説明

誘電膜およびそれを用いたトランスデューサ

【課題】 体積抵抗率を低下させずに、比誘電率が大きい誘電膜を提供する。また、耐絶縁破壊性、電場応答性に優れたトランスデューサを提供する。
【解決手段】 誘電膜は、エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。該架橋体において、該極性化合物は、該エラストマーにグラフト結合されている。この誘電膜を、少なくとも一対の電極間に介装して、トランスデューサを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ、センサ等のトランスデューサに好適な誘電膜、およびそれを用いたトランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等がある。柔軟性が高く、小型で軽量なトランスデューサを構成するためには、誘電体エラストマー等の高分子材料が有用である。
【0003】
例えば、誘電体エラストマーからなる誘電膜の厚さ方向両面に、一対の電極を配置して、アクチュエータを構成することができる。この種のアクチュエータでは、電極間への印加電圧を大きくすると、電極間の静電引力が大きくなる。このため、電極間に挟まれた誘電膜は厚さ方向から圧縮され、誘電膜の厚さは薄くなる。膜厚が薄くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に伸長する。一方、電極間への印加電圧を小さくすると、電極間の静電引力が小さくなる。このため、誘電膜に対する厚さ方向からの圧縮力が小さくなり、誘電膜の弾性復元力により膜厚は厚くなる。膜厚が厚くなると、その分、誘電膜は電極面に対して平行方向に収縮する。このように、アクチュエータは、誘電膜を伸長、収縮させることによって、駆動対象部材を駆動させる。
【0004】
アクチュエータから取り出される力および変位量を大きくするという観点から、誘電膜は、以下の特性を有することが望ましい。すなわち、誘電膜と電極との界面に多くの電荷を蓄えるために比誘電率が大きいこと、高電界に耐えられるように耐絶縁破壊性に優れること、繰り返し伸縮可能なように柔軟性が高いこと、等である。したがって、誘電膜の材料としては、耐絶縁破壊性に優れるシリコーンゴムや、比誘電率が大きいニトリルゴム、アクリルゴム等が用いられることが多い(例えば、特許文献1、2参照)。また、比誘電率を大きくするという観点から、チタン酸バリウム等の高誘電率の微粒子を、エラストマー中に配合する試みもなされている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−524278号公報
【特許文献2】特表2003−505865号公報
【特許文献3】特開2008−53527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、シリコーンゴムは、シロキサン結合を骨格とする。このため、体積抵抗率が大きい。よって、シリコーンゴムからなる誘電膜は、大きな電圧を印加しても絶縁破壊しにくい。しかしながら、シリコーンゴムの極性は小さい。つまり、比誘電率が小さい。このため、シリコーンゴムからなる誘電膜を用いてアクチュエータを構成した場合には、印加電圧に対する静電引力が小さい。よって、電場応答性に劣り、充分な力および変位量を得ることができない。
【0007】
一方、ニトリルゴムやアクリルゴムの比誘電率は、シリコーンゴムの比誘電率よりも大きい。このため、誘電膜の材料にニトリルゴム等を用いると、印加電圧に対する静電引力が、シリコーンゴム等を用いた場合と比較して大きくなる。しかしながら、ニトリルゴム等からなる誘電膜を用いてアクチュエータを構成しても、取り出される力および変位量は、まだ満足できるレベルではない。このため、誘電膜の比誘電率を、さらに大きくする必要がある。
【0008】
ニトリルゴムは、電界中で配向分極やイオン分極を生じて、大きな双極子モーメントを誘起する構造を有する。このため、ニトリルゴムの極性は大きい。よって、ニトリルゴムは、比誘電率が比較的大きい部類に属する。しかしながら、極性基の含有量が一定以上になると、結晶性が高くなり、ガラス転移温度(Tg)が上昇する。これにより、比誘電率は低下してしまう。したがって、極性基を増加させるだけでは、比誘電率の向上に限界がある。
【0009】
