説明

貯湯式給湯システム

【課題】簡単な構成で、追焚き戻り湯が持つ熱量を有効に再利用して省エネルギーを図ることのできる貯湯式給湯システムを提供すること。
【解決手段】本発明の貯湯式給湯システムは、追焚き熱交換器5から貯湯タンク1に戻る追焚き戻り湯を貯湯タンク1の上部に戻す上部戻し流路(追焚き上部戻り配管307b)と、追焚き戻り湯を貯湯タンク1の下部に戻す下部戻し流路(追焚き下部戻り配管307c)と、追焚き戻り湯を貯湯タンク1に戻す場合に上部戻し流路と下部戻し流路との何れを優先して用いるかを、システムの状態を表す所定の状態パラメータと、使用者により設定される条件との少なくとも一方に基づいて決定する追焚き戻り湯制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱手段により沸き上げた高温の湯を貯湯タンクに貯めておき、給湯負荷の発生に応じて、貯湯タンク内から湯を取り出して給湯する貯湯式給湯システムが広く用いられている。一般に、貯湯式給湯システムは、瞬間式給湯システム等と比べて、加熱手段の加熱能力が比較的小さい、加熱手段の起動時における能力の立ち上りが遅い、等の特徴がある。このため、貯湯式給湯システムでは、給湯負荷の発生に対して湯切れが生じることのないように、事前に貯湯タンクに湯を貯めておく必要がある。一方、エネルギー効率の観点からは、貯湯タンクに蓄えた熱量をできるだけ有効に活用することが求められる。
【0003】
また、湯栓からの湯の放出による給湯だけでなく、貯湯タンク内から取り出した高温の湯と浴槽から循環する浴槽水とを熱交換することによって浴槽の追焚きを行う機能を有する貯湯式給湯システムも知られている。このような貯湯式給湯システムでは、追焚きに要する熱負荷に対する湯切れ(以下、「追焚き湯切れ」と称する)の発生を防止する必要もある。
【0004】
従来の貯湯式給湯システムとして、特許文献1には、追焚き熱交換器から戻る中温の追焚き戻り湯を貯湯タンクの2/3程度の高さ位置に戻すことにより、追焚き戻り湯(中温水)を給湯に再利用する発明が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、追焚き戻り湯を貯湯タンクに流入させる接続部を、貯湯タンクの中間部と下部とにそれぞれ設け、貯湯タンク中間部の温度が所定値以下の時に追焚き戻り湯を貯湯タンク中間部に戻すことにより、貯湯タンク上部の高温部分の温度低下を避けるとともに、追焚き戻り湯(中温水)を給湯に再利用する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−30605号公報
【特許文献2】特許第3945511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
追焚き戻り湯の温度や、貯湯タンク内の高温領域と低温領域との間の温度境界層の位置は、使用状況に応じて変化する。特許文献1の発明では、追焚き戻り湯の温度が低かった場合、貯湯タンク内の上部の温度が大きく低下するので、追焚きに利用できる蓄熱量が大きく低下し、追焚き湯切れが発生し易いという問題がある。また、貯湯タンクの2/3程度の高さ位置に貯湯タンク内の高温領域と低温領域との温度境界層があった場合、追焚き戻り湯の噴流によって温度境界層が乱され、高温領域と低温領域とが混合し、蓄熱量が低下するという問題もある。
【0008】
また、特許文献2の発明では、追焚き戻り湯を貯湯タンク中間部に戻したとしても、追焚き戻り湯が結局利用されないまま残る場合も多く、追焚き戻り湯が持つ熱量を必ずしも有効に再利用できない。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、簡単な構成で、追焚き戻り湯が持つ熱量を有効に再利用して省エネルギーを図ることのできる貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る貯湯式給湯システムは、水を加熱して湯にする加熱手段と、加熱手段により生成された湯を上側から貯留し、下側から水を貯留する貯湯タンクと、浴槽から循環する浴槽水と該浴槽水を加温するための湯との熱交換を行う追焚き熱交換器と、貯湯タンクの上部から取り出された湯を追焚き熱交換器に導く追焚き用ポンプと、追焚き熱交換器から貯湯タンクに戻る追焚き戻り湯を貯湯タンクの上部に戻す上部戻し流路と、追焚き戻り湯を貯湯タンクの下部に戻す下部戻し流路と、追焚き戻り湯を貯湯タンクに戻す場合に上部戻し流路と下部戻し流路との何れを優先して用いるかを、システムの状態を表す所定の状態パラメータと、使用者により設定される条件との少なくとも一方に基づいて決定する追焚き戻り湯制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、追焚き熱交換器から貯湯タンクに戻る追焚き戻り湯を、システムの状態や使用者の意向との兼ね合いで不都合のない範囲において、なるべく貯湯タンクの上部に戻すことができる。貯湯タンクの上部に追焚き戻り湯を戻すことにより、追焚き戻り湯が持つ熱量を確実に再利用することができ、追焚き残り湯が再利用されないまま貯湯タンク内に残ることを防止することができる。このため、追焚き戻り湯が持つ熱量の有効な再利用を促進することができ、省エネルギーが図れる。また、追焚き戻り湯を貯湯タンクの上部に戻すことが、システムの状態や使用者の意向との兼ね合いで不都合となる場合には、追焚き戻り湯を貯湯タンクの下部に戻すことにより、そのような不都合を回避することができる。更に、追焚き戻り湯の戻し口を貯湯タンクの上部と下部との2箇所に設けるだけでよく、3箇所以上の戻し口を設ける必要がないので、貯湯タンクの構造の複雑化や、追焚き戻り湯の流路を切り替える機構の複雑化を回避することができ、簡単な構成で上記効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムを示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る2つの追焚き戻し回路を表す概要図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る追焚き時の熱量挙動を表す概要図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る制御動作を表すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態2に係る追焚き有効蓄熱量を表す概要図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る制御動作を表すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3に係る温度境界層の挙動を表す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
実施の形態1.
