説明

角度調整金具及び角度調整金具セット

【課題】多くの用途に適用可能な、コンパクトで取り付けやすい角度調整金具を提供する。
【解決手段】中央部に非円形の貫孔部20を有する円盤型回転体4と、回転体4を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材21,22と、貫孔部20に対応する位置に貫通孔
25a,25aを有すると共に挟持板部材21,22を左右から被覆する一対のカバー部材25,25とを、有する固定平盤体2を、備え、固定平盤体2は、回転体4を一方向へ回転可能とし、かつ、逆方向への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構3を内有しており、かつ、貫孔部20に対して左右いずれからでも回転軸1を嵌着可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角度調整金具及び角度調整金具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの部材を揺動可能に連結し、所定角度で調整可能とする角度調整金具が広く使用されている。
本発明者は、かつて、この種の角度調整金具に関して多くの発明を提案してきた。例えば、特許文献1記載の角度調整金具は、図12の組立図と図13の分解図に示すように、固定相手部材に取着される固定アーム101と、揺動する相手部材に取着される揺動アーム102とを、備えている。揺動アーム102は、固定アーム101に形成された2枚の平行な挟持板部103,103間に装入され、揺動自在に枢結されている。また、揺動アーム102は、外歯状のギア部104を有し、挟持板部103,103のくさび形窓部105内に配設された浮動くさび部材106のくさび作用により、一方向への揺動を可能とし、かつ、逆方向への揺動を阻止して所定多段階の角度で保持できるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4296223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の角度調整金具100は、揺動部材の角度を保持する際、固定アーム101・揺動アーム102の基端部位に過大な曲げ力が作用して、変形してしまう虞れがあった。よって、固定アーム101の厚さ寸法t及び揺動アーム102の厚さ寸法tを、ある程度の強度が確保できる大きさに設定する必要があり、薄型に設計することができなかった。角度調整金具100を固定相手部材の内部に取り付けると、膨らみが生じてデザイン性が損なわれるという問題があった。
また、固定アーム101・揺動アーム102の揺動開始角度と揺動終了角度は、設計時に定められ、各角度を変更することができないという欠点があった。つまり、座椅子に用いられる場合ならば、それ専用として設計され、用途が限定されている。よって、用途が異なる製品に適用するには、求められる揺動開始角度と揺動終了角度に応じて、新たな設計及び作製を要するという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題点を解消した角度調整金具及び角度調整金具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る角度調整金具は、中央部に非円形の貫孔部を有する円盤型回転体と、該回転体を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材と、上記貫孔部に対応する位置に貫通孔を有すると共に上記挟持板部材を左右から被覆する一対のカバー部材とを、有する固定平盤体を、備え、該固定平盤体は、上記回転体を一方向へ回転可能とし、かつ、逆方向への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構を内有しており、かつ、上記貫孔部に対して左右いずれからでも回転軸を嵌着可能としたものである。
【0007】
また、相手部材に固着される固定平盤体と、該固定平盤体に挿着される回転軸とを、備え、上記固定平盤体は、中央部に非円形の貫孔部を有する円盤型回転体と、該回転体を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材と、上記貫孔部に対応する位置に貫通孔を有すると共に上記挟持板部材を左右から被覆する一対のカバー部材とを、有し、かつ、上記回転体を一方向へ回転可能とし、かつ、逆方向への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構を内有しており、上記回転軸は、上記貫孔部に対して左右いずれからでも嵌着可能であって、かつ、非円形の嵌合部を有するものである。
