説明

走行車両

【課題】刈取穀稈の性状等に応じて、複数の作業条件別に扱胴変速ギヤ115,116を切換えることによって、扱胴226の脱穀機能を簡単に変更できるようにしたコンバインを提供するものである。
【解決手段】エンジン14を搭載した走行機体1と、扱胴226を有する脱穀装置5と、エンジン14の動力を扱胴226に伝達する扱胴変速機構389を備えたコンバインにおいて、収穫作業条件に基づき、扱胴226の回転数を多段的に選択可能な扱胴変速ギヤ115,116列によって扱胴変速機構389を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植立した穀稈を刈取って穀粒を収集するコンバイン、又は飼料用穀稈を刈取って飼料として収集する飼料コンバイン等のコンバインに係り、より詳しくは、扱胴を有する脱穀装置を備えたコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインは、エンジンを搭載した走行機体を備え、走行機体に左右一対の走行クローラを装設し、左右一対の走行クローラを駆動制御して圃場等を移動するように構成している。また、コンバインは、圃場に植立した未刈り穀稈の株元を刈刃装置によって切断し、穀稈搬送手段としての穀稈搬送装置によって脱穀装置にその穀稈を搬送し、脱穀装置によってその穀稈を脱穀して、穀粒を収集するように構成している。(例えば、特許文献1参照)また、従来、脱穀装置の扱胴に駆動力を伝達する無段変速機を設け、扱胴の回転数を無段階に変更するように構成していた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平2−12841号公報
【特許文献2】特開平6−14639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術(特許文献1)では、脱穀負荷が増大したときに扱胴の回転トルクを増大でき、前記従来技術(特許文献2)では、車速を減速したときに扱胴の回転数を増大して扱き残しを低減できたが、刈取穀稈の性状に扱胴の回転数を適応させる場合、オペレータの経験等に基づきオペレータの手動操作によって扱胴の回転数を無段階に変更させて、扱胴の回転数を適正回転数に調整する必要があるから、刈取穀稈の性状を判断するオペレータの誤操作(刈取穀稈の性状の判断ミス)によって、刈取穀稈の性状に対して扱胴の回転数が不適正に設定されることがあり、排藁に穀粒が混入する刺さり粒の発生、又は穀稈が切断されて穀粒に混入する稈切れの発生等を簡単に防止できない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、刈取穀稈の性状等に応じて、複数の作業条件別に扱胴変速ギヤを切換えることによって、前記扱胴の脱穀機能を簡単に変更できるようにしたコンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明のコンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、扱胴を有する脱穀装置と、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する扱胴変速機構を備えたコンバインにおいて、収穫作業条件に基づき、前記扱胴の回転数を多段的に選択可能な扱胴変速ギヤ列によって前記扱胴変速機構を構成したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、刈取変速機構、又は高速カット伝動機構、又は流し込み伝動機構、又はフィードチェン駆動機構、又は選別駆動機構を内蔵したギヤケースを備え、前記ギヤケース内の刈取変速軸を跨ぐように、前記扱胴変速ギヤ列を配置したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、刈取装置、フィードチェン、選別機構に前記エンジンの動力を伝達させる伝動軸の下手側に動力分岐軸を設け、前記動力分岐軸上に前記扱胴変速ギヤ列を配置したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のコンバインにおいて、前記扱胴変速ギヤ列を切換え操作する扱胴変速操作具を備え、運転座席と刈取装置の間に前記扱胴変速操作具を配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、エンジンを搭載した走行機体と、扱胴を有する脱穀装置と、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する扱胴変速機構を備えたコンバインにおいて、収穫作業条件に基づき、前記扱胴の回転数を多段的に選択可能な扱胴変速ギヤ列によって前記扱胴変速機構を構成したものであるから、前記扱胴変速機構を介して前記扱胴の回転数を多段的に切換えることによって、複数の作業条件別に前記扱胴の脱粒機能を簡単に変更できる。従来の扱胴の回転数を無段階に切換える無段変速機に比べ、簡単な切換操作によって、刈取穀稈の性状等に適応させて前記扱胴の回転数を適正回転数に容易に設定できる。例えば、6条刈り等の大型機における通常の脱穀作業では、前記扱胴を高速回転させることによって刺さり粒の発生を低減でき、穀粒が排藁に混入して機外に排出されるのを防止できる。また、前記扱胴の扱歯によって穀粒が損傷しやすい脱穀作業、又は前記扱胴の扱歯によって穀稈が切断されやすい脱穀作業では、前記扱胴を低速回転させることによって、損傷穀粒の発生又は稈切れの発生等を低減でき、選別穀粒に多くの脱ぷ米又は藁が混入するのを防止でき、脱穀選別作業性を向上できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、刈取変速機構、又は高速カット伝動機構、又は流し込み伝動機構、又はフィードチェン駆動機構、又は選別駆動機構を内蔵したギヤケースを備え、前記ギヤケース内の刈取変速軸を跨ぐように、前記扱胴変速ギヤ列を配置したものであるから、刈取・脱穀・選別などの作業部の駆動機構を前記ギヤケース内に集約させて構成できる。伝動構造のメンテナンス作業性を向上できる。刈取変速ギヤ列と扱胴変速ギヤ列を交叉させて、前記ギヤケース内に前記各ギヤ列をコンパクトに配置できる。