説明

複合フィルムの製造方法

ポリイミド−粘土鉱物複合フィルムの製造方法は、(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる工程と、(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させる工程と、(C)前記(A)工程で得られた溶液と、前記(B)工程で得られた分散液とを相溶させて混合溶液とする工程と、(D)前記(C)で得られた混合溶液を、基材上に展開し、溶媒を乾燥させてフィルム化する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、力学的強度、熱的性質及び電気的性質が優れているため、フィルム、回路基板絶縁樹脂層などの用途として、電気・電子機器類等の分野で広く使用されている。今後も耐熱性が要求される分野へ幅広く用いられることが期待され、優れたポリイミドが開発されている。
【0003】
たとえば、プリント配線板を使用した電子機器が小型化、高機能化、高密度化されるに伴い、部品・素子の高密度実装が可能なポリイミドフィルムの回路用基板材料としての利用が増大している。特に、電子材料用途としては、熱、水に対する寸法安定性や高透明性による作業性の向上が望まれている。
【0004】
従来、ポリイミドの熱特性、機械特性を向上させるため、ポリイミドに無機物を添加することが知られている。しかしながら、粘土鉱物などの無機物をそのままポリイミドに添加する場合、粘土鉱物とポリイミドとの親和性が低いことから、粘土鉱物がポリイミド中に均一に分散せず、ポリイミドの特性が向上しないなどの問題があった。
【0005】
特許文献1には、熱可塑性ポリイミドを含む熱可塑性樹脂に対し、あらかじめ化学修飾(有機化)をして樹脂との親和性を高めた層状珪酸塩を添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
しかし、有機化処理された粘土鉱物は、耐熱性の低いアルキルアンモニウムを含んでいるため、ポリイミドフィルムの耐熱性、機械特性が低下し、変色の原因となっていた。
そこで、このような問題を解決するために、特許文献2には、有機化しないで、粘土鉱物とポリイミド樹脂を組み合わせてなるポリイミド複合材が開示されている。
【特許文献1】特開2006−57099号公報
【特許文献2】特開2000−302867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載のポリイミド複合材は、フィルムとして用いた場合、良好に作業を行うため透明性の向上が望まれる一方で、耐熱性に優れ高温時の弾性率が高いことが要求されため、透明性と弾性率との両立の点で課題を残していた。
【0008】
本発明の目的は、透明性と弾性率との両立に優れた複合フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる工程と、(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させる工程と、(C)前記(A)工程で得られた溶液と、前記(B)工程で得られた分散液とを相溶させて混合溶液とする工程と、(D)前記(C)で得られた混合溶液を、基材上に展開し、溶媒を乾燥させてフィルム化する工程と、を有することを特徴とする複合フィルムの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、透明性と高温時弾性率との両立に優れた複合フィルムの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施形態における複合フィルムの製造方法の概要について説明する。
本実施形態における複合フィルムの製造方法は、以下の工程を含む。
(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる工程
(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させる工程
(C)前記(A)工程で得られた溶液と、前記(B)工程で得られた分散液とを相溶させて混合溶液とする工程
(D)前記(C)で得られた混合溶液を、基材上に展開し、溶媒を乾燥させてフィルム化する工程
【0013】
次に、工程(A)〜(D)について詳細に説明する。
【0014】
(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる工程
ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる。溶解する方法は、特に限定されず公知の方法で行うことができる。
【0015】
第一の溶媒とは、ポリイミド前駆体を溶解する溶媒であり、かつ第二の溶媒と溶解する溶媒である。また、第一の溶媒に含まれる官能基とポリイミド前駆体とが反応しない溶媒が好ましい。第一の溶媒としては、塩基性溶媒を用いることができる。たとえば、3級アミンが好ましく、ピリジン、トリアルキルアミン、β−ピコリン、アルキルピペリジンなどが挙げられる。これらを1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させる工程
