複合光導波路
【課題】 本発明は、低損失で伝搬可能な低屈折率差光導波路と、曲がり損失が小さい高屈折率差光導波路とを、異なる光導波路層に形成し、その光導波路層に接続部分を形成することで、低損失な、高効率的に結合可能な複合光導波路を提供する。
【解決手段】 本発明の複合光導波路は、基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、更に各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けている。
【解決手段】 本発明の複合光導波路は、基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、更に各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合光導波路に関し、詳細には屈折率の異なるコアを有する光導波路同士の結合素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の伝搬媒質である光導波路は、異なる屈折率媒質により形成されたコアとクラッドにより構成され、コアがクラッドに囲まれた構造を取る。一般的には、コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも大きく、特定の周波数に対して、コアとクラッドの界面での全反射する性質を利用することで、光を光導波路内に閉じ込め、光信号を伝搬させている。これらの光導波路で構成された曲げ、分岐、結合素子などを組み合わせることにより、光回路が形成される。
【0003】
光回路のサイズは、光導波路の配線許容度に大きく影響する。つまり、光導波路のコアの断面積サイズと、光導波路の低損失曲がり半径に大きく依存する。例えば、コアの断面積が2倍になれば、配線に必要な断面積は2倍になる。また、低損失を与える曲率半径が10cm以上であれば、曲がり導波路を含む光回路の大きさは1辺が10cm以上の大きさとなる。そのため、光回路のサイズを小さくするためには、コアの断面積を小さくし、かつ低損失を与える曲率半径を小さくする必要がある。
【0004】
コアとクラッドの屈折率差を大きくし、コアへの光閉じ込めを強力にすることで、曲がり導波路の曲率半径を小さくすることができる。例えば、屈折率1.5のコアに対して、屈折率1.49のクラッドの光導波路であれば、1cm以上の曲率半径をもつ曲がり導波路が必要であるが、屈折率2のコアに対して、屈折率1.5のクラッドの光導波路であれば、曲率半径は50μm以上になり、屈折率3のコアに対して、屈折率1.5のクラッドの光導波路であれば、曲率半径は5μm以上あれば、低損失な曲がり導波路が構成可能である。つまり、屈折率差を大きくすればするほど、光回路のサイズを決定する要因のひとつである曲がり導波路の曲率半径を小さくすることが可能となる。非特許文献1では、熱酸化シリコン上にシリコン薄膜が形成されたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、二酸化シリコン上にチャネル形状のシリコンコアを持つ光導波路を形成し、ミクロンオーダの曲率半径が実現できることを示している。
【0005】
上述したように、屈折率差を大きくすることで曲率半径を小さくすることが可能であるが、同時に屈折率差を大きくすることで、光導波路自体の伝搬損失が増大してしまうという課題がある。
【0006】
このような光導波路の損失は、主に、光導波路を形成する材料による吸収損失、構造の揺らぎによる散乱損失、導波路の曲がりに起因する曲がり損失が損失要因となり、これら合計が光導波路の伝搬損失となる。そのため、伝搬損失を減らすためには、それぞれの損失要因を減らす必要がある。吸収損失は光の波長に対する材料の透過特性により決定されるので、使用する波長に対して透明である材料で光導波路を形成する必要がある。また、散乱損失は、光導波路の製作時におけるコアとクラッドの界面の揺らぎに起因するため、なるべく揺らぎが無いように製作する必要がある。しかし、コアとクラッドの屈折率差が大きいと、界面での揺らぎの影響をより強く受けるので、導波路の屈折率分布により、加工性粗れ状態や粗れ状態の自己相関長といった界面状態であっても受ける損失が異なる。更に、曲がり損失は、光の閉じ込め状態によるので、なるべく損失が生じない曲率半径で設計をする必要があり、基本的には曲率半径が大きくなればなるほど、曲がり損失は小さくなる。さらに、上記に述べたように、コアとクラッドの屈折率差が大きくなると、必要な曲率半径は小さくすることができる。
【0007】
ここで、コアとクラッドの屈折率差によって、曲がり半径と伝搬損失が変化することの一例を、従来の光導波路に関して述べる。光通信の伝送路として用いられている光ファイバでは、コアとクラッドの屈折率差はわずかあり、さらに界面での揺らぎが極めて小さいために、光通信帯波長のシングルモード光ファイバで、0.5dB/km以下の超低損失を実現している。しかし、コアとクラッドの屈折率差が小さいために、曲がりには弱く、10cm以上の曲率半径で曲げないと、損失が生じてしまう。
【0008】
また、最も典型的な光導波路で構成される平面光回路(Planer Lightwave Circuit)と呼ばれる光回路では、光導波路は、二酸化シリコンにより形成した形成されるが、この光導波路のコアとクラッドの屈折率差も小さく、リソグラフィーなどの高精度なパターニング技術を使うことで、それらの伝搬損失は1dB/m以下であり、10cm角程度の光回路では低損失光配線が実現できる。しかし、1cm以上の曲率半径を要するために、光回路のサイズはセンチメートルオーダになる。
【0009】
屈折率差を大きくした光導波路では、前述のシリコンコア光導波路では、曲率半径10μm以下が実現可能であるが、伝搬損失は断面の揺らぎをナノメートルオーダに抑えても、現状では5dB/cm程度である。つまり1cmの光配線でも、70%の光を消失してしまうことになる。光回路をミクロンオーダで形成すれば、損失を抑えることが可能であるが、高密度光配線が可能であることを利用した小型光バッファ素子などに利用することは困難となってしまう。
【0010】
また、フォトニック結晶を用いた光導波路でも、フォトニックバンドギャップを利用するためには屈折率差を大きくする必要があるので、屈折率差が大きい材料構成が好ましい。更に、フォトニック結晶光導波路では、フォトニックバンドの傾きの操作により、光のスピードを従来の光導波路よりも極端に遅くすることが可能であるので、よりコンパクトな光回路内に前述の光バッファ機能を持たせることが可能となる。しかしながら、構造をナノメートルで制御しても、現状では5dB/cmと伝搬損失が大きく、構造も複雑であるという課題がある。
【0011】
更に、コアとクラッドの屈折率差が大きいまま通常の光導波路を形成できれば、フォトニック結晶との接続導波路としても利用可能であり、フォトニック結晶構造による光制御素子とのモノリシック形成が可能となる。そのようなフォトニック結晶光制御素子として、例えば、特許文献1にあるような、光偏向素子や電気光学効果を利用した光スイッチがあり、これらとの接続に高屈折率差光導波路を用いることができる。しかしながら、前述のようにフォトニック結晶素子同士を接続する光配線としては、損失が大きいことが課題となる。
【0012】
以上のことから、曲がり導波路やフォトニック結晶光素子を接続する光配線としては、コアとクラッドの屈折率差が小さい光導波路を用いることができれば、光導波路全体の伝搬損失を減少させることが可能となり、高密度で機能的な光回路を実現できる。
【0013】
ここで、コアとクラッドの屈折率差が小さい光導波路のことを低屈折率差導波路と呼び、コアとクラッドの屈折率差が大きい光導波路のことを高屈折率差導波路と呼ぶ。低屈折率差光導波路と、高屈折率差光導波路との結合の一例として、特許文献1の構成が用いられている。この構造では接続部分の高屈折率差光導波路を逆テーパ形状にすることで、等価屈折率を変化させることにより低損失な結合構造を実現している。
【非特許文献1】K. K. Lee, et.al., APL, vol. 77, no. 11, p. 1617 (2000)
【特許文献1】特開2004−184986号公報
【特許文献2】特開2004−334190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、高屈折率差光導波路のコアサイズがサブミクロン角であり、それから徐々に形状を細くして、数十ナノメートルの大きさにまで減少させる構造を形成するためには、高精度なパターニング技術が必要となる。また、テーパ形状の始点でのクラッド部分の屈折率制御も必要となり、クラッドとコアの緻密な形状制御が必要となる。
【0015】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、低損失で伝搬可能な低屈折率差光導波路と、曲がり損失が小さい高屈折率差光導波路とを、異なる光導波路層に形成し、その光導波路層に接続部分を形成することで、低損失な、高効率的に結合可能な複合光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記問題点を解決するために、本発明の複合光導波路は、基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、更に各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことに特徴がある。よって、低損失な、高効率的に結合可能な複合光導波路を提供できる。
【0017】
また、接続部は光導波路層におけるコアの一部であることが、製造プロセスや結合効率から鑑みて好ましい。
【0018】
更に、本発明の複合光導波路は、基板上に、分離された複数のコアとクラッドを含んで構成された第1の光導波路層と、コアとクラッドを含んで構成された第2の光導波路層とを積層して形成して構成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことに特徴がある。よって、低損失な、高効率的に結合可能な光配線が可能となる。また、接続部は第2の光導波路層におけるコアの一部であることが好ましい。
【0019】
また、接続部は各光導波路層における各コアと離間して設けられていることにより、光が互いのコアの間で高効率にやり取りされる。
【0020】
更に、光導波路層が曲がり部分を有することにより、低損失な、高密度な配線が可能となる。
【0021】
