説明

複式筆記具

【課題】筆記芯の回転駆動機構を備えたシャープペンシルユニットを一つの筆記体として備えた複式筆記具において、ユニットに撓みを与えて筆記芯の回転動作を妨げるという問題を解消すること。
【解決手段】複数の筆記体のうちの一つの筆記体は、シャープペンシルユニット11であり、当該シャープペンシルユニットは、筆記動作に伴い筆記芯が受ける筆記圧による筆記芯の後退動作、および筆記圧の解除による筆記芯の前進動作を受けて回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構11dが備えられ、前記回転子の回転運動を前記筆記芯に伝達させるように構成されている。前記シャープペンシルユニット11は、軸筒1の軸中心部に配設されると共に、先端筆記部11aは軸筒の軸中心部を通る線上に形成された先口2aより繰り出されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の筆記体を軸筒内に収容し、いずれかの筆記体の先端筆記部を軸筒の先口より繰り出すことができる複式筆記具に関し、特に筆記体の一つにシャープペンシルを用いた複式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
軸筒中に複数の筆記体を収容し、所定の繰り出し操作により、軸筒の先口からいずれか一つの筆記体の先端筆記部を繰り出す構造の複式筆記具が提供されている。
この複式筆記具には、シャープペンシル筆記体(以下、シャープペンシルユニットともいう。)と、インク色の異なった複数本のボールペン筆記体(以下、ボールペンユニットともいう。)が軸筒内に収容され、これらが選択的に利用できるように構成されている例が多い。
【0003】
ところで、筆記体の一つとして利用される前記シャープペンシルユニットは、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するために、書き始めに対して描線が除々に太くなるという現象が発生する。また描線の太さが変わるだけでなく、筆記面に対する筆記芯の接触面積が変わるために、書き進むにしたがって描線の濃さも変化する(描線がうすくなる)現象も発生する。
そこで、本件出願人は前記した課題を解決すために筆記動作に応じて筆記芯が回転するシャープペンシルについて提案をしており、これは特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示されたシャープペンシルによると、筆記動作に伴い筆記芯が受ける筆記圧による筆記芯の僅かな後退動作、および筆記圧の解除による筆記芯の僅かな前進動作を受けて回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ、前記回転子の回転運動を前記筆記芯に伝達させるようにした構成が採用されている。
【0005】
このような回転駆動機構を備えたシャープペンシルを、前記した複式筆記具において1つのユニットとして用いようとした場合には、一般的な複式筆記具の構成においては、軸筒からのシャープペンシルユニットの繰り出し時に、シャープペンシルユニットが撓んで(曲がって)繰り出されることになる。
このために、前記したように筆記芯の回転駆動機構を備えるシャープペンシルユニットにおいては、軸筒からの繰り出される際の撓みを受けて、回転駆動機構に対して軸線に直交する方向に不要な応力が加わり、筆記芯の回転動作に不具合が生ずるという問題が招来される。
【0006】
ところで、特許文献2および特許文献3には、軸筒の先端部に形成される先口の位置を軸中心から偏心させて、シャープペンシルユニットを曲げずに、その先端筆記部を繰り出すことができるように構成した複式筆記具が開示されている。
そこで、特許文献2および特許文献3に開示された複式筆記具の例を採用すれば、ユニットを曲げずに軸筒の先口から先端筆記部を繰り出すことができるので、シャープペンシルユニットに備えた回転駆動機構に不具合をもたらす問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2007/142135号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2010/024346号パンフレット
【特許文献3】実開平1−85092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に開示された複式筆記具によると、軸筒から繰り出される先端筆記部が、軸中心から偏心しているので、軸筒から繰り出された先端筆記部の位置は軸筒の握り位置に応じて変化する。このために、軸筒の握り位置に応じて筆感が変わり、常に快適な筆感を得ることができない。
【0009】
