説明

触媒コンバータ用保持材

【課題】断熱性に優れる安価な断熱材を触媒コンバータ用保持材に用い、低コストでありながら断熱性に優れる触媒コンバータ用保持材を提供する。
【解決手段】筒状の触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材であって、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成される保持部と、前記保持部と隣り合って配置され、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部と、を備えることを特徴とする触媒コンバータ用保持材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒コンバータ用保持材に関する。特に、触媒担体と触媒担体を収容するケーシングとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒コンバータは、排気ガス中に含まれる未燃焼炭化水素(HC)や、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための触媒を担持するセラミックス等でなる触媒担体と、触媒担体を収容する金属等でなるケーシングと、触媒担体とケーシングとの間隙に介在し触媒担体を保持する触媒コンバータ用保持材を含んで構成される。
【0003】
ここで、触媒コンバータ用保持材は、触媒担体をケーシング内に保持することを目的として備えされるものである。また、触媒コンバータ用保持材は、上記目的以外にも、触媒担体とケーシングとの間から排気ガスが漏洩することを防ぐ目的でも使用されている。すなわち、触媒コンバータ用保持材は、外部からの振動等より触媒担体を保護するためのクッション性や、排気ガスのシール性等が求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、無機繊維を含む保持マットを担体の外周面に巻き付け前記保持マットを厚さ方向に圧縮した状態で前記保持マットを介して前記担体をケース内に保持した内燃機関の排気浄化装置において使用される触媒コンバータ用保持材について記載がされている。触媒コンバータ用保持材として使用される前記保持マットは、前記排気浄化装置軸方向の少なくとも1箇所において周方向全周にわたって、他の部分である一般部よりも密度を高くした高密度部分を部分的に設けられている。
【0005】
特許文献2には、筒状に形成された触媒担体と、該触媒担体を収容するケーシングと、前記触媒担体に装着されて前記触媒担体と前記ケーシングとの間隙に介装される触媒コンバータ用保持材とから構成される触媒コンバータにおける前記触媒コンバータ用保持材であって、無機繊維をマット状もしくは円筒状に成形してなり、かつ、坪量が、少なくとも排気ガスが流入する側の端部で、軸線方向所定長にわたり、他の領域よりも小さく設定されていることを特徴とする触媒コンバータ用保持材について記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−262117号公報
【特許文献2】特開2004−124719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の触媒コンバータ用保持材は、触媒コンバータにおいて触媒担体の外側面の軸方向の全部を覆うように備えられているものである。従来の触媒コンバータ用保持材を構成する材料は、当該触媒コンバータ用保持材が高温の状態に置かれることもあり、高い耐熱性能が求められコストが高いものである。触媒コンバータにおいて触媒担体の外側面の軸方向の全部を覆うように触媒コンバータ用保持材を備えると、触媒コンバータ用保持材はそれだけ大きなものとしなければならず、触媒コンバータ用保持材のコストが高くなるという問題があった。
【0008】
そこで、触媒コンバータ用保持材を、触媒担体の外側面の軸方向の一部のみにおける周方向の全域にわたって覆うように備えられることが考えられる。このようにすることによって、触媒コンバータ用保持材のコストは低減されることとなる。しかしながら、そのように触媒担体がケーシング内に保持されると、触媒担体の外側面の軸方向の他の部分における周方向の一部に触媒コンバータ用保持材が存在しない層(空気層)が形成されることとなる。空気層では熱の対流が容易であるため、触媒コンバータに高温の気体が流通した場合、ケーシングの温度が著しく上昇してしまうという新たな問題が生じることとなる。
【0009】
発明者らは、耐熱温度が低く従来の触媒コンバータ用保持材には採用し得ないと考えられているが、断熱性に優れる安価な断熱材を触媒コンバータ用保持材に用いることについて鋭意検討を行った。
【0010】
本発明は、耐熱温度が低く触媒コンバータ用保持材には採用し得ないが、断熱性に優れる安価な断熱材を触媒コンバータ用保持材に用い、低コストでありながら断熱性に優れる触媒コンバータ用保持材を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る触媒コンバータ用保持材は、筒状の触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材であって、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成される保持部と、前記保持部と隣り合って配置され、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第一の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。また、1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第一の無機繊維は、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を熱処理し、加熱収縮させた繊維であることとしてもよい。また、1000℃における加熱収縮率が1%を超える前記第二の無機繊維は、ガラス繊維、ロックウール、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。
【0013】
また、前記断熱部と前記触媒担体の外側面との間に配置される、保護部をさらに備えることとしてもよい。また、前記保護部は、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第三の無機繊維によって構成されることとしてもよい。また、1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第三の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。また、1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第三の無機繊維は、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を熱処理し、加熱収縮させた繊維であることとしてもよい。また、前記断熱部が前記保護部に覆われることとしてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る触媒コンバータ用保持材の製造方法は、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部を得る工程と、前記断熱部を得る工程とは別に、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、前記断熱部をモールド内に配置した後、前記モールド内に配置された前記断熱部を覆うように前記スラリー調製工程にて調製した前記スラリーを配置し、脱水成形して前記断熱部が前記第一の無機繊維に覆われた複合マットを得る工程と、得られた前記複合マットを乾燥する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐熱温度が低く触媒コンバータ用保持材には採用し得ないが、断熱性に優れる安価な断熱材を触媒コンバータ用保持材に用い、低コストでありながら断熱性に優れる触媒コンバータ用保持材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材が触媒コンバータに備えられている様子を示す説明図である。
