応することが可能である。
【0034】
製紙における欠点防止処理は、以下のように処理することが可能である。すなわち古紙の配合率の高まりによって、アニオントラッシュと呼ばれる溶存性あるいは親水性のアニオン性成分、すなわちホワイト顔料、分散剤、改質でんぷん、カルボキシメチルセルロース、リグニンスルホネート、リグニン分解生成物、ヘミセルロースなどの混入量が増加しているが、これらは低分子量カチオン性水溶性高分子物質により処理することによって歩留率や濾水性はかなりの程度改善される。これらに対応させるためには、本発明の水溶性高分子の分子量を1万〜100万程度にし、イオン量は上記一般式(1)あるいは上記一般式(2)で表わされる単量体の共重合率を高く設定することにより、顕著な効果を発揮するものを合成することができる。また水に溶解しない疎水的な成分ピッチあるいはスティッキーは、上記一般式(1)で表わされる単量体の共重合率を調節し、イオン量も低めに設定することにより対応させることが可能である。製紙原料の乾燥固形分に対する添加量は、0.05〜0.2質量%程度添加するのが目安となる。製紙工程における添加場所は、古紙やその他のパルプを配合する原料チェストや配合チェストの配管入り口や出口が最適であるが、他の製紙薬剤が添加されるマシンチェストや種箱でも効果がある。
【0035】
上記のように近年においては資源の節約、リサイクル意識の高まりにより紙・板紙のリサイクルの比率が増加し、古紙が製紙原料へ多量に混入してきている。
新聞用紙においては、従来の単なる古紙新聞紙が混入するだけでなく、チラシ類が選別されることなく混入する。チラシ類は、塗工紙である場合がほぼ全てであり、それに伴い炭酸カルシウム、顔料、糊料、ラテクッス類などが一緒に入り、更に古紙配合率増加に伴う用水悪化などは、ワイヤー上の歩留率および紙質低下の方向に作用することは避けられない。本発明の水溶性高分子によって、このような製紙原料および製紙用水の悪化にも対応できる層間強度向上剤あるいは紙力増強剤を製造することができる。そのため既存のジメチルアミノエチルメタアクリレート三級塩、アクリル酸とアクリルアミドの共重合物に替わり、ジメチルアミノエチルアクリレート四級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートのベンジルクロライド四級化物、アクリル酸、イタコン酸、アクリルアミドの共重合物の特別なイオン的効果によって古紙の配合率の増加や、アニオントラッシュなど薬剤の定着に妨げとなる不純物の存在下でも高い紙力増強を発現する製紙薬剤が製造可能である。
【0036】
本発明の水溶性高分子からなる製紙用薬剤の適用される紙製品としては、一般の印刷用紙、包装用紙、ダンボ−ル用ライナ−や中芯原紙などいずれでも使用可能である。また抄紙pHとしては、3〜9など酸性から中性・アルカリ抄紙である。
【0037】
(実施例) 以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0038】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン115gにポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート10.0gを仕込み溶解させた。別にアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(以下DMQと略記)80%水溶液82.2g、アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物80%水溶液(以下DMBCと略記)52.8g、イタコン酸(IAと略記)6.7g、アクリル酸6.1g(AACと略記)、アクリルアミド(AAMと略記)50%水溶液149.6g、およびイオン交換水67.6gを各々混合し完全に溶解させた。その後油と水溶液を混合し、ホモジナイザーにて1000rpmで15分間攪拌乳化した。この時の単量体組成は、DMQ/DMBC/IA/AAC/AAM=20/10/3/5/62(モル%)である。得られたエマルジョンを単量体溶液の温度を40〜43℃に保ち、窒素置換を30分行なった後、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.02g(対単量体0.01質量%)を加え、重合反応を開始させた。反応温度を42±2℃で12時間重合させ反応を完結させた。その後、転相剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート10g(液総量に対し10質量%となるように添加)を添加した。転相剤添加後の油中水型エマルジョン粘度は、280mPa・sであり、動的光散乱法による重量平均分子量は、1800万であった。これを試料−1とする。同様な操作によって表1に記載する組成により試料−2〜試料−3を合成した。結果を表1に示す。
【0039】
(合成例2)重合時にメチレンビスアクリルアミド0.1%水溶液0.4g(対単量体0.0002質量%)およびイソプロピルアルコール0.1g(対単量体0.05質量%)を添加した他は試料−1と同様な操作により試料−4を合成した。結果を表1に示す。
【0040】
(合成例3)
アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物80%水溶液10.3g、アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物80%水溶液6.6g、イタコン酸1.9g、アクリル酸2.0g、アクリルアミド50%水溶液85.6gおよびイオン交換水190gを各々混合し、完全に溶解させ単量体として20質量%水溶液を調製した。この時の単量体組成は、DMQ/DMBC/IA/AAC/AAM=6/3/2/4/85(モル%)である。これにイソプロピルアルコール0.09g(対単量体0.15質量%)を添加し、40℃一定で2,2−アゾビスアミジノプロパン2塩化水素化物を開始剤として水溶液重合品試料−5を合成した。水溶液粘度は8100mPa・sであり、動的光散乱法による重量平均分子量は、250万であった。結果を表1に示す。
【0041】
(合成例4)
合成例3と同様な操作により表1に記載する組成により試料−6〜試料−10を合成した。結果を表1に示す。
【0042】
(合成例5)攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素導入管を備えた4つ口500mlセパラブルフラスコに脱イオン水:73.3g、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物80%水溶液5.3g、アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウム塩化物80%水溶液4.6g、イタコン酸4.8g、アクリル酸5.3g、アクリルアミド50%水溶液84.0g、硫酸アンモニウム75g、分散剤として20質量%水溶液のアクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸重合体(分子量:20万、20当量%中和物)24.0g(対単量体8.0質量%)を各々混合し、完全に溶解させた。この時の単量体組成は、DMQ/DMBC/IA/AAC/AAM=3/2/5/10/80(モル%)である。その後、攪拌しながら窒素導入管より窒素を導入し溶存酸素の除去を行う。この間恒温水槽により25℃に内部温度を調整する。窒素導入30分後、0.2質量%のペルオキソニ硫酸アンモニウム及び亜硫酸水素アンモニウムの0.2質量%水溶液をそれぞれこの順で2.5g(対単量体、40ppm)添加し重合を開始させた。開始剤添加2時間後、反応物液の粘性が、やや上昇したがそれ以上増加せず、重合開始後8時間たったところで前記開始剤をそれぞれ同量追加し、さらに15時間重合を継続させ反応を終了した。この試作品を試料−11とする。この試料−11の粘度は270mPa・sであり、動的光散乱法による重量平均分子量は、240万であった。
なお、顕微鏡観察の結果、2〜20μmの粒子であることが判明した。組成を表1に示す。
【0043】
(合成例6)合成例5と同様な操作で試料−12〜試料−14を合成した。組成を表1に示す。
【0044】
(表1)