この発明は、前記した技術的な背景に基づいてなされたものであり、特に筆記芯の回転駆動機構を備えたシャープペンシルユニットを少なくとも一つの筆記体として備えた複式筆記具について、シャープペンシルユニットを選択した時にユニットに撓みを与えて筆記芯の回転動作を妨げるという問題を解消すると共に、シャープペンシルユニットの先端筆記部の位置が軸筒の握り位置に応じて変化することがなく、快適な筆感を得ることができる複式筆記具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る複式筆記具は、軸筒内に複数の筆記体が収容され、前記軸筒の先端部に形成された先口より、いずれか一つの筆記体の先端筆記部を繰り出すことができる複式筆記具であって、前記複数の筆記体のうちの少なくとも一つの筆記体は、シャープペンシルユニットであり、当該シャープペンシルユニットは、筆記動作に伴い筆記芯が受ける筆記圧による筆記芯の後退動作、および筆記圧の解除による筆記芯の前進動作を受けて回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ、前記回転子の回転運動を前記筆記芯に伝達させるように構成され、かつ前記シャープペンシルユニットは、前記軸筒の軸中心部に配設されると共に、前記シャープペンシルユニットの先端筆記部は、軸筒の軸中心部を通る線上に形成された先口より繰り出されるように構成したことを特徴とする。
【0011】
この場合、好ましい形態においては、前記シャープペンシルユニットは、前記軸筒の後端部に配置されたノック棒を押し込み操作することで、先端筆記部が前記軸筒に形成された先口から繰り出され、前記軸筒の外周部に配置された解除ボタンを操作することで、先端筆記部が前記軸筒内に収容されるように構成される。
【発明の効果】
【0012】
前記した構成の複式筆記具によると、回転駆動機構を備えたシャープペンシルユニットは、軸筒の軸中心部に配設されると共に、先端筆記部は軸筒の軸中心部を通る線上に形成された先口より繰り出されるように構成したので、シャープペンシルユニットを選択した時にユニットに撓みを与えて筆記芯の回転動作を妨げるという問題を解消することができる。
また、シャープペンシルユニットにおける先端筆記部の位置が、軸筒の握り位置に応じて変化することはなく、常に快適な筆感を得ることができる複式筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係る複式筆記具の第1の実施の形態について、外観構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示す第1の実施の形態について、外観構成を示した側面図および縦断面図である。
【図3】図2に示す状態に対して軸回りに90度回転させた状態の外観構成を示した側面図および縦断面図である。
【図4】第1の実施の形態について、シャープペンシルユニットおよびボールペンユニットの繰り出し状態をそれぞれ示した縦断面図である。
【図5】シャープペンシルユニットにおいて用いられるノック棒とロック部材の作用を説明する断面図である。
【図6】ロック部材の単体構成を示した拡大斜視図である。
【図7】シャープペンシルユニットに搭載された回転駆動機構の外観構成を示した側面図および一部断面図である。
【図8】同じく回転駆動機構の一部を破断して示した斜視図である。
【図9】この発明に係る複式筆記具の第2の実施の形態について、外観構成を示した側面図および縦断面図である。
【図10】図9に示す状態に対して軸回りに90度回転させた状態の外観構成を示した側面図および縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明に係る複式筆記具の第1の実施の形態について、図1〜図8に基づいて先に説明し、第2の実施の形態については、図9および図10に基づいて後で説明する。
なお、第1および第2の実施の形態は、いずれも筆記芯の回転駆動装置を備えた1つのシャープペンシルユニット、インク色の異なる2つのボールペンユニットをそれぞれ軸筒内に収容した複式筆記具を例示している。
そして、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の各図面に付けた符号を引用して説明する場合もある。
【0015】
図1に示したように複式筆記具の外郭を構成する軸筒1の前端部には、例えば合成樹脂により円錐形状に成形されたクチプラ2が螺着されている。このクチプラ2の先端部には先口2aが開口されており、この先口2aを介して前記シャープペンシルユニットもしくはボールペンユニットの先端筆記部が選択的に繰り出されるように構成されている。
【0016】