また、屈折率差が大きい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径が、屈折率差が小さい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径よりも小さいことにより、素子面積を小さくでき、コンパクトで低損失な光伝送路を実現できる。
【0022】
更に、光導波路はフォトニック結晶配列構造を有することにより、急激な偏向角を有する偏向子や波長または偏光フィルタなどを極めて小さいサイズで実現できる。
【0023】
また、光導波路は、フォトニック結晶配列構造のコアに、配列構成部がない欠陥部分を設けて形成されるフォトニック結晶欠陥光導波路であることにより、高密度光配線のための機能素子であるフォトニック結晶導波路と低損失伝搬する光導波路とを高効率で結合可能な複合光導波路を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複合光導波路によれば、光結合間隔を精密に制御し、かつコアとクラッドの屈折率分布を柔軟に取ることができる光導波路層を比較的容易に構成でき、かつ低損失な光伝搬が可能な低屈折率差光導波路と、素子サイズを決定する急激な曲がり導波路や強い機能を持たせることが可能なフォトニック結晶導波路を形成する高屈折率差光導波路を、それぞれ異なる光導波路層に設け、光導波路層のコア間に光結合現象を生じる接続部を設けることで、それらの光導波路を伝搬する光を高効率で結合させることが可能となる。このような構成により、低損失で高密度な光遅延素子、光バッファ素子、光メモリ素子などを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の第1の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)は断面図、同図の(b)は平面図、同図の(c)は前面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路100において、台座となる基板101上に光導波路層110,120が形成されている。この基板101は、ガラスなどの誘電体材料、シリコンなどの半導体材料、ニオブ酸リチウムなどの光学結晶材料であればよく、平坦かつ平行度が高い基板であれば、大面積に均一で素子が構成できるので、より好ましい。ここで、光導波路層110,120は、基板101に対して同一平面状にはなく、図1の(a)に示すように、基板101、光導波路層110、光導波路層120の順で積層されている。それぞれの光導波路層内では略同一の材料により、モノリシックに光導波路が形成され、それぞれの光導波路がつながっている必要はなく、また形状も同じ必要はない。ただし、積層部分の中間にある層は、上部に積層可能な平坦構造であることが好ましい。
【0026】
また、光導波路層110は、コア111とクラッド112とから形成され、このコア111とクラッド112の間に屈折率の差を設けることで、光はコア111とクラッド112の境界面で反射しながら光は伝搬する。コア111の屈折率n1がクラッド112の屈折率n2よりも大きい場合、光は特定の周波数条件であれば、コア111とクラッド112の境界面で全反射するので、コア111内に光を強く閉じ込めることができる。ここで、境界面での製作上の揺らぎが無ければ、極めて低損失な光導波路を形成することが可能である。
【0027】
同様に、光導波路層120は、コア121とクラッド122とから形成され、光伝搬構造になっている。これも同様に、コア121の屈折率がクラッド122の屈折率よりも高い構造になっていれば、全反射により光を閉じ込めることが可能である。
【0028】
図1では、光導波路層120のコア121とクラッド122の屈折率差は小さく、光導波路層110のコア111とクラッド112の屈折率差が大きい光導波路であると仮定して、以下では特性を記述するが屈折率差の大小は積層順序によらない。本発明では、光導波路層110は曲がり構造を含まない低損失伝搬に用いる光導波路であり、光導波路層120は低損失曲がり伝搬に用いる光導波路である。つまり、光導波路層110のコア111とクラッド112の屈折率差を小さくすることで、伝搬損失の増加を抑え、光導波路層120のコア121とクラッド122の屈折率差を大きくすることで、急激な曲がりを実現する。ここで、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2としたとき、以下の式で定義される値を比屈折率差Δと呼ぶ。
【0029】
Δ=(n12−n22)/2n12
【0030】
この屈折率差によって、高屈折率差光導波路と低屈折率差光導波路の目安をつけることができる。
【0031】
低屈折率差光導波路を有する光導波路層110の比屈折率差は5%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。このような比屈折率差は、ポリマーや二酸化シリコン、五酸化二タンタルなどの材料を、屈折率を調整した、二酸化シリコンなどをクラッドとして形成することで、実現可能である。これは、現在、実用化されている平面光回路に用いられている材料でもある。例えばコアの屈折率を1.5、クラッドの屈折率を1.49と仮定すると、比屈折率差は0.6%となる。また、10Gbpsを超える外部高速変調器として実用化されているニオブ酸リチウム基板にチタン拡散による光導波路も比屈折率差は1%程度である。つまり、現在商用化されている光導波路の多くは低屈折率差光導波路である。
【0032】
次に、低屈折率差光導波路を形成する方法の一例を以下に示す。
台座となるシリコンの基板に熱酸化もしくは成膜装置によりクラッド層を形成する。続けて、屈折率が高いクラッド層を成膜し、リソグラフィーとエッチングにより導波路のコア構造をパターニングする。パターニングでのレジストを除去するなどの表面処理後、コアをクラッド材料で覆うことで光導波路が形成できる。その後、研磨による表面の平坦化処理することで積層構造に適した構造にする。
【0033】
一方、高屈折率差光導波路を有する光導波路層120の比屈折率差は10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。このような比屈折率差は、コアとクラッドの屈折率差を大きくすることで実現可能である。例えばコアの屈折率を2とし、クラッドの屈折率を1.5としたら比屈折率差が22%となる。また、コアの屈折率を3.5、クラッドの屈折率1.5としたときには比屈折率差は41%となる。もちろん、大きな屈折率差を実現するためには、コアの下部を低屈折率媒質とし、上部と断面を空気クラッドとしてもよい。空気クラッドにすると、屈折率差がより大きく取ることが可能となる。たとえば、コアの屈折率を3.5、クラッドの屈折率を1.0(空気)としたときには比屈折率差は46%となる。このように大きな屈折率差であれば、曲率半径を1μm程度にまで減少させることが可能となり、高密度な光配線が実現可能である。
【0034】
屈折率が2程度のコアは、SiN(窒化シリコン)、Ta2O5(五酸化ニタンタル)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3、SBN、KTNなどのガラス材料や光学結晶材料で構成できる。このような材料は光通信デバイスの材料として用いられている材料である。また、屈折率が3以上のコアを持つような材料でもよく、Si(シリコン)やGaAs(ガリウム砒素)、InP(インジウム燐)などの半導体材料と、低屈折率媒質との組み合わせで、このような高屈折率差光導波路を構成することも可能である。半導体材料は可視光領域の波長では不透明であるが、光通信に用いられる波長1.6μmから1.3μmの赤外光波長では透明として扱うことが可能である。低屈折率のクラッド材料としては、SiO2(熱酸化シリコン)やポリマー材料、一部の光学ガラスや光学結晶を用いることが可能である。
【0035】
高屈折率差光導波路の製作方法も低屈折率差光導波路と同様な方法で形成可能である。しかし、屈折率が大きく異なる材料に対して、コア層を成膜する方法が必ずしも適しているとは限らない。ここでは、一例として、SiO2上にSiもしくはLiNbO3のコアを形成する方法を示す。まず、Si基板上に熱酸化もしくは成膜によりSiO2層を形成する。その後、SiO2面同士を接合し、片面を研磨により薄膜化することによりコア層を形成する。同様に、熱酸化膜を形成された基板上にSiO2層を形成し、LiNbO3を接合する。その後、LiNbO3を研磨などで薄膜化することにより、コア層を形成する。薄膜化には、イオン注入により界面を形成し、過熱や薬品処理により、その界面から薄膜層を切り出せる方式を利用しても良い。台座となる基板は、加熱処理を考えると、薄膜層と同じ材質を用いることが好ましいが、常温接合など、加熱処理を必要としないプロセスであれば、必ずしも同じ基板である必要はない。
【0036】
導波路を単純に積層構造にしただけでは、等価屈折率の急激な変化により、高効率での結合が困難となる。そこで、本発明では、図1に示すように、光導波路のコア111とコア121との間に接続部130を設けている。この接続部130により、光導波路層110を伝搬してきた光電力が光導波路層120に結合し伝搬していく。もちろん、その逆方向の伝搬も起こる。
【0037】
光結合は一般的には光ファイバカップラーのように、光導波路構造が同じである光導波路を波長と同程度の距離までに近接させると、それぞれのコア間で一方の光電力が徐々に他方の光導波路に移動するという現象である。この光結合は必ずしも同一の光導波路である必要はなく、伝搬モードの等価屈折率がほぼ等しければ起こる現象である。つまり、この現象を利用すれば、接続部にコアの屈折率や面積、クラッドの屈折率などを調整した構造により、光結合を起こすことが可能となる。
【0038】
図1に示す第1の実施の形態例では、接続部130がコア121に直結している構造である。また、接続部130はコア111の直上に形成され、層厚方向の間隔は波長程度まで近接させ、光結合により光を乗り移らせる。コア111と接続部130がオーバラップしている距離は、それぞれの屈折率と形状に依存している。形状と屈折率は、図1に示すような高い屈折率で、断面積が小さいチャネル構造以外に、テーパ構造、逆テーパ構造、伝搬方向に不連続なチャネル構造の重ね合わせなどが考えられる。また、必ずしも接続部分の屈折率が最も高い必要はなく、コア111とコア121との中間の屈折率であっても良い。断面積形状も最も小さい必要はなく、高効率に結合する構造であれば、コア111とコア121の中間の大きさを持つようなサイズでも良い。更に、コア121の形状の一部が変化した構造である場合、光が結合する部分が接続部となる。
【0039】