前記ギヤケースを、大型化することなく、低コストに構成できる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、刈取装置、又はフィードチェン、又は選別機構に前記エンジンの動力を伝達させる伝動軸の下手側に動力分岐軸を設け、前記動力分岐軸上に前記扱胴変速ギヤ列を配置したものであるから、刈取装置、又はフィードチェン、又は選別機構の回転数を一定回転に維持しながら、前記扱胴の回転数を変更でき、脱穀選別作業性を向上できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記扱胴変速ギヤ列を切換え操作する扱胴変速操作具を備え、運転座席と刈取装置の間に前記扱胴変速操作具を配置したものであるから、前記脱穀装置の斜め前方に配置する前記運転座席と、前記脱穀装置の前部に配置する前記ギヤケースとの間で、前記運転座席のオペレータが操作しやすい位置に前記扱胴変速操作具を設置できるものでありながら、前記ギヤケースに前記扱胴変速操作具を比較的短距離で簡単に連結でき、前記扱胴変速操作具に連結させる扱胴変速操作リンク機構等を、低コストに構成してコンパクトに組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の6条刈り用コンバインの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】刈取装置の側面説明図である。
【図4】刈取装置の平面説明図である。
【図5】図1のコンバインの駆動系統図である。
【図6】ミッションケース等の駆動系統図である。
【図7】カウンタケース等の駆動系統図である。
【図8】図1のコンバインの油圧回路図である。
【図9】カウンタケースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図である。図1及び図2を参照して、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。図1及び図2に示す如く、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、穀稈を刈取りながら取込む6条刈り用の刈取装置3が、単動式の昇降用油圧シリンダ4によって刈取回動支点軸4a回りに昇降調節可能に装着される。走行機体1には、フィードチェン6を有する脱穀装置5と、該脱穀装置5から取出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが横並び状に搭載される。なお、脱穀装置5が走行機体1の前進方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の前進方向右側に配置される。走行機体1の後部に旋回可能な排出オーガ8が設けられ、穀粒タンク7の内部の穀粒が、排出オーガ8の籾投げ口9からトラックの荷台またはコンテナ等に排出されるように構成されている。刈取装置3の右側方で、穀粒タンク7の前側方には、運転キャビン10が設けられている。
【0016】
運転キャビン10内には、操縦ハンドル11と、運転座席12と、主変速レバー43と、副変速スイッチ44と、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを入り切りする作業クラッチレバー45とを配置している。なお、運転キャビン10には、オペレータが搭乗するステップ(図示省略)と、操縦ハンドル11を設けたハンドルコラム46と、前記各レバー43,45及びスイッチ44等を設けたレバーコラム47とが配置されている。運転座席12の下方の走行機体1には、動力源としてのエンジン14が配置されている。
【0017】
図1に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム21を配置している。トラックフレーム21には、走行クローラ2にエンジン14の動力を伝える駆動スプロケット22と、走行クローラ2のテンションを維持するテンションローラ23と、走行クローラ2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ24と、走行クローラ2の非接地側を保持する中間ローラ25とを設けている。駆動スプロケット22によって走行クローラ2の前側を支持し、テンションローラ23によって走行クローラ2の後側を支持し、トラックローラ24によって走行クローラ2の接地側を支持し、中間ローラ25によって走行クローラ2の非接地側を支持する。
【0018】
図1、図2に示す如く、刈取装置3の刈取回動支点軸4aに連結した刈取フレーム221の下方には、圃場に植立した未刈り穀稈(穀稈)の株元を切断するバリカン式の刈刃装置222が設けられている。刈取フレーム221の前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を引起す6条分の穀稈引起装置223が配置されている。穀稈引起装置223とフィードチェン6の前端部(送り始端側)との間には、刈刃装置222によって刈取られた刈取り穀稈を搬送する穀稈搬送装置224が配置される。なお、穀稈引起装置223の下部前方には、圃場に植立した未刈り穀稈を分草する6条分の分草体225が突設されている。エンジン14にて走行クローラ2を駆動して圃場内を移動しながら、刈取装置3によって圃場に植立した未刈り穀稈を連続的に刈取る。
【0019】
次に、図3及び図4を参照して刈取装置3の構造を説明する。図3及び図4に示す如く、刈取フレーム221は、走行機体1の前端側の軸受台15に回動可能に支持した刈取入力ケース16と、刈取入力ケース16から前方に向けて延長する縦伝動ケース18と、縦伝動ケース18の前端側で左右方向に向けて延長する横伝動ケース19と、横伝動ケース19に連結する6条分の分草フレーム20とによって形成されている。分草フレーム20の前端側に6条分の分草体225が配置されている。機体左右方向に水平に横架した刈取入力ケース16内には、エンジン14からの動力が伝達される刈取り入力軸17が組込まれている。
【0020】