図1(A)は、先口2aからはいずれのユニット(筆記体)も繰り出されていない未使用の状態を示しており、図1(B)は、軸筒の後端部に配置されたノック棒19を軸方向に押し込むことで、シャープペンシルユニットの先端筆記部が前記先口2aから繰り出された状態を示している。
また、図1(C)は、軸筒の周側面に配置された1つのスライドノブ12cを軸方向の前方にスライド操作することで、1つのボールペンユニットの先端筆記部(ボールペンチップ)が前記先口2aから繰り出された状態を示している。
【0017】
図2および図3は、複式筆記具を軸回りに90度回転させた状態について、それぞれ側面図および縦断面図で示したものであり、軸筒1内には前記したとおり、シャープペンシルユニット11、インク色の異なる2つのボールペンユニット12,13が収容されている。
これらのシャープペンシルユニット11、インク色の異なる2つのボールペンユニット12,13は、軸筒1内のほぼ中央部に取り付けられたユニット支持部材15に穿設された貫通孔内にそれぞれ軸方向に移動可能となるように装着されている。
【0018】
前記シャープペンシルユニット11は、図2に示されているように外周がほぼ真円形状に形成された軸筒1の軸中心部に配設されており、その先端筆記部11aより筆記芯が出没可能となるように構成されている。また、前記先端筆記部11aの僅かに後方寄りには、前記筆記芯を把持する周知のチャック機構11bが装着されている。
シャープペンシルユニット11の後端部には、芯ケースを兼ねる中継パイプ11cを介して回転駆動機構11dが取り付けられており、この回転駆動機構11dは軸筒1内の後半部に取り付けられたガイド筒16内を摺動可能となるように収容されている。なお、前記回転駆動機構11dの構成および作用については、後で説明する。
【0019】
前記ユニット支持部材15と回転駆動機構11dとの間には、コイル状のリターンバネ17が中継パイプ11cを捲装するようにして配置されており、このリターンバネ17の作用により、前記シャープペンシルユニット11は軸筒1内を後退する方向に付勢されている。
さらに、前記回転駆動機構11dの後方には、ノック棒19が前記ガイド筒16内を摺動可能となるように収容されており、ノック棒19に形成された内部空間19a内には、バネ機能を有するロック部材20が収容されている。
【0020】
このロック部材20の構成および作用については後で説明するが、前記ロック部材20は前記ノック棒19を軸方向に押し込んだ状態を保持し、ロック部材20と一体に形成された解除ボタン20aを操作することで保持状態が解除されるように構成されている。
【0021】
図3に示されているように、前記軸筒1の軸中心部に配設されたシャープペンシルユニット11を軸対称として、このシャープペンシルユニット11の左右に、インク色が異なる第1と第2のボールペンユニット12,13が配置されている。
このボールペンユニット12,13は、周知のとおり先端筆記部12a,13aとして、それぞれボールペンチップが用いられ、インク収容筒12b,13bの先端部に取り付けられている。
【0022】
前記インク収容筒12b,13bの後端部には、それぞれスライドノブ12c,13cが取り付けられており、このスライドノブ12c,13cは、軸筒1の周側面に軸方向に沿って形成されたスリット孔を介して軸筒1の外側に一部が突出するようにして配置されている。
また、第1と第2のボールペンユニット12,13は、前記したとおりユニット支持部材15に穿設された貫通孔内にそれぞれ軸方向に移動可能となるように装着されており、前記ユニット支持部材15とスライドノブ12c,13cとの間にインク収容筒12b,13bを捲装するようにして、コイル状のリターンバネ22,23が配置されている。
そして、前記リターンバネ22,23の作用により、前記ボールペンユニット12,13は軸筒1内を後退する方向に付勢されている。
【0023】
図4(A)は、前記したノック棒19を軸方向に押し込み、シャープペンシルユニット11の先端筆記部11aが先口2から繰り出された状態を示している。
この状態において、ノック棒19を軸方向にノック操作すると、回転駆動機構11dおよび中継パイプ11cを介してチャック機構11bにノック操作が伝達される。
前記チャック機構11bには、特に符号は付けていないが、先端部が例えば3分割されて筆記芯の通孔を備えたチャック本体、チャック本体の周囲を取り巻くように配置された円環状の締め具、チャック本体の前方に配置され、筆記芯を一時的に保持するゴム製の保持チャック等が具備されている。
【0024】
前記した構成によって、前記ノック棒19のノック操作を受けて、チャック機構11bを構成するチャック本体は前後動し、これによりチャック本体は筆記芯の解除と把持が繰り返され、これにゴム製の保持チャックによる筆記芯の一時的な保持作用が加わって、筆記芯は順次前方に繰り出されるように作用する。
