説明

複素環式抗ウイルス化合物

式I(式中、R、R、R、R、R5a、R5b、R5c、及びRは、本明細書に定義される通りである)を有する化合物は、C型肝炎ウイルスNS5bポリメラーゼ阻害剤である。また開示されるのは、HCV感染症を治療して、HCV複製を阻害するための組成物及び方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNA依存性RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤である、非ヌクレオシド化合物とそのある種の誘導体を提供する。これらの化合物は、RNA依存性RNAウイルス感染症の治療に有用である。それらは、C型肝炎ウイルス(HCV)NS5Bポリメラーゼの阻害剤として、HCV複製の阻害剤として、そしてC型肝炎ウイルス感染症の治療に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、世界全体で慢性肝疾患の主因である(Boyer, N. et al., J. Hepatol. 2000 32:98-112)。世界保健機構(WHO)の推定では、世界の1億7000万人より多く(又は世界人口の約3%)が一本鎖リボ核酸(RNA)HCVに感染されている(G.M.Lauer, B.D. Walker, N. Engl. J. Med. 2001 345: 41-52)。HCVでの慢性被感染患者のうちほぼ1/5は、最終的に肝硬変を発症して、肝不全と肝細胞癌が含まれる、重大な罹病及び致死に悩まされる(T.J. Liang et al. Ann. Intern. Med. 2000132: 296-305; N. Engl. J. Med. 347: 975-982)。HCV感染症は、米国での肝移植の第一の適応症である(「NIH Consensus Statement on Management of Hepatitis C(C型肝炎の管理に関するNIH共同声明)」2002; http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14768714)。
【0003】
HCVは、フラビウイルス科のウイルスメンバーとして分類されて、これには、フラビウイルス属、ペスチウイルス属、及びC型肝炎ウイルスが含まれるヘパシウイルス属が含まれる(Fields 「Virology(ウイルス学)」監修者:B. N. Fields, D. M. Knipe 及び P. M. Howley, リッピンコット−ラヴェン・パブリッシャーズ、ペンシルヴェニア州フィラデルフィア、第30章、931-959 中、Rice, C. M.「Flaviviridae: The viruses and their replication(フラビウイルス科:ウイルスとその複製)」(1996)。HCVは、ほぼ9.4kbのポジティブセンス一本鎖RNAゲノムを含有するエンベロープウイルスである。このウイルスゲノムは、高度に保存された5’非翻訳領域(UTR)、ほぼ3011のアミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードする長いオープンリーディングフレーム、及び短い3’UTRからなる。
【0004】
HCVの遺伝子解析により、DNA配列の30%以上が多様化する、6つの主要な遺伝子型が同定された。30より多いサブタイプが識別されている。米国では、被感染個体のほぼ70%が1a型及び1b型の感染を有する。アジアでは、1b型が最も蔓延したサブタイプである(X. Forns and J. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3: 693-716; J. Bukh et al., Semin. Liv. Dis. 1995 15: 41-63)。残念ながら、1型の感染は、2型又は3型いずれかの遺伝子型より治療へ抵抗性である(N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13: 223-235)。
【0005】
HCVゲノムは、3010〜3033のアミノ酸のポリタンパク質をコードする(Q. L. Choo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1991 88: 2451-2455; N. Kato et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990 87: 9524-9528; A. Takamizawa et al., J. Virol. 1991 65: 1105-1113)。ウイルスの構造タンパク質には、ヌクレオカプシドコアタンパク質(C)と2つのエンベロープ糖タンパク質、E1及びE2が含まれる。HCVはまた、2つのプロテアーゼ、NS2−NS3領域によってコードされる亜鉛依存性メタロプロテイナーゼとNS3領域でコードされるセリンプロテアーゼをコードする。HCVのNS3プロテアーゼは、大多数のウイルス酵素のプロセシングを助けるセリンプロテアーゼであるので、ウイルスの複製及び感染性に不可欠であるとみなされている。これらのプロテアーゼは、前駆体ポリタンパク質を成熟ペプチドにする特異領域の切断に必要とされる。非構造タンパク質5、NS5Bのカルボキシル側の半分は、RNA依存性RNAポリメラーゼを含有する。
【0006】
現在、HCV感染の治療には、限られた数の承認治療法が利用可能である。HCV感染を治療して、HCV NS5Bポリメラーゼ活性を阻害するための新規及び既存の治療アプローチが概説されている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19: 5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3): 247-253; P. Hoffmann et al, Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11): 1707-1723; M. P. Walker et al., Exp. Opin. Investing. Drugs 2003 12(8): 1269-1280; S.-L. Tan et al., Nature Rev. Drug Discov. 2002 1: 867-881; J. Z. Wu and Z. Hong, Curr. Drug Targ -Infect. Dis. 2003 3(3): 207-219。
【0007】
リバビリン(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド;Virazole(登録商標))は、合成、非インターフェロン誘導性、広域スペクトルの抗ウイルスヌクレオシド類似体である。リバビリンは、フラビウイルス科が含まれる、数種のDNA及びRNAウイルスに対する in vitro 活性を有する(Gary L. Davis. Gastroenterology 2000 118:S104-S114)。リバビリンは、単独療法において、40%の患者で血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常へ抑えるが、それは、HCV−RNAの血清レベルを低下させない。リバビリンはまた、有意な毒性を示して、貧血を引き起こすことが知られている。ビラミジンは、リバビリンのプロドラッグであり、肝細胞中のアデノシンデアミナーゼによってリバビリンへ変換される(J. Z. Wu, Antivir. Chem. Chemother. 2006 17(1): 33-9)。
【0008】
インターフェロン(IFN)は、ほぼ10年の間、慢性肝炎の治療に利用されてきた。IFNは、ウイルス感染に応答して免疫細胞によって産生される糖タンパク質である。2つの別種のインターフェロンが認められている:1型には、数種のインターフェロンαと1種のインターフェロンβが含まれ、2型には、インターフェロンγが含まれる。1型インターフェロンは、主に被感染細胞によって産生されて、近隣細胞を新たな感染から防護する。IFNは、HCVが含まれる多くのウイルスのウイルス複製を阻害して、C型肝炎感染の単独治療薬として使用されるとき、IFNは、血清HCV−RNAを検出不能レベルへ抑制する。加えるに、IFNは、血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常化する。残念ながら、IFNの効果は一時的である。治療を止めると70%の再発率を生じて、正常な血清アラニントランスフェラーゼレベルを伴う持続的なウイルス学的応答を示すのは、10〜15%にすぎない(Davis, Luke-Bakaar, 同上)。
【0009】
現行では、治療未経験HCV患者への標準治療法は、リバビリンとインターフェロンαでのHCVの組合せ療法である。リバビリンとPEG−IFN(下記参照)を組み合わせると、1型HCVの患者の54〜56%において、治療の完了後24週間、検出不能なC型肝炎ウイルスリボ核酸(HCV RNA)として定義される持続的なウイルス応答(SVR)を生じる(Fried MW, et al. N. Engl. J. Med. 2002 347:975-982)。2型及び3型のHCVでは、SVRが80%に近づく(Walker, 同上)。さらに、PEG−IFNは注射によって投与されて、PEG−IFNとRBVの血液学的毒性と体質性の毒性は、多くの患者で、必要とされる長い(48週までの)治療期間の間、忍容することが困難である。現行では、再発した患者、又はPEG−IFN/RBV療法へ応答しなかった患者(不応答者)へのSOC治療法はない。全世界でCHC疾患の罹患率が高いこと、現行のSOCで治療の失敗率が高いことと、そして現行のSOCでの忍容性の課題に照らせば、上記の患者集団への治療選択肢を改善及び拡大することへの実質的な未充足の医療ニーズがある。宿主防御の効力は、宿主の免疫応答を混乱させてそれに侵入して拮抗するHCVの能力によって妨害されて、継続的なウイルス感染が確実となるだけでなく、IFN療法の抗ウイルス作用は、ごく頻繁に抵抗される(M.Gale, Jr., E.M. Foy, Nature 2005. 436:939-945)。故に、ウイルスそのものを標的にする戦略には、現行の治療選択肢と比較して、治療の結果を改善させる可能性がある。
【0010】
現在、限定されないが、NS2−NS3オートプロテアーゼ、NS3プロテアーゼ、NS3ヘリカーゼ、及びNS5Bポリメラーゼが含まれる、抗HCV治療薬としての医薬開発への可能性があるいくつかの新たな分子標的が同定されている。RNA依存性RNAポリメラーゼは、一本鎖、ポジティブセンスのRNAゲノムの複製に絶対不可欠である。この酵素は、医化学者の間で重大な関心を引き起こしてきた。
【0011】
現行では、C型肝炎ウイルス(HCV)の予防治療法はなく、現行で承認された療法は、HCVに対してのみ存在するが、限られている。新しい医薬化合物の設計及び開発が不可欠である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、式I:
【0013】
【化1】

【0014】
[式中:
は、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イル、及び2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルからなる群より選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−3ハロアルキル、又はC1−6アルコキシによって置換されていてもよく;
は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、及びピリダジニルからなる群より選択される(ヘテロ)アリール基であり、前記(ヘテロ)アリール基は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−3アルコキシ−C1−6アルキル、ハロゲン、(CHNR、シアノ、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−アルキルカルバモイル、N,N−ジアルキルカルバモイル、カルボキシル、カルボキシル−C1−3アルキル、SONH、C1−6アルキルスルフィニル、及びC1−6アルキルスルホニルからなる群より選択される1〜3の置換基で独立して置換されていてもよくて、nは0〜3であり;
は、水素、ヒドロキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、又はシアノであり;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルコキシ、ハロゲンであるか、又はRとR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;
5a、R5b、及びR5cは、
(i)独立しているとき、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、C1−2フルオロアルキル、ヒドロキシ、又はハロゲンより独立して選択される、又は
(ii)一緒になるとき、R5aとR5bは、一緒に、C2−4メチレンであり、そしてR5cは、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、C1−2フルオロアルキル、又はハロゲンである、又は
(iii)R又はRのいずれか一方とR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成して、R5bとR5cは、C1−3アルキルである;
は、水素、フッ素であるか、又は
とR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;そして
とRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニル、スルファモイル、C1−3アルキルスルファモイル、C1−3ジアルキルスルファモイル、カルバモイル、C1−3アルキルカルバモイル、又はC1−3ジアルキルカルバモイルである]による化合物、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0015】
本発明はまた、C型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる疾患を治療することを必要とする患者へ式Iによる化合物の治療有効量を投与することによってそれを治療するための方法を提供する。該化合物は、単独で投与しても、他の抗ウイルス化合物又は免疫調節剤と同時投与してもよい。
【0016】
本発明はまた、式Iによる化合物をHCVを阻害するのに有効な量で投与することによって細胞中でのHCVの複製を阻害するための方法を提供する。
本発明はまた、式Iによる化合物と少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で使用する不定冠詞「a」、「an」が付されたもの(entity)の句は、1以上のそのものを意味し;例えば、化合物(a compound)は、1以上の化合物又は少なくとも1つの化合物を意味する。このように、「1つ(a)」(又は「1つ(an)」)、「1以上(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」という用語は、本明細書において交換可能的に使用し得る。
【0018】
「本明細書において上記に定義されるような」という句は、本発明の「概要」又は最も広義の特許請求項において提供される、各基についての最も広い定義に言及する。下記に提供する他のすべての態様において、それぞれの態様に存在し得ても明白には定義されない置換基は、「発明の概要」に提供される最も広い定義を保持する。
【0019】
本明細書において使用されるように、移行句の中にあっても、特許請求項の本文の中にあっても、「含む」及び「含んでなる」という用語は、制限のない意味を有するものとして解釈されたい。即ち、この用語は、「少なくとも〜を有する」又は「少なくとも〜が含まれる」という句と同義的に解釈されたい。製造法の文脈で使用されるとき、「含んでなる」という用語は、この製造法に少なくとも引用の工程が含まれるが、追加の工程が含まれてよいことを意味する。化合物又は組成物の文脈で使用されるとき、「含んでなる」という用語は、この化合物又は組成物に少なくとも引用の特徴又は成分が含まれるが、追加の特徴又は成分も含まれてよいことを意味する。
【0020】
「独立して」という用語は、本明細書において、ある可変物(variable)が、同じか又は異なる定義を有する同じ化合物内の可変物の存在又は非存在に関わることなく、どの例でも適用されることを示すために使用される。従って、R”が2回現れて、「独立して炭素又は窒素」であると定義される化合物では、両方のR”が炭素であっても、両方のR”が窒素であっても、一方のR”が炭素で他方が窒素であってもよい。
【0021】
どの可変物(例、R、R4a、Ar、X、又はHet)も、本発明において利用されるか又は特許請求される化合物を図示して記載するどの部分又は式においても1回より多く出現するとき、それぞれの出現に関するその定義は、他のどの出現でのその定義から独立している。また、そのような化合物が安定した化合物を生じるのであれば、置換基及び/又は変数の複数の組合せが許容される。
【0022】
結合の末端にある「*」という記号、又は結合の中を通って引かれる「------」という記号は、官能基又は他の化学部分のそれが一部である分子の残りへの付加点をそれぞれ意味する。従って、例えば:
【0023】
【化2】