【0008】
また、本発明に係る角度調整金具セットは、左右の相手部材に固着される一対の固定平盤体と、各該固定平盤体に挿着される回転軸とを、備え、上記固定平盤体は、中央部に非円形の貫孔部を有する円盤型回転体と、該回転体を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材と、上記貫孔部に対応する位置に貫通孔を有すると共に上記挟持板部材を左右から被覆する一対のカバー部材とを、有し、かつ、上記回転体を一方向へ回転可能とし、かつ、逆方向への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構を内有しており、しかも、上記一対の固定平盤体を左右共用部品として、左右の相手部材に左右対称に、かつ、上記貫孔部の軸心を同一線上として固着し、上記回転軸は、各上記固定平盤体の貫通孔に対して相反する方向から嵌着され、かつ、非円形の嵌合部を有するものである。
【0009】
また、上記固定平盤体は、上記挟持板部材を連結する内部リベットを有し、かつ、上記挟持板部材を包囲状として上記カバー部材を連結する外部リベットを有しているものである。
また、上記外部リベットは、上記固定平盤体の左右外側面から突出しないように取着されているものである。
また、上記固定平盤体は、側面視矩形状に形成され、各角部の近傍に取付孔部を貫設しているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の角度調整金具によれば、固定平盤体の貫通孔に回転軸を差し換えるのみで、固定平盤体を全く同一の部品で左右共用できる。また、回転体及び挟持板部材に掛かる応力を分散させて軽減することができ、固定平盤体をコンパクトかつ薄型のユニットとして設計することが可能である。しかも、使用用途に応じて、回転軸の回転開始角度と回転終了角度の調整を容易に行なうことができる。これによって、適用する製品の種類や使用条件が異なる場合であっても、簡単に対応でき、使用用途を拡大し、製造コストの低減、及び、在庫管理の容易化、流通の簡略化を図り得る。しかも、部品点数が少なく、製作が容易である。
【0011】
また、本発明の角度調整金具セットによれば、固定平盤体を全く同一の部品で左右共用できる。また、回転体及び挟持板部材に掛かる応力を分散させて軽減することができ、固定平盤体をコンパクトかつ薄型のユニットとして設計することが可能である。しかも、使用用途に応じて、回転軸の回転開始角度と回転終了角度の調整を容易に行なうことができる。これによって、適用する製品の種類や使用条件が異なる場合であっても、簡単に対応でき、使用用途を拡大し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る角度調整金具の実施の一形態を示した一部破断側面図である。
【図2】カバー部材を取り付ける前の固定平盤体の半製品を示した斜視図である。
【図3】固定平盤体の一例を示した斜視図である。
【図4】本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットを示した斜視図である。
【図5】本発明の角度調整金具の分解図である。
【図6】角度調整金具の正面図である。
【図7】角度調整金具の断面平面図である。
【図8】本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットの使用状態を示した斜視図である。
【図9】本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットの他の使用例を示した断面側面図である。
【図10】本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットの別の使用例を示した断面側面図である。
【図11】角度調整金具の作用を説明する要部拡大図である。
【図12】従来の角度調整金具を示した組立図である。
【図13】従来の角度調整金具を示した分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1〜図3、及び、図5の分解図に示すように、本発明の角度調整金具は、中央部に非円形の貫孔部20を有する円盤型回転体4と、回転体4を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材21,22と、貫孔部20に対応する位置に貫通孔25a,25aを有すると共に挟持板部材21,22を左右から被覆する一対のカバー部材25,25とを、有する固定平盤体2を、備えている。固定平盤体2は、回転体4を一方向Aへ回転可能とし、かつ、逆方向Bへの回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構3を内有している。