また、上記特許文献2、3のように、エラストマー中に高誘電率の微粒子を配合させた場合には、誘電膜の柔軟性を維持することが難しくなる。すなわち、高誘電率の微粒子を配合することにより、誘電膜の比誘電率は向上するものの、エラストマーの弾性率が高くなり、伸びが小さくなる。つまり、エラストマーが本来有している柔軟性が損なわれてしまう。これにより、印加電圧に対する誘電膜の伸縮が阻害されるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、体積抵抗率を低下させずに、比誘電率が大きい誘電膜を提供することを課題とする。また、耐絶縁破壊性、電場応答性に優れたトランスデューサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するため、本発明の誘電膜は、トランスデューサにおいて少なくとも一対の電極間に介装される誘電膜であって、エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなり、該架橋体において、該極性化合物は該エラストマーにグラフト結合されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の誘電膜(架橋体)によると、エラストマーが架橋していると共に、ポリマー鎖に極性化合物がグラフト結合されている。つまり、極性化合物は、エラストマー中に単に分散しているのではなく、エラストマーとグラフト結合している。エラストマーの構造に、極性化合物が組み込まれることにより、エラストマー自体の特性が変化する。すなわち、極性化合物の比誘電率は、エラストマーの比誘電率よりも大きい。よって、極性化合物がグラフト結合したエラストマー(つまり、本発明の誘電膜)の比誘電率は、元のエラストマーの比誘電率よりも、大きくなる。また、極性化合物のグラフト化により、極性化合物由来の官能基や、新たな構造が、エラストマーに導入される。これにより、エラストマーの結晶性が乱されるため、誘電膜におけるガラス転移温度(Tg)の上昇は、抑制されると考えられる。
【0013】
極性化合物には、体積抵抗率が小さいものが多い。しかしながら、本発明の誘電膜によると、極性化合物は、エラストマーにグラフト結合されている。このため、極性化合物を含有しても、誘電膜の体積抵抗率に対する影響は、小さいと考えられる。よって、本発明の誘電膜によると、体積抵抗率を低下させることなく、比誘電率の向上を図ることができる。
【0014】
また、極性化合物は、エラストマーにグラフト結合されている。このため、上記特許文献2、3において、エラストマーに高誘電率微粒子を混合するのとは異なり、誘電膜の柔軟性を低下させるおそれは少ない。よって、誘電膜の伸縮を阻害しにくい。このように、本発明の誘電膜を用いると、例えばアクチュエータにおいて、大きな力および変位量を得ることができる。
【0015】
(2)また、本発明のトランスデューサは、エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなり、該架橋体において、該極性化合物は該エラストマーにグラフト結合されている誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備えることを特徴とする。
【0016】
トランスデューサは、ある種類のエネルギーを他の種類のエネルギーに変換する装置である。トランスデューサには、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ等や、音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン等が含まれる。本発明のトランスデューサは、上記本発明の誘電膜を備える。すなわち、本発明のトランスデューサにおいて、誘電膜の比誘電率は高い。このため、誘電膜と電極との界面に多くの電荷を蓄えることができる。また、極性化合物がグラフト化しても、エラストマー自体の柔軟性、体積抵抗率は低下しにくい。したがって、本発明のトランスデューサは、耐絶縁破壊性、電場応答性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のトランスデューサの一実施形態であるアクチュエータの断面模式図であって、(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。
【図2】本発明のトランスデューサの一実施形態である静電容量型センサの断面模式図である。
【図3】本発明のトランスデューサの一実施形態である発電素子の断面模式図であって、(a)は伸長時、(b)は収縮時を示す。
【図4】本発明のトランスデューサの一実施形態であるスピーカの斜視図である。
【図5】図4のV−V断面図である。
【図6】実験装置に取り付けられたアクチュエータの正面図である。
【図7】図6のVII−VII方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の誘電膜およびトランスデューサの実施形態について説明する。なお、本発明の誘電膜およびトランスデューサは、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【0019】
<誘電膜>
本発明の誘電膜は、エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。
【0020】
エラストマーとしては、体積抵抗率が大きいものを用いることが望ましい。体積抵抗率が大きい誘電膜は、耐絶縁破壊性に優れる。このため、誘電膜に、より大きな電圧を印加することができる。これにより、トランスデューサの出力、変位量を大きくすることができる。例えば、エラストマーの体積抵抗率は、10Ω・cm以上であることが望ましい。1010Ω・cm以上が好適である。さらに、比誘電率が比較的大きいものや、柔軟性が高いものが好適である。エラストマーの柔軟性が高いと、誘電膜の伸縮性が向上する。これにより、トランスデューサの電場応答性、耐久性が向上する。