【0024】
(明確な頂点で結合するのではなく)環系の中へ引かれる結合は、その結合が好適な環原子のいずれへも付加してよいことを示す。
本明細書で使用する「任意選択の(optional)」又は「〜であってもよい(optionally)」という用語は、後続に記載される事象又は状況が起きてよいが起こる必要はないこと、そしてその記載には、その事象又は状況が起こる事例とそれが起こらない事例が含まれることを意味する。例えば、「置換されていてもよい」は、置換されていてもよい部分が水素又は置換基を取り込んでよいことを意味する。
【0025】
「約」という用語は、本明細書において、「概ね」、「の範囲において」、「およそ」又は「〜付近」を意味するために使用される。「約」という用語がある数的範囲とともに使用されるとき、それは、示した数値の上及び下の境界を拡げることによってその範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、述べた値の上及び下の数値を20%の分散により修飾するために使用される。
【0026】
本明細書で使用するように、変数の数的範囲の引用は、本発明がその範囲内の値のいずれにも等しい変数で実施し得ることを伝えるために企図される。従って、本来的に離散量である変数では、その変数は、数的範囲の末端を含めて、その範囲のどの整数値にも等しくなり得る。同様に、本来的に連続量である変数では、その変数は、数的範囲の末端を含めて、その範囲のどの実数値にも等しくなり得る。1例として、0と2の間の数値を有すると記載される変数は、本来的に離散量である変数では、0、1、又は2であり得て、そして本来的に連続量である変数では、0.0、0.1、0.01、0.001、又は他のどの実数値でもよい。
【0027】
式Iの化合物は、互変異性を明示する。互変異性の化合物は、2以上の相互変換可能な分子種として存在し得る。プロトトロピック(prototropic)互変異性体は、共有結合した水素原子の2つの原子間での移動より生じる。一般に、互変異性体は、平衡で存在するので、個々の互変異性体を単離する試みからは、通常、その化学的及び物理的特性が化合物の混合物と一致した混合物が生成される。平衡の位置は、分子内の化学特性に依存している。例えば、アセトアルデヒドのような、多くの脂肪族アルデヒド及びケトンでは、ケト形が優勢である一方で、フェノール類では、エノール形が優勢である。一般的なプロトトロピック互変異性体には、ケト/エノール
【0028】
【化3】

【0029】
アミド/イミド酸
【0030】
【化4】

【0031】
及びアミジン
【0032】
【化5】

【0033】
互変異性体が含まれる。終わりの2つはヘテロアリール及び複素環の環において特に一般的であり、本発明には、該化合物のすべての互変異性型が含まれる。
当業者には、式Iの化合物の中には1以上のキラル中心を含有して、それ故に2以上の立体異性型で存在し得るものがあると理解されよう。これらの異性体のラセミ体、個々の異性体、及び1つのエナンチオマーが濃縮された混合物、並びに2つのキラル中心がある場合のジアステレオマー、そして特定のジアステレオマーが一部濃縮した混合物が本発明の範囲内にある。当業者には、トロパン環の置換がendo又はexo配置のいずれでもよく、本発明には両方の配置が含まれることがさらに理解されよう。本発明には、式Iの化合物の個々の立体異性体(例、エナンチオマー)、ラセミ混合物、又は一部分割混合物と、適宜、それらの個々の互変異性型がすべて含まれる。
【0034】
ラセミ体は、そのまま使用しても、その個々の異性体へ分割してもよい。分割は、立体化学的に純粋な化合物、又は1以上の異性体が濃縮した混合物をもたらすことができる。異性体の分離の方法は、よく知られていて(「Topics in Stereochemistry(立体化学の話題)」第6巻、ウィリー・インターサイエンス(1971)中、Allinger N. L. and Eliel E. L. を参照のこと)、キラル吸着剤を使用するクロマトグラフィーのような物理的な方法が含まれる。個々の異性体は、キラル前駆体よりキラル形で製造することができる。あるいは、個々の異性体は、10−カンファースルホン酸、カンファー酸、α−ブロモカンファー酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、ピロリドン−5−カルボン酸、等の個々のエナンチオマーのようなキラル酸とジアステレオマー塩を形成させること、この塩を分別結晶させること、そして次いで分割した塩基の一方又は両方を解放すること、この方法を任意選択的に繰り返すことによって、混合物より化学的に分離させて、他方を実質的に含まずに(即ち、95%より高い光学純度を有する形態で)一方又は両方を入手することができる。あるいは、ラセミ体をキラル化合物(補助剤)へ共有結合させてジアステレオマーを生成することができて、これをクロマトグラフィーによるか又は分別結晶によって分離することができて、この時間の後でキラル補助剤を化学的に除去して、純粋なエナンチオマーを得る。
【0035】
式Iの化合物は、酸性又は塩基性の官能基を含有し得る。好適な酸付加塩は、塩基中心の酸でのプロトン化によって生成される。酸性中心の塩基による脱プロトン化でも塩が生成される。塩生成は、非塩型には存在しなかった望ましい薬物動態特性を有効成分に付与する場合があり、有効成分の身体中での治療活性に関するその薬力学にプラスの影響を及ぼす場合さえある。化合物の「医薬的に許容される塩」という句は、医薬的に許容されて、親化合物の所望の薬理学的活性を保有する塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、等のような無機酸とともに生成される酸付加塩;又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフト酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコ酸、等のような有機酸とともに生成される酸付加塩;又は(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン(例、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオン)に置き換わるか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、等のような有機塩基と配位結合するときに生成される塩が含まれる。好適な塩に関する概説については、Berge et al, J. Pharm. Sci., 197766: 1-19 と G. S. Paulekuhn et al. J. Med. Chem. 2007 50: 6665 を参照のこと。
【0036】
本明細書において使用する技術及び科学用語は、他に定義されなければ、本発明が関連する技術分野の当業者によって普通に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に知られた様々な方法論及び材料が参照される。薬理学の一般原理を説明する標準参考書には、「Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics(グッドマン・ギルマンの薬理書)」第10版、マクグローヒルカンパニー社、ニューヨーク(2001)が含まれる。上記の化合物を製造するときに使用する出発材料及び試薬は、一般に、アルドリッチ・ケミカル社のような市販供給業者から入手可能であるか、又は参考文献に示される手順に従って、当業者に知られた方法によって製造される。以下の記載及び実施例において参照される材料、試薬、等は、他に述べなければ、市販の供給元より入手可能である。一般的な合成手順は、「Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis(フィーザーの有機合成試薬)」ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1-21 巻;R. C. LaRock「Comprehensive Organic Transformations(有機変換総説)」、第2版、ウィリー−VCH、ニューヨーク(1999);「Comprehensive Organic Synthesis(有機合成総説)」B. Trost and I. Fleming(監修)、1-9 巻、ペルガモン、オックスフォード(1991);「Comprehensive Heterocyclic Chemistry(複素環式化学総説)」 A. R. Katritzky and C. W. Rees(監修)、ペルガモン、オックスフォード(1984)、1-9 巻;「Comprehensive Heterocyclic Chemistry II(複素環式化学総説II)」A. R. Katritzky and C. W. Rees(監修)、ペルガモン、オックスフォード(1996)、1-11 巻;及び、「Organic Reactions(有機反応)」ウィリー・アンド・サンズ:ニューヨーク(1991)、1-40 巻のような専門書に記載されていて、当業者には馴染みのものであろう。
【0037】
本発明の1つの態様において、R、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnが本明細書で上記に記載される通りである、式Iによる化合物を提供する。
【0038】
本発明の第二の態様において、Rが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、及び2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルであり;Rは、置換されていてもよいフェニル又は置換されていてもよいピリジニルであり;そしてR5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルである、又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0039】
本発明の第三の態様において、Rが、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、及び2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0040】
本発明の第四の態様において、Rが2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0041】
本発明の第五の態様において、Rが2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;そしてR5a、R5b、及びR5cは、メチルである、式Iによる化合物を提供する。
【0042】
本発明の第六の態様において、Rが2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;そしてR5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0043】
本発明の第七の態様において、Rが2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;そして、R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、メチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、又はクロロである、式Iによる化合物を提供する。
【0044】
本発明の第八の態様において、Rが2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるピリミジニル、ピラジニル、及びピリダジニルであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、メチルである、式Iによる化合物を提供する。
【0045】
本発明の第九の態様において、Rが、置換されていてもよい3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル又は2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0046】
本発明の第十の態様において、Rが、置換されていてもよい3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル又は2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるピリミジニル、ピラジニル、及びピリダジニルであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0047】
本発明の第十一の態様において、Rが、置換されていてもよい2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イルであり;Rは、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、Rは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;Rは、水素又はヒドロキシであり;Rは、水素又はC1−6アルコキシであり;そして、R5a、R5b、及びR5cは、(i)独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は(ii)R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、式Iによる化合物を提供する。
【0048】
本発明の第十二の態様において、表IのI−1〜I−5より選択される化合物を提供する。
本発明の第十三の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)による化合物の治療有効量を投与することを含んでなる、HCV感染症を治療することを必要とする患者においてそれを治療する方法を提供する。
【0049】
本発明の第十四の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)による化合物の治療有効量と、少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤を同時投与することを含んでなる、HCV感染症を治療することを必要とする患者においてそれを治療する方法を提供する。
【0050】
本発明の第十五の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)による化合物の治療有効量と、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、又はコロニー刺激因子より選択される少なくとも1つの免疫系モジュレーターを同時投与することを含んでなる、HCVによって引き起こされる疾患を治療することを必要とする患者においてそれを治療する方法を提供する。
【0051】
本発明の第十六の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)による化合物の治療有効量と、インターフェロン又は化学的に誘導したインターフェロンを同時投与することを含んでなる、HCV感染症を治療することを必要とする患者においてそれを治療する方法を提供する。
【0052】
本発明の第十七の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)による化合物の治療有効量と、HCVプロテアーゼ阻害剤、別のHCVポリメラーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、HCVプライマーゼ阻害剤、及びHCV融合阻害剤からなる群より選択される別の抗ウイルス化合物を同時投与することを含んでなる、HCV感染症を治療することを必要とする患者においてそれを治療する方法を提供する。
【0053】
本発明の第十八の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)の化合物の治療有効量を少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合して送達することによって、細胞中でのウイルス複製を阻害するための方法を提供する。
【0054】
本発明の第十九の態様において、式I(ここでR、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R、R、R、及びnは、本明細書において上記に定義される通りである)の化合物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合して含んでなる組成物を提供する。
【0055】
さらなる態様において、上記に定義されるような式Iの化合物の、HCV感染症を治療することへの使用を提供する。
さらなる態様において、上記に定義されるような式Iの化合物と少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤の、HCV感染症を治療することへの使用を提供する。
【0056】
本発明はまた、式Iの化合物の、HCV感染症を治療するための医薬品の製造への使用を提供する。
さらなる態様において、上記に定義されるような式Iの化合物と少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤の、HCV感染症を治療するための医薬品の製造への使用を提供する。
【0057】
本明細書でさらなる制限なしに使用する「アルキル」という用語は、単独で、又は他の基と組み合わせて、1〜10の炭素原子を含有する、非分岐鎖又は分岐鎖、飽和、一価の炭化水素基を意味する。「低級アルキル」という用語は、1〜6の炭素原子を含有する、直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。本明細書で使用する「C1−6アルキル」は、1〜6の炭素より構成されるアルキルを意味する。アルキル基の例には、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、ヘキシルが含まれる低級アルキル基と、オクチルが含まれる。
【0058】
本明細書に記載の定義を付け加えて、「ヘテロアルキルアリール」、「ハロアルキルヘテロアリール」、「アリールアルキルヘテロシクリル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシアルキル」、等のような、化学的に関連した組合せを形成してよい。「アルキル」という用語が、「フェニルアルキル」又は「ヒドロキシアルキル」のように、別の用語に続く接尾辞として使用されるとき、これは、上記に定義されるようなアルキル基が、他の具体的に呼称される基より選択される1又は2の置換基で置換されていることを意味するものである。従って、例えば、「フェニルアルキル」は、1〜2のフェニル置換基を有するアルキル基を意味するので、ベンジル、フェニルエチル、及びビフェニルが含まれる。「アルキルアミノアルキル」は、1又は2のアルキルアミノ置換基を有するアルキル基である。「ヒドロキシアルキル」には、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−(ヒドロキシメチル)、3−ヒドロキシプロピル、等が含まれる。従って、本明細書で使用するように、「ヒドロキシアルキル」という用語は、下記に定義されるヘテロアルキル基の亜集合を明確化するために使用される。−(アル)アルキルという用語は、未置換のアルキル又はアラルキル基のいずれかを意味する。(ヘテロ)アリール又は(ヘテロ)アリールという用語は、アリール又はヘテロアリール基のいずれかを意味する。
【0059】
本明細書で使用する「アルキレン」という用語は、他に示さなければ、1〜10の炭素原子の二価で飽和の直鎖炭化水素基(例、(CH)、又は2〜10の炭素原子の分岐鎖、飽和の二価炭化水素基(例、−CHMe−又は−CHCH(i−Pr)CH−)を意味する。C0−4アルキレンは、1〜4の炭素原子を含んでなる、直鎖又は分岐鎖、飽和の二価炭化水素基を意味するか、又はCの場合、アルキレン基は省略される。メチレンの場合を除き、アルキレン基の開いた原子価は、同じ原子へ付かない。アルキレン基の例には、限定されないが、メチレン、エチレン、プロピレン、2−メチル−プロピレン、1、1−ジメチル−エチレン、ブチレン、2−エチルブチレンが含まれる。
【0060】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシのような−O−アルキル基(ここでアルキルは、上記に定義される通りである)を意味して、それらの異性体も含まれる。本明細書で使用する「低級アルコキシ」は、先に定義したような「低級アルキル」基のあるアルコキシ基を意味する。本明細書で使用する「C1−10アルコキシ」は、−O−アルキル(ここでアルキルは、C1−10である)を意味する。
【0061】
本明細書で使用する「ハロアルキル」という用語は、1、2、3以上の水素原子がハロゲンによって置換されている、上記に定義されるような、非分岐鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味する。例は、1−フルオロメチル、1−クロロメチル、1−ブロモメチル、1−ヨードメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、1−フルオロエチル、1−クロロエチル、1 2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジクロロエチル、3−ブロモプロピル、又は2,2,2−トリフルオロエチルである。本明細書で使用する「フルオロアルキル」という用語は、フッ素がハロゲンである、ハロアルキル部分を意味する。
【0062】
本明細書で使用する「ハロアルコキシ」という用語は、基:−OR(ここでRは、本明細書に定義されるようなハロアルキルである)を意味する。本明細書で使用する「ハロアルキルチオ」という用語は、基:−SR(ここでRは、本明細書に定義されるようなハロアルキルである)を意味する。
【0063】
本明細書で使用する「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
本明細書で使用する「ヒドロキシアルキル」及び「アルコキシアルキル」という用語は、異なる炭素原子上の1〜3の水素原子がそれぞれヒドロキシル又はアルコキシ基によって置き換えられている、本明細書に定義されるようなアルキル基を意味する。C1−3アルコキシ−C1−6アルキル部分は、1〜3の水素原子がC1−3アルコキシによって置き換えられているC1−6アルキル置換基を意味して、このアルコキシの付加点は、酸素原子である。
【0064】
本明細書で使用する「アルコキシカルボニル」及び「アリールオキシカルボニル」という用語は、式:−C(=O)OR(ここでRは、それぞれアルキル又はアリールであり、アルキル及びアリールは、本明細書に定義される通りである)の基を意味する。
【0065】
本明細書で使用する「シアノ」という用語は、三重結合によって窒素へ連結した炭素、即ち、−C≡Nを意味する。本明細書で使用する「ニトロ」という用語は、基:−NOを意味する。本明細書で使用する「カルボキシ」という用語は、基:−COHを意味する。
【0066】
オキソという用語は、は、二重結合した酸素(=O)、即ち、カルボニル基を意味する。
本明細書で使用する「アシル」(又は「アルカノイル」)という用語は、式:−C(=O)R(ここでRは、水素、又は本明細書に定義されるような低級アルキルである)の基を意味する。本明細書で使用する「アルキルカルボニル」という用語は、式:C(=O)R(ここでRは、本明細書に定義されるようなアルキルである)の基を意味する。C1−6アシル又は「アルカノイル」という用語は、1〜6の炭素原子を含有する基:−C(=O)Rを意味する。Cアシル基は、R=Hであるホルミル基であり、Cアシル基は、アルキル鎖が非分岐であるヘキサノイルを意味する。本明細書で使用する「アリールカルボニル」又は「アロイル」という用語は、式:C(=O)R(ここでRは、アリール基である)の基を意味し;本明細書で使用する「ベンゾイル」という用語は、Rがフェニルである、「アリールカルボニル」又は「アロイル」基を意味する。
【0067】
本明細書で使用する「アルキルスルホニル」及び「アリールスルホニル」という用語は、式:−S(=O)R(ここでRは、それぞれ、アルキル又はアリールであり、アルキル及びアリールは、本明細書に定義される通りである)の基を意味する。本明細書で使用するC1−3アルキルスルホニルアミドという用語は、基:RSONH−(ここでRは、本明細書に定義されるようなC1−3アルキル基である)を意味する。C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルという用語は、化合物:S(=O)R(ここでRは、それぞれ、C1−6ハロアルキル、C3−7シクロアルキル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル、及びC1−6アルコキシ−C1−6アルキルである)を意味する。
【0068】
本明細書で使用する「アルキルスルホニルアミノ」及び「アリールスルホニルアミノ」という用語は、式:−NR’S(=O)R(ここでRは、それぞれアルキル又はアリールであり、R’は、水素又はC1−3アルキルであり、アルキル及びアリールは、本明細書に定義される通りである)の基を意味する。
【0069】
本明細書で使用する「スルファモイル」という用語は、基:−S(O)NHを意味する。本明細書で使用する「N−アルキルスルファモイル」及び「N,N−ジアルキルスルファモイル」という用語は、基:−S(O)NR’R”(ここでR’とR”は、水素と低級アルキルであり、R’とR”は、それぞれ独立して、低級アルキルである)を意味する。N−アルキルスルファモイル置換基の例には、限定されないが、メチルアミノスルホニル、イソプロピルアミノスルホニルが含まれる。N,N−ジアルキルスルファモイル置換基の例には、限定されないが、ジメチルアミノスルホニル、イソプロピル−メチルアミノスルホニルが含まれる。
【0070】
本明細書で使用する「カルバモイル」という用語は、基:−CONHを意味する。接頭辞の「N−アルキルカルバモイル」及び「N,N−ジアルキルカルバモイル」は、基:CONHR’又はCONR’R”(ここでR’及びR”基は、独立して、本明細書に定義されるようなアルキルである)をそれぞれ意味する。接頭辞のN−アリールカルバモイルは、基:CONHR’(ここでR’は、本明細書に定義されるようなアリール基である)を意味する。
【0071】
本明細書で使用する「(ヘテロ)アリール」という用語は、芳香族環又は芳香族複素環のいずれかである環を意味する。本明細書で使用する「1,2−ジアリールシクロプロパン」という用語は、請求項1に制限なく含まれるすべての化合物に言及する。
【0072】
「ピリジン」(「ピリジニル」)という用語は、1つの窒素原子がある6員の芳香族複素環を意味する。「ピリミジン」(ピリミジニル)、「ピラジン」(「ピラジニル」)、及び「ピリダジン」(「ピリダジニル」)という用語は、2つの窒素原子が、それぞれ1,3、1,4、及び1,2の関係で配置された6員の非縮合芳香族複素環を意味する。それぞれの基名は、括弧にある。
【0073】
本明細書で使用する、(i)3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、(ii)3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、(iii)6−オキソ−1,6−ジヒドロ−ピリミジン−5−イル、(iv)6−オキソ−1,6−ジヒドロ−[1,2,4]トリアジン−5−イル、(v)2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イル、及び(vi)2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イルという用語は、以下の部分:
【0074】
【化6】