ここで、同一面内で、光結合を起こさせるような構成を形成することは、複雑なコアのパターニングや、クラッドの屈折率調整が必要となり、高度なプロセス技術を必要とする。また、高屈折率差光導波路では光結合間隔がサブミクロンオーダとなり、プロセスの課題はさらに大きい。本発明のような、積層構造であれば、積層間隔は現在ではナノメートルで制御できる成膜装置が一般的であることから、リソグラフィーなどで構造を微調するよりは、積層間隔の調整をする方が、プロセス上、比較的容易である。
【0040】
図2は本発明の第2の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路200は、コア211とクラッド212を有する低屈折率差光導波路層210と、コア221とクラッド222を有する高屈折率差光導波路層220とを含んで構成されている。ここでは、接続部230がコア211とコア221との間にあることで、光が互いのコアの間で、高効率にやり取りされる。
【0041】
図2では接続部230がクラッド212内にある構成であるが、図3のように、高屈折率差光導波路層220のクラッド222内にあるような構成でもよい。また、図4のように、接続部230が、高屈折率差光導波路層220のクラッド222と低屈折率差光導波路210のクラッド212とは異なる屈折率を持つ層240内にある構成でもよい。図2ではコア211,221はそれぞれ接続部230と一部しかオーバラップしていないが、接続部230の全体がオーバラップしていても良いし、コア211とコア221が上部から見て重なっている構造でも良い。ただし、接続部230とそれぞれのコア211,221との間隔は波長程度である必要がある。
【0042】
図5は本発明の第3の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路300は、コア311とクラッド312を有する低屈折率差光導波路層310と、コア321とクラッド322を有する高屈折率差光導波路層320とを含んで構成されている。そして、コア311が同一面内に形成され、それらをクラッド312によって接続する構成である。接続部330は高屈折率差導波路層320にある構成であるが、前述のような接続部の構成であってもよい。このような構成にすることにより、高屈折率差光導波路層320がもつ特徴を生かした光配線が可能となる。
【0043】
図6は本発明の第4の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路400は、コア411とクラッド412を有する低屈折率差光導波路層410と、コア421とクラッド422を有する高屈折率差光導波路層420と、コア431とクラッド432を有する低屈折率差光導波路層430とを含んで構成されている。接続される光導波路が異なる平面内にあるときの接続を示している。図6では、低屈折率差光導波路層410、高屈折率差光導波路層420、低屈折率差光導波路層430が基板450に積層され、低屈折率差光導波路層410と低屈折率差光導波路層430とを接続するために高屈折率差光導波路層420を設けている。このような構成であれば、コアとクラッドの屈折率差が異なる光導波路を、高精度なパターニング技術を用いずに、成膜だけで構成できる。前述と同様に、接続部440は高屈折率差導波路層420にある構成であるが、前述のような接続部の構成であってもよい。このような構成にすることにより、それぞれの平面内に形成されている光導波路の特性を生かした光配線が可能となる。
【0044】
図7は本発明の第5の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)は低屈折率差光導波路層と高屈折率差光導波路層からなる高密度光配線の一例を示した斜視図であり、同図の(b)は低屈折率差光導波路層のコアが複数配置されている平面である。低屈折率差光導波路層510のコア511が複数配置されている平面上に高屈折率差光導波路層(図示せず)が積層されている。同図の(a)に示すように、本実施の形態例の複合光導波路500は、高屈折率差光導波路層のコア521を有し、低屈折率差光導波路層510と高屈折率差光導波路層とを接続する接続部530を有している。本実施の形態例の場合はコアが空気クラッドに露出されている構成をしている。
【0045】
このような構造であれば、屈折率差が大きく取れるため、高屈折率差光導波路の特色である曲率半径がミクロンオーダである曲がりを実現できる。図7では低屈折率差光導波路層の長さと、高屈折率差光導波路層の大きさは同じ程度で示しているが、例えば直線状の低屈折率差光導波路層の長手方向の長さを1cm、高屈折率差光導波路層の曲率半径を50μmとすると、極めてコンパクトに光導波路を折りたたむことが可能となる。さらに結合部の長さを最大1cm取ることができるので、徐々に光電力を移行させる構造も構成可能となる。
【0046】
次に、高密度配線の効果の一例として、以下で光バッファ機能に示す。
例えば、1nsの光遅延を起こさせるために、必要な光配線の長さは、コアの屈折率を1.5と仮定したときに、20cmとなる。この長さの光配線を低屈折率差導波路で実現しようとするときの損失とサイズを考える。低屈折率差光導波路の伝搬損失が0.1dB/cm以下とすると、20cm伝搬による損失は2dB以下となる。しかし、直線で構成すると、20cmの素子サイズが必要となり、さらに曲げ構造を導入して素子をコンパクト化しようとすると、低損失な曲率半径が1cm以上と程度となるために、素子面積は大きくなり、高密度な光配線を実現できない。
【0047】
一方、高屈折率差光導波路であれば、コアの屈折率を3として、1nsの光遅延に必要な光配線の長さは、10cmとなる。この導波路では、曲率半径がミクロンオーダであるので、1cm角内のチップに光導波路を収めることが可能であるが、伝搬損失が1dB/cmであっても、10cm伝搬させると、10dBの損失を生じてしまうことになる。さらに、現状の5dB/cmであると50dBの損失となり、ほとんど光信号を検出することができない。
【0048】
以上ことから、低屈折率差光導波路だけでも高屈折率差光導波路だけでも、コンパクトで低損失な光伝送路としての複合光導波路の実現が困難である。そこで、本発明のように低屈折率差光導波路と高屈折率差光導波路を組み合わせ、それらの結合を低損失で可能とする構成であれば、上記課題を解決できる。図7の(b)に示すように、例えば20cmの光導波路を20分割並列配置し、それらを高屈折率差光導波路の数10μmの曲がり導波路で結合すれば、素子の占有面積は10mm×1mm程度の高密度光配線が可能となる。このとき、伝搬損失は2dB以下、高屈折率差光導波路と低屈折率差光導波路との接続損失が0.1dBとしたときに2dB程度となり、全体として4dB以下の損失で、高密度光配線が可能となる。伝搬損失は、高精度なリソグラフィーを用いると、1dB以下改善することが可能であり、接続損失も構造の最適化で、0.05dB以下と、ほとんど無損失とすることが可能となるので、全体の損失を2dB以下とすることが可能となる。
【0049】
図8は本発明の第6の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路600は、曲がり導波路を用いた光信号分配構造を有し、低屈折率差光導波路610、高屈折率差光導波路620及び接続部630を含んで構成されている。なお、光導波路形状を変えることで接続部となる構造とすることも可能である。低屈折率差光導波路に分岐構造を導入する場合、分岐部分の広がり角度を大きく取ることができない。通常のY字型分岐構造であれば、分岐広がり角度は10°以下であり、光電力を完全に分離するためには100μm以上の距離を伝搬させる必要がある。しかし、図8のような構造であると、分岐部分が占める面積は10μm角程度になり、コンパクトな信号分離構造を形成することが可能となる。
【0050】
図9は本発明の第7の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路700は、コア711,712とクラッド713を有する低屈折率差光導波路層710と、コア721とクラッド722を有する高屈折率差光導波路層720とを含んで構成されている。また、高屈折率差光導波路層720のコア721には2次元フォトニック結晶構造が形成されている。
【0051】
フォトニック結晶とは、光の波長程度の屈折率分布を有する屈折率周期構造である。原理的には、1次元、2次元、3次元的に分布させることが可能であり、それぞれ1次元、2次元、3次元のフォトニック結晶配列と呼ばれている。2次元フォトニック結晶は、図9の(b)のようにコアの層厚方向には周期構造を設けず、面内方向に、例えば誘電率が低いホール構造による周期構造を設けた構造である。図9の(b)では屈折率が高い構造に、ホール構造を形成しているが、屈折率が高いピラー構造でも良いし、必ずしもホールやピラーが円形形状である必要は無く、三角形などの多角形でも良い。
【0052】
図9において、コア711を伝搬してきた光は、接続部721により結合し、フォトニック結晶配列のコア721に入射する。フォトニックバンドギャップと呼ばれる光の禁制帯域の光に対して、光は反射されコア711に戻ってくるが、フォトニックバンドギャップ以外の伝搬光に対しては、光はフォトニック結晶配列のコア721を透過して、コア712に結合して伝搬していく。このように、フォトニック結晶構造により、通常では実現不可能な、急激な偏向角を有する偏向子や波長または偏光フィルタなどを、極めて小さい素子サイズで実現可能となる。
【0053】
図10は本発明の第8の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が平面図であり、同図の(b)が斜視図である。同図において、図9と同じ参照符号は同じ構成要素を示すものとする。同図に示すように、フォトニック結晶配列で一部の円孔を埋めた構造による欠陥部分801を形成している。このようなフォトニック結晶配列による光導波路は、この欠陥部分801を光が伝搬するため、フォトニック結晶欠陥光導波路と呼ばれている。このようなフォトニック結晶欠陥光導波路との結合により、ミクロンオーダの曲がり構造や分岐構造、フォトニック結晶のバンド端での群速度異常効果を用いた分散補償素子、光遅延素子などを、極めて小さいサイズで実現可能となる。
【0054】
図11はフォトニック結晶線欠陥導波路にフォトニック結晶での構造を付加した構成を示す平面図である。同図において、線欠陥導波路部分901,902と、フィルタ部分903とから構成されている。フィルタ部分903には欠陥構造があってもよい。このように、フォトニック結晶機能素子を組み合わせることにより複雑な機能を持たせた素子を形成し、それらを低損失な光導波路で接続することが可能となる。
【0055】