≪機器構成≫
図1は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムを示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の貯湯式給湯システムは、貯湯タンク1、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合手段4、追焚き熱交換器5、浴槽6、流路切替弁7(流路切替弁)、加熱用配管301、給水用配管302、導出用配管303、混合用配管304、給湯用配管305、浴槽往き配管306a、浴槽戻り配管306b、追焚き往き配管307a、追焚き上部戻り配管307b、追焚き下部戻り配管307c、追焚き戻り配管307d、および制御手段100等を備えている。
【0015】
加熱用配管301は、貯湯タンク1の下部と加熱手段2とを接続するとともに、加熱手段2と貯湯タンク1の上部とを接続している。加熱用配管301の途中には、加熱用ポンプ31が設けられている。加熱手段2は、水を沸き上げて高温の湯とするものであり、例えばヒートポンプサイクルを用いて構成される。給水用配管302は、市水等の水源から水を供給するものであり、貯湯タンク1の下部に接続されている。貯湯タンク1内には、給水用配管302から供給される低温の水を下側から貯留し、加熱手段2で沸き上げられた高温の湯を上側から貯留することができる。貯湯タンク1内の下側の水と上側の湯とは、比重差があるため、温度境界層を介して、混じり合うことなく維持される。
【0016】
導出用配管303は、貯湯タンク1の上部と、混合手段4とを接続している。混合手段4には、給水用配管302から分岐した混合用配管304と、給湯用配管305とが更に接続されている。貯湯タンク1から導出用配管303を通って供給される湯と、混合用配管304から供給される水とを混合手段4にて混合することにより、温度調節された湯が生成され、この温度調節された湯が給湯用配管305を通って、入浴用の浴槽6、蛇口、シャワー等の給湯端末に供給される。
【0017】
追焚き熱交換器5は、貯湯タンク1から供給される湯と、浴槽6から循環する浴槽水とを熱交換することによって、浴槽水を加熱するものである。浴槽往き配管306aは、追焚き熱交換器5と浴槽6とを接続している。浴槽戻り配管306bは、浴槽6から浴槽用ポンプ33を経由して追焚き熱交換器5に接続されている。これらの浴槽側回路により、浴槽6から浴槽水が追焚き熱交換器5に循環する。
【0018】
追焚き往き配管307aは、貯湯タンク1の上部と追焚き熱交換器5とを接続している。貯湯タンク1から追焚き往き配管307aを通って追焚き熱交換器5に送られた湯は、熱交換により温度低下し、貯湯タンク1に戻される。本明細書では、追焚き熱交換器5から貯湯タンク1に戻る湯(中温水)を「追焚き戻り湯」と称する。追焚き戻り湯は、まず、追焚き戻り配管307dに流入する。追焚き戻り配管307dは、追焚き熱交換器5から追焚き用ポンプ32を経由して流路切替弁7に接続されている。追焚き上部戻り配管307b(上部戻し流路)は、流路切替弁7と、貯湯タンク1の上部とを接続している。追焚き下部戻り配管307c(下部戻し流路)は、流路切替弁7と、貯湯タンク1の下部とを接続している。流路切替弁7は、追焚き戻り配管307dから流入する追焚き戻り湯を追焚き上部戻り配管307bと追焚き下部戻り配管307cとに分配する三方弁で構成されており、追焚き上部戻り配管307bの流量と追焚き下部戻り配管307cの流量との割合を制御可能とされている。
【0019】
なお、図示の構成では、追焚き上部戻り配管307bは、貯湯タンク1の最上部に接続されているが、貯湯タンク1に対する追焚き上部戻り配管307bの接続位置は必ずしも貯湯タンク1の最上部でなくてもよく、追焚き上部戻り配管307bから貯湯タンク1内に流入する追焚き戻り湯が貯湯タンク1の上部に貯留されている高温の湯に混合するような位置であればよい。また、貯湯タンク1に対する追焚き下部戻り配管307cの接続位置は、貯湯タンク1の最下部でなくてもよく、追焚き下部戻り配管307cから貯湯タンク1内に流入する追焚き戻り湯が貯湯タンク1の上部に貯留されている高温の湯に混合せず、貯湯タンク1の上部に貯留されている高温の湯の温度を低下させることがないような位置であればよい。
【0020】
制御手段100は、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、および混合手段4、流路切替弁7の動作を制御する。また、制御手段100には、例えば浴室や台所に設置されるリモコン等のユーザーインターフェース装置(図示せず)が、有線または無線により通信可能に接続されている。
【0021】
また、貯湯タンク1には、高さ方向に間隔をおいて、6個の貯湯温度センサ501a〜501fが設けられている。これらの貯湯温度センサ501a〜501fによれば、貯湯タンク1の内の貯湯温度を高さ方向の分布とともに検出することができる。なお、貯湯温度センサの個数は、これに限定されるものではなく、貯湯タンク1内の高さ方向の温度分布を検出可能な個数であればよい。
【0022】
加熱用配管301には、加熱手段2の下流側にて加熱後の湯温を検出する沸上温度センサ502が設けられている。給水用配管302には、給水温度を検出する給水温度センサ504が設けられている。貯湯タンク1の最上部には、貯湯タンク1から導出される湯の温度を検出するための導出温度センサ503が設けられている。給湯用配管305には、混合手段4から流出して給湯端末に供給される湯の温度を検出する給湯温度センサ505が設けられている。浴槽戻り配管306bには、浴槽6から追焚き熱交換器5に流れ込む浴槽水の温度を検出する浴槽戻り温度センサ506が設けられている。なお、この浴槽戻り温度センサ506は、定期的に浴槽用ポンプ33を運転させることにより、浴槽6内の浴槽水の温度(以下、「浴槽温度」と称する)を検出する手段として利用してもよい。給湯用配管305には、給湯端末に供給される湯量を検出する給湯流量センサ601が設けられている。追焚き戻り配管307dには、追焚き熱交換器5から貯湯タンク1に戻る追焚き戻り湯の温度を検出する追焚き戻り湯温度センサ507(追焚き戻り湯温度取得手段)が設けられている。なお、本発明における追焚き戻り湯温度取得手段としては、追焚き戻り湯温度センサ507で追焚き戻り湯温度を直接検出することに代えて、追焚き用ポンプ32の回転数、浴槽用ポンプ33の回転数、導出温度センサ503および浴槽戻り温度センサ506の検出温度等からの推定によって追焚き戻り湯温度の値を取得するものであってもよい。
