説明

角度調整方法

【課題】切り換え段数を多くすることができ、角度の微調整が可能とすると共に、強度が強く小型の角度調整金具を使用できる角度調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1アームと第2アームとを第1軸心C1 廻りに揺動可能に枢結し、最大展開状態と最大折り畳み状態との間における任意の傾斜角度に維持する角度調整方法であり、第2アームには、第1軸心C1 を中心とした円弧線に沿って複数の歯を有するギア部4を形成し、しかも、このギア部4は2枚の平行なギア板部45,45をもって構成され、第1アーム側にはくさび面8を形成し、くさび面8とギア部4との間に空間部を形成し、内方側に複数の歯を有する浮動くさび部材6を、空間部内で移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方側の部材と他方側の部材との成す角度を任意に設定できる角度調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図1の斜視図に示すような背部15と座部16とを有する座いすは、背部15の傾斜角度を調整できるよう背部15と座部16との間に角度調整機能を有する金具───角度調整金具A───を備えている。
従来のこの金具は、一方側(座部16側)と連結させた第1アームのケース部内に、他方側(背部15側)の第2アームが有するギアと、爪片とを枢支させ、この爪片のギアへの噛合により第1アームに対する第2アームの展開方向(背部15の倒れ方向)への揺動を抑止するよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
第1アームと第2アームとの間に作用する力(揺動を抑止するために必要な力)は、人間の体重を支えることとなり、非常に大きいため、従来の金具は、爪片、ギアの歯が大きくなり、そのため、ギアの歯ピッチも荒くなる。つまり、必要強度の関係で、爪片、ギアを小さくすることができなかった。
従って、爪片、ギアを収納するケース部が大きくなり、また、ギアの歯数は少なく(ピッチが大きく)角度切り換えの段数が少なく、微調整ができないというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭59−20118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、角度の切り換え段数を多くできない点である。また、構成部品が大きいため金具全体が大きくなってしまう点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る角度調整方法は、第1アームと第2アームとを第1軸心廻りに揺動可能に枢結して、該第1アームと第2アームを、最大展開状態と最大折り畳み状態との間における任意の傾斜角度に維持させる角度調整方法に於て;上記第2アームには、上記第1軸心を中心とした円弧線に沿って複数の歯を有するギア部を形成し、かつ、相互に平行な2枚のギア板部をもって上記ギア部を形成し;上記第1アーム側には、上記第1軸心を中心とした上記ギア部よりも外方側位置に、くさび面を形成して、該くさび面と、上記ギア部の外周歯面との間において空間部を形成し;内方側の面に複数の歯から成る歯面を有する浮動くさび部材を、上記空間部内に移動可能に配設して、該浮動くさび部材の該歯面の複数の歯を同時に上記ギア部の2枚の平行な上記ギア板部に噛合させると共に該浮動くさび部材の外方側の当接面を上記くさび面に当接させて、ギア部とくさび面との間に挟まれた浮動くさび部材のくさび作用により、第1アームと第2アームが第1軸心廻りに展開方向へ揺動することを抑制して、上記任意の傾斜角度に維持させるように構成し;さらに、上記第2アームは、上記円弧線に沿って複数の歯を有する上記ギア部の一端部側に押し返し突部を有し、かつ、上記ギア部の他端部側に押し出し突部を有し、上記第2アームは上記最大折り畳み状態まで揺動すると上記押し返し突部が浮動くさび部材に当接して該浮動くさび部材を折り畳み方向に押圧し、上記最大折り畳み状態からさらに折り畳み方向へ揺動させると、浮動くさび部材の上記歯