図9〜図11ではフォトニック結晶と低屈折率差光導波路との接続に接続部としてチャネル型の構成を示したが、この接続部をフォトニック結晶で構成することも可能である。図12はフォトニック結晶線欠陥導波路の欠陥導波路部分に構造を付加することにより接続構造とした例を示す平面図である。同図において、低屈折率差光導波路のコア1001,1002を有し、またフォトニック結晶導波路の線欠陥部分1003がある。そして、結合をさせるための結合部分を有している。ここでは等価屈折率をあわせるために微小な円孔を配置しているが、ストライプ構造、周辺のフォトニック結晶配列の形状や大きさを変化させた構成をとることも可能である。このような構成により、フォトニック結晶と同一なパターン転写により、接合部を形成することが可能となり、製作プロセスの工程を減らすことが可能となる。
【0056】
次に、本発明の複合光導波路の製作方法の一例を以下に示す。
先ず、土台となる基板上に、低屈折率差光導波路層を形成する。そして、成膜によりクラッドとコアとなる層を形成する。成膜にはプラズマCVD、スピンコート、スパッタ、結晶成長など、材料に適した成膜方法を取れる。次に、成膜されたコア部分にパターニングにより光導波路部分に対応した形状を転写し、その部分を低屈折率媒質で埋める。コアがある部分が盛り上がる可能性があるので、基板表面を研磨により平坦化する。
【0057】
次に、接続部分を有する高屈折率差光導波路層を形成する。低屈折率差光導波路層と同様に成膜により形成することも可能であるが、屈折率差が大きく異なる材料や、電気光学材料といったアクティブ素子を形成することは成膜では格子不整合などの課題により困難である。そこで、ここでは、予め台座に形成してある薄膜を、低屈折率差光導波路層が形成されている基板と接合することで、薄膜形成する方法をとる。接合には、接着剤を使う方式や、プラズマ活性化法による直接接合、融着技術を用いた接合、陽極接合などの方法を材料や膜厚に適した方法をとる。薄膜化には、予めエッチストップ層を導入しておいてウェットエッチングによる台座除去法、研磨による台座除去法やイオン注入などにより界面を形成しておいた後に加熱や薬品により界面を分離する方法などを用いることで可能である。
【0058】
以上のようにして形成された薄膜構造に、リソグラフィーとエッチングによりコアを形成して、その後に低屈折率媒質でコアを埋めることで、高屈折率差光導波路層を形成する。光反射層に空気である場合は、埋める必要はない。リソグラフィーには電子ビーム描画の他、フォトリソグラフィー、レーザ加工などが利用でき、エッチングはプラズマエッチングによるドライエッチングの他に、薬品によるウェットエッチングが利用できる。電界を印加する場合には、形成された複合光導波路の上下に電極を印加することにより、電界印加構成を形成可能となる。
【0059】
本発明の複合光導波路に機能を持たせることができるアクティブな構造あると、光変調器、光スイッチなどへの応用が可能となる。高速な屈折率変化を起こす材料を用いれば、高速な素子が期待できる。そのためには、光伝搬層は電気光学効果を示す材料で構成されていることが望ましい。電気光学効果を示す材料としては、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸チタン、KTP等の無機結晶、PZT,PZLT等のセラミックス、アゾ色素、スチルベンゼン色素、ダストなどの有機分子または有機結晶、さらには量子井戸構造を有する半導体結晶を用いることができる。
【0060】
その他、無機光学材料として、ADP(NH4H2PO4)、KDP(KH2PO4)、DKDP(KD2PO4)、RDP(RbH2PO4)、RDA(RbH2AsO4)、LN、LT、KN、KT、BNN、SBN、LI、BBO、LBO、BSO、GaAs、GaP、InP、ZnTe、ZnSe、ZnS、ZnO、CdTe、CdS、CdSe、Te、Se、Ag3AsS3、Ag3SbS3、AgGaS2、AgGaSe2、ZnGeP2、GdGeAs2、Bi12SiO20、Bi12GeO20、Bi12TiO20、KTiOAsO4、KTiOPO4、BaTiO3、SrTiO3、KTaO3、KTa0.65Nb0.35O3、Cd2Nb2O7、LaBGeO5、セラミックスとしてPZT、PLZT、Ga、In、Al、As、P、N、Sb、Zn、SeのIII−V族、II−VI族半導体混晶である半導体量子井戸構造、有機光学材料として、アゾ色素、スチルベンゼン色素、ダスト、ポリジアセチレン、mNA、MNA、MAP、POM、DAN、DIVA、NPP、COANP、MNBA、MMONS、MBANP、TC−28、DNBB、DMNP、MNA、MNP、MMNA、PCNB、ECNB、IPMPU,ECPMDA、p−NMDA、MNPMDA、4NpNa、ホストゲスト系材料、高分子側錯あるいは主錯にNLO基を化学結合した修飾型材料、架橋系材料があり、ホストゲスト系材料として、ホストポリマー(LCP、PMMA、POE、Poly(Vp−co−St)、PVP、PRO、PCL、PBSSe、PBDG)とゲスト色素(DANS、DANS33、DR1、DCV、TCV、p−NMDA、p−NA、p−DMNP、CPABMCA、MNA)の組み合わせ、高分子側錯あるいは主錯にNLO基を化学結合した修飾型材料で、NLOポリマーとして、Poly(St−DR1)、Poly(St−DASP)、Poly(St−NPP)、Poly(MMA−HNS)、Poly(MMA−co−MMA−DCV)、Poly(St−co−MAAB)、Poly(St−co−MABA)、Poly(St−co−MA−CM)、Poly(MMA−co−MMA−DR1)、Poly(organopho−sphazene−ANS)、PPNA、Poly(VA−co−Vat−NA)、Poly(VAc−co−Vat−NA)、Poly(ST−NA)、Poly(MMA−NA)、Poly(MMA−co−MMA−2R)、Poly(MMS−co−MMA−3R)、P6CS/MMA、ポリアリルアミン、pNA−EG、PMMA/MNA、pNA−PVA、Poly(VDCN−co−VAc)、MSMA、架橋系材料として、(架橋モノマーポリマー、NLO色素)の組み合わせで、(Bis−A、NPDA)、(Bis−A、ANT)、(NNDN、NAN)、(DGE+PS(O)、NPP)、(PVCN、CNNB−R)、LB膜材料として、DCAMP、FA6、PO86、AODA、TMSC、Poly(HEA−co−A−ASB)、PtBM、高分子系3次非線形光学材料として、ポリジアセチレン(PTS、TCDU、DCHDFMP、BTFP、mBCMU)、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニルアセチレン誘導体、ポリアリレンビニレン(PPV、PTV、MO−PPV、PFV)、ポリチオフェン、アヌレン類、フタロシアニン、フラーレン、なども利用可能である。
【0061】
光導波路のクラッドを形成する低屈折率材料としては、フッ化マグネシウムMgF2、フッ化カルシウムCaF2などがあり、これらの材料に対して、スパッタ装置などを用いると比較的容易に成膜可能である。
【0062】
その他の光導波路材料として、Al2O3、MgO、ZrO2、ZnO、Ta2O5、TiO2、Nb2O2などの誘電体の組み合わせがあり、これらの材料に対しても、スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティングなどの方式で成膜することが可能となる。さらに、半導体膜は分子線ビームエピタキシー(MBE)法や有機金属気相成長(MOCVD)法により、成膜することが可能である。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図3】第2の実施の形態例に係る複合光導波路の別の構成を示す図である。
【図4】第2の実施の形態例に係る複合光導波路の別の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す平面図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図11】フォトニック結晶線欠陥導波路にフォトニック結晶での構造を付加した構成を示す平面図である。
【図12】フォトニック結晶線欠陥導波路の欠陥導波路部分に構造を付加することにより接続構造とした例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
100,200,300,400,500,600,700;複合光導波路、101;基板、110,120;光導波路層、
111,121;コア、112,122;クラッド、
130;接続部。
【技術分野】
【0001】
本発明は複合光導波路に関し、詳細には屈折率の異なるコアを有する光導波路同士の結合素子の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の伝搬媒質である光導波路は、異なる屈折率媒質により形成されたコアとクラッドにより構成され、コアがクラッドに囲まれた構造を取る。一般的には、コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも大きく、特定の周波数に対して、コアとクラッドの界面での全反射する性質を利用することで、光を光導波路内に閉じ込め、光信号を伝搬させている。これらの光導波路で構成された曲げ、分岐、結合素子などを組み合わせることにより、光回路が形成される。
【0003】
光回路のサイズは、光導波路の配線許容度に大きく影響する。つまり、光導波路のコアの断面積サイズと、光導波路の低損失曲がり半径に大きく依存する。例えば、コアの断面積が2倍になれば、配線に必要な断面積は2倍になる。また、低損失を与える曲率半径が10cm以上であれば、曲がり導波路を含む光回路の大きさは1辺が10cm以上の大きさとなる。そのため、光回路のサイズを小さくするためには、コアの断面積を小さくし、かつ低損失を与える曲率半径を小さくする必要がある。
【0004】
コアとクラッドの屈折率差を大きくし、コアへの光閉じ込めを強力にすることで、曲がり導波路の曲率半径を小さくすることができる。例えば、屈折率1.5のコアに対して、屈折率1.49のクラッドの光導波路であれば、1cm以上の曲率半径をもつ曲がり導波路が必要であるが、屈折率2のコアに対して、屈折率1.5のクラッドの光導波路であれば、曲率半径は50μm以上になり、屈折率3のコアに対して、屈折率1.5のクラッドの光導波路であれば、曲率半径は5μm以上あれば、低損失な曲がり導波路が構成可能である。つまり、屈折率差を大きくすればするほど、光回路のサイズを決定する要因のひとつである曲がり導波路の曲率半径を小さくすることが可能となる。非特許文献1では、熱酸化シリコン上にシリコン薄膜が形成されたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて、二酸化シリコン上にチャネル形状のシリコンコアを持つ光導波路を形成し、ミクロンオーダの曲率半径が実現できることを示している。
