説明

計器用測定端子及び計器用測定端子操作具

【課題】測定対象となる端子に対して安定に吸着させることができる構成が簡易な磁石付の計器用測定端子を提供する。
【解決手段】測定対象となる電気端子2に吸着させる計器用測定端子1であって、電気端子2に吸着する端子本体3が磁力を有する導電体からなり、該端子本体3にリード線4を接続してなり、前記端子本体3には、電気端子2の一部を嵌入させる凹部5が形成され、該凹部5の周縁が電気端子2に接触吸着するように構成すると共に、凹部5が形成された端子本体3の前面部以外の部分が絶縁材6で覆われるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種分電盤やNFB(ノーヒューズブレーカ)等に設けられている端子に吸着させて電圧、電流等を測定するための磁石付の計器用測定端子、及びその端子を操作するための計器用測定端子操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
分電盤やNFB等の端子から電圧、電流等を測定する場合、先の尖った測定棒の先端を端子に押し当てて接触させていた。しかし、このような方法では、端子に対して測定棒の先端が点接触になるため接触状態が不安定になりやすいという難点があった。また、測定中は測定棒から手を離せないため、作業性がよくなく、測定器を常時接続したままでの測定には不適であった。
【0003】
このようなことから、常時接続による測定では、ワニ口クリップ付きリード線が使用されていた。しかし、ワニ口クリップは、ボルトヘッドに挟み付けることができないため、圧着端子部のキャップをずらして露出させた導線を挟むようにしていたが、感電等が懸念され安全上に問題があった。また、導線が太い場合やNFB等の凹部に端子のボルトヘッドが入り込んでいる場合には挟むことができなかった。
【0004】
そこで、先の尖った接触棒(測定棒)を取手棒に進退自在に挿入して押コイルスプリングで押出方向に付勢すると共に、取手棒の先端に吸着用の磁石を取り付け、接触棒を測定対象となる端子に押し込んで磁石によって取手棒と共に吸着させるようにしたマグネットプローブが提案されている(例えば特許文献1参照)。この場合、常時接続が可能となり取手棒から手を離した状態でも測定が可能になるとされている。
【特許文献1】特開2001−343398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来例(特許文献1)のマグネットプローブは、接触棒を差し込むことができるタイプの端子に対しては手を離しても安定な接続状態が維持されるが、(差し込みタイプではない)一般の端子に対する接続状態は必ずしも安定せず、取手棒を支えていないと外れてしまうことが懸念され、汎用性に欠け使い勝手がよくなかった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、測定対象となる端子に対して安定に吸着させることができる構成が簡易な磁石付の計器用測定端子及びその端子を操作するための計器用測定端子操作具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の計器用測定端子は、測定対象となる電気端子に吸着させる計器用測定端子であって、
前記電気端子に吸着する端子本体が磁力を有する導電体からなり、該端子本体に計器用のリード線を接続してなることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、電気端子に端子本体を吸着させておけば、手を離しても、リード線を介して測定器に電圧、電流等の測定データを取り込むことができるため、常時接続での測定が可能となる。また、端子本体は、電気端子に吸着可能なように構成すればよく、充分な接触面積を確保することも容易で必要最小限にコンパクトなものにすることもでき、かつ安価に提供することができる。
【0009】
(2)前記端子本体には、前記電気端子の一部を嵌入させる凹部が形成され、該凹部の周縁が前記電気端子に接触するようにしてもよい。このようにすれば、電気端子に対して端子本体の凹部の周縁が線接触で吸着するため、良好な接触状態を安定に得ることができる。
【0010】
(3)前記凹部が形成された端子本体の前面部以外の部分が絶縁材で覆われるようにしてもよい。このようにすれば、安全な状態で計器用測定端子を取り扱うことができる。
【0011】
(4)前記絶縁材には、計器用測定端子操作具に着脱自在に仮保持される被保持部が形成されるようにしてもよい。このようにすれば、計器用測定端子操作具を用いて計器用測定端子を仮保持した状態で作業性よく電気端子へ吸着・接続させることができる。
