複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、軸受装置および回転電機
【課題】軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、簡易な方法で製造することができるとともに、異種材料の接合部において優れた接合強度を有する複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備えた軸受装置、およびこの軸受装置を備えた回転電機を提供することを目的とする。
【解決手段】複合軸受部材10は、表面が回転部と接触する軸受摺動材20と、この軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とを備える。また、軸受摺動材20は、表面に回転部を摺動させる摺動層50を有している。さらに、軸受摺動材20は、摺動層50と接合層40との間に、接合層40を構成する金属材料と同一の金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を備える。
【解決手段】複合軸受部材10は、表面が回転部と接触する軸受摺動材20と、この軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とを備える。また、軸受摺動材20は、表面に回転部を摺動させる摺動層50を有している。さらに、軸受摺動材20は、摺動層50と接合層40との間に、接合層40を構成する金属材料と同一の金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機等に用いられる複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備える軸受装置、およびこの軸受装置を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業技術の発展に伴い、各種軸受において、回転軸の高速化への対応や高面圧化などが要求されている。これまで軸受材料として、ホワイトメタル(例えば、第一種;Sn88〜92重量%、Sb5〜7重量%、Cu3〜5重量%)が多用されてきた。しかしながら、これらの軟質金属材料は、融点が低く、高温における強度の大幅な低下および焼付きの問題を有する点から、その使用範囲は制限されている。
【0003】
ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂材料は、摩擦係数が低く、耐熱性に優れ、軸受材料として適している。また、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂材料、ポリイミド(PI)樹脂材料は、ポリテトラフロオロエチレン樹脂材料と比較して、摩擦係数がやや高いが、高温における機械的性質に優れている。これらの樹脂材料に各種のセラミックス繊維、若しくは粒子の充てん材を添加して、機械的性質、摩擦特性および摩耗特性を兼備した摺動材料を製造することができる。
【0004】
軸受すべり面を、上記したような樹脂材料で構成し、軸受基材を金属材料で構成する軸受装置を得るためには、異種材料である樹脂材料と金属材料とを十分な接合強度を有するように接合することが必要となる。
【0005】
しかしながら、樹脂材料と金属材料とを接合する際、金属材料どうしの接合に適用されている接合方法を採用した場合には、十分な接合強度を得ることは難しい。すなわち、異なる金属部材を溶湯凝固法で接合する場合には、金属材料どうしであるために拡散反応等が起こり、機械的な結合とともに物理的もしくは化学的な結合が生じる。これに対して、樹脂材料と金属材料とを接合する場合には、単純な機械的結合となるため、十分な接合強度を得ることは困難となる。また、樹脂材料と金属材料とを高温・高圧条件下で接合した場合には、樹脂材料に劣化が生じたり、高温・高圧条件下で長時間保持するため、製造コストが増大するなどの問題が生じる。
【0006】
また、樹脂材料と金属材料とを接合する際に、接着剤等を用いて接合することも考えられるが、樹脂材料および金属材料の双方に対して良好な接着性を有する接着剤を選定することは困難である。さらに、樹脂系接着剤の場合には、樹脂と金属との接合界面が必ず存在するため、金属材料と樹脂材料との間の接合強度を基本的に改善することはできない。
【0007】
また、2種類の部材を接合する際に、界面強度の向上を図る方法として、例えばホーニングや化学エッチング等で表面積を拡大して接合面積を増大させる方法が知られている。しかしながら、ホーニングや化学エッチング等では、接合面積の拡大に限界があり、また界面のせん断剥離に対する抵抗が小さいため、異種材料間の接合強度を十分に高めることはできない。
【0008】
一方、従来の軸受材料における種々の問題点を考慮して、例えば、樹脂材料と金属材料の接合において、金属材料の表面に多孔質の中間層を設け、この多孔質の中間層内に樹脂材料を充填しながら他方の金属材料上に積層する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この発明によれば、多孔質の中間層は、予め軸受基材に真空下で接合される。
【特許文献1】特許第3194866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した、樹脂材料と金属材料とを接合する従来の接合方法を用いて、例えば水力発電機器用軸受を作製する場合、軸受基材の総重量は数百kgから数トンとなるため、真空下で接合するプロセスが極めて高価となり、製造コストが増加する。また、真空設備には、容量の限界があるため、真空下における作製が困難となることもある。
【0010】
このようなことから、例えば、樹脂材料と金属材料というような異種材料を接合した軸受材料においては、軸受の性能、信頼性を犠牲にすることなく、設備能力に依存せず、製造コストを下げることが課題とされている。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、簡易な方法で製造することができるとともに、異種材料の接合部において優れた接合強度を有する複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備えた軸受装置、およびこの軸受装置を備えた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、一方の表面に回転部を摺動させる摺動層を有する軸受摺動材と、前記軸受摺動材を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材と、前記軸受摺動材の他方の表面と前記軸受基材の一方の表面とを接合する接合層とを具備し、前記摺動層と前記接合層との間の前記軸受摺動材を構成する層が、金属材料を分散して含有し、かつ前記金属材料の含有量が前記接合層に向かって増加する組成傾斜層であることを特徴とする複合軸受部材が提供される。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着する樹脂粒子融着工程と、前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、前記積層体を、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属粒子および前記金属部材を溶融して、前記形成体の各層間、および前記形成体と前記基材とを接合する接合工程とを具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明の一態様によれば、樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着し、かつ前記金属粒子を溶融して前記形成体の外部に流出させ、前記形成体に気孔を形成する気孔形成工程と、前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、前記積層体を、前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属部材を溶融して、前記気孔内に含浸させ、かつ前記形成体と前記基材とを接合する接合工程とを具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、回転軸の軸方向のスラスト荷重を摺動可能に支持するスラスト軸受および回転方向の軸振れを摺動可能に支持するガイド軸受を具備する軸受装置であって、前記スラスト軸受および前記ガイド軸受における軸受部材の少なくとも一方が、上記した複合軸受部材で構成されていることを特徴とする軸受装置が提供される。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、上記した軸受装置を備えていることを特徴とする回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備えた軸受装置、およびこの軸受装置を備えた回転電機によれば、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、簡易な方法で製造することができるとともに、異種材料の接合部において優れた接合強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10の断面を示す図である。
【0020】
図1に示すように、複合軸受部材10は、表面が回転部と接触する軸受摺動材20と、この軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とを備えている。また、軸受摺動材20は、表面に回転部を摺動させる摺動層50を有している。さらに、軸受摺動材20は、摺動層50と接合層40との間に、金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を備えている。ここでは、金属材料がそれぞれ異なる割合で含有され、分散された3つの金属材料含有層61、62、63で組成傾斜層60を構成した一例を示している。
【0021】
軸受摺動材20を構成するマトリックスは、組成傾斜層60に含有される金属材料70の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料で構成される。すなわち、組成傾斜層60の金属材料以外の部分、および摺動層50は、この樹脂材料で構成される。ここで、融着温度とは、樹脂材料の表面が溶融し、樹脂材料どうしが融着可能となる温度をいう。樹脂材料として、例えば、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂(融着温度;350〜400℃)、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂(融着温度;300〜400℃、ポリイミド(PI)樹脂(融着温度;400〜500℃)などを用いることができる。また、樹脂材料として、上記した樹脂材料に、例えば、セラミックス繊維やセラミックス粒子などの充填剤を添加した樹脂系複合材料を用いてもよい。ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂は、摩擦係数が小さく、耐熱性に優れている。また、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂およびポリイミド(PI)樹脂は、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂に比べて摩擦係数がやや大きいが、高温の機械的特性に優れている。さらに、上記した樹脂系複合材料は、摩擦および摩耗特性、機械的特性がともに優れている。
【0022】
また、組成傾斜層60に含有される金属材料70は、上記したように、融点が樹脂材料の融着温度よりも低い材料から構成される。この金属材料70として、例えば、Sn(融点;232℃)またはSnを主成分とする合金を用いることができる。Snを主成分とする合金として、例えば、広くはんだ材料などに用いられている、Sn−0.7重量%Cu(融点;227℃)、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag(融点;217℃)などが挙げられる。
【0023】
ここで、組成傾斜層60を構成する金属材料含有層61、62、63は、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加する。すなわち、金属材料含有層63、金属材料含有層62、金属材料含有層61の順に金属材料70の含有量が多い。ここで、摺動層50側の金属材料含有層61における金属材料70の含有量は、0体積%よりも多く、接合層40側の金属材料含有層63における金属材料70の含有量は、100体積%よりも少ない。例えば、金属材料含有層61における金属材料70の含有量を10〜30体積%、金属材料含有層62における金属材料70の含有量を40〜60体積%、金属材料含有層63における金属材料70の含有量を70〜90体積%とする一例が挙げられる。なお、組成傾斜層は、3つの金属材料含有層で構成することに限られるものではなく、少なくとも2つ以上の金属材料含有層で構成されていればよい。また、各金属材料含有層に含有される金属材料70の含有量は、上記した一例の範囲に限られるものではなく、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加するように構成されていればよい。なお、金属材料70の含有量は、隣接する金属材料含有層間で大きく異ならないように設定されることが好ましい。
【0024】
このように、組成傾斜層60は、金属材料70の含有量を少なくして摺動層50に近い組成とされた摺動層50側の金属材料含有層61を有し、徐々に接合層40側に行くに伴い金属材料70の含有量を増やし、金属材料70の含有量を多くして接合層40に近い組成とされた接合層40側の金属材料含有層63を有している。このような組成傾斜層60を備えることで、隣接する層との間の線膨張係数の差が小さくなる。これによって、隣接する層との間に生じる熱応力が緩和される。
【0025】