【0021】
このような観点から、好適なエラストマーとしては、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム等が挙げられる。また、エポキシ化天然ゴム、カルボキシル変性水素化ニトリルゴム等のように、官能基を導入するなどして変性したエラストマーを用いてもよい。エラストマーは、一種を単独で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。
【0022】
極性化合物は、用いるエラストマーに応じて、適宜選択すればよい。すなわち、エラストマーよりも比誘電率が大きく、かつ、エラストマーと結合可能な構造や官能基を有する化合物の中から、選択すればよい。
【0023】
極性化合物としては、例えば、炭素−炭素二重結合(C=C)、ヒドロキシル基(−OH)、アミノ基(−NH)、カルボキシル基(−COOH)、チオール基(−SH)、およびハロゲン化アルキル基から選ばれる一種以上を有する化合物が挙げられる。このような極性化合物とエラストマーとは、例えば、以下の構造、官能基の組合せで結合可能である。以下、結合可能な構造、官能基の組合せを、[エラストマー側の構造、官能基]−[極性化合物側の構造、官能基]の順に示す。
【0024】
[炭素−炭素二重結合]−[炭素−炭素二重結合]、[フェノールまたはその置換体]−[炭素−炭素二重結合]、[キノン誘導体]−[炭素−炭素二重結合]、[イソシアネート]−[ヒドロキシル基]、[イソシアネート]−[アミノ基]、[イソシアネート]−[カルボキシル基]、[カルボキシル基]−[ヒドロキシル基]、[カルボキシル基]−[アミノ基]、[エポキシ基]−[ヒドロキシル基]、[エポキシ基]−[アミノ基]、[エポキシ基]−[カルボキシル基]、[ハロゲン化アルキル基]−[アミノ基]、[ハロゲン化アルキル基]−[カルボキシル基]、[ハロゲン化アルキル基]−[チオール基]、[カルボキシル基]−[ハロゲン化アルキル基]、[アミノ基]−[ハロゲン化アルキル基]。
【0025】
また、極性化合物の比誘電率は、大きい方が望ましい。例えば、比誘電率が15以上の化合物が好適である。例えば、スルホキシド(R−S(=O)−R)、スルホンアミド(R−SO−NR)、炭酸エステル(RO−C(=O)−OR)、およびシアノ基(−CN)のうちのいずれかの構造を有する化合物の中には、比誘電率が大きいものが多い。例えば、炭酸ビニレン、炭酸アリルメチル、二炭酸ジアリル、フェニルビニルスルホキシド等が挙げられる。
【0026】
本発明の誘電膜において、極性化合物は、エラストマーにグラフト結合されている。グラフト結合の有無の判断は、例えば、以下のように行うことができる。まず、極性化合物が可溶な溶剤を準備する。次に、当該溶剤に、誘電膜を、所定時間浸漬する。その後、溶剤に溶解せずに残存した誘電膜(不溶分)の質量を測定する。そして、溶剤浸漬前の誘電膜の質量に対する不溶分の質量割合を、算出する。不溶分の質量割合が100%に近ければ、配合した極性化合物がエラストマーにグラフト結合されていると判断できる。
【0027】
<誘電膜の製造方法>
本発明の誘電膜は、エラストマーと極性化合物とを含むエラストマー組成物を架橋して製造される。エラストマー組成物には、必要に応じて、架橋剤、加硫促進剤、加工助剤、可塑剤、老化防止剤、補強剤、着色剤等を添加してもよい。架橋方法は、エラストマーの種類に応じて、適宜決定すればよい。例えば、硫黄架橋、過酸化物架橋、イソシアネート架橋、電子線(EV)架橋、紫外線(UV)架橋等が挙げられる。架橋方法に応じて、架橋剤等の必要な添加剤を、エラストマー組成物に添加すればよい。
【0028】
エラストマー組成物は、例えば、エラストマー、極性化合物、および必要に応じて添加剤を、ロールや混練機により混練りして、調製することができる。この場合、調製したエラストマー組成物を、例えば金型に充填して、所定の条件下でプレス架橋することにより、誘電膜を製造すればよい。また、エラストマー、極性化合物、および必要に応じて添加剤を、所定の溶剤中に溶解して、エラストマー組成物を調製することができる。この場合は、まず、調製したエラストマー組成物を、基材等に塗布する。次に、塗膜を乾燥させて、溶剤を揮発させる。その後、所定の条件下で架橋反応を進行させて、誘電膜を製造すればよい。なお、エラストマー組成物を架橋しただけでは、エラストマーに対する極性化合物のグラフト化が充分に進行しない場合には、架橋に加えて、さらに所定の条件で、グラフト化を行ってもよい。
【0029】
極性化合物の配合量は、エラストマー中の炭素−炭素二重結合量および官能基量の等量以下とすることが望ましい。等量よりも多くなると、グラフト化しないものが増加して、誘電膜の体積抵抗率を低下させるおそれがある。また、エラストマーの100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下とすることが望ましい。1質量部未満であると、比誘電率の向上効果が小さい。5質量部以上が好適である。反対に、100質量部を超えると、グラフト化しないものが増加して、誘電膜の体積抵抗率を低下させるおそれがある。30質量部以下が好適である。
