説明

貫通電極付きガラスウエハおよびその形成方法

【課題】温度変化による影響を抑えた微細な貫通電極を備えるガラスウエハの形成方法を提供する。
【解決手段】搬送具104に金属薄膜105を介してレジスト106を塗布し;レジスト106に、貫通電極Tgv1に対応すると共に金属薄膜105に至る複数の開口部Htを形成し;前記複数の開口部Htの内壁に前記金属薄膜105から連続に金属Teを円筒状にメッキし;レジスト106を除去し;円筒状の金属Te間と金属薄膜105上に溶融したガラス101を供給し;ガラス101が固化した後に前記金属薄膜105を研磨して、複数のメッキされた円筒状金属Te間から金属薄膜105を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型或いは薄型の半導体パッケージに用いられる、インターポーザ基板に貫通電極を備えるガラスウエハおよびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6及び図7に従来の貫通電極付きガラスウエハの一例を示す。図6の斜視図から見て取れるように、ガラスウエハGwcは、絶縁基板であるガラス基板1に複数(図6では4つ)の貫通電極TgvCが所定の間隔で、あるいはパターンに設けられて構成されている。なお、貫通電極TgvCはそれぞれ、ガラス基板1の厚さ方向、つまり対向する2面に渡って円柱形状に延在している。
【0003】
図7に、図6におけるVII−VII線に沿って、2つの貫通電極TgvCをそれぞれの直径に沿って、ガラス基板1の厚み方向に切断した様子を示す。上述のように、貫通電極TgvCは、ガラス基板1の対向する2つの面、本例における上面Su及び下面Sbに渡って、長さLeだけ延在している。貫通電極TgvCは、通常レーザ、ブラスト及びエッチングなどの方法でガラス基板1に設けられた、図7に示される縦断面を有する直径が80μm〜100μm程度の円柱形状の貫通孔Htcの内壁に、金属膜Fuおよび金属膜Fbが設けられている。金属膜Fuは、上面Suから下面Sbに向かって長さLuだけ延在し、金属膜Fbは下面Sbから上面Suに向かって長さLbだけ延在している。
【0004】
金属膜Fuおよび金属膜Fbが両端部に設けられた貫通孔Htcの内部に、硬化された導電性ペ−スト4が充填されている。金属膜Fuと金属膜Fbとは、硬化した導電性ペ−スト4によって電気的に接続されて、貫通電極TgvCとして機能する。貫通電極TgvCの金属膜Fuに接続された半導体部品(例えば、LSI)が、金属膜Fbに接続される基板電極(例えば、BGA:Ball Grid Array)に電気的に接続されて、半導体構造体が構成できる。
【0005】
貫通孔Htcは、レーザ、ブラストおよびエッチングなどによってガラス基板1を加工して形成される。しかしながら、薄いガラス基板1に、貫通孔Htcを所望の形状に空ける加工は非常に困難である。例えば、レーザ加工ではガラスが溶融するため、加工部に突起が形成されると共に、加工表面が粗くなる。また、直径が100μmよりも小さい孔を精度よく形成することが困難である。また、レーザにより穿たれた貫通孔は円柱状というよりは、先細りの円錐台状になってしまう。
【0006】
また、ブラスト加工で穿たれた貫通孔はテーパー状に先広がりになると共に形状のばらつきも大きく、微細な加工が困難である。さらに、エッチング加工では処理に時間を要すると共に、穿たれた孔の形状は大きく変動する。これらの問題は、形成されたガラス基板に孔を空ける加工に起因している。
【0007】
図8を参照して、上述の問題を解決するべく提案されているガラスウエハGwcの形成方法(例えば、特許文献1)について説明する。この方法では、形成されたガラス基板を加工して貫通孔を空けるのではなく、ガラス基板1と貫通孔Htcとを同時に形成することによって、レーザ加工、ブラスト加工、およびエッチングなどでガラス基板1に貫通孔Htcを空ける加工に起因する問題の回避を図っている。
【0008】
具体的には、先ず鋳型(不図示)に溶融したガラスを注入して、図8(a)に示す孔Htcを有するガラス基板1が生成される。