【図2】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材が備えられる触媒コンバータの軸方向における断面を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材が備えられる触媒コンバータの周方向における断面を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材の平面図である。
【図5A】図4における線5A−5Aにおける断面を示す断面図である。
【図5B】図4における線5B−5Bにおける断面を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材が触媒担体の外側面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材を備える触媒コンバータが配置される一例を示す説明図である。
【図8】図8は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。
【図9A】図8における線9A−9Aにおける断面を示す断面図である。
【図9B】図8における線9B−9Bにおける断面を示す断面図である。
【図10】図10は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。
【図11A】図10における線11A−11Aにおける断面を示す断面図である。
【図11B】図10における線11B−11Bにおける断面を示す断面図である。
【図12】図12は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。
【図13A】図12における線13A−13Aにおける断面を示す断面図である。
【図13B】図12における線13B−13Bにおける断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1について説明する。図1は、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1が触媒コンバータ100に備えられている様子を示す説明図である。図2は、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1が備えられる触媒コンバータ100の軸方向における断面を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1が備えられる触媒コンバータ100の周方向における断面を示す断面図である。図1〜3に示されるように、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、筒状の触媒担体2と触媒担体2を収容するケーシング3との間隙に備えられるものである。
【0018】
図1〜3にて示される触媒担体2は、例えば、排気ガス中に含まれる未燃焼炭化水素(HC)や、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための触媒を担持する。また、触媒担体2は、例えば、セラミックス製で肉薄のハニカム構造体を有するものである。そして、図1〜3にて示されるケーシング3は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属製のものである。
【0019】
図4は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の平面図である。図5Aは、図4における線5A−5Aにおける断面を示す断面図である。図5Bは、図4における線5B−5Bにおける断面を示す断面図である。図4にて示されるように本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成される保持部と、保持部と隣り合って配置され、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部と、を備えている。
【0020】
そして、図4にて示されるように、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、二つの保持部10が、一つの断熱部11を挟んで備えられている。また、断熱部11は保持部10と隣接して配置されることとしてもよい。すなわち、断熱部11は保持部10と接して又は近接して配置されることとしてもよい。また近接して配置される場合、断熱部と保持部との間には後に説明を行う保護部等が配置されることとしてもよい。さらに、保持部は、2箇所以上配置されることとしてもよい。また、保持部は、図4にて示されるように、触媒コンバータ用保持材1の長手方向の垂直方向において対称に配置されることが好ましく、例えば、図4にて示される線5A−5Aに対して対称に配置されることとしてもよい。
【0021】
ここで、加熱収縮率は、一般的な繊維質断熱材の加熱試験により求められる。具体的には、適当な大きさ(通常、40〜50mm)で立方体の試験片を用意し端面から約10mm内側にアルミナピンを埋め込む。アルミナピンは頭部の高さが試験片の表面と同一となるように埋め込む。試験片の加熱は通常徐熱徐冷法で行われ、例えば電気炉で約200℃/時間の速度で昇温、所定温度(1000℃における加熱収縮率を求める場合は、1000℃)を所定時間(例えば、本発明においては8時間)保持し、その後炉内で自然冷却させる。加熱前のアルミナピン間の長さLと加熱後のアルミナピン間の長さLをノギス等で測定する。加熱収縮率は以下の式で求められる。
加熱収縮率=(L−L)/L×100(%)
【0022】
図4にて示されるように本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、平板状の触媒コンバータ用保持材1の一端に凸部15と、他端に凸部15と嵌合可能な形状の凹部16と、が形成された形状とすることができる。また、凸部15及び凹部16の形状は、図示される矩形の他に、三角形や半円形状であってもよい。また、凸部15及び凹部16の個数も1個には限定されず、2個以上であってもよい。
【0023】
本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、保持部10、断熱部11が備えられているものであるが、それらについては後に詳細に説明を行う。また、図5Aにて示される本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の一の面13は触媒担体2と接する面であり、他の面14はケーシング3と接する面である。すなわち、保持部10、断熱部11のそれぞれは、ケーシング3の内側面と触媒担体2の外側面とに接して備えられることとしてもよい。
【0024】
図6は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1が触媒担体2の外側面に巻かれて備えられている状態を示す説明図である。図6に示されるように、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、触媒コンバータ用保持材1の凸部15と、凹部16とが嵌合し、触媒担体2の外側面に巻かれて備えられている。