【0030】
<トランスデューサ>
本発明のトランスデューサは、上記本発明の誘電膜と、該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、を備える。本発明の誘電膜の構成、および製造方法については、上述した通りである。よって、ここでは説明を割愛する。なお、本発明のトランスデューサにおいても、本発明の誘電膜における好適な態様を採用することが望ましい。
【0031】
誘電膜の厚さは、用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明のトランスデューサをアクチュエータとして用いる場合には、アクチュエータの小型化、低電位駆動化、および変位量を大きくする等の観点から、誘電膜の厚さは薄い方が望ましい。この場合、絶縁破壊性等をも考慮して、誘電膜の厚さを、1μm以上1000μm(1mm)以下とすることが望ましい。より好適な範囲は、5μm以上200μm以下である。
【0032】
本発明のトランスデューサにおいて、電極の材質は、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料や金属からなる導電材に、バインダーとしてオイルやエラストマーを混合したペーストまたは塗料を塗布した電極、あるいは炭素材料や金属等をメッシュ状に編んだ電極等を使用することができる。電極は、誘電膜の伸縮に応じて伸縮可能であることが望ましい。電極が、誘電膜と共に伸縮すると、誘電膜の変形が電極によって妨げられにくい。このため、本発明のトランスデューサを、アクチュエータ等として使用した場合に、所望の変位量を得やすくなる。
【0033】
また、本発明のトランスデューサを、複数の誘電膜と電極とを交互に積層させた積層構造とすると、より大きな力を発生させることができる。したがって、積層構造を採用した場合には、例えば、アクチュエータの出力を大きくすることができる。これにより、駆動対象部材をより大きな力で駆動させることができる。
【0034】
[第一実施形態]
本発明のトランスデューサの第一例として、アクチュエータに具現化した実施形態を説明する。図1に、本実施形態のアクチュエータの断面模式図を示す。(a)はオフ状態、(b)はオン状態を各々示す。
【0035】
図1に示すように、アクチュエータ1は、誘電膜10と電極11a、11bとを備えている。誘電膜10は、水素化ニトリルゴム(エラストマー)と、二炭酸ジアリル(極性化合物)と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。誘電膜10は、本発明の誘電膜に含まれる。電極11a、11bは、誘電膜10の上面および下面に、各々固定されている。電極11a、11bは、導線を介して電源12に接続されている。オフ状態からオン状態に切り替える際は、一対の電極11a、11b間に電圧を印加する。電圧の印加により、誘電膜10の厚さは薄くなり、その分だけ、図1(b)中白抜き矢印で示すように、電極11a、11b面に対して平行方向に伸長する。これにより、アクチュエータ1は、図中上下方向および左右方向の駆動力を出力する。
【0036】
ここで、誘電膜10の比誘電率は大きい。このため、誘電膜10と電極11a、11bとの界面に、多くの電荷を蓄えることができる。つまり、電極11a、11bとの間に、大きな静電引力が生じる。また、誘電膜10は柔軟である。したがって、アクチュエータ1によると、大きな力および変位量を得ることができる。また、誘電膜10は、極性化合物を含む。しかし、誘電膜10は、エラストマーのみから製造された誘電膜の体積抵抗率と、略同レベルの体積抵抗率を維持している。よって、誘電膜10の耐絶縁破壊性は高い。このため、誘電膜10に、大きな電圧を印加することができる。その結果、より大きな力、変位量を得ることができる。なお、誘電膜10を面延在方向に延伸した状態で配置すると、誘電膜10の耐絶縁破壊性が向上する。よって、誘電膜10に、より大きな電圧を印加することができる。これにより、アクチュエータ1の出力、変位量をより大きくすることができる。
【0037】
[第二実施形態]
本発明のトランスデューサの第二例として、静電容量型センサに具現化した実施形態を説明する。図2に、本実施形態の静電容量型センサの断面模式図を示す。図2に示すように、静電容量型センサ2は、誘電膜20と電極21a、21bと基板22とを備えている。誘電膜20は、水素化ニトリルゴム(エラストマー)と、二炭酸ジアリル(極性化合物)と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。誘電膜20は、本発明の誘電膜に含まれる。誘電膜20は、左右方向に延びる帯状を呈している。誘電膜20は、基板22の上面に、電極21bを介して配置されている。電極21a、21bは、左右方向に延びる帯状を呈している。電極21a、21bは、誘電膜20の上面および下面に、それぞれ固定されている。電極21a、21bには、導線(図略)が接続されている。基板22は絶縁性の柔軟なフィルムであって、左右方向に延びる帯状を呈している。基板22は、電極21bの下面に固定されている。