穀稈引起装置223は、分草板225によって分草された未刈穀稈を起立させる複数の引起タイン128を有する6条分の引起ケース129を有する。穀稈搬送装置224は、右側2条分の引起ケース129から導入される右側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の右スターホイル130R及び左右の右掻込ベルト131Rと、左側2つの引起ケース129から導入される左側2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の左スターホイル130L及び左右の左掻込ベルト131Lと、中央2つの引起ケース129から導入される中央2条分の穀稈の株元側を掻込む左右の中央スターホイル130C及び左右の中央掻込ベルト131Cとを有する。
【0021】
刈刃装置222は、右スターホイル130R及び左右の右掻込ベルト131R、左スターホイル130L及び左右の左掻込ベルト131L、中央スターホイル130C及び左右の中央掻込ベルト131Cによって掻込まれた6条分の穀稈の株元を切断するバリカン形の左右の刈刃132を有する。
【0022】
また、穀稈搬送装置224は、右側2条分のスターホイル130R及び掻込ベルト131Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送する右株元搬送チェン133Rと、左側2条分のスターホイル130L及び掻込ベルト131Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈の株元側を右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に合流させる左株元搬送チェン133Lと、中央2条分のスターホイル130C及び掻込ベルト131Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈の株元側を後方に搬送して右株元搬送チェン133Rの搬送途中に合流させる中央株元搬送チェン133Cを有する。左右及び中央の株元搬送チェン133R,133L,133Cによって、右株元搬送チェン133Rの搬送終端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を合流させる。
【0023】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rから6条分の刈取穀稈の株元側を受継ぐ穀稈搬送手段としての縦搬送チェン134と、縦搬送チェン134の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する補助搬送手段としての補助株元搬送チェン135,136とを有する。縦搬送チェン134から、補助株元搬送チェン135,136を介して、フィードチェン6の搬送始端部に、6条分の刈取穀稈の株元側を搬送する。
【0024】
穀稈搬送装置224は、右株元搬送チェン133Rにて搬送される右側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送タイン137Rと、左株元搬送チェン133Lにて搬送される左側2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送タイン137Lと、中央株元搬送チェン133Cにて搬送される中央2条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する中央穂先搬送タイン137Cと、縦搬送チェン134にて搬送される6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する後穂先搬送タイン138とを有する。脱穀装置5の扱胴226設置室内に、刈取装置3で刈取った6条分の刈取穀稈の穂先側を搬送する。
【0025】
次に、図5を参照してコンバインの駆動構造を説明する。図5に示す如く、刈取り入力軸17に、縦伝動軸140及び横伝動軸141及び左搬送駆動軸142を介して引起横伝動軸143を連結する。引起横伝動軸143は、6条分の各引起ケース29の引起タイン駆動軸144にそれぞれ連結している。分草体225の後方で分草フレーム20の上方に引起ケース129が立設され、引起ケース129の上端側の背面から引起タイン駆動軸144を突出している。引起タイン駆動軸144及び引起横伝動軸143を介して、複数の引起タイン128を設けた引起タインチェン128aが駆動される。
【0026】
図5に示す如く、横伝動軸141に左右のクランク軸145を介して左右の刈刃132を連結する。横伝動軸141を介して左右の刈刃132を同期させて駆動するように構成している。なお、刈刃装置222は、6条分の刈幅の中央部で分割して左右の刈刃132を形成し、左右の刈刃132を相反する方向に往復移動させ、往復移動によって発生する左右の刈刃132の振動(慣性力)を相殺可能に構成している。
【0027】
図5に示す如く、刈取り入力軸17に縦伝動ケース18内の縦伝動軸140の一端側を連結する。縦伝動軸140の他端側に横伝動ケース19内の横伝動軸141を連結する。縦伝動軸140及び横伝動軸141から穀稈搬送装置224の各駆動部に刈取り入力軸17の回転力を伝える。即ち、縦伝動軸140には、右搬送駆動軸146を連結している。縦伝動軸140及び右搬送駆動軸146を介して、右株元搬送チェン133R及び右穂先搬送タイン137Rと、右スターホイル130R及び右掻込ベルト131Rとを駆動するように構成している。また、縦伝動軸140及び後搬送駆動軸147を介して、補助株元搬送チェン135,136及び後穂先搬送タイン138を駆動するように構成している。
【0028】
また、横伝動軸141の左端側に左搬送駆動軸142を連結している。左搬送駆動軸142を介して、左株元搬送チェン133L及び左穂先搬送タイン137Lと、左スターホイル130L及び左掻込ベルト131Lとを駆動するように構成している。また、横伝動軸141に中央搬送駆動軸148を連結し、中央搬送駆動軸148を介して、中央株元搬送チェン133C及び中央穂先搬送タイン137Cと、中央スターホイル130C及び中央掻込ベルト131Cとを駆動するように構成している。
【0029】