面と上記ギア部との噛合状態を解除させて、浮動くさび部材を該ギア部)から離れた状態とし、第1アームと第2アームは展開方向へ揺動自在となって、最大展開状態へと戻すことができ、該最大展開状態まで展開揺動させると上記浮動くさび部材を上記押し出し突部が押し出して上記歯面と上記ギア部とを噛合状態に戻すように構成した方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の角度調整方法は、第1アームと第2アームとが展開方向へ揺動しようとする際、浮動くさび部材の外方側の当接面が第1アーム側のくさび面に当接させて、くさび作用によって第1軸心方向への圧迫力としての力が浮動くさび部材の複数の歯とギヤ部との噛合部位に作用するため、第1アームと第2アームの双方は展開方向へ揺動することが決してない。
また、ギア部の引っ掛かりのみにて揺動を抑止するのではなく、浮動くさび部材におけるくさび面との当接力とギア部との噛合と上記圧迫力とにより揺動を抑止するため、ギア部の歯が小さくても、大きな荷重を受け持つことができる。また、ギア部の歯を小さくすることで、ギア部の歯数を増やすことができ、角度の切り換え段数を多くすることが可能となる。従って、折り畳み角度の微調整が可能となる。
ギア部4が、相互に平行な2枚のギア板部45,45から成るので、浮動くさび部材6は、左右にがたつくことなく安定してギア部4に噛合して、スムースにくさび形窓部5内を移動し、誤作動が起こる虞れがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の角度調整方法を適用した座いすの斜視図である。
【図2】角度調整金具の斜視図である。
【図3】説明用の斜視図であって、(a)は角度調整金具の説明用分解斜視図で、(b)は浮動くさび部材を成形するための長尺状引抜き材の説明用の斜視図である。
【図4】浮動くさび部材とギア部とくさび形窓部を説明する説明図である。
【図5】説明用要部斜視図である。
【図6】脱落防止カバーを示す側面図であって、(a)は第1アームとの位置関係を示す側面図で、(b)は第2アーム2との位置関係を示す断面側面図である。
【図7】最大展開状態にある角度調整金具の側面図である。
【図8】任意の傾斜角度とされた角度調整金具の側面図である。
【図9】最大折り畳み状態にある角度調整金具の側面図である。
【図10】角度保持解除状態とさせる角度調整金具の側面図である。
【図11】展開方向へ第2アームを戻す状態にある角度調整金具の側面図である。
【図12】最大展開状態から角度設定を行なう動作を説明する要部側面図である。
【図13】最大折り畳み状態から展開方向へ第2アームを戻す動作を説明する要部側面図である。
【図14】第2アームを加工するための板体を示す説明用正面図である。
【図15】説明用要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る角度調整方法は、例えば、図1の斜視図に示すように、背部15と座部16とを有する座いすに適用される。即ち、背部15の傾斜角度を調整できるよう背部15と座部16との間に角度調整金具Aを配設して(角度調整を)行う。つまり、この角度調整金具Aは、角度調整機能を有する関節金具(連結金具)である。なお、この金具Aは、座いす以外にも、ソファー、ヘッドレスト、フットレスト等にも使用可能であり、また、2つの構成部材が揺動するものに組み込み可能であり、その他に、扉を揺動開閉させる棚等にも使用できる。
【0010】
図2は本発明に係る方法を行うための角度調整金具Aの斜視図であり、図3はその分解斜視図である。
この角度調整金具Aは、ケース部3を備える第1アーム1と、ケース部3にて第1アーム1と第1軸心C1 廻りに揺動可能に枢結されると共に第1軸心C1 を中心とするギア部4を備える第2アーム2と、を備える。つまり、第1軸心C1 を中心として、第1アーム1と第2アーム2とが相互揺動可能となるよう枢着されている。
【0011】
第1アーム1は、一対の対面する壁部17,17を有するケース部3と、ケース部3から延伸する第1取付部18と、を有し、第1取付部18は、図1では差し込み固定ができるよう円筒形状とされている。
