説明

観測光学系

【課題】 観測者の体調に合わせて、より一層優れる焦点の調節や手ぶれの補正機能を提供することができる観測光学系を提供する。
【解決手段】 本発明に係る観測光学系(100)は、焦点調節機構(70)及び/又は手ぶれ補正機構(80)と、観測者の体調を測定する体調測定手段(40)と、体調測定手段により測定された測定結果に基づいて、焦点調節機構(40)及び/又は手ぶれ補正機構(80)を制御するシステム制御手段(30)と、を備える。また、複数の速度の中から、焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構を駆動する速度を判定する判定手段(31)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測者の体調に合わせて調節される観測光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等を使って画像を撮像する時、シャッターを押す時に身体が動いてしまう。これによって手ぶれが生じ、撮像した写真が失敗する原因になる。なお、ビデオカメラ等で動画を撮影する時も、手持ちしたカメラの不要な揺れで手ぶれが生じる。これらの手ぶれを防止するために、写真レンズ内に振動ジャイロ機構を備えた補正レンズを組み込み、手ぶれを打ち消す方向に補正レンズを動かすことによって光軸を補正する。
【0003】
現在、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡又はカメラのような観測光学系には、オートフォカス(AF)機能を有する焦点調節機構や上記のように手ぶれを防止する手ぶれ補正機構が搭載されている。例えば、特許文献1で手ぶれ補正機構を備えるカメラが開示されている。
【0004】
なお、特許文献2で、観測者の身体コンディションを考えて、身体コンディション情報と撮像画像と共に記録可能のビデオカメラが開示されている。
【特許文献1】特開2008―107665号文献
【特許文献2】特開平07―177403号文献
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような観測光学系に手ぶれ補正機構や焦点調節機構が搭載されたと言っても、観測者の体調により手ぶれの防止効果及び焦点の調節効果に影響を及ぼす。例えば、観測者の体調が良い時、目標物によく追従することが好ましい。しかしながら、観測者の体調が悪い時、例えば病気になったり、疲れたりした時、焦点の調節や手ぶれの防止の効きがすばやいため、酔ったような気分になる。即ち、従来の観測光学系は、単なるセンサ信号からのフィードバックで焦点の調節や手ぶれの補正を行い、観測者の体調が悪い状況に合わせて焦点の調節や手ぶれの補正を行う観測光学系ではなかった。
【0006】
上記特許文献2では、観測者の身体コンディションを考量したが、コンディション情報を撮像画像と共に記録して、観測者が自分自身のコンディションを認識できるだけで、悪いコンディションに対応できる観測光学系ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以上の従来の問題点に鑑みてなされたもので、単なるセンサ信号からのフィードバックで焦点の調節や手ぶれの補正の機能を決定するのではなく、観測者の体調に合わせて、より一層優れる焦点の調節や手ぶれの補正機能を提供することができる観測光学系を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の観点による観測光学系は、焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構と、観測者の体調を測定する体調測定手段と、前記体調測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記焦点調節機構及び/又は前記手ぶれ補正機構を制御するシステム制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
このような構成により、観測者が病気又は疲れた時に、その体調に合わせて自動的に焦点の調節や手ぶれの補正を行うことができ、体調が悪い状況にも関わらず、優れる撮像機能を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態を添付の図面に基づいて詳しく説明するが、これに限定されるわけではない。なお、本発明において観測光学系としては、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡、カメラ、又はビデオカメラ等がある。実施形態において、観測光学系が双眼鏡である場合について説明するが、望遠鏡、顕微鏡、カメラ、及びビデオカメラにも共通である。