【0023】
図2は、本発明の実施の形態1の貯湯式給湯システムにおける信号の流れを表すブロック図である。図2に示すように、制御手段100は、追焚き有効蓄熱量算出手段101、追焚き必要熱量予測手段104、加熱制御手段105、流路切替弁制御手段106、浴槽目標温度設定手段107、ポンプ制御手段108、運転モード設定手段としてのシステムモード設定手段109および追焚きモード設定手段110等を有している。
【0024】
制御手段100には、時刻検出手段であるタイマー、貯湯温度センサ501a〜501f、沸上温度センサ502、導出温度センサ503、給水温度センサ504、給湯温度センサ505、浴槽戻り温度センサ506、追焚き戻り湯温度センサ507および給湯流量センサ601からの情報が入力される。この制御手段100は、入力されたこれらの情報に基づいて、加熱手段2、加熱用ポンプ31、追焚き用ポンプ32、浴槽用ポンプ33、混合手段4、流路切替弁7を制御する。
【0025】
浴槽目標温度設定手段107は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示に基づいて、追焚き運転によって浴槽6を昇温する際の目標温度(以下、「浴槽目標温度」と称する)を設定する。
【0026】
追焚き有効蓄熱量算出手段101は、浴槽目標温度設定手段107で設定された浴槽目標温度と、貯湯温度センサ501a〜501fにより検出された情報とに基づいて、貯湯タンク1内の湯の有する蓄熱量のうちで浴槽6の追焚きに利用可能な蓄熱量(以下、「追焚き有効蓄熱量」と称する)を算出する。
【0027】
追焚き必要熱量予測手段104は、使用者の過去の追焚き使用実績、または現在の浴槽6の温度や湯量の状況あるいはその両方の情報に基づいて、浴槽6の追焚きに必要な熱量(以下、「追焚き必要熱量」と称する)を予測する。
【0028】
加熱制御手段105は、追焚き有効蓄熱量算出手段101により算出された追焚き有効蓄熱量と、追焚き必要熱量予測手段104により予測された追焚き必要熱量とに基づいて、加熱手段2および加熱用ポンプ31の起動の必要性を判定する。
【0029】
流路切替弁制御手段106(追焚き戻り湯制御手段)は、流路切替弁7を動作させるパルスモータのパルス数を調節することにより、追焚き上部戻り配管307bと追焚き下部戻り配管307cとの流量分配を制御する。例えば、図3(A)に示すように、流路切替弁7の開度を追焚き上部戻り配管307bの側に全開にした場合、追焚き戻り湯はその全量が貯湯タンク1の上部から貯湯タンク1内に流入する。逆に、図3(B)に示すように、流路切替弁7の開度を追焚き下部戻り配管307cの側に全開にした場合、追焚き戻り湯はその全量が貯湯タンク1の下部から貯湯タンク1内に流入する。流路切替弁7の制御は、図3に示す制御に限るものではなく、追焚き戻り湯の一部を貯湯タンク1の上部に戻し、残りを貯湯タンク1の下部に戻すように制御してもよい。
【0030】
ポンプ制御手段108は、加熱用ポンプ31、追焚き用ポンプ32および浴槽用ポンプ33の各々の回転数を制御し、ポンプ循環量を調節する。
【0031】
システムモード設定手段109は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示に基づいて、システムの省エネルギーを優先する運転モード(以下、「省エネモード」と称する)や、この省エネモードと比べて湯切れの回避を優先する運転モード(以下、「湯切れ回避モード」と称する)を設定する。
【0032】
追焚きモード設定手段110は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示に基づいて、浴槽6の追焚き運転に関する運転モードを設定する。本実施形態では、追焚きモード設定手段110は、浴槽温度を所定の範囲内に自動で維持する自動保温モード、中低温まで冷めた浴槽温度を一括して浴槽目標温度まで昇温する一括追焚きモード、短時間で追焚きを完了するために追焚き能力(単位時間当たりの浴槽加熱量)を最優先して追焚きを行う急速追焚きモードなどから選択する形で設定する。
【0033】
≪基本的な動作≫
次に、本実施形態の貯湯式給湯システムの基本的な動作について説明する。貯湯タンク1の下部には、給水用配管302を通じて低温の水が流入し、貯留される。加熱手段2によって貯湯タンク1の沸き上げを行う際には、貯湯タンク1の下部に貯留された低温の水が、加熱用ポンプ31によって加熱用配管301に引き込まれ、加熱手段2に導かれる。加熱手段2は、導かれた低温の水を加熱して、高温の湯に沸き上げる。沸き上げられた高温の湯は、加熱用配管301を通じて貯湯タンク1に上部から流入し、貯留される。
【0034】
給湯端末に湯を供給する際には、貯湯タンク1の上部に貯留された湯が、導出用配管303から流出し、混合手段4に導かれる。このとき、取り出された湯と同量の水が給水用配管302から貯湯タンク1の下部に流入する。混合手段4は、混合用配管304から供給される水と、貯湯タンク1から供給される湯とを混合させ、給湯用配管305を通じて、蛇口、シャワー、浴槽6などの給湯端末へ供給する。
【0035】
また、浴槽6の追焚き運転を行う際には、追焚き用ポンプ32および浴槽用ポンプ33が駆動される。これにより、貯湯タンク1の上部に貯留された湯は、追焚き往き配管307aを通って、追焚き熱交換器5に導かれる。同時に、浴槽6内の浴槽水は、浴槽戻り配管306bを通って、追焚き熱交換器5に導かれる。追焚き熱交換器5で浴槽水へ熱を与えて温度の低下した追焚き戻り湯は、追焚き上部戻り配管307bまたは追焚き下部戻り配管307cを通って貯湯タンク1内に戻る。追焚き熱交換器5で熱を受け取って温度の上昇した浴槽水は、浴槽往き配管306aを通って浴槽6に戻る。このような追焚き運転は、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示により強制的に開始されるか、あるいは、浴槽戻り温度センサ506によって定期的に検出される浴槽温度が浴槽目標温度設定手段107により設定された浴槽目標温度よりも所定量以上低くなったときに自動的に開始される。その後、ユーザーインターフェース装置に入力される使用者の指示により強制的に追焚き運転が終了されるか、あるいは、浴槽戻り温度センサ506によって検出される浴槽温度が上記浴槽目標温度よりも所定量以上高くなったときに自動的に追焚き運転が終了する。