各単量体組成はモル%、MBA;メチレンビスアクリルアミドは、単量体総量に対する質量%、反応物粘度;mPa・s、分子量;単位は万、形態;EM:油中水型エマルジョン、AQ:水溶液、DI:塩水中分散液
【実施例1】
【0045】
新聞用紙製造用の製紙原料(pH7.68、全SS分4.52質量%、灰分0.30質量%)を用い、パルプ濃度0.8質量%に水道水を用いて希釈、ブリット式ダイナミックジャ−テスタ−により歩留率を測定した。添加薬品として、炭酸カルシウム対製紙原料8質量%(以下同様)、本発明の高分子量水溶性重合体を含有する分散液(試料−1〜試料−4)0.03質量%をそれぞれこの順に15秒間隔で添加し、攪拌を開始する。製紙原料の薬剤添加後のpHは、8.02であった。30秒後に10秒間白水を排出し、30秒間白水を採取し、下記条件で総歩留率を測定した。攪拌条件は、回転数1200rpm、ワイヤー125Pスクリーン(200メッシュ相当)、総歩留率(SS濃度)はADVANTEC NO.2にて濾過し測定した。また乾燥後、濾紙を525℃で焼却し灰分を測定し、歩留率を算出した。測定結果を表2に示す。
【0046】
(比較試験1)同様な試験を比較−1〜比較−3に関し実施した。結果を表2に示す。
【0047】
(表2)