【0025】
また、図6にて示されるように触媒コンバータ用保持材1における凸部15から凹部16への距離は筒状の触媒担体2の全周に相当し、凸部15から凹部16へ向かう方向と直交する方向は触媒担体2の軸方向である。また、図6では、触媒コンバータ用保持材1の一の面13の全部は、触媒担体2と接して備えられている。
【0026】
図7は、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1を備える触媒コンバータ100が配置される一例を示す説明図である。図7にて示されるように、触媒コンバータ100はケーシング3に備えられたフランジ部3Aを介して他の管20と接続されている。
【0027】
触媒コンバータ100には、一方向から他方向に向かって高温の気体(排気ガス40等)が流通する。例えば、触媒コンバータ100が自動車において用いられる場合には、触媒コンバータ100に流通する高温の気体は、エンジン等の内燃機関から排出される排気ガス40であり、内燃機関によっては1000℃にまで達するものである。以下、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1を備える触媒コンバータ100に流通する高温の気体は内燃機関から排出される排気ガス40であることとして説明を行う。
【0028】
図7にて示されるように触媒コンバータ100の一方に接続された管20Aからは内燃機関から排気された排気ガス40が導入される。そして導入された排気ガス40は触媒担体2にて浄化され、浄化された排気ガス40Aは触媒コンバータ100の他方から排出される。
【0029】
ここで、触媒コンバータ100における触媒担体2を流通する排気ガス40の温度は、上述の様に1000℃程度にまで達するものである。すなわち、触媒担体2は、例えば、触媒コンバータ100がガソリン車において用いられる場合には最高1000℃程度の排気ガス40Aに曝されるものであり、触媒担体2と接して備えられる触媒コンバータ用保持材1もまた触媒担体と同様に高温の状態に置かれることとなる。特に、触媒コンバータ用保持材1における触媒担体2と接する面は、エンジン等の内燃機関から排出される排気ガス40の温度と同程度である、1000℃の高温に曝されることとなる。
【0030】
ところで、触媒コンバータ100が自動車に用いられる場合、触媒コンバータ100の周辺に置かれる他の機器等は、軽量化等の要請から樹脂やゴムといった熱に対する影響を受けやすい部材によって構成されることも少なくない。また、自動車の設計上の問題からエンジンルーム内のスペースを有効に利用したいという要請もあり、触媒コンバータ100と他の機器等とが近接して置かれることも少なくない。したがって、触媒コンバータ100から放出される熱を低く抑えることが、特に必要とされている。
【0031】
ここで、触媒コンバータ用保持材1に断熱性を付与し、触媒コンバータ100の周囲に置かれる機器等への熱の影響を低減する方法が考えられる。しかしながら、触媒コンバータ用保持材1において、本来であれば断熱効果が高いために使用したいとされるガラス繊維等は、使用される温度域での加熱収縮率が高い(1%を超えてしまう)という理由から、触媒担体2をケーシング3内に保持することが困難であるため、単独では採用し得ないものであった。耐熱性が低いガラス繊維等の材料は、1000℃の温度に直接曝されると1%を超える加熱収縮を起こし、触媒コンバータ用保持材1の機能として必要とされる保持性能を発揮し得ないという問題が生じることとなるからである。よって、触媒コンバータ用保持材は、1000℃の温度に置かれた状態においても触媒担体2の保持性能を低下させないために、排気ガス40Aの温度である1000℃において加熱収縮率が1%以下である無機繊維のみから構成されていることが通常である。
【0032】
本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、触媒担体2がケーシング3に装着された際、触媒担体2とケーシング3との間から排気ガス40の漏洩を防止、外部からの振動から触媒担体2の保護等をするために用いられるものであるとともに、触媒コンバータ100が設置される周辺への放熱を抑制するための断熱性を有するものである。
【0033】
具体的には、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、筒状の触媒担体2と触媒担体2を収容するケーシング3との間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材1であって、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成される保持部と、保持部10に隣接して配置され、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部11と、を含むものである。これによって加熱収縮率が1%を超えてしまい触媒コンバータ用保持材には採用し得ないと考えられていた断熱性に優れる安価な第二の無機繊維によって構成される断熱材を触媒コンバータ用保持材に用い、低コストでありながら断熱性に優れる触媒コンバータ用保持材を提供することができる。
【0034】
また、本実施形態における触媒コンバータ用保持材1の保持部10は、触媒担体2の外側面とケーシング3の内側面とに接して、触媒担体2の外側面の軸方向の一部における周方向の全域を覆うように備えられることとしてもよい。そして、断熱部11は、触媒担体2の外側面とケーシング3の内側面とに接して、触媒担体2の外側面の軸方向の一部における周方向の全域を覆うように備えられることとしてもよい。いずれにせよ、触媒コンバータ100において、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保持部10は、触媒担体2の外側面の一部を全周にわたって触媒担体2を前記ケーシング3内に保持している。
【0035】
以下、本実施形態にかかる触媒コンバータ用保持材1に備えられる保持部10、断熱部11についてさらに詳細に説明を行う。
【0036】
はじめに、保持部10について説明を行う。触媒コンバータ用保持材1に備えられる保持部10の坪量は、触媒コンバータ100に組み込まれた際の嵩密度が後述するような数値範囲になるように設定されればよい。具体的には、保持部10の厚さにもよるが、400〜6500g/mであることが好ましく、より好ましくは600〜4000g/m、さらに好ましくは800〜3000g/mである。触媒コンバータ用保持材1に備えられる保持部10の坪量が400g/m未満であると、触媒コンバータ100に組み込まれた際に保持機能が低減することとなり好ましくない場合がある。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保持部10の坪量が、6500g/mを超えると触媒コンバータ100に備えられたときに保持部10を構成する繊維が破損するため好ましくない場合がある。
【0037】
触媒コンバータ100に触媒コンバータ用保持材が組み込まれた際の保持部10の嵩密度は、保持部を構成する材料や、断熱したい温度(最高温度)に応じて、熱伝導率が最も低くなるように最適化すればよいが、0.20〜0.65g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.55g/cm、さらに好ましくは0.30〜0.40g/cmである。触媒コンバータ100に備えられる保持部10の嵩密度が0.20g/cm未満であると、保持機能が低減することとなり好ましくない場合がある。また、触媒コンバータ100に備えられる保持部10の嵩密度が、0.65g/cmを超えると保持部10を構成する繊維が破損するため好ましくない場合がある。