【0012】
(5)本発明の計器用測定端子操作具は、前記(4)に記載の計器用測定端子における前記被保持部を着脱自在に仮保持する計器用測定端子操作具であって、前記被保持部は、前記計器用測定端子の背面側に突設された膨出部付きの軸状部であり、該軸状部又は膨出部を開閉自在に挟持する挟持片が操作具本体の先端に設けられ、前記挟持片を開閉操作するための操作部材が、該操作具本体に設けられることを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、操作部材を操作することによって、計器用測定端子の背面側に突設された軸状部又は膨出部を、操作具本体の先端に設けられた挟持片で挟持して仮保持し、測定対象となる電気端子に、計器用測定端子の端子本体を吸着・接続させた後、挟持片を開放すれば、計器用測定端子の端子本体を電気端子に吸着・接続させた状態にすることができ、手を離した状態でも測定できる状態となる。このような計器用測定端子操作具を用いることで、手の届かないところの電気端子にも計器用測定端子を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。
【0014】
(6)本発明の別の計器用測定端子操作具は、前記(4)項の何れかに記載の計器用測定端子における前記被保持部を着脱自在に仮保持する計器用測定端子操作具であって、前記被保持部は、前記計器用測定端子の背面側に突設された軸状部であり、該軸状部を先端から挿脱自在に挿入して仮保持することが可能な操作具本体が筒状に形成され、かつ前記操作具本体内に挿入された前記軸状部を押し出すための押出部材が前記操作具本体の後端側から操作可能に設けられていることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、計器用測定端子の軸状部を操作具本体の先端から挿入して仮保持させ、測定対象となる電気端子に、計器用測定端子の端子本体を吸着・接続させた後、押出部材によって、計器用測定端子の軸状部を操作具本体から押し出して計器用測定端子の端子本体を操作具本体から分離して電気端子に吸着・接続させた状態にすることができ、手を離した状態でも測定を開始できる状態となる。このような計器用測定端子操作具を用いることで、手の届かないところの電気端子にも計器用測定端子を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の計器用測定端子は、測定対象となる電気端子に吸着する端子本体が磁力を有する導電体からなり、該端子本体にリード線を接続してなるので、電気端子に端子本体を吸着させておけば、手を離しても、リード線を介して測定器に電圧、電流等の測定データを取り込むことができるため、常時接続での測定が可能となる。また、端子本体は電気端子に吸着可能なように構成すればよく、充分な接触面積を確保することも容易で必要最小限にコンパクトなものにすることもでき、安価に提供することができる。
【0017】
本発明の計器用測定端子操作具は、操作部材を操作することによって、計器用測定端子の背面側に突設された軸状部又は膨出部を、操作具本体の先端に設けられた挟持片で挟持して、測定対象となる電気端子に、計器用測定端子の端子本体を吸着・接続させた後、挟持片を開放すれば、計器用測定端子の端子本体を電気端子に吸着・接続させた状態にすることができるので、手を離した状態でも測定を開始できる状態となる。このような計器用測定端子操作具を用いることで、手の届かないところの電気端子にも計器用測定端子を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。
【0018】
本発明の別の計器用測定端子操作具は、計器用測定端子の軸状部を操作具本体の先端から挿入して仮保持させ、測定対象となる電気端子に、計器用測定端子の端子本体を吸着・接続させた後、押出部材によって、計器用測定端子の軸状部を操作具本体から押し出して計器用測定端子の端子本体を操作具本体から分離して電気端子に吸着・接続させた状態にすることができ、手を離した状態でも測定を開始できる状態となる。このような計器用測定端子操作具を用いることで、手の届かないところの電気端子にも計器用測定端子を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の最良の実施の形態に係る計器用測定端子、及びその端子を操作するための計器用測定端子操作具及び吸着式測定装置について詳細に説明する。