また周知のとおり、ノック棒19をノックした状態にして筆記芯を指先等で押すことで、筆記芯を先端筆記部11a内に戻すことができる。
これにより図に示す複式筆記具は、シャープペンシルユニットを用いた筆記動作を行うことができる。
【0025】
次に図4(B)は、第1のボールペンユニット12を利用する状態を示している。
前記した図4(A)に示す状態から、図4(B)に示す第1のボールペンユニット12を利用する状態に切り換えるには、前記したロック部材20に形成された解除ボタン20aを操作して、シャープペンシルユニット11をリターンバネ17の作用により軸筒1内に戻す動作を実行する。
この状態においてスライドノブ12cを前方にスライドする操作により、第1のボールペンユニット12の先端筆記部12aは先口2より繰り出され、ボールペンユニットによる筆記動作を行うことができる。
【0026】
なお、図には示されていないが、第1のボールペンユニット12を利用する状態においては、前記スライドノブ12cの一部がガイド筒16の一部に係合して、ボールペンユニット12の先端筆記部12aが先口2より繰り出された状態を維持するようになされる。
【0027】
また、図4(B)に示す状態において、さらに第2のボールペンユニット13に切り換えて利用しようとする場合には、スライドノブ13cを軸方向の前方にスライド操作する初期の状態において、第1のボールペンユニット12のスライドノブ12cはガイド筒16への係合が外され、第1のボールペンユニット12はリターンバネ22の作用により軸筒1内に後退する。
続いて第2のボールペンユニット13におけるスライドノブ13cの軸方向前方へのスライド操作により、図4(B)に示した例と同様に第2のボールペンユニット13を利用することができる。
【0028】
図5および図6は、前記シャープペンシルユニット11を利用する場合に用いられる前記したノック棒19とバネ機能を有するロック部材20との関係を示したものである。
前記したとおりロック部材20はノック棒19に形成された内部空間19a内に収容されて、ノック棒19の押し込み状態を保持すると共に、解除ボタン20aの操作よりノック棒19の押し込み状態を解除するようになされる。これはシャープペンシルユニット11を利用するか否かの選択動作に利用される。
【0029】
図6に、ロック部材20の単体構成を拡大して示している。このロック部材20は、例えば合成樹脂により一体成形されており、中央に折り曲げ部20bが施されることでU字状に形成され、前記折り曲げ部20bを介して同方向に延びる第1脚部20cおよび第2脚部20dを有している。
そして、第1脚部20cにおける折り曲げ部20bに近接する位置には、前記した解除ボタン20aが突出して形成されている。
また、前記第1脚部20cの先端部は係止端部20eを構成しており、前記第2脚部20dの先端部には横向きに円弧状凸部20fが形成されている。
【0030】
前記した構成のロック部材20が装着されたノック棒19の基本構成が図5に示されており、前記ロック部材20に形成された解除ボタン20aが軸筒1に形成された通孔を貫通して軸筒1の外側に突出している。
したがって、図5においては解除ボタン20aを線L上に位置させた状態でノック棒19が押し込まれた状態および解除された状態が示されている。
【0031】
図5に示すようにノック棒19には、これに形成された内部空間19aに向かってせり上る傾斜面19bが形成されており、この傾斜面19bに続いて係合部19cが、軸に直交する方向に形成されている。
したがって、図5の上半部に示された状態において、ノック棒19を図の左方向に向かって押し込むことでロック部材20の第1脚部20cは、ノック棒19傾斜面19bに沿ってせり上る。このときロック部材20の第2脚部20dに形成された円弧状凸部20fはガイド筒16の内周面に沿って摺動する。
【0032】
そして、ノック棒19の押し込みストロークの終端部に至ると、図5の下半部に示されたように、ロック部材20の係止端部20eがノック棒19側の係合部19cに入り込み、これによりノック棒19は押し込み状態で保持(ロック)される。これにより、図4に示すようにシャープペンシルユニット11が利用可能な状態となる。
【0033】
この図4に示す状態において、ロック部材20と一体の解除ボタン20aを軸中心方向に押し込むことで、図6に示す第1脚部20cが内側に変形し、ノック棒19側の係合部19cに係合していた係止端部20eは、その係止が外れる。
これにより、図2に示すようにリターンバネ17の作用により、前記シャープペンシルユニット11は軸筒1内を後退し、ノック棒19の押し込み状態は解除される。
【0034】
次に図7および図8は、シャープペンシルユニット11に具備された回転駆動機構11dの構成を示したものである。