【0038】
触媒担体2に高温の気体が流通した場合、触媒担体2の外側面は排気ガス40と略同等の温度となる。すなわち、触媒コンバータ用保持材1の触媒担体2と接する面は、触媒コンバータ100がガソリン車において使用されたときは1000℃程度の熱に曝されることとなる。したがって、保持部10は、触媒コンバータ用保持材1の信頼性を高めるために1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成されることが必要である。また、保持部10を構成する第一の無機繊維は1100℃における加熱収縮率が1%以下であることはより好ましい。さらに、保持部10を構成する第一の無機繊維は1300℃における加熱収縮率が1%以下であることは特に好ましい。
【0039】
また、保持部10を構成する第一の無機繊維の1000℃における加熱収縮率の下限値は、触媒コンバータ用保持材1の性能が著しく損なわれない範囲であれば特に限られないが、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。1100℃又は1300℃における加熱収縮率の下限値についても同様に、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。
【0040】
次に、第一の無機繊維についてさらに具体的に説明を行う。保持部10を構成する第一の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。また、第一の無機繊維の平均繊維径は、例えば、3〜13μmであることが好ましい。アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択される繊維は、1100℃あるいは1300℃における加熱収縮率が1%以下である。
【0041】
アルミナ繊維は、アルミナ(Al)を主成分とする多結晶質繊維である。例えば、アルミナ(Al)を90質量%以上含むことが好ましい。
【0042】
ムライト繊維は、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を主成分とする多結晶質繊維である。例えば、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を90質量%以上含むことが好ましく、アルミナ(Al)/シリカ(SiO)の質量比が70/30〜80/20であることが好ましい。
【0043】
そして、保持部10を構成する第一の無機繊維は、上述のアルミナ繊維及びムライト繊維を所定の割合で混合した混合繊維によって構成されることとしてもよい。
【0044】
そして、保持部10を構成する第一の無機繊維は、上述した繊維の他に、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を予め熱処理しておき、加熱収縮させた繊維に置き換えられることとしてもよい。アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を予め熱処理しておき、加熱収縮させた無機繊維は1000℃における加熱収縮率が1%以下である。また、下限値は、特に制限はないが、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。また、上述の熱処理の温度は、例えば、1100℃以上であればよく、処理時間は例えば10分以上であればよい。
【0045】
アルミノシリケート繊維は、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、アルミナ(Al)/シリカ(SiO)の質量比が60/40〜40/60であることが好ましい。アルミノシリケート繊維は1100℃以上の温度での熱処理において、熱収縮に伴う形状変化を引き起こす。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後のアルミナシリケート繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0046】
シリカ繊維は、シリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、例えば、シリカ(SiO)を90質量%以上含むことが好ましい。こうしたシリカ繊維は、後述するガラス繊維を例えば酸処理してアルカリ成分を取り除き、シリカ成分を高めたものであってもよい。こうしたシリカ繊維は1100℃以上に加熱された場合、製造工程の酸処理によって生成された微細な空隙が収縮により埋められ、形状変化を引き起こすこととなる。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後のシリカ繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0047】
溶解性繊維は、生体内での溶解性が付与された人造非晶質繊維であり、SiO−CaO−MgOを主成分とする非晶質繊維である。こうした溶解性繊維は、体内で分解される溶解性(分解性)を有する無機繊維であれば特に限られないが、たとえば、40℃における生理食塩水中の溶解率が1%以上であり、1000℃での8時間加熱処理の加熱収縮率が5%以下である無機繊維であればよい。具体的に、例えば、CaOとMgOとの合計含有量が20〜40重量%であり、60〜80重量%のSiOと、を含むケイ酸アルカリ土類金属塩繊維を使用することができる。こういった溶解性繊維は1100℃以上に加熱された場合、熱収縮に伴う形状変化を引き起こすこととなる。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後の溶解性繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0048】
ここで、溶解性繊維の生理食塩水の溶解率は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶解性繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転で50時間水平振動を加え、濾過する。そして、濾液に含有されている元素をICP発光分析装置により定量する。この定量された元素含有量と、もとの試料の組成及び重量と、に基づいて当該試料から当該濾液中に溶出した元素量の割合(溶解による試料の重量減少率)を表す溶解度を求めることができる。
【0049】
次に、断熱部11について説明を行う。触媒コンバータ100に組み込まれた際の断熱部11の嵩密度は、断熱部を構成する材料や、断熱したい温度(最高温度)に応じて、熱伝導率が最も低くなるように最適化すればよいが、保持部10の嵩密度よりも小さいことが好ましい。断熱部11の嵩密度が、保持部10の嵩密度よりも小さいことによって、触媒コンバータ用保持材1の空気層が多くなり断熱性はさらに高まる。具体的には、触媒コンバータ100に組み込まれた際の断熱部11の嵩密度は、0.10g/cm以上、0.40g/cm未満であり、さらに好ましくは0.10以上、0.30g/cm以下である。特に好ましくは0.10g/cm以上、0.25g/cm以下である。触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の嵩密度が保持部10の嵩密度よりも小さいことによって触媒コンバータ用保持材1が軽量となり好ましい。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の嵩密度が0.10g/cm未満であると、密度低下による熱伝導率の上昇がおこるため好ましくない場合がある。