また、第2アーム2は、相互に平行な2枚のギア板部45,45から成り上記ケース部3の内部に収容状態とされるギア部4と、ギア部4から延伸する第2取付部19と、を有し、第2取付部19は、図1では差し込み固定ができるよう円筒形状とされている。
【0012】
この第2アーム2は、図14に示したように、左右対称の2枚のギア板部45,45を有する一枚の板体40を、ギア板部45,45が所定間隔をもって平行となるように折曲加工して成る。ギア板部45,45は、その略中央に、貫通孔22,22が設けられ、板体40を折曲加工した場合に、貫通孔22,22が、第1軸心C1 を中心とする軸孔を構成する。板体40は、鉄鋼材等から成る。
【0013】
ギア部4は、第1軸心C1 を中心とした円弧線に沿って形成されており、図3に示すように、四半円(90°)を少し(10〜30°)越える範囲(100〜120°)にギア(歯)を有する。なお、第1・第2取付部18,19の形状は、ボルトによる連結可能な構造や他の構造でもよい。
【0014】
そして、図1においては、第1アーム1が有する第1取付部18に座部16のフレームが取着され、第2アーム2が有する第2取付部19に背部15のフレームが取着され、背部15が座部16に対して揺動し、背部15がリクライニングしかつ任意の傾斜角度にて保持される。
【0015】
また、図2と図3に示したように、第1アーム1のケース部3が有する壁部17,17夫々の中央部に、貫通孔21,21が設けられている。
そして、第1アーム1と第2アーム2は、軸部材20により枢結される。即ち、第2アーム2のギア部4を、第1アーム1の壁部17,17に挟んだ状態として、軸部材20を、第1アーム1の貫通孔21,21・第2アーム2の貫通孔22,22に挿通させてかしめ加工することで、第2アーム2が、第1アーム1に対し第1軸心C1 廻りに揺動可能となる。
【0016】
さらに、図3,図4及び図5に示したように、角度調整金具Aは、第1アーム1のケース部3に形成されるくさび形窓部5を備えている。くさび形窓部5は、ケース部3の壁部17,17に夫々同一形状で形成されており、ケース部3を貫通状としている。
くさび形窓部5は、第1軸心C1 側に向かって凹となるよう弧状に形成された貫通孔であり、第1軸心C1 を中心側とした場合のこの貫通孔の外方側の面にはギア部4より外方側位置となる円弧状のくさび面8が形成され、内方側位置の面には第1軸心C1 を中心としギア部4よりも小径の円弧面23が形成されている。従って、ギア部4の歯は、くさび形窓部5から見える状態となる。
【0017】
くさび面8は、第1軸心C1 と偏心する第2軸心C2 を中心とした円弧形状に形成されており、図4に示すように、第1アーム1を左手側とし第2アーム2を右手側とした場合に、くさび形窓部5は時計廻り方向に縮小する───くさび面8がギア部4に接近していく───くさび形の孔となる。
つまり、外方側のくさび面8とギア部4の外周歯面との間において空間部が形成され、その空間部に後述する浮動くさび部材6が配設される。
【0018】
さらに、角度調整金具Aは浮動くさび部材6を備えており、この部材6は、くさび形窓部5内にて移動可能に配設され、かつ、一面側(内方側の面)がギア部4に噛合可能な歯面7とされ、他面側(外方側の面)がくさび形窓部5の外方側のくさび面8に当接する当接面9とされている。
当接面9は、くさび形窓部5のくさび面8の曲率半径と(略)同一とされている。歯面7はギア部4のピッチ円の曲率半径と同一となる面に複数の歯が形成されており、これら歯が同時に全てギア部4と噛み合うようされている。
【0019】
くさび形窓部5は、第2アーム2にて下方に押し返された浮動くさび部材6を収容して歯面7とギア部4との噛合状態を解除させる退避空間部11を、有する。
かつ、第2アーム2は、浮動くさび部材6を折り畳み方向に押圧する押し返し突部10を、ギア部4の一端側(上部側)に有し、かつ、くさび形窓部5の退避空間部11に収容された浮動くさび部材6を押し出す押し出し突部12を、ギア部4の他端側(下部側)に、有する。
【0020】
また、浮動くさび部材6の幅寸法はケース部3の幅寸法と略同一とされている。つまり、浮動くさび部材6の当接面9の両側縁部の面がくさび形窓部5(壁部17,17)のくさび面8に当接可能となる。