次に、図1及び図2を参照して、脱穀装置5の構造を説明する。図1及び図2に示す如く、脱穀装置5には、穀稈脱穀用の扱胴226と、扱胴226の下方に落下する脱粒物を選別する揺動選別盤227及び唐箕ファン228と、扱胴226の後部から取出される脱穀排出物を再処理する処理胴229と、揺動選別盤227の後部の排塵を排出する排塵ファン230を備えている。なお、扱胴226の回転軸芯線は、フィードチェン6による穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から穀稈搬送装置224によって搬送された穀稈の株元側は、フィードチェン6に受け継がれて挟持搬送される。そして、この穀稈の穂先側が脱穀装置5の扱室内に搬入されて扱胴226にて脱穀される。
【0030】
図1に示す如く、揺動選別盤227の下方側には、揺動選別盤227にて選別された穀粒(一番物)を取出す一番コンベヤ231と、枝梗付き穀粒等の二番物を取出す二番コンベヤ232とが設けられている。本実施形態の両コンベヤ231,232は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ231、二番コンベヤ232の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方の走行機体1の上面側に横設されている。
【0031】
図1に示す如く、揺動選別盤227は、扱胴226の下方に張設された受網237から漏下した脱穀物が、フィードパン238及びチャフシーブ239によって搖動選別(比重選別)されるように構成している。揺動選別盤227から落下した穀粒は、その穀粒中の粉塵が唐箕ファン228からの選別風によって除去され、一番コンベヤ231に落下することになる。一番コンベヤ231のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁(実施形態では右側壁)から外向きに突出した終端部には、上下方向に延びる揚穀コンベヤ233が連通接続されている。一番コンベヤ231から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ233を介して穀粒タンク7に搬入され、穀粒タンク7に収集される。
【0032】
また、図1に示す如く、揺動選別盤227は、搖動選別(比重選別)によってチャフシーブ239から枝梗付き穀粒等の二番物を二番コンベヤ232に落下させるように構成している。チャフシーブ239の下方に落下する二番物を風選する選別ファン241を備える。チャフシーブ239から落下した二番物は、その穀粒中の粉塵及び藁屑が選別ファン241からの選別風によって除去され、二番コンベヤ232に落下する。二番コンベヤ232のうち脱穀装置5における穀粒タンク7寄りの一側壁から外向きに突出した終端部は、還元コンベヤ236を介して、フィードパン238の後部(チャフシーブ239の前部)の上面側に連通接続され、二番物を揺動選別盤227の上面側に戻して再選別するように構成している。
【0033】
一方、図1及び図2に示す如く、フィードチェン6の後端側(送り終端側)には、排藁チェン234と排藁カッタ235が配置されている。フィードチェン6の後端側から排藁チェン234に受継がれた排藁(穀粒が脱粒された稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後部に設けられた排藁カッタ235にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方下方に排出される。
【0034】
次に、図5を参照しながら、刈取装置3、脱穀装置5、フィードチェン6、排藁チェン234、排藁カッタ235等の駆動構造について説明する。図5に示す如く、エンジン14の左側にその出力軸150を突出する。エンジン14の出力軸150に走行駆動ベルト151を介してミッションケース50の走行入力軸152を連結し、エンジン14の回転駆動力が、前側の出力軸150からミッションケース50に伝達されて変速された後、左右の車軸153を介して左右の走行クローラ2に伝達され、左右の走行クローラ2がエンジン14の回転力によって駆動されるように構成している。
【0035】
図5に示す如く、エンジン14を冷却するためのラジエータ用の冷却ファン154が、エンジン14の右側に突出した出力軸150に設けられている。また、エンジン14の右側の出力軸150に排出オーガ駆動軸157を連結し、エンジン14の回転駆動力によって排出オーガ駆動軸157を介して排出オーガ8が駆動され、穀粒タンク7内の穀粒がコンテナ等に排出されるように構成している。
【0036】
また、図5、図7に示す如く、脱穀装置5の各部にエンジン14の回転駆動力を伝える脱穀選別作業入力軸165と、扱胴226及び処理胴230に脱穀選別作業入力軸165の回転駆動力を伝える脱穀駆動軸160を備える。エンジン14の左側の出力軸150には、テンションローラ形脱穀クラッチ161及び脱穀駆動ベルト162を介して、脱穀選別作業入力軸165を連結する。脱穀駆動軸160上に、扱胴高速ギヤ115及び扱胴低速ギヤ116を配置する。脱穀選別作業入力軸165の回転力が、扱胴高速ギヤ115又は扱胴低速ギヤ116を介して脱穀駆動軸160に伝達される。
【0037】
脱穀駆動軸160には、扱胴駆動ベルト117を介して扱胴226を軸支した扱胴軸163と、処理胴230を軸支した処理胴軸164とを連結する。エンジン14の略一定回転数の回転力によって、扱胴226及び処理胴230が所定回転数(低速回転数又は高速回転数)で回転するように構成している。また、エンジン14の略一定回転数の回転力によって、脱穀選別作業入力軸165を介して、揺動選別盤227、唐箕ファン228、一番コンベヤ231、二番コンベヤ232、選別ファン241、排塵ファン230が略一定回転数で回転するように構成している。
【0038】
図5、図6に示す如く、ミッションケース50に、1対の直進用第1油圧ポンプ55及び直進用第1油圧モータ56を有する直進(走行主変速)用の油圧式無段変速機構53と、1対の旋回用第2油圧ポンプ57及び旋回用第2油圧モータ58を有する旋回用の油圧式無段変速機構54とを設けている。第1油圧ポンプ55と、第2油圧ポンプ57に、ミッションケース50の走行入力軸152をそれぞれ連結させて駆動するように構成している。ミッションケース50にPTO軸99を配置する。PTO軸99は、第1油圧モータ56によって駆動される。ミッションケース50からこの左外側にPTO軸99の一端側を突設させている。