貫孔部20は、断面形状が軸心Lを中心とする正六角形状に形成されている。貫孔部20は、固定平盤体2の中央位置に配設され、固定平盤体2を左右方向に貫通している。
【0014】
固定平盤体2は、挟持板部材21,22を連結する内部リベット11,11を有し、かつ、挟持板部材21,22を包囲状としてカバー部材25,25を連結する外部リベット12,12を有している。
固定平盤体2は、挟持板部材21,22間に回転体4を回転自在に挟持した状態で、内部リベット11,11を挿通してカシメ加工することで一体化された半製品19とし、その後、半製品19にカバー部材25,25を被せて外部リベット12,12を挿通してカシメ加工し、一体状のユニットとして組立てられている。カバー部材25,25は、固定平盤体2内部の角度調節機構3に異物が噛み込むのを防止する防塵用として、かつ、後述の浮動くさび部材6,6を保持する脱落防止用として設けられている。
外部リベット12,12は、カバー部材25,25の凹窪部25b,25bの底部に貫設した連結孔部27,27に挿通して固着され、固定平盤体2の左右外側面2a,2bから突出しないように取着されている。
固定平盤体2は、側面視矩形状に形成され、各角部26の近傍に、固定用取付ボルト13…を挿通するための取付孔部18を貫設している。
【0015】
図4〜図6に示すように、本発明の角度調整金具は、固定平盤体2の貫孔部20に対して左右いずれからでも嵌着可能であって、非円形の嵌合部10を有する回転軸1を具備している。この非円形の嵌合部10が非円形の貫孔部20に嵌着されて相互に非回転状態となる。
回転軸1は、貫孔部20に対して係脱自在に挿着されている。回転軸1は、先端1a側を貫孔部20に挿通可能な断面略正方形状の胴体部15とし、基端1bに抜止め用の外鍔部14を備えている。嵌合部10は、断面正六角形状に形成され、回転軸1の基端1b寄りに設けられている。回転軸1は、回転体4と一体として回転し、回転軸1の回転軸心Cと貫孔部20の軸心Lとが同一線状に重なるように挿入されている。回転軸1は、貫孔部20に嵌入された状態で、ワッシャ28と抜止め部材29が取付けられる。このようにして、一方向Aへ回転可能とし、かつ、逆方向Bへの回転を多段階で阻止されるように固定平盤体2に挿着されている。
【0016】
また、図4に於て、本発明は、左右一対の固定平盤体2,2と、各固定平盤体2に挿着される回転軸1とを、備え、一組の角度調整金具から構成される角度調整金具セットとして、使用されるのが好ましい。
一対の固定平盤体2,2は、左右共用部品として、左右対称に配設され、かつ、貫孔部20,20の軸心L,Lを同一線上として固定相手部材に(図8に示すように)固着している。回転軸1は、各固定平盤体2の貫孔部20に対して相反する方向から嵌着されている。
左右の固定平盤体2,2は、相互に同一形状・同一構造であり、(全く同一の2つの部品をもって、)共用が可能である。左右の回転軸1,1は、同一の回転軸心C廻りに回転自在であって、回転可能方向A及び回転阻止方向Bが相互に一致している(図8参照)。
【0017】
図8〜図10は、本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットの使用状態を示した図である。
図8に示すように、本発明の角度調整金具セットは、例えば、ソファSに適用され、座部Sに固定された相手部材F,Fに対して、図中2点鎖線で示す背もたれ部Sを揺動自在として枢支している。一対の固定平盤体2,2は、左右の相手部材F,Fの内側面に左右対称に固着されている。固定平盤体2は、相手部材Fに対して、4つの取付ボルト13…をもって強固に固着されている。左右の固定平盤体2,2に、内側に突出状として回転軸1が嵌着されている。回転軸1,1は、背もたれ部Sの左右両側面に予め形成された(図示省略の)取付金具の孔部に挿入状に固着され、背もたれ部Sを、一方向Aへ揺動可能とし、かつ、逆方向Bへの揺動を多段階で阻止している。つまり、背もたれ部Sは、最終傾倒状態(水平姿勢)から所望の角度だけ前方(一方向A)に揺動させ、そこから後方(逆方向B)に揺動するのを阻止されており、所望の角度にて姿勢が保持される。
次に、図9に示すように、本発明の角度調整金具を上下揺動式扉Dに適用した場合について説明すると、固定平盤体2は、固定側の相手部材Fに固着され、回転軸1は、扉Dの側面に挿入取着され、扉Dを上下方向に揺動自在である。扉Dは、最終閉鎖状態となる垂直姿勢から所望の角度だけ上方(一方向A)に揺動させ、そこから下方(逆方向B)に揺動するのを阻止されており、所望の角度にて姿勢が保持されるように取付けられている各種の開閉戸や開閉窓、あるいは、車のリアゲート等に適用可能であることを示す。