この浮動くさび部材6は、図3(b)に示したような鉄鋼材から成る長尺状引抜き材43を、所定長さに切断して、形成される。
【0021】
また、第1アーム1のケース部3は、浮動くさび部材6を第2アーム2のギア部4へ押し付ける方向に弾発付勢する弾発部材13を、有している。弾発部材13は、鋼線材をU字状に折り返して形成したバネ部材であり、両端部が壁部17,17間のケース部3に固定され中央部が浮動くさび部材6の当接面9の中央領域に当接する。そして、浮動くさび部材6をギア部4へ弾発付勢している(図5参照)。
【0022】
次に、図2,図3,図6及び図15に示したように、角度調整金具Aは、浮動くさび部材6がくさび形窓部5から脱落するのを防止する脱落防止カバー33を、具備する。この脱落防止カバー33は、ケース部3を左右外側から包囲するように配設されるものであり、正面視に於て、上方開口状横倒略コの字状の薄板体である。
具体的には、脱落防止カバー33は、左右側壁34,34と、ケース部3を下方から包囲するように左右側壁34,34の下端縁を橋絡する底壁35と、底壁35の後端に連設されて後上方へ弯曲状に形成されたコーナー壁部36と、を有する。
コーナー壁部36は、その上端が、第2アーム2が略 180°展開した状態となった際にその下辺部に当接しない高さとなるように、形成されている(図6(b)参照)。この構成により、コーナー壁部36は、第2アーム2が展開状態に揺動する妨げにならない。
【0023】
さらに、各側壁34は、ケース部3のくさび形窓部5に対応する位置に、ケース部3の壁部17の外面との間に僅かな隙間を形成する離間面部34aが、小段差部をもって形成される。この離間面部34aにより、浮動くさび部材6の左右端面と、左右側壁34,34との間の摩擦力が低く、浮動くさび部材6はくさび形窓部5内をスムースに移動可能となる。
また、各側壁34は、上記貫通孔21,22に対応する位置に、軸部材20を通すための孔部37が、設けられている。
【0024】
次に、図2,図3,図7〜図9に示したように、角度調整金具Aは、ギア部4と浮動くさび部材6とを上方から包囲する異物侵入防止部材26を、有する。この異物侵入防止部材26は、第1アーム1の壁部17,17間にて、第1軸心C1 廻りに揺動自在に枢着される。
具体的には、異物侵入防止部材26は、前後方向帯板状傘頭部29と、傘頭部29の下方に延設された平板状揺動板片30とを有する。揺動板片30は、先端突部32側が前方下傾状となるように、側面視くの字形状に形成されると共に、軸部材20を通すための孔部31が、中間位置に貫設されている。
傘頭部29の横幅は、第1アーム1の壁部17,17の間隔より僅かに小さく設定される。
異物侵入防止部材26は、上記揺動板片30の先端突部32が浮動くさび部材6の下方に配設された状態で、揺動するので(図7〜図9参照)、第2アーム2が揺動する過程において、傘頭部29は、ギア部4・浮動くさび部材6を上方から常時包囲して、異物の侵入を防止する。
【0025】
次に、折り畳み・展開揺動動作する第1アーム1と第2アーム2の角度調整機能(角度調整方法)について説明する。
図7〜図11は、その動作を説明する角度調整金具Aの正面図であり、説明のためにケース部3の一方側(手前側)の壁部17を途中から無くした(省略した)図としている。
また、図12と図13は、ギア部4とくさび形窓部5内の浮動くさび部材6の動作を説明する要部正面図である。
【0026】
第1アーム1と第2アーム2とは、相互が離れた最大展開状態(図7)───第1アーム1と第2アーム2とが直線状(180°の位相)となる状態───から徐々に第2アーム2が第1軸心C1 廻りに揺動し、第1アーム1との間で任意の折り畳み角度で折り畳み状(傾斜状)となり(図8)、相互が略直角となる所定の最大折り畳み状態となる(図9)。
【0027】
図12と図13と共に説明すると、図12(a)は図7の状態に対応し、浮動くさび部材6はギア部4に噛み合うと共にくさび面8に当接し、第2アーム2は図7において時計廻りにこれ以上揺動しない(ロックがかかる)。