組成傾斜層60の厚さは、隣接する金属材料含有層間における金属材料70の含有量の急激な変化を回避し、樹脂材料と金属材料70の線膨張係数の差異から生じる熱応力を緩和するために、1mm〜10mm程度であることが好ましい。例えば、樹脂材料の線膨張係数が15×10−5/℃程度、金属材料70の線膨張係数が20×10−5/℃程度、摺動層50の厚さが1〜10mm、複合軸受部材10の大きさが500mm×500mmの場合、組成傾斜層60の厚さは、2mm〜5mmの範囲に設定することが好ましい。
【0026】
また、後述するが、組成傾斜層60は、樹脂材料や金属材料70を構成するための、例えば、粒子からなる各材料を用いて構成される。そして、これらの粒子として、粒径が10μm〜100μmのものが使用されることが多い。各金属材料含有層61、62、63の厚さは、製造上のバラツキを考慮して、0.5mm〜1mmの範囲に設定することがより好ましい。一方、摺動層50の厚さは、摩耗減量と寿命の関係から、1mm〜10mmの範囲に適宜に設定される。
【0027】
また、金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料は、図1に示すように、各金属材料含有層61、62、63にほぼ均一に分散された状態で含有されている。また、分散して含有される金属材料は、例えば、粒子形状や3次元的に格子状に分散された形状などの形状で構成される。ここで、各金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料の形状は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、金属材料が粒子形状である場合、各金属材料含有層61、62、63の、金属材料の平均粒径が同じであっても、異なっていてもよい。すなわち、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加するように構成されていればよく、各金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料の形状は、特に限定されるものではない。
【0028】
また、各金属材料含有層61、62、63間は、樹脂材料どうしの融着、金属材料どうしの溶着、および樹脂材料と金属材料の融着により接合されている。また、摺動層50と金属材料含有層61との間は、樹脂材料どうしの融着および樹脂材料と金属材料の融着により接合されている。
【0029】
ここで、摺動層50および各金属材料含有層61、62、63における気孔率は、0.5体積%以下であり、密な状態となっている。
【0030】
軸受基材30は、軸受摺動材20に作用する高荷重を支持するための強度を備える構造部材であり、使用条件下において必要な強度を発揮することができる材料で、かつ軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料で構成される。軸受基材30を構成する材料は、例えば、鉄系、銅系、アルミニウム系などの材料などが適用できる。軸受基材30として、特に、構造用炭素鋼(S45C)などの鉄系の鋼材を用いることが好ましい。
【0031】
接合層40は、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合するもので、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同様に、融点が樹脂材料の融着温度よりも低い材料から構成される。接合層40と形成する材料として、例えば、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同じ材料のうちのいずれかの材料で構成することができる。なお、接合層40と形成する材料は、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同じ材料で構成されてもよい。すなわち、接合層40を構成する材料として、例えば、SnまたはSnを主成分とする合金を用いることができる。Snを主成分とする合金として、例えば、広くはんだ材料などに用いられている、Sn−0.7重量%Cu、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agなどが挙げられる。なお、接合層40と形成する材料として、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と異なる材料を用いる場合には、それぞれの材料の線膨張係数の差が小さくなるような材料を選択することが好ましい。
【0032】
次に、複合軸受部材10を製造する方法について説明する。
【0033】
ここでは、複合軸受部材10を製造する2つの方法(第1の製造方法および第2の製造方法)について説明する。
【0034】
(第1の製造方法)
図2A〜図2Eは、第1の製造方法によって複合軸受部材10を製造する工程を示した断面図である。
【0035】
まず、軸受摺動材20のマトリックスを構成する上記した樹脂材料からなる樹脂粒子100を用意する。この樹脂粒子100の平均粒径は、樹脂粒子100がセラミックス繊維若しくは粒子の充てん材等を含有する場合における造粒粒子の平均粒径を考慮して、0.1mm〜1mmのものが好ましい。さらに、組成傾斜層60に含有される上記した金属材料70からなる金属粒子110を用意する。ここで、各金属材料含有層61、62、63を形成する際に使用される金属粒子110の平均粒径は、同じであっても、異なっていていてもよい。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、例えばレーザー回折粒度分布測定法などで測定される。
【0036】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するために、樹脂粒子100と金属粒子110とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122)を作製する。ここで、第1混合粒子120における金属粒子110の体積含有量が一番少なく、第3混合粒子122における金属粒子110の体積含有量が一番多くなるように3種類の混合粒子を作製する。
【0037】
まず、図2Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された所定の形状の金型130に所定量充填する。
【0038】
続いて、図2Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61となる第1混合粒子120を所定量充填する。
【0039】
続いて、図2Cに示すように、充填された第1混合粒子120上に、金属材料含有層62となる第2混合粒子121を所定量充填する。
【0040】
続いて、図2Dに示すように、充填された第2混合粒子121上に、金属材料含有層63となる第3混合粒子122を所定量充填する。
【0041】
続いて、図2Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、例えばプレス機140などによって、積層方向に加圧して一体化する。
【0042】
続いて、この加圧することで一体化された形成体を、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度で所定時間加熱して樹脂粒子どうしを融着する。なお、この際、金属粒子110の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子110は溶融するが、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、形成体の周囲は金型130によって覆われているため、溶融した金属粒子110は、ほとんど外部に流れ出すことはない。また、樹脂粒子100、第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122からなる各層の間は、樹脂材料どうしの融着、金属材料どうしの溶着、および樹脂材料と金属材料の融着により接合される。なお、形成体は、融着温度で所定時間加熱された後、常温まで冷却される。
【0043】
ここで、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成される。また、第1混合粒子120からなる層によって金属材料含有層61が形成され、第2混合粒子121からなる層によって金属材料含有層62が形成され、第3混合粒子122からなる層によって金属材料含有層63が形成される。
【0044】
続いて、図2Eに示すように、金属材料含有層63の上面に、上記した接合層40を形成する金属材料からなる箔状の金属部材150を配置する。さらに、この金属部材150上に、軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成する。
【0045】
続いて、この積層体を、金属粒子110および金属部材150の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度で所定時間加熱する。これによって、上記した、金属材料含有層61、金属材料含有層62、金属材料含有層63からなる各層の間の接合を確実なものとするとともに、金属部材150によって、形成体と軸受基材30とが接合される。
【0046】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、金属部材150によって形成される接合層40の厚さを所定の厚さとするために、例えば、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予めその所定の厚さと同じ厚さを有する鉄系材料などからなるスペーサを配置しておくことが好ましい。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工などにより削り取ればよい。
【0047】
上記した工程を経ることで、金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10が得られる。
【0048】
(第2の製造方法)
図3A〜図3Gは、第2の製造方法によって複合軸受部材10を製造する工程を示した断面図である。
【0049】
まず、軸受摺動材20のマトリックスを構成する上記した樹脂材料からなる樹脂粒子100を用意する。この樹脂粒子100の平均粒径は、樹脂粒子100がセラミックス繊維若しくは粒子の充てん材等を含有する場合における造粒粒子の平均粒径を考慮して、0.1mm〜1mmのものが好ましい。さらに、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子111を用意する。ここで、この金属粒子111としては、In(融点;156℃)またはInを主成分とする合金が使用される。Inを主成分とする合金としては、例えば、In−34重量%Bi(融点:72℃)などが使用される。なお、後述するが、この金属粒子111は、組成傾斜層60に含有される第2の金属材料を含浸するための気孔を形成するために使用されるものである。
【0050】
ここで、金属粒子111の平均粒径は、同じであっても、異なっていていてもよい。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、例えばレーザー回折粒度分布測定法などで測定される。
【0051】
続いて、樹脂粒子100と金属粒子111とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127)を作製する。ここで、第1混合粒子125における金属粒子111の体積含有量が一番少なく、第3混合粒子127における金属粒子111の体積含有量が一番多くなるように3種類の混合粒子を作製する。
【0052】
まず、図3Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された所定の形状の金型130に所定量充填する。
【0053】
続いて、図3Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61を形成するための第1混合粒子125を所定量充填する。
【0054】
続いて、図3Cに示すように、充填された第1混合粒子125上に、金属材料含有層62を形成するための第2混合粒子126を所定量充填する。
【0055】
続いて、図3Dに示すように、充填された第2混合粒子126上に、金属材料含有層63を形成するための第3混合粒子127を所定量充填する。
【0056】
続いて、図3Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、例えばプレス機140などによって、積層方向に加圧して一体化する。
【0057】
続いて、図3Eに示すように、加圧することで一体化された形成体を金型130から取り外し、第3混合粒子122側が下方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度で所定時間加熱して樹脂粒子どうしを融着する。この際、金属粒子111の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子111は溶融し、形成体の外部に流出する。なお、形成体は、融着温度で所定時間加熱された後、常温まで冷却される。
【0058】
上記した融着温度で所定時間加熱された形成体には、図3Fに示すように、金属粒子111が溶融して外部に流れ出すことによって、金属粒子111が分散されていた部分に気孔160が形成される。また、樹脂粒子100、第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127からなる各層の間は、樹脂材料どうしの融着により接合される。また、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成される。
【0059】
続いて、図3Gに示すように、第3混合粒子127からなる層が上方となるように配置し、第3混合粒子127からなる層の上面に、接合層40となるとともに、上記した気孔160に含浸して組成傾斜層60に含有される第2の金属材料となる板状の金属部材151を配置する。さらに、金属部材151上に、軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成する。ここで、第2の金属材料からなる金属部材151は、前述した組成傾斜層60に含有される金属材料70と同じ材料で構成される。なお、金属部材151の大きさ、具体的には厚さは、気孔160に含浸する量と、接合層40を形成する量を考慮して設定される。