添加量;対製紙原料(%)、総歩留率;質量%、灰分歩留率;質量%
【実施例2】
【0048】
上質紙製造用の製紙原料(pH6.09、全SS分3.5質量%、灰分0.45質量%)を用いてパルプ濃度0.8質量%に水道水を用いて希釈、ブリット式ダイナミックジャ−テスタ−により歩留率を測定した。添加薬品として、両性変性デンプン対製紙原料0.5質量%(以下同様)、炭酸カルシウム30質量%、中性ロジンサイズ0.20質量%、硫酸バンド1.0質量%、本発明の両性水溶性高分子(試料−1〜試料−4)0.02質量%、製紙用ベントナイト0.1質量%、あるいはアニオン性水溶性高分子(試料−14)0.02質量%をそれぞれこの順に15秒間隔で添加し、攪拌を開始する。薬剤添加後の製紙原料pHは、7.02であった。30秒後に10秒間白水を排出し、30秒間白水を採取し、下記条件で総歩留率を測定した。攪拌条件は、回転数1200rpm、ワイヤー125Pスクリーン(200メッシュ相当)、総歩留率(SS濃度)はADVANTEC NO.2にて濾過し測定した。また乾燥後、濾紙を525℃で焼却し灰分を測定し、歩留率を算出した。測定結果を表3に示す。
【0049】
(比較試験2)同様な試験を比較−1〜比較−3に関し実施した。結果を表3に示す。

【0050】
(表3)

添加量;対製紙原料(%)、総歩留率;質量%、灰分歩留率;質量%
BT;ベントナイト、AP;
【実施例3】
【0051】
ダンボ−ルのライナー用原料(pH5.50、全ss3.8%、灰分0.18%)を用い、パルプ濃度0.7重量%に水道水を用いて希釈した。この製紙原料を用い100g/mの紙を抄いた。添加薬品として、ロジンサイズ0.15%(対乾燥パルプ、以下同様)、硫酸バンド2.5%、紙力増強剤として表1の試料−5〜試料−7、0.25%、および歩留向上剤としてポリアクリルアミド系高分子凝集剤(カチオン性アクリルエステル系共重合物、重量平均分子量1500万)0.015%をそれぞれこの順で、攪拌機により300rpmで攪拌しながら15秒間隔により添加した後、タッピスタンダ−ド抄紙機により抄紙した。薬品添加後の製紙原料pHは、4.33であった。得られた湿紙を3.5Kg/mで5分間プレスし、100℃で2分間乾燥した。その後、20℃、65RHの条件で調湿し、引っ張り強度を測定後、裂断長を算出し(JIS−P8113)、また灰分含有率(800℃、1時間強熱残さ)を測定した。結果を表4に示す。
【0052】
(比較試験3)同様な試験を比較−6(市販両性紙力増強剤;ポリアクリルアミド系、カチオン化度;6モル%、アニオン化度8モル%、重量平均分子量150万)、比較−7(アクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸共重合物の組成がそれぞれ86モル%、9モル%、5モル%、重量平均分子量200万)に関し同様な操作によって実施した。結果を表4に示す。
【0053】
(表4)