【0009】
次に、図8(b)に示すように、ガラス基板1の2つの面(上面Suおよび下面Sb)のうち一方(本例では、下面Sb上)にスクリ−ンマスク9が付与される。この状態で、スクリ−ンマスク9の上から金属蒸気3‘がガラス基板1に対して付与される。結果、貫通孔Htcの下面Sbでの開口端近傍部に金属が蒸着して、金属膜Fbが形成される。次に、ガラス基板1の上面Suに対しても、下面Sbに対するのと同様に、スクリ−ンマスク9および金属膜3が塗布されて、貫通孔Htcの上面Suでの開口端近傍部に金属が蒸着して金属膜Fuが形成される。
【0010】
結果、図8(c)に示すように、貫通孔Htcの上面Suおよび下面Sbの近傍部のそれぞれに金属膜Fuおよび金属膜Fbが形成されたガラス基板1ができる。なお、金属膜Fuおよび金属膜Fbは、この状態では、それぞれ上面Suおよび下面Sbから若干盛り上がるとともに、上面Suおよび下面Sbの一部にはみ出している。
【0011】
次に、図8(d)に示すように、金属膜Fuおよび金属膜Fbが形成されたガラス基板1の上面Suに、貫通孔Htcを避けてスクリ−ンマスク9が再度付与される。そして、スクリ−ンマスク9越しに、貫通孔Htcにクリーム半田(導電性ペ−スト)4が充填される。
【0012】
図8(e)に示すように、クリーム半田(導電性ペ−スト)4は、上面Suおよび下面Sbからはみ出した状態で、貫通孔Htc内に充填される。次に、この状態のガラス基板1をリフロー処理することにより、図8(f)に示すようにクリーム半田(導電性ペ−スト)4に溶解固化して、金属膜Fuと金属膜Fbとが電気的に接続される。そして、ガラス基板1の上面Suおよび下面Sbがそれぞれ研磨されて、図8(g)に示すように貫通電極TgvCが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−165137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の従来のガラスウエハGwcの形成方法(特許文献1)においては、他の従来の方法におけるような、ガラスの加工に起因する問題は解消されている。しかしながら、金属膜Fuと金属膜Fb、ガラス基板1、および導電性ペ−スト4はそれぞれ異なる熱膨張率を有する。よって、ガラスウエハGwcの温度変化に応じて、金属膜Fu、金属膜Fb、ガラス基板1、および導電性ペ−スト4の膨張量は異なるので、導電性ペ−スト4が金属膜Fuと金属膜Fbから剥離して、金属膜Fuと金属膜Fbとの導電性ペ−スト4による電気的接続が損傷或いは失われることがある。
【0015】
つまり、導電性ペ−スト4の熱膨張率がガラス基板1の熱膨張率より大きければ、昇温すれば導電性ペ−スト4はガラス基板1に対して膨張する。この場合、導電性ペ−スト4が金属膜Fuおよび金属膜Fbから剥離する恐れは少ないが、導電性ペ−スト4の上下に位置する半導体部品や電極などを押しつけることによる内部応力の増加により電気特性が変化したりする。但し、導電性ペ−スト4の膨張率によっては、導電性ペ−スト4は金属膜FuおよびFbから剥離する場合もある。
【0016】
一方、降温すれば、導電性ペ−スト4はガラス基板1に対して収縮するので、導電性ペ−スト4は金属膜Fuおよび金属膜Fbから剥離したり、さらに導電性ペ−スト4の上下に位置する半導体部品や電極から剥離したりすることがある。導電性ペ−スト4が金属膜
Fu或いは金属膜Fbから剥離すれば、かりに導電性ペ−スト4が半導体部品および電極から剥離していなくとも、金属膜Fuと金属膜Fbの電気的接続は失われて、貫通電極TgvCとして機能しない。なお、導電性ペ−スト4が金属膜Fu或いは金属膜Fbから剥離すれば、最悪の場合には半導体部品と電極との電気的接続自体が失われる。
【0017】
導電性ペ−スト4の熱膨張率がガラス基板1の熱膨張率より小さい場合には、昇温時および降温時の挙動が異なるものの、貫通電極TgvCの機能が損なわれることは同様である。また、金属膜Fuおよび金属膜Fbの熱膨張率も、同様に、貫通電極TgvCの機能に影響を与える。