また、図10に示すように、本発明の角度調整金具を車のボンネットに適用する場合は、車のボディを固定用の相手部材Fとして固定平盤体2を固着している。ボンネットEには、回転軸1が固着(取着)される。ボンネットEは、最終閉鎖状態となる水平姿勢から所望の角度だけ上方(一方向A)に揺動させ、そこから下方(逆方向B)に揺動するのを阻止されており、所望の角度にて姿勢が保持されるように取付けられている。この図10の構成を物品収納庫の扉に応用することもできる。
【0018】
ここで、固定平盤体2について説明を加えると、図1及び図5に示すように、固定平盤体2は、角度調節機構3として、回転体4の外周面に貫孔部20の軸心Lを対称軸として180度の回転対称位置に配設した外歯状の凹凸ギア歯面40,40と、挟持板部材21,22に貫孔部20の軸心Lを対称軸として180度の回転対称位置に貫設した一対のくさび形窓部5,5と、一面側に回転体4の凹凸ギア歯面40に噛合可能な歯面7を有すると共に他面側にくさび形窓部5の外方側のくさび面8に当接する当接面9を有する一対の浮動くさび部材6,6と、浮動くさび部材6,6を回転体4へ押し付ける方向に弾発付勢する弾発部材30,30とを、備えている。浮動くさび部材6は、左右のくさび形窓部5,5に挿入され、くさび形窓部5内を移動可能に配設されている。角度調節機構3は、各浮動くさび部材6の一面側の歯面7が凹凸ギア歯面40に噛合し、かつ、他面側の当接面9がくさび形窓部5のくさび面8に当接し、回転体4を回転対称位置から挟持して回転をバランス良く規制し、回転体4が一方向Aへ回転するのを抑制している。
【0019】
回転体4は、中心角度が180度未満の円弧状範囲にわたって凹凸ギア歯面40を配設している。凹凸ギア歯面40の配設される範囲の円弧上に於て、回転体4の回転可能方向Aから見て後方に噛合解除用押圧凸部43が立設され、前方に噛合復元用押出凸部44が立設されている。
また、図1と図7に示すように、回転体4は、貫孔部20の軸心Lを中心とする円環状の低突隆部41,42を、左右両側面4a,4bから突設している。左右の低突隆部41,42は、貫孔部20の軸心Lを中心とする摺接外周面41a,42aの半径R,Rが、互いに異なるように形成されている。さらに、回転体4に於て、凹凸ギア歯面40のギア半径Rに対し、摺接外周面41a,42aの半径R,Rを、60%〜80%に設定している。凹凸ギア歯面40のギア半径Rに対し、摺接外周面41a,42aの半径R,Rを、60%より小さく設定した場合には、回転体4の凹凸ギア歯面40に対する軸としての低突隆部41,42が小径となるため、接触面圧が過大となって、早期摩耗を生じ、凹凸ギア歯面40の相互噛合の不良や折損、異常摩耗を発生する虞れがある。また、凹凸ギア歯面40のギア半径Rに対し、摺接外周面41a,42aの半径R,Rが、80%を越えると、軸受としての挟持板部材21,22の強度が低下し、不都合である。
挟持板部材21,22は、中央位置に、回転体4の低突隆部41,42を嵌着可能な円形支持孔23,24が貫設されている。一方の挟持板部材21には、一方側の低突隆部41に対応する円形支持孔23が形成され、他方の挟持板部材22には、反対側の低突隆部42に対応する円形支持孔24が形成されている。つまり、円形支持孔23,24は、互いに異なる摺接外周面41a,42aの半径R,Rに対応して、相互に異なる口径に設定されている。この構成により、回転体4の取付方向が常に一定となり、組立てミスを防止し得る。回転体4は、摺接外周面41a,42aを摺動可能として、低突隆部41,42を円形支持孔23,24に枢着し、挟持板部材21,22に回転自在に保持されている。
【0020】
図1、図2及び図5に示すように、挟持板部材21,22には、内部リベット11,11を挿通するための第1陥没孔部16,16が2箇所に貫設され、かつ、外部リベット12,12を挿通するための第2陥没孔部17,17が2箇所に貫設されている。第1陥没孔部16,16及び第2陥没孔部17,17は、挟持板部材21,22の左右外側面から凹状に落ち込んでいる。内部リベット11,11は、挟持板部材21,22の左右外側面から突出しないように取着されている。
くさび形窓部5は、貫孔部20の軸心Lを中心として内側に凹となるように形成されている。くさび形窓部5は、外方側を円弧状のくさび面8とし、浮動くさび部材6が回転体4との噛合を解除した状態で収容可能な退避空間部31を有し、内方側に浮動くさび部材6を誘導する誘導段付部32を突設している。
浮動くさび部材6は、誘導段付部32に当接して回転体4から離間する方向へ自らを誘導する勾配面33を、一面側の歯面7の後縁部に形成している。
弾発部材30は、左右の挟持板部材21,22のいずれかに固着され、回転体4とくさび形窓部5のくさび面8との間に介在する浮動くさび部材6を回転体4に押し付ける方向に弾発付勢するように配設されている。