【0039】
図5に示す如く、エンジン14の左側方で、脱穀装置5の前側方の走行機体1上に、カウンタギヤケース89を設けている。カウンタギヤケース89には、上述した脱穀駆動軸160と、脱穀駆動軸160に連結する脱穀選別作業入力軸165と、PTO軸99に連結する車速同調軸100と、脱穀選別作業入力軸165又は車速同調軸100に連結する刈取伝動軸101と、刈取り入力軸17に連結する刈取駆動軸102と、フィードチェン6を駆動するフィードチェン駆動軸103とを配置している。
【0040】
図7に示す如く、カウンタギヤケース89内の車速同調軸100上に、車速同調軸100の車速同調回転力を伝える一方向クラッチ105を設ける。車速同調軸100に、刈取変速機構108と一方向クラッチ105とを介して、刈取伝動軸101を連結する。刈取変速機構108は、低速側変速ギヤ106と高速側変速ギヤ107とを有する。低速及び中立(零回転)及び高速の各刈取変速を行う刈取変速操作手段(図示省略)によって低速側変速ギヤ106又は高速側変速ギヤ107を刈取伝動軸101に択一的に係合させ、車速同調軸100から刈取変速機構108を介して刈取伝動軸101に刈取変速出力を伝えるように構成している。
【0041】
図7に示す如く、脱穀選別作業入力軸165に一定回転機構111を介して刈取伝動軸101を連結する。一定回転機構111は、低速側一定回転ギヤ109と高速側一定回転ギヤ110とを有する。刈取伝動軸101にトルクリミッタ114を介して刈取駆動軸102を連結する。刈取作業の維持に必要な一定回転数の回転出力が低速側一定回転ギヤ109を介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。したがって、走行機体1の移動速度に関係なく、低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動させて刈取作業を維持でき、圃場の枕地での方向転換作業性等を向上できる。
【0042】
また、車速同調軸100及び高速側変速ギヤ107からの車速同調出力の最高速よりも早い一定回転数の回転出力が高速側一定回転ギヤ110を介して脱穀選別作業入力軸165から刈取伝動軸101に伝達される。したがって、車速同調出力の最高速よりも早い高速側一定回転ギヤ110からの一定回転数で刈取り入力軸17を作動でき、倒伏穀稈の刈取り作業性等を向上できる。なお、トルクリミッタ114によって設定したトルク以下の回転力で刈取り入力軸17が作動して、刈刃132等が損傷するのを防止している。
【0043】
カウンタギヤケース89には、脱穀選別作業入力軸165にフィードチェン駆動軸103を連結する遊星ギヤ形変速構造のフィードチェン同調機構112が設けられている。脱穀選別作業入力軸165の回転出力が、フィードチェン同調機構112によって刈取伝動軸101の回転数に比例して変速されて、フィードチェン駆動軸103に伝達される。即ち、フィードチェン同調機構112を介してフィードチェン6を作動することによって、穀稈の搬送に必要な最低回転数(低速側一定回転ギヤ109からの一定回転数)を確保し乍ら、フィードチェン6の穀稈搬送速度を車速と同調させて変更可能に構成している。
【0044】
図6に示す如く、エンジン14の出力軸150から出力される駆動力は、走行駆動ベルト151及び走行入力軸152を介して、第1油圧ポンプ55のポンプ軸59及び第2油圧ポンプ57のポンプ軸59にそれぞれ伝達される。直進用油圧式無段変速機構53では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第1油圧ポンプ55から第1油圧モータ56に向けて作動油が適宜送り込まれる。同様に、旋回用油圧式無段変速機構54では、ポンプ軸59に伝達された動力にて、第2油圧ポンプ57から第2油圧モータ58に向けて作動油が適宜送り込まれる。
【0045】
なお、ポンプ軸59には、油圧ポンプ55,57及び油圧モータ56,58に作動油を供給するための作業ポンプ91が取付けられている。作業ポンプ91は、ポンプ軸59と連動して駆動するように構成されている。直進用油圧式無段変速機構53は、操縦部9に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の操作量に応じて、第1油圧ポンプ55における回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第1油圧モータ56への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第1油圧モータ56から突出した直進用モータ軸60の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0046】
直進用モータ軸60の回転動力は、直進伝達ギヤ機構62から副変速ギヤ機構51に伝達される。副変速ギヤ機構51は、副変速シフタ64によって切換える副変速低速ギヤ62及び副変速高速ギヤ63を有する。レバーコラム47に配置された副変速スイッチ44の操作にて、直進用モータ軸60の出力回転数を低速又は高速という2段階の変速段に切換えるように構成している。なお、副変速の低速と高速との間には、中立(副変速の出力が零になる位置)を有している。副変速ギヤ機構51の出力側に設けられた駐車ブレーキ軸65には、湿式多板ディスク式の駐車ブレーキ66が設けられている。
【0047】
副変速ギヤ機構51からの回転動力は、駐車ブレーキ軸65に固着された副変速出力ギヤ67から差動機構52に伝達される。差動機構52は、左右対称状に配置された一対の遊星ギヤ機構68と、遊星ギヤ機構68と駐車ブレーキ軸65との間に位置した中継軸69とを備えている。駐車ブレーキ軸65の副変速出力ギヤ67は、中継軸69に取付けられた中間ギヤ70aに噛合う。
【0048】
左右各遊星ギヤ機構68は、1つのサンギヤ71と、サンギヤ71に噛合う複数の遊星ギヤ72と、遊星ギヤ72に噛合うリングギヤ73と、複数の遊星ギヤ72を同一円周上に回転可能に配置するキャリヤ74とをそれぞれ備えている。左右の遊星ギヤ機構68のキャリヤ74は、同一軸線上において適宜間隔を設けて相対向させて配置されている。左右のサンギヤ71が設けられたサンギヤ軸75にセンタギヤ76を固着している。