【0011】
<双眼鏡100の構成>
図1は本発明に係る双眼鏡100の構成を示す斜視図である。図1に示したように、双眼鏡100は、双眼部10と本体20からなる。なお、双眼鏡100は、双眼部10に設置されて観測者の視力を検出するための視力センサ41と、観測者の呼吸部位と対応する本体20の前側部に設置されて観測者の呼吸を検出するための呼吸センサ42と、観測者が両手で本体20を持つ位置と対応する本体20の側壁に設置されて観測者の体温を検出するための温度センサ43と、観測者が両手で本体20を回して持った時、観測者の指先と対応する本体20の上部に設置されて、観測者が本体20を掴む圧力を検出するための圧力センサ44と観測者の血圧を検出するための圧力センサ45とを備える。
【0012】
なお、双眼鏡100は、視力センサ41、呼吸センサ42、温度センサ43、圧力センサ44及び血圧センサ45からの出力により、観測者の体調を測定するための体調測定回路40を備える。なお、体調測定回路40の測定結果に基づいて、システムを制御するためのシステム制御回路30を備える。なお、双眼鏡100は、電源スイッチ50と体調測定スイッチ60とを備える。
【0013】
図2は双眼鏡100の内部構成を示す図面である。図2において、双眼鏡に使える通常のレンズ等を省略した。双眼鏡100は、オートフォカス機構70と、レンズシフト方式の手ぶれ補正機構80とを備える。更に、双眼鏡100は、夫々にオートフォカス機構70とレンズシフト方式の手ぶれ補正機構80とに接続されて、それらを駆動するための振動波モータMO1とMO2を備える。
【0014】
オートフォカス機構70は、通常のアクティブ方式やパッシブ方式のものを使うことができる。オートフォカス機構70中のレンズは、振動波モータMO1により駆動させて、光軸方向(X軸方向)に移動して焦点を合致させる。本実施形態において、振動波モータMO1はオートフォカス機構70中のレンズを異なる複数の速度で駆動することができる。
【0015】
レンズシフト方式の手ぶれ補正機構80には、振動ジャイロ機構を備えた補正レンズが組み込まれ、ブレを打ち消す方向に補正レンズを動かす事によって光軸を補正する。補正レンズは振動波モータMO2により駆動させて移動する。本実施形態において、振動波モータMO2は手ぶれ補正機構80の補正レンズを異なる複数の速度で駆動することができる。
【0016】
本実施形態に係る双眼鏡100の手ぶれ補正機構80は、レンズシフト方式を採用したが、レンズシフト方式の他にも、下記のような方式の手ぶれ補正機構を使うことができる。即ち、CCDなどのイメージセンサー(撮像素子)を手ぶれに応じて移動させることによって光軸を補正するイメージセンサーシフト方式、又はイメージセンサー(撮像素子)を含むレンズユニット全体を手ぶれに応じて微小回転させることによって、撮影光軸を一定に保つレンズユニットスイング方式のような光学系手ぶれ補正機構を採用することができる。
【0017】
イメージセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を採用した場合、イメージセンサー(撮像素子)は、振動波モータMO2により駆動させて移動する。なお、レンズユニットスイング方式の手ぶれ補正機構を採用した場合、イメージセンサーを含むレンズユニット全体は、振動波モータMO2により駆動させて回転する。
【0018】
手ぶれ補正機構として、上記のような光学系手ぶれ補正機構の他に、電子式手ぶれ補正機構を採用することもできる。即ち、撮影可能領域を一定のサイズに狭め、撮影の際にバッフアメモリに画像を読み込み、最初に撮影した画像とそれ以降に撮影した画像とを比較して、そのはみ出し量を演算し、撮影可能領域を自動的にずらして撮影し記録する手ぶれ補正機構を採用することもできる。
上記電子式手ぶれ補正機構を採用した場合、振動波モータMO2により撮像可能領域のずらし運動を駆動する。
【0019】
振動波モータは、圧電体の伸縮を利用して弾性体の駆動面に進行波を発生させ、この進行波によって駆動面には楕円運動が生じ、楕円運動の波頭に加圧接触した移動子が駆動される。振動波モータは、低回転でも高トルクを有するといった特徴と、駆動装置のギヤを省略することができる特徴がある。双眼鏡100は、振動波モータを用いることでギヤ騒音の静寂化、位置決め精度の向上といった利点がある。