この状態から図8に示すように第2アーム2を起立させる方向へ揺動させると、図12(b)に示すように、弾発部材13(図5参照)にてギア部4へ弾発付勢され噛合する浮動くさび部材6の当接面9は、窓部5のくさび面8から離れて、くさび面8との間にわずかな隙間dが生じる。そして、第2アーム2の起立動作により図12(c)に示すように、浮動くさび部材6の誘導勾配面(段付き面)27がくさび形窓部5の当り用段付部28と当接状となって、隙間dにより浮動くさび部材6の歯面7がギア部4から離れることができ、浮動くさび部材6の歯面7がギア部4をカチカチと音をたて乗り越えることができる。
【0028】
この浮動くさび部材6の誘導勾配面27は、浮動くさび部材6の歯面7の後縁部に形成され、くさび形窓部5の段付部28は、くさび形窓部5の内方側の円弧面23に上記勾配面27と当接可能となるよう形成されている。
【0029】
したがって、浮動くさび部材6は、歯面7がギア部4に噛合し、かつ、当接面9がくさび面8に当接し、ギア部4とくさび面8との間に挟まれる浮動くさび部材6のくさび作用により、第2アーム2が第1アーム1に対して展開方向へ揺動するのを抑制している。
つまり、任意の折り畳み角度(傾斜角度)に第1アーム1と第2アーム2とを維持させることができる。
【0030】
そして、図13(d)に示すように、第2アーム2は、第1アーム1に対して所定折り畳み角度を越えて最大折り畳み状態(図9)まで揺動すると、押し返し突部10が浮動くさび部材6を折り畳み方向に押圧する。
つまり、ギア部4(歯形成部)の一端部側に押し返し突部10が形成されており、この状態で、押し返し突部10が浮動くさび部材6の歯面7の前縁部に当接する。
【0031】
そして、図10と図13(e)に示すように、第2アーム2を最大折り畳み状態からさらに折り畳み方向へ揺動させると、押し返し突部10にて押し返された浮動くさび部材6(誘導勾配面27)が、上記段付部28を乗り越え、くさび形窓部5が有する退避空間部11に収容され、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4との噛合状態を解除させる。つまり、退避空間部11に収容された浮動くさび部材6はギア部4から離れた状態にある。
【0032】
従って、第2アーム2は、第1アーム1に対してフリー(揺動自在)となり図11のように、展開方向へ揺動自在となり、図7の最大展開状態へと戻すことができる。
そして、第2アーム2は、第1アーム1に対して所定角度(180°)の最大展開状態まで展開揺動させると、図13(f)に示すように、退避空間部11に収容された浮動くさび部材6を押し出して歯面7とギア部4とを噛合状態とさせる押し出し突部12を有する。
【0033】
押し出し突部12は、ギア部4の(押し返し突部10が形成された一端部側と反対側の)他端部側に形成されており、最大展開状態を得ると、突部12が浮動くさび部材6の誘導勾配面27を押圧して、浮動くさび部材6を退避空間部11から押出し、図12(a)の状態へと戻すことができる。
【0034】
つまり、くさび形窓部5内における浮動くさび部材6の動作は、最大展開状態から最大折り畳み状態までは、浮動くさび部材6は、ギア部4とくさび面8とに挟まれてくさび作用により、くさび面8側の第1アーム1とギア部4側の第2アーム2とを任意の折り畳み角度(傾斜角度)に調整可能でその角度を維持させることができ、最大折り畳み状態を越えると、浮動くさび部材6は押し返し突部10により押圧されてくさび形窓部5の退避空間部11内に収容され、第1アーム1と第2アーム2とは揺動自由状態となる。
そして、最大展開状態に戻されると、浮動くさび部材6は押し出し突部12により押圧されて退避空間部11から押し出され、ギア部4と再び噛合状態となる。
【0035】
また、座部の前部が斜め上方に浮くように座いすを傾けて座って、角度調整金具Aが図15に示したような状態になった場合、脱落防止カバー33のコーナー壁部36が、床面Fに対し、緩やかな弯曲面をもって当接するので、床面Fに作用する面圧が過大になるのが防止され、床面Fの損傷が防がれる。