【0036】
≪特徴的な動作≫
次に、本実施形態の貯湯式給湯システムの特徴的な動作について説明する。まず、図4を参照して、特徴的な動作に関連する現象について説明する。
【0037】
本実施形態の貯湯式給湯システムでは、流路切替弁7を制御することにより、追焚き戻り湯を貯湯タンク1の上部に戻すか貯湯タンク1の下部に戻すかを選択することができる。すなわち、追焚き上部戻り配管307bを優先して用いるように流路切替弁7を制御することにより、追焚き戻り湯を貯湯タンク1の上部に優先的に戻すことができる。逆に、追焚き下部戻り配管307cを優先して用いるように流路切替弁7を制御することにより、追焚き戻り湯を貯湯タンク1の下部に優先的に戻すことができる。本明細書において、「追焚き上部戻り配管307bを優先して用いる」とは、追焚き戻り湯の全量を追焚き上部戻り配管307bに流入させること、あるいは、追焚き上部戻り配管307bの流量を追焚き下部戻り配管307cの流量より大きくすることを意味する。これに対し、「追焚き下部戻り配管307cを優先して用いる」とは、追焚き戻り湯の全量を追焚き下部戻り配管307cに流入させること、あるいは、追焚き下部戻り配管307cの流量を追焚き上部戻り配管307bの流量より大きくすることを意味する。
【0038】
また、以下の説明では、追焚き戻り湯を貯湯タンク1に戻す際に、追焚き上部戻り配管307bを優先して用いることを「タンク上部に戻す」と略称し、追焚き下部戻り配管307cを優先して用いることを「タンク下部に戻す」と略称する。
【0039】
本実施形態では、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すかタンク下部に戻すかを決定する基準として、省エネルギー、追焚き湯切れへの耐力、追焚き能力という3つの観点を考慮する。
【0040】
追焚き戻り湯の温度は、使用状況によって異なるが、給水温度よりは高いことが普通であるので、追焚き戻り湯は熱量を有している。追焚き戻り湯をタンク上部に戻した場合には、追焚き戻り湯の熱量が貯湯タンク1内の上部の高温領域に戻るので、追焚き戻り湯の熱量を給湯に再利用できる。これに対し、追焚き戻り湯をタンク下部に戻した場合には、給湯に利用されない貯湯タンク1内の下部の低温領域に追焚き戻り湯が混合するので、追焚き戻り湯の熱量を再利用できない。このため、省エネルギーの観点からは、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すよりタンク上部に戻す方が省エネルギーとなる。ただし、タンク上部の高温領域の温度が給湯に有効な温度を下回らないという条件は必要である。
【0041】
追焚き湯切れへの耐力に関しては、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度と比べて高いか低いかにより、追焚き戻り湯をタンク上部に戻した方が良いかタンク下部に戻した方が良いかが異なる。図4中の左側の欄に示すように、貯湯タンク1から追焚き熱交換器5に循環する流量(以下、「タンク側流量」と称する)が低い場合や、浴槽温度が低い場合、追焚き熱交換器5の性能が高い場合などには、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低くなり易い。一方、図4中の右側の欄に示すように、タンク側流量が高い場合や、浴槽温度が高い場合、追焚き熱交換器5の性能が低い場合などには、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より高くなり易い。なお、図4中の数値は、すべて一例である。
【0042】
追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より高い場合には、追焚き戻り湯は、浴槽水を加熱可能な熱量を有しているので、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すことにより、タンク上部の高温領域が有する追焚きに有効な熱量が増え、追焚き湯切れへの耐力が高くなる。これに対し、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合には、追焚き戻り湯は浴槽水に対して負の熱量を有しているので、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すと、タンク上部の高温領域が有する追焚きに有効な熱量が減少する。このため、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻した方が追焚き湯切れへの耐力が高くなる。
【0043】
追焚き能力の観点からは、次のようになる。追焚き戻り湯の温度は、タンク上部の高温領域の温度よりは確実に低いので、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すと、タンク上部の高温領域の温度は必ず低下する。タンク上部の高温領域の温度、すなわち貯湯タンク1から追焚き熱交換器5に送られる湯の温度が高いほど、追焚き能力は高くなる。このため、追焚き能力に関しては、追焚き戻り湯の温度にかかわらず、追焚き戻り湯をタンク下部に戻した方が、追焚き能力を高く維持することができる。なお、追焚き用ポンプ32の回転数を上げることで追焚き能力をある程度は維持することも可能であるが、一般的にポンプ回転数には上限があるので、タンク上部の高温領域の温度が低下すると追焚き能力の上限が低下することは避けられない。
【0044】
以上の事項をまとめると、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すかタンク下部に戻すかについての利害得失は、図4中の表に示すようになる。すなわち、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合において、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すと、省エネルギーの点で有利であるが、追焚き湯切れへの耐力および追焚き能力の2点で不利となる。これに対し、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すと、省エネルギーの点で不利であるが、追焚き湯切れへの耐力および追焚き能力の2点で有利となり、メリットが大きい。そこで、本実施形態では、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すように流路切替弁7を制御する。