【0020】
図3は、本発明に係る双眼鏡100の構成を示すブロック図である。図3に示したように、システム制御回路30は、判定回路31、駆動回路32、中央制御回路33、及びメモリ34からなる。判定回路31は、体調測定回路40と接続されて、体調測定回路40の測定結果に基づいて、オートフォカス機構70と手ぶれ補正機構80とを駆動する速度を判定する。駆動回路32は、判定回路31により判定した駆動速度に従って異なる速度でオートフォカス機構70と手ぶれ補正機構80とを駆動する。中央制御回路33は、システム全般に対して制御し、メモリ34は、観測者の通常の健康である体調状況及び毎度測定した体調状況を記憶する。
【0021】
体調測定回路40は、視力測定回路401、呼吸測定回路402、温度測定回路403、圧力測定回路404、及び血圧測定回路405からなる。視力測定回路401は、視力センサ41と接続されて、視力センサ41からの出力を受信して、観測者の視力範囲を測定する。呼吸測定回路402は、呼吸センサ42と接続されて、呼吸センサ42からの出力を受信して、観測者の呼吸数を測定する。温度測定回路403は、温度センサ43と接続されて、温度センサ43からの出力を受信して、観測者の体温を測定する。圧力測定回路404は、圧力センサ44と接続されて、圧力センサ44からの出力を受信して、観測者が双眼鏡100の本体20を掴む圧力を測定する。血圧測定回路405は、血圧センサ45と接続されて、血圧センサ45からの出力を受信して、観測者の血圧を測定する。
【0022】
上記視力センサ41は、上記のように独立した光視力センサ等を用いることができ、視力センサを内蔵したレンズなどを用いることもできる。
上記呼吸センサ42は、30秒間又は一分間の呼吸数を測定することができるものであれば特に限定はない。一つの変形例として、下記のように構成されてよい。即ち、上記呼吸センサがマイクであり、観測者の呼吸に従ってマイクから信号が発生し、呼吸測定回路402は、上記マイクからの信号に基づいて30秒間又は一分間の呼吸数を測定することができる。
【0023】
上記温度センサ43は体温を測定することができる従来の温度センサであれば特に限定はない。しかしながら、外気温の大きな変化により、体温調節がうまくいかないことがある場合を考量して、外気温と体温を同時に測定して、体調の状況を判定する方法を用いることもできる。即ち、お互いに影響がないように外気温の温度センサと体温の温度センサを設置して同時に外気温と体温を測定する。外気温が急に変化した場合、体調が悪くと、外気温の変化に従って皮膚温度をうまく調節することができなく、皮膚温度の変化が少ない。体調が良くと、外気温の変化に従って、皮膚温度を対応的に変化することができる。これにより、外気温の変化に対応する皮膚温度の変化を測定して、体調の良悪を判定することができる。
【0024】
上記圧力センサ44は従来の圧力センサであれば特に限定はない。上記圧力センサ44は、従来の電子血圧計に用いられる血圧センサを用いることができる。なお、血圧センサの代わりに、光で脈拍を測定して、測定された脈拍の変化により、体調を測定することもできる。光で脈拍を測定する例として、指先に近赤外線を当てて、動脈血液中のへモグロビンの量の変化により光の吸収の度合が変化するため、生体組織の反射又は透過する光量を光電素子で受ければ、ヘモグロビンの量の増減を電気信号として検出する。その後、光電素子で得られた電気信号を増幅し、波形整形することにより脈拍信号を得る。一分間の脈拍信号を計測して脈拍数を測定することができる。脈波数が早くなると、血管が狭くなり、血圧が上り、体調が悪いと判定することができる。もちろん、血圧センサと脈拍測定センサを夫々に設置して、観測者の体調を判定することもできる。
【0025】
<双眼鏡100のプロセス>
以下、双眼鏡100のプロセスについて説明する。電源スイッチ50がオン操作されると、双眼鏡は起動される。観測者が、体調に合わせる焦点の調節機能や手ぶれの補正機能を使うことを希望する時、体調測定スイッチ60をオン操作する。これにより、双眼鏡100は観測者の体調を測定し始まる。以下、体調の良悪を判定することができる各指標について、別々に説明する。
【0026】
<体温による体調の判定>
図4は、本実施形態に係る双眼鏡100が体温により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。図4に示したように、下記のステップが含まれている。
ステップ1(S1):温度センサ43により、観測者の体温を測定して、その測定結果を温度測定回路403に送信する。