有機化処理とは、粘土鉱物の層間に含まれる金属カチオンを有機化合物に交換する化学処理を粘土鉱物に施し、樹脂との親和性を高め、溶液中での粘土鉱物同士の凝集を防止して樹脂中に粘土鉱物を均一に分散させるための処理をいう。たとえば、粘土鉱物に含まれるナトリウムイオンなどをアルキルアンモニウムで置換する処理などが挙げられる。有機化処理をしていない粘土鉱物とは、このような処理を施していない粘土鉱物である。こうすることにより、耐熱性、弾性率が良好なフィルムを得ることができる。
【0017】
第二の溶媒とは、有機化処理をしていない粘土鉱物を分散する溶媒であり、かつ第一の溶媒と溶解する溶媒である。第二の溶媒としては、水を用いることができる。
【0018】
分散とは、粘土鉱物の間に溶媒分子が入り込み、粘土鉱物が溶媒中に均一に散在していることをいう。分散方法は、特に限定されないが、たとえば、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、ホモジナイザーなどを用いて溶液を攪拌する方法などが挙げられる。
【0019】
(C)前記(A)工程で得られた溶液と、前記(B)工程で得られた分散液とを相溶させて混合溶液とする工程
混合溶液とは、(A)工程で得られた溶液と、(B)工程で得られた分散液とが相溶して均一に混ざり合った溶液をいう。ポリイミド前駆体は溶液中に溶解した状態が保たれ、また粘土鉱物は凝集せず溶液中に均一に分散した状態が保たれている。こうすることにより、粘土鉱物がポリイミド中に均一に分散することができる。
【0020】
本実施形態においては、(A)工程で得られた溶液と(B)工程で得られた分散液とを別々に調製するため、溶媒の選択や調製時間などの条件の自由度が向上し、調製条件を最適化することができる。これにより、混合溶液の分散安定性を向上させることができる。
(A)工程と(B)工程の順序はとくに限定されず、(A)工程の後に(B)工程を行ってもよく、また(B)工程の後に(A)工程を行ってもよい。また、(A)工程と(B)工程は同時に行ってもよい。
【0021】
(D)前記(C)で得られた混合溶液を、基材上に展開し、溶媒を乾燥させてフィルム化する工程
フィルム化する方法は、特に限定されず、公知の方法で行うことができる。混合溶液を基材上に展開し、溶媒を乾燥させることにより、一定の膜厚のフィルムが得られればよい。混合溶液の濃度、溶媒の種類などにより、公知の方法を適宜選択して利用できる。
(D)工程のあと、さらに、熱処理をしてもよい。加熱温度は、特に限定されないが、100℃〜500℃で行われる。脱水イミド化により、ポリイミドを含む複合フィルムを得ることができる。
【0022】
基材の種類は、特に限定されないが、たとえば、ガラス、金属、プラスチックなどが挙げられる。また乾燥には、特に限定されず、たとえば、送風、熱風、熱窒素、遠赤外線および高周波等による公知の方法を用いることができる。
【0023】
本発明において、ポリイミド前駆体としては、特に制限はなく、公知のジアミン化合物と酸二無水物とを用いて合成されたポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体を使用することができる。
【0024】
ポリイミド前駆体は、一種以上のジアミン化合物と一種以上のテトラカルボン酸二無水物とから合成されたポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体を含むことが好ましい。
【0025】
本発明において、ポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体の原料として用いられるジアミン化合物としては、例えば、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3−ジアミノベンゾフェノン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、5,7−ジアミノ−1,1,4,6−テトラメチルインダイン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(4−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−メチルベンゼン、1,3−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2−エチルベンゼン、1,3−ビス(3−(2−アミノフェノキシ)フェノキシ)−5−sec−ブチルベンゼン、1,3−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジメチルベンゼン、1,3−ビス(4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(2−アミノ−6−エチルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(3−アミノフェノキシ)−4−メチルフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−(4−アミノフェノキシ)−4−tert−ブチルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,5−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,4−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−2,3−ジメチルベンゼン、1,4−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,2−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)−4−メチルベンゼン、1,2−ビス(3−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)−3−n−ブチルベンゼン、1,2−ビス(3−(2−アミノ−3−プロピルフェノキシ)フェノキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