【0021】
上述した本発明の角度調整金具及び角度調整金具セットの作用について説明する。
図8に示すように、固定平盤体2,2をソファSの座部Sに固定された相手部材F,Fに固着し、各固定平盤体2から内側に突出した回転軸1の胴体部15を背もたれ部Sの左右両側面に挿入状に取着する。固定平盤体2,2は、左右共用部品として使用され、回転軸1,1を左右逆向きに挿着されている。
【0022】
背もたれ部Sが水平姿勢となった最終傾倒状態から徐々に図中矢印A方向へ起立させて、背もたれ部Sの傾倒(揺動)角度を調整する場合について説明する。
最終傾倒状態下で、固定平盤体2内の角度調節機構3に於て、図11(a)に示すように、浮動くさび部材6の歯面7が、回転体4の凹凸ギヤ歯面40に噛合し、かつ、当接面9がくさび面8に当接している。背もたれ部Sを矢印A方向へ揺動させると回転軸1と一体状に回転体4がA方向に回転し、図11(b)に示すように、浮動くさび部材6の当接面9は、くさび面8から離れて僅かな間隙gを生じる。図11(c)に示すように、さらにA方向に回転体4を回転させると、浮動くさび部材6の勾配面33がくさび形窓部5の誘導段付部32に当接し、歯面7と凹凸ギヤ歯面40との噛合が解除され、歯面7が凹凸ギヤ歯面40に弾かれるようにカチカチと音を立てつつ乗り越える。背もたれ部Sを所望の位置で停止すると、弾発部材30によって、浮動くさび部材6が回転体4に押し付けられ、歯面7が凹凸ギヤ歯面40に噛合する。このくさび作用により背もたれ部Sの矢印B方向への揺動は規制され、所望の傾斜角度をもって保持される。
【0023】
図8に示すように、背もたれ部Sを所定量揺動させて最終起立状態とすると、図11(d)に示すように、押圧凸部43が浮動くさび部材6に当接し、浮動くさび部材6を押圧する。図11(e)に示すように、さらにA方向に回転体4を回転させると、浮動くさび部材6は、勾配面33をくさび形窓部5の誘導段付部32に摺接しつつ退避空間部31に案内(誘導)される。浮動くさび部材6が退避空間部31に収納されると、歯面7と凹凸ギヤ歯面40の噛合は解除され、B方向への回転が自由になる。そして、図11(f)に示すように、背もたれ部SをB方向へ揺動し、最終傾倒状態まで復元すると、押出凸部44が浮動くさび部材6に当接し、浮動くさび部材6を退避空間部31から押し出す。このようにして、再び図11(a)に示す状態として、歯面7が凹凸ギヤ歯面40に噛合し、背もたれ部SのB方向への揺動を規制する。
【0024】
ここで、使用者の所望の傾倒(揺動)角度に調整された背もたれ部Sに、使用者がもたれかかると、回転軸1に回転トルクが発生し、固定平盤体2内の回転体4と挟持板部材21,22に応力が発生する。固定平盤体2は、回転体4及び左右の挟持板部材21,22にて応力を分散させるため、コンパクト(小型)かつ薄型であっても十分に荷重を支持可能である。
固定平盤体2は、左右の挟持板部材21,22を内部リベット11,11にて連結一体化し、さらに、カバー部材25,25を外部リベット12,12にて固着されているため、十分な強度をもって組み立てられ、大きな負荷がかかった場合でも破損することなく荷重を支持する。固定平盤体2は、左右外側面2a,2bから外部リベット12,12が突出しないように取着されているため、左右外側面2a,2bのどちら側からでも相手部材Fに密着させて取り付けることが可能であり、左右共用を可能とする。固定平盤体2は、四隅の角部26…の近傍に配設した取付孔部18…に、取付ボルト13…を挿通して、相手部材Fに固着される。固定平盤体2は、その中心に、回転軸1を有するので、回転軸1から伝わる回転トルクに対して、安定して強固に相手部材Fに対して保持される。
【0025】
図9及び図10に示すように、本発明の角度調整金具は、上下揺動扉や車のボンネット等の各種用途に応用可能であり、回転軸1の回転開始角度と回転終了角度を適宜調整すれば、加工精度及び材質や熱処理等を求められ製作が困難かつ高価な機能部品を共通してそのまま使用することが可能となる。
【0026】