【0060】
続いて、この積層体の周囲に、再び金型130を取り付け、金属部材151の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度に所定時間加熱する。これによって、金属部材151が溶融し、その一部は、気孔160に含浸し、外部に流出する微量分を除いた残部は、形成体と軸受基材30とを接合する接合層40となる。気孔160に金属部材151が含浸することで、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63が形成される。
【0061】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、金属部材151によって形成される接合層40の厚さを所定の厚さとするために、例えば、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予めその所定の厚さと同じ厚さを有する鉄系材料などからなるスペーサを配置しておくことが好ましい。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工などにより削り取ればよい。
【0062】
上記した工程を経ることで、金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10が得られる。
【0063】
次に、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備える軸受装置200について説明する。
【0064】
図4は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備える軸受装置200の断面を示す図である。ここでは、水車発電機に用いられるスラスト軸受を一例に、従来において広く回転電機等に使用されているスラスト軸受の構造を説明する。
【0065】
図4に示すように、回転軸210には、スラストカラー211が取り付けられ、このスラストカラー211の下面には回転板213が設けられている。そして、扇形に形成された複数の静止板214が回転軸210の周りに放射状に配置され、回転板213を摺動可能に支持している。この静止板214は、複合軸受部材10の構成を備えている。
【0066】
また、静止板214は、複数のバネ等の弾性部材215を介して支持板216により支持されている。また、スラストカラー211の側面には、ガイド軸受217が取り付けられている。このガイド軸受217は、複合軸受部材10の構成を備えている。ガイド軸受217の外部には、油槽218が設けられており、その内部は潤滑油219で満たされている。
【0067】
このように、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10は、軸受装置等に適用することができる。なお、複合軸受部材10が適用される装置は、上記した構成に限られるものではなく、回動部を摺動させる摺動面を有する軸受部材を備える、例えば、船舶用ディーゼルエンジン、発電用蒸気タービン、ガスタービン、一般産業用液空圧関係、プラント設備などの装置にも適用することができる。
【0068】
上記したように、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10によれば、軸受摺動材20における摺動層50以外の層を、金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60とすることで、軸受摺動材20と接合層40、軸受摺動材20と接合層40における線膨張係数の差による熱応力を緩和することができる。これによって、優れた接合強度と高い信頼性を有する軸受材料を得ることができる。
【0069】
また、軸受摺動材20を構成するマトリックスを、組成傾斜層60に含有される金属材料の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料で構成することで、金属材料の融点以上で、樹脂材料の融着温度より低い温度に加熱しても、軸受摺動材20が溶融や劣化を起こすことない。そのため、接合層40を介して、軸受摺動材20と軸受基材30とを優れた接合強度を有して的確に接合することができる。
【0070】
また、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備えた軸受装置200では、上記した複合軸受部材10における作用効果と同様の作用効果を得ることができ、高い信頼性を有する軸受装置を得ることができる。
【0071】
また、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10の製造方法によれば、例えば真空設備などを必要とせず、簡易な方法で、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、複合軸受部材10を製造することができる。そのため、複合軸受部材を製造するための製造コストを削減することができる。
【0072】
次に、本発明に係る複合軸受部材10が、優れた接合強度を有することを実施例および比較例を用いて説明する。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、図2A〜図2Eに示した第1の製造方法と同様の製造方法で作製された複合軸受部材10を使用した。
【0074】
以下に、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造方法について、図2A〜図2Eを参照して説明する。
【0075】
まず、PTFE樹脂からなる平均粒径が5μmの樹脂粒子100を用意した。なお、平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定法で測定した。以下において、平均粒径およびその測定方法は、上記したものと同じである。
【0076】
さらに、組成傾斜層60に含有されるSn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agからなる金属粒子110を用意した。ここで、金属材料含有層61を形成するための金属粒子110の平均粒径を25μm、金属材料含有層62を形成するための金属粒子110の平均粒径を50μm、金属材料含有層63を形成するための金属粒子110の平均粒径を75μmとした。
【0077】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するために、樹脂粒子100と金属粒子110とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122)を作製した。ここで、金属材料含有層61を形成するのが第1混合粒子120、金属材料含有層62を形成するのが第2混合粒子121、金属材料含有層63を形成するのが第3混合粒子122である。ここで、金属粒子110と樹脂粒子100との体積比(金属粒子110の体積:樹脂粒子100の体積)を、第1混合粒子120では25:75、第2混合粒子121では50:50、第3混合粒子122では75:25とした。
【0078】
まず、図2Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された300mm×300mmの四角形の金型130に所定量充填した。
【0079】
続いて、図2Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61となる第1混合粒子120を所定量充填した。
【0080】
続いて、図2Cに示すように、充填された第1混合粒子120上に、金属材料含有層62となる第2混合粒子121を所定量充填した。
【0081】
続いて、図2Dに示すように、充填された第2混合粒子121上に、金属材料含有層63となる第3混合粒子122を所定量充填した。
【0082】
続いて、図2Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、プレス機140によって、積層方向に50MPaの圧力で加圧して一体化した。そして、第1混合粒子120による層の厚さが2mm、各混合粒子による層の厚さがそれぞれ1mmの形成体を作製した。
【0083】
続いて、この加圧することで一体化された形成体を、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着した。なお、この際、金属粒子110の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子110は溶融するが、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、形成体の周囲は金型130によって覆われているため、溶融した金属粒子110は、ほとんど外部に流れ出すことはなかった。なお、融着温度で所定時間加熱された後、形成体を常温まで冷却した。
【0084】
ここで、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成された。また、第1混合粒子120からなる層によって金属材料含有層61が形成され、第2混合粒子121からなる層によって金属材料含有層62が形成され、第3混合粒子122からなる層によって金属材料含有層63が形成された。
【0085】
続いて、図2Eに示すように、金属材料含有層63の上面に、接合層40となる、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agで構成された、厚さが0.2mm、幅が300mm、長さが300mmの箔状の金属部材150を配置した。なお、ここでは、金属部材150を、金属粒子110と同じ材料で構成した。さらに、金属部材150上に、厚さが50mm、幅が300mm、長さが300mmの構造用炭素鋼(S45C)からなる軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成した。
【0086】
続いて、この積層体を、金属粒子110の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度である250℃で3分間加熱した。これによって、上記した、金属材料含有層61、金属材料含有層62、金属材料含有層63からなる各層の間の接合を確実なものとし、さらに金属部材150によって、形成体と軸受基材30とを接合した。接合層40の厚さは、0.2mmとした。
【0087】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、軸受基材30の表面の酸化皮膜を除去するため、加熱する前に軸受基材30の表面にフラックスを塗布した。また、金属部材150によって形成される接合層40の厚さを0.2mmとするために、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予め厚さが0.2mmのアルミニウム系材料(6061Al合金)からなるスペーサを配置した。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工により削り取った。
【0088】
ここで、図5は、上記した工程を経ることで作製された複合軸受部材10の各層に含有される金属材料の体積含有量を模式的に示した図である。
【0089】
上記した工程を経ることで、図5に示すように、金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10を得た。
【0090】
次に、得られた複合軸受部材10の接合界面のせん断強度を評価するために、複合軸受部材10を用いて、接合界面と平行に引張速度が0.1mm/秒の条件でせん断試験を行った。
【0091】
せん断試験の結果、せん断強度は20MPaであった。このせん断強度は、軸受材料として要求されているせん断強度(10MPa)を十分に満たすものであった。
【0092】
(実施例2)
実施例2では、図3A〜図3Gに示した第2の製造方法と同様の製造方法で作製された複合軸受部材10を使用した。
【0093】
以下に、実施例2で使用した複合軸受部材10の製造方法について、図3A〜図3Gを参照して説明する。
【0094】
まず、PTFE樹脂からなる平均粒径が5μmの樹脂粒子100を用意した。さらに、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子111を用意した。この金属粒子111は、組成傾斜層60に含有される第2の金属材料を含浸するための気孔を形成するために使用されるものである。
【0095】
ここで、金属材料含有層61を形成するための金属粒子111の平均粒径を25μm、金属材料含有層62を形成するための金属粒子111の平均粒径を50μm、金属材料含有層63を形成するための金属粒子111の平均粒径を75μmとした。
【0096】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するための、樹脂粒子100と金属粒子111とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127)を作製した。ここで、金属材料含有層61を形成するのが第1混合粒子125、金属材料含有層62を形成するのが第2混合粒子126、金属材料含有層63を形成するのが第3混合粒子127である。ここで、金属粒子111と樹脂粒子100との体積比(金属粒子111の体積:樹脂粒子100の体積)を、第1混合粒子125では25:75、第2混合粒子126では50:50、第3混合粒子127では75:25とした。
【0097】
まず、図3Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された300mm×300mmの四角形の金型130に所定量充填した。
【0098】
続いて、図3Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層62を形成するための第1混合粒子125を所定量充填した。
【0099】
続いて、図3Cに示すように、充填された第1混合粒子125上に、金属材料含有層62を形成するための第2混合粒子126を所定量充填した。