これらのジアミン化合物を、一種または二種以上使用しても良い。
【0026】
また、ジアミン化合物の少なくとも一つとして、下記一般式(1)
【化1】


(式(1)中、X、Xはそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、Yはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、nは0〜8の整数を表す)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0027】
とくに、ジアミン化合物の少なくとも一つが、下記一般式(2)
【化2】


で表される化合物を用いることが好ましい。
【0028】
さらに、二種以上使用する場合には、少なくとも一種以上が、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれることがより好ましい。
【0029】
本発明において、ポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体の原料として用いられる酸二無水物としては、特に制限はなく、公知のものが使用可能である。
【0030】
酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4'−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0031】
これらの中から、テトラカルボン酸二無水物を一種または二種以上使用しても良い。テトラカルボン酸二無水物として、特に、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物の反応モル比は、通常、0.75〜1.25の範囲である。
【0032】
本発明においては、ポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体に、その目的に応じて他のいかなる成分を含有しても構わない。
【0033】
粘土鉱物としては、特に限定されないが、層状粘土鉱物が好ましい。リザーダイト、アメサイト、クリソタイル、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイトなどの蛇紋石―カオリン系粘土鉱物;サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、バイデライトなどのスメクタイト系粘土鉱物;3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライトなどのバーミキュライト系粘土鉱物;膨潤性マイカ、金雲母、イライト、白雲母、パラゴナイトなどの雲母(マイカ)系粘土鉱物などが挙げられる。とくに、スメクタイト系粘土鉱物、または膨潤性マイカ、バーミキュライト、およびハロサイトからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。こうすることにより、高温時での弾性率が向上する。さらに好ましくは、スメクタイト系粘土鉱物のうちモンモリロナイトが挙げられる。高温時弾性率や寸法安定性への効果がより大きくなる。
これらの粘土鉱物を、一種または二種以上使用しても良い。
【0034】
粘土鉱物の含有量は、特に限定されないが、複合フィルム全体を100重量部としたとき、好ましくは1重量部以上、さらに好ましくは2.5重量部以上である。こうすることにより、耐熱性、高温時の弾性率が向上する。また、複合フィルム全体を100重量部としたとき、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。こうすることにより、透明性と高温時弾性率とのバランスに優れ、たとえば回路用基板などに用いたときに視認による作業に適し、寸法安定性に優れた材料を提供することができる。
【0035】
複合フィルムの弾性率は、0.3GPa以上であることが好ましい。こうすることにより、高温時での弾性に優れ、寸法安定性が良好となる。また、複合フィルムの弾性率は、450℃で、30GPa以下であることが好ましい。弾性率が高すぎると、フィルムの柔軟性が損なわれることを防止することができる。
【0036】
複合フィルムの光線透過率は、複合フィルムの厚みを20μmとしたとき、波長650nmにおいて、50%以上であることが好ましく、さらに53%以上であることが好ましい。こうすることにより、複合フィルムを介在した視認による作業が可能となり、より作業の精度を向上できる。なお、厚み20μmのフィルムの光線透過率は、厚みが15μm以上25μm以下のフィルムの光線透過率を測定し、以下の式(3)を用いて厚み20μmに換算して透過率を算出できる。
吸光度(E)=logI/I=kCL ・・・(3)