以上のように、本発明に係る角度調整金具は、中央部に非円形の貫孔部20を有する円盤型回転体4と、回転体4を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材21,22と、貫孔部20に対応する位置に貫通孔25a,25aを有すると共に挟持板部材21,22を左右から被覆する一対のカバー部材25,25とを、有する固定平盤体2を、備え、固定平盤体2は、回転体4を一方向Aへ回転可能とし、かつ、逆方向Bへの回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構3を内有しており、かつ、貫孔部20に対して左右いずれからでも回転軸1を嵌着可能としたので、固定平盤体2の貫孔部20に回転軸1を差し換えるのみで、(左右セットとして使用する場合に、)固定平盤体2を全く同一の部品で左右共用できる。また、回転体4及び挟持板部材21,22に掛かる外力を分散させて安定して強固に相手部材Fに取着でき、固定平盤体2をコンパクトかつ薄型のユニットとして設計することが可能である。しかも、使用用途に応じて、回転軸1の回転開始角度と回転終了角度の調整を容易に行なうことができる。これによって、適用する製品の種類や使用条件が異なる場合であっても、簡単に対応でき、使用用途を拡大し、製造コストの低減、及び、在庫管理の容易化、流通の簡略化を図り得る。しかも、部品点数が少なく、製作が容易である。
【0027】
また、相手部材Fに固着される固定平盤体2と、固定平盤体2に挿着される回転軸1とを、備え、固定平盤体2は、中央部に非円形の貫孔部20を有する円盤型回転体4と、回転体4を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材21,22と、貫孔部20に対応する位置に貫通孔25a,25aを有すると共に挟持板部材21,22を左右から被覆する一対のカバー部材25,25とを、有し、かつ、回転体4を一方向Aへ回転可能とし、かつ、逆方向Bへの回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構3を内有しており、回転軸1は、貫孔部20に対して左右いずれからでも嵌着可能であって、かつ、非円形の嵌合部10を有するので、固定平盤体2の貫孔部20に回転軸1を差し換えるのみで、(左右セットとして使用する場合に、)固定平盤体2を全く同一の部品で左右共用できる。また、回転体4及び挟持板部材21,22に掛かる外力を分散させて安定して強固に相手部材Fに取着でき、固定平盤体2をコンパクトかつ薄型のユニットとして設計することが可能である。しかも、使用用途に応じて、回転軸1の回転開始角度と回転終了角度の調整を容易に行なうことができる。これによって、適用する製品の種類や使用条件が異なる場合であっても、簡単に対応でき、使用用途を拡大し、製造コストの低減、及び、在庫管理の容易化、流通の簡略化を図り得る。しかも、部品点数が少なく、製作が容易である。
【0028】
また、本発明の角度調整金具セットは、左右の相手部材F,Fに固着される一対の固定平盤体2,2と、各固定平盤体2に挿着される回転軸1とを、備え、固定平盤体2は、中央部に非円形の貫孔部20を有する円盤型回転体4と、回転体4を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材21,22と、貫孔部20に対応する位置に貫通孔25a,25aを有すると共に挟持板部材21,22を左右から被覆する一対のカバー部材25,25とを、有し、かつ、回転体4を一方向Aへ回転可能とし、かつ、逆方向Bへの回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構3を内有しており、しかも、一対の固定平盤体2,2を左右共用部品として、左右の相手部材F,Fに左右対称に、かつ、貫孔部20,20の軸心L,Lを同一線上として固着し、回転軸1は、各固定平盤体2の貫孔部20に対して相反する方向から嵌着され、かつ、非円形の嵌合部10を有するので、固定平盤体2,2を全く同一の部品で左右共用できる。また、回転体4及び挟持板部材21,22に掛かる外力を分散させて安定して強固に相手部材Fに取着でき、固定平盤体2をコンパクトかつ薄型のユニットとして設計することが可能である。しかも、使用用途に応じて、回転軸1の回転開始角度と回転終了角度の調整を容易に行なうことができる。これによって、適用する製品の種類や使用条件が異なる場合であっても、簡単に対応でき、使用用途を拡大し、製造コストの低減、及び、在庫管理の容易化、流通の簡略化を図り得る。しかも、部品点数が少なく、製作が容易である。
【0029】
また、固定平盤体2は、挟持板部材21,22を連結する内部リベット11,11を有し、かつ、挟持板部材21,22を包囲状としてカバー部材25,25を連結する外部リベット12,12を有しているので、十分な強度をもって組み立てられ、大きな負荷がかかった場合でも破損することなく確実に荷重を支持できる。
【0030】
また、外部リベット12,12は、固定平盤体2の左右外側面2a,2bから突出しないように取着されているので、左右外側面2a,2bのどちら側からでも相手部材Fに密着させて取り付けることが可能であり、固定平盤体2を左右共用部品として使用することができる。
【0031】