【0005】
上述したように、屈折率差を大きくすることで曲率半径を小さくすることが可能であるが、同時に屈折率差を大きくすることで、光導波路自体の伝搬損失が増大してしまうという課題がある。
【0006】
このような光導波路の損失は、主に、光導波路を形成する材料による吸収損失、構造の揺らぎによる散乱損失、導波路の曲がりに起因する曲がり損失が損失要因となり、これら合計が光導波路の伝搬損失となる。そのため、伝搬損失を減らすためには、それぞれの損失要因を減らす必要がある。吸収損失は光の波長に対する材料の透過特性により決定されるので、使用する波長に対して透明である材料で光導波路を形成する必要がある。また、散乱損失は、光導波路の製作時におけるコアとクラッドの界面の揺らぎに起因するため、なるべく揺らぎが無いように製作する必要がある。しかし、コアとクラッドの屈折率差が大きいと、界面での揺らぎの影響をより強く受けるので、導波路の屈折率分布により、加工性粗れ状態や粗れ状態の自己相関長といった界面状態であっても受ける損失が異なる。更に、曲がり損失は、光の閉じ込め状態によるので、なるべく損失が生じない曲率半径で設計をする必要があり、基本的には曲率半径が大きくなればなるほど、曲がり損失は小さくなる。さらに、上記に述べたように、コアとクラッドの屈折率差が大きくなると、必要な曲率半径は小さくすることができる。
【0007】
ここで、コアとクラッドの屈折率差によって、曲がり半径と伝搬損失が変化することの一例を、従来の光導波路に関して述べる。光通信の伝送路として用いられている光ファイバでは、コアとクラッドの屈折率差はわずかあり、さらに界面での揺らぎが極めて小さいために、光通信帯波長のシングルモード光ファイバで、0.5dB/km以下の超低損失を実現している。しかし、コアとクラッドの屈折率差が小さいために、曲がりには弱く、10cm以上の曲率半径で曲げないと、損失が生じてしまう。
【0008】
また、最も典型的な光導波路で構成される平面光回路(Planer Lightwave Circuit)と呼ばれる光回路では、光導波路は、二酸化シリコンにより形成した形成されるが、この光導波路のコアとクラッドの屈折率差も小さく、リソグラフィーなどの高精度なパターニング技術を使うことで、それらの伝搬損失は1dB/m以下であり、10cm角程度の光回路では低損失光配線が実現できる。しかし、1cm以上の曲率半径を要するために、光回路のサイズはセンチメートルオーダになる。
【0009】
屈折率差を大きくした光導波路では、前述のシリコンコア光導波路では、曲率半径10μm以下が実現可能であるが、伝搬損失は断面の揺らぎをナノメートルオーダに抑えても、現状では5dB/cm程度である。つまり1cmの光配線でも、70%の光を消失してしまうことになる。光回路をミクロンオーダで形成すれば、損失を抑えることが可能であるが、高密度光配線が可能であることを利用した小型光バッファ素子などに利用することは困難となってしまう。
【0010】
また、フォトニック結晶を用いた光導波路でも、フォトニックバンドギャップを利用するためには屈折率差を大きくする必要があるので、屈折率差が大きい材料構成が好ましい。更に、フォトニック結晶光導波路では、フォトニックバンドの傾きの操作により、光のスピードを従来の光導波路よりも極端に遅くすることが可能であるので、よりコンパクトな光回路内に前述の光バッファ機能を持たせることが可能となる。しかしながら、構造をナノメートルで制御しても、現状では5dB/cmと伝搬損失が大きく、構造も複雑であるという課題がある。
【0011】
更に、コアとクラッドの屈折率差が大きいまま通常の光導波路を形成できれば、フォトニック結晶との接続導波路としても利用可能であり、フォトニック結晶構造による光制御素子とのモノリシック形成が可能となる。そのようなフォトニック結晶光制御素子として、例えば、特許文献1にあるような、光偏向素子や電気光学効果を利用した光スイッチがあり、これらとの接続に高屈折率差光導波路を用いることができる。しかしながら、前述のようにフォトニック結晶素子同士を接続する光配線としては、損失が大きいことが課題となる。
【0012】
以上のことから、曲がり導波路やフォトニック結晶光素子を接続する光配線としては、コアとクラッドの屈折率差が小さい光導波路を用いることができれば、光導波路全体の伝搬損失を減少させることが可能となり、高密度で機能的な光回路を実現できる。
【0013】
ここで、コアとクラッドの屈折率差が小さい光導波路のことを低屈折率差導波路と呼び、コアとクラッドの屈折率差が大きい光導波路のことを高屈折率差導波路と呼ぶ。低屈折率差光導波路と、高屈折率差光導波路との結合の一例として、特許文献1の構成が用いられている。この構造では接続部分の高屈折率差光導波路を逆テーパ形状にすることで、等価屈折率を変化させることにより低損失な結合構造を実現している。
【非特許文献1】K. K. Lee, et.al., APL, vol. 77, no. 11, p. 1617 (2000)
【特許文献1】特開2004−184986号公報
【特許文献2】特開2004−334190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、高屈折率差光導波路のコアサイズがサブミクロン角であり、それから徐々に形状を細くして、数十ナノメートルの大きさにまで減少させる構造を形成するためには、高精度なパターニング技術が必要となる。また、テーパ形状の始点でのクラッド部分の屈折率制御も必要となり、クラッドとコアの緻密な形状制御が必要となる。
【0015】
本発明はこれらの問題点を解決するためのものであり、低損失で伝搬可能な低屈折率差光導波路と、曲がり損失が小さい高屈折率差光導波路とを、異なる光導波路層に形成し、その光導波路層に接続部分を形成することで、低損失な、高効率的に結合可能な複合光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記問題点を解決するために、本発明の複合光導波路は、基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、更に各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことに特徴がある。よって、低損失な、高効率的に結合可能な複合光導波路を提供できる。
【0017】
また、接続部は光導波路層におけるコアの一部であることが、製造プロセスや結合効率から鑑みて好ましい。
【0018】
更に、本発明の複合光導波路は、基板上に、分離された複数のコアとクラッドを含んで構成された第1の光導波路層と、コアとクラッドを含んで構成された第2の光導波路層とを積層して形成して構成されている。そして、本発明の複合光導波路によれば、各光導波路層におけるコアとクラッドとの屈折率差が異なり、各光導波路層内を含む各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことに特徴がある。よって、低損失な、高効率的に結合可能な光配線が可能となる。また、接続部は第2の光導波路層におけるコアの一部であることが好ましい。
【0019】
また、接続部は各光導波路層における各コアと離間して設けられていることにより、光が互いのコアの間で高効率にやり取りされる。
【0020】
更に、光導波路層が曲がり部分を有することにより、低損失な、高密度な配線が可能となる。
【0021】
また、屈折率差が大きい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径が、屈折率差が小さい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径よりも小さいことにより、素子面積を小さくでき、コンパクトで低損失な光伝送路を実現できる。
【0022】
更に、光導波路はフォトニック結晶配列構造を有することにより、急激な偏向角を有する偏向子や波長または偏光フィルタなどを極めて小さいサイズで実現できる。
【0023】
また、光導波路は、フォトニック結晶配列構造のコアに、配列構成部がない欠陥部分を設けて形成されるフォトニック結晶欠陥光導波路であることにより、高密度光配線のための機能素子であるフォトニック結晶導波路と低損失伝搬する光導波路とを高効率で結合可能な複合光導波路を提供できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の複合光導波路によれば、光結合間隔を精密に制御し、かつコアとクラッドの屈折率分布を柔軟に取ることができる光導波路層を比較的容易に構成でき、かつ低損失な光伝搬が可能な低屈折率差光導波路と、素子サイズを決定する急激な曲がり導波路や強い機能を持たせることが可能なフォトニック結晶導波路を形成する高屈折率差光導波路を、それぞれ異なる光導波路層に設け、光導波路層のコア間に光結合現象を生じる接続部を設けることで、それらの光導波路を伝搬する光を高効率で結合させることが可能となる。このような構成により、低損失で高密度な光遅延素子、光バッファ素子、光メモリ素子などを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は本発明の第1の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)は断面図、同図の(b)は平面図、同図の(c)は前面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路100において、台座となる基板101上に光導波路層110,120が形成されている。この基板101は、ガラスなどの誘電体材料、シリコンなどの半導体材料、ニオブ酸リチウムなどの光学結晶材料であればよく、平坦かつ平行度が高い基板であれば、大面積に均一で素子が構成できるので、より好ましい。ここで、光導波路層110,120は、基板101に対して同一平面状にはなく、図1の(a)に示すように、基板101、光導波路層110、光導波路層120の順で積層されている。それぞれの光導波路層内では略同一の材料により、モノリシックに光導波路が形成され、それぞれの光導波路がつながっている必要はなく、また形状も同じ必要はない。ただし、積層部分の中間にある層は、上部に積層可能な平坦構造であることが好ましい。
【0026】