強度Iの単色光がモル濃度C、試料の厚さLを通過して得られた強度Iの光について、上記式(3)のような関係が成り立つ。I/Iの百分率は透過率(%T)、logI/Iは吸光度、kはモル吸光係数を表している。特に、試料が希薄溶液である場合について上記式(3)を適用したものはランベルトベールの法則と呼ばれる。
【0037】
高温時における高い弾性率と高光線透過率とを両立した複合フィルムを用いて回路用基板などの半導体装置を得ることは従来困難であった。
【0038】
複合フィルムの厚みは、特に制限はないが、通常5〜150μmの範囲内であり、好ましくは8〜50μmの範囲内のものが一般に用いられる。
【0039】
複合フィルムの吸湿膨張係数は、相対湿度20〜60%において、吸湿膨張係数が5ppm/%RH以上20ppm/%RH以下であることが好ましく、さらに5ppm/%RH以上15ppm/%RH以下であることが好ましい。こうすることにより、乾燥時と吸湿時とにおける変形が少なく、寸法安定性が維持される。たとえば、複合フィルムは、回路基板の小型化・高精密化への適用も可能となる。
【0040】
複合フィルムの線膨張係数は、温度380〜430℃において、10〜100ppm/℃の範囲内であることが好ましい。こうすることにより、温度変化に対する変形が少なく、寸法安定性が維持される。たとえば、回路基板の実装工程において、加熱による反りや剥がれがおさえられる。
【0041】
複合フィルムの吸水率は、0%以上2%以下であることが好ましく、さらに1.5%以下であることが好ましい。こうすることにより、吸水による誘電率などの電気特性の低下を防止し、寸法安定性を良好にする。
【0042】
複合フィルムは、透明性と高温時弾性率との両立に優れているため、電気・電子機器類等の分野などへ広く応用が可能である。
たとえば、回路用基板、さらに金属層を含むフレキシブル回路基板、チップ・オン・フィルム基板(COF基板)などの絶縁樹脂層として用いることができる。このような回路用基板は、少なくとも一層以上が複合フィルムを用いた絶縁樹脂層であればよく、特に制限はない。
【0043】
回路用基板は、以下のようにして作製される。
(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させた溶液と、(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させて得られた分散液とを相溶させて混合溶液とし、得られた混合溶液を、金属箔もしく絶縁層などの基材上に展開し、溶媒を乾燥させることにより、絶縁樹脂層として用いられるフィルムまたはシートが作製できる。上記乾燥後、さらに、熱処理をおこなってもよい。
回路用基板は、上述のようにして得られた絶縁樹脂層を少なくとも一層を有し、絶縁樹脂層は何層重ねてもよい。さらにその他の絶縁層や金属層が積層されていてもかまわない。
【0044】
また、複合フィルムに、金属箔および/または積層体を熱圧着することで作製しても良い。この場合にも、複合フィルムからなる絶縁樹脂層の上に、さらにその他の絶縁層や金属層が積層されてもよい。
【0045】
複合フィルムからなる絶縁樹脂層は、金属箔上に直接積層されても良いし、接着層上に作製されても良い。また、回路用基板が多層となっている場合は、層中の何層目でも良く、さらに、何回用いても良い。好ましい本発明の複合フィルムの位置は、金属箔上、もしくは、金属箔上に作製された熱可塑性ポリイミド層の上である。
【0046】
フレキシブル回路基板として使用する場合に用いられる金属としては、特に制限なく使用可能であり、好ましい例として銅、ニッケル、コバルト、クロム、亜鉛、アルミニウム及びステンレス鋼、並びにそれらの合金からなる群から選ばれた少なくとも一種の金属を挙げることができ、より好ましくは、銅及び銅合金、ステンレス鋼及びその合金、ニッケル及びニッケル合金(42合金も含む)、アルミニウム及びアルミニウム合金等である。さらに好ましくは銅及び銅合金である。
【0047】
金属層の厚みは、テープ状に利用できる厚みであれば制限はないが、0.1μm以上150μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上105μm以下であり、更に好ましくは3μm以上35μm以下である。この範囲から適宜選択でき、例えば、ファインパターンの配線加工を必要とする用途には薄い箔を、剛性が必要な配線や大電流用途には厚い箔を適宜使用することが好ましい。
【0048】
本発明に用いる複合フィルムは、透明性、高温での弾性率、寸法安定性(低線膨張率)、に優れている。このため、回路用基板は、絶縁樹脂層として複合フィルムを用いた層を少なくとも一層以上有することで、高温、高圧でのチップ実装時にも、基板の変形が少なく、配線ずれや、沈み込み、剥離、メッキの染み込みなどの問題が起こらなくなるという顕著な効果を有するものである。
【0049】
本発明の複合フィルムからなる絶縁樹脂層を、TAB(Tape Automated Bonding)テープ加工ラインで広く使用されているチップ・オン・フィルム基板に用いる場合、絶縁樹脂層は、実装温度に近い温度での弾性率が高いことにより、作業がしやすく寸法安定性に優れる。実装温度に近い温度とは、250℃以上500℃以下、好ましくは300℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上450℃以下である。
【0050】