また、固定平盤体2は、側面視矩形状に形成され、各角部26の近傍に取付孔部18を貫設しているので、固定平盤体2を相手部材Fに強固かつ堅牢に固着できる。
【符号の説明】
【0032】
1 回転軸
2 固定平盤体
2a,2b 左右外側面
3 角度調節機構
4 回転体
10 嵌合部
11 内部リベット
12 外部リベット
18 取付孔部
20 貫孔部
21 挟持板部材
22 挟持板部材
25 カバー部材
25a 貫通孔
26 角部
A 一方向
B 逆方向
F 相手部材
軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に非円形の貫孔部(20)を有する円盤型回転体(4)と、該回転体(4)を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材(21)(22)と、上記貫孔部(20)に対応する位置に貫通孔(25a)(25a)を有すると共に上記挟持板部材(21)(22)を左右から被覆する一対のカバー部材(25)(25)とを、有する固定平盤体(2)を、備え、
該固定平盤体(2)は、上記回転体(4)を一方向(A)へ回転可能とし、かつ、逆方向(B)への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構(3)を内有しており、かつ、上記貫孔部(20)に対して左右いずれからでも回転軸(1)を嵌着可能としたことを特徴とする角度調整金具。
【請求項2】
相手部材(F)に固着される固定平盤体(2)と、該固定平盤体(2)に挿着される回転軸(1)とを、備え、
上記固定平盤体(2)は、中央部に非円形の貫孔部(20)を有する円盤型回転体(4)と、該回転体(4)を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材(21)(22)と、上記貫孔部(20)に対応する位置に貫通孔(25a)(25a)を有すると共に上記挟持板部材(21)(22)を左右から被覆する一対のカバー部材(25)(25)とを、有し、かつ、上記回転体(4)を一方向(A)へ回転可能とし、かつ、逆方向(B)への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構(3)を内有しており、
上記回転軸(1)は、上記貫孔部(20)に対して左右いずれからでも嵌着可能であって、かつ、非円形の嵌合部(10)を有することを特徴とする角度調整金具。
【請求項3】
左右の相手部材(F)(F)に固着される一対の固定平盤体(2)(2)と、各該固定平盤体(2)に挿着される回転軸(1)とを、備え、
上記固定平盤体(2)は、中央部に非円形の貫孔部(20)を有する円盤型回転体(4)と、該回転体(4)を回転自在に保持する左右一対の挟持板部材(21)(22)と、上記貫孔部(20)に対応する位置に貫通孔(25a)(25a)を有すると共に上記挟持板部材(21)(22)を左右から被覆する一対のカバー部材(25)(25)とを、有し、かつ、上記回転体(4)を一方向(A)へ回転可能とし、かつ、逆方向(B)への回転を多段階で阻止して所望の角度で保持する角度調節機構(3)を内有しており、
しかも、上記一対の固定平盤体(2)(2)を左右共用部品として、左右の相手部材(F)(F)に左右対称に、かつ、上記貫孔部(20)(20)の軸心(L)(L)を同一線上として固着し、
上記回転軸(1)は、各上記固定平盤体(2)の貫孔部(20)に対して相反する方向から嵌着され、かつ、非円形の嵌合部(10)を有することを特徴とする角度調整金具セット。
【請求項4】
上記固定平盤体(2)は、上記挟持板部材(21)(22)を連結する内部リベット(11)(11)を有し、かつ、上記挟持板部材(21)(22)を包囲状として上記カバー部材(25)(25)を連結する外部リベット(12)(12)を有している請求項1,2又は3記載の角度調整金具及び角度調整金具セット。
【請求項5】
上記外部リベット(12)(12)は、上記固定平盤体(2)の左右外側面(2a)(2b)から突出しないように取着されている請求項4記載の角度調整金具及び角度調整金具セット。
【請求項6】
上記固定平盤体(2)は、側面視矩形状に形成され、各角部(26)の近傍に取付孔部(18)を貫設している請求項1,2,3,4又は5記載の角度調整金具及び角度調整金具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−57775(P2012−57775A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204234(P2010−204234)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(503315654)
【Fターム(参考)】