【0100】
続いて、図3Dに示すように、充填された第2混合粒子126上に、金属材料含有層63を形成するための第3混合粒子127を所定量充填した。
【0101】
続いて、図3Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、プレス機140によって、積層方向に50MPaの圧力で加圧して一体化した。そして、第1混合粒子125による層の厚さが2mm、各混合粒子による層の厚さがそれぞれ1mmの形成体を作製した。
【0102】
続いて、図3Eに示すように、加圧することで一体化された形成体を金型130から取り外し、第3混合粒子122側が下方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着した。この際、金属粒子111の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子111は溶融し、形成体の外部に流出した。なお、融着温度で所定時間加熱された後、形成体を常温まで冷却した。
【0103】
上記した融着温度である375℃で1時間加熱された形成体には、図3Fに示すように、金属粒子111が溶融して外部に流れ出すことによって、金属粒子111が分散されていた部分に気孔160が形成された。また、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成された。
【0104】
続いて、図3Gに示すように、第3混合粒子127からなる層が上方となるように配置し、第3混合粒子127からなる層の上面に、接合層40となるとともに、上記した気孔160に含浸して組成傾斜層60に含有される第2の金属材料となる、Sn−0.7重量%Cuからなる板状の金属部材151を配置した。この金属部材151の、厚さを1.8mm、幅を300mm、長さを300mmとした。さらに、金属部材151上に、厚さが50mm、幅が300mm、長さが300mmの構造用炭素鋼(S45C)からなる軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成した。
【0105】
続いて、この積層体の周囲に、再び金型130を取り付け、金属部材151の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度である250℃で3分間加熱した。これによって、金属部材151が溶融し、その一部は、気孔160に含浸し、外部に流出する微量分を除いた残部は、形成体と軸受基材30とを接合する接合層40となった。気孔160に金属部材151が含浸することで、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63が形成された。
【0106】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、軸受基材30の表面の酸化皮膜を除去するため、加熱する前に軸受基材30の表面にフラックスを塗布した。また、金属部材151によって形成される接合層40の厚さを0.2mmとするために、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予め厚さが0.2mmのアルミニウム系材料(6061Al合金)からなるスペーサを配置した。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工により削り取った。
【0107】
上記した工程を経ることで、図5に示すように、金属材料(Sn−0.7重量%Cu)の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10を得た。
【0108】
次に、得られた複合軸受部材10について、実施例1で行ったせん断試験と同じ方法でせん断試験を行った。
【0109】
せん断試験の結果、せん断強度は20MPaであった。このせん断強度は、軸受材料として要求されているせん断強度(10MPa)を十分に満たすものであった。
【0110】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で使用した複合軸受部材10における金属材料含有層61および金属材料含有層62を有さない構成の複合軸受部材を使用した。すなわち比較例1で使用した複合軸受部材の軸受摺動材は、摺動層50と金属材料含有層63とで構成され、組成傾斜層を備えていない。それ以外の構成は、実施例1で使用した複合軸受部材10と同じとした。また、比較例1で使用した複合軸受部材は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程における、金属材料含有層61および金属材料含有層62を形成する工程を除いた工程で作製された。すなわち、比較例1で使用した複合軸受部材は、これらの工程が除かれる以外は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程(材料等の条件も含む)と同じ製造工程で作製された。
【0111】
ここで、図6は、比較例1で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図である。
【0112】
図6に示すように、比較例1で作製した複合軸受部材は、摺動層50と金属材料含有層63を有する軸受摺動材20と、軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とで構成されている。
【0113】
しかしながら、作製された複合軸受部材において、摺動層50と金属材料含有層63との間の周縁部から剥離が発生し、健全な複合軸受部材を得ることができなかった。これは、形成体を樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着後、室温まで冷却する際、摺動層50と金属材料含有層63との間の急激な組成変化により、双方の線膨張係数の差が大きくなり、摺動層50と金属材料含有層63との間の周縁部から剥離が発生したものと考えられる。
【0114】
(比較例2)
比較例2では、実施例1で使用した複合軸受部材10における金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63を有さない構成の複合軸受部材を使用した。すなわち比較例2で使用した複合軸受部材の軸受摺動材は、摺動層50のみで構成され、組成傾斜層を備えていない。それ以外の構成は、実施例1で使用した複合軸受部材10と同じとした。また、比較例2で使用した複合軸受部材は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程における、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63を形成する工程を除いた工程で作製された。すなわち、比較例2で使用した複合軸受部材は、これらの工程が除かれる以外は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程(材料等の条件も含む)と同じ製造工程で作製された。
【0115】
ここで、図7は、比較例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図である。
【0116】
図7に示すように、比較例2で作製した複合軸受部材は、摺動層50からなる軸受摺動材20と、軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とで構成されている。
【0117】
しかしながら、作製された複合軸受部材において、摺動層50と接合層40との接合面の全面が剥離し、健全な複合軸受部材を得ることができなかった。これは、形成体を樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着後、室温まで冷却する際、摺動層50と接合層40との間の急激な組成変化により、双方の線膨張係数の差が大きくなり、摺動層50と接合層40との接合面の全面が剥離したものと考えられる。
【0118】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材の断面を示す図。
【図2A】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2B】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2C】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2D】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2E】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3A】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3B】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3C】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3D】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3E】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3F】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3G】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図4】本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材を備える軸受装置の断面を示す図。
【図5】実施例1および実施例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料の体積含有量を模式的に示した図。
【図6】比較例1で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図。
【図7】比較例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0120】
10…複合軸受部材、20…軸受摺動材、30…軸受基材、40…接合層、50…摺動層、60…組成傾斜層、61,62,63…金属材料含有層、70…金属材料。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機等に用いられる複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備える軸受装置、およびこの軸受装置を備える回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業技術の発展に伴い、各種軸受において、回転軸の高速化への対応や高面圧化などが要求されている。これまで軸受材料として、ホワイトメタル(例えば、第一種;Sn88〜92重量%、Sb5〜7重量%、Cu3〜5重量%)が多用されてきた。しかしながら、これらの軟質金属材料は、融点が低く、高温における強度の大幅な低下および焼付きの問題を有する点から、その使用範囲は制限されている。
【0003】
ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂材料は、摩擦係数が低く、耐熱性に優れ、軸受材料として適している。また、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂材料、ポリイミド(PI)樹脂材料は、ポリテトラフロオロエチレン樹脂材料と比較して、摩擦係数がやや高いが、高温における機械的性質に優れている。これらの樹脂材料に各種のセラミックス繊維、若しくは粒子の充てん材を添加して、機械的性質、摩擦特性および摩耗特性を兼備した摺動材料を製造することができる。
【0004】
軸受すべり面を、上記したような樹脂材料で構成し、軸受基材を金属材料で構成する軸受装置を得るためには、異種材料である樹脂材料と金属材料とを十分な接合強度を有するように接合することが必要となる。
【0005】
しかしながら、樹脂材料と金属材料とを接合する際、金属材料どうしの接合に適用されている接合方法を採用した場合には、十分な接合強度を得ることは難しい。すなわち、異なる金属部材を溶湯凝固法で接合する場合には、金属材料どうしであるために拡散反応等が起こり、機械的な結合とともに物理的もしくは化学的な結合が生じる。これに対して、樹脂材料と金属材料とを接合する場合には、単純な機械的結合となるため、十分な接合強度を得ることは困難となる。また、樹脂材料と金属材料とを高温・高圧条件下で接合した場合には、樹脂材料に劣化が生じたり、高温・高圧条件下で長時間保持するため、製造コストが増大するなどの問題が生じる。
【0006】
また、樹脂材料と金属材料とを接合する際に、接着剤等を用いて接合することも考えられるが、樹脂材料および金属材料の双方に対して良好な接着性を有する接着剤を選定することは困難である。さらに、樹脂系接着剤の場合には、樹脂と金属との接合界面が必ず存在するため、金属材料と樹脂材料との間の接合強度を基本的に改善することはできない。
【0007】
また、2種類の部材を接合する際に、界面強度の向上を図る方法として、例えばホーニングや化学エッチング等で表面積を拡大して接合面積を増大させる方法が知られている。しかしながら、ホーニングや化学エッチング等では、接合面積の拡大に限界があり、また界面のせん断剥離に対する抵抗が小さいため、異種材料間の接合強度を十分に高めることはできない。
【0008】
一方、従来の軸受材料における種々の問題点を考慮して、例えば、樹脂材料と金属材料の接合において、金属材料の表面に多孔質の中間層を設け、この多孔質の中間層内に樹脂材料を充填しながら他方の金属材料上に積層する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この発明によれば、多孔質の中間層は、予め軸受基材に真空下で接合される。