本発明の複合フィルムは透明であるため、上記のような回路加工後に、複合フィルムを用いた絶縁樹脂層を通して、金属配線を画像認識でき、インナーリードボンダでのチップ実装時の位置決めが可能となる。
【0051】
本発明によれば、従来のポリイミドと粘土鉱物の複合物からなる成型品では得られていなかった透明性と高温時高弾性率を両立することにより、ポリイミド・粘土鉱物複合体のフィルム、回路用基板などへの応用が可能となる。さらに、ポリイミド・粘土鉱物複合体は、透明であることにより視認による作業性が向上し、加熱による弾性低下が防止されることにより、電気・電子機器などの小型化・高精密化にも適用しうる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。なお、実地例中の略語は以下のものを意味する。
DMAc:ジメチルアセトアミド
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
APB:1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン
m−BP:4,4'−(3−アミノフェノキシ)ビフェニル
ODA:4,4'−オキシジアニリン(4,4'−ジアミノジフェニルエーテル)
PPD:p−フェニレンジアミン
BTDA:3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PMDA:無水ピロメリット酸
APB−BMI:1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン
また、実施例中の各評価は下記のように行った。
【0053】
(粘弾性測定:450℃での貯蔵弾性率の測定)
弾性率の評価はレオメトリックス社製RSA−IIを使用して、引張変形モードにおける温度分散測定を実施した。測定には、温度範囲30〜500℃、昇温速度3℃/min、Auto−Strain制御下、歪み0.02%、周波数1Hzの条件を用いた。また、試料の寸法は、長さ20mm、幅5mmのものを用い、450℃での貯蔵弾性率E'を求めた。
【0054】
(線膨張率測定)
熱機械分析計(TMA−50、島津製作所製)を用いて、フィルムの両端に一定の荷重をかけ、温度を変化させた際の伸び(縮み)を測定する引っ張り法により50〜500℃の範囲で測定し、100〜250℃および380〜430℃の範囲における平均の線膨張率を求めた。
【0055】
(光線透過率の測定)
紫外可視分光光度計(UV2200、島津製作所製)を用いて、表1に示した厚さのフィルムの透過率を測定し、波長650nmの透過率を得た。フィルムの膜厚と透過率から、式(3)を用いて厚み20μmに換算した透過率を算出した。
吸光度(E)=logI/I=kCL ・・・(3)
強度Iの単色光がモル濃度C、フィルムの厚さLを通過して得られた強度Iの光について、I/Iの百分率は透過率(%)、logI/Iは吸光度、kはモル吸光係数を表している。
【0056】
(粘土鉱物の分散状態の確認)
作製したポリイミド/粘土鉱物複合フィルムをウルトラミクロトームLeica製ウルトラカットUCTを用い薄く切り出した。作製した切片を200メッシュの銅グリッド上に取り、透過電子顕微鏡(TEM)(フィリップス社製CM300−FEGTEM)を用いて加速電圧300kVで粘土鉱物の分散状態を観察した。
【0057】
(吸湿膨張係数測定)
湿度コントロールユニットを装備した熱機械分析計(TMA−2200S、島津製作所製)を用いて、相対湿度20、40、60%におけるフィルムの長さを測定した。測定したフィルム長を相対湿度に対してプロットし、線形近似することで直線の傾き、すなわち吸湿膨張係数(ppm/%RH)を求めた。
【0058】
(吸水率測定)
温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に1週間以上保管したフィルムの吸水率を、加熱気化水分測定装置(HiranumaSangyo社製)を用いて250℃の条件で測定した。
【0059】
合成例1
撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、溶媒としてDMAc261.0gを加え、これにODA20.44g、m−BP16.12gを加え20〜30℃で撹拌して溶解させた。その後、PMDA30.84gを加え、11.0gのDMAcでフラスコ内部に付着した原料を洗い落とし、50〜60℃に加熱し約1時間撹拌を行った後、さらに、PMDA0.44gを加え60℃に温度を保ちながら約4時間撹拌を行い、ワニス(a)を得た。次に、別の撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、溶媒としてNMP263.0gを加え、PPD19.62gを加え20〜30℃で撹拌して溶解させた。その後、BPDA37.0g、PMDA11.06gを加え、10.0gのNMPにてフラスコ内部に付着した原料を洗い落とし、50〜60℃に加熱し約4時間撹拌を行い、ワニス(b)を得た。最後に、別の撹拌機および窒素導入管を備えた容器に、ワニス(b)とワニス(a)を77:23の重量比で混合した。得られた混合液を50〜60℃に加熱し約4時間撹拌を行い、ポリアミック酸溶液とした。得られたポリアミック酸溶液はポリアミック酸の含有率が20重量%であり、25℃でのE型粘度は30000mPa・sであった。
【0060】
(実施例1)