この回転駆動機構11dは、円筒状に形成されたシリンダー部材22内に、1つのユニットとして構成されており、図7(A)に示すようにシリンダー部材22の軸方向の一端部に連結シャフト23cが突出している。この連結シャフト23cに対して、図4(A)に示すように中継パイプ11cが嵌合されて連結され、これにより回転駆動機構11dを具備したシャープペンシルユニット11を構成している。
【0035】
前記回転駆動機構11d内には回転子23が具備され、前記したチャック機構11bに把持された筆記芯が受ける筆記圧による軸方向の僅かな後退動作および筆記圧の解除による軸方向の僅かな前進動作(以下、これをクッション動作ともいう。)を受けて前記回転子23を一方向に回転駆動させるように作用する。
【0036】
前記回転子23は円柱状に形成されており、その軸方向の一端面には第1のカム面23aが形成され、他端面には第2のカム面23bが形成されている。
そして、前記回転子23における第1のカム面23aに対峙するようにして、第1の固定カム面24が配置され、第2のカム面23bに対峙するようにして、第2の固定カム面25が配置されている。
【0037】
前記回転子23に形成された第1カム面23aおよび第2カム面23bには、周方向に沿って連続的に鋸歯状になされたカムが形成されており、また前記第1の固定カム面24および第2の固定カム面25にも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされたカムが形成されている。
そして、回転子23に形成された第1カム面23a、第2カム面23b、第1固定カム面24、第2固定カム面25に鋸歯状に形成された各カムは、そのピッチが互いにほぼ同一となるように構成されている。
【0038】
一方、前記回転子23の後方には円筒状に形成されて軸方向に移動可能なトルクキャンセラー26が配置され、当該トルクキャンセラー26の内周面前端と前記シリンダー部材22の後端部内面との間にはコイル状のクッションスバネ27が装着されている。
前記クッションバネ27は、前記トルクキャンセラー26を前方に押し出すように付勢し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー26に押されて前記回転子23は前方に向かうように作用する。
【0039】
ここで、図4(A)に示したようにシャープペンシルユニット11を利用する状態において、先端筆記部11aから突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック機構11b、中継パイプ11cを介して回転子23が僅かに押し込まれるように作用する。これに伴って回転子23に形成された第1カム面23aは、前記第1固定カム面24に接合して噛み合い状態になされる。
このとき、回転子23は鋸歯状に形成されたカムの一歯の半ピッチに相当する回転駆動を受け、この回転作用は前記中継パイプ11c、チャック機構11bを介して筆記芯を回転させる。
【0040】
一方、筆記芯に対する筆記圧が解除された場合には、前記したクッションバネ27の作用により、回転子23は僅かに前進し、これに伴って回転子23に形成された第2カム面23bが前記第2固定カム面25に接合して噛み合い状態になされる。このとき、回転子23は鋸歯状に形成されたカムの一歯の半ピッチに相当する回転駆動を受け、この回転作用は前記中継パイプ11c、チャック機構11bを介して筆記芯に伝達される。
【0041】
前記した作用により、前記回転子23は一方向に順次回転運動を受けて回転し、これに伴って筆記芯も同様に一方向に順次回転運動を受けることになる。
したがって、この発明に係る複式筆記具においてシャープペンシルユニット11を利用した場合には、書き進むにしたがって描線が除々に太くなるという問題を解消することができ、書き進むにしたがって描線の濃さも変化する(描線がうすくなる)という問題も解消することができる。
【0042】
なお、図4(A)に示したようにシャープペンシルユニット11を利用する状態においては、前記シャープペンシルユニット11は、軸筒1の軸中心部に配設されると共に、先端筆記部11aは、軸筒1の軸中心部を通る線上に形成された先口2aより繰り出されるように構成されている。
【0043】
これにより、シャープペンシルユニット11に撓みを与ることはなく、回転駆動機構11dを含むシャープペンシルユニット11における筆記芯の円滑な回転動作を保障することができる。加えて、シャープペンシルユニット11は、軸筒1の軸中心部に配設されているので、軸筒の握り位置に応じて先端筆記部の位置が変化することがなく、快適な筆感を得ることができる。
【0044】