【0050】
そして、断熱部11は上述の嵩密度を満たすように、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の坪量は、保持部10の坪量よりも小さいことが好ましい。断熱部11の坪量が、保持部10の坪量よりも小さいことによって、触媒コンバータ用保持材1の空気層が多くなり断熱性はさらに高まる。具体的には、触媒コンバータに組み込まれた際の嵩密度が上述するような数値範囲になるように設定されればよく、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の坪量は、その厚さにもよるが具体的には、200g/m以上、4000g/m未満であり、さらに好ましくは400g/m以上、3500g/m以下である。特に好ましくは800g/m以上、2500g/m以下である。触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の坪量が保持部10の密度よりも小さいことによって触媒コンバータ用保持材1が軽量となり好ましい。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11の坪量が200g/m未満であると、触媒コンバータ100に組み込まれた際に密度低下による熱伝導率の上昇がおこるため好ましくない場合がある。
【0051】
また、断熱部11は、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される。また、断熱部11を構成する第二の無機繊維は800℃における加熱収縮率が1%を超えるものであることはより好ましく、600℃における加熱収縮率が1%を超えるものであることはさらに好ましく、500℃における加熱収縮率が1%を超えるものであることは特に好ましい。1000℃以下における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維を触媒コンバータ用保持材に用いることによって、低コストでありながら断熱性に優れる触媒コンバータ用保持材1を提供することができる。
【0052】
また、断熱部11を構成する第二の無機繊維の1000℃における加熱収縮率の上限値は、触媒コンバータ用保持材1の性能が著しく損なわれない範囲であれば特に限られないが、例えば5.0%以下とすることとしてもよい。また、断熱部11を構成する第二の無機繊維の1000℃における加熱収縮率の上限値は、例えば、15.0%以下とすることとしてもよい。800℃、600℃、500℃における加熱収縮率の上限値についても同様に、例えば5.0%以下、若しくは、15.0%以下とすることとしてもよい。
【0053】
また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11は、触媒担体2の外側面とは接しないように備えられていることとしてもよい。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11は、ケーシング3の内側面と接して備えられることとしてもよい。触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11が、ケーシング3の内側面と接して備えられることによって、触媒コンバータ用保持材1とケーシング3との間に空気の層ができず好ましい。なぜならば、当該空気の層は、熱を対流させ触媒コンバータ100の表面の温度を上昇させてしまうため、断熱効果を低下させてしまう。したがって、触媒コンバータ用保持材1に備えられる断熱部11がケーシング3の内側面と接して備えられることは、断熱効果をさらに高めることとなり好ましい。
【0054】
次に、第二の無機繊維についてさらに具体的に説明を行う。断熱部11を構成する第二の無機繊維は、ガラス繊維、ロックウール、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。
【0055】
ガラス繊維は、石英ガラス等の無アルカリガラスを溶解し、牽引することによって繊維化したものである。こうしたガラス繊維の組成は特に限定はないが、例えばSiOを52〜56質量%、Alを12〜16質量%、MgOを0〜5質量%、CaOを16〜25質量%、Bを5〜10質量%、NaOおよび/またはKOを0〜1質量%、TiOを0〜1質量%含有するEガラス繊維や、SiOを62〜65質量%、Alを20〜25質量%、MgOを10〜15質量%、CaOを0〜1質量%、Bを0〜1質量%、NaOおよび/またはKOを0〜1質量%、TiOを0〜1質量%含有するTガラス繊維、SiOを56〜62質量%、Alを9〜15質量%、MgOを0〜5質量%、CaOを17〜25質量%、Bを0〜1質量%、NaOおよび/またはKOを0〜1質量%、TiOを0〜4質量%含有するNCRガラス繊維、SiOを60〜67質量%、Alを2〜6質量%、MgOおよび/またはCaOを10〜20質量%、Bを0〜8質量%、NaOおよび/またはKOを8〜15質量%含有するCガラス繊維(硼珪酸ガラスファイバー)などが挙げられる。ここで、ガラス繊維は、グラスファイバー、グラスウールとも称され、短繊維と、連続繊維(長繊維)とがあるが、本発明において、短繊維および連続繊維(長繊維)ともに使用できる。
【0056】
ロックウールは、酸化ケイ素と、酸化カルシウムと、を主成分とした人造鉱物繊維であり、玄武岩、鉄炉スラグ等に石灰等を混合し、高温で溶解し生成される。原料によっても相違するが、一般的にSiOを35〜45質量%、Alを10〜20質量%、MgOを4〜8質量%、CaOを20〜40質量%、Feを0〜10質量%、MnOを0〜4質量%含有する繊維状物である。
【0057】
そして、断熱部11を構成する第二の無機繊維は、上述した繊維の他に、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維であってもよい。熱処理がされず加熱収縮していないアルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維は、1000℃における加熱収縮率が1%を超えるものである。
【0058】
アルミノシリケート繊維は、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、アルミナ(Al)/シリカ(SiO)の質量比が60/40〜40/60であることが好ましい。
【0059】
シリカ繊維は、シリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、例えば、シリカ(SiO)を90質量%以上含むことが好ましい。こうしたシリカ繊維は、後述するガラス繊維を例えば酸処理してアルカリ成分を取り除き、シリカ成分を高めたものであってもよい。
【0060】
溶解性繊維は、生体内での溶解性が付与された人造非晶質繊維であり、SiO−CaO−MgOを主成分とする非晶質繊維である。こうした溶解性繊維は、体内で分解される溶解性(分解性)を有する無機繊維であれば特に限られないが、たとえば、40℃における生理食塩水中の溶解率が1%以上であり、1000℃での8時間加熱処理の加熱収縮率が5%以下である無機繊維であればよい。具体的に、例えば、CaOとMgOとの合計含有量が20〜40重量%であり、60〜80重量%のSiOと、を含むケイ酸アルカリ土類金属塩繊維を使用することができる。
【0061】