【0045】
追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より高い場合においては、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すと、追焚き能力の点で有利であるが、省エネルギーおよび追焚き湯切れへの耐力の2点で不利となる。これに対し、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すと、追焚き能力の点で不利であるが、省エネルギーおよび追焚き湯切れへの耐力の2点で有利となり、メリットが大きい。そこで、本実施形態では、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より高い場合には、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すように流路切替弁7を制御する。
【0046】
図5は、上記の機能を実現するために本発明の実施の形態1において制御手段100が実行する制御動作を表すルーチンのフローチャートである。図5に示すルーチンによれば、まず、追焚き運転が実行中であるかどうかが判断され(ステップS1)、追焚き運転が実行されていない場合には、流路切替弁7がデフォルトの状態(例えば、追焚き下部戻り配管307cの側に全開の状態)に制御される(ステップS2)。一方、追焚き運転が実行中であった場合には、次に、追焚き戻り湯温度センサ507により検出される浴槽戻り湯温度と、浴槽目標温度設定手段107により設定された浴槽目標温度とが比較される(ステップS3)。
【0047】
ステップS3の比較の結果、浴槽戻り湯温度が浴槽目標温度より高い場合には、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すように流路切替弁7が制御される(ステップS4)。このステップS4では、追焚き戻り湯の全量を追焚き上部戻り配管307bに流入させるように流路切替弁7を制御してもよいし、あるいは、追焚き上部戻り配管307bに流入する追焚き戻り湯の量が追焚き下部戻り配管307cに流入する追焚き戻り湯の量より多くなるように流路切替弁7を制御してもよい。
【0048】
一方、ステップS3の比較の結果、浴槽戻り湯温度が浴槽目標温度以下である場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すように流路切替弁7が制御される(ステップS5)。このステップS5では、追焚き戻り湯の全量を追焚き下部戻り配管307cに流入させるように流路切替弁7を制御してもよいし、あるいは、追焚き下部戻り配管307cに流入する追焚き戻り湯の量が追焚き上部戻り配管307bに流入する追焚き戻り湯の量より多くなるように流路切替弁7を制御してもよい。
【0049】
本発明の貯湯式給湯システムでは、追焚き戻り湯をタンク上部に戻した場合、追焚き戻り湯が貯湯タンク1内の上部の高温領域に混合するので、追焚き戻り湯が持つ熱量を確実に再利用することができる。本発明と異なり、追焚き戻り湯を貯湯タンク1の中間部に戻す構成の場合、貯湯タンク1中間部に戻された追焚き戻り湯が結局使用されないまま残る場合がある。これに対し、本発明では、追焚き戻り湯をタンク上部に戻した場合、追焚き戻り湯が持つ熱量が確実に再利用されるので、省エネルギーが図れる。また、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すことがシステムの状態や使用者の意向との兼ね合いで不都合となる場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すことができるので、そのような不都合を回避することができる。更に、本発明では、追焚き戻り湯の戻し口を貯湯タンク1の上部と下部との2箇所に設けるだけでよく、3箇所以上の戻し口を設ける必要がないので、貯湯タンク1の構造の複雑化や、追焚き戻り湯の流路を切り替える機構の複雑化を回避することができ、簡単な構成で上記効果を達成することができる。
【0050】
また、本実施の形態1では、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すかタンク下部に戻すかを図5のフローチャートに示す手順で決定することにより、省エネルギー、追焚き湯切れへの耐力、追焚き能力確保の3点の特性をバランス良く向上することができる。特に、タンク上部の高温領域が有する追焚きに有効な熱量を最大化できるので、追焚き湯切れへの耐力を最大化させることができる。
【0051】
なお、上記ステップS3では、浴槽戻り湯温度と浴槽目標温度とを直接に比較しているが、浴槽目標温度に所定値を加算した温度と浴槽戻り湯温度とを比較し、浴槽戻り湯温度が浴槽目標温度に当該所定値を加算した温度より高い場合に追焚き戻り湯をタンク上部に戻し、浴槽戻り湯温度が浴槽目標温度に当該所定値を加算した温度以下である場合に追焚き戻り湯をタンク下部に戻すようにしてもよい。この場合には、追焚き能力の低下を更に抑制することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態では、システムモード設定手段109で省エネモードが設定されている場合には、図5に示す制御を実行せず、追焚き戻り湯をその温度にかかわらずタンク上部に戻すように流路切替弁7を制御してもよい。これにより、追焚き戻り湯の熱量をより確実に回収して再利用できるので、使用者の意向に従い、省エネルギーを最優先することができる。
【0053】
また、本実施形態では、追焚きモード設定手段110で急速追焚きモードが設定されている場合には、図5に示す制御を実行せず、追焚き戻り湯をその温度にかかわらずタンク下部に戻すように流路切替弁7を制御してもよい。これにより、タンク上部の温度を最大化することができるので、使用者の意向に従い、追焚き能力の保持を最優先とし、急速に追焚きを行うことができる。
【0054】
実施の形態2.