【0018】
このような問題は、ガラス基板1を加工して貫通孔Htcを形成する方法においてはさらに甚だしくなる。なぜならば、ガラス加工により形成される貫通孔Htcの形状精度は、さらに悪く、貫通孔Htcは円柱状ではなく、良くても円錐台状や、不均一な形状であり、その表面は粗いからである。
【0019】
本発明は、上述の問題に鑑みて、温度変化による影響を抑えた微細な貫通電極を備えるガラスウエハの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の貫通電極付きガラスウエハの形成方法は、搬送具に金属薄膜を介してレジストを塗布する工程と;前記レジストに、前記貫通電極に対応すると共に前記金属薄膜に至る複数の開口部を形成する工程と;前記複数の開口部の内壁に前記金属薄膜から連続に金属を円筒状にメッキする工程と;前記複数の円筒状にメッキされた金属を前記金属薄膜上に残して、前記レジストを除去する工程と;前記複数の残されたメッキされた円筒状の金属間と前記金属薄膜上に溶融したガラスを供給する工程と;前記ガラスが固化した後に、前記金属薄膜を研磨して、前記複数のメッキされた円筒状金属間から当該金属薄膜を除去する工程とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、フォトリソの精度により導電経路が形成されるため、微細な貫通電極も形成することができ、また、ガラスへの微細加工プロセスを必要とせずに低コストでガラス基板への貫通電極を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る貫通電極付きガラスウエハの斜視図である。
【図2】図1におけるII−II断面の拡大図である。
【図3】図1の貫通電極付きガラスウエハの製造工程の説明図である。
【図4】図3に示した製造工程の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る貫通電極付きガラスウエハの縦断面の拡大図である。
【図6】従来の貫通電極付きガラス基板の斜視図である。
【図7】図6に於けるVII−VII断面の拡大図である。
【図8】従来の他の貫通電極付きガラス基板の形成方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係るガラスウエハについて、図1、図2、図3、および図4を参照して説明する。図1の斜視図に示すように、ガラスウエハGw1は、ガラス基板1中に所定のパターン(例えば、マトリックス状)に配列されて設けられている複数の貫通電極Tgv1を備えている。
【0024】
図2に示すように、貫通電極Tgv1はガラス基板1の上面Suと下面Sbとの間に、長さLだけ延在する貫通孔Htの内壁の全面に渡って金属(例えば、Cu:銅)性の円筒状電極Teが設けられている。
【0025】
貫通電極Tgv1は、円筒状電極Teによって、ガラス基板1の上面Suと下面Sb間で連続する円筒形状に形成されている。さらに、貫通電極Tgv1はその両端部が開放されており、内部は円柱状の空間である。円筒状電極Teは、ガラス基板1の上面Su側と下面Sb側とを電気的に接続するという貫通電極Tgv1の機能を実現する手段である。つまり、円筒状電極Teの長さLは、貫通電極Tgv1の長さである。
【0026】
従来の貫通電極TgvCでは上面Su側の金属膜Fuと、下面Sb側の金属膜Fbとに分離しており、それらが導電性ペースト4によって電気的に接続されているのに比べて、本実施の形態の貫通電極Tgv1ではガラス基板1の上面Su側と下面Sb側とは連続する円筒状電極Teによって電気的に接続されている。よって、貫通電極Tgv1は、従来の導電性ペ−スト4に起因する問題とは無縁である。
【0027】
図3及び図4を参照して、ガラスウエハGw1の製造方法について詳述する。
【0028】
先ず、搬送具準備工程Pa(図3)において、搬送具である耐熱トレー104が準備される(図4(1))。耐熱トレー104は、シリコン基板、テフロン(登録商標)、或いはポリイミドを金属表面にコーティングして板状でかつ平面性が確保されたものが用いられる。