【0075】
を意味する。
Arに関連した、「少なくとも(CHNRによって置換される」という句は、単に、その環が(CHNRによって置換されるが、特許請求の範囲内にある他の追加の任意選択の置換が許容されることを示す。
【0076】
1つの態様において、本発明の式Iによる化合物は、HCVウイルス感染症のある患者を治療するための他の有効な治療成分又は薬剤と組み合わせて使用される。本発明によれば、本発明の化合物と組み合わせて使用される有効な治療成分は、本発明の化合物と組み合わせて使用されるときに治療効果を有するどの薬剤でもよい。例えば、本発明の化合物と組み合わせて使用される活性薬剤は、インターフェロン、リバビリン類似体、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤、HCVポリメラーゼのヌクレオシド阻害剤、HCVポリメラーゼの非ヌクレオシド阻害剤、及びHCVを治療するための他の薬物、又はこれらの混合物であり得る。
【0077】
ヌクレオシドNS5bポリメラーゼ阻害剤の例には、限定されないが、NM−283、バロピシタビン、R1626、PSI−6130(R1656)、R−7128、IDX184及びIDX102(Idenix)、BILB 1941が含まれる。
【0078】
非ヌクレオシドNS5bポリメラーゼ阻害剤の例には、限定されないが、HCV−796(ViroPharma 及びワイス)、MK−0608、MK−3281(メルク)、NM−107、R7128(R4048)、VCH−759(ViroChem)、GSK625433及びGSK625433(グラクソ)、PF−868554(ファイザー)、GS−9190(Gilead)、A−837093及びA848837(アボットラボラトリーズ)、ANA598(Anadys Pharmaceuticals);GL100597(GNLB/NVS)、VBY708(ViroBay)、ベンゾイミダゾール誘導体(H. Hashimoto et al. WO01/47833、H. Hashimoto et al. WO03/000254、P. L. Beaulieu et al. WO03/020240A2;P. L. Beaulieu et al. US6,448,281B1; P. L. Beaulieu et al. WO03/007945A1)、ベンゾ−1,2,4−チアジン誘導体(D. Dhanak et al. WO01/85172A1、2001年5月10日出願;D. Chai et al., WO2002098424、2002年6月7日出願、D. Dhanak et al. WO03/037262A2、2002年10月28日出願;K. J. Duffy et al. WO03/099801A1、2003年5月23日出願、M. G. Darcy et al. WO2003059356、2002年10月28日出願; D.Chai et al. WO2004052312,2004年6月24日出願、D.Chai et al. WO2004052313、2003年12月13日出願;D. M. Fitch et al. WO2004058150、2003年12月11日出願;D. K. Hutchinson et al. WO2005019191、2004年8月19日出願; J. K. Pratt et al. WO2004/041818A1、2003年10月31日出願)、1,1−ジオキソ−4H−ベンゾ[1,4]チアジン−3−イル誘導体(J. F. Blake et al. 米国特許公開公報US20060252785)、及び1,1−ジオキソ−ベンゾ[d]イソチアゾール−3−イル化合物(J. F. Blake et al. 米国特許公開公報2006040927)が含まれる。
【0079】
HCV NS3プロテアーゼの阻害剤も、HCVの治療に潜在的に有用であると確かめられてきた。臨床試験中のプロテアーゼ阻害剤には、VX−950(テラプレビル、Vertex)、SCH503034(ブロセプレビル、シェーリング)、TMC435350(Tibotec/Medivir)及びITMN−191(Intermune)が含まれる。より早い開発段階にある他のプロテアーゼ阻害剤には、MK7009(メルク)、BMS−605339及びBMS−790052(ブリストルマイヤーズ・スクイブ)、VBY−376(Virobay)、IDXSCA/IDXSCB(Idenix)、BI12202及びBILN−2065(ベーリンガー・インゲルハイム)、VX−500(Vertex)、PHX1766(Phenomix)が含まれる。
【0080】
インターフェロンの例には、限定されないが、ペグ化(pegylated)rIFN−α2b、ペグ化rIFN−α2a、rIFN−α2b、rIFN−α2a、コンセンサスIFNα(インファーゲン)、フェロン、リアフェロン、インターマックスα、r−IFNβ、インファーゲン及びアクチミューン、IFN−ω及びDUROS、アルブフェロン、ロクテロン、Albuferon、Rebif、経口インターフェロンα、IFNα−2b XL、AVI−005、PEG−インファーゲン、及びペグ化IFN−βが含まれる。
【0081】
検討されている抗HCV療法の他の標的には、NS5bへのRNA結合を阻害するシクロフィリン阻害剤、ニタゾキサニド、Celgosivir(Migenix)、α−グルコシダーゼ−1の阻害剤、カスパーゼ阻害剤、Toll様受容体アゴニスト、及びZadaxin(SciClone)のような免疫刺激薬が含まれる。
【0082】
リバビリン類似体とリバビリンプロドラッグのビラミジン(タリバビリン)は、HCVを制御するためにインターフェロンとともに投与されている。
通常使用される略語には、アセチル(Ac)、水性(aq.)、気圧(Atm)、2、2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ピロ炭酸ジtert−ブチル又はboc無水物(BOCO)、ベンジル(Bn)、ブチル(Bu)、ケミカル・アブストラクト登録番号(CASRN)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ又はZ)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,2−ジクロロエタン(DCE)、ジクロロメタン(DCM)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL又はDIBAL−H)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、エチル(Et)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、2−エトキシ−2H−キノリン−1−カルボン酸エチルエステル(EEDQ)、ジエチルエーテル(EtO)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、酢酸(HOAc)、1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソプロパノール(IPA)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO−(メシル又はMs)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、m−クロロ過安息香酸(MCPBA)、質量スペクトル(ms)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、N−メチルモルホリン(NMM)、N−メチルピロリドン(NMP)、フェニル(Ph)、プロピル(Pr)、イソプロピル(i−Pr)、重量ポンド毎平方インチ(psi)、ピリジン(pyr)、室温(rt又はRT)、sat'd.(飽和)、tert−ブチルジメチルシリル又はt−BuMeSi(TBDMS)、トリエチルアミン(TEA又はEtN)、トリフレート又はCFSO−(Tf)、トリフルオロ酢酸(TFA)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロホウ酸塩(TBTU)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、トリメチルシリル又はMeSi(TMS)、p−トルエンスルホン酸一水和物(TsOH又はpTsOH)、4−Me−CSO−又はトシル(Ts)、N−ウレタン−N−カルボキシ無水物(UNCA)が含まれる。接頭辞のノルマル(n−)、イソ(i−)、二級(sec−)、三級(tert−)、及びネオ(neo−)が含まれる慣用の命名法は、アルキル部分とともに使用されるときにその通例の意味を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney,「Nomenclature in Organic Chemistry(有機化学の命名法)」IUPAC1979,ペルガモン・プレス、オックスフォード)。
【0083】
本発明によって、そして本発明の範囲内に含まれる代表的な化合物の例を表Iに提供する。以下に続くこれらの実施例及び製法は、当業者が本発明をより明確に理解して実践することを可能にするために提供する。それらは、本発明の範囲を制限するものではなく、単にその例示で代表的なものとみなすべきである。本発明の化合物は、以下に示して記載する例示の合成反応スキームにおいて図示される多様な方法によって作製することができる。上記の化合物を製造するときに使用する出発材料及び試薬は、一般に、アルドリッチ・ケミカル社のような市販供給業者から入手可能であるか、又は「Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis(フィーザーの有機合成試薬)」ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク、1-21 巻;R. C. LaRock「Comprehensive Organic Transformations(有機変換総説)」、第2版、ウィリー−VCH、ニューヨーク(1999);「Comprehensive Organic Synthesis(有機合成総説)」B. Trost and I. Fleming(監修)、1-9 巻、ペルガモン、オックスフォード(1991);「Comprehensive Heterocyclic Chemistry(複素環式化学総説)」 A. R. Katritzky and C. W. Rees(監修)、ペルガモン、オックスフォード(1984)、1-9 巻;「Comprehensive Heterocyclic Chemistry II(複素環式化学総説II)」A. R. Katritzky and C. W. Rees(監修)、ペルガモン、オックスフォード(1996)、1-11 巻;及び、「Organic Reactions(有機反応)」ウィリー・アンド・サンズ:ニューヨーク(1991)、1-40 巻のような参考文献に示される手順に従って、当業者に知られた方法によって製造する。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成し得るいくつかの方法を単に例示するのであって、当業者には、本出願に含まれる開示を参考にして、これらの合成反応スキームへの様々な修飾が示唆されて、それを行うことができよう。
【0084】
合成反応スキームの出発材料及び中間体は、所望されるならば、限定されないが、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー、等が含まれる慣用の技術を使用して、単離して精製することができる。このような材料は、物理定数及びスペクトルデータが含まれる、慣用の手段を使用して特性決定することができる。
【0085】
反対に特定されなければ、本明細書に記載の反応は、好ましくは、大気圧での不活性な雰囲気下に、約−78℃〜約150℃、より好ましくは、約0℃〜約125℃の反応温度範囲で、そして最も好ましくて簡便には、ほぼ室温(又は周囲温度)、例えば、約20℃で行う。
【0086】
以下のスキーム中のいくつかの化合物は、一般化した置換基のあるマーカッシュ構造として図示されるが、当業者は、特許請求項に定義されるようなR基の特性が付帯の特許請求項に定義されるように変化して、本発明において考慮される様々な化合物を提供し得ることをすぐに理解されよう。さらに、この反応条件は例示であって、過当な実験なしに代わりの条件を確定することができる。以下の実施例における反応順序は、特許請求項に示すような本発明の範囲を制限するものではない。
【0087】
一般に、本出願において使用する命名法は、AUTONOMTMv.4.0(IUPAC系統命名作成用のバイルシュタイン研究所コンピュータ化システム)に基づく。図示される構造とその構造へ付与される名称の間に矛盾があれば、図示した構造がより重視されるべきである。加えるに、ある構造又はある構造の一部の立体化学が、例えば、太線又は破線で示されなければ、その構造又はその構造の部分には、そのすべての立体異性体が含まれると解釈されるべきである。
【0088】
本発明によって含まれて、本発明の範囲内にある代表的な化合物の例を以下の表に提示する。以下に続くこれらの実施例及び製法は、当業者が本発明をより明確に理解して実践することを可能にするために提供する。それらは、本発明の範囲を制限するものではなく、単にその例示で代表的なものとみなすべきである。
【0089】
表I
【0090】
【表1】