なお、図示省略するが、座いすが、角度調整金具Aをクッション材や被覆布等で包囲するように、製造された場合に於ても、金具Aが上記被覆布等に作用する面圧が過大になるのを防止でき、被覆布が破れる等の破損が起こりにくく、長持ちさせることができる。
【0036】
以上のように、角度調整金具は、ケース部3を備える第1アーム1と、ケース部3にて第1アーム1と第1軸心C1 廻りに揺動可能に枢結されると共に相互に平行な2枚のギア板部45,45から成るギア部4を備える第2アーム2と、第1アーム1のケース部3に形成されるくさび形窓部5と、くさび形窓部5内にて移動可能に配設されかつ一面側がギア部4に噛合可能な歯面7とされ他面側がくさび形窓部5の外方側のくさび面8に当接する当接面9とされて歯面7がギア部4に噛合しかつ当接面9がくさび面8に当接し第2アーム2が第1アーム1に対して展開方向へ揺動するのを抑制する浮動くさび部材6と、を具備するので、第1アーム1と第2アーム2とが展開方向へ揺動しようとする際、浮動くさび部材6の外方側の当接面9がくさび形窓部5のくさび面8に当接し、かつ、第2アーム2のギア部4に噛合する浮動くさび部材6によりギア部4の中心に向かう圧迫力として作用するため、第1アーム1と第2アーム2の双方は展開方向へ揺動することが決してない。
【0037】
また、ギア部4の引っ掛かりのみにて揺動を抑止するのではなく、浮動くさび部材6におけるくさび面8との当接力と、ギア部4との噛合と、上記圧迫力と、により揺動を抑止するため、ギア部4の歯(モジュール)は小さくても、大きな荷重を受け持つことができ、十分な強度を有するものとできる。また、ギア部4の歯を小さくすることで、ギア部4の歯数を増やすことができ、角度の切り換え段数を多くすることが可能となる。従って、折り畳み角度のピッチが小さくなって微調整が行なえる。つまり、座いすやソファーに適用した場合、快適な傾斜角度の背部15が得られる。
しかも、ギア部4が、相互に平行な2枚のギア板部45,45から成るので、浮動くさび部材6は、左右にがたつくことなく安定してギア部4に噛合して、スムースにくさび形窓部5内を移動し、誤作動が起こる虞れがない。
さらに、ケース部3を小さく構成させることができ金具全体の小型化が図れ、座いすやソファーに使用し、カバー内に金具Aを配設した場合に、カバーが破れるおそれがない。
【0038】
また、第2アーム2は、左右対称の2枚のギア板部45,45を有する一枚の板体40を、ギア板部45,45が所定間隔をもって平行となるように折曲加工して成るので、部品点数を少なくすることができ、成形の手間が少なくて済む。
【0039】
また、ケース部3内にて第1軸心C1 廻りに揺動可能に枢着され、第2アーム2のギア部4を上方から覆うように配設された異物侵入防止部材26を、具備するので、ギア部4と浮動くさび部材6との間に、ゴミ等の異物が侵入して動作しなくなるのを、効率よく防ぐことができ、故障の発生を防ぐことができる。
【0040】
また、浮動くさび部材6は、鉄鋼材から成る長尺状引抜き材43を切断して、成形されるので、成形が容易となり、大量生産が可能である。
【0041】
また、ケース部3を左右外側から包囲するように配設され、浮動くさび部材6がくさび形窓部5から脱落するのを防止する脱落防止カバー33を、具備するので、使用に際し、浮動くさび部材6がくさび形窓部5から脱落するのが確実に防がれ、浮動くさび部材6の誤動作や、故障の発生を防ぐことができる。
【0042】
また、脱落防止カバー33は、左右側壁34,34と、ケース部3を下方から包囲するように左右側壁34,34の下端縁を橋絡する底壁35と、底壁35の後端に連設されて後上方へ弯曲状に形成されたコーナー壁部36と、を有するので、座部16の前部が斜め上方に浮くように座いすを傾けて座った場合でも、コーナー壁部36が床面Fに対し、緩やかな面をもって当接し、床面Fに作用する面圧が過大になるのが防止できて、床面Fの損傷を抑えることができる。
あるいは、座いすが、金具Aをクッション材や被覆布等で包囲されて、製造された場合は、被覆布に作用する面圧が過大になるのが防止され、被覆布等の破損が発生しにくく、長持ちさせることができる。
【0043】