ここで、溶解性繊維の生理食塩水の溶解率は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶解性繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転で50時間水平振動を加え、濾過する。そして、濾液に含有されている元素をICP発光分析装置により定量する。この定量された元素含有量と、もとの試料の組成及び重量と、に基づいて当該試料から当該濾液中に溶出した元素量の割合(溶解による試料の重量減少率)を表す溶解度を求めることができる。
【0062】
また、以下に本実施形態にかかる触媒コンバータ用保持材1の他の一例について説明を行う。図8は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。図9Aは、図8における線9A−9Aにおける断面を示す断面図である。図9Bは、図8における線9B−9Bにおける断面を示す断面図である。図8にて示されるように、本発明における触媒コンバータ用保持材1は、断熱部11と触媒担体2の外側面との間に配置される、保護部12さらに備えるものである。すなわち、保持部10および断熱部11に跨って積層される保護部12をさらに備えることとしてもよい。
【0063】
触媒コンバータ用保持材1が触媒担体2の外側面に巻かれて備えられた場合、触媒コンバータ用保持材1の触媒担体2の外側面と接する面13は、直接、触媒担体2の外側面から放出される熱に曝されることとなる。例えば、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部11が、触媒担体2の外側面から放出される熱に直接曝されると、断熱部11は形状変化を生じ断熱する機能が低下することが考えられる。
【0064】
ここで、断熱部11と触媒担体の外側面との間に、断熱部11の熱による形状変化から保護する保護部12を備えることによって、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部11の断熱する機能の低下を抑制することとなる。
【0065】
また、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1における、断熱部11と保護部12は、保持部10よりも低い熱伝導率を有することとしてもよい。これによって、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1における、断熱性の効果はさらに高まることとなる。
【0066】
以下、保護部12について詳細に説明を行う。触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12は、断熱部11と触媒担体2の外側面との間に配置され,触媒担体2の外側面から放出される熱を断熱する。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12は、断熱部11及び/又は触媒担体2と接して備えられることとしてもよい。
【0067】
触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12が、断熱部11及び/又は触媒担体2の外側面と接して備えられることによって、触媒コンバータ用保持材1と断熱部11及び/又は触媒担体2との間に空気の層ができず好ましい。なぜならば、当該空気の層は、熱を対流させ触媒コンバータ100の表面の温度を上昇させてしまうため、断熱効果を低下させてしまう。したがって、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12が断熱部11及び/又は触媒担体2の外側面と接して備えられることは、断熱効果をさらに高めることとなり好ましい。
【0068】
触媒コンバータ100に組み込まれた際の保護部12の嵩密度は、保護部を構成する材料や、断熱したい温度(最高温度)に応じて、熱伝導率が最も低くなるように最適化すればよく、特に制限はないが、0.20〜0.65g/cmであってもよく、さらに0.25〜0.55g/cm、0.30〜0.40g/cmであってもよい。また、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12の嵩密度は、保持部10の嵩密度以下であることとしてもよい。保護部12の嵩密度が、保持部10の嵩密度以下であることによって、触媒コンバータ用保持材1の断熱性はさらに高まる。さらに、触媒コンバータ用保持材1に備えられる保護部12の嵩密度が保持部の嵩密度以下であることによって触媒コンバータ用保持材1が軽量となるという効果を奏する。
【0069】
次に保護部12について説明を行う。保護部12も、保持部10と同様に触媒コンバータ用保持材1の信頼性を高めるために1000℃における加熱収縮率が1%以下である第三の無機繊維によって構成されることとしてもよい。
【0070】
また、保護部12を構成する第三の無機繊維の1000℃における加熱収縮率の下限値は、触媒コンバータ用保持材1の性能が著しく損なわれない範囲であれば特に限られないが、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。1100℃又は1300℃における加熱収縮率の下限値についても同様に、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。
【0071】
次に、第三の無機繊維についてさらに具体的に説明を行う。保護部12を構成する第三の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択されることとしてもよい。また、第三の無機繊維の平均繊維径は、例えば、3〜13μmであることが好ましい。アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択される繊維は、1100℃あるいは1300℃における加熱収縮率が1%以下である。
【0072】
そして、保護部12を構成する第三の無機繊維は、上述した繊維の他に、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を予め熱処理しておき、加熱収縮させた繊維に置き換えられることとしてもよい。アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を予め熱処理しておき、加熱収縮させた無機繊維は1000℃における加熱収縮率が1%以下である。また、下限値は、特に制限はないが、例えば0.01%以上とすることとしてもよい。また、上述の熱処理の温度は、例えば、1100℃以上であればよく、処理時間は例えば10分以上であればよい。
【0073】
アルミノシリケート繊維は、アルミナ(Al)及びシリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、アルミナ(Al)/シリカ(SiO)の質量比が60/40〜40/60であることが好ましい。アルミノシリケート繊維は1100℃以上の温度での熱処理において、熱収縮に伴う形状変化を引き起こす。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後のアルミナシリケート繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0074】
シリカ繊維は、シリカ(SiO)を主成分とする非晶質繊維であり、例えば、シリカ(SiO)を90質量%以上含むことが好ましい。こうしたシリカ繊維は、後述するガラス繊維を例えば酸処理してアルカリ成分を取り除き、シリカ成分を高めたものであってもよい。こうしたシリカ繊維は1100℃以上に加熱された場合、製造工程の酸処理によって生成された微細な空隙が収縮により埋められ、形状変化を引き起こすこととなる。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後のシリカ繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0075】