【0029】
次に、金属膜形成工程Pb(図3)において、図4(2)に示すように、耐熱トレー104の上に、金属薄膜105およびレジスト106が積層される。具体的には、トレー104の表面にスパッタ、蒸着などの方法でCu(銅)などの金属薄膜105が成膜される。金属薄膜105の密着力を向上させるために、トレー104の表面を粗化することが効果的である。トレー104のサイズは、最終的に形成するガラス基板1よりひとまわり大きなサイズのものを用いる。例えば、8インチのガラス基板1を作成する場合は、9インチ程度のトレー104を用いる。トレー104の表面粗さ、凹凸、および平面状態は作成するガラス基板1の仕上がり状態に大きな影響を与えるため、高精度なものを用いる。
【0030】
金属薄膜105の表面粗さRa=1μm以下が望ましく、凹凸および平面性は5μm/面内が望ましい。なお、金属薄膜105の表面にスパッタ或いは蒸着などで導電材料(例えば、Cu)を直接金属間接合することによって、円筒状電極Teを形成するには、金属薄膜105の表面粗さが1μmより大きい場合には、円筒状電極Teと金属薄膜105との接触が十分得られずに、円筒状電極Teを金属薄膜105に接合できない。
【0031】
一方、基板レベルで接合用のAuめっきパターンを形成して接合するには、めっきの変形により全面を接触させる必要がある。めっき高さが10μmで平面性が5μmの場合、めっきパターンを5μm以上変形させて接合する。平面性が大きいほど変形量が大きくなり、接合時の荷重も大きくなる。結果として接合時の負荷による接合部の残留応力などによる信頼性低下の原因となる可能性もあるため、平面性は5μm以上が必要である。
【0032】
成膜するCuなどの金属薄膜105の厚みは、その後にメッキをするためのシード層になるため、0.3μm程度以上必要である。0.3μm以上必要な理由は、下地との密着を十分得るためと共に下地が露出するピンホールの発生を防ぐためである。
【0033】
面内厚みの均一性は、メッキ後の貫通孔および導通経路の品質に影響を与えるため、5%以内に収めることが望ましい。面内厚みが変化することにより、貫通電極内抵抗値、及び高周波信号を通す場合の伝送特性に影響を与える。故に、面内厚みを5%以下に抑えることが適切である。
【0034】
そして、上述の如く形成された金属薄膜105の上に、レジスト106が塗布される。レジスト106として液状レジストを用いる場合にはスピンコーティング方法が用いられ、シート状レジストを用いる場合にはラミネート方法が用いられる。なお、レジスト106の形成歩留は、ネガ型のレジストよりもポジ型のレジストを用いる方が良好である。これは、ポジ型レジストの露光に用いるガラスマスクがCRパターンに露光部が開口されており、ごみ、異物、および汚染物のマスク付着の影響を受け難いためである。
【0035】
レジスト106の厚さは、上述の貫通電極Tgv1の貫通孔Htの長さLよりも大きくする。その理由は、スパッタ、めっきによってレジストに形成された孔パターンに導電経路を形成するためには、レジスト厚さは形成する貫通孔の深さよりも大きくする必要があるからである。後工程で形成するガラス基板1の厚さが0.2mmの場合はレジストを数度重ね合わせるか、レジスト塗布、および露光を繰り返すことにより所望の厚さを得る。
【0036】
次に、パターンニング工程Pc(図3)において、レジスト106の上面が、円筒状電極Teに対応するパターン状にマスクされる。そして、このマスク越しに、レジスト106は露光された後に現像、洗浄、および乾燥される。結果、図4(3)に示すように、レジスト106には、円筒状電極Teの外形に相当する円柱状空間Hteが形成される。
【0037】