【0049】
左右の各リングギヤ73は、その内周面の内歯を複数の遊星ギヤ72に噛合わせた状態で、サンギヤ軸75に同心状に配置されている。また、左右の各リングギヤ73は、その外周面の外歯を左右中間ギヤ70bに噛合わせて、中継軸69に連結させている。各リングギヤ73は、キャリヤ74の外側面から左右外向きに突出した左右の車軸153に回転可能に軸支されている。左右の車軸153には左右の駆動スプロケット22が取付けられている。従って、副変速ギヤ機構51から左右の遊星ギヤ機構68に伝達された回転動力は、各キャリヤ74の車軸153から左右の駆動スプロケット22に同方向の同一回転数にて伝達され、左右の走行クローラ2を駆動させる。
【0050】
旋回用油圧式無段変速機構54は、操縦部9に配置された主変速レバー43や操縦ハンドル11の回動操作量に応じて、第2油圧ポンプ57における回転斜板の傾斜角度を変更調節して、第2油圧モータ58への作動油の吐出方向及び吐出量を変更することにより、第2油圧モータ58から突出した旋回用モータ軸61の回転方向及び回転数を任意に調節するように構成されている。
【0051】
また、ミッションケース50内に、旋回用モータ軸61(操向ブレーキ軸)上に設ける操向ブレーキ79と、操向クラッチ81を有する操向クラッチ軸80と、左センタギヤ76に連結する左入力ギヤ機構82と、逆転ギヤ84を介して右センタギヤ76に噛合う右入力ギヤ機構83とを備えている。旋回用モータ軸61の回転動力は、操向クラッチ81を介して操向クラッチ軸80に伝達される。操向クラッチ軸80に伝達された回転動力は、これに対応する左右の入力ギヤ機構82,83に伝達される。
【0052】
副変速ギヤ機構51を中立にした場合は、第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。副変速ギヤ機構51から中立以外の副変速出力時に、副変速低速ギヤ62又は副変速高速ギヤ63を介して第1油圧モータ56から左右の遊星ギヤ機構68へ動力伝達される。一方、操向ブレーキ79を入り状態とし且つ操向クラッチ81を切り状態とした場合は、第2油圧モータ58から左右の遊星ギヤ機構68への動力伝達が阻止される。操向ブレーキ79を切り状態とし且つ操向クラッチ81を入り状態とした場合は、第2油圧モータ58の回転動力が、左入力ギヤ機構82及び逆転ギヤ84を介して左センタギヤ76に伝達される一方、右入力ギヤ機構83を介して右センタギヤ76に伝達される。その結果、第2油圧モータ58の正回転(逆回転)時は、互いに逆方向の同一回転数で、左センタギヤ76が逆転(正転)し、右センタギヤ76が正転(逆転)する。
【0053】
以上の構成から分かるように、各モータ軸60,61からの変速出力は、副変速ギヤ機構51及び差動機構52を経由して左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22(駆動スプロケット)にそれぞれ伝達される。その結果、走行機体1の車速(走行速度)及び進行方向が決まる。
【0054】
すなわち、第2油圧モータ58を停止させて左右サンギヤ71(センタギヤ76)を静止固定させた状態で、第1油圧モータ56が駆動すると、直進用モータ軸60からの回転出力は左右リングギヤ73に左右同一回転数で伝達され、遊星ギヤ72及びキャリヤ74を介して、左右の走行クローラ2が同方向の同一回転数にて駆動され、走行機体1が直進走行する。
【0055】
逆に、第1油圧モータ56を停止させて左右リングギヤ73を静止固定させた状態で、第2油圧モータ58を駆動させると、旋回用モータ軸61からの回転動力にて、左のサンギヤ71が正又は逆回転し、右のサンギヤ71は逆又は正回転する。その結果、左右の走行クローラ2の駆動スプロケット22のうち、一方が前進回転し、他方が後退回転し、走行機体1はその場で信地旋回(スピンターン)する。
【0056】
また、第1油圧モータ56によって左右リングギヤ73を駆動させながら、第2油圧モータ58によって左右サンギヤ71を駆動させると、左右の走行クローラ2の速度に差が生じ、走行機体1は前進又は後退しながら信地旋回半径より大きい旋回半径で左又は右に旋回(Uターン)する。このときの旋回半径は左右の走行クローラ2の速度差に応じて決定される。
【0057】
次に、図8を参照して、コンバインの油圧回路構造について説明する。図8に示す如く、油圧回路250には、上述した第1油圧ポンプ55と、第1油圧モータ56と、第2油圧ポンプ57と、第2油圧モータ58と、チャージポンプ251とを備える。第1油圧ポンプ55と第1油圧モータ56が、閉ループ状直進油路252によって接続される。第2油圧ポンプ57と第2油圧モータ58が、閉ループ状旋回油路253によって接続される。エンジン14によって第1油圧ポンプ55と第2油圧ポンプ57が駆動され、第1油圧ポンプ55の斜板角制御又は第2油圧ポンプ57の斜板角制御によって、第1油圧モータ56又は第2油圧モータ58を正転又は逆転作動するように構成している。
【0058】
また、図8に示す如く、上述した昇降用油圧シリンダ4と、排出オーガ8の籾投げ口9側を昇降させるオーガ昇降油圧シリンダ254と、走行機体1の左右端部を昇降させて走行機体1を左右に傾動させる左右の車高調節油圧シリンダ38と、上述した作業ポンプ91と、走行機体1の前後部を昇降させて走行機体1を前後に傾動させる左右の前後傾斜用油圧シリンダ177とを備える。作業ポンプ91の吐出側に分流弁255とリリーフ弁256を接続する。分流弁255に第1高圧油路257と第2高圧油路258を接続する。リリーフ弁256に低圧のタンク油路259を接続する。
【0059】