紙中灰分(%)、サイズ度(ステキヒスト、秒)、裂断長(Km)
【実施例4】
【0054】
ダンボール古紙をパルパーにより離解後、ナイヤガラ式ビ−タ−にて叩解し、カナディアンスタンダ−ドフリーネスC.F.S=400mlに調整した。この分散液に液体硫酸バンド2.5%添加しpHを4.3に調節した。その後、市販の両性紙力増強剤(ポリアクリルアミド系、カチオン化度;6モル%、アニオン化度8モル%、重量平均分子量150万)を対パルプ0.15%添加して攪拌し均一に混合した。得られたパルプスラリ−を0.5%に希釈し、抄紙pHを測定した後、タッピスタンダ−ドシ−トマシン(1/16m)に1L入れ乾燥坪量80g/mの紙を抄紙した。ワイヤ−上のウェットシ−トに濾紙、ク−チプレ−トを乗せク−チロ−ル3回かけ湿紙を濾紙に転写した。これをA層とした。次いで同様に乾燥坪量80g/mの紙を抄紙し、ワイヤ−にのせたまま湿紙を直示天秤にて、試作−11〜試作−13を表5に記載した所定の希釈濃度に希釈した分散液を圧力2.5気圧で10.0gノズルよりスプレ−塗布した。これをB層とした。
【0055】
A層を濾紙がついたままB層に合わせ、その後濾紙を剥がした。これをワイヤ−ごとシ−トマシンに戻し、シ−トマシンに水を張りワイヤ−の下まで満たした水を排水することにより減圧脱水し、新たに濾紙を乗せ、ク−チロ−ルを3回かけ濾紙に転写させた。転写した湿紙を2枚の濾紙に挟み、3kg/mの圧力で5分間プレス後、ロ−タリ−ドライヤ−で乾燥させて抄き合わせ紙をえた。得られた抄き合わせ紙を調湿後J−TAPPI紙パルプ試験法NO.19−77に従って、T字剥離強さ(gf/5cm)を測定した。結果を表5に示す。
【0056】
(比較試験4)
実施例4と同様な操作によって、比較−4(表1の塩水中分散重合物)、比較−8(水溶液重合物;アクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸共重合物の組成がそれぞれ86モル%、9モル%、5モル%、重量平均分子量200万)比較−9(馬鈴薯澱粉)につき試験した。結果を表5に示す。
【0057】
(表5)


塗布濃度:質量%、塗布量:g/m、T字剥離強さ:(gf/5cm)
【実施例5】
【0058】
ライナー原紙用製紙原料(pH6.52、ワットマン濾紙No.41による濾過後の乾燥固形分3.66質量%)を用い、製紙における欠点発生防止剤の試験を行った。すなわち下記表1の水溶性高分子試料―8〜試料―10を乾燥製紙原料当たり0.03質量%添加し60秒攪拌した後、製紙現場より採取した白水(pH5.30、乾燥固形分0.21質量%)により希釈し(希釈後の濃度1.0質量%)60秒間攪拌した。その後ワットマン濾紙No.41により濾過し、濾液の濁度をHACH社製2100P型により、アニオントラッシュのカチオン要求量をBTG社製PCD−03型により測定した。
【0059】
またマイクロピッチの測定は、白水を混合し水溶性高分子で処理した製紙原料を、ワットマン濾紙No.41で濾過し、その濾液を厚さ0.2mmのカウンティングチェンバー(ヘマサイトメーター)上に採取し、光学顕微鏡1200倍で観察した。ピントを垂直方向にずらしていきながら静止画を複数枚撮影した。カウンティングチェンバー上の異なる5箇所以上で同様の操作を繰り返した。画像処理ソフト(Media Cybernetics,inc. IMAGE−PRO PLUS Ver.5.0 を用い、顕微鏡画像の静止画を取込み、RGB値のレンジ設定をR値(0−190)G値(0−130)B値(0−156)に調整することにより、目的とする粒子を抽出した。その抽出した粒子について、個数を測定した。
【0060】
さらにマイクロピッチが凝集し粗大化した成紙の欠陥となり得る粘着物の測定は、以下のように行った。すなわち白水を混合し水溶性高分子で処理した製紙原料を、直径90mmの円形濾紙(ワットマンNo.41、20〜25μm以上の粒子保持する)で5分間濾過し、濾過後の原料から濾紙を剥がし、剥がしたウェットシートを使用する。測定面は、剥がしたウェットシートの濾紙に面していない側の面とする。濾過量は、直径90mmの大きさで坪量150g/mになるように、対象原料の濃度を計算して採取する。このウェットシートを濾紙に面していない側を測定面とし、SUS板に張り合わせ、上の粘着物を媒体に転写する。この際、ウェットシートのSUS板(厚さ0.1mm)に張り付けた面と反対面に厚手の濾紙を合わせ、プレス機にセットし、410KPa、5分間加圧する。
【0061】
次にウェットシートを張り付けたSUS板をロータリードライヤーにセットし、105℃で6分間加熱する。この際、ロータリードライヤーのシリンダー側にSUS板を、フェルト側は転写されたウェットシート側をセットする。
【0062】
加熱後、SUS板上のウェットシートからの付着面(直径90mm)中の任意の箇所20箇所を選択し、実体顕微鏡を用いてデジタルカメラで撮影し、画像としてコンピュータに保存する。その後、マイクロピッチを測定した場合と同様の画像処理ソフトを用い、RGB値のレンジ設定を調整することにより、目的とする粒子を抽出した。抽出した付着物の中から、大きさ、長短半径比、穴数、穴面積の最適条件下で再度抽出し、繊維分や他の付着物と、粘着性ピッチを判別する。その抽出した粒子について、粘着性ピッチ総面積、総個数を測定し、1mあたりに換算した。以上の結果を表6に示す。
【0063】
(比較試験5)
実施例5と同様に表1の比較−5、比較−10(ジメチルアミン/ポリアミン/エピクロロヒドリン重縮合物、重量平均分子量12,000)、比較−11(ポリエチレンイミン(重量平均分子量50,000)、比較−12(N−ビニルホルムアミド重合物の塩酸加水分解物、アミノ化率70モル%、重量平均分子量1,200,000)に関して試験を実施した。結果を表6に示す。
【0064】
(表6)
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体、一般式(2)で表される単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各単量体を重合した水溶性高分子からなる製紙用薬剤。
【化1】