溶解性繊維は、生体内での溶解性が付与された人造非晶質繊維であり、SiO−CaO−MgOを主成分とする非晶質繊維である。こうした溶解性繊維は、体内で分解される溶解性(分解性)を有する無機繊維であれば特に限られないが、たとえば、40℃における生理食塩水中の溶解率が1%以上であり、1000℃での8時間加熱処理の加熱収縮率が5%以下である無機繊維であればよい。具体的に、例えば、CaOとMgOとの合計含有量が20〜40重量%であり、60〜80重量%のSiOと、を含むケイ酸アルカリ土類金属塩繊維を使用することができる。こういった溶解性繊維は1100℃以上に加熱された場合、熱収縮に伴う形状変化を引き起こすこととなる。そして、この熱収縮に伴う形状変化は不可逆的なものであるため、熱処理された後の溶解性繊維の1000℃における加熱収縮率は、1%以下となる。
【0076】
ここで、溶解性繊維の生理食塩水の溶解率は、例えば、次のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶解性繊維を200メッシュ以下に粉砕して調製された試料1g及び生理食塩水150mLを三角フラスコ(容積300mL)に入れ、40℃のインキュベーターに設置する。次に、三角フラスコに、毎分120回転で50時間水平振動を加え、濾過する。そして、濾液に含有されている元素をICP発光分析装置により定量する。この定量された元素含有量と、もとの試料の組成及び重量と、に基づいて当該試料から当該濾液中に溶出した元素量の割合(溶解による試料の重量減少率)を表す溶解度を求めることができる。
【0077】
また、保護部12が保持部10と一体のものとして備えられることとしてもよい。すなわち保護部12と保持部10とが同一の無機繊維によって一体的に形成され、当該一体的に形成されたものの一部が、断熱部11と触媒担体2の外側面との間に入り込んでいる場合、当該一部が保護部12となる。この場合、保護部12を構成する第三の無機繊維は第一の無機繊維であることとなる。
【0078】
また、保護部12は、第三の無機繊維からなる不織布(ペーパー)や、織布(クロス)といったシート状物で構成されてもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例ついて説明する。図10は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。図11Aは、図10における線11A−11Aにおける断面を示す断面図である。図11Bは、図10における線11B−11Bにおける断面を示す断面図である。
【0080】
図10に示される触媒コンバータ用保持材1は、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成され、触媒担体2の外側面とケーシング3の内側面とに接して、触媒担体2の外側面の軸方向の一部における周方向の全域を覆うように備えられる保持部10と、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成され、触媒担体2の軸方向の他の部分における周方向の少なくとも一部に触媒担体2の外側面と離間して備えられる断熱部11と、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第三の無機繊維によって構成され、前記断熱部と前記触媒担体の外側面との間に配置される、保護部12と、を含む触媒コンバータ用保持材1である。
【0081】
図10、11A、11Bにて示される触媒コンバータ用保持材1は、例えば、保持部10、断熱部11、保護部12、それぞれ別々に製造したものを貼り合わせることによって製造することとしてもよい。
【0082】
また、保護部12が保持部10と一体のものとして備えられることとしてもよい。すなわち保護部12と保持部10とが同一の無機繊維によって一体的に形成され、当該一体的に形成されたものの一部が、断熱部11と触媒担体2の外側面との間に入り込んでいる場合、当該一部が保護部12となる。この場合、保護部12を構成する第三の無機繊維は第一の無機繊維であることとなる。
【0083】
また、本発明の実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例ついて説明する。図12は本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の一例を示す平面図である。図13Aは、図12における線13A−13Aにおける断面を示す断面図である。図13Bは、図12における線13B−13Bにおける断面を示す断面図である。
【0084】
図12にて示される触媒コンバータ用保持材1は、触媒担体2の外側面とケーシング3の内側面とに接して、触媒担体2の外側面の軸方向の一部における周方向の全域を覆うように備えられる保持部10からなる第一部材と、触媒担体2の外側面の軸方向の他の部分における周方向の全域を覆うように備えられる断熱部11および保護部12からなる第二部材と、を含むものである。
【0085】
そして、第二部材における断熱部11の体積は、保護部12の体積よりも大きいこととしてもよい。また、第二部材における断熱部11の体積は、保護部12の体積の1.3倍以上であることとは好ましく、1.5倍以上であることはより好ましく、2.0倍以上であることは特に好ましい。このようにすることによって、耐熱性の効果がさらに高まる。また、低コスト化の効果がさらに高まる。
【0086】
また、第二部材において、断熱部11の厚さは、保護部12の厚さよりも大きいこととしてもよい。また、第二部材において、断熱部11の厚さは、保護部12の厚さの1.3倍以上であることとは好ましく、1.5倍以上であることはより好ましく、2.0倍以上であることは特に好ましい。このようにすることによって、耐熱性の効果がさらに高まる。また、低コスト化の効果がさらに高まる。
【0087】
図13A、13Bにて示される本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の一の面(触媒担体2と接する面)13は、保持部10と保護部12とによって構成されている。また、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の他の面(ケーシング3と接する面)14は保持部10と保護部12とによって構成されている。すなわち、本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1は、断熱部11とケーシング3の内側面との間に配置される保護部12をさらに備えることとしてもよい。
【0088】
前述のように触媒コンバータ100に用いられるケーシング3はステンレス鋼(SUS)等の金属により形成されることとしてもよい。ケーシング3が金属によって形成された場合、金属は熱伝導率が高いため、触媒コンバータ100においてケーシング3部分のみが部分的に高温になることが考えられる。この様な場合においても、断熱部11とケーシング3の内側面との間に保護部12を備えることによって、断熱部11に対するケーシング3からの熱の影響は低減されることとなる。触媒コンバータ用保持材1は、断熱部11の周り全部を覆うように保護部12を備えることとしてもよい。
【0089】
また、保護部12が保持部10と一体のものとして備えられることとしてもよい。すなわち保護部12と保持部10とが同一の無機繊維によって一体的に形成され、当該一体的に形成されたものの一部が、断熱部11を覆って備えられている場合、当該一部が保護部12となる。この場合、保護部12を構成する第三の無機繊維は第一の無機繊維であることとなる。
【0090】