次に、図6および図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0055】
本実施の形態2においては、特に、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すことによって得られる省エネルギー効果を追焚き湯切れの回避と両立して実現させる上で有利な動作について説明する。
【0056】
≪本実施形態に特徴的な動作≫
[追焚き有効蓄熱量の算出]
まず、追焚き有効蓄熱量算出手段101により追焚き有効蓄熱量を算出する方法について説明する。図6中の右図は、追焚き戻り湯をタンク上部に戻す場合の、追焚き中の貯湯温度の変化を表している。追焚き戻り湯をタンク上部に戻す場合には、中温の追焚き戻り湯が高温領域に流入することになるので、高温の湯と比べて密度の大きい中温の追焚き戻り湯は、高温領域と熱交換を行いながら、同じ温度となる領域の高さまで下降していく。従って、追焚き中の貯湯温度は、温度境界層の位置はほとんど変わらないまま、温度境界層より高い領域の温度が全体的に低下する。また、貯湯タンク1の湯は、浴槽目標温度より高い温度でないと、追焚きに利用できない。
【0057】
以上の考察から、追焚き戻り湯をタンク上部に戻す場合に、追焚き有効蓄熱量は、浴槽目標温度を熱量換算のゼロ点である基準温度とし、貯湯温度が基準温度以上の領域にわたって積分した熱量として定義できる(図6中の左図参照)。したがって、追焚き有効蓄熱量算出手段101は、貯湯温度センサ501a〜501fにより検出される温度分布に基づいて、貯湯温度が浴槽目標温度以上となる領域の熱量を積分し、その積分値を追焚き有効蓄熱量として算出する。
【0058】
[追焚き必要熱量の予測]
次に、追焚き必要熱量予測手段104により追焚き必要熱量を予測する動作について説明する。追焚き必要熱量は、浴槽6の温度を現時点の温度から浴槽目標温度まで上昇させるのに必要な熱量である。したがって、浴槽6の湯量(例えば200L)と、浴槽目標温度(例えば40℃)と現時点の浴槽温度(例えば30℃)との温度差と、水の密度(例えば1kg/L)と、水の比熱(例えば1kcal/g℃)とを乗算して算出することができる。この計算において、浴槽6の湯量は、予め定めた所定値(例えば200L)を使用してもよいし、あるいは使用者がユーザーインターフェース装置にて設定した値を使用してもよい。また、給湯流量センサ601により検出した流量を積算することによって求めた浴槽6への総注入量を浴槽6の湯量としてもよい。また、例えば浴槽戻り配管306b内に圧力センサなどによる水位検出手段を設け、給湯流量センサ601の積算流量と浴槽水位との相間を初期学習しておき、以後は、浴槽水位から浴槽6の湯量を求めるようにしてもよい。
【0059】
また、過去の追焚き必要熱量を学習して記憶するようなシステムの場合は、当該学習結果の過去所定期間内の最大値や平均値といった形で当日予測される値を追焚き必要熱量の予測値としてもよい。この場合、追焚き必要熱量の学習は、浴槽6の湯量と、追焚き運転の開始時と終了時の浴槽温度の差とから算出される値を学習してもよいし、浴槽戻り配管306bあるいは浴槽往き配管306aを循環する流量を流量センサ(図示せず)または浴槽用ポンプ33の回転数に基づいて検出するとともに追焚き熱交換器5の浴槽水の出入り口の温度差を温度センサで検出することによって学習してもよい。
【0060】
前述した実施の形態1では、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合には、追焚き湯切れへの耐力を高めるため、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すようにしている。しかしながら、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合であっても、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量より大きい場合には、追焚き湯切れが発生するおそれはないと予測できる。そこで、本実施形態では、追焚き戻り湯の温度が浴槽目標温度より低い場合であっても、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量より大きい場合には、追焚き戻り湯をタンク上部に戻し、追焚き戻り湯の熱量を回収することとした。
【0061】
図7は、上記の機能を実現するために本発明の実施の形態2において制御手段100が実行する制御動作を表すルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンによれば、ステップS1〜S4は前述した図5のルーチンと同様の処理が行われる。ステップS3で浴槽戻り湯温度が浴槽目標温度以下である場合には、次に、追焚き有効蓄熱量算出手段101により算出される追焚き有効蓄熱量と、追焚き必要熱量予測手段104により予測される追焚き必要熱量とを比較する(ステップS6)。このステップS6の比較の結果、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量より大きい場合には、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すように流路切替弁7が制御される(ステップS7)。これに対し、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量以下である場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すように流路切替弁7が制御される(ステップS8)。
【0062】
上述した本実施形態の制御によれば、追焚き湯切れを確実に回避しつつ、追焚き戻り湯の熱量を回収する機会を増やすことができるので、更なる省エネルギーが図れる。特に、本実施形態では、追焚き有効蓄熱量を算出する際に、浴槽目標温度を熱量換算のゼロ点である基準温度とし、貯湯温度がこの基準温度以上の領域に基づいて追焚き有効蓄熱量を算出する。これにより、追焚き有効蓄熱量をより正確に算出することができるので、追焚き湯切れの回避をより高精度に実現することができる。
【0063】