【0038】
静電容量型センサ2の静電容量(キャパシタンス)は、次式(I)により求めることができる。
C=εεS/d・・・(I)
[C:静電容量、ε:真空中の誘電率、ε:誘電膜の比誘電率、S:電極面積、d:電極間距離]
例えば、静電容量型センサ2が上方から押圧されると、誘電膜20は圧縮され、その分だけ電極21a、21b面に対して平行方向に伸長する。膜厚、すなわち電極間距離dが小さくなると、電極21a、21b間の静電容量は大きくなる。この静電容量変化により、加わった荷重の大きさや位置等が検出される。
【0039】
ここで、誘電膜20は柔軟である。このため、誘電膜20は、外部から加えられた荷重に対して変形しやすい。つまり、電極間距離dの変位量が大きい。また、誘電膜20の比誘電率は大きい。このため、荷重に対する静電容量の変化が大きい。したがって、静電容量型センサ2の検出感度は高い。また、誘電膜20は、絶縁破壊しにくい。よって、静電容量型センサ2は、耐久性に優れる。
【0040】
[第三実施形態]
本発明のトランスデューサの第三例として、発電素子の実施形態を説明する。図3に、本実施形態の発電素子の断面模式図を示す。(a)は伸長時、(b)は収縮時を各々示す。図3に示すように、発電素子3は、誘電膜30と電極31a、31bとを備えている。誘電膜30は、水素化ニトリルゴム(エラストマー)と、二炭酸ジアリル(極性化合物)と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。誘電膜30は、本発明の誘電膜に含まれる。電極31a、31bは、誘電膜30の上面および下面に、それぞれ固定されている。電極31a、31bには、導線が接続されており、電極31bは、接地されている。
【0041】
図3(a)に示すように、発電素子3を圧縮し、誘電膜30を電極31a、31b面に対して平行方向に伸長すると、誘電膜30の厚さは薄くなり、電極31a、31b間に電荷が蓄えられる。その後、圧縮力を除去すると、図3(b)に示すように、誘電膜30の弾性復元力により誘電膜30は収縮し、膜厚が厚くなる。その際、電荷が放出され発電される。
【0042】
ここで、誘電膜30の比誘電率は大きい。このため、電極31a、31bとの界面に多くの電荷を蓄えることができる。また、誘電膜30は柔軟である。このため、誘電膜30を伸縮させやすい。つまり、誘電膜30の伸縮量は大きい。したがって、発電素子3の発電量は大きい。また、誘電膜30は、絶縁破壊しにくい。よって、発電素子3は、耐久性に優れる。
【0043】
[第四実施形態]
本発明のトランスデューサの第四例として、スピーカに具現化した実施形態を説明する。まず、本実施形態のスピーカの構成について説明する。図4に、本実施形態のスピーカの斜視図を示す。図5に、図4のV−V断面図を示す。図4、図5に示すように、スピーカ4は、第一アウタフレーム40aと、第一インナフレーム41aと、第一誘電膜42aと、第一アウタ電極43aと、第一インナ電極44aと、第一振動板45aと、第二アウタフレーム40bと、第二インナフレーム41bと、第二誘電膜42bと、第二アウタ電極43bと、第二インナ電極44bと、第二振動板45bと、八つのボルト460と、八つのナット461と、八つのスペーサ462と、を備えている。
【0044】
第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41aは、各々、樹脂製であって、リング状を呈している。第一誘電膜42aは、円形の薄膜状を呈している。第一誘電膜42aは、水素化ニトリルゴム(エラストマー)と、二炭酸ジアリル(極性化合物)と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなる。第一誘電膜42aは、本発明の誘電膜に含まれる。第一誘電膜42aは、第一アウタフレーム40aと第一インナフレーム41aとの間に張設されている。すなわち、第一誘電膜42aは、表側の第一アウタフレーム40aと裏側の第一インナフレーム41aとにより、所定の張力を確保した状態で、挟持、固定されている。
【0045】
第一振動板45aは、樹脂製であって、円板状を呈している。第一振動板45aは、第一誘電膜42aよりも小径である。第一振動板45aは、第一誘電膜42aの表面の略中央に配置されている。第一アウタ電極43aは、柔軟導電材料からなり、リング状を呈している。第一アウタ電極43aは、第一誘電膜42aの表面に貼着されている。第一インナ電極44aも、柔軟導電材料からなり、リング状を呈している。第一インナ電極44aは、第一誘電膜42aの裏面に貼着されている。第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとは、第一誘電膜42aを挟んで、表裏方向に背向している。図5に示すように、第一アウタ電極43aは、端子430aを備えている。第一インナ電極44aは、端子440aを備えている。端子430a、440aには、外部から電圧が印加される。