図9および図10は、この発明に係る複式筆記具の第2の実施の形態を示したものであり、複式筆記具を軸回りに90度回転させた状態について、それぞれ側面図および縦断面図で示したものである。
なお、図9および図10においては、すでに説明した図1〜図8に示す第1の実施の形態における各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがって、個々の構成および作用についての説明は適宜省略する。
【0045】
この第2の実施の形態においては、すでに説明した第1の実施の形態に比較して、軸筒1が偏平状に形成されている。
そして、軸筒1の軸中心部には、回転駆動機構11dを備えたシャープペンシルユニット11が配設され、このシャープペンシルユニット11を軸対称として、このシャープペンシルユニット11の左右に、インク色が異なる第1と第2のボールペンユニット12,13が配置されている。
【0046】
加えて、偏平状に形成された軸筒1の先端部には、先口3a〜3cがそれぞれ形成されて、前記シャープペンシルユニット11の先端筆記部11a、前記第1ボールペンユニット12の先端筆記部12a、前記第2ボールペンユニット13の先端筆記部13aがそれぞれ、専用の先口3a〜3cから繰り出されるように構成されている。
【0047】
なお、この第2の実施の形態において、シャープペンシルユニット11に採用されたノック棒19およびロック部材20の構成は、すでに説明した図5および図6に示したものと同一構成のものが用いられ、また回転駆動機構11dについても、すでに説明した図7および図8に示したものと同一構成のものが用いられている。
【0048】
この第2の実施の形態によると、シャープペンシルユニット11もしくは第1または第2のボールペンユニット12〜13のいずれを利用する場合においても、各ユニット11〜13に撓みを与ることはなく、特に回転駆動機構11dを備えたシャープペンシルユニット11においては、筆記芯の円滑な回転動作を保障することができる。
加えて、シャープペンシルユニット11は、軸筒1の軸中心部に配設されているので、軸筒の握り位置に応じて先端筆記部の位置が変化することがなく、快適な筆感を得ることができるなど、前記した第1の実施の形態と同様の作用効果を期待することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 軸筒
3,3a〜3c 先口
11 シャープペンシルユニット
11a 先端筆記部
11b チャック機構
11d 回転駆動機構
12 ボールペンユニット(第1ユニット)
12a 先端筆記部(ボールペンチップ)
12c スライドノブ
13 ボールペンユニット(第2ユニット)
13a 先端筆記部(ボールペンチップ)
13c スライドノブ
15 ユニット支持部材
16 ガイド筒
17,22,23 リターンバネ
19 ノック棒
20 ロック部材
20a 解除ボタン
23 回転子
23a 第1カム面
23b 第2カム面
24 第1固定カム面
25 第2固定カム面
26 トルクキャンセラー
27 クッションバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体が収容され、前記軸筒の先端部に形成された先口より、いずれか一つの筆記体の先端筆記部を繰り出すことができる複式筆記具であって、
前記複数の筆記体のうちの少なくとも一つの筆記体は、シャープペンシルユニットであり、当該シャープペンシルユニットは、筆記動作に伴い筆記芯が受ける筆記圧による筆記芯の後退動作、および筆記圧の解除による筆記芯の前進動作を受けて回転子を一方向に回転駆動させる回転駆動機構が備えられ、前記回転子の回転運動を前記筆記芯に伝達させるように構成され、
かつ前記シャープペンシルユニットは、前記軸筒の軸中心部に配設されると共に、前記シャープペンシルユニットの先端筆記部は、軸筒の軸中心部を通る線上に形成された先口より繰り出されるように構成したことを特徴とする複式筆記具。
【請求項2】
前記シャープペンシルユニットは、前記軸筒の後端部に配置されたノック棒を押し込み操作することで、先端筆記部が前記軸筒に形成された先口から繰り出され、前記軸筒の外周部に配置された解除ボタンを操作することで、先端筆記部が前記軸筒内に収容されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載された複式筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−18175(P2013−18175A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152611(P2011−152611)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】