ステップ2(S2):温度測定回路403は、温度センサ43からの測定結果を受信して、測定された観測者の体温が正常体温範囲に属するかどうかを確定する。人の正常体温範囲は、36℃〜37℃である。正常体温範囲に属する場合、ステップ5を実行し、正常体温範囲に属しない場合、ステップ3を実行する。
【0027】
ステップ3(S3):温度測定回路403は、温度センサ43により測定された観測者の体温が第一温度範囲に属するかどうかを確定する。第一温度範囲は、35℃〜36℃又は37℃〜38℃である。第一温度範囲に属する場合、ステップ6を実行し、第一温度範囲に属しない場合、ステップ4を実行する。
ステップ4(S4):温度測定回路403は、温度センサ43により測定された観測者の体温が第二温度範囲に属するかどうかを確定する。第二温度範囲は、35℃以下、又は38℃以上である。第二温度範囲に属する場合、ステップ7を実行し、第二温度範囲に属しない場合、測定エラーと判定して、今回の測定を終了する。
【0028】
ステップ5(S5):温度測定回路403は、観測者の体温が正常範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ6(S6):温度測定回路403は、観測者の体温が第一温度範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ7(S7):観測者の体温が第二温度範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
【0029】
本実施形態で、固定された正常体温範囲を設定したが、双眼鏡を使う人によって、正常体温範囲に差がある場合もあるから、自分の正常体温範囲を事前に選択して入力することもできる。なお、第一及び第二温度範囲は、体調に合わせる焦点及び手ぶれの補正精度に応じて設定することも可能である。例えば、精度が非常に高いことを希望する時、温度範囲を細かく分割して、第一温度範囲を35.5℃〜36℃又は37℃〜37.5℃に設定し、第二温度範囲を35℃〜35.5℃又は37.5℃〜38℃に設定し、第三温度範囲を35℃以下又は38℃以上に設定することができる。もちろん、温度範囲を粗く分割することもできる。
【0030】
なお、外気温と体温を同時に測定する温度センサである場合、同じように異なる外気温の変化範囲と体温の変化範囲を設定して、体調の良悪を判定することができる。
【0031】
<視力の変化量による体調の判定>
図5は、本実施形態に係る双眼鏡100が視力の変化量により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。図5に示したように、下記のステップが含まれている。
ステップ11:視力センサ41により、観測者の視力をリアルタイムに測定して、測定結果を視力測定回路401に送信する。
ステップ12:視力測定回路401は、視力センサ41からの測定結果を受信して、前回受信された視力に比べて、今回受信された視力の変化量を計算する。
ステップ13:視力測定回路401は、視力の変化量が正常変化範囲に属するかどうかを確定する。正常変化範囲は、視力の変化量が−0.01以上である。即ち、視力が0.01以下下げたり、視力が上がったりすると、正常な体調と判定される。正常変化範囲に属すると、ステップ16を実行し、正常変化範囲に属しないと、ステップ14を実行する。
【0032】
ステップ14:視力測定回路401は、視力センサ41により測定された観測者の視力の変化量が第一変化範囲に属するかどうかを確定する。第一変化範囲は、−0.01〜−0.05である。第一変化範囲に属する場合、ステップ17を実行し、第一変化範囲に属しない場合、ステップ15を実行する。
ステップ15:視力測定回路401は、視力センサ41により測定された観測者の視力の変化量が第二変化範囲に属するかどうかを確定する。第二変化範囲は、−0.05以上である。第二変化範囲に属する場合、ステップ18を実行し、第二変化範囲に属しない場合、測定エラーと判定して、今回の測定を終了する。
【0033】
ステップ16:視力測定回路401は、観測者の視力の変化量が正常変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ17:視力測定回路401は、観測者の視力の変化量が第一変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ18:視力測定回路401は、観測者の視力の変化量が第二変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