図1(a)は計器用測定端子の斜視図、(b)は断面図、図2(a)は吸着式測定装置の計器用測定端子を仮保持した状態の説明図、(b)は計器用測定端子を離した状態の説明図である。これらの図に示すように、計器用測定端子1は、電気端子2に吸着する端子本体3が磁力を有する導電体からなり、その端子本体3には、測定器(図示省略)に接続されるリード線4が接続されている。
【0020】
その端子本体3には、電気端子2の一部(ヘッド部2aの一部)を嵌入させる円弧状の凹部5が形成され、その凹部5の周縁を電気端子2のヘッド部2aに接触させた状態(線接触状態)で吸着・接続させることができ、これにより測定が可能な状態となる。その凹部5が形成された端子本体3の前面部以外の部分は、安全な状態で計器用測定端子1を取り扱えるように、絶縁性のゴム材等の絶縁材6によって覆われている。なお、凹部5の周縁に面取りを施して電気端子2のヘッド部2aに面接触で吸着させてもよい。
【0021】
このような構成によれば、電気端子2に計器用測定端子1を吸着させておけば、手を離しても、リード線4を介して測定器に電圧、電流等の測定データを取り込むことができるため、常時接続での測定が可能となる。また、端子本体3は、上記の構成に限定されることなく電気端子2に安定な状態で吸着可能なように構成すればよく、充分な接触面積を確保することも容易で必要最小限にコンパクトなものにすることもでき、かつ安価に提供することができる。
【0022】
計器用測定端子1の絶縁材6の後部には、計器用測定端子操作具7(図2(a)(b)参照)に着脱自在に仮保持される被保持部8が形成されている。この被保持部8は、計器用測定端子1の背面側に後方に向けて突設された軸状部9に膨出部10を一体化させてなり、該被保持部8を、計器用測定端子操作具7によって挟持することで、計器用測定端子1を仮保持することができ、作業性よく計器用測定端子1を電気端子2に吸着させることができる。
【0023】
計器用測定端子操作具7は、軸状部9又は膨出部10を開閉自在に挟持するための挟持片12,12を筒状に形成された操作具本体13の先端に備え、挟持片12,12は、操作具本体13に設けた操作部材14によって開閉操作される。より詳しくは、挟持片12,12は、操作具本体13の先端に開閉自在に支持される一方、操作具本体13の内部に棒状の操作部材14を進退自在に挿入して戻しバネ15によって後方に付勢させ、かつ操作部材14を挟持片12,12に連係させて、その先端14aを両挟持片12,12の間に臨ませて、操作部材14の押出動作(前進動作)によって両挟持片12,12を開かせ、後退動作によって両挟持片12,12を閉じるように構成している。
【0024】
このような構成の吸着式測定装置によれば、計器用測定端子操作具7の操作部材14を操作することによって、計器用測定端子1の背面側に突設された軸状部9又は膨出部10を、操作具本体13の先端に設けられた挟持片12,12で挟持して(図2(a)参照)、測定対象となる電気端子2に、計器用測定端子1の端子本体3を吸着・接続させた後、操作部材14を前進させることで挟持片12,12を開放すると共に、その先端14aで膨出部10の後部を押して、計器用測定端子1を計器用測定端子操作具7から分離させて電気端子2に吸着・接続させた状態にすることができ、手を離した状態でも測定を開始できる状態となる(図2(b)参照)。このような計器用測定端子操作具7を用いることで、手の届かないところの電気端子2にも計器用測定端子1を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。また、図示は省略するが、両挟持片12,12で膨出部10を挟持するようにしてもよい。また、その挟持片12,12は3つ設けてもよい。
【0025】
図3(a)(b)は、計器用測定端子1の異なる例を示し、図3(a)では、軸状部9を長く形成しており、電気端子2が奥まった箇所に設けられている場合等に使用することができる。図3(b)では、軸状部9を略90°に折曲しており、電気端子2に到達するまでの経路が屈折している場合等に使用することができる。これらの計器用測定端子1は、軸状部9又は膨出部10を手で把持して電気端子2に吸着させてもよい。その場合を考慮して、膨出部10を偏平状等に形成して把持しやすくすればよい。また、間接活線操作棒で把持させてもよい。その場合は、膨出部10をリング状等に形成してもよい。
【0026】
図4(a)(b)(c)は、異なる吸着式測定装置を示し、この例では、計器用測定端子1には、被保持部8として、やや長く形成したストレートな軸状部9を設けるのみとし、弾力性のある樹脂材等で筒状に形成した計器用測定端子操作具7の操作具本体13には、後方から棒状の操作部材14を進退自在に挿入し、計器用測定端子1の軸状部9を脱落しない程度に前方から挿入することができるようにし、かつ、挿入した計器用測定端子1の軸状部9を操作部材14の前進動作で押し出すことができるように構成する。なお、操作具本体13の中間部には、手指をかけるための掛止部13aを突設している。