また、光導波路層110は、コア111とクラッド112とから形成され、このコア111とクラッド112の間に屈折率の差を設けることで、光はコア111とクラッド112の境界面で反射しながら光は伝搬する。コア111の屈折率n1がクラッド112の屈折率n2よりも大きい場合、光は特定の周波数条件であれば、コア111とクラッド112の境界面で全反射するので、コア111内に光を強く閉じ込めることができる。ここで、境界面での製作上の揺らぎが無ければ、極めて低損失な光導波路を形成することが可能である。
【0027】
同様に、光導波路層120は、コア121とクラッド122とから形成され、光伝搬構造になっている。これも同様に、コア121の屈折率がクラッド122の屈折率よりも高い構造になっていれば、全反射により光を閉じ込めることが可能である。
【0028】
図1では、光導波路層120のコア121とクラッド122の屈折率差は小さく、光導波路層110のコア111とクラッド112の屈折率差が大きい光導波路であると仮定して、以下では特性を記述するが屈折率差の大小は積層順序によらない。本発明では、光導波路層110は曲がり構造を含まない低損失伝搬に用いる光導波路であり、光導波路層120は低損失曲がり伝搬に用いる光導波路である。つまり、光導波路層110のコア111とクラッド112の屈折率差を小さくすることで、伝搬損失の増加を抑え、光導波路層120のコア121とクラッド122の屈折率差を大きくすることで、急激な曲がりを実現する。ここで、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をn2としたとき、以下の式で定義される値を比屈折率差Δと呼ぶ。
【0029】
Δ=(n12−n22)/2n12
【0030】
この屈折率差によって、高屈折率差光導波路と低屈折率差光導波路の目安をつけることができる。
【0031】
低屈折率差光導波路を有する光導波路層110の比屈折率差は5%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。このような比屈折率差は、ポリマーや二酸化シリコン、五酸化二タンタルなどの材料を、屈折率を調整した、二酸化シリコンなどをクラッドとして形成することで、実現可能である。これは、現在、実用化されている平面光回路に用いられている材料でもある。例えばコアの屈折率を1.5、クラッドの屈折率を1.49と仮定すると、比屈折率差は0.6%となる。また、10Gbpsを超える外部高速変調器として実用化されているニオブ酸リチウム基板にチタン拡散による光導波路も比屈折率差は1%程度である。つまり、現在商用化されている光導波路の多くは低屈折率差光導波路である。
【0032】
次に、低屈折率差光導波路を形成する方法の一例を以下に示す。
台座となるシリコンの基板に熱酸化もしくは成膜装置によりクラッド層を形成する。続けて、屈折率が高いクラッド層を成膜し、リソグラフィーとエッチングにより導波路のコア構造をパターニングする。パターニングでのレジストを除去するなどの表面処理後、コアをクラッド材料で覆うことで光導波路が形成できる。その後、研磨による表面の平坦化処理することで積層構造に適した構造にする。
【0033】
一方、高屈折率差光導波路を有する光導波路層120の比屈折率差は10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上である。このような比屈折率差は、コアとクラッドの屈折率差を大きくすることで実現可能である。例えばコアの屈折率を2とし、クラッドの屈折率を1.5としたら比屈折率差が22%となる。また、コアの屈折率を3.5、クラッドの屈折率1.5としたときには比屈折率差は41%となる。もちろん、大きな屈折率差を実現するためには、コアの下部を低屈折率媒質とし、上部と断面を空気クラッドとしてもよい。空気クラッドにすると、屈折率差がより大きく取ることが可能となる。たとえば、コアの屈折率を3.5、クラッドの屈折率を1.0(空気)としたときには比屈折率差は46%となる。このように大きな屈折率差であれば、曲率半径を1μm程度にまで減少させることが可能となり、高密度な光配線が実現可能である。
【0034】
屈折率が2程度のコアは、SiN(窒化シリコン)、Ta2O5(五酸化ニタンタル)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3、SBN、KTNなどのガラス材料や光学結晶材料で構成できる。このような材料は光通信デバイスの材料として用いられている材料である。また、屈折率が3以上のコアを持つような材料でもよく、Si(シリコン)やGaAs(ガリウム砒素)、InP(インジウム燐)などの半導体材料と、低屈折率媒質との組み合わせで、このような高屈折率差光導波路を構成することも可能である。半導体材料は可視光領域の波長では不透明であるが、光通信に用いられる波長1.6μmから1.3μmの赤外光波長では透明として扱うことが可能である。低屈折率のクラッド材料としては、SiO2(熱酸化シリコン)やポリマー材料、一部の光学ガラスや光学結晶を用いることが可能である。
【0035】
高屈折率差光導波路の製作方法も低屈折率差光導波路と同様な方法で形成可能である。しかし、屈折率が大きく異なる材料に対して、コア層を成膜する方法が必ずしも適しているとは限らない。ここでは、一例として、SiO2上にSiもしくはLiNbO3のコアを形成する方法を示す。まず、Si基板上に熱酸化もしくは成膜によりSiO2層を形成する。その後、SiO2面同士を接合し、片面を研磨により薄膜化することによりコア層を形成する。同様に、熱酸化膜を形成された基板上にSiO2層を形成し、LiNbO3を接合する。その後、LiNbO3を研磨などで薄膜化することにより、コア層を形成する。薄膜化には、イオン注入により界面を形成し、過熱や薬品処理により、その界面から薄膜層を切り出せる方式を利用しても良い。台座となる基板は、加熱処理を考えると、薄膜層と同じ材質を用いることが好ましいが、常温接合など、加熱処理を必要としないプロセスであれば、必ずしも同じ基板である必要はない。
【0036】
導波路を単純に積層構造にしただけでは、等価屈折率の急激な変化により、高効率での結合が困難となる。そこで、本発明では、図1に示すように、光導波路のコア111とコア121との間に接続部130を設けている。この接続部130により、光導波路層110を伝搬してきた光電力が光導波路層120に結合し伝搬していく。もちろん、その逆方向の伝搬も起こる。
【0037】
光結合は一般的には光ファイバカップラーのように、光導波路構造が同じである光導波路を波長と同程度の距離までに近接させると、それぞれのコア間で一方の光電力が徐々に他方の光導波路に移動するという現象である。この光結合は必ずしも同一の光導波路である必要はなく、伝搬モードの等価屈折率がほぼ等しければ起こる現象である。つまり、この現象を利用すれば、接続部にコアの屈折率や面積、クラッドの屈折率などを調整した構造により、光結合を起こすことが可能となる。
【0038】
図1に示す第1の実施の形態例では、接続部130がコア121に直結している構造である。また、接続部130はコア111の直上に形成され、層厚方向の間隔は波長程度まで近接させ、光結合により光を乗り移らせる。コア111と接続部130がオーバラップしている距離は、それぞれの屈折率と形状に依存している。形状と屈折率は、図1に示すような高い屈折率で、断面積が小さいチャネル構造以外に、テーパ構造、逆テーパ構造、伝搬方向に不連続なチャネル構造の重ね合わせなどが考えられる。また、必ずしも接続部分の屈折率が最も高い必要はなく、コア111とコア121との中間の屈折率であっても良い。断面積形状も最も小さい必要はなく、高効率に結合する構造であれば、コア111とコア121の中間の大きさを持つようなサイズでも良い。更に、コア121の形状の一部が変化した構造である場合、光が結合する部分が接続部となる。
【0039】
ここで、同一面内で、光結合を起こさせるような構成を形成することは、複雑なコアのパターニングや、クラッドの屈折率調整が必要となり、高度なプロセス技術を必要とする。また、高屈折率差光導波路では光結合間隔がサブミクロンオーダとなり、プロセスの課題はさらに大きい。本発明のような、積層構造であれば、積層間隔は現在ではナノメートルで制御できる成膜装置が一般的であることから、リソグラフィーなどで構造を微調するよりは、積層間隔の調整をする方が、プロセス上、比較的容易である。
【0040】
図2は本発明の第2の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路200は、コア211とクラッド212を有する低屈折率差光導波路層210と、コア221とクラッド222を有する高屈折率差光導波路層220とを含んで構成されている。ここでは、接続部230がコア211とコア221との間にあることで、光が互いのコアの間で、高効率にやり取りされる。
【0041】
図2では接続部230がクラッド212内にある構成であるが、図3のように、高屈折率差光導波路層220のクラッド222内にあるような構成でもよい。また、図4のように、接続部230が、高屈折率差光導波路層220のクラッド222と低屈折率差光導波路210のクラッド212とは異なる屈折率を持つ層240内にある構成でもよい。図2ではコア211,221はそれぞれ接続部230と一部しかオーバラップしていないが、接続部230の全体がオーバラップしていても良いし、コア211とコア221が上部から見て重なっている構造でも良い。ただし、接続部230とそれぞれのコア211,221との間隔は波長程度である必要がある。
【0042】
図5は本発明の第3の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路300は、コア311とクラッド312を有する低屈折率差光導波路層310と、コア321とクラッド322を有する高屈折率差光導波路層320とを含んで構成されている。そして、コア311が同一面内に形成され、それらをクラッド312によって接続する構成である。接続部330は高屈折率差導波路層320にある構成であるが、前述のような接続部の構成であってもよい。このような構成にすることにより、高屈折率差光導波路層320がもつ特徴を生かした光配線が可能となる。
【0043】
図6は本発明の第4の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路400は、コア411とクラッド412を有する低屈折率差光導波路層410と、コア421とクラッド422を有する高屈折率差光導波路層420と、コア431とクラッド432を有する低屈折率差光導波路層430とを含んで構成されている。接続される光導波路が異なる平面内にあるときの接続を示している。図6では、低屈折率差光導波路層410、高屈折率差光導波路層420、低屈折率差光導波路層430が基板450に積層され、低屈折率差光導波路層410と低屈折率差光導波路層430とを接続するために高屈折率差光導波路層420を設けている。このような構成であれば、コアとクラッドの屈折率差が異なる光導波路を、高精度なパターニング技術を用いずに、成膜だけで構成できる。前述と同様に、接続部440は高屈折率差導波路層420にある構成であるが、前述のような接続部の構成であってもよい。このような構成にすることにより、それぞれの平面内に形成されている光導波路の特性を生かした光配線が可能となる。