【0046】
第二アウタフレーム40b、第二インナフレーム41b、第二誘電膜42b、第二アウタ電極43b、第二インナ電極44b、第二振動板45b(以下、「第二部材」と総称する。)の構成、材質、形状は、上記第一アウタフレーム40a、第一インナフレーム41a、第一誘電膜42a、第一アウタ電極43a、第一インナ電極44a、第一振動板45a(以下、「第一部材」と総称する。)の構成、材質、形状と、同様である。また、第二部材の配置は、上記第一部材の配置と、表裏方向に対称である。簡単に説明すると、第二誘電膜42bは、第二アウタフレーム40bと第二インナフレーム41bとの間に張設されている。第二振動板45bは、第二誘電膜42bの表面の略中央に配置されている。第二アウタ電極43bは、第二誘電膜42bの表面に印刷されている。第二インナ電極44bは、第二誘電膜42bの裏面に印刷されている。第二アウタ電極43bの端子430b、第二インナ電極44bの端子440bには、外部から電圧が印加される。
【0047】
第一部材と第二部材とは、八つのボルト460、八つのナット461により、八つのスペーサ462を介して、固定されている。「ボルト460−ナット461−スペーサ462」のセットは、スピーカ4の周方向に所定間隔ずつ離間して配置されている。ボルト460は、第一アウタフレーム40a表面から第二アウタフレーム40b表面までを貫通している。ナット461は、ボルト460の貫通端に螺着されている。スペーサ462は、樹脂製であって、ボルト460の軸部に環装されている。スペーサ462は、第一インナフレーム41aと第二インナフレーム41bとの間に、所定の間隔を確保している。第一誘電膜42aの中央部裏面(第一振動板45aが配置されている部分の裏側)と、第二誘電膜42bの中央部裏面(第二振動板45bが配置されている部分の裏側)と、は接合されている。このため、第一誘電膜42aには、図5に白抜き矢印Y1aで示す方向に、付勢力が蓄積されている。また、第二誘電膜42bには、図5に白抜き矢印Y1bで示す方向に、付勢力が蓄積されている。
【0048】
次に、本実施形態のスピーカの動きについて説明する。端子430a、440aと端子430b、440bとを介して、第一アウタ電極43aおよび第一インナ電極44aと、第二アウタ電極43bおよび第二インナ電極44bと、には、初期状態(オフセット状態)において、所定の電圧(オフセット電圧)が印加されている。スピーカ4の動作時には、端子430a、440aと端子430b、440bとに、逆位相の電圧が印加される。
【0049】
例えば、端子430a、440aに、オフセット電圧+1Vが印加されると、第一誘電膜42aのうち、第一アウタ電極43aと第一インナ電極44aとの間に配置されている部分の膜厚が薄くなる。並びに、当該部分が径方向に伸長する。これと同時に、端子430b、440bに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加される。すると、第二誘電膜42bのうち、第二アウタ電極43bと第二インナ電極44bとの間に配置されている部分の膜厚が厚くなる。並びに当該部分が径方向に収縮する。これにより、第二誘電膜42bは、第一誘電膜42aを引っ張りながら、図5に白抜き矢印Y1bで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。反対に、端子430b、440bにオフセット電圧+1Vが印加され、端子430a、440aに逆位相の電圧(オフセット電圧−1V)が印加されると、第一誘電膜42aは、第二誘電膜42bを引っ張りながら、図5に白抜き矢印Y1aで示す方向に、自身の付勢力により弾性変形する。このようにして、第一振動板45a、第二振動板45bを振動させることにより空気を振動させ、音声を発生させる。
【0050】
次に、本実施形態のスピーカ4の作用効果について説明する。本実施形態のスピーカ4によると、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bの比誘電率は大きい。このため、第一誘電膜42aと第一アウタ電極43aおよび第一インナ電極44aとの界面、第二誘電膜42bと第二アウタ電極43bおよび第二インナ電極44bとの界面に、多くの電荷を蓄えることができる。また、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bは、柔軟である。このため、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bを、伸縮させやすい。つまり、印加電圧に対する第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bの伸縮量は、大きい。したがって、スピーカ4の電場応答性は良好である。また、第一誘電膜42aおよび第二誘電膜42bは、絶縁破壊しにくい。よって、スピーカ4は、耐久性に優れる。
【0051】