合成例1で製造されたポリアミック酸をメタノールで再沈殿し、イミド化後のポリイミドの重量で10wt%になるようにピリジンに溶解し、ポリアミック酸/ピリジン溶液を得た。これを第一の溶液とした。
これとは別に、有機化処理を施していないモンモリロナイト(クニピアG:クニミネ工業社製)1.6gを水78.4gに加え、ホモジナイザーで10,000rpmで1時間攪拌して、2%分散液を得た。これを8倍に水で希釈し、0.25%分散液とし、これを第二の溶液とした。第一の溶液20gに、第二の溶液20.51gを、マイクロチューブポンプを用いて30分かけて徐々に加え均一な溶液を得た。この均一溶液をガラスシャーレに移し、室温・窒素気流下で1週間乾燥後、イナートオーブン中で、200、250、300、350℃でそれぞれ1時間熱処理し、膜厚15〜20μmのポリイミド/粘土鉱物複合フィルムを得た。得られたフィルムをTEMで観察したところ、粘土鉱物が1〜数層単位で均一に分散していることが確認された。また、得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0061】
(実施例2〜3)
ポリイミドに対する粘土鉱物の含量が表1の条件になるよう、実施例1と同様な操作で複合フィルムを作製した。得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0062】
(実施例4〜6)
実施例1の第2の溶液のクニピアGを合成スメクタイト(スメクトンSA、クニミネ工業社製)に変え、ポリイミドに対する粘土鉱物の含量が表1の条件になるよう、実施例1と同様な操作で複合フィルムを作製した。得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
合成例1の条件で作製したポリアミック酸をガラス基板に乾燥膜厚が15〜21μmになるように塗工し、イナートオーブン中で50〜180℃まで昇温速度3℃/分で乾燥後、イミド化しポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの物性を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
合成例1で製造されたポリアミック酸にNMPを加え、イミド化後のポリイミドの重量が19wt%になるように調製した。これを第一の溶液とした。
これとは別に、有機化処理を施していないモンモリロナイト(クニピアG:クニミネ工業社製)1.6gをNMP78.4gに加え、マグネチックスターラーで1時間攪拌した後、超音波洗浄機で1時間処理し、分散液を得た。この分散液を第二の溶液とした。第一の溶液20gに、第二の溶液4.87gを、加え均一な溶液を得た。この均一溶液をガラス基板に塗工し、イナートオーブン中で、50℃〜200℃まで昇温速度5℃/分で乾燥後、200℃で5時間熱処理し、膜厚15μmの複合フィルムを得た。得られたフィルムは、モンモリロナイトが凝集しており均一なフィルムとならなかった。
【0065】
(比較例3〜4)
ポリイミドに対する粘土鉱物の含量が表1の条件になるよう、比較例2と同様な操作で複合フィルムを作製した。得られたフィルムは、モンモリロナイトが凝集しており均一なフィルムとならなかった。
【0066】
(比較例5)
合成例1で製造されたポリアミック酸にNMPを加え、イミド化後のポリイミドの重量が19wt%になるように調製した。これを第一の溶液とした。
これとは別に、ジメチルジステアリルアンモニウムで処理された有機化モンモリロナイト(エスベンNX、ホージュン社製)1.6gをNMP78.4gに加え、超音波処理を施しながら1時間攪拌し、2%分散液を得た。この分散液を第二の溶液とした。第一の溶液20gに、第二の溶液4.87gを、加え均一な溶液を得た。この均一溶液をガラス基板に塗工し、イナートオーブン中で、50℃〜200℃まで昇温速度5℃/分で乾燥後、200℃で5時間熱処理し、膜厚16μmの複合フィルムを得た。また、得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0067】
(比較例6〜7)
ポリイミドに対する粘土鉱物の含量が表1の条件になるよう、比較例5と同様な操作で複合フィルムを作製した。得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0068】
(比較例8)
合成例1で製造されたポリアミック酸溶液にNMPを加え、イミド化後のポリイミドの重量が10wt%になるように調製した。これを第一の溶液とした。
これとは別に、有機化処理を施していないモンモリロナイト(クニピアG:クニミネ工業社製)1.6gを水78.4gに加え、ホモジナイザーで10,000rpmで1時間攪拌して、2%分散液を得た。これに、NMP80gを加え、1%分散液とし、これを第二の液とした。第一の溶液20gに、第二の溶液10.53gを、加え徐々に均一な溶液を得た。この均一溶液をガラス基板に塗工し、イナートオーブン中で、50℃〜200℃まで昇温速度5℃/分で乾燥後、200、250、300、350℃でそれぞれ1時間熱処理し、膜厚15〜20μmの複合フィルムを得た。得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0069】
(比較例9)
ポリイミドに対する粘土鉱物の含量が表1の条件になるよう、比較例8と同様な操作で複合フィルムを作製した。得られた複合フィルムの物性を表1に示す。
【0070】
(比較例10)