次に、円筒電極形成工程Pd(図3)において、パターンニング工程Pcでレジスト106に形成された円柱状空間Hteに対して、Cu(銅)等のメッキが施される。具体的には、金属薄膜105の一部、もしくは外周全体に電気メッキを実施するための通電経路を確保し、ドライエッチングまたはウェットプロセスの前処理を実施した後に、メッキ処理が行われる。前処理は酸洗浄やソフトエッチングなどであり、メッキ後に中和、湯洗浄、水洗浄、および乾燥が実施される。これにより、レジスト106に形成された円柱状空間HteにCuなどのメッキ膜(円筒状電極Te)が形成される。メッキ時間により、円筒状電極Teのメッキ厚さが厚くなる。
【0038】
円柱状空間Hteがメッキ材(Cu等)で完全に埋まらない状態で、導通経路である円筒状電極Teが形成される。円柱状空間Hteを完全には埋めないことにより、Cuとガラス板101の熱膨張率の差により生じる加熱時の応力の集中を緩和できる。
【0039】
円筒状電極Teの下端は金属薄膜105と接合している、つまり金属薄膜105によって封口されている。よって、円筒状電極Teの形成に使用されなかったメッキ材は、金属薄膜105上に溜まり、円筒状電極Teの底部を閉じるように成長する。結果、円柱状空間Hteを形成するレジスト106の円筒状の壁面にCuが付着すると共に、金属薄膜105に接合して、図4(4)に示すように、円筒状電極Teが形成される。つまり、複数の円筒状電極Teが、レジスト106中に所定の間隔で埋設される。
【0040】
なお、本工程においては、後述のガラス板加工工程Pgによるガラス板101の表面の最終研磨に備えて、メッキ高さは目標仕様に対して高くし、ウエハ面内での削り代として50μm以上程度を必要とする。つまり、厚さのばらつきが5%存在する場合には、300μm厚で15μmのばらつきが存在する。研磨によってこのばらつきをなくして、ガラス基板1として仕上げるための削り代が必要である。安定して繰り返し再現性を得るために50μm程度の削り代を確保する必要がある。
【0041】
次に、レジスト除去工程Peにおいて、メッキにより形成された複数の円筒状電極Teが埋設されているレジスト106が除去される。結果、図4(5)に示すように、トレー
104上には、金属薄膜105に接合している複数の円筒状電極Teのみが残る。そして、円筒状電極Teの内部には円柱形空間Seが形成されている。なお、レジスト106の除去には、レジスト専用の除去剤の使用が望ましいが、レジスト専用の除去剤の代わりにアセトンなどの溶剤を用いることができる。またはアッシングなどのドライプロセスでレジストを除去することも可能である。レジスト除去後の残渣の除去には、ARプラズマ表面処理が効果を有する。なお、レジスト残渣は、Cuメッキとガラスとの密着力不足など、信頼性劣化の原因となり得る。
【0042】
次に、ガラス供給工程Pf(図3)において、トレー104上の金属薄膜105に接合している複数の円筒状電極Te間に、溶融したガラスを供給する。具体的には、溶融ガラスは粘度を下げて流動し易くするために、その融点より高温の700℃以上に加熱されている。なお、粘度が下げられたガラス転移点はガラス材質固有のものであり、低温から高温まで範囲が存在する。本実施の形態では、低温のものの活用を前提としているため700℃以上という範囲を設定している。
【0043】
ガラスの供給の際には、ガラスが気泡を噛み込まないように事前に脱泡処理をするなどの工夫が必要である。ガラスの温度に比例して粘度が変化するため、適切な条件を設定する。供給するガラスは、ガラス基板1としての最終的な厚さより若干厚くしておくことにより、後述のガラス板加工工程Pgでの研磨代を設けておく。ガラスが冷却固化して、図4(6)に示すように、複数の円筒状電極Teが埋設されたガラス板101が形成される。なお、円筒状電極Teの内部にはガラスが供給されずに、開放空間として維持されていることは言うまでもない。
【0044】
次工程であるガラス板加工工程Pgに備えて、ガラス板101が耐熱トレー104から取り外される。なお、冷却硬化したガラス板101の耐熱トレー104に対する離形性を良好にするために、離形剤を耐熱トレー104に塗布後、ガラスを流し込むことも有効である。なお、この冷却時に急冷するとガラスに歪みが生じ、クラック、あるいは割れを招く可能性があるので、2〜5℃/分程度の早さで徐々に冷却する。なお、2℃/分以下の冷却速度は、プロセスに時間を要するため実施できないと共に、長時間を要することで品質にも影響がでる。