【特許文献1】特許第3194866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した、樹脂材料と金属材料とを接合する従来の接合方法を用いて、例えば水力発電機器用軸受を作製する場合、軸受基材の総重量は数百kgから数トンとなるため、真空下で接合するプロセスが極めて高価となり、製造コストが増加する。また、真空設備には、容量の限界があるため、真空下における作製が困難となることもある。
【0010】
このようなことから、例えば、樹脂材料と金属材料というような異種材料を接合した軸受材料においては、軸受の性能、信頼性を犠牲にすることなく、設備能力に依存せず、製造コストを下げることが課題とされている。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、簡易な方法で製造することができるとともに、異種材料の接合部において優れた接合強度を有する複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備えた軸受装置、およびこの軸受装置を備えた回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、一方の表面に回転部を摺動させる摺動層を有する軸受摺動材と、前記軸受摺動材を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材と、前記軸受摺動材の他方の表面と前記軸受基材の一方の表面とを接合する接合層とを具備し、前記摺動層と前記接合層との間の前記軸受摺動材を構成する層が、金属材料を分散して含有し、かつ前記金属材料の含有量が前記接合層に向かって増加する組成傾斜層であることを特徴とする複合軸受部材が提供される。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着する樹脂粒子融着工程と、前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、前記積層体を、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属粒子および前記金属部材を溶融して、前記形成体の各層間、および前記形成体と前記基材とを接合する接合工程とを具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法が提供される。
【0014】
さらに、本発明の一態様によれば、樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着し、かつ前記金属粒子を溶融して前記形成体の外部に流出させ、前記形成体に気孔を形成する気孔形成工程と、前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、前記積層体を、前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属部材を溶融して、前記気孔内に含浸させ、かつ前記形成体と前記基材とを接合する接合工程とを具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、回転軸の軸方向のスラスト荷重を摺動可能に支持するスラスト軸受および回転方向の軸振れを摺動可能に支持するガイド軸受を具備する軸受装置であって、前記スラスト軸受および前記ガイド軸受における軸受部材の少なくとも一方が、上記した複合軸受部材で構成されていることを特徴とする軸受装置が提供される。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、上記した軸受装置を備えていることを特徴とする回転電機が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の複合軸受部材、複合軸受部材の製造方法、この複合軸受部材を備えた軸受装置、およびこの軸受装置を備えた回転電機によれば、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、簡易な方法で製造することができるとともに、異種材料の接合部において優れた接合強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10の断面を示す図である。
【0020】
図1に示すように、複合軸受部材10は、表面が回転部と接触する軸受摺動材20と、この軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とを備えている。また、軸受摺動材20は、表面に回転部を摺動させる摺動層50を有している。さらに、軸受摺動材20は、摺動層50と接合層40との間に、金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を備えている。ここでは、金属材料がそれぞれ異なる割合で含有され、分散された3つの金属材料含有層61、62、63で組成傾斜層60を構成した一例を示している。
【0021】
軸受摺動材20を構成するマトリックスは、組成傾斜層60に含有される金属材料70の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料で構成される。すなわち、組成傾斜層60の金属材料以外の部分、および摺動層50は、この樹脂材料で構成される。ここで、融着温度とは、樹脂材料の表面が溶融し、樹脂材料どうしが融着可能となる温度をいう。樹脂材料として、例えば、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂(融着温度;350〜400℃)、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂(融着温度;300〜400℃、ポリイミド(PI)樹脂(融着温度;400〜500℃)などを用いることができる。また、樹脂材料として、上記した樹脂材料に、例えば、セラミックス繊維やセラミックス粒子などの充填剤を添加した樹脂系複合材料を用いてもよい。ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)樹脂は、摩擦係数が小さく、耐熱性に優れている。また、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂およびポリイミド(PI)樹脂は、ポリエテルエテルケトン(PEEK)樹脂に比べて摩擦係数がやや大きいが、高温の機械的特性に優れている。さらに、上記した樹脂系複合材料は、摩擦および摩耗特性、機械的特性がともに優れている。
【0022】
また、組成傾斜層60に含有される金属材料70は、上記したように、融点が樹脂材料の融着温度よりも低い材料から構成される。この金属材料70として、例えば、Sn(融点;232℃)またはSnを主成分とする合金を用いることができる。Snを主成分とする合金として、例えば、広くはんだ材料などに用いられている、Sn−0.7重量%Cu(融点;227℃)、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag(融点;217℃)などが挙げられる。
【0023】
ここで、組成傾斜層60を構成する金属材料含有層61、62、63は、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加する。すなわち、金属材料含有層63、金属材料含有層62、金属材料含有層61の順に金属材料70の含有量が多い。ここで、摺動層50側の金属材料含有層61における金属材料70の含有量は、0体積%よりも多く、接合層40側の金属材料含有層63における金属材料70の含有量は、100体積%よりも少ない。例えば、金属材料含有層61における金属材料70の含有量を10〜30体積%、金属材料含有層62における金属材料70の含有量を40〜60体積%、金属材料含有層63における金属材料70の含有量を70〜90体積%とする一例が挙げられる。なお、組成傾斜層は、3つの金属材料含有層で構成することに限られるものではなく、少なくとも2つ以上の金属材料含有層で構成されていればよい。また、各金属材料含有層に含有される金属材料70の含有量は、上記した一例の範囲に限られるものではなく、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加するように構成されていればよい。なお、金属材料70の含有量は、隣接する金属材料含有層間で大きく異ならないように設定されることが好ましい。
【0024】
このように、組成傾斜層60は、金属材料70の含有量を少なくして摺動層50に近い組成とされた摺動層50側の金属材料含有層61を有し、徐々に接合層40側に行くに伴い金属材料70の含有量を増やし、金属材料70の含有量を多くして接合層40に近い組成とされた接合層40側の金属材料含有層63を有している。このような組成傾斜層60を備えることで、隣接する層との間の線膨張係数の差が小さくなる。これによって、隣接する層との間に生じる熱応力が緩和される。
【0025】
組成傾斜層60の厚さは、隣接する金属材料含有層間における金属材料70の含有量の急激な変化を回避し、樹脂材料と金属材料70の線膨張係数の差異から生じる熱応力を緩和するために、1mm〜10mm程度であることが好ましい。例えば、樹脂材料の線膨張係数が15×10−5/℃程度、金属材料70の線膨張係数が20×10−5/℃程度、摺動層50の厚さが1〜10mm、複合軸受部材10の大きさが500mm×500mmの場合、組成傾斜層60の厚さは、2mm〜5mmの範囲に設定することが好ましい。
【0026】
また、後述するが、組成傾斜層60は、樹脂材料や金属材料70を構成するための、例えば、粒子からなる各材料を用いて構成される。そして、これらの粒子として、粒径が10μm〜100μmのものが使用されることが多い。各金属材料含有層61、62、63の厚さは、製造上のバラツキを考慮して、0.5mm〜1mmの範囲に設定することがより好ましい。一方、摺動層50の厚さは、摩耗減量と寿命の関係から、1mm〜10mmの範囲に適宜に設定される。
【0027】
また、金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料は、図1に示すように、各金属材料含有層61、62、63にほぼ均一に分散された状態で含有されている。また、分散して含有される金属材料は、例えば、粒子形状や3次元的に格子状に分散された形状などの形状で構成される。ここで、各金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料の形状は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、金属材料が粒子形状である場合、各金属材料含有層61、62、63の、金属材料の平均粒径が同じであっても、異なっていてもよい。すなわち、摺動層50側の金属材料含有層61から接合層40側の金属材料含有層63に向かって順に、含有される金属材料70の含有量が増加するように構成されていればよく、各金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料の形状は、特に限定されるものではない。
【0028】
また、各金属材料含有層61、62、63間は、樹脂材料どうしの融着、金属材料どうしの溶着、および樹脂材料と金属材料の融着により接合されている。また、摺動層50と金属材料含有層61との間は、樹脂材料どうしの融着および樹脂材料と金属材料の融着により接合されている。
【0029】
ここで、摺動層50および各金属材料含有層61、62、63における気孔率は、0.5体積%以下であり、密な状態となっている。
【0030】
軸受基材30は、軸受摺動材20に作用する高荷重を支持するための強度を備える構造部材であり、使用条件下において必要な強度を発揮することができる材料で、かつ軸受摺動材20を構成する材料とは異なる材料で構成される。軸受基材30を構成する材料は、例えば、鉄系、銅系、アルミニウム系などの材料などが適用できる。軸受基材30として、特に、構造用炭素鋼(S45C)などの鉄系の鋼材を用いることが好ましい。
【0031】
接合層40は、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合するもので、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同様に、融点が樹脂材料の融着温度よりも低い材料から構成される。接合層40と形成する材料として、例えば、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同じ材料のうちのいずれかの材料で構成することができる。なお、接合層40と形成する材料は、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と同じ材料で構成されてもよい。すなわち、接合層40を構成する材料として、例えば、SnまたはSnを主成分とする合金を用いることができる。Snを主成分とする合金として、例えば、広くはんだ材料などに用いられている、Sn−0.7重量%Cu、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agなどが挙げられる。なお、接合層40と形成する材料として、上記した金属材料含有層61、62、63に含有される金属材料と異なる材料を用いる場合には、それぞれの材料の線膨張係数の差が小さくなるような材料を選択することが好ましい。
【0032】
次に、複合軸受部材10を製造する方法について説明する。
【0033】
ここでは、複合軸受部材10を製造する2つの方法(第1の製造方法および第2の製造方法)について説明する。
【0034】
(第1の製造方法)
図2A〜図2Eは、第1の製造方法によって複合軸受部材10を製造する工程を示した断面図である。
【0035】
まず、軸受摺動材20のマトリックスを構成する上記した樹脂材料からなる樹脂粒子100を用意する。この樹脂粒子100の平均粒径は、樹脂粒子100がセラミックス繊維若しくは粒子の充てん材等を含有する場合における造粒粒子の平均粒径を考慮して、0.1mm〜1mmのものが好ましい。さらに、組成傾斜層60に含有される上記した金属材料70からなる金属粒子110を用意する。ここで、各金属材料含有層61、62、63を形成する際に使用される金属粒子110の平均粒径は、同じであっても、異なっていていてもよい。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、例えばレーザー回折粒度分布測定法などで測定される。