第1高圧油路257には、昇降用油圧シリンダ4を作動する刈取昇降電磁弁260と、左の車高調節油圧シリンダ38を作動する左傾電磁弁261と、右の車高調節油圧シリンダ38を作動する右傾電磁弁262と、オーガ昇降油圧シリンダ254を作動する穀粒排出電磁弁263とが接続されている。また、刈取昇降電磁弁260を1グループとして、左傾電磁弁261と右傾電磁弁262と穀粒排出電磁弁263を2グループとして、各グループ別に優先作動電磁弁264に接続する。車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254の作動を禁止した状態で、刈取上昇用の優先作動電磁弁264を介して昇降用油圧シリンダ4を上昇作動するように構成している。一方、昇降用油圧シリンダ4の作動を禁止した状態で、優先作動電磁弁264を介して車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254を作動するように構成している。
【0060】
さらに、タンク油路259に、刈取装置3が下降する側に昇降用油圧シリンダ4を作動する刈取下降電磁弁265が接続されている。刈取昇降電磁弁260を切換える刈取装置3の昇降動とは別に、優先作動電磁弁264を切換えて刈取装置3を上昇させる一方、刈取下降電磁弁265を切換えて刈取装置3を下降させるように構成している。
【0061】
第2高圧油路258には、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177を作動する前後傾動電磁弁266が接続されている。昇降用油圧シリンダ4又は車高調節油圧シリンダ38又はオーガ昇降油圧シリンダ254の作動状況に関係なく、分流弁255の分流作用によって、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動に必要な高圧油が常に確保されている。即ち、左右の前後傾斜用油圧シリンダ177の作動によって走行機体1を前上がりに傾動させ、走行機体1の前部の地上高を高くして、例えば圃場に入るときに、先頭の刈取装置3を俊敏に持上げて、田面等の障害物に刈取装置3が衝突するのを回避できるように構成している。
【0062】
次に、図7、図9を参照しながら、扱胴高速ギヤ115又は扱胴低速ギヤ116を介して扱胴226の回転数を切換える扱胴226の変速構造について説明する。図7、図9に示す如く、前記カウンタギヤケース89に、扱胴高速ギヤ115又は扱胴低速ギヤ116等の扱胴変速ギヤ機構389を内設させる。脱穀選別作業入力軸165に扱胴駆動べベルギヤ390を介して扱胴変速カウンタ軸391の一端側を連結する。脱穀駆動軸160のうち、カウンタギヤケース89内の脱穀駆動軸160の下方側で略平行に扱胴変速カウンタ軸391を配置する。高速伝達ギヤ392及び低速伝達ギヤ393が扱胴変速カウンタ軸391上に固着されている。高速伝達ギヤ392及び低速伝達ギヤ393の間で、扱胴変速カウンタ軸391の下方側で、扱胴変速カウンタ軸391に直交(交叉)する方向に、カウンタギヤケース89内の車速同調軸100が延長されている。
【0063】
また、図1、図2、図7、図9に示す如く、脱穀駆動軸160に、スプライン394を介して、軸芯線方向にスライド可能に扱胴高速ギヤ115を軸支する。扱胴高速ギヤ115に変速シフタ395を介して変速操作軸396を連結する。変速操作軸396に扱胴変速リンク機構397を介して扱胴変速レバー398を連結する。扱胴変速レバー398は、刈取装置3と運転キャビン10の間、即ち刈取装置3の右側部に対面した運転キャビン10の左外側部に配置されている。運転座席12に座乗したオペレータが、運転キャビン10の左側の窓から手を出して、扱胴変速レバー398を操作して、脱穀駆動軸160上で扱胴高速ギヤ115をスライドさせ、高速伝達ギヤ392に扱胴高速ギヤ115を係脱作動させるように構成している。高速伝達ギヤ392に扱胴高速ギヤ115が歯合したときに、脱穀駆動軸160に設けた扱胴駆動プーリ402に巻き回した扱胴駆動ベルト117を介して、扱胴226と処理胴229が高速回転数にて回転し、刺さり粒の発生(排藁に穀粒が混入して排藁カッタ235部から機外に排出される等)を抑えながら、脱穀するように構成している。
【0064】
図9に示す如く、脱穀駆動軸160に、ベヤリング軸受399を介して、扱胴低速ギヤ116を回転自在に軸支する。扱胴低速ギヤ116と低速伝達ギヤ393を常時歯合させる。扱胴高速ギヤ115と扱胴低速ギヤ116の対向する各側面に係脱可能なクラッチ爪400,401を夫々一体形成する。運転座席12に座乗したオペレータが、運転キャビン10の左側の窓から手を出して、扱胴変速レバー398を操作して、脱穀駆動軸160上で扱胴高速ギヤ115をスライドさせ、高速伝達ギヤ392から扱胴高速ギヤ115を離脱させたときに、扱胴高速ギヤ115のクラッチ爪400が扱胴低速ギヤ116のクラッチ爪401に係止され、クラッチ爪400,401を介して高速伝達ギヤ392に扱胴高速ギヤ115が連結される。
【0065】
図9に示す如く、高速伝達ギヤ392に扱胴高速ギヤ115が歯合しているときに、脱穀駆動軸160に設けた扱胴駆動プーリ402に巻き回した扱胴駆動ベルト117を介して、扱胴226と処理胴229が高速回転数にて回転し、刺さり粒の発生(排藁に穀粒が混入した状態で機外に排出される等)を抑えながら、脱穀するように構成している。一方、クラッチ爪400,401を介して高速伝達ギヤ392に扱胴高速ギヤ115が連結されているときに、脱穀駆動軸160に設けた扱胴駆動プーリに巻き回した扱胴駆動ベルト117を介して、扱胴226と処理胴229が低速回転数にて回転し、稈切れの発生(揺動選別盤227上の選別穀粒中に多くの藁屑が混入して選別精度が低下する等)を抑えながら、脱穀するように構成している。
【0066】
図1、図5、図7、図9に示す如く、エンジン14を搭載した走行機体1と、扱胴226を有する脱穀装置5と、エンジン14の動力を扱胴226に伝達する扱胴変速ギヤ機構389を備えたコンバインにおいて、収穫作業条件に基づき、扱胴226の回転数を多段的に選択可能な扱胴変速ギヤとしての扱胴高速ギヤ115、扱胴低速ギヤ116列によって扱胴変速ギヤ機構389を構成している。したがって、扱胴変速ギヤ機構389を介して扱胴226の回転数を多段的に切換えることによって、複数の作業条件別に扱胴226の脱粒機能を簡単に変更できる。従来の扱胴の回転数を無段階に切換える無段変速機に比べ、簡単な切換操作によって、刈取穀稈の性状等に適応させて扱胴226の回転数を適正回転数に容易に設定できる。
【0067】