【0091】
本発明によって含まれる1,2−ジアリールシクロプロパン(例、A−8)は、(A−2)より製造することができる[(A−2)は、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(A−1a)より、5位の臭素元素での臭素化と後続のフェノールの塩基性条件下でのアルキル化によって(A−2)を得て、容易に入手可能である]。フェノールのアルキル化は、典型的には、DMF、THF、NMP、MeCN、アセトン、DCM、及びDCEのような溶媒において、0℃と100℃の間の温度で行う。典型的に使用される塩基は、KCO、水素化ナトリウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、及びカリウムヘキサメチルジシラジドである。ハロゲン化アルキル、メシル酸アルキル、及びアルキルトリフレートのようなアルキル化剤によって、(A−2)を得る。
【0092】
【化7】

【0093】
不顕性ピリドン(又は本発明の範囲内の他のヘテロアリール基)とアリール環のカップリングを Suzuki(鈴木)カップリングによって達成する。スキームAは、2−メトキシ−ピリジン−3−イルボロン酸(A−3、工程3)のカップリングを図示する。後続のO−Me結合の切断(工程6)によって、所望のピリドンを得る。
【0094】
Suzuki 反応は、アリール又はビニルのハロゲン化物又はトリフレートとボロン酸のパラジウム触媒化カップリングである。典型的な触媒には、Pd(PPh、PdCl(dppf)、Pd(OAc)、及びPdCl(PPhが含まれる。PdCl(dppf)を用いれば、一級アルキルボラン化合物をアリール又はビニルのハロゲン化物又はトリフレートへβ−脱離を伴わずにカップリングすることができる。この反応は、トルエン、THF、ジオキサン、DCE、DMF、DMSO、及びMeCNが含まれる多様な有機溶媒、水性溶媒において、二相性の条件の下で行うことができる。反応は、典型的には、ほぼ室温〜約150℃で実施する。添加剤(例、CsF、KF、TlOH、NaOEt、及びKOH)は、このカップリングを頻繁に加速させる。Suzuki 反応には、特定のパラジウム触媒、リガンド、添加剤、溶媒、温度といった数多くの構成要素があるが、数多くのプロトコールが確定されてきた。きわめて活性な触媒について記載されている(例えば、J. P. Wolfe et al., J. Am. Chem. Soc. 1999 121(41): 9550-9561、及び A. F. Littke et al., J. Am. Chem. Soc. 2000 122(17): 4020-4028 を参照のこと)。このカップリングは、2−アルコキシ−ピリジニル−3−ボロン酸だけでなく、B−(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3−ピリジニル)−ボロン酸、B−(1,2,3,4−テトラヒドロ−2,4−ジオキソ−5−ピリミジニル)−ボロン酸、及びB−(2,3−ジヒドロ−3−オキソ−4−ピリダジニル)−ボロン酸でも行うことができる。当業者は、過当な実験なしに、満足すべきプロトコールを確定することができよう。
【0095】
ベンジル−トリフェニル−λ−ホスファン又はその置換類似体でのウィッティヒ同族体化を利用して、(A−4)よりスチルベン中間体(例、A−5)を製造する(工程4)。ウィッティヒ反応とは、トリフェニルホスホニウムイリドとアルデヒド又はケトンの反応であり、アルケンと酸化トリフェニルホスフィンを得る(A. Maercker, Org. React. 1965, 14, 270-490;A. W. Carruthers「Some Modern Methods of Organic Synthesis(最新の有機合成法)」ケンブリッジ大学出版局、ケンブリッジ、UK(1971)81-90 頁)。ウィッティヒ反応は、アルデヒド又はケトンを単一置換ホスフィンイリドへ縮合するために最もよく使用される。ウィッティヒ試薬は、通常、ホスホニウム塩[これは、PhPのハロゲン化アルキルでのアルキル化によって製造される]より製造される。ウィッティヒ試薬(イリド)を生成するには、ホスホニウム塩をEtO又はTHFのような溶媒に懸濁させて、フェニルリチウム又はn−ブチルリチウムのような強塩基を加える。単純なイリドでは、生成物は、通常、主にZ−異性体であるが、より少量のE−異性体もしばしば生成される。これは、ケトンを使用するときに特にそうである。この反応をDMF中でLiI又はNaIの存在下に実施すれば、生成物は、ほとんど独占的にZ−異性体である。E−異性体が所望の生成物であれば、シュローサー(Schlosser)改良法を使用してよい。
【0096】
あるいは、ホーナー・ワズワース・エモンズ(Horner-Wadsworth-Emmons)反応(B. E. Maryanoff and A. B. Reitz, Chem Rev. 1989 89:863-927)は、E−アルケンを優勢的に生成する。ホーナー・ワズワース・エモンズ反応(HWE反応)は、安定化したホスホン酸カルバニオンのアルデヒド(又はケトン)との縮合である。ウィッティヒ反応で使用されるホスホニウムイリドとは対照的に、ホスホン酸−安定化カルバニオンは、より求核性でより塩基性である。
【0097】
Arが置換されている、本発明により含まれる化合物は、すぐに入手可能なハロゲン化ベンジルより容易に製造され得る、ベンジルイリド又はベンジルホスホン酸ジエチルより製造することができる。特許請求の範囲内に含まれるスルホンアミドは、(4−ニトロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチルエステルと(A−4)のHWE縮合によって製造される。ニトロ置換基の後続の還元によってアミンを得て、これを塩化メシルと、又は塩化シクロアルキルスルホニル又は塩化ハロアルキルスルホニルのような他のすぐに利用可能なスルホンアミドと協奏反応させてスルホンアミドにすることができる。ニトロ基を対応のアミンへ変換するのに適した還元剤には、反応不活性溶媒、例えば、MeOH、EtOH、ジグリム、ベンゼン、トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン、DCM、DCE、THF、ジオキサン、又はこれらの混合物中の例えば、LiAlH、LiBH、Fe、Sn、又はZnが含まれる。所望されるならば、還元試薬が、Fe、Sn、又はZnであるとき、この反応は、酸性条件の下で水の存在下に行う。生じるアミンのスルホニル化又はアシル化は、所望されるならば、このアミンを活性化カルボン酸又はハロゲン化スルホニルで処理することによって行う。
【0098】
シクロプロピル環は、(A−5)のジアゾメタンでの酢酸パラジウム触媒化シクロプロパン化(工程5)によって導入する(R Paulssen et al., Tetrahedron Lett. 1972 1465; M. Suda et al., Synthesis 1981 714)。スキームAに図示する工程の順序は決定的ではなく、当業者は、それらを変更して、製造される個々の化合物や利用可能な合成中間体へ適用し得ることを理解されよう。
【0099】
【化8】

【0100】
2位で置換された本発明の化合物の製造は、(B−1)より始まる類似の順序によって製造することができる。Rがヒドロキシル基であるとき、この酸性フェノールは、簡便には、ベンジルエーテルとして保護化する。不顕性ピリドンのベンジルオキシ−ピリジンとしての取込みにより、2つのベンジルエーテルの同時除去とオレフィンの還元が可能になる。あるいは、不顕性ピリドンのメトキシ−ピリジンとしての取込みにより、段階的な脱ベンジル化及び脱メチル化が可能になる(例えば、実施例7を参照のこと)。当業者は、所望されるならば、他の官能基を使用し得ることを理解されよう。Rがアルコキシ又は置換アルコキシである、本発明の範囲内の他の化合物は、このフェノールを工程2に先立って好適なアルキル化剤でアルキル化することによって製造することができる。(B−3)の最終生成物への変換は、スキームAに図示されるように行う。
【0101】
がシアノである本発明の化合物は、4−tert−ブチル−3,5−ジブロモ−アニリン(CASRN 10546−67−5)より、サンドマイヤー(Sandmeyer)反応によってシアノ置換基を導入して製造することができる。(A−3)(又は本発明の範囲内の別のヘテロアリール化合物)と適正に置換された4,4,6−トリメチル−2−((E)−スチリル)−[1,3,2]ジオキサボリナン(A−9)(A. P. Lightfoot et al., Tetrahedron Lett. 200344: 7645; Synlett. 2005 529; N. Praveen Ganesh et al., J. Org Chem. 2007 72(12) 4510)との連続 Suzuki カップリングによってスチルベン誘導体を得て(スキームA−工程7)、これをスキームA中の手順によって、本発明の化合物へ導くことができる。
【0102】
【化9】

【0103】
当業者は、ボロン酸(又はボロン酸エステル)を担う中間体と脱離基が相互交換し得ることを理解されよう。従って、例えば、(A−2)をボロン酸(エステル)(C−1)へ変換して、(C−2)(置換2−アルコキシ−ピリジン(C−2)、又はXが、ハロ、トリフルオロスルホニルオキシ、又はトルエンスルホニルオキシである、3−ハロ−2−アルコキシピラジン)との Suzuki クロスカップリングへ処して、(C−3)を得る。最適の経路は、必須な出発材料の入手可能性によって決定されることが多い。
【0104】
【化10】