また、第2アーム2は、第1アーム1に対して所定折り畳み角度を越えて揺動すると浮動くさび部材6を折り畳み方向に押圧する押し返し突部10を有し、くさび形窓部5は、押し返し突部10にて押し返された浮動くさび部材6を収容して歯面7とギア部4との噛合状態を解除させる退避空間部11を有し、さらに、第2アーム2は、第1アーム1に対して展開揺動させると退避空間部11に収容された浮動くさび部材6を押し出して歯面7とギア部4とを噛合状態とさせる押し出し突部12を有するので、浮動くさび部材6のくさび形窓部5内における移動により、ギア部4との噛合を解除させたり、再び噛合可能状態とさせることができ、第2アーム2と第1アーム1との角度調整動作が極めて簡単である。
【0044】
また、ギア部4は、第1軸心C1 を中心として形成され、くさび形窓部5のくさび面8は、第1軸心C1 と偏心する第2軸心C2 を中心とした円弧形状に形成されているので、効果的なくさび作用を発揮させ、また、浮動くさび部材6の移動、ギア部4との噛合・噛合解除動作がスムーズとなる。
【符号の説明】
【0045】
1 第1アーム
2 第2アーム
4 ギア部
6 浮動くさび部材
7 歯面
8 くさび面
9 当接面
10 押し返し突部
12 押し出し突部
45 ギア板部
1 第1軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アーム(1)と第2アーム(2)とを第1軸心(C1 )廻りに揺動可能に枢結して、該第1アーム(1)と第2アーム(2)を、最大展開状態と最大折り畳み状態との間における任意の傾斜角度に維持させる角度調整方法に於て、
上記第2アーム(2)には、上記第1軸心(C1 )を中心とした円弧線に沿って複数の歯を有するギア部(4)を形成し、かつ、相互に平行な2枚のギア板部(45)(45)をもって上記ギア部(4)を形成し、
上記第1アーム(1)側には、上記第1軸心(C1 )を中心とした上記ギア部(4)よりも外方側位置に、くさび面(8)を形成して、該くさび面(8)と、上記ギア部(4)の外周歯面との間において空間部を形成し、
内方側の面に複数の歯から成る歯面(7)を有する浮動くさび部材(6)を、上記空間部内に移動可能に配設して、該浮動くさび部材(6)の該歯面(7)の複数の歯を同時に上記ギア部(4)の2枚の平行な上記ギア板部(45)(45)に噛合させると共に該浮動くさび部材(6)の外方側の当接面(9)を上記くさび面(8)に当接させて、ギア部(4)とくさび面(8)との間に挟まれた浮動くさび部材(6)のくさび作用により、第1アーム(1)と第2アーム(2)が第1軸心(C1 )廻りに展開方向へ揺動することを抑制して、上記任意の傾斜角度に維持させるように構成し、
さらに、上記第2アーム(2)は、上記円弧線に沿って複数の歯を有する上記ギア部(4)の一端部側に押し返し突部(10)を有し、かつ、上記ギア部(4)の他端部側に押し出し突部(12)を有し、上記第2アーム(2)は上記最大折り畳み状態まで揺動すると上記押し返し突部(10)が浮動くさび部材(6)に当接して該浮動くさび部材(6)を折り畳み方向に押圧し、上記最大折り畳み状態からさらに折り畳み方向へ揺動させると、浮動くさび部材(6)の上記歯面(7)と上記ギア部(4)との噛合状態を解除させて、浮動くさび部材(6)を該ギア部(4)から離れた状態とし、第1アーム(1)と第2アーム(2)は展開方向へ揺動自在となって、最大展開状態へと戻すことができ、該最大展開状態まで展開揺動させると上記浮動くさび部材(6)を上記押し出し突部(12)が押し出して上記歯面(7)と上記ギア部(4)とを噛合状態に戻すように構成したことを特徴とする角度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−205922(P2012−205922A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154639(P2012−154639)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2010−142326(P2010−142326)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(503315654)
【Fターム(参考)】