なお、上記ステップS6では、追焚き有効蓄熱量と追焚き必要熱量とを直接に比較しているが、追焚き必要熱量に余裕度としての所定値を加算した値と追焚き有効蓄熱量とを比較し、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量に当該所定値を加算した値より大きい場合に追焚き戻り湯をタンク上部に戻し、追焚き有効蓄熱量が追焚き必要熱量に当該所定値を加算した値以下である場合に追焚き戻り湯をタンク下部に戻すようにしてもよい。また、追焚き運転中に加熱手段2を運転して沸き上げを行う場合には、追焚き運転中に加熱手段2が増加させることができる熱量を追焚き有効蓄熱量に含めてもよい。また、追焚き必要熱量は、現在の追焚き運転一回分の必要熱量として予測してもよいし、当日にまだ発生する可能性のある追焚き必要熱量を含めた合計として予測してもよい。
【0064】
また、追焚き有効蓄熱量を算出する際には、貯湯タンク1内の蓄熱量のうち、蛇口やシャワー等への給湯に必要になると予測される熱量を除いた領域から追焚き有効蓄熱量を算出するようにしてもよい。この場合、給湯に必要になると予測される熱量は、過去の使用者の給湯使用実績、または所定の設計値に基づいて、予測してもよい。過去の使用者の給湯使用実績に基づいて予測する場合には、例えば、タイマー、給湯温度センサ505、および給湯流量センサ601からの情報に基づいて、時間帯ごとの給湯負荷実績を日々記憶し、当該記憶した給湯負荷実績に基づいて、当日の給湯負荷を予測し、予測される給湯負荷に対して湯切れが発生しないように給湯用必要蓄熱量を予測する方法を用いることができる。また、所定の設計値に基づいて予測する場合には、例えば、一般的に多量の給湯が予測される時間帯(例えば午後6時〜午後11時)では給湯用必要蓄熱量を大きく設定(例えば42℃換算300L)し、それ以外の時間帯では給湯用必要蓄熱量を小さく設定(例えば42℃換算80L)する方法を用いることができる。
【0065】
なお、追焚きモード設定手段110で自動保温モードが設定されている場合には、追焚き有効蓄熱量と追焚き必要熱量との比較を行うことなく、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すように流路切替弁7を制御してもよい。自動保温モードが設定されている場合には、追焚き運転一回当りに必要な熱量が小さいため、追焚き湯切れが発生する可能性は小さいからである。このような制御によれば、簡易な方法にて、省エネルギーと同時に追焚き湯切れの回避を実現させることができる。
【0066】
実施の形態3.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0067】
本実施の形態3においては、特に、大流速の追焚き戻り湯をタンク上部に戻した場合に、追焚き有効蓄熱量が著しく減少するという問題を回避する方法について説明する。
【0068】
≪本実施形態に特徴的な動作≫
まず、本実施形態に係る現象を図8にて説明する。追焚き戻り湯をタンク上部に戻す場合において、追焚き戻り湯が貯湯タンク1内に噴出する流速が小さく、その運動量が温度境界層に届かない場合には、追焚き運転中の温度分布は、温度境界層の位置がほとんど変わらず、温度境界層より高い位置の温度が全体的に均一に低下する(図8の上段参照)。
【0069】
これに対し、追焚き戻り湯が貯湯タンク1内に噴出する流速が大きく、その運動量が温度境界層に届くような場合には、追焚き運転によって温度境界層の上側の高温領域と下側の低温領域とが混合され、温度境界層の位置が低下するとともに、温度境界層の上側の温度が大きく低下し、追焚き有効蓄熱量が著しく減少する(図8の下段参照)。この事態を回避するため、本実施形態では、追焚き戻り湯の運動量が温度境界層に届くか否かに応じて、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すかタンク下部に戻すかを切り替える。
【0070】
具体的には、まず、追焚き上部戻り配管307bから貯湯タンク1内に噴出する追焚き戻り湯の運動量が届く範囲(以下、「影響範囲」と称する)を実験や計算によって予め把握しておく。この影響範囲の下限の位置を以下「所定位置」と称する。追焚き運転時には、貯湯温度センサ501a〜501fで検出される温度分布に基づいて、温度境界層の位置を決定する。この場合、例えば、温度勾配が最も急峻な位置を温度境界層の位置と決定すればよい。そして、温度境界層の位置が上記所定位置より低い場合には、追焚き戻り湯をタンク上部に戻すように流路切替弁7を制御し、温度境界層の位置が上記所定位置より高い場合には、追焚き戻り湯をタンク下部に戻すように流路切替弁7を制御する。本実施形態では、このような制御を行うことにより、温度境界層の上側の高温領域と下側の低温領域とが追焚き戻り湯により混合されて追焚き有効蓄熱量が著しく減少することを確実に回避することができる。
【0071】
また、本実施形態では、追焚き上部戻り配管307bから貯湯タンク1内に噴出する追焚き戻り湯の噴出流速と影響範囲との関係を実験や計算によって予め把握しておき、追焚き運転時に、追焚き用ポンプ32の回転数と、追焚き上部戻り配管307bが接続された追焚き戻し口の口径とから、追焚き戻り湯が貯湯タンク1内に噴出する流速を算出し、その算出された噴出流速に基づいて影響範囲を算出し、その算出された影響範囲の下限を所定位置として上記の制御を行うようにしてもよい。この場合には、追焚き用ポンプ32の回転数により変化する追焚き戻り湯の噴出流速に応じて影響範囲を設定することができるので、温度境界層の上側の高温領域と下側の低温領域とが追焚き戻り湯により混合されることをより確実に防止することができる。
【0072】
また、本実施形態では、貯湯温度センサ501a〜501fの出力に基づいて検出された温度境界層の位置が上記所定位置より高い場合には、追焚き用ポンプ32の回転数を低下方向に補正するようにしてもよい。これにより、追焚き戻り湯の噴出流速が低下し、上記影響範囲が小さくなるので、温度境界層の上側の高温領域と下側の低温領域とを混合させることなく追焚き戻り湯をタンク上部に戻すことが可能となる。このため、追焚き戻り湯の熱量を回収する機会が増え、省エネルギーが図れる。
【0073】