【0036】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するために、樹脂粒子100と金属粒子110とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122)を作製する。ここで、第1混合粒子120における金属粒子110の体積含有量が一番少なく、第3混合粒子122における金属粒子110の体積含有量が一番多くなるように3種類の混合粒子を作製する。
【0037】
まず、図2Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された所定の形状の金型130に所定量充填する。
【0038】
続いて、図2Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61となる第1混合粒子120を所定量充填する。
【0039】
続いて、図2Cに示すように、充填された第1混合粒子120上に、金属材料含有層62となる第2混合粒子121を所定量充填する。
【0040】
続いて、図2Dに示すように、充填された第2混合粒子121上に、金属材料含有層63となる第3混合粒子122を所定量充填する。
【0041】
続いて、図2Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、例えばプレス機140などによって、積層方向に加圧して一体化する。
【0042】
続いて、この加圧することで一体化された形成体を、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度で所定時間加熱して樹脂粒子どうしを融着する。なお、この際、金属粒子110の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子110は溶融するが、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、形成体の周囲は金型130によって覆われているため、溶融した金属粒子110は、ほとんど外部に流れ出すことはない。また、樹脂粒子100、第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122からなる各層の間は、樹脂材料どうしの融着、金属材料どうしの溶着、および樹脂材料と金属材料の融着により接合される。なお、形成体は、融着温度で所定時間加熱された後、常温まで冷却される。
【0043】
ここで、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成される。また、第1混合粒子120からなる層によって金属材料含有層61が形成され、第2混合粒子121からなる層によって金属材料含有層62が形成され、第3混合粒子122からなる層によって金属材料含有層63が形成される。
【0044】
続いて、図2Eに示すように、金属材料含有層63の上面に、上記した接合層40を形成する金属材料からなる箔状の金属部材150を配置する。さらに、この金属部材150上に、軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成する。
【0045】
続いて、この積層体を、金属粒子110および金属部材150の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度で所定時間加熱する。これによって、上記した、金属材料含有層61、金属材料含有層62、金属材料含有層63からなる各層の間の接合を確実なものとするとともに、金属部材150によって、形成体と軸受基材30とが接合される。
【0046】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、金属部材150によって形成される接合層40の厚さを所定の厚さとするために、例えば、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予めその所定の厚さと同じ厚さを有する鉄系材料などからなるスペーサを配置しておくことが好ましい。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工などにより削り取ればよい。
【0047】
上記した工程を経ることで、金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10が得られる。
【0048】
(第2の製造方法)
図3A〜図3Gは、第2の製造方法によって複合軸受部材10を製造する工程を示した断面図である。
【0049】
まず、軸受摺動材20のマトリックスを構成する上記した樹脂材料からなる樹脂粒子100を用意する。この樹脂粒子100の平均粒径は、樹脂粒子100がセラミックス繊維若しくは粒子の充てん材等を含有する場合における造粒粒子の平均粒径を考慮して、0.1mm〜1mmのものが好ましい。さらに、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子111を用意する。ここで、この金属粒子111としては、In(融点;156℃)またはInを主成分とする合金が使用される。Inを主成分とする合金としては、例えば、In−34重量%Bi(融点:72℃)などが使用される。なお、後述するが、この金属粒子111は、組成傾斜層60に含有される第2の金属材料を含浸するための気孔を形成するために使用されるものである。
【0050】
ここで、金属粒子111の平均粒径は、同じであっても、異なっていていてもよい。なお、ここでいう平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、例えばレーザー回折粒度分布測定法などで測定される。
【0051】
続いて、樹脂粒子100と金属粒子111とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127)を作製する。ここで、第1混合粒子125における金属粒子111の体積含有量が一番少なく、第3混合粒子127における金属粒子111の体積含有量が一番多くなるように3種類の混合粒子を作製する。
【0052】
まず、図3Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された所定の形状の金型130に所定量充填する。
【0053】
続いて、図3Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61を形成するための第1混合粒子125を所定量充填する。
【0054】
続いて、図3Cに示すように、充填された第1混合粒子125上に、金属材料含有層62を形成するための第2混合粒子126を所定量充填する。
【0055】
続いて、図3Dに示すように、充填された第2混合粒子126上に、金属材料含有層63を形成するための第3混合粒子127を所定量充填する。
【0056】
続いて、図3Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、例えばプレス機140などによって、積層方向に加圧して一体化する。
【0057】
続いて、図3Eに示すように、加圧することで一体化された形成体を金型130から取り外し、第3混合粒子122側が下方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度で所定時間加熱して樹脂粒子どうしを融着する。この際、金属粒子111の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子111は溶融し、形成体の外部に流出する。なお、形成体は、融着温度で所定時間加熱された後、常温まで冷却される。
【0058】
上記した融着温度で所定時間加熱された形成体には、図3Fに示すように、金属粒子111が溶融して外部に流れ出すことによって、金属粒子111が分散されていた部分に気孔160が形成される。また、樹脂粒子100、第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127からなる各層の間は、樹脂材料どうしの融着により接合される。また、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成される。
【0059】
続いて、図3Gに示すように、第3混合粒子127からなる層が上方となるように配置し、第3混合粒子127からなる層の上面に、接合層40となるとともに、上記した気孔160に含浸して組成傾斜層60に含有される第2の金属材料となる板状の金属部材151を配置する。さらに、金属部材151上に、軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成する。ここで、第2の金属材料からなる金属部材151は、前述した組成傾斜層60に含有される金属材料70と同じ材料で構成される。なお、金属部材151の大きさ、具体的には厚さは、気孔160に含浸する量と、接合層40を形成する量を考慮して設定される。
【0060】
続いて、この積層体の周囲に、再び金型130を取り付け、金属部材151の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度に所定時間加熱する。これによって、金属部材151が溶融し、その一部は、気孔160に含浸し、外部に流出する微量分を除いた残部は、形成体と軸受基材30とを接合する接合層40となる。気孔160に金属部材151が含浸することで、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63が形成される。
【0061】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、金属部材151によって形成される接合層40の厚さを所定の厚さとするために、例えば、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予めその所定の厚さと同じ厚さを有する鉄系材料などからなるスペーサを配置しておくことが好ましい。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工などにより削り取ればよい。
【0062】
上記した工程を経ることで、金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10が得られる。
【0063】
次に、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備える軸受装置200について説明する。
【0064】
図4は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備える軸受装置200の断面を示す図である。ここでは、水車発電機に用いられるスラスト軸受を一例に、従来において広く回転電機等に使用されているスラスト軸受の構造を説明する。
【0065】
図4に示すように、回転軸210には、スラストカラー211が取り付けられ、このスラストカラー211の下面には回転板213が設けられている。そして、扇形に形成された複数の静止板214が回転軸210の周りに放射状に配置され、回転板213を摺動可能に支持している。この静止板214は、複合軸受部材10の構成を備えている。
【0066】
また、静止板214は、複数のバネ等の弾性部材215を介して支持板216により支持されている。また、スラストカラー211の側面には、ガイド軸受217が取り付けられている。このガイド軸受217は、複合軸受部材10の構成を備えている。ガイド軸受217の外部には、油槽218が設けられており、その内部は潤滑油219で満たされている。
【0067】
このように、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10は、軸受装置等に適用することができる。なお、複合軸受部材10が適用される装置は、上記した構成に限られるものではなく、回動部を摺動させる摺動面を有する軸受部材を備える、例えば、船舶用ディーゼルエンジン、発電用蒸気タービン、ガスタービン、一般産業用液空圧関係、プラント設備などの装置にも適用することができる。
【0068】
上記したように、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10によれば、軸受摺動材20における摺動層50以外の層を、金属材料を分散して含有し、かつ金属材料の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60とすることで、軸受摺動材20と接合層40、軸受摺動材20と接合層40における線膨張係数の差による熱応力を緩和することができる。これによって、優れた接合強度と高い信頼性を有する軸受材料を得ることができる。
【0069】
また、軸受摺動材20を構成するマトリックスを、組成傾斜層60に含有される金属材料の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料で構成することで、金属材料の融点以上で、樹脂材料の融着温度より低い温度に加熱しても、軸受摺動材20が溶融や劣化を起こすことない。そのため、接合層40を介して、軸受摺動材20と軸受基材30とを優れた接合強度を有して的確に接合することができる。
【0070】
また、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10を備えた軸受装置200では、上記した複合軸受部材10における作用効果と同様の作用効果を得ることができ、高い信頼性を有する軸受装置を得ることができる。
【0071】
また、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材10の製造方法によれば、例えば真空設備などを必要とせず、簡易な方法で、軸受部材の性能および信頼性を低下させることなく、複合軸受部材10を製造することができる。そのため、複合軸受部材を製造するための製造コストを削減することができる。
【0072】
次に、本発明に係る複合軸受部材10が、優れた接合強度を有することを実施例および比較例を用いて説明する。
【0073】
(実施例1)