例えば、6条刈り等の大型機における通常の脱穀作業では、扱胴226を高速回転させることによって刺さり粒の発生を低減でき、排藁に穀粒が混入して機外に排出されるのを防止できる。また、扱胴226の扱歯によって穀粒が損傷しやすい脱穀作業、又は扱胴226の扱歯によって穀稈が切断されやすい脱穀作業では、扱胴226を低速回転させることによって、損傷穀粒の発生又は稈切れの発生等を低減でき、選別穀粒に多くの脱ぷ米又は藁が混入するのを防止でき、脱穀選別作業性を向上できる。
【0068】
図5、図7、図9に示す如く、刈取変速機構108、又は一定回転機構111の高速側一定回転ギヤ110(高速カット伝動機構)、又は一定回転機構111の低速側一定回転ギヤ109(流し込み伝動機構)、又はフィードチェン同調機構112(フィードチェン駆動機構)、又は脱穀選別作業入力軸165(選別駆動機構)を内蔵したカウンタギヤケース89を備え、カウンタギヤケース89内の車速同調軸100(刈取変速軸)を跨ぐように、扱胴高速ギヤ115、扱胴低速ギヤ116、高速伝達ギヤ392、低速伝達ギヤ393列を配置している。また、扱胴高速ギヤ115及び扱胴低速ギヤ116が設けられた脱穀駆動軸160の下方側に、高速伝達ギヤ392及び低速伝達ギヤ393が設けられた扱胴変速カウンタ軸391が略平行に配置されている。扱胴変速カウンタ軸391の下方側で、扱胴変速カウンタ軸391と交叉する方向に、車速同調軸100が延長されている。換言すると、扱胴変速カウンタ軸391よりも上方に脱穀駆動軸160を介して扱胴高速ギヤ115及び扱胴低速ギヤ116が支持され、扱胴変速カウンタ軸391上の一定位置に固着された高速伝達ギヤ392と低速伝達ギヤ393の間で、扱胴変速カウンタ軸391の下方に車速同調軸100が配置されている。
【0069】
したがって、脱穀駆動軸160及び扱胴変速カウンタ軸391に車速同調軸100を接近させて、カウンタギヤケース89内に各軸100,160,391を介して刈取変速機構108又は扱胴変速ギヤ機構389をコンパクトに支持できるものでありながら、車速同調軸100によって扱胴高速ギヤ115の変速動作が制限されることがない。即ち、刈取・脱穀・選別などの作業部の駆動機構をカウンタギヤケース89内に集約させて構成できる。伝動構造のメンテナンス作業性を向上できる。刈取変速機構108の低速側変速ギヤ106、高速側変速ギヤ107(刈取変速ギヤ)列と、扱胴変速ギヤ機構389の扱胴高速ギヤ115、扱胴低速ギヤ116、高速伝達ギヤ392、低速伝達ギヤ393列を交叉させて、カウンタギヤケース89内に前記各ギヤ106,107,115,116,392,393列をコンパクトに配置できる。カウンタギヤケース89を、大型化することなく、低コストに構成できる。
【0070】
図5、図7、図9に示す如く、刈取装置3、又はフィードチェン6、又は揺動選別盤227(選別機構)にエンジン14の動力を伝達させる脱穀選別作業入力軸165(伝動軸)の下手側に脱穀駆動軸160(動力分岐軸)を設け、脱穀駆動軸160上に扱胴変速ギヤ機構389の扱胴高速ギヤ115、扱胴低速ギヤ116列を配置している。したがって、刈取装置3、又はフィードチェン6、又は揺動選別盤227の回転数を一定回転に維持しながら、扱胴226の回転数を変更でき、脱穀選別作業性を向上できる。
【0071】
図1、図2、図7、図9に示す如く、扱胴変速ギヤ機構389の扱胴高速ギヤ115、扱胴低速ギヤ116列を切換え操作する扱胴変速レバー398(扱胴変速操作具)を備え、運転座席12と刈取装置3の間に扱胴変速レバー398を配置している。したがって、脱穀装置5の斜め前方に配置する運転座席12と、脱穀装置5の前部に配置するカウンタギヤケース89との間で、運転座席12のオペレータが操作しやすい位置に扱胴変速レバー398を設置できるものでありながら、カウンタギヤケース89に扱胴変速レバー398を比較的短距離で簡単に連結でき、扱胴変速レバー398に連結させる扱胴変速リンク機構397(扱胴変速操作リンク機構)等を、低コストに構成してコンパクトに組付けることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 走行機体
3 刈取装置
5 脱穀装置
6 フィードチェン
12 運転座席
14 エンジン
100 車速同調軸(刈取変速軸)
108 刈取変速機構
109 低速側一定回転ギヤ(流し込み伝動機構)
110 高速側一定回転ギヤ(高速カット伝動機構)
112 フィードチェン同調機構(フィードチェン駆動機構)
115 扱胴高速ギヤ(扱胴変速ギヤ)
116 扱胴低速ギヤ(扱胴変速ギヤ)
160 脱穀駆動軸(動力分岐軸)
165 脱穀選別作業入力軸(選別駆動機構)(伝動軸)
226 扱胴
389 扱胴変速ギヤ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、扱胴を有する脱穀装置と、前記エンジンの動力を前記扱胴に伝達する扱胴変速機構を備えたコンバインにおいて、収穫作業条件に基づき、前記扱胴の回転数を多段的に選択可能な扱胴変速ギヤ列によって前記扱胴変速機構を構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
刈取変速機構、又は高速カット伝動機構、又は流し込み伝動機構、又はフィードチェン駆動機構、又は選別駆動機構を内蔵したギヤケースを備え、前記ギヤケース内の刈取変速軸を跨ぐように、前記扱胴変速ギヤ列を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
刈取装置、フィードチェン、選別機構に前記エンジンの動力を伝達させる伝動軸の下手側に動力分岐軸を設け、前記動力分岐軸上に前記扱胴変速ギヤ列を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記扱胴変速ギヤ列を切換え操作する扱胴変速操作具を備え、運転座席と刈取装置の間に前記扱胴変速操作具を配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−57(P2011−57A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145735(P2009−145735)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】