また、第一アウタ電極43a、第一インナ電極44a、第二アウタ電極43b、および第二インナ電極44bは、柔軟導電材料からなる。このため、第一誘電膜42a、第二誘電膜42bの変形に追従して変形することができる。すなわち、第一誘電膜42a、第二誘電膜42bの動きが、電極43a、44a、43b、44bにより妨げられにくい。さらに、電極43a、44a、43b、44bは、伸長されても電気抵抗の増加が小さい。このため、スピーカ4の電場応答性は良好である。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0053】
<誘電膜の製造>
[実施例1の誘電膜]
まず、水素化ニトリルゴム(日本ゼオン(株)製「Zetpol(登録商標)1000L」、比誘電率:約13(100Hz))を、メチルエチルケトン(MEK)に溶解した。続いて、この溶液に、極性化合物の二炭酸ジアリル(比誘電率:約20(100Hz))を添加して、エラストマー組成物を調製した。次に、調製したエラストマー組成物を、基材上に塗布し、80℃で約30分間、塗膜を乾燥させた。その後、塗膜に300kGyの電子線を照射して、架橋した。このようにして、実施例1の誘電膜を得た。実施例1の誘電膜の膜厚は、約40μmである。
【0054】
[比較例1の誘電膜]
実施例1の誘電膜と比較例1の誘電膜との相違点は、極性化合物の有無である。つまり、二炭酸ジアリルを添加せずにエラストマー組成物を調製した以外は、上記実施例1と同じようにして、比較例1の誘電膜を製造した。比較例1の誘電膜の膜厚は、約40μmである。
【0055】
<誘電膜の物性等>
[MEK不溶分の測定]
実施例1の誘電膜について、エラストマーに極性化合物がグラフト結合されているかどうかを、確認した。まず、実施例1の誘電膜の1gを、試料として準備した。次に、当該試料を、誘電膜の製造に使用したMEK40mlに、室温下で4時間浸漬した。その後、MEKに溶解せずに残存した試料(MEK不溶分)の質量を、測定した。そして、MEK浸漬前の試料1gに対するMEK不溶分の質量割合を、算出した。一方、比較のために、エラストマーのみからなる比較例1の誘電膜についても、同様にして、MEK不溶分の質量割合を算出した。
【0056】
測定結果を下記表1に示す。表1に示すように、実施例1の誘電膜におけるMEK不溶分の質量割合は、97.81%となった。また、比較例1の誘電膜におけるMEK不溶分の質量割合は、97.79%となった。このように、両者のMEK不溶分の質量割合は、略同じ値であった。また、いずれも100質量%に近い値であった。以上より、実施例1の誘電膜において、極性化合物はエラストマーにグラフト結合されていることが確認された。
【0057】
[体積抵抗率の測定]
実施例1および比較例1の誘電膜の体積抵抗率を、JIS K 6911(1995)に準じて測定した。測定は、直流電圧100Vを印加して行った。測定結果を下記表1に示す。表1に示すように、実施例1の誘電膜の体積抵抗率は、比較例1の誘電膜の体積抵抗率と、略同じ値となった。これより、実施例1の誘電膜は、高い耐絶縁破壊性を維持していることがわかる。
【0058】
[比誘電率の測定]
実施例1および比較例1の誘電膜の比誘電率を測定した。比誘電率の測定は、各誘電膜をサンプルホルダー(ソーラトロン社製、12962A型)に設置し、誘電率測定インターフェイス(同社製、1296型)、および周波数応答アナライザー(同社製、1255B型)を併用して測定した(周波数100Hz)。測定結果を下記表1に示す。表1に示すように、実施例1の誘電膜の比誘電率は、比較例1の誘電膜の比誘電率よりも、大きくなった。
【表1】

【0059】
<アクチュエータの評価>
次に、実施例1および比較例1の各誘電膜を用いてアクチュエータを作製し、アクチュエータの発生応力を測定した。まず、実験装置および実験方法について説明する。
【0060】
実施例1および比較例1の各誘電膜の表裏両面に、アクリルゴムにカーボンブラックが混合されてなる電極を各々貼着してアクチュエータを作製した。以下、作製したアクチュエータを、誘電膜の種類に対応させて、実施例1のアクチュエータ、比較例1のアクチュエータと称す。図6に、実験装置に取り付けられたアクチュエータの表側正面図を示す。図7に、図6のVII−VII方向断面図を示す。
【0061】
図6、図7に示すように、アクチュエータ5の上端は、実験装置における上側チャック52により把持されている。アクチュエータ5の下端は、下側チャック53により把持されている。アクチュエータ5は、予め上下方向に延伸された状態で、上側チャック52と下側チャック53との間に、取り付けられている(延伸率25%)。上側チャック52の上方には、ロードセル(図略)が配置されている。
【0062】
アクチュエータ5は、誘電膜50と一対の電極51a、51bとからなる。誘電膜50は、自然状態で、縦50mm、横25mm、厚さ約40μmの長方形の薄膜状を呈している。電極51a、51bは、誘電膜50を挟んで表裏方向に対向するよう配置されている。電極51a、51bは、自然状態で、各々、縦38mm、横20mm、厚さ約10μmの長方形の薄膜状を呈している。電極51a、51bは、上下方向に8mmずれた状態で配置されている。つまり、電極51a、51bは、誘電膜50を介して、縦30mm、横20mmの範囲で重なっている。電極51aの下端には、導線(図略)が接続されている。同様に、電極51bの上端には、導線(図略)が接続されている。電極51a、51bは、各々の導線を介して、電源(図略)に接続されている。