【0105】
本発明における1,2−ジアリールシクロプロパンへの代替経路は、スキームDに図示されるように、1−[ジブチル−((E)−2−トリブチルスタンナニル−ビニル)−スタンナニル]−ブタン(D−7)との Stille(スティル)パラジウム触媒化クロスカップリングを利用する。本明細書に記載の条件下での(D−1)とピリジニル−ボロン酸のカップリングにより、(D−2a)を得る(例えば、RとRが水素である場合は、実施例35を参照のこと)。(D−7)との連続 Stille 型カップリング(工程2)により、初めに(D−3)を得て、これを引き続き2−ヨード−5−ニトロ−ピリジンのような置換ハロ−(ヘテロ)アリール化合物とカップリングさせて(工程4)1,2−ジアリール−エテン(D−4)を得て、これを対応するシクロプロパンへ変換することができる。最後から2番目の標的がスルホンアミドであるとき、標準の方法論を使用して、ニトロ基をアミンへ還元してスルホニル化する。あるいは、実施例3に記載のように、このアルデヒドを対応するアセチレン(D−2,R=C≡CH)へ変換して、ヒドロスタンニル化することができる。
【0106】
他のヘテロアリール環は、6−ブロモ−ピリダジン−3−イルアミン(CASRN 88497−27−2)、2−ブロモ−5−ニトロ−ピラジン(CASRN 117103−53−4)、及び2−アミノ−5−ヨード−ピリミジン(CASRN 1445−39−2)のような中間体とのカップリングによって導入することができる。
【0107】
Stille クロスカップリング反応は、アリール又はビニルスタンナンのハロゲン化アリール又はビニル、又は−スルホニルオキシ化合物とのパラジウム触媒化カップリングである(J. K. Stille Angew. Chem. Int. Ed. 1986 25: 508-524; A. F. Littke and G. C. Fu, Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38: 2411-2413)。Pd(PPh、Pd(OAc)、及びPd(dba)が含まれる、市販のPd試薬を使用することができる。ホスフィンリガンドは、パラジウム触媒の構成成分でなければ、有用な速度促進剤である。電子供与が相対的に乏しいリガンドには、最大の速度促進をもたらす傾向がある(V. Farina and B. Krishnan, J. Am. Chem. Soc. 1991 113: 9585-9595)。速度促進をもたらすために、CuIが含まれる添加剤が取り込まれた(V. Farina et al. J. Org. Chem. 1994 59:5905-5911)。この反応は、典型的には、非プロトン溶媒において上昇温度で行う。
【0108】
抗ウイルス活性
HCV活性の阻害剤としての本発明の化合物の活性は、in vivo 及び in vitro アッセイが含まれる、当業者に知られた好適な方法のいずれによっても測定してよい。例えば、式Iの化合物のHCV NS5B阻害活性は、Behrens et al., EMBO J. 1996 15: 12-22, Lohmann et al., Virology 1998 249: 108-118 及び Ranjith-Kumar et al., J. Virology 2001 75: 8615-8623 に記載の標準アッセイ手順を使用して定量することができる。他に述べなければ、本発明の化合物は、このような標準アッセイにおいて、in vitro HCV NS5B阻害活性を実証した。本発明の化合物のために使用するHCVポリメラーゼアッセイ条件については、実施例3に記載する。非構造タンパク質がHuh7細胞においてサブゲノムのウイルスRNAを安定的に複製する、HCV用の細胞ベースのレプリコン系が開発された(V. Lohmann et al., Science 1999 285:110 and K. J. Blight et al., Science 2000 290: 1972)。本発明の化合物のために使用する細胞ベースのレプリコンアッセイ条件については、実施例4に記載する。ウイルスの非構造タンパク質と宿主タンパク質からなる、精製された機能性HCVレプリカーセがないので、フラビウイルス科のRNA合成についての我々の理解は、活性な組換えRNA依存性RNAポリメラーゼを使用する研究成果と、HCVレプリコン系におけるこれらの研究成果の検証に由来する。in vitro の生化学アッセイにおける、組換え精製HCVポリメラーゼの化合物での阻害は、他のウイルスポリペプチドと細胞ポリペプチドが適正な化学量論比で会合したレプリカーゼ複合体の内部にポリメラーゼが存在する、このレプリコン系を使用して検証することができる。HCV複製の細胞ベースの阻害の実証は、in vitro の生化学アッセイにおけるHCV NS5B阻害活性の実証よりも、in vivo 機能をより予測させる可能性がある。
【0109】
剤形と投与
本発明の化合物は、多種多様な経口投与剤形及び担体において製剤化することができる。経口投与は、錠剤、被覆錠剤、糖衣錠剤、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤、又は懸濁液剤の形態であり得る。本発明の化合物は、他の投与経路の中でも、連続(静脈内点滴)、局所、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、経皮(これには、浸透増強剤を含めてよい)、頬内、経鼻、吸入、及び坐剤投与が含まれる、他の投与経路によって投与されるときに有効である。一般的には、好ましい投与手段は、苦痛の度合いと有効成分への患者の応答に従って調整することができる、簡便な毎日の投薬レジメンを使用する経口投与である。
【0110】
本発明の単数又は複数の化合物は、その医薬品として使用可能な塩と同様に、1以上の慣用の賦形剤、担体、又は希釈剤と一緒に、医薬組成物及び単位剤形の形態の中へ入れることができる。医薬組成物と単位剤形は、慣用の比率での慣用の成分より、追加の活性化合物又は成分の有り無しで構成されてよくて、単位剤形は、企図される1日投与量範囲に釣り合った有効成分を利用するのに適したどの有効量も含有してよい。医薬組成物は、錠剤又は充填カプセル剤、半固形剤、散剤、持続放出製剤のような固形剤、又は溶液剤、懸濁液剤、乳剤、エリキシル剤、又は経口使用の充填カプセル剤のような液剤として、又は直腸又は膣内投与用の坐剤の形態で、又は非経口使用のための注射可能な無菌溶液剤の形態で利用してよい。典型的な調製物は、約5〜約95(w/w)%の単数又は複数の活性化合物を含有するものである。「調製物」又は「剤形」という用語には、活性化合物の固体製剤と液体製剤がともに含まれると企図されて、当業者は、標的臓器又は組織に、そして所望される用量及び薬物動態変数に依存して、有効成分が異なる調製物において存在し得ることを理解されよう。
【0111】
本明細書で使用する「賦形剤」という用語は、医薬組成物を調製するのに有用であり、概して安全、無害で、生物学的にも他の点でも望ましくなくはない化合物を意味して、ヒトの医薬使用だけでなくて、獣医学での使用にも受け容れられる賦形剤が含まれる。本発明の化合物は、単独で投与し得るが、一般的には、企図される投与経路と標準の医薬実践に関連して選択される、1以上の好適な医薬賦形剤、希釈剤、又は担体と混合して投与される。
【0112】
「医薬的に許容される」は、概して安全、無害で、生物学的にも他の点でも望ましくなくはない医薬組成物を調製するときに有用であることを意味して、ヒトの医薬使用に受け容れられることが含まれる。
【0113】
固体形態の調製物には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、及び分散可能な顆粒剤が含まれる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又は被包化材料としても作用し得る、1以上の物質であり得る。散剤において、担体は、一般に、細分化された活性成分との混合物である、細分化された固形物である。錠剤では、一般的に、必要な結合能力を有する担体と活性成分を好適な比率で混合して、所望される形状及び大きさに圧縮する。好適な担体には、限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココア脂、等が含まれる。固形調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定化剤、緩衝剤、人工及び合成甘味料、分散剤、濃化剤、安定化剤、等を含有してよい。
【0114】
液体製剤も経口投与に適していて、液体製剤には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水溶液剤、水性懸濁液剤が含まれる。これらには、使用の直前に液体形態の調製物へ変換されるように企図された固形調製物が含まれる。乳剤は、溶液剤、例えば、水性プロピレングリコール溶液剤において調製し得るか、又はレシチン、ソルビタンモノオレエート、又はアカシアのような乳化剤を含有してよい。水溶液剤は、活性成分を水に溶かして、好適な着色剤、香味剤、安定化剤、及び濃化剤を加えることによって調製することができる。水性懸濁液剤は、細分化した活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他のよく知られた懸濁剤のような粘稠な材料とともに水に分散させることによって調製することができる。
【0115】
本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射又は連続注入による)用に製剤化してよく、アンプル剤、プレ充填シリンジ剤、少量注入剤での単位用量形態において、又は保存剤を加えた多用量容器において提示してよい。この組成物は、油性又は水性の媒体中の懸濁液剤、溶液剤、又は乳剤、例えば、水性ポリエチレングリコール中の溶液剤のような形態を取り得る。油性又は非水性の担体、希釈剤、溶媒、又は媒体(vehicle)の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例、オリーブ油)、及び注射可能な有機エステル(例、オレイン酸エチル)が含まれて、保存剤、湿潤剤、乳化剤又は懸濁剤、安定化剤,及び/又は分散剤のような製剤用の薬剤を含有してよい。あるいは、有効成分は、無菌固形物の防腐的な単離によって入手されるか、又は好適な媒体(例、無菌の発熱性物質除去水)で使用前に構成するための溶液からの凍結乾燥による粉末形態であり得る。
【0116】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤、又はローション剤として、又は経皮パッチ剤として表皮への局所投与用に製剤化してよい。軟膏剤及びクリーム剤は、例えば、水性又は油性の基剤とともに、好適な濃化剤及び/又はゲル化剤を加えて製剤化してよい。ローション剤は、水性又は油性の基剤とともに製剤化してよく、一般的には、1以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、濃化剤、又は着色剤も含有する。口腔中での局所投与に適した製剤には、香味基剤(通常は、ショ糖及びアカシア又はトラガカント)に活性薬剤を含んでなる口内錠、ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシアのような不活性基剤に有効成分を含んでなる香錠、及び好適な液体担体に有効成分を含んでなる含嗽剤が含まれる。
【0117】
本発明の化合物は、坐剤としての投与用に製剤化してよい。脂肪酸グリセリド又はココア脂の混合物のような低融点ワックスを最初に融かして、活性成分を、例えば、撹拌によって均質に分散させる。次いで、この融けた均質混合物を簡便な大きさの型の中へ注ぎ、そのまま冷やして、固まらせる。
【0118】
本発明の化合物は、有効成分に加えて、当該技術分野で適正であると知られているような担体を含有する、ペッサリー剤、タンポン剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、又はスプレー剤として、膣内投与用に製剤化してよい。本発明の化合物は、経鼻投与用に製剤化してよい。この溶液剤又は懸濁液剤は、慣用の手段によって、例えば、点滴器、ピペット、又はスプレーで、鼻腔へ直接適用される。この製剤は、単回用量又は多用量の形態で提供してよい。後者の点眼器又はピペットの場合、これは、適正な所定量の溶液剤又は懸濁液剤を患者が投与することによって達成され得る。スプレーの場合、これは、例えば、目盛の付いた微粒化スプレーポンプの手段によって達成され得る。
【0119】
本発明の化合物は、特に、気道への鼻腔内投与が含まれる、エアゾール投与用に製剤化してよい。一般に、本化合物は、例えば、5ミクロン以下のオーダーの小さな粒径を有するものである。このような粒径は、当該技術分野で知られた手段によって、例えば、微粒子化によって得ることができる。有効成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、又はジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素又は他の好適なガスのような好適な推進剤付きの加圧パックにおいて提供される。エアゾール剤は、簡便には、レシチンのような界面活性剤も含有し得る。薬物の用量は、目盛付きの栓によって制御され得る。あるいは、有効成分は、乾燥粉末、例えば、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなデンプン誘導体、及びポリビニルピロリドン(PVP)のような好適な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供してよい。この粉末担体は、鼻腔中でゲルを生成する。粉末組成物は、例えば、そこからその粉末が吸入器の手段によって投与され得る、例えばゼラチンのカプセル又はカートリッジ、又はブリスターパック中の単位用量形態で提示してよい。
【0120】
所望される場合、製剤は、有効成分の持続又は制御放出投与に適用される腸溶コーティング剤とともに調製することができる。例えば、本発明の化合物は、経皮又は皮下の薬物送達デバイスにおいて製剤化することができる。これらの送達系は、化合物の持続放出が必要であるとき、そして治療レジメンでの患者コンプライアンスがきわめて重要であるときに有利である。経皮送達系では、化合物を皮膚接着性の固体支持体へ付けることが多い。関心対象の化合物はまた、浸透エンハンサー、例えばアゾン(1−ドデシルアザ−シクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。持続放出送達系を、手術又は注射によって皮下層の中へ皮下的に挿入する。この皮下インプラントは、脂溶性の膜(例えば、シリコーンゴム)又は生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸)の中に化合物を被包化する。
【0121】
好適な製剤については、医薬担体、希釈剤、及び賦形剤とともに、「Remington: The Scienceand Practice of Pharmacy(レミントン:製剤の科学及び実践)」E. W. Martin 監修、マック・パブリッシング・カンパニー(1995)、第19版、ペンシルヴェニア州イーストンに記載されている。熟練した製剤科学者は、本明細書の教示内の製剤を変更して、本発明の組成物を不安定にすることも、その治療活性を損なうこともなく、特別な投与経路のために数多くの製剤を提供することができよう。
【0122】
本発明の化合物を例えば水又は他の媒体により溶けるように修飾することは、当業者によく知られたわずかな修飾(塩製剤化、エステル化、等)によって容易に達成することができる。特別な化合物の投与経路や投与レジメンを変更して、本発明の化合物の薬物動態を患者において最大限に有益な効果のために管理することも、当該技術分野の通常の技量の範囲内にある。
【0123】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、個体の疾患の症状を抑えるのに必要とされる量を意味する。この用量は、それぞれの特別な症例における個々の要件に応じて調整されるものである。その投与量は、治療すべき疾患の重症度、患者の年齢と全般的な健康状態、患者が治療されている他の医薬品、投与の経路及び形態、関与する医療従事者の選好及び経験といった数多くの要因に依存して、広い範囲内で変動する可能性がある。経口投与では、単独療法において、及び/又は組合せ療法において、1日につき約0.01mg/kg(体重)と約1000mg/kg(体重)の間の1日投与量が適正であるべきである。好ましい1日投与量は、1日につき約0.1mg/kg(体重)と約500mg/kg(体重)の間、より好ましくは、0.1mg/kg(体重)と約100mg/kg(体重)の間、そして最も好ましくは、1.0mg/kg(体重)と約10mg/kg(体重)の間である。従って、70kgのヒトへの投与では、投与量範囲は、1日につき約7mg〜0.7gであろう。1日投与量は、単回投与量として投与しても、分割投与量において、典型的には1日につき1回と5回の間の投与量で投与してもよい。一般に、治療は、化合物の最適用量未満である、より少ない投与量で開始される。その後、投与量は、個々の患者への最適効果に達するまで、少量ずつ増加される。本明細書に記載の疾患を治療する当業者は、過当な実験なしに、そして個人の知識、経験と本出願の開示を信頼して、所与の疾患及び患者への本発明の化合物の治療有効量を確定することができよう。
【0124】
本発明の態様において、活性化合物又は塩は、リバビリン、ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、別の非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、又はHCVプロテアーゼ阻害剤のような別の抗ウイルス剤と組み合わせて、投与することができる。活性化合物又はその誘導体又は塩を別の抗ウイルス剤と組み合わせて投与するとき、その活性は、親化合物に優って増加する場合がある。治療法が組合せ療法であるとき、そのような投与は、ヌクレオシド誘導体の投与に関して、同時又は連続であり得る。従って、本明細書で使用する「同時投与」には、薬剤の同時の投与又は異なる時間での投与が含まれる。2以上の薬剤の同時の投与は、2以上の有効成分を含有する単一製剤によって、又は単一の活性薬剤を有する2以上の剤形の実質的に同時の投与によって達成することができる。
【0125】
本明細書での治療への言及は、既存の状態の治療だけでなく、予防へも拡張されると理解されよう。さらに、本明細書で使用する、HCV感染症の「治療」という用語には、HCV感染症に伴うか又はそれにより媒介される疾患又は状態、又はその臨床症状の治療又は予防も含まれる。
【0126】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、個体の疾患の症状を抑えるのに必要とされる量を意味する。この用量は、それぞれの特別な症例における個々の要件に応じて調整されるものである。その投与量は、治療すべき疾患の重症度、患者の年齢と全般的な健康状態、患者が治療されている他の医薬品、投与の経路及び形態、関与する医療従事者の選好及び経験といった数多くの要因に依存して、広い範囲内で変動する可能性がある。経口投与では、単独療法において、及び/又は組合せ療法において、1日につき約0.01mg/kg(体重)と約1000mg/kg(体重)の間の1日投与量が適正であるべきである。好ましい1日投与量は、1日につき約0.1mg/kg(体重)と約500mg/kg(体重)の間、より好ましくは、0.1mg/kg(体重)と約100mg/kg(体重)の間、そして最も好ましくは、1.0mg/kg(体重)と約10mg/kg(体重)の間である。従って、70kgのヒトへの投与では、投与量範囲は、1日につき約7mg〜0.7gであろう。1日投与量は、単回投与量として投与しても、分割投与量において、典型的には1日につき1回と5回の間の投与量で投与してもよい。一般に、治療は、化合物の最適用量未満である、より少ない投与量で開始される。その後、投与量は、個々の患者への最適効果に達するまで、少量ずつ増加される。本明細書に記載の疾患を治療する当業者は、過当な実験なしに、そして個人の知識、経験と本出願の開示を信頼して、所与の疾患及び患者への本発明の化合物の治療有効量を確定することができよう。
【0127】
本発明の化合物と、任意選択的に1以上の追加の抗ウイルス剤の治療有効量は、ウイルス負荷を低下させるか又は治療への持続的なウイルス応答を達成するのに有効な量である。持続応答に有用な指標には、ウイルス負荷に加えて、限定されないが、肝線維症、血清トランスアミナーゼレベルの上昇、及び肝臓での壊死性炎症性の活性が含まれる。マーカーの1つの一般例(これは例示であって、限定するものではない)は、標準的な臨床アッセイによって測定される、血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)である。本発明のいくつかの態様において、有効な治療ドメインは、ALTレベルを約45IU/mL(血清)未満へ低下させるものである。
【0128】
本発明の化合物を例えば水又は他の媒体により溶けるように修飾することは、当業者によく知られたわずかな修飾(塩製剤化、エステル化、等)によって容易に達成することができる。特別な化合物の投与経路や投与レジメンを変更して、本発明の化合物の薬物動態を患者において最大限に有益な効果のために管理することも、当該技術分野の通常の技量の範囲内にある。
【0129】
以下の実施例は、本発明の範囲内の化合物の製造と生物学的評価を例示する。以下に続くこれらの実施例及び製法を提供するのは、当業者が本発明をより明瞭に理解して実践することを可能にするためである。それらは、本発明の範囲を限定するものでなく、単にそれを例示して代表するものであるとみなすべきである。
【実施例】
【0130】
実施例1
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(I−1)
【0131】
【化11】