上述のように断熱部11が、保持部10を構成する第一の無機繊維と同一の無機繊維である第三の無機繊維によって構成されている保護部12によって覆われて備えられる場合、図12にて示される触媒コンバータ用保持材1は、例えば、以下のように製造されることとしてもよい。
【0091】
まず、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部11からなる断熱マットを得る。ここで、断熱マットは乾式法あるいは湿式法等の公知の無機繊維質成形体の製造方法を用いて製造することとしてもよい。また、断熱マットの製造は、例えば、カーディング方式、ニードルパンチ方式、エアレイド方式、スパンレース方式、スチームジェット方式、吸引脱水成形法、抄造法等によって製造されることとしてもよい。また、断熱マットは既に第二の無機繊維によって形成されているものを準備することによって得ることとしてもよい。
【0092】
上記断熱マットの製造、準備等によって、断熱マットを得る工程とは別に、保持部10、保護部12を構成する1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維(第一の無機繊維と同一の無機繊維である第三の無機繊維)を含むスラリーを調製する。ここで、スラリーは有機バインダーを含有することとしてよい。また、有機バインダーは例えばアクリル樹脂をO/W乳化したアクリルエマルジョンを用いることとしてもよい。
【0093】
そして断熱部からなる断熱マットを、モールド内に配置した後、モールド内に配置された断熱マットを覆うようにスラリー調製工程にて調製したスラリーを配置し、脱水成形して前記断熱部が第一の無機繊維に覆われた複合マットを得る。また、当該モールドは、例えば平板状のモールドであることとしてもよい。以下の説明では平板状のモールドを用いた場合について説明を行う。ここで、断熱マットがモールド内に置かれる位置は、製造される触媒コンバータ用保持材1における断熱部11の位置に基づいて定められる位置であり、スラリーが配置される位置は、製造される触媒コンバータ用保持材1における保持部10および保護部12の位置に基づいて定められる位置である。このように断熱マットを平板状のモールドの所定の位置に配置した後、調製したスラリーを平板状のモールドに流し込み、脱水成形して断熱部11が第一の無機繊維(第一の無機繊維と同一の無機繊維である第三の無機繊維)に覆われた複合マットを得る。
【0094】
そして得られた複合マットを乾燥し、触媒コンバータ用保持材1を得ることとしてもよい。この場合上述した平板状のモールドは製造される触媒コンバータ用保持材1の形状と同一のものである。あるいは、得られた複合マットを乾燥した後、所定の形状(触媒コンバータ用保持材1の形状)に打ち抜いて、図12に示す触媒コンバータ用保持材1を得ることとしてもよい。この場合上述した平板状のモールドは製造される触媒コンバータ用保持材1と異なる形状のものである。
【0095】
以上、上記にて説明した本実施形態に係る触媒コンバータ用保持材1の厚さが一定であることが好ましく、具体的には±25%以内とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0096】
1 触媒コンバータ用保持材、2 触媒担体、3 ケーシング、3A フランジ部、10 保持部、11 断熱部、12 保護部、13 触媒コンバータ用保持材の一の面、14 触媒コンバータ用保持材の他の面、15 凸部、16 凹部、20,20A 管、40,40A 排気ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の触媒担体と前記触媒担体を収容するケーシングとの間隙に備えられる触媒コンバータ用保持材であって、
1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維によって構成される保持部と、
前記保持部と隣り合って配置され、1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部と、
を備えることを特徴とする触媒コンバータ用保持材。
【請求項2】
1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第一の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項3】
1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第一の無機繊維は、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を熱処理し、加熱収縮させた繊維である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項4】
1000℃における加熱収縮率が1%を超える前記第二の無機繊維は、ガラス繊維、ロックウール、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項5】
前記断熱部と前記触媒担体の外側面との間に配置される、保護部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項6】
前記保護部は、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第三の無機繊維によって構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項7】
1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第三の無機繊維は、アルミナ繊維、ムライト繊維、及びこれらの混合繊維からなる群より選択される、
ことを特徴とする請求項6に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項8】
1000℃における加熱収縮率が1%以下である前記第三の無機繊維は、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、溶解性繊維、及びこれら二種以上の混合繊維からなる群より選択される繊維を熱処理し、加熱収縮させた繊維である、
ことを特徴とする請求項6に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項9】
前記断熱部が前記保護部に覆われる、
ことを特徴とする請求項5乃至8いずれか一項に記載の触媒コンバータ用保持材。
【請求項10】
1000℃における加熱収縮率が1%を超える第二の無機繊維によって構成される断熱部を得る工程と、
前記断熱部を得る工程とは別に、1000℃における加熱収縮率が1%以下である第一の無機繊維を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、
前記断熱部をモールド内に配置した後、前記モールド内に配置された前記断熱部を覆うように前記スラリー調製工程にて調製した前記スラリーを配置し、脱水成形して前記断熱部が前記第一の無機繊維に覆われた複合マットを得る工程と、
得られた前記複合マットを乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする触媒コンバータ用保持材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【公開番号】特開2013−24214(P2013−24214A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162472(P2011−162472)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】