【0034】
本実施形態において、前回の視力と今回の視力の差で体調を判定したが、観測者が自分で自分の視力を入力して、この視力を基準として視力の変化量を計算し、体調の良悪を判定することもできる。もちろん、上記の体温により体調を測定する場合と同じように、希望する精度に従って、視力の変化範囲を設定することができる。
【0035】
<呼吸による体調の判定>
図6は、本実施形態に係る双眼鏡100が一分間の呼吸数により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。図6に示したように、下記のステップが含まれている。
ステップ21:呼吸センサ42により、観測者の一分間の呼吸数を測定して、測定結果を呼吸測定回路402に送信する。
ステップ22:呼吸測定回路402は、呼吸センサ42からの測定結果を受信して、測定された一分間の呼吸数が正常呼吸数範囲に属するかどうかを確定する。一分間の正常呼吸数範囲は、10〜30である。呼吸数が正常呼吸数範囲に属すると、ステップ25を実行し、正常呼吸数範囲に属しないと、ステップ23を実行する。
【0036】
ステップ23:呼吸測定回路402は、呼吸センサ42により測定された観測者の一分間の呼吸数が第一呼吸数範囲に属するかどうかを確定する。第一呼吸数範囲は、30〜50である。第一呼吸数範囲に属する場合、ステップ26を実行し、第一呼吸数範囲に属しない場合、ステップ24を実行する。
ステップ24:呼吸測定回路402は、呼吸センサ42により測定された観測者の一分間の呼吸数が第二呼吸数範囲に属するかどうかを確定する。第二呼吸数範囲は、10個以下、又は50個以上である。第二呼吸数範囲に属する場合、ステップ27を実行し、第二呼吸数範囲に属しない場合、測定エラーと判定して、今回の測定を終了する。
【0037】
ステップ25:呼吸測定回路402は、観測者の呼吸数が正常呼吸数範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ26:呼吸測定回路402は、観測者の呼吸数が第一呼吸数範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ27:呼吸測定回路402は、観測者の呼吸数が第二呼吸数範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
【0038】
本実施例において、通常の一分間の呼吸数を基準にして体調を判定したが、観測者が自分の一分間の呼吸数を入力して、この呼吸数に基づいて、体調を判定することもできる。呼吸数の代わりに、所定期間間の呼吸数の変化量に基づいて体調を判定することもできる。なお、希望する精度に従って、呼吸数範囲を設定することもできる。
【0039】
<圧力の変化率による体調の判定>
図7は、本実施形態に係る双眼鏡100を掴む圧力の変化率により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。図7に示したように、下記のステップが含まれている。
ステップ31:圧力センサ44により、観測者が双眼鏡を掴む圧力を測定して、測定結果を圧力測定回路404に送信する。
ステップ32:圧力測定回路404は、圧力センサ44からの測定結果を受信して、前回受信された圧力に比べる今回の圧力の変化率を計算する。
ステップ33:圧力測定回路404は、計算された圧力の変化率が正常変化範囲に属するかどうかを確定する。正常変化範囲は、その変化率が±20%以下である。即ち、双眼鏡を掴む力が20%程度強くなったり弱くなったりすると、正常な体調と判定される。圧力の変化率が正常変化範囲に属すると、ステップ36を実行し、正常変化範囲に属しないと、ステップ34を実行する。
【0040】
ステップ34:圧力測定回路404は、圧力の変化率が第一変化範囲に属するかどうかを確定する。第一変化範囲は、その変化率が−20%〜−50%又は20%〜50%である。第一変化範囲に属する場合、ステップ37を実行し、第一変化範囲に属しない場合、ステップ35を実行する。
ステップ35:圧力測定回路404は、圧力の変化率が第二変化範囲に属するかどうかを確定する。第二変化範囲は、圧力の変化率が−50%以下、又は50%以上である。第二変化範囲に属する場合、ステップ8を実行し、第二変化範囲に属しない場合、測定エラーと判定して、今回の測定を終了する。
【0041】