【0132】
工程1−0℃へ冷やしたTHF(5mL)中のNaH(0.38g,9.46ミリモル)及び15−クラウン−5(0.17g,0.79ミリモル)のスラリーへ(4−ニトロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチル(2.58g,9.46ミリモル)及びTHF(8mL)の溶液をゆっくり加えた。生じる溶液を0℃で、発泡が止むまで撹拌した。0℃に維持した生じる溶液へ(20)(1.90g,7.88ミリモル)及びTHF(20mL)の溶液をゆっくり加えた。この反応物を0℃で20分間撹拌してから、HOで冷ました。この溶液をEtOで抽出して、有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物を10% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、2.64gの(22)を黄色の固形物として得た。
【0133】
エーテル性ジアゾメタン溶液−0℃へ冷やしたKOH(4g)のHO(10mL)及びEtO(40mL)溶液へN−ニトロソ−N−メチル尿素(4g)を少量ずつ加えた。生じる溶液を0℃で1時間撹拌してから−78℃へ冷やして、ジアゾメタンのエーテル性溶液からなる上層を使用した。
【0134】
工程2−0℃へ冷やした(22)(1.0g,2.77ミリモル)、Pd(OAc)(0.10g)、及びDCM(10mL)の溶液へジアゾメタン(10当量)のエーテル性溶液を滴下した。発泡が止んだ後で、この反応物をHOAc(10当量)で冷まして、生じる溶液を飽和NaHCO水溶液で洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物を10% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.986gの(24)を黄色のオイルとして得た。
【0135】
工程3−マイクロ波バイアルに(24)(0.16g,0.427ミリモル)、2−メトキシ−ピリジン−3−イルボロン酸(23,0.13g,0.855ミリモル)、NaCO(0.14g,1.22ミリモル)、Pd(PPh(0.1g,0.04ミリモル)と、DCM及びMeOHの混合物を入れ、密封して、マイクロ波合成機において、115℃で35分間照射した。この溶液を冷やし、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜10% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.14gの(26a)を得た。
【0136】
工程4−(26a)(0.14g,0.348ミリモル)及び水性MeOH(6mL 1:1)の懸濁液を還流で加熱した。この懸濁液へNHCl(0.19g,3.478ミリモル)に続いてFe粉末(0.10g1.739ミリモル)を加えた。この溶液を還流で2時間加熱し、冷やして、濾過した。濾液を真空で濃縮した。この濾液をEtOAcに取り、HOと塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物を30% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.10g(77%)の(26b)を得た。
【0137】
工程5−(26b)(0.10g,0.268ミリモル)のピリジン(3mL)溶液へ塩化メシル(31μL,0402ミリモル)を加えて、生じる溶液を1時間撹拌した。この反応混合物をEtOAcで希釈して、CuSO水溶液、2N HCl、及び飽和NaHCOで連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(20〜50% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.14gの(26c)を得た。
【0138】
工程6−(26c)(0.14g,0.30ミリモル)、HOAc(3mL)、及びHBr(105μL)の溶液を50℃で2日間加熱した。この反応混合物を室温へ冷やし、EtOAcで希釈して、HOと飽和NaHCOで連続的に洗浄した。有機相を乾燥(NaSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をDCMとDCM/MeOH/NHOH(60:10:1)の溶液の勾配(70〜20% DCM)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、80mgの(I−1)を得た。
【0139】
実施例2
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(I−2)
【0140】
【化12】

【0141】
工程1−(28a)(5.00g,CASRN 24623−65−2)及びDCM(20mL)の溶液へBr(1.45mL)のDCM(15mL)溶液を0℃で30分の時間にわたり滴下した。この添加が完了した後で、この反応物を1時間撹拌して、その後で有機揮発物質を減圧下に除去して、7.23gの(28b)を淡黄色がかった固形物として得た。
【0142】
工程2−DMF(50mL)中の(28b)(3.83g)、MeI(2.32mL)、及びKCO(6.18g)の混合物を50℃で1時間加熱してから室温へ冷やして、エーテルと水で希釈した。有機層を水に次いで塩水で3回洗浄し、乾燥(MgSO)させて濃縮して、3.99gの(30)を黄色の固形物として得た。
【0143】
工程3−MeOH(20mL)及びDCM(5mL)の混合物に(30)(1.08g)、(23)(0.91g)、NaCO(1.05g)、及びPd(PPh(460mg)を含有する密封管に、マイクロ波反応機において120℃で30分間照射した。有機揮発物質を減圧下に除去した。残渣をEtOAcと水の間で分配した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜20% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、300mgの(32)を得た。
【0144】
(32)の(I−2)への変換(工程4〜9)を実施例1の工程1〜6に記載の手順に従って行なって、(I−2)をcis及びtrans異性体の混合物として得た。
実施例3
N−(6−{2−[3−tert−ブチル−6−ヒドロキシ−2−メトキシ−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−ピリジン−3−イル)−メタンスルホンアミド(I−4)
【0145】
【化13】

【0146】
2−ベンジルオキシ−ピリジン−3−イルボロン酸(34):2−ベンジルオキシ−3−ブロモ−ピリジン(2.50g,9.47ミリモル)、Pd(II)Cl(PPh(232mg,28ミリモル)、KOAc(2.32g,23.67ミリモル)、ビス−(ピナコラート)ジボラン(2.95g,11.36ミリモル)及びDME(75mL)の溶液を70℃で26時間加熱した。この反応混合物を冷やして、EtOと水の間で分配した。有機相を分離させ、乾燥させて、蒸発させた。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜5% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、少量のビス−(ピナコラート)ジボランを含有する、1.81gの(34)を得た。
【0147】
工程1−MeOH及びDCMからなる2相系において(36a)を臭化ベンジルと水酸化テトラブチルアンモニウムで処理して、3−ブロモ−5−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド(36a)の臭化ベンジルでのベンジル化を達成して、2−ベンジルオキシ−3−ブロモ−5−tert−ブチル−ベンズアルデヒド(36b)を得る。
【0148】
工程2−マイクロ波バイアルに(36b)(1.5g,4.31ミリモル)、(34)(1.28g,5.60ミリモル)、Pd(PPh(0.5g,0.43ミリモル)、及びNaCO(1.37g,12.93ミリモル)を入れ、アルゴンで充たして、密封した。この管へMeOH(2.5mL)とDCM(7.5mL)を加えて、生じる混合物を120℃まで35分間加熱した。この反応混合物を室温へ冷やし、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(38a)を得た。
【0149】
工程3:−78℃へ冷やした(38a)(1.11g,2.46ミリモル)のMeOH(20mL)溶液へナトリウムメトキシドの溶液(MeOH中0.5M,9.84mL,4.92ミリモル)を加えて、1−ジアゾ−2−オキソプロピルホスホン酸ジメチル(610mg,4.92ミリモル)のMeOH(5mL)溶液の滴下を続けた。生じる反応混合物を室温へ徐々に温めて、一晩撹拌してから、飽和NaHCO水溶液で冷ました。有機揮発物質を減圧下に除去した。この粗製の残渣をEtOAcと飽和NaHCO水溶液の間で分配した。有機層を水、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(38b)を得た。
【0150】
工程4−丸底フラスコに(38b)(2g,4.47ミリモル)、AIBN(0.29g)、及びベンゼン(20mL)を入れてから、アルゴンで充たし、次いで水素化トリブチルスズ(1.56mL,5.81ミリモル)を加えた。この反応混合物を還流で3時間加熱し、冷やして、真空で濃縮した。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(38c)を得た。
【0151】
工程5−Ar雰囲気下に維持したPd(dba)(0.104g,0.11ミリモル)及びDMF(10mL)の溶液へトリス−(2−フリル)ホスフィン(0.106g,0.45ミリモル)を加えた。この溶液を10分間撹拌後、この溶液を(38c)(2.8g,3.79ミリモル)、2−ヨード−5−ニトロ−ピリジン(1.14g,4.55ミリモル)、LiCl(0.329g,7.58ミリモル)、及びDMF(10mL)の溶液へ加えて、これをAr雰囲気下に維持した。生じる溶液を90℃で一晩加熱し、冷やしてから、EtOAcとNHCl水溶液の間で分配した。水相をEtOAcで抽出して、合わせた有機抽出物を乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(5〜10% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(40)を得た。
【0152】
工程6−(40)のシクロプロパン化を実施例1の工程2に記載の手順に従って行った。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサン勾配で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(42a)を得た。
【0153】
工程7−(42a)(0.080g)のEtOH(3.0mL)溶液へラネー・ニッケル(約0.3mLの水性スラリー)を加えて、生じる溶液をH雰囲気(Hバルーン)下に1時間撹拌した。この溶液を濾過して、濾液を真空で濃縮し、40% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOカラムで精製して、(42b)を得た。
【0154】
工程8−(42b)のメタンスルホンアミド(42c)への変換を実施例1の工程5に記載の手順に従って行った。
工程9−(42c)の(I−4)への変換を実施例1の工程6に記載の手順に従って行った。この反応物を65℃で一晩加熱した。この粗生成物を10% MeOH/DCMで展開する分取用SiO TLCプレートで精製して、(I−4)を得た。
【0155】
実施例3に図示するような、スティルカップリングを利用したピリジン環の取込みは、ピラジン、ピリダジン、又はピリミジン環の導入へ適用することができる。
実施例4
N−(4−{2−[5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(I−3)
【0156】
【化14】

【0157】
工程1−0℃へ冷やした15−クラウン−5のTHF(20mL)溶液へNaH(1.56g,3.9ミリモル、60%鉱油分散液)に続いて(4−ニトロ−ベンジル)−ホスホン酸ジエチル(10.65g,3.9ミリモル)及びTHF(20mL)の溶液を加えた。10分間撹拌後、(36a)(5.0g,19.5ミリモル)の溶液をゆっくり加えた。0℃で10分後、この反応物を室温へ温めてから、還流で6時間加熱した。この反応物を室温へ冷やしてから、1N HClで冷まして、生じる溶液をEtOAcで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(44a)を収率65%で得た。
【0158】
工程2−0℃へ冷やした(44a)(0.460g,1.22ミリモル)及びAcCl(96.3μL,1.35ミリモル)のDCM(10mL)溶液へTEA(220μL,1.3当量)を滴下した。室温で2時間後、この反応混合物を1N HClとEtOAcの間で分配した。水相をEtOAcで抽出し、合わせたEtOAc抽出物を乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(44b)を得た。
【0159】
工程3−(44b)のシクロプロパン化を実施例1の工程2に記載の手順に従って行った。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサン勾配で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(46)を得た。
【0160】
工程4−(46)(0.370g)のMeOH(2.0mL)及びTHF(2.0mL)溶液へ2N NaOH(2.0mL)を加えた。室温で1時間撹拌後、この反応物を1N HClへ注いで、生じる溶液をEtOAcで抽出した。合わせた抽出物を乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物を5% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(48a)を得た。
【0161】
工程5−(48a)(0.340g,0.87ミリモル)のEtOAc(10mL)溶液へSnCl・2HO(0.98g,4.37ミリモル)を加えた。生じる溶液を還流で2.5時間加熱してから冷やして、飽和NaHCO水溶液へ注いだ。生じる溶液をEtOAcで抽出し、合わせた抽出物を乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物を30% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(48b)を得た。
【0162】
工程6−(48b)のメタンスルホンアミド(48c)への変換を実施例1の工程5に記載の手順に従って行った。
工程7−(48c)の(50)への変換を実施例1の工程3に記載の手順に従って行った。この粗生成物を30% EtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製した。
【0163】
工程8−(50)の(I−3)への変換を実施例1の工程6に記載の手順に従って行った。この粗生成物を70% EtOAc/ヘキサンに続いて5% MeOH/DCMで展開する分取用SiO TLCプレートによって精製した。
【0164】
実施例5
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−5−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(56c)
【0165】
【化15】