【0027】
このような構成の吸着式測定装置によれば、計器用測定端子1の軸状部9を操作具本体13の先端から挿入して仮保持させ、測定対象となる電気端子2に、端子本体3を吸着・接続させた後、押出部材14によって、計器用測定端子1の軸状部9を操作具本体13から押し出して、端子本体3を電気端子2に吸着・接続させた状態にすることができ、手を離した状態でも測定を開始できる状態となる。このような計器用測定端子操作具7を用いることで、手の届かないところの電気端子2にも計器用測定端子1を作業性よく吸着・接続させることができ利便性が向上する。
【0028】
なお、本発明は、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて、設計変更や改良等を行うのは自由であり、例えば、端子本体3は平坦であってもよく先尖り状に形成してもよい。また、間接活線操作棒等の絶縁性の操作部材を使用する場合等では、端子本体3に必ずしも絶縁材6を設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る計器用測定端子の斜視図、(b)は電気端子に計器用測定端子を吸着させた状態の断面図である。
【図2】(a)は同吸着式測定装置の計器用測定端子を仮保持した状態の説明図、(b)は計器用測定端子を離した状態の説明図である。
【図3】(a)は同計器用測定端子の軸状部を延長した例を示す計器用測定端子の側面図、(b)は軸状部を屈曲させた例を示す計器用測定端子の側面図である。
【図4】(a)は異なる同吸着式測定装置の計器用測定端子と計器用測定端子操作具の組み付け対応図、(b)は計器用測定端子を仮保持した状態の説明図、(c)は計器用測定端子を離した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…計器用測定端子、2…電気端子、2a…ヘッド部、3…端子本体、4…リード線、5…凹部、6…絶縁材、7…計器用測定端子操作具、8…被保持部、9…軸状部、10…膨出部、12…挟持片、13…操作具本体、14…操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象となる電気端子に吸着させる計器用測定端子であって、
前記電気端子に吸着する端子本体が磁力を有する導電体からなり、該端子本体に計器用のリード線を接続してなることを特徴とする計器用測定端子。
【請求項2】
前記端子本体には、前記電気端子の一部を嵌入させる凹部が形成され、該凹部の周縁が前記電気端子に接触することを特徴とする請求項1に記載の計器用測定端子。
【請求項3】
前記凹部が形成された端子本体の前面部以外の部分が絶縁材で覆われたことを特徴とする請求項2に記載の計器用測定端子。
【請求項4】
前記絶縁材には、計器用測定端子操作具に着脱自在に仮保持される被保持部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の計器用測定端子。
【請求項5】
請求項4に記載の計器用測定端子における前記被保持部を着脱自在に仮保持する計器用測定端子操作具であって、
前記被保持部は、前記計器用測定端子の背面側に突設された膨出部付きの軸状部であり、該軸状部又は膨出部を開閉自在に挟持する挟持片が操作具本体の先端に設けられ、前記挟持片を開閉操作するための操作部材が、該操作具本体に設けられることを特徴とする計器用測定端子操作具。
【請求項6】
請求項4に記載の計器用測定端子における前記被保持部を着脱自在に仮保持する計器用測定端子操作具であって、
前記被保持部は、前記計器用測定端子の背面側に突設された軸状部であり、該軸状部を先端から挿脱自在に挿入して仮保持することが可能な操作具本体が筒状に形成され、かつ前記操作具本体内に挿入された前記軸状部を押し出すための押出部材が、前記操作具本体の後端側から操作可能に設けられていることを特徴とする計器用測定端子操作具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−39457(P2008−39457A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210733(P2006−210733)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】