ステップ36:圧力測定回路404は、観測者の圧力の変化率が正常変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ37:圧力測定回路404は、観測者の圧力の変化率が第一変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ38:圧力測定回路404は、観測者の圧力の変化率が第二変化範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
【0042】
<血圧による体調の判定>
図8は、本実施形態に係る双眼鏡100が血圧を測定することにより体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。図8に示したように、下記のステップが含まれている。
ステップ41:血圧センサ45により、観測者の最大血圧と最小血圧を測定して、測定結果を血圧測定回路405に送信する。
ステップ42:血圧測定回路405は、血圧センサ45からの測定結果を受信して、測定された最大及び最小血圧が正常血圧範囲に属するかどうかを確定する。正常血圧範囲は、最大血圧が100〜130mmHgで、最小血圧が60〜80mmHgである。血圧が正常血圧範囲に属すると、ステップ45を実行し、正常血圧範囲に属しないと、ステップ43を実行する。
【0043】
ステップ43:血圧測定回路405は、血圧センサ45により測定された最大及び最小血圧が第一血圧範囲に属するかどうかを確定する。第一血圧範囲は、最大血圧が130〜140mmHg又は90〜100mmHgで、最小血圧が80〜90mmHg又は50〜60mmHgである。第一血圧範囲に属する場合、ステップ46を実行し、第一血圧範囲に属しない場合、ステップ44を実行する。
ステップ44:血圧測定回路405は、血圧センサ45により測定された観測者の最大及び最小血圧が第二血圧範囲に属するかどうかを確定する。第二血圧範囲は、最大血圧が140mmHg以上又は90以下で、最小血圧が90mmHg以上又は50以下である。第二血圧範囲に属する場合、ステップ47を実行し、第二血圧範囲に属しない場合、測定エラーと判定して、今回の測定を終了する。
【0044】
ステップ45:血圧測定回路405は、観測者の血圧が正常血圧範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ46:血圧測定回路405は、観測者の血圧が第一血圧範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
ステップ47:血圧測定回路405は、観測者の血圧が第二血圧範囲にあると確定して、その確定結果を判定回路31に送信する。
【0045】
本実施例において、通常の最大及び最小血圧を基準にして体調を判定したが、観測者により異なる場合もあるので、自分の正常血圧値を入力して、この血圧値に基づいて、体調を判定することもできる。血圧の代わりに、所定期間間の最大及び最小の血圧の変化量に基づいて体調を判定することもできる。なお、希望する精度に従って、血圧範囲を設定することもできる。
【0046】
以上で、各センサ及び各測定回路について説明したが、以下、システム制御回路30のプロセスについて詳しく説明する。図9は、システム制御回路30のプロセスを示すフローチャートである。
<システム制御回路30のプロセス>
ステップ51:電源スイッチ50をオン操作することにより、中央制御回路33が起動される。
ステップ52:判定回路31は、各測定回路からの確定結果を受信して、それら確定結果を測定した年月日と対応させてメモリ34に記憶する。
【0047】
ステップ53:判定回路31は、表1に示したような体調に与える影響に従って付けられた視力、呼吸数、圧力、体温及び血圧の重み付け係数と、各測定回路からの確定結果と対応する体調確定係数とにより、観測者の現在の体調状況を判定する。
【表1】

【0048】
ステップ54:判定回路31は、図10に示したシステムの設定に従って、現在の体調状況と適応する焦点の調節(AF)及び手ぶれ補正(VR)の移動速度を判定する。図10は、本実施形態に係る観測者の体調状況と焦点の調節(AF)や手ぶれ補正(VR)の移動速度間の関係を模擬的に表示するグラフである。
【0049】
ステップ55:判定回路31は、判定された焦点の調節(AF)及び手ぶれ補正(VR)の移動速度を駆動回路32に送信する。
ステップ56:駆動回路32は、判定回路31による判定速度に基づいて、振動波モータMOを駆動する。
【0050】