【0166】
B−(2,3−ジヒドロ−3−オキソ−4−ピリダジニル)−ボロン酸(52b)−1Lの丸底フラスコへ4−クロロ−5−ヒドラジニル−3(2H)−ピリダジノン(52a,8.0g,50ミリモル)、CuSO・5HO(26.12g,10.5ミリモル)、及びHO(300mL)を入れて、この混合物を撹拌して、還流で一晩加熱した。この反応物を0℃へ冷やして、pHが4になるまで、NaOH水溶液を加えた。水層をEtOAc(各500mL)で3回抽出した。合わせた抽出物を乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。残る水相を37% HClで2のpHへ調整して、この溶液をEtOAcで6回抽出した。抽出物を合わせ、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させて、4.75gの4−クロロ−2H−ピリダジン−3−オン(52b)を得た。
【0167】
工程2−マイクロ波バイアルに(52b)(0.400g,3ミリモル)、ビス−(ピナコラート)ジボロン(0.934g,4ミリモル)、ジシクロヘキシル[2’,4’,6’−トリス(1−メチルエチル)[1,1’−ビフェニル]−2−イル]−ホスフィン(X−Phos,0.058g,0.12ミリモル)、Pd(dba)(0.056g,0.061ミリモル)、及びKOAc(0.902g,9ミリモル)を入れて、このフラスコを真空にし、Arで逆充填して、密封した。ジオキサン(6mL)を加えて、この反応物を110℃で一晩加熱した。この反応混合物を室温へ冷やして、EtOAc(120mL)で抽出した。この有機抽出物をHO(10mL)と塩水(10mL)で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物をEtOで摩砕して、0.217gの(54)を得た。
【0168】
工程3−マイクロ波バイアルに(24)、(54)(2当量)、NaCO(2.8当量)、Pd(PPh(0.01当量)とDCM及びMeOHの混合物を入れ、密封して、マイクロ波合成機において115℃で35分間照射する。この溶液を冷やしてから濾過して、真空で濃縮する。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、(56a)を得る。
【0169】
生じるアミンのニトロ基の還元とスルホニル化を、実施例1の工程4及び5に記載の手順に従って行なって、(56c)を得る。
本実施例の工程3に記載の手順に従った(54)及び(48c)の Suzuki カップリングによって、N−(4−{2−[5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−3−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(58)を製造する。
【0170】
実施例6
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−5−(2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(60)
【0171】
【化16】

【0172】
表題化合物(60)は、実施例1の工程3に記載の手順に従って、(24)及び(62)(CASRN 70523−22−7)の Suzuki カップリングによって製造する。
実施例7
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(74)
【0173】
【化17】

【0174】
工程1−DME(30mL)中の(30)(0.60g,CASRN 417715−878)、ビス−(ピナコラート)ジボロン(31,0.69g)、Pd(dppf)Cl(54mg)、及びKOAc(542mg)の混合物をアルゴン雰囲気下に70℃で14時間、次いで90℃でさらに7時間加熱した。この反応物を室温へ冷やして、水とエーテルで希釈した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜12% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、少量の(31)が混在した478mgの(62)を得た。
【0175】
工程2−バイアルに(62)(0.365g1.48ミリモル)、2−クロロ−3−メトキシ−ピラジン(0.198g,1.370ミリモル)、Pd(Ph(0.106g,0.092ミリモル)、NaCO(0.313g,2.953ミリモル)、MeOH(6mL)、及びDCM(2mL)を入れ、密封して、マイクロ波合成機において115℃で30分間照射した。この反応混合物を室温へ冷やし、EtOAcで希釈し、塩水で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(2〜10% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.275gの(64)を得た。
【0176】
工程3−0℃へ冷やした臭化4−ニトロ−ベンジルホスホニウム(1.23g,2.573ミリモル)及びDMF(10mL)の溶液へNaH(0.211g,5.275ミリモル、60%鉱油分散液)を加えた。この溶液を30分間撹拌してから、(64)(0.251g,0.857ミリモル)及びDMF(5mL)の溶液を加えて、生じる溶液を室温で一晩撹拌した。この反応物を1N HCl(8mL)の添加によって冷まして、生じる溶液をEtOAcで希釈した。このEtOAc溶液を分離させて塩水で2回洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(5〜10% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、317mgの2−{3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−[(E)−2−(4−ニトロ−フェニル)−ビニル]−フェニル}−3−メトキシ−ピラジン(66a)を得た。
【0177】
(66a)の2−{3−tert−ブチル−4−メトキシ−5−[2−(4−ニトロ−フェニル)−シクロプロピル]−フェニル}−3−メトキシ−ピラジン(66b,工程4)への変換を、実施例1の工程2に従って、ジアゾメタンとPd(OAc)を用いて行う。
【0178】
アミンの還元(工程5)、このアミンのメタンスルホンアミドへの変換(工程6)を実施例1の工程4及び5に従って行って、N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(3−メトキシ−ピラジン−2−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(66c)を得る。
【0179】
(66c)の表題化合物への変換(工程7)を実施例1の工程6に従って行う。
実施例8
N−(4−{2−[2−メトキシ−3−(1−メチル−シクロプロピル)−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(78)
【0180】
【化18】

【0181】
工程1−2−(1−メチルシクロプロピル)フェノール(70,0.55g,3.4ミリモル;CASRN433684−77−6)のMeCN(7mL)溶液へパラホルムアルデヒド(0.68g,23ミリモル)、MgCl(0.48g,0.051ミリモル)、及びTEA(1.3g,13ミリモル)を加えた。この混合物を撹拌して、還流で5時間加熱した。室温へ冷却後、この反応混合物をDCMと1M HCl水溶液の間で分配して、有機抽出物を乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣をEtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.34g(58%)の2−ヒドロキシ−3−(1−メチルシクロプロピル)−ベンズアルデヒド(72)を淡黄色のオイルとして得た。
【0182】
工程2:(72)(0.34g,1.9ミリモル)のDCM−MeOH(3:2,20mL)溶液へ三臭化テトラブチルアンモニウム(0.98g,2.0ミリモル)を加えて、生じる混合物を室温で75分間撹拌した。溶媒を減圧下に除去して、残渣をEtOAcと水の間で分配した。EtOAc層を水と塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣をEtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.45g(91%)の5−ブロモ−2−ヒドロキシ−3−(1−メチルシクロプロピル)ベンズアルデヒド(74a)を淡黄色の固形物として得た。
【0183】
工程3−(74a)(0.44g,1.7ミリモル)のDMF(4mL)溶液へKCO(0.60g,4.4ミリモル)とヨードメタン(0.32g,2.3ミリモル)を加えた。生じる混合物を60℃で2時間撹拌した。この反応混合物を室温へ冷やして、水とEtOの間で分配した。有機層を水と塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過し、濃縮して、0.47g(96%)の5−ブロモ−2−メトキシ−3−(1−メチルシクロプロピル)ベンズアルデヒド(74b)を淡黄色の固形物として得た。
【0184】
工程4:水素化ナトリウム(60%分散液、0.10g,2.6ミリモル)と15−クラウン−5(0.038g,0.17ミリモル)をTHF(5mL)へ0℃で加えて、5分間撹拌した。次いで、この反応混合物へ(4−ニトロベンジル)ホスホン酸ジエチル(0.52g,1.9ミリモル)のTHF(5mL)溶液を5分にわたり滴下して、撹拌を0℃で5分間続けた。次いで、この反応混合物へ(76)(0.47g,1.7ミリモル)のTHF(10mL)溶液を10分にわたり滴下した。この反応混合物を0℃で30分間、次いで室温で90分間撹拌した。水を慎重に加えて、この混合物を水とEtOAcの間で分配した。EtOAc層を水と塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。この粗製の残渣をEtOAc/ヘキサンで溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.67g(94%)の5−ブロモ−2−メトキシ−1−(1−メチルシクロプロピル)−3−[(E)−2−(4−ニトロフェニル)ビニル]ベンゼン(75)(0.67g,94%)を黄色の固形物として得た。
【0185】
工程5−5−ブロモ−2−メトキシ−1−(1−メチル−シクロプロピル)−3−[(E)−2−(4−ニトロ−フェニル)−ビニル]−ベンゼン(76)を得るためのシクロプロピル基の導入を実施例1の工程2に記載の手順に従って行う。
【0186】
2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−ボロン酸(80)の製造−−76℃へ冷やした3−ブロモ−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン(3.3g,19ミリモル)のTHF(200mL)溶液へ15分にわたりTMEDA(6.5g,56ミリモル)に続いてn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M,58ミリモル)を滴下した。生じる混合物を−76℃で15分間撹拌してから、室温へ温めた。19℃の内部温度に達したらすぐに、この反応混合物を0℃へ冷やして、B(OMe)(4.0g,39ミリモル)を15分にわたり滴下した。この添加が完了した後で、この反応混合物を室温へ温めて、15時間撹拌した。次いで、この混合物を0℃へ冷やして、少量の氷に続いて2M HCl水溶液(100mL)を加えた。THFを減圧下に除去して、この水溶液をDCMで2回洗浄した。pH5に達するまで濃NaOH水溶液をゆっくり加えると、沈殿が生成した。この混合物を0℃へ冷やして、10分間撹拌した。固形物を濾過によって採取し、冷水で洗浄、真空下に乾燥させて、1.83g(69%)の(80)を黄色の固形物として得た。
【0187】
このアミンの還元(工程6)、このアミンのメタンスルホンアミドへの変換(工程7)を実施例1の工程4及び5に従って行って、N−(4−{2−[5−ブロモ−2−メトキシ−3−(1−メチル−シクロプロピル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(66c)を得る。(80)と(66c)の表題化合物へのパラジウム触媒化クロスカップリング(工程8)を実施例1の工程3に従って行って、表題化合物を得る。
【0188】
実施例9
N−(4−{(E)−2−[3,3−ジメチル−7−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル)−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル]−ビニル}−フェニル)−メタンスルホンアミド(100)
【0189】
【化19】

【0190】
工程1−(80)(2.457g,14ミリモル)及びアセトン(75mL)の溶液へKCO(4.907g,36ミリモル)と3−ブロモ−2−メチルプロペン(2.0mL,20ミリモル)を加えて、生じる溶液を還流で一晩加熱した。この反応混合物を冷やして、真空で濃縮した。残渣をEtOAc(150mL)とHO(40mL)の間で分配した。水相をEtOAcで抽出して、合わせた有機抽出物をHOと塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。残渣をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜5% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、3.34g(98.5%)の(82)を得た。
【0191】
工程2−乾燥フラスコ中の(82)(3.33g,15ミリモル)及びベンゼン(150mL)の溶液へBuSnH(6.625g,22ミリモル)とAIBN(0.241g)を連続的に加えて、生じる溶液を還流で一晩加熱した。この反応混合物を室温へ冷やし、10% KF溶液を加えて、生じる二相の混合物を2時間激しく撹拌した。相を分離させて、有機相を飽和NaHCO(50mL)と塩水で連続的に洗浄した。合わせた有機抽出物を乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物をDCM/ヘキサン勾配(0〜10% DCM)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、1.855g(85%)の(84)を得た。
【0192】
工程3−ヨウ素(2.055g,8ミリモル)及びEtOH(30mL)の溶液へ硫酸銀(2.525g,8ミリモル)の溶液と(84)(1.200g,8ミリモル)のEtOH(10mL)溶液を加えた。この茶褐色の溶液を室温で2.5時間撹拌した。生じる懸濁液をCELITEに通して濾過し、このパッドをEtOHで濯いで、濾液を濃縮した。この粗生成物をDCM/ヘキサン勾配(0〜10% DCM)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、2.001g(90.5%)の(86)を得た。
【0193】
工程4−0℃へ冷やした乾燥フラスコ中の(86)(2.00g,7ミリモル)及びHOAc(18mL)の溶液へBrを10分にわたり滴下した。この反応物を室温で一晩撹拌した。過剰の臭素を10% Na水溶液(20mL)で失活させて、HOAcを蒸発させた。残渣をEtOで抽出して、この有機抽出物を飽和NaHCOで洗浄した。水相をEtOで逆抽出して、合わせた抽出物をNaHCO(2x20mL)、HO、及び塩水で連続的に洗浄し、乾燥(NaSO)させ、濾過して、濃縮した。残渣をDCM/ヘキサン勾配(0〜10% DCM)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、1.5960g(71.5%)の(88)を得た。
【0194】
N−{4−[(E)−2−(3,3,5−トリメチル−2,6−ジオキソ−ボリナン−1−イル)−ビニル]−フェニル}−メタンスルホンアミド(89)−Pd(OAc)(0.076g)及びトリス−(オルト−トリル)−ホスフィン(0.246g,1ミリモル)及びトルエン(16mL)の溶液へN−(4−ヨード−フェニル)−メタンスルホンアミド(2.00g,7ミリモル、CASRN 102294−59−7)、トリブチルアミン(1.92mL)、及び4,4,6−トリメチル−2−ビニル−[1,3,2]ジオキサボリナン(1.244g,8ミリモル)を連続的に加えて、この反応物を還流で72時間加熱した。この反応物を室温へ冷やして、EtO(100mL)と1M HCl(20mL)の間で分配した。水層を吸引して、EtOで再抽出した。有機相をHOと塩水で連続的に洗浄した。この抽出物を合わせ、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。残渣をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜30% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、1.4g(58%)の(89)を得た。
【0195】
工程5−マイクロ波管に(88)(0.068g)、(89)(0.078g)、NaCO(0.064g)、Pd(PPh(0.023g)、MeOH(1.8mL)、及びDCM(0.6mL)を入れた。この管をアルゴンで充たし、密封して、マイクロ波合成機において125℃で40分間照射した。この反応混合物を冷やして、真空で濃縮した。残渣をDCM(25mL)とHO(5mL)の間で分配した。有機層を塩水(5mL)で洗浄した。水相をDCM(25mL)で2回抽出した。この有機層を合わせ、乾燥(NaSO)させ、濾過して蒸発させた。この粗生成物をEtOAc/ヘキサン勾配(0〜60% EtOAc)で溶出させるSiOクロマトグラフィーによって精製して、0.175g(18%)の(90)を得た。
【0196】
工程6−実施例1の工程2に記載の手順に従ってシクロプロピル基の導入を行って、(92)を得る。実施例5の工程3の手順に従った(54)及び(92)のカップリングによってピリダジノン環の導入(工程7)を達成して、(100)を得る。
【0197】
実施例10
HCV NS5B RNAポリメラーゼ活性
HCVポリメラーゼ(NS5B570n−Con1)の酵素活性は、放射標識ヌクレオチド一リン酸塩の酸不溶性RNA産物への取込みとして測定した。取り込まれなかった放射標識基質を濾過によって除去して、放射標識されたRNA産物を含有する、洗浄及び乾燥済みの濾過プレートへシンチラントを加えた。この反応の最後にNS5B570n−Con1によって産生されたRNA産物の量は、シンチラントによって放射される光の量に正比例していた。
【0198】
HCV Con1株、遺伝子型1b(NS5B570n−Con1)に由来するN末端6−ヒスチジンタグ付きHCVポリメラーゼは、完全長のHCVポリメラーゼに比べてC末端で21アミノ酸の欠失を含有して、大腸菌(E. coli)株、BL21(DE)pLysSより精製された。HCV NS5B Con1のコーディング配列を含有する構築体(GenBank登録番号:AJ242654)を、T7プロモーター発現カセットの下流で、プラスミド構築体pET17bの中へ挿入して、大腸菌へ形質転換した。単一のコロニーを出発培養物として一晩増殖させて、その後、100μg/mLのアンピシリンを補充した10LのLB培地への接種に37℃で使用した。この培地の600nmでの光学密度が0.6と0.8の間になったときに0.25mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によってタンパク発現を誘導して、30℃で16〜18時間後に細胞を採取した。Ni−NTA、SP−セファロースHP、及びSuperdex 75樹脂での後続のカラムクロマトグラフィーが含まれる3段階のプロトコールを使用して、NS5B570n−Con1を均質になるまで精製した。
【0199】
それぞれ50μlの酵素反応物は、配列内リボソーム進入部位の相補配列(cIRES)に由来する20nM RNA鋳型、20nM NS5B570n−Con1酵素、0.5μCiのトリチウム化UTP(パーキン・エルマー、カタログ番号:TRK−412;比活性:30〜60Ci/ミリモル;7.5x10−5M〜20.6x10−6Mのストック溶液濃度)、それぞれ1μMのATP、CTP、及びGTP、40mMトリスHCl(pH8.0)、40mM NaCl、4mM DTT(ジチオスレイトール)、4mM MgCl、及びDMSOで連続希釈した5μlの化合物を含有した。96ウェル濾過プレート(カタログ番号:MADVN0B,ミリポア社)中で反応混合物を組み立てて、30℃で2時間インキュベートした。最終10%(v/v)のトリクロロ酢酸の添加によって反応を止めて、4℃で40分間インキュベートした。反応物を濾過し、8反応容量の10(v/v)%トリクロロ酢酸、4反応容量の70%(v/v)エタノールで洗浄し、空気乾燥させて、各反応ウェルへ25μlのシンチラント(Microscint 20,パーキン・エルマー)を加えた。
【0200】
シンチラントより放出される光の量を、Topcount(登録商標)プレートリーダー(パーキン・エルマー、エネルギー範囲:低、効率モード:通常、計数時間:1分、バックグラウンド除去:なし、クロストーク低減:オフ)で、カウント毎分(CPM)へ変換した。
【0201】
Excel(登録商標)(Microsoft(登録商標))及びActivityBase(登録商標)(idbs(登録商標))でデータを解析した。酵素の非存在下での反応物を使用してバックグラウンドシグナルを定量し、これを酵素反応物より差し引いた。化合物の非存在下で陽性対照反応を実施して、これよりバックグラウンド補正活性を100%ポリメラーゼ活性として設定した。すべてのデータをこの陽性対照の百分率として表した。RNA合成の酵素触媒化率を50%低下させる化合物濃度(IC50)は、等式(i):
【0202】
【化20】