一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】

一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、
は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【請求項2】
前記製紙用薬剤が、前記一般式(1)で表される単量体が2〜40モル%、前記一般式(2)で表される単量体が2〜50モル%、イタコン酸1〜30モル%、(メタ)アクリル酸1〜30モル%、(メタ)アクリルアミド0〜94モル%の各単量体を重合した水溶性高分子からなる濾水性向上剤あるいは歩留向上剤。
【請求項3】
前記製紙用薬剤が、前記一般式(1)で表される単量体2〜10モル%、前記一般式(2)で表される単量体2〜10モル%、イタコン酸1〜20モル%、(メタ)アクリル酸1〜20モル%、(メタ)アクリルアミド40〜94モル%の各単量体を重合した水溶性高分子からなる層間強度向上剤あるいは紙力増強剤。
【請求項4】
前記製紙用薬剤が、前記一般式(1)で表される単量体2〜30モル%、前記一般式(2)で表される単量体2〜50モル%、イタコン酸1〜10モル%、(メタ)アクリル酸1〜10モル%、(メタ)アクリルアミド0〜94モル%の各単量体を重合した水溶性高分子からなる製紙における欠点発生防止剤。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される単量体、一般式(2)で表される単量体、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドの各単量体を重合した水溶性高分子からなる製紙用薬剤と、下記一般式(3)で表わされる単量体から選択される一種以上と(メタ)アクリルアミドとの共重合体、コロイダルシリカおよびベントナイトから選択される一種以上とを併用し、抄紙前の製紙原料中に添加し抄紙することを特徴とする製紙方法。
【化1】


一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはアルコキシル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化2】


一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基であり、同種でも異種でも良い。AはOまたはNH、
は炭素数2〜4のアルキレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表す。
【化3】

一般式(3)
は水素またはCHCOOY、QはSO、CSO
CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素、メチル基またはCOOYであり、Y、Yは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【請求項6】
前記製紙原料が中性新聞用紙のものであることを特徴とする請求項5に記載の製紙方法。










【公開番号】特開2010−77567(P2010−77567A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249381(P2008−249381)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】