実施例1では、図2A〜図2Eに示した第1の製造方法と同様の製造方法で作製された複合軸受部材10を使用した。
【0074】
以下に、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造方法について、図2A〜図2Eを参照して説明する。
【0075】
まず、PTFE樹脂からなる平均粒径が5μmの樹脂粒子100を用意した。なお、平均粒径は、メディアン粒径である。この平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定法で測定した。以下において、平均粒径およびその測定方法は、上記したものと同じである。
【0076】
さらに、組成傾斜層60に含有されるSn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agからなる金属粒子110を用意した。ここで、金属材料含有層61を形成するための金属粒子110の平均粒径を25μm、金属材料含有層62を形成するための金属粒子110の平均粒径を50μm、金属材料含有層63を形成するための金属粒子110の平均粒径を75μmとした。
【0077】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するために、樹脂粒子100と金属粒子110とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子120、第2混合粒子121、第3混合粒子122)を作製した。ここで、金属材料含有層61を形成するのが第1混合粒子120、金属材料含有層62を形成するのが第2混合粒子121、金属材料含有層63を形成するのが第3混合粒子122である。ここで、金属粒子110と樹脂粒子100との体積比(金属粒子110の体積:樹脂粒子100の体積)を、第1混合粒子120では25:75、第2混合粒子121では50:50、第3混合粒子122では75:25とした。
【0078】
まず、図2Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された300mm×300mmの四角形の金型130に所定量充填した。
【0079】
続いて、図2Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層61となる第1混合粒子120を所定量充填した。
【0080】
続いて、図2Cに示すように、充填された第1混合粒子120上に、金属材料含有層62となる第2混合粒子121を所定量充填した。
【0081】
続いて、図2Dに示すように、充填された第2混合粒子121上に、金属材料含有層63となる第3混合粒子122を所定量充填した。
【0082】
続いて、図2Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、プレス機140によって、積層方向に50MPaの圧力で加圧して一体化した。そして、第1混合粒子120による層の厚さが2mm、各混合粒子による層の厚さがそれぞれ1mmの形成体を作製した。
【0083】
続いて、この加圧することで一体化された形成体を、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着した。なお、この際、金属粒子110の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子110は溶融するが、第3混合粒子122側が上方となるように配置し、形成体の周囲は金型130によって覆われているため、溶融した金属粒子110は、ほとんど外部に流れ出すことはなかった。なお、融着温度で所定時間加熱された後、形成体を常温まで冷却した。
【0084】
ここで、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成された。また、第1混合粒子120からなる層によって金属材料含有層61が形成され、第2混合粒子121からなる層によって金属材料含有層62が形成され、第3混合粒子122からなる層によって金属材料含有層63が形成された。
【0085】
続いて、図2Eに示すように、金属材料含有層63の上面に、接合層40となる、Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Agで構成された、厚さが0.2mm、幅が300mm、長さが300mmの箔状の金属部材150を配置した。なお、ここでは、金属部材150を、金属粒子110と同じ材料で構成した。さらに、金属部材150上に、厚さが50mm、幅が300mm、長さが300mmの構造用炭素鋼(S45C)からなる軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成した。
【0086】
続いて、この積層体を、金属粒子110の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度である250℃で3分間加熱した。これによって、上記した、金属材料含有層61、金属材料含有層62、金属材料含有層63からなる各層の間の接合を確実なものとし、さらに金属部材150によって、形成体と軸受基材30とを接合した。接合層40の厚さは、0.2mmとした。
【0087】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、軸受基材30の表面の酸化皮膜を除去するため、加熱する前に軸受基材30の表面にフラックスを塗布した。また、金属部材150によって形成される接合層40の厚さを0.2mmとするために、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予め厚さが0.2mmのアルミニウム系材料(6061Al合金)からなるスペーサを配置した。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工により削り取った。
【0088】
ここで、図5は、上記した工程を経ることで作製された複合軸受部材10の各層に含有される金属材料の体積含有量を模式的に示した図である。
【0089】
上記した工程を経ることで、図5に示すように、金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10を得た。
【0090】
次に、得られた複合軸受部材10の接合界面のせん断強度を評価するために、複合軸受部材10を用いて、接合界面と平行に引張速度が0.1mm/秒の条件でせん断試験を行った。
【0091】
せん断試験の結果、せん断強度は20MPaであった。このせん断強度は、軸受材料として要求されているせん断強度(10MPa)を十分に満たすものであった。
【0092】
(実施例2)
実施例2では、図3A〜図3Gに示した第2の製造方法と同様の製造方法で作製された複合軸受部材10を使用した。
【0093】
以下に、実施例2で使用した複合軸受部材10の製造方法について、図3A〜図3Gを参照して説明する。
【0094】
まず、PTFE樹脂からなる平均粒径が5μmの樹脂粒子100を用意した。さらに、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子111を用意した。この金属粒子111は、組成傾斜層60に含有される第2の金属材料を含浸するための気孔を形成するために使用されるものである。
【0095】
ここで、金属材料含有層61を形成するための金属粒子111の平均粒径を25μm、金属材料含有層62を形成するための金属粒子111の平均粒径を50μm、金属材料含有層63を形成するための金属粒子111の平均粒径を75μmとした。
【0096】
続いて、金属材料含有層61、62、63を形成するための、樹脂粒子100と金属粒子111とを所定の割合で均一に混合した3種類の混合粒子(第1混合粒子125、第2混合粒子126、第3混合粒子127)を作製した。ここで、金属材料含有層61を形成するのが第1混合粒子125、金属材料含有層62を形成するのが第2混合粒子126、金属材料含有層63を形成するのが第3混合粒子127である。ここで、金属粒子111と樹脂粒子100との体積比(金属粒子111の体積:樹脂粒子100の体積)を、第1混合粒子125では25:75、第2混合粒子126では50:50、第3混合粒子127では75:25とした。
【0097】
まず、図3Aに示すように、軸受摺動材20の摺動層50となる樹脂粒子100を、平面上に設置された300mm×300mmの四角形の金型130に所定量充填した。
【0098】
続いて、図3Bに示すように、充填された樹脂粒子100上に、金属材料含有層62を形成するための第1混合粒子125を所定量充填した。
【0099】
続いて、図3Cに示すように、充填された第1混合粒子125上に、金属材料含有層62を形成するための第2混合粒子126を所定量充填した。
【0100】
続いて、図3Dに示すように、充填された第2混合粒子126上に、金属材料含有層63を形成するための第3混合粒子127を所定量充填した。
【0101】
続いて、図3Dに示すように、金型130に積層して充填された上記粒子を、プレス機140によって、積層方向に50MPaの圧力で加圧して一体化した。そして、第1混合粒子125による層の厚さが2mm、各混合粒子による層の厚さがそれぞれ1mmの形成体を作製した。
【0102】
続いて、図3Eに示すように、加圧することで一体化された形成体を金型130から取り外し、第3混合粒子122側が下方となるように配置し、樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着した。この際、金属粒子111の融点は、樹脂粒子100の融着温度よりも低いため、金属粒子111は溶融し、形成体の外部に流出した。なお、融着温度で所定時間加熱された後、形成体を常温まで冷却した。
【0103】
上記した融着温度である375℃で1時間加熱された形成体には、図3Fに示すように、金属粒子111が溶融して外部に流れ出すことによって、金属粒子111が分散されていた部分に気孔160が形成された。また、上記工程により、樹脂粒子100のみからなる層によって摺動層50が形成された。
【0104】
続いて、図3Gに示すように、第3混合粒子127からなる層が上方となるように配置し、第3混合粒子127からなる層の上面に、接合層40となるとともに、上記した気孔160に含浸して組成傾斜層60に含有される第2の金属材料となる、Sn−0.7重量%Cuからなる板状の金属部材151を配置した。この金属部材151の、厚さを1.8mm、幅を300mm、長さを300mmとした。さらに、金属部材151上に、厚さが50mm、幅が300mm、長さが300mmの構造用炭素鋼(S45C)からなる軸受基材30を積層して配置し、積層体を構成した。
【0105】
続いて、この積層体の周囲に、再び金型130を取り付け、金属部材151の融点以上でかつ樹脂粒子100どうしが融着する融着温度よりも低い温度である250℃で3分間加熱した。これによって、金属部材151が溶融し、その一部は、気孔160に含浸し、外部に流出する微量分を除いた残部は、形成体と軸受基材30とを接合する接合層40となった。気孔160に金属部材151が含浸することで、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63が形成された。
【0106】
なお、形成体と軸受基材30との接合を行う際、軸受基材30の表面の酸化皮膜を除去するため、加熱する前に軸受基材30の表面にフラックスを塗布した。また、金属部材151によって形成される接合層40の厚さを0.2mmとするために、形成体と軸受基材30との間の端縁に、予め厚さが0.2mmのアルミニウム系材料(6061Al合金)からなるスペーサを配置した。そして、形成体と軸受基材30とを接合した後、このスペーサを有する部分を、切削加工により削り取った。
【0107】
上記した工程を経ることで、図5に示すように、金属材料(Sn−0.7重量%Cu)の含有量が接合層40に向かって増加する組成傾斜層60を有する軸受摺動材20を備える複合軸受部材10を得た。
【0108】
次に、得られた複合軸受部材10について、実施例1で行ったせん断試験と同じ方法でせん断試験を行った。
【0109】
せん断試験の結果、せん断強度は20MPaであった。このせん断強度は、軸受材料として要求されているせん断強度(10MPa)を十分に満たすものであった。
【0110】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で使用した複合軸受部材10における金属材料含有層61および金属材料含有層62を有さない構成の複合軸受部材を使用した。すなわち比較例1で使用した複合軸受部材の軸受摺動材は、摺動層50と金属材料含有層63とで構成され、組成傾斜層を備えていない。それ以外の構成は、実施例1で使用した複合軸受部材10と同じとした。また、比較例1で使用した複合軸受部材は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程における、金属材料含有層61および金属材料含有層62を形成する工程を除いた工程で作製された。すなわち、比較例1で使用した複合軸受部材は、これらの工程が除かれる以外は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程(材料等の条件も含む)と同じ製造工程で作製された。
【0111】
ここで、図6は、比較例1で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図である。
【0112】
図6に示すように、比較例1で作製した複合軸受部材は、摺動層50と金属材料含有層63を有する軸受摺動材20と、軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とで構成されている。
【0113】
しかしながら、作製された複合軸受部材において、摺動層50と金属材料含有層63との間の周縁部から剥離が発生し、健全な複合軸受部材を得ることができなかった。これは、形成体を樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着後、室温まで冷却する際、摺動層50と金属材料含有層63との間の急激な組成変化により、双方の線膨張係数の差が大きくなり、摺動層50と金属材料含有層63との間の周縁部から剥離が発生したものと考えられる。