【0045】
次に、ガラス板加工工程Pg(図3)において、ガラス板101をガラス基板1とするために、ガラス板101に任意の厚さと狙いの表面粗さを得るために研磨処理が施される。ガラス板101の上面(円筒状電極Teの開放端側)および下面(円筒状電極Teの金属薄膜105との接合面側)が研磨加工される。具体的には、ガラス板101の上面が所定の面粗度および平面性を得るように研磨されて上面Suが形成される。そして、ガラス板101の下面から金属薄膜105が除去されると共に所定の面粗度および平面性を得るように研磨されて下面Sbが形成される。上面Suと下面Sbの間隔が貫通電極Tgv1の長さLになるように調整されることは言うまでもない。なお、上述の円筒電極形成工程Pdにおいて円筒状電極Teの底部に溜まったメッキ材を除去することによって、図2に示す貫通電極Tgv1が完成する。
【0046】
なお、耐熱トレー104にシリコンを用いた場合には、ガラス板101から取外すことなく耐熱トレー104(シリコン)を研磨で除去することも可能である。
【0047】
次に、整形工程Ph(図3)において、貫通電極Tgv1を備えたガラス基板1の外周が任意の形状に切断される。結果、図1に示すガラスウエハGw1が完成する。
【0048】
本発明においては、上述のように、ガラス基板1を形成した後に、ガラス基板1を加工して円筒状電極Teの下孔である貫通孔Htを設けるのではなく、ガラス基板1を形成す
る前にレジストを用いて金属薄膜105上に貫通孔Htを形成する。これにより、従来技術における、ガラス基板を加工して貫通孔Htcを正確に形成する困難さを解消している。
【0049】
そして貫通孔Htに、メッキによって金属薄膜105に接合する円筒状電極Teを形成した後に、レジストを除去して、円筒状電極Te間に溶融ガラスを流し込み硬化させて円筒状電極Teを内包するガラス板101を生成する。このように、円筒状電極Teと接合性のよい材料からなる金属薄膜105の上にメッキにより、貫通孔Htの全長に渡って円筒状電極Teを連続して形成することによって、従来技術におけるように金属膜Fuおよび金属膜Fbと分離して形成する必要がない。よって、金属膜Fuおよび金属膜Fbを電気的接続するための導電性ペ−スト4を不要としている。結果、熱膨張率の違いに起因する電気的接続の損傷の問題を解消している。
【0050】
また、貫通電極Tgv1(円筒状電極Te)の中心部が空洞で、内部周辺に導電性材料が形成され、いずれか一方が塞がれているので、金属とガラス材料の熱膨張係数の違いにより発生する応力でガラスと金属部が剥離するなどの不良現象を防ぐことができる。また、フォトリソの精度により導電経路(円筒状電極)が形成されるため、微細な貫通電極も形成することができる。さらに、ガラスへの微細加工プロセスが無いため、低コストでガラス基板への貫通電極を形成することができる。なお、本発明においては、直径が100μm以下、より好ましくは20μm〜100μmの貫通孔Htに円筒状電極Teを形成することができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るガラスウエハGw2は、図2に示した第1の実施の形態に係るガラスウエハGw1において、貫通電極Tgv1が貫通電極Tgv2に置き換えられている。貫通電極Tgv2は、貫通電極Tgv1において、円筒状電極Teが円筒状電極Te’に置き換わっている。円筒状電極Te’は円筒状電極Teに、底部電極Beが追加されている。
【0052】
底部電極Beは、ガラス基板1の下面Sbにそって、円筒状電極Teの開放端部を封口するように形成されている。さらに詳しく述べれば、底部電極Beの下面はガラス基板1の下面Sbと面一であるが、上面(円筒状電極Teの内部側端面)の形状は、図5に示すように中央部が低く、周縁部に向かって高くなり、円筒状電極Teと接合する部分で最高となる、下面Sbに向かってなめらかな凹面状になっている。
【0053】