ステップ57:振動波モータMOは、判定速度に従って、焦点の調節(AF)と手ぶれ補正(VR)機構を移動させる。即ち、オートフォカス機構70中のレンズを光軸方向(X軸方向)に従って、速く移動させたり遅く移動させたり、又はブレを打ち消す方向に手ぶれ補正機構80の補正レンズを速く移動させたり遅く移動させたりする。
【0051】
以下、重み付け係数と確定結果に対応する体調確定係数、及びそれらにより判定された体調と移動速度について説明する。重み付け係数は、体調の変化に関係が強い要素に重い分を付ける。
【0052】
ここで言う確定結果に対応する体調確定係数とは、各指標が正常範囲、第一範囲、又は第二範囲にあることに従って、正常体調、やや悪い体調、又は悪い体調にあるかを判断するために付けた係数である。例えば、正常範囲の係数が5で、第一範囲の係数が10で、第二範囲の係数が20であるように設定することができる。もちろん、これは一つの例で、希望する精度などに応じて、様々な形式及び数値を設定することができる。
【0053】
重み付け係数と体調確定係数により体調を判定する例を挙げると、例えば、各測定回路による確定結果が表2に示すものである時、下記の数式1のように、各指標の重み付け係数と確定結果に対応する体調確定係数とをかけた数をプラスすることにより体調パラメータを計算することができる。
【0054】
【表2】

数式1
体調パラメータ=T*C+BP*CBP+P*C+BR*CBR+V*C
、BP、P、BR、Vは夫々に体温、血圧、圧力、呼吸、及び視力の重み付け係数で、C、CBP、C、CBR、Cは、各測定回路により確定された体温、血圧、圧力、呼吸、及び視力の確定結果と対応する体調確定係数である。
【0055】
体調パラメータと移動速度間の関係を説明する。数式1により計算された最小の体調パラメータは500で、最大の体調パラメータは2000である。図10に示したように、当該体調パラメータ範囲内で、正常体調範囲、やや悪い体調範囲、及び悪い体調範囲と言う三つの範囲に分割する。なお、各体調範囲内で、また三つの範囲に分割する。その後、図10のように、体調パラメータと対応する移動速度を付けることができる。例えば、体調パラメータが500〜1000の範囲に属すると、正常体調に属し、この時、移動速度S、S、Sの何れか一つで振動波モータを駆動することができる。ここで、S<S<Sである。同じように、やや悪い体調である時、移動速度S10、S11、S12の何れか一つで振動波モータを駆動することができ、悪い体調である時、移動速度S20、S21、S22の何れか一つで振動波モータを駆動することができる。
【0056】
ここで、焦点の調節(AF)機構及び手ぶれ補正(VR)機構の移動速度は、一つのグラフにより確定したが、夫々に体調状況と対応させた異なるグラフにより、独立に移動速度を確定することもできる。なお、本実施形態で、焦点の調節(AF)機構及び手ぶれ補正(VR)機構に対して同時に調節したが、必要に応じて、何れか一つの機構に対して、調節することも可能である。
【0057】
以上の実施形態で、体温、血圧、双眼鏡を掴む圧力の変化、呼吸数、及び視力の変化を総合的に考量し、且つ測定バラツキ等も考量して、係数、三種類の体調範囲、及び三種類の移動速度を設定して、観測者の体調を確定した。しかしながら、これらの何れか一項の測定結果に基づいて、観測者の体調を簡単に確定し、この確定結果に基づいて、焦点の調節(AF)及び手ぶれ補正(VR)機構を異なる速度で移動させることができる。即ち、体温が正常範囲にあると、正常な速度で振動波モータを駆動し、体温が第一範囲に属すると、正常な速度よりやや速い速度で振動波モータを駆動し、体温が第二範囲に属すると、正常な速度より最も速い速度で振動波モータを駆動するようにすることもできる。
【0058】
なお、本実施形態の中央制御回路33は、メモリ34に記憶されているデータに対して、観測者毎のデータベースを作成する。測定された正常範囲に属する体温、血圧、圧力、呼吸数、及び視力を、次回に双眼鏡を使用する時、正常値として利用されることができる。なお、時間に従って変化する観測者の各指標の変化をモニタして、観測者毎の各指標の正常値を調整することができる。
【0059】
以上で、体温、血圧、双眼鏡を掴む圧力の変化、呼吸、及び視力の変化を説明したが、前に説明したように脈拍も追加することができる。もちろん、瞳孔の変化も、体調を確定する一つの要素として追加することもできる。
【0060】
なお、当業者であれば、シャッタースピードを速くすることにより、露光時間を短くして、手ぶれを防止することもできる。その場合、手ぶれ補正機構の補正レンズを省略して、モータによりシャッターを速く動かせたり遅く動かせたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】双眼鏡100の構成を示す斜視図である。