更に、本実施形態では、貯湯温度センサ501a〜501fの出力に基づいて検出された温度境界層の位置が上記所定位置より高い場合に、追焚き用ポンプ32の回転数を低下方向に補正することに代えて、追焚き上部戻り配管307bの流量を低下させ追焚き下部戻り配管307cの流量を増加させる方向に流路切替弁7の開度を補正するようにしてもよい。これにより、追焚き上部戻り配管307bからの追焚き戻り湯の噴出流速が低下し、上記影響範囲が小さくなるので、温度境界層の上側の高温領域と下側の低温領域とが混合することを回避しつつ追焚き戻り湯の熱量を回収することが可能となり、省エネルギーが図れる。
【符号の説明】
【0074】
1 貯湯タンク
2 加熱手段
4 混合手段
5 追焚き熱交換器
7 流路切替弁
31 加熱用ポンプ
32 追焚き用ポンプ
33 浴槽用ポンプ
100 制御手段
301 加熱用配管
302 給水用配管
303 導出用配管
304 混合用配管
305 給湯用配管
306a 浴槽往き配管
306b 浴槽戻り配管
307a 追焚き往き配管
307b 追焚き上部戻り配管
307c 追焚き下部戻り配管
307d 追焚き戻り配管
501a〜501f 貯湯温度センサ
502 沸上温度センサ
503 導出温度センサ
504 給水温度センサ
505 給湯温度センサ
506 浴槽戻り温度センサ
507 追焚き戻り湯温度センサ
601 給湯流量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱して湯にする加熱手段と、
前記加熱手段により生成された湯を上側から貯留し、下側から水を貯留する貯湯タンクと、
浴槽から循環する浴槽水と該浴槽水を加温するための湯との熱交換を行う追焚き熱交換器と、
前記貯湯タンクの上部から取り出された湯を前記追焚き熱交換器に導く追焚き用ポンプと、
前記追焚き熱交換器から前記貯湯タンクに戻る追焚き戻り湯を前記貯湯タンクの上部に戻す上部戻し流路と、
前記追焚き戻り湯を前記貯湯タンクの下部に戻す下部戻し流路と、
前記追焚き戻り湯を前記貯湯タンクに戻す場合に前記上部戻し流路と前記下部戻し流路との何れを優先して用いるかを、システムの状態を表す所定の状態パラメータと、使用者により設定される条件との少なくとも一方に基づいて決定する追焚き戻り湯制御手段と、
を備える貯湯式給湯システム。
【請求項2】
浴槽目標温度を前記条件として設定可能な浴槽目標温度設定手段と、
前記追焚き戻り湯の温度を前記状態パラメータとして検出または推定する追焚き戻り湯温度取得手段と、
を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記追焚き戻り湯の温度が前記浴槽目標温度より高い場合、または前記追焚き戻り湯の温度が前記浴槽目標温度に所定値を加算した温度より高い場合には、前記上部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
追焚き能力を優先する運転モードを前記条件として設定可能な運転モード設定手段を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記追焚き能力を優先する運転モードが設定されている場合には、前記下部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
省エネルギーを優先する運転モードを前記条件として設定可能な運転モード設定手段を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記省エネルギーを優先する運転モードが設定されている場合には、前記上部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項5】
前記浴槽の追焚きに必要な熱量である追焚き必要熱量を予測する追焚き必要熱量予測手段と、
前記貯湯タンク内の貯湯温度を前記状態パラメータとして検出する貯湯温度検出手段と、
前記貯湯温度に基づいて、前記貯湯タンク内の蓄熱量のうちで追焚きに利用可能な蓄熱量である追焚き有効蓄熱量を算出する追焚き有効蓄熱量算出手段と、
を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記追焚き有効蓄熱量が前記追焚き必要熱量より大きい場合、または、前記追焚き有効蓄熱量が前記追焚き必要熱量に所定値を加算した値より大きい場合には、前記上部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項6】
浴槽目標温度を前記条件として設定可能な浴槽目標温度設定手段を備え、
前記追焚き有効蓄熱量算出手段は、前記貯湯タンク内の貯湯温度が前記浴槽目標温度以上である領域に基づいて前記追焚き有効蓄熱量を算出する請求項5記載の貯湯式給湯システム。
【請求項7】
浴槽温度を自動で維持する自動保温モードを前記条件として設定可能な運転モード設定手段を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記自動保温モードが設定されている場合には、前記上部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項8】
前記貯湯タンク内の温度分布を前記状態パラメータとして検出する温度分布検出手段を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記温度分布に基づいて決定される温度境界層の位置が所定位置より高い場合には、前記下部戻し流路を優先する請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項9】
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記追焚き戻り湯の前記貯湯タンク内への噴出流速に応じて前記所定位置を決定する手段を含む請求項8記載の貯湯式給湯システム。
【請求項10】
前記温度境界層の位置が前記所定位置より高い場合には、前記追焚き用ポンプの回転数を低下方向に補正する手段を備える請求項8または9記載の貯湯式給湯システム。
【請求項11】
前記貯湯タンク内の温度分布を前記状態パラメータとして検出する温度分布検出手段を備え、
前記追焚き戻り湯制御手段は、前記温度分布に基づいて決定される温度境界層の位置が所定位置より高い場合には、前記上部戻し流路の流量を低下させて前記下部戻し流路の流量を増加させる方向に補正する請求項1記載の貯湯式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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