【0063】
電極51a、51b間に電圧を印加すると、電極51a、51b間に静電引力が生じて、誘電膜50を圧縮する。これにより、誘電膜50の厚さは薄くなり、延伸方向(上下方向)に伸長する。誘電膜50の伸長により、上下方向の延伸力は減少する。電圧印加前後において減少した延伸力を、ロードセルにより測定して、発生応力とした。発生応力の測定は、印加する電圧を段階的に増加させて、誘電膜50が破壊されるまで行った。実施例1および比較例1の各アクチュエータにおける、電界強度が20V/μmの時の発生応力を、上記表1にまとめて示す。
【0064】
表1に示すように、実施例1のアクチュエータの発生応力は、比較例1のアクチュエータの発生応力と比較して、大きくなった。以上より、本発明の誘電膜によると、出力が大きなアクチュエータを構成できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の誘電膜は、機械エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うアクチュエータ、センサ、発電素子等、あるいは音響エネルギーと電気エネルギーとの変換を行うスピーカ、マイクロフォン、ノイズキャンセラ等のトランスデューサに広く用いることができる。なかでも、産業、医療、福祉ロボット用の人工筋肉、電子部品冷却用や医療用等の小型ポンプ、および医療用器具等に用いられる柔軟なアクチュエータに好適である。
【符号の説明】
【0066】
1:アクチュエータ(トランスデューサ) 10:誘電膜 11a、11b:電極
12:電源
2:静電容量型センサ(トランスデューサ) 20:誘電膜 21a、21b:電極
22:基板
3:発電素子(トランスデューサ) 30:誘電膜 31a、31b:電極
4:スピーカ(トランスデューサ)
40a:第一アウタフレーム 40b:第二アウタフレーム
41a:第一インナフレーム 41b:第二インナフレーム
42a:第一誘電膜 42b:第二誘電膜
43a:第一アウタ電極 43b:第二アウタ電極
44a:第一インナ電極 44b:第二インナ電極
45a:第一振動板 45b:第二振動板
430a、430b、440a、440b:端子 460:ボルト 461:ナット
462:スペーサ
5:アクチュエータ 50:誘電膜 51a、51b:電極 52:上側チャック
53:下側チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサにおいて少なくとも一対の電極間に介装される誘電膜であって、
エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなり、
該架橋体において、該極性化合物は該エラストマーにグラフト結合されていることを特徴とする誘電膜。
【請求項2】
前記エラストマーの体積抵抗率は、10Ω・cm以上である請求項1に記載の誘電膜。
【請求項3】
前記極性化合物は、炭素−炭素二重結合、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、およびハロゲン化アルキル基から選ばれる一種以上を有する請求項1または請求項2に記載の誘電膜。
【請求項4】
前記極性化合物は、スルホキシド、スルホンアミド、炭酸エステル、およびシアノ基のうちのいずれかの構造または官能基を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の誘電膜。
【請求項5】
前記エラストマーは、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、カルボキシル変性水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴムから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の誘電膜。
【請求項6】
エラストマーと、該エラストマーよりも比誘電率が大きく該エラストマーと結合可能な極性化合物と、を含むエラストマー組成物を架橋した架橋体からなり、該架橋体において、該極性化合物は該エラストマーにグラフト結合されている誘電膜と、
該誘電膜を介して配置されている複数の電極と、
を備えることを特徴とするトランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72112(P2011−72112A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220429(P2009−220429)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】