【0203】
[式中、「Y」は、相対酵素活性(%)に対応し、「%Min」は、飽和化合物濃度での残余相対活性であり、「%Max」は、相対最大酵素活性であり、「X」は化合物濃度に対応して、「S」は、ヒル係数(又は傾き)である]をデータへ適合することによって計算した。
【0204】
実施例11
HCVレプリコンアッセイ
本アッセイは、HCV RNA複製を阻害する式Iの化合物の能力と、それ故にHCV感染症の治療へのその潜在的な有用性について測定する。本アッセイは、細胞内HCVレプリコンRNAレベルの簡略な読み出しとしてレポーターを利用する。Renilla luciferase 遺伝子を、配列内リボソーム進入部位(IRES)配列のすぐ後で、遺伝子型1bレプリコン構築体NK5.1(N. Krieger et al., J. Virol. 200175 (10): 4614)の第一のオープンリーディングフレーム中へ導入して、口蹄疫ウイルス由来の自己切断ペプチド2A(M. D. Ryan & J. Drew, EMBO 199413 (4): 928-933)を介してネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTII)遺伝子と融合した。in vitro 転写の後で、このRNAをヒト肝細胞腫Huh7細胞の中へエレクトロポレーションして、G418抵抗性のコロニーを単離して増殖させた。安定的に選択される細胞系、2209−23は、複製のHCVサブゲノムRNAを含有して、このレプリコンによって発現される Renilla luciferase の活性は、細胞中でのそのRNAレベルを反映する。本アッセイは、同一2検体のプレート(一方は乳白色で、他方は透明)で行って、化学化合物の抗ウイルス活性と細胞傷害性を並行して測定して、観測される活性が細胞増殖の減少によるのでも細胞死によるのでもないことを確実にする。
【0205】
Renilla luciferase レポーターを発現するHCVレプリコン細胞(2209−23)を、5%胎仔ウシ血清(FBS,Invitrogen カタログ番号:10082−147)を含むダルベッコMEM(Invitrogen カタログ番号:10569−010)において培養して、ウェルにつき5000細胞で96ウェルプレート上へプレート培養して、一晩インキュベートした。24時間後、化学化合物の増殖培地での異なる希釈物をこの細胞へ加えてから、これを37℃で3日間さらにインキュベートした。このインキュベーション時間の最後に、白色プレート中の細胞を採取して、R. luciferase アッセイ系(プロメガ、カタログ番号:E2820)を使用することによって、ルシフェラーゼ活性を測定した。以下のパラグラフに記載されるすべての試薬は製造業者のキットに含まれて、試薬の調製については、製造業者の指示書に従った。この細胞をウェルにつき100μlのリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.0)(PBS)で1回洗浄して、室温で20分間のインキュベーションに先立って、20μlの1x R. luciferase アッセイ溶解緩衝液で溶解させた。次いで、このプレートをCentro LB 960マイクロプレートルミノメーター(Berthold Technologies)へ挿入して、100μlの R. luciferase アッセイ緩衝液を各ウェルへ注入して、2秒遅延、2秒測定のプログラムを使用して、シグナルを測定した。IC50(レプリコンレベルを未処理細胞対照値に対して50%低下させるのに必要とされる薬物の濃度)は、上記に記載のように、「ルシフェラーゼ活性の低下百分率」対「薬物濃度」のプロットから計算することができる。
【0206】
細胞傷害性アッセイには、ロシュ・ジアグノスティク(Roche Diagnostic)からのWST−1試薬(カタログ番号:1644807)を使用した。培地単独をブランクとして含有するウェルを含めて、透明プレートの各ウェルへ10マイクロリットルのWST−1試薬を加えた。次いで、細胞を37℃で2時間インキュベートして、MRX Revelation マイクロタイタープレートリーダー(Lab System)を450nm(650nmでの基準フィルタ)で使用して、OD値を測定した。ここでも、CC50(細胞増殖を未処理細胞対照値に対して50%低下させるのに必要とされる薬物の濃度)は、上記に記載のように、「WST−1値の低下百分率」対「薬物濃度」のプロットから計算することができる。
【0207】
表IIは、代表的な化合物のレプリコンデータを含有する。
【0208】
【表2】

【0209】
実施例12
いくつかの経路を介して投与する、本発明の化合物の医薬組成物を本実施例に記載のように製造した。
【0210】
【表3】

【0211】
成分を混合して、約100mgをそれぞれ含有するカプセルへ調合すると、1つのカプセル剤は、全1日投与量に近いはずである。
【0212】
【表4】

【0213】
成分を合わせて、メタノールのような溶媒を使用して造粒する。次いで、この製剤を乾燥させて、適正な打錠機で錠剤(約20mgの活性化合物を含有する)へ成形する。
【0214】
【表5】

【0215】
成分を混合して、経口投与用の懸濁液剤とする。
【0216】
【表6】

【0217】
有効成分をある分量の注射用水に溶かす。次いで、十分量の塩化ナトリウムを撹拌しながら加えて、この溶液を等張にする。残りの注射用水でこの溶液の重量を調整して、0.2ミクロンの膜フィルターに通して濾過して、無菌条件下で包装する。
【0218】
上述の記載又は以下の特許請求項に開示されて、その具体的な形態で、又は開示される機能を実施するための手段により表現される特徴、又は開示される結果を達成するための方法又は製造法は、別々に、又はそのような特徴のあらゆる組合せにおいて、本発明をその多様な形態で実現するために適宜利用してよい。
【0219】
上述の発明について、明確化と理解の目的で、例示と実施例によりやや詳しく記載してきた。当業者には、付帯の特許請求項の範囲内で種々の変更及び修飾を実践し得ることが明らかであろう。故に、上記の記載は、例示であることを企図するのであって、限定することを企図しないと理解されたい。故に、本発明の範囲は、上記の記載を参照して決定してはならず、むしろ、以下の付帯の特許請求項、並びにそのような特許請求項により権利化される均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
【0220】
本明細書で言及される特許、公開出願、及び科学文献は、当業者の知識を確定させて、その全体において、それぞれが具体的かつ個別に参照により組み込まれるように示されるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用する参考文献と本明細書の具体的な教示の間のどんな抵触も、後者に有利なように解決される。同様に、当該技術分野で理解されている単語又は句の定義と、本明細書において具体的に教示されるような単語又は句の定義との間のどんな抵触も、後者に有利なように解決される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中:
は、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル、3−オキソ−3,4−ジヒドロ−ピラジン−2−イル、3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリミジン−4−オン−5−イル、及び2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−ピリミジン−5−イルからなる群より選択されるヘテロアリール基であり、前記ヘテロアリールは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−3ハロアルキル、又はC1−6アルコキシによって置換されていてもよく;
は、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、及びピリダジニルからなる群より選択される(ヘテロ)アリール基であり、前記(ヘテロ)アリール基は、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−3アルコキシ−C1−6アルキル、ハロゲン、(CHNR、シアノ、C1−6アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−アルキルカルバモイル、N,N−ジアルキルカルバモイル、カルボキシル、カルボキシル−C1−3アルキル、SONH、C1−6アルキルスルフィニル、及びC1−6アルキルスルホニルからなる群より選択される1〜3の置換基で独立して置換されていてもよくて、nは0〜3であり;
は、水素、ヒドロキシ、C1−3ヒドロキシアルキル、又はシアノであり;
は、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アルコキシ、C1−6ハロアルコキシ、ハロゲンであるか、又はRとR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;
5a、R5b、及びR5cは、
(i)独立しているとき、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、C1−2フルオロアルキル、ヒドロキシ、又はハロゲンより独立して選択される、又は
(ii)一緒になるとき、R5aとR5bは、一緒に、C2−4メチレンであり、そしてR5cは、C1−3アルキル、C1−2アルコキシ、C1−2フルオロアルキル、又はハロゲンである、又は
(iii)R又はRのいずれか一方とR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロ−ベンゾフランを形成して、R5bとR5cは、C1−3アルキルである;
は、水素、フッ素であるか、又は
とR5aは、一緒にCH−Oであって、それらが付く原子と一緒に、2,3−ジヒドロベンゾフランを形成し;そして
とRは、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6アシル、C1−6アルキルスルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニル、スルファモイル、C1−3アルキルスルファモイル、C1−3ジアルキルスルファモイル、カルバモイル、C1−3アルキルカルバモイル、又はC1−3ジアルキルカルバモイルである]による化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
が、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;
は、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、そしてRは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換されるフェニル又はピリジニルであり;そして
5a、R5b、及びR5cは、独立して、C1−3アルキル又はC1−3ハロアルキルであるか又は、R5aとR5bが一緒に(CHであって、R5cは、C1−3アルキル,C1−3ハロアルキル、又はハロゲンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル又は3−オキソ−2,3−ジヒドロ−ピリダジン−4−イルであり;
は、少なくとも(CHNR(ここでnは、0又は1であり、そしてRは水素であって、Rは、C1−6スルホニル、C1−6ハロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキルスルホニル、C3−7シクロアルキル−C1−3アルキル−スルホニル、又はC1−6アルコキシ−C1−6アルキルスルホニルである)によって置換される、ピリミジニル、ピラジニル、及びピリダジニルであり;
は、水素又はヒドロキシであり;
は、水素又はC1−6アルコキシであり;そして
5a、R5b、及びR5cは、メチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド;
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド;
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−trans−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド;
N−(4−{2−[3−tert−ブチル−2−メトキシ−5−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−cis−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミド;及び
N−(4−{2−[5−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−フェニル]−シクロプロピル}−フェニル)−メタンスルホンアミドからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症を治療することへの使用。
【請求項6】
少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤と組み合わせた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、HCV感染症を治療することへの請求項5の使用。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、HCV感染症を治療するための医薬品の製造への使用。
【請求項8】
少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤と組み合わせた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の式Iの化合物の、HCV感染症を治療するための医薬品の製造への請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物を送達することによって細胞中でのHCVの複製を阻害するための方法。
【請求項10】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染症を治療することを必要とする患者へ請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含んでなる、それを治療するための方法。
【請求項11】
少なくとも1つの免疫系モジュレーター、及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも1つの抗ウイルス剤を同時投与することをさらに含んでなる、請求項10の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物を少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と混合して含んでなる医薬組成物。
【請求項13】
本明細書に記載のような発明。

【公表番号】特表2012−524752(P2012−524752A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506485(P2012−506485)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055309
【国際公開番号】WO2010/122082
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】