【0044】
図7は本発明の第5の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)は低屈折率差光導波路層と高屈折率差光導波路層からなる高密度光配線の一例を示した斜視図であり、同図の(b)は低屈折率差光導波路層のコアが複数配置されている平面である。低屈折率差光導波路層510のコア511が複数配置されている平面上に高屈折率差光導波路層(図示せず)が積層されている。同図の(a)に示すように、本実施の形態例の複合光導波路500は、高屈折率差光導波路層のコア521を有し、低屈折率差光導波路層510と高屈折率差光導波路層とを接続する接続部530を有している。本実施の形態例の場合はコアが空気クラッドに露出されている構成をしている。
【0045】
このような構造であれば、屈折率差が大きく取れるため、高屈折率差光導波路の特色である曲率半径がミクロンオーダである曲がりを実現できる。図7では低屈折率差光導波路層の長さと、高屈折率差光導波路層の大きさは同じ程度で示しているが、例えば直線状の低屈折率差光導波路層の長手方向の長さを1cm、高屈折率差光導波路層の曲率半径を50μmとすると、極めてコンパクトに光導波路を折りたたむことが可能となる。さらに結合部の長さを最大1cm取ることができるので、徐々に光電力を移行させる構造も構成可能となる。
【0046】
次に、高密度配線の効果の一例として、以下で光バッファ機能に示す。
例えば、1nsの光遅延を起こさせるために、必要な光配線の長さは、コアの屈折率を1.5と仮定したときに、20cmとなる。この長さの光配線を低屈折率差導波路で実現しようとするときの損失とサイズを考える。低屈折率差光導波路の伝搬損失が0.1dB/cm以下とすると、20cm伝搬による損失は2dB以下となる。しかし、直線で構成すると、20cmの素子サイズが必要となり、さらに曲げ構造を導入して素子をコンパクト化しようとすると、低損失な曲率半径が1cm以上と程度となるために、素子面積は大きくなり、高密度な光配線を実現できない。
【0047】
一方、高屈折率差光導波路であれば、コアの屈折率を3として、1nsの光遅延に必要な光配線の長さは、10cmとなる。この導波路では、曲率半径がミクロンオーダであるので、1cm角内のチップに光導波路を収めることが可能であるが、伝搬損失が1dB/cmであっても、10cm伝搬させると、10dBの損失を生じてしまうことになる。さらに、現状の5dB/cmであると50dBの損失となり、ほとんど光信号を検出することができない。
【0048】
以上ことから、低屈折率差光導波路だけでも高屈折率差光導波路だけでも、コンパクトで低損失な光伝送路としての複合光導波路の実現が困難である。そこで、本発明のように低屈折率差光導波路と高屈折率差光導波路を組み合わせ、それらの結合を低損失で可能とする構成であれば、上記課題を解決できる。図7の(b)に示すように、例えば20cmの光導波路を20分割並列配置し、それらを高屈折率差光導波路の数10μmの曲がり導波路で結合すれば、素子の占有面積は10mm×1mm程度の高密度光配線が可能となる。このとき、伝搬損失は2dB以下、高屈折率差光導波路と低屈折率差光導波路との接続損失が0.1dBとしたときに2dB程度となり、全体として4dB以下の損失で、高密度光配線が可能となる。伝搬損失は、高精度なリソグラフィーを用いると、1dB以下改善することが可能であり、接続損失も構造の最適化で、0.05dB以下と、ほとんど無損失とすることが可能となるので、全体の損失を2dB以下とすることが可能となる。
【0049】
図8は本発明の第6の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路600は、曲がり導波路を用いた光信号分配構造を有し、低屈折率差光導波路610、高屈折率差光導波路620及び接続部630を含んで構成されている。なお、光導波路形状を変えることで接続部となる構造とすることも可能である。低屈折率差光導波路に分岐構造を導入する場合、分岐部分の広がり角度を大きく取ることができない。通常のY字型分岐構造であれば、分岐広がり角度は10°以下であり、光電力を完全に分離するためには100μm以上の距離を伝搬させる必要がある。しかし、図8のような構造であると、分岐部分が占める面積は10μm角程度になり、コンパクトな信号分離構造を形成することが可能となる。
【0050】
図9は本発明の第7の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が断面図であり、同図の(b)が平面図である。同図に示す本実施の形態例の複合光導波路700は、コア711,712とクラッド713を有する低屈折率差光導波路層710と、コア721とクラッド722を有する高屈折率差光導波路層720とを含んで構成されている。また、高屈折率差光導波路層720のコア721には2次元フォトニック結晶構造が形成されている。
【0051】
フォトニック結晶とは、光の波長程度の屈折率分布を有する屈折率周期構造である。原理的には、1次元、2次元、3次元的に分布させることが可能であり、それぞれ1次元、2次元、3次元のフォトニック結晶配列と呼ばれている。2次元フォトニック結晶は、図9の(b)のようにコアの層厚方向には周期構造を設けず、面内方向に、例えば誘電率が低いホール構造による周期構造を設けた構造である。図9の(b)では屈折率が高い構造に、ホール構造を形成しているが、屈折率が高いピラー構造でも良いし、必ずしもホールやピラーが円形形状である必要は無く、三角形などの多角形でも良い。
【0052】
図9において、コア711を伝搬してきた光は、接続部721により結合し、フォトニック結晶配列のコア721に入射する。フォトニックバンドギャップと呼ばれる光の禁制帯域の光に対して、光は反射されコア711に戻ってくるが、フォトニックバンドギャップ以外の伝搬光に対しては、光はフォトニック結晶配列のコア721を透過して、コア712に結合して伝搬していく。このように、フォトニック結晶構造により、通常では実現不可能な、急激な偏向角を有する偏向子や波長または偏光フィルタなどを、極めて小さい素子サイズで実現可能となる。
【0053】
図10は本発明の第8の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図の(a)が平面図であり、同図の(b)が斜視図である。同図において、図9と同じ参照符号は同じ構成要素を示すものとする。同図に示すように、フォトニック結晶配列で一部の円孔を埋めた構造による欠陥部分801を形成している。このようなフォトニック結晶配列による光導波路は、この欠陥部分801を光が伝搬するため、フォトニック結晶欠陥光導波路と呼ばれている。このようなフォトニック結晶欠陥光導波路との結合により、ミクロンオーダの曲がり構造や分岐構造、フォトニック結晶のバンド端での群速度異常効果を用いた分散補償素子、光遅延素子などを、極めて小さいサイズで実現可能となる。
【0054】
図11はフォトニック結晶線欠陥導波路にフォトニック結晶での構造を付加した構成を示す平面図である。同図において、線欠陥導波路部分901,902と、フィルタ部分903とから構成されている。フィルタ部分903には欠陥構造があってもよい。このように、フォトニック結晶機能素子を組み合わせることにより複雑な機能を持たせた素子を形成し、それらを低損失な光導波路で接続することが可能となる。
【0055】
図9〜図11ではフォトニック結晶と低屈折率差光導波路との接続に接続部としてチャネル型の構成を示したが、この接続部をフォトニック結晶で構成することも可能である。図12はフォトニック結晶線欠陥導波路の欠陥導波路部分に構造を付加することにより接続構造とした例を示す平面図である。同図において、低屈折率差光導波路のコア1001,1002を有し、またフォトニック結晶導波路の線欠陥部分1003がある。そして、結合をさせるための結合部分を有している。ここでは等価屈折率をあわせるために微小な円孔を配置しているが、ストライプ構造、周辺のフォトニック結晶配列の形状や大きさを変化させた構成をとることも可能である。このような構成により、フォトニック結晶と同一なパターン転写により、接合部を形成することが可能となり、製作プロセスの工程を減らすことが可能となる。
【0056】
次に、本発明の複合光導波路の製作方法の一例を以下に示す。
先ず、土台となる基板上に、低屈折率差光導波路層を形成する。そして、成膜によりクラッドとコアとなる層を形成する。成膜にはプラズマCVD、スピンコート、スパッタ、結晶成長など、材料に適した成膜方法を取れる。次に、成膜されたコア部分にパターニングにより光導波路部分に対応した形状を転写し、その部分を低屈折率媒質で埋める。コアがある部分が盛り上がる可能性があるので、基板表面を研磨により平坦化する。
【0057】
次に、接続部分を有する高屈折率差光導波路層を形成する。低屈折率差光導波路層と同様に成膜により形成することも可能であるが、屈折率差が大きく異なる材料や、電気光学材料といったアクティブ素子を形成することは成膜では格子不整合などの課題により困難である。そこで、ここでは、予め台座に形成してある薄膜を、低屈折率差光導波路層が形成されている基板と接合することで、薄膜形成する方法をとる。接合には、接着剤を使う方式や、プラズマ活性化法による直接接合、融着技術を用いた接合、陽極接合などの方法を材料や膜厚に適した方法をとる。薄膜化には、予めエッチストップ層を導入しておいてウェットエッチングによる台座除去法、研磨による台座除去法やイオン注入などにより界面を形成しておいた後に加熱や薬品により界面を分離する方法などを用いることで可能である。
【0058】
以上のようにして形成された薄膜構造に、リソグラフィーとエッチングによりコアを形成して、その後に低屈折率媒質でコアを埋めることで、高屈折率差光導波路層を形成する。光反射層に空気である場合は、埋める必要はない。リソグラフィーには電子ビーム描画の他、フォトリソグラフィー、レーザ加工などが利用でき、エッチングはプラズマエッチングによるドライエッチングの他に、薬品によるウェットエッチングが利用できる。電界を印加する場合には、形成された複合光導波路の上下に電極を印加することにより、電界印加構成を形成可能となる。