合成例1で製造されたポリアミック酸溶液にNMPを加え、イミド化後のポリイミドの重量が10wt%になるように調製した。これを第一の溶液とした。
これとは別に、有機化処理を施していないモンモリロナイト(クニピアG:クニミネ工業社製)0.8gを水79.2gに加え、ホモジナイザーで10,000rpmで1時間攪拌して、1%分散液を得た。この分散液を第二の溶液とした。第一の溶液20gに、第二の溶液10.53gを、徐々に加えたところ、黄褐色の沈殿が生じ、均一な溶液を得ることができなかった。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイミド前駆体を第一の溶媒に溶解させる工程と、
(B)有機化処理をしていない粘土鉱物を第二の溶媒に分散させる工程と、
(C)前記(A)工程で得られた溶液と、前記(B)工程で得られた分散液とを相溶させて混合溶液とする工程と、
(D)前記(C)で得られた混合溶液を、基材上に展開し、溶媒を乾燥させてフィルム化する工程と、
を有することを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記第一の溶媒が塩基性溶媒であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記第二の溶媒が水であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記粘土鉱物が層状粘土鉱物であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記複合フィルムを100重量部としたとき、前記粘土鉱物が1重量部以上50重量部以下となることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記絶縁樹脂層に含まれる粘土鉱物が、スメクタイト系粘土鉱物、または膨潤性マイカ、バーミキュライト、およびハロサイトからなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体が、一種以上のジアミン化合物と一種以上のテトラカルボン酸二無水物とから合成されたポリイミド重合体および/またはポリアミド酸共重合体を含むポリイミド前駆体であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体が、ジアミン化合物の少なくとも一つとして、下記一般式(1)
【化3】


(式(1)中、X、Xはそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、Yはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトロ基、およびハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、nは0〜8の整数を表す)で表される化合物を用いて製造されたポリイミド前駆体であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至7いずれかに記載の複合フィルムの製造方法であって、
前記ポリイミド前駆体が、ジアミン化合物の少なくとも一つとして、下記一般式(2)
【化4】


で表される化合物を用いて製造されたポリイミド前駆体であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、回路用基板に用いられるものであることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、フレキシブル回路基板に用いられるものであることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、チップ・オン・フィルム基板に用いられるものであることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、450℃での弾性率が0.3GPa以上30GPa以下であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、フィルムの厚みを20μmとしたときの波長650nmにおける光線透過率が50%以上であることを特徴とするポリイミド粘土鉱物複合フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、相対湿度20〜60%における吸湿膨張係数が5ppm/%RH以上20ppm/%RH以下であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至9いずれかに記載の複合フィルムの製造方法によって得られる複合フィルムが、吸水率が2%以下であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。

【公表番号】特表2010−533213(P2010−533213A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500012(P2010−500012)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/JP2007/000750
【国際公開番号】WO2009/008030
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】