【0114】
(比較例2)
比較例2では、実施例1で使用した複合軸受部材10における金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63を有さない構成の複合軸受部材を使用した。すなわち比較例2で使用した複合軸受部材の軸受摺動材は、摺動層50のみで構成され、組成傾斜層を備えていない。それ以外の構成は、実施例1で使用した複合軸受部材10と同じとした。また、比較例2で使用した複合軸受部材は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程における、金属材料含有層61、金属材料含有層62および金属材料含有層63を形成する工程を除いた工程で作製された。すなわち、比較例2で使用した複合軸受部材は、これらの工程が除かれる以外は、実施例1で使用した複合軸受部材10の製造工程(材料等の条件も含む)と同じ製造工程で作製された。
【0115】
ここで、図7は、比較例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図である。
【0116】
図7に示すように、比較例2で作製した複合軸受部材は、摺動層50からなる軸受摺動材20と、軸受基材30と、軸受摺動材20と軸受基材30とを接合する接合層40とで構成されている。
【0117】
しかしながら、作製された複合軸受部材において、摺動層50と接合層40との接合面の全面が剥離し、健全な複合軸受部材を得ることができなかった。これは、形成体を樹脂粒子100どうしが融着する融着温度である375℃で1時間加熱して樹脂粒子どうしを融着後、室温まで冷却する際、摺動層50と接合層40との間の急激な組成変化により、双方の線膨張係数の差が大きくなり、摺動層50と接合層40との接合面の全面が剥離したものと考えられる。
【0118】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材の断面を示す図。
【図2A】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2B】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2C】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2D】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図2E】第1の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3A】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3B】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3C】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3D】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3E】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3F】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図3G】第2の製造方法によって複合軸受部材を製造する工程を示した断面図。
【図4】本発明に係る一実施の形態の複合軸受部材を備える軸受装置の断面を示す図。
【図5】実施例1および実施例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料の体積含有量を模式的に示した図。
【図6】比較例1で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図。
【図7】比較例2で作製した複合軸受部材の各層に含有される金属材料(Sn−0.5重量%Cu−3.0重量%Ag)の体積含有量を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0120】
10…複合軸受部材、20…軸受摺動材、30…軸受基材、40…接合層、50…摺動層、60…組成傾斜層、61,62,63…金属材料含有層、70…金属材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に回転部を摺動させる摺動層を有する軸受摺動材と、
前記軸受摺動材を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材と、
前記軸受摺動材の他方の表面と前記軸受基材の一方の表面とを接合する接合層と
を具備し、
前記摺動層と前記接合層との間の前記軸受摺動材を構成する層が、金属材料を分散して含有し、かつ前記金属材料の含有量が前記接合層に向かって増加する組成傾斜層であることを特徴とする複合軸受部材。
【請求項2】
前記軸受摺動材を構成するマトリックスは、前記金属材料の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料であることを特徴とする請求項1記載の複合軸受部材。
【請求項3】
前記軸受基材が鉄系材料からなることを特徴とする請求項1または2記載の複合軸受部材。
【請求項4】
前記金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の複合軸受部材。
【請求項5】
樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、
樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、
積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、
前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着する樹脂粒子融着工程と、
前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、
前記積層体を、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属粒子および前記金属部材を溶融して、前記形成体の各層間、および前記形成体と前記基材とを接合する接合工程と
を具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法。
【請求項6】
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項7】
樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、
樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、
積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、
前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着し、かつ前記金属粒子を溶融して前記形成体の外部に流出させ、前記形成体に気孔を形成する気孔形成工程と、
前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、
前記積層体を、前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属部材を溶融して、前記気孔内に含浸させ、かつ前記形成体と前記基材とを接合する接合工程と
を具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法。
【請求項8】
前記第1の金属材料が、InまたはInを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項7記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項9】
前記第2の金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項7または8記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項10】
前記基材が鉄系材料からなることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項11】
回転軸の軸方向のスラスト荷重を摺動可能に支持するスラスト軸受および回転方向の軸振れを摺動可能に支持するガイド軸受を具備する軸受装置であって、
前記スラスト軸受および前記ガイド軸受における軸受部材の少なくとも一方が、請求項1乃至4のいずれか1項記載の複合軸受部材で構成されていることを特徴とする軸受装置。
【請求項12】
請求項11記載の軸受装置を備えていることを特徴とする回転電機。
【請求項1】
一方の表面に回転部を摺動させる摺動層を有する軸受摺動材と、
前記軸受摺動材を構成する材料とは異なる材料からなる軸受基材と、
前記軸受摺動材の他方の表面と前記軸受基材の一方の表面とを接合する接合層と
を具備し、
前記摺動層と前記接合層との間の前記軸受摺動材を構成する層が、金属材料を分散して含有し、かつ前記金属材料の含有量が前記接合層に向かって増加する組成傾斜層であることを特徴とする複合軸受部材。
【請求項2】
前記軸受摺動材を構成するマトリックスは、前記金属材料の融点よりも高い融着温度を有する樹脂材料であることを特徴とする請求項1記載の複合軸受部材。
【請求項3】
前記軸受基材が鉄系材料からなることを特徴とする請求項1または2記載の複合軸受部材。
【請求項4】
前記金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の複合軸受部材。
【請求項5】
樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、
樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、
積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、
前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着する樹脂粒子融着工程と、
前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、
前記積層体を、前記第1の金属材料および前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属粒子および前記金属部材を溶融して、前記形成体の各層間、および前記形成体と前記基材とを接合する接合工程と
を具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法。
【請求項6】
前記第1の金属材料および前記第2の金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項5記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項7】
樹脂からなる樹脂粒子を所定の形状を有する金型に所定量充填し、樹脂粒子層を形成する樹脂粒子層形成工程と、
樹脂からなる樹脂粒子に、前記樹脂粒子どうしが融着する融着温度よりも低い融点を有する第1の金属材料からなる金属粒子を混合し、前記金属粒子の含有量を徐々に増加させながら、前記樹脂粒子と前記金属粒子からなる複数の混合粒子層を、前記樹脂粒子層上に形成する混合粒子層形成工程と、
積層された、前記樹脂粒子層と前記混合粒子層とを積層方向に加圧して一体化し、形成体を作製する加圧工程と、
前記形成体を前記融着温度に加熱して、前記樹脂粒子どうしを融着し、かつ前記金属粒子を溶融して前記形成体の外部に流出させ、前記形成体に気孔を形成する気孔形成工程と、
前記形成体の樹脂粒子層側を下にして配置し、前記形成体上に、前記融着温度よりも低い融点を有する第2の金属材料からなる金属部材を積層し、前記金属部材上に基材を積層して、積層体を構成する積層工程と、
前記積層体を、前記第2の金属材料の融点以上でかつ前記融着温度よりも低い温度に加熱し、前記金属部材を溶融して、前記気孔内に含浸させ、かつ前記形成体と前記基材とを接合する接合工程と
を具備することを特徴とする複合軸受部材の製造方法。
【請求項8】
前記第1の金属材料が、InまたはInを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項7記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項9】
前記第2の金属材料が、SnまたはSnを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項7または8記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項10】
前記基材が鉄系材料からなることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項記載の複合軸受部材の製造方法。
【請求項11】
回転軸の軸方向のスラスト荷重を摺動可能に支持するスラスト軸受および回転方向の軸振れを摺動可能に支持するガイド軸受を具備する軸受装置であって、
前記スラスト軸受および前記ガイド軸受における軸受部材の少なくとも一方が、請求項1乃至4のいずれか1項記載の複合軸受部材で構成されていることを特徴とする軸受装置。
【請求項12】
請求項11記載の軸受装置を備えていることを特徴とする回転電機。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−121692(P2010−121692A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295184(P2008−295184)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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