ガラスウエハGw2は、ガラスウエハGw1に比べて底部電極Beをさらに有することによって、ガラスウエハGw2の下面Sb側での電極や半導体素子などとの接続面積を大きくとることができる。また、底部電極Beの上面が滑らかに凹状態になることにより、加熱時の応力集中を防ぎ信頼性の低下を防止することがでてきる。
【0054】
なお、ガラスウエハGw2の製造は、上述の円筒電極形成工程Pd(図3)においてメッキ条件を調整して、円筒状電極Teの形成に使用されなかったメッキ材を金属薄膜105上に多めに溜まらせる。そして、ガラス板加工工程Pg工程で、円筒状電極Teの長さLを守りながら、底部のメッキ材を残すようにガラス板101の下面側を研磨して底部電極Beを形成する。
【0055】
このように、円筒状電極Teの一方の開放端を底部電極Beで塞ぐことによって、底部電極Beに部品を実装でき、実装密度が上がり、パッケージの小型化が可能となる。一方の開放端を塞ぐ形状として、円筒状電極Teに対して凹曲部とすることにより応力集中を防ぎ、信頼性の高い貫通電極を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、薄型小型の半導体構造体に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
Gw1、Gw2、Gwc ガラスウエハ
Tgv1、Tgv2、TgvC 貫通電極
Fu、Fb 金属膜
Ht、Htc 貫通孔
1 ガラス基板
3’ 金属蒸気
3 金属膜
4 導電性ペースト
9 スクリーンマスク
101 ガラス板
104 耐熱トレー
105 金属薄膜
106 レジスト
Te、Te’ 円筒状電極
Be 底部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極付きガラスウエハの形成方法であって、
搬送具に金属薄膜を介してレジストを塗布する工程と;
前記レジストに、前記貫通電極に対応すると共に前記金属薄膜に至る複数の開口部を形成する工程と;
前記複数の開口部の内壁に前記金属薄膜から連続に金属を円筒状にメッキする工程と;
前記複数の円筒状にメッキされた金属を前記金属薄膜上に残して、前記レジストを除去する工程と;
前記複数の残されたメッキされた円筒状の金属間と前記金属薄膜上に溶融したガラスを供給する工程と;
前記ガラスが固化した後に、前記金属薄膜を研磨して、前記複数のメッキされた円筒状金属間から当該金属薄膜を除去する工程とを備える、貫通電極付きガラスウエハの形成方法。
【請求項2】
前記複数のメッキされた円筒状金属の前記金属薄膜に連続する端部は、前記研磨後には開口されていることを特徴とする、請求項1に記載の貫通電極付きガラスウエハの形成方法。
【請求項3】
前記複数のメッキされた円筒状金属の前記金属薄膜に連続する端部は、前記研磨後は当該メッキで封口されていることを特徴とする、請求項1に記載の貫通電極付きガラスウエハの形成方法。
【請求項4】
前記円筒状金属の前記メッキによる封口部は、前記研磨によって平坦に整形されると共に、当該研磨部の反対側は周囲から中央に滑らかに凹んでいることを特徴とする、請求項3に記載の貫通電極付きガラスウエハの形成方法。
【請求項5】
前記金属薄膜と前記レジストとの間には離型処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の貫通電極付きガラスウエハの形成方法。
【請求項6】
前記搬送具はシリコンで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の貫通電極付きガラスウエハの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−119372(P2011−119372A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274070(P2009−274070)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】