【図2】双眼鏡100の内部構成を示す図面である。
【図3】本発明に係る双眼鏡100の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る双眼鏡100が体温により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る双眼鏡100が視力の変化量により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。
【図6】本実施形態に係る双眼鏡100が呼吸数により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。
【図7】本実施形態に係る双眼鏡100を掴む圧力の変化率により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。
【図8】本実施形態に係る双眼鏡100が血圧により体調を判定するプロセスを示すフローチャートである。
【図9】システム制御回路30のプロセスを示すフローチャートである
【図10】本実施形態に係る観測者の体調状況と焦点の調節(AF)や手ぶれ補正(VR)の移動速度間の関係を模擬的に表示するグラフである。
【符号の説明】
【0062】
10 … 双眼部
20 … 本体
30 … システム制御回路
31 … 判定回路
32 … 駆動回路
33 … 中央制御回路
34 … メモリ
40 … 体調測定回路
401 … 視力測定回路
402 … 呼吸測定回路
403 … 温度測定回路
404 … 圧力測定回路
405 … 血圧測定回路
41 … 視力センサ
42 … 呼吸センサ
43 … 温度センサ
44 … 圧力センサ
45 … 血圧センサ
50 … 電源スイッチ
60 … 体調測定スイッチ
70 … オートフォカス機構
80 … 手ぶれ補正機構
MO … 振動波モータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構を備える観測光学系であって、
観測者の体調を測定する体調測定手段と、
前記体調測定手段により測定された測定結果に基づいて、前記焦点調節機構及び/又は前記手ぶれ補正機構を制御するシステム制御手段と、
を備えることを特徴とする観測光学系。
【請求項2】
前記システム制御手段は、前記焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構を異なる複数の速度で駆動させる駆動回路と、
前記体調測定手段の測定結果に基づいて、前記複数の速度の中から、前記焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構を駆動する速度を判定する判定回路と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の観測光学系。
【請求項3】
前記異なる速度を判定することにより、前記焦点調節機構及び/又は手ぶれ補正機構を速く駆動し、又は遅く駆動することができることを特徴とする請求項2記載の観測光学系。
【請求項4】
前記体調測定手段は、体調測定センサと、前記体調測定センサからの出力に基づいて観測者の体調を測定する体調測定回路とを有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の観測光学系。
【請求項5】
前記体調測定センサは、温度センサ、圧力センサ、血圧センサ、視力センサ及び呼吸センサからなる組から選択された少なくとも一種類のセンサからなり;
前記体調測定回路は、夫々に前記各センサと対応する温度測定回路、圧力測定回路、血圧測定回路、視力測定回路及び呼吸数測定回路からなる組から、前記各センサと対応的に選択された少なくとも一種類の測定回路からなることを特徴とする請求項4記載の観測光学系。
【請求項6】
前記観測光学系は、双眼鏡、望遠鏡、顕微鏡又はカメラであることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の観測光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−8825(P2010−8825A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169757(P2008−169757)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】