【0059】
本発明の複合光導波路に機能を持たせることができるアクティブな構造あると、光変調器、光スイッチなどへの応用が可能となる。高速な屈折率変化を起こす材料を用いれば、高速な素子が期待できる。そのためには、光伝搬層は電気光学効果を示す材料で構成されていることが望ましい。電気光学効果を示す材料としては、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸チタン、KTP等の無機結晶、PZT,PZLT等のセラミックス、アゾ色素、スチルベンゼン色素、ダストなどの有機分子または有機結晶、さらには量子井戸構造を有する半導体結晶を用いることができる。
【0060】
その他、無機光学材料として、ADP(NH4H2PO4)、KDP(KH2PO4)、DKDP(KD2PO4)、RDP(RbH2PO4)、RDA(RbH2AsO4)、LN、LT、KN、KT、BNN、SBN、LI、BBO、LBO、BSO、GaAs、GaP、InP、ZnTe、ZnSe、ZnS、ZnO、CdTe、CdS、CdSe、Te、Se、Ag3AsS3、Ag3SbS3、AgGaS2、AgGaSe2、ZnGeP2、GdGeAs2、Bi12SiO20、Bi12GeO20、Bi12TiO20、KTiOAsO4、KTiOPO4、BaTiO3、SrTiO3、KTaO3、KTa0.65Nb0.35O3、Cd2Nb2O7、LaBGeO5、セラミックスとしてPZT、PLZT、Ga、In、Al、As、P、N、Sb、Zn、SeのIII−V族、II−VI族半導体混晶である半導体量子井戸構造、有機光学材料として、アゾ色素、スチルベンゼン色素、ダスト、ポリジアセチレン、mNA、MNA、MAP、POM、DAN、DIVA、NPP、COANP、MNBA、MMONS、MBANP、TC−28、DNBB、DMNP、MNA、MNP、MMNA、PCNB、ECNB、IPMPU,ECPMDA、p−NMDA、MNPMDA、4NpNa、ホストゲスト系材料、高分子側錯あるいは主錯にNLO基を化学結合した修飾型材料、架橋系材料があり、ホストゲスト系材料として、ホストポリマー(LCP、PMMA、POE、Poly(Vp−co−St)、PVP、PRO、PCL、PBSSe、PBDG)とゲスト色素(DANS、DANS33、DR1、DCV、TCV、p−NMDA、p−NA、p−DMNP、CPABMCA、MNA)の組み合わせ、高分子側錯あるいは主錯にNLO基を化学結合した修飾型材料で、NLOポリマーとして、Poly(St−DR1)、Poly(St−DASP)、Poly(St−NPP)、Poly(MMA−HNS)、Poly(MMA−co−MMA−DCV)、Poly(St−co−MAAB)、Poly(St−co−MABA)、Poly(St−co−MA−CM)、Poly(MMA−co−MMA−DR1)、Poly(organopho−sphazene−ANS)、PPNA、Poly(VA−co−Vat−NA)、Poly(VAc−co−Vat−NA)、Poly(ST−NA)、Poly(MMA−NA)、Poly(MMA−co−MMA−2R)、Poly(MMS−co−MMA−3R)、P6CS/MMA、ポリアリルアミン、pNA−EG、PMMA/MNA、pNA−PVA、Poly(VDCN−co−VAc)、MSMA、架橋系材料として、(架橋モノマーポリマー、NLO色素)の組み合わせで、(Bis−A、NPDA)、(Bis−A、ANT)、(NNDN、NAN)、(DGE+PS(O)、NPP)、(PVCN、CNNB−R)、LB膜材料として、DCAMP、FA6、PO86、AODA、TMSC、Poly(HEA−co−A−ASB)、PtBM、高分子系3次非線形光学材料として、ポリジアセチレン(PTS、TCDU、DCHDFMP、BTFP、mBCMU)、ポリアセチレン誘導体、ポリフェニルアセチレン誘導体、ポリアリレンビニレン(PPV、PTV、MO−PPV、PFV)、ポリチオフェン、アヌレン類、フタロシアニン、フラーレン、なども利用可能である。
【0061】
光導波路のクラッドを形成する低屈折率材料としては、フッ化マグネシウムMgF2、フッ化カルシウムCaF2などがあり、これらの材料に対して、スパッタ装置などを用いると比較的容易に成膜可能である。
【0062】
その他の光導波路材料として、Al2O3、MgO、ZrO2、ZnO、Ta2O5、TiO2、Nb2O2などの誘電体の組み合わせがあり、これらの材料に対しても、スパッタ、電子ビーム蒸着、イオンプレーティングなどの方式で成膜することが可能となる。さらに、半導体膜は分子線ビームエピタキシー(MBE)法や有機金属気相成長(MOCVD)法により、成膜することが可能である。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図3】第2の実施の形態例に係る複合光導波路の別の構成を示す図である。
【図4】第2の実施の形態例に係る複合光導波路の別の構成を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す平面図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図10】本発明の第8の実施の形態例に係る複合光導波路の構成を示す図である。
【図11】フォトニック結晶線欠陥導波路にフォトニック結晶での構造を付加した構成を示す平面図である。
【図12】フォトニック結晶線欠陥導波路の欠陥導波路部分に構造を付加することにより接続構造とした例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
100,200,300,400,500,600,700;複合光導波路、101;基板、110,120;光導波路層、
111,121;コア、112,122;クラッド、
130;接続部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成する複合光導波路において、
前記各光導波路層における前記コアと前記クラッドとの屈折率差が異なり、前記各光導波路層内を含む前記各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことを特徴とした複合光導波路。
【請求項2】
前記接続部は前記光導波路層における前記コアの一部である請求項1記載の複合光導波路。
【請求項3】
基板上に、分離された複数のコアとクラッドを含んで構成された第1の光導波路層と、コアとクラッドを含んで構成された第2の光導波路層とを積層して形成する複合光導波路において、
前記各光導波路層における前記コアと前記クラッドとの屈折率差が異なり、前記各光導波路層内を含む前記各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことを特徴とする複合光導波路。
【請求項4】
前記接続部は前記第2の光導波路層における前記コアの一部である請求項4記載の複合光導波路。
【請求項5】
前記接続部は前記各光導波路層における前記各コアと離間して設けられている請求項1又は3に記載の複合光導波路。
【請求項6】
前記光導波路層が曲がり部分を有する請求項1〜5のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項7】
屈折率差が大きい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径が、屈折率差が小さい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径よりも小さい請求項1〜6のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項8】
前記光導波路はフォトニック結晶配列構造を有する請求項1〜7のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項9】
前記光導波路は、フォトニック結晶配列構造の前記コアに、配列構成部がない欠陥部分を設けて形成されるフォトニック結晶欠陥光導波路である請求項8記載の複合光導波路。
【請求項1】
基板上に、コアとクラッドを含んで構成された複数の光導波路層を積層して形成する複合光導波路において、
前記各光導波路層における前記コアと前記クラッドとの屈折率差が異なり、前記各光導波路層内を含む前記各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことを特徴とした複合光導波路。
【請求項2】
前記接続部は前記光導波路層における前記コアの一部である請求項1記載の複合光導波路。
【請求項3】
基板上に、分離された複数のコアとクラッドを含んで構成された第1の光導波路層と、コアとクラッドを含んで構成された第2の光導波路層とを積層して形成する複合光導波路において、
前記各光導波路層における前記コアと前記クラッドとの屈折率差が異なり、前記各光導波路層内を含む前記各光導波路層の間に光結合現象を生じる接続部を設けたことを特徴とする複合光導波路。
【請求項4】
前記接続部は前記第2の光導波路層における前記コアの一部である請求項4記載の複合光導波路。
【請求項5】
前記接続部は前記各光導波路層における前記各コアと離間して設けられている請求項1又は3に記載の複合光導波路。
【請求項6】
前記光導波路層が曲がり部分を有する請求項1〜5のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項7】
屈折率差が大きい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径が、屈折率差が小さい光導波路層内に設けられた曲がり部分の曲率半径よりも小さい請求項1〜6のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項8】
前記光導波路はフォトニック結晶配列構造を有する請求項1〜7のいずれかに記載の複合光導波路。
【請求項9】
前記光導波路は、フォトニック結晶配列構造の前記コアに、配列構成部がない欠陥部分を設けて形成されるフォトニック結晶欠陥光導波路である請求項8記載の複合光導波路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−52328(P2007−52